1スレ目>>860~>>870


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今日も今日とてカースは街に現れる。
 
3体ものカースが街で暴れていた。強欲、色欲、嫉妬だ。
 
『カネエエエエエエ!』
 
『ヤラナイカアアアアアアア!』
 
『ネタマシイイイイイイ!』
 
「ナチュルアースが来てないんですけど…帰りたいんですけど…」
 
「違う街の学校なんだから来るのに時間がかかるんだと思う…今までも二人だったんだし、ね?」
 
「うう…色欲だけはお断りしたいんですけど…」
 
「そ、それは…私も…そうだけど…もう変身はしちゃったし…」
 
「色欲だけはむぅーりぃー…。」
 
色欲のカース。数は少ないが発する言葉、姿、攻撃等、全てが卑猥であり、どんなヒーローでも嫌悪感を抱かずにはいられないカースである。
 
『ヤラセロォォォォォォ!』
 
「気持ち悪いんですけど…泣きそうなんですけど…。」
 
 
その時だった。
 
「地よ、草花よ、私に守る力を貸して…!感じる、大いなる大地の力…!メタモルフォーゼ!」
 
向こう側の建物の屋上に、輝きを放つ姿があった。
 
「あ、あれは…!」
 
「ア、アイドルヒーロー…!」
 
「私は自然の恋人であり、処刑代理人…ナチュラル・ラヴァース!」
 
テレビにもよく出ている有名なアイドルヒーローだ。どうやら相方はいないようだが、これで戦況に希望が出てきた。
 
「の、乃々ちゃん!ナチュラルラヴァースさんに加勢しましょう!」
 
「え、でもテレビで撮影されてるから邪魔したら訴えられると思うんですけど…。」
 
「…乃々ちゃん、意外と知られてないけど、色欲のカースとの戦いは放送コードに引っかかるから撮影されないんです。」
 
「え…?」
 
「だから私たちが出ても何の問題もないんですよ!」
 
ほたるが乃々の腕をつかむと、夕美の所へ飛んでいった。
 
 
「…これを一人でやれって…無茶ぶりだなぁ…しかも色欲まで…撮影スタッフがいないからこっちとしてはいいんだけど…」
 
「ナチュラルラヴァースさん!」
 
「…?貴方たちは?」
 
「わ、私はこの周辺を守っている、ナチュルスカイです!」
 
「ええ、えっとナチュルマリンです…。」
 
「私たち、協力できないかと思って…!」
 
取りあえず着地して、夕美に共戦を提案する。しかし、夕美は二人をじっと見つめていた。
 
「それはありがたいけど…その力、どこで…?」
 
「え?自然の精霊にこの力はもらったもので…。」
 
「…ふーん。すごいね、精霊に気に入られるなんて。こんな地球にも精霊がまだ生きていたなんて。人なんかに頼らないといけないくらい結構弱っているみたいだけど。」
 
はぁ、と溜息をつきながら夕美は二人をまだ見つめる。テレビの時とは大違いだ。
 
「え?」
 
「なんでもないよ。…その様子を見るとまだ力は制御できてないんでしょ?」
 
「えっと…い、一応ですけど修業はしているので…で、でも嫌なら撤退しても…」
 
「…ううん、制御できてなくてもいいよ。私植物大好きだし。」
 
「あ、はい…。」
 
そういうと、夕美は屋上から飛び降り、ちょうど真下にいた嫉妬のカースを竹で貫き、運よく貫かれなかった核を腕から生やした丸太のような木で破壊し、それらを支えにして降り立った。
 
「おいで。」
 
「は、はいっ!」
 
ほたるも乃々を掴んで隣に飛び降りた。
 
 
「いーい?これから耳を塞いでね。あと、核だけ破壊してくれればいいから。核の破壊だけは苦手なんだ。」
 
そう言って、夕美はにっこり笑うと
 
『この星の自然よ!愛しきものたちよ!大いなる我が力に従い、力を!我に自然の害悪を排除する力を!』
 
夕美の両腕に緑色の光が集まってゆく。
 
「な、なんですかこれ…?」
 
「イヴさんたちの魔法…に似てるけど違う…?」
 
『ナチュラル・リセットバズーカ!!』
 
緑色の光が束となってカースに襲い掛かる。大地をかすめ、建物に当たり、カースの黒い部分が剥がれるように消えてゆく。
 
『ギャアアアアアアアアアアアアアアア!』
 
『イテエエエヨオオオオオオオオオオ!』
 
耳を思わず防ぐほどの咆哮。今までここまでの悲鳴を上げることはなかったのに。
つまりそれだけ痛みがあるということ。そして核だけが飛び出す。
 
「さ、壊しちゃって♪」
 
「はい!嵐よっ!雷よっ!力を貸して!」
 
ほたるが叫ぶと小さな嵐のようなものが発生し、見事に核だけを破壊した。
 
「や、やった!上手くコントロールできてる!」
 
「お、おおお…これなら歩く自然災害という風評被害が無くなる…。」
 
「うんうん、お見事。じゃあ、私はもう行かないと。…ごめんね?」
 
「え?」
 
そういうと夕美は駆けて行ってしまった。
 
 
「あ…ああ…」
 
「どうしたの?乃々ちゃん…?」
 
ほたるは絶句した。
 
振り返ると夕美の攻撃が当たった所が…まるで未開拓地になっていたのだ。
 
大地は花畑に、建物は木々になり替わっており、もはや文明のかけらすら残っていない。人が居たらどうなっていたことか…想像しただけで寒気がした。
 
「なな、なんですかこれ…?」
 
「わ、私たちがやらかした後でもここまでひどくないんですけど…」
 
そして、避難していた住民が戻ってくる。
 
「な、なんじゃこりゃぁ!」
 
「また、ナチュルスターか…」
 
「ナチュルスターなら仕方ない。」
 
「ナチュルスターなら許さざるを得ない。」
 
「め、名誉棄損なんですけど…でも訴えたら負けそうなんですけど…」
 
「…あの人の力こそ…どこから…?」
 
 
その頃、菜々は仮病を使い、手紙で接触してきたウサミン星人とのコンタクトをとっていた。
 
「ナナ様…こんにちは。」
 
目の前に立っているのは全身つやつやで真っ白な、完全にウサミン星人の体をした男。
 
対して菜々は、人間の耳をウサミンの耳に変えているだけだった。
 
「ナンバーをどうぞ。ナナはNo-2017-77です。そちらも。」
 
「…申し訳ない。私のナンバーはNo-2525-49です。」
 
「アフターナンバーが30~69。中級ウサミンと認識しました。問題は?」
 
「ないです。ナナ様。」
 
ここはウサミンPの宇宙船。その中の、人間への長期間の宇宙旅行のリラックス効果を目的に、植物園のようになっている休憩スペースだ。
 
現在宇宙船はステルスをかけた状態で、とあるビルの屋上付近を浮遊していた。
 
 
「ウサミン星人と接触するのは数十年ぶりですね。しかも私は報告をした後すぐこちらへ戻りましたから…懐かしいです。」
 
「質問をしてもよろしいでしょうかナナ様。最初の旧式の挨拶は何故…?」
 
「…旧式?」
 
菜々は首をかしげる。自分のいない間に挨拶が変わるなどあり得るのだろうか?
 
「ナナ様?おかしいですよ。接触なんて政権交代しても政府が使者を一定期間ごとに送っていますし…。」
 
「…は?使者?政権交代…?」
 
菜々の瞳が忙しく揺れる。その時だった。休憩室の小さな植物達が風もないのにカサカサ揺れた。
 
 
―見ちゃった、カサカサ
―聞いちゃった、カサカサ
―言ってやろう、カサカサ
―あの人に言ってやろう、カサカサ
 
ウサミンの優秀な耳はわざとらしい植物の会話まで拾った。本来は聞こえないはずなのに、わざと聞こえるように喋っているのだ。
 
「な、なんなんだ…?」
 
「なぜ植物が騒ぐんですか…?…!」
 
菜々が目を見開いて何かに気付く。しかし、今度は別の大きな植物達がサワサワ揺れる。
 
―お怒りだ、サワサワ
―お怒りだ、サワサワ
―あの人がお怒りだ、サワサワ
 
そして全ての植物達が叫ぶように揺れる。
 
―お怒りだ!お怒りだ!
 
―ユミ様がお怒りだ!愚かなウサミンにお怒りだ!
 
 
カサカサ、サワサワ、異常現象にウサミンPは菜々を庇うように立つ。
 
「…あーあ。またか…。」
 
しかし、入り口の無いはずの背後に、その少女は立っていた。
 
「夕美ちゃん…?」
 
「ナナちゃん、ごめんね?」
 
夕美の指が菜々に触れた瞬間、菜々は急に逆らえない程の眠気に襲われ、そのまま眠り込んでしまった。
 
「貴方は…名も無き星の…!」
 
「…なんで、ナナちゃんに話しちゃうのかなぁ…?ナナちゃん、絶望するんだよ?いつもいつも!」
 
怒りを隠すそぶりもなく、目を妖しく輝かせて夕美は語り掛ける。
 
「今まで全部、いきなり誘拐して『グレートマザー!我らと共に自由な世界へ!』だってさ。愚かだよね。」
 
近づいてきて、指を顎に当てて聞く。
 
「…あなたは違うみたいだけど。さぁ何を言いたい?」
 
 
「貴方が…ナナ様の記憶を…?」
 
「…そうだよ。だって親友だもの。」
 
当たり前でしょう?と微笑む。
 
つまり、今まで菜々が母星の危機を知らなかったのは彼女が情報を菜々が手に入れる前に奪ったか、手に入れても消したのか。どちらかなのだろう。
 
今日は仕事が忙しく、ポストの中身を見る余裕がなかったのは幸運の様だ。
 
…つまり、菜々は知らぬうちに親友に情報規制を受けていたのだ。
 
「…ねぇ、これなんだかわかる?」
 
夕美は手のひらに乗せた小さないくつもの種を取り出して聞いた。
 
「これね、ウサミン星人。」
 
「…は?」
 
「かなり力は使うけどね、生き物を植物に変えるの。」
 
背筋が凍りそうになる。つまり暗に自分の力を示しているわけで。
 
「…さて、答えてもらおうかな。何故ナナちゃんに真実を告げるの?絶望させたいの?『自分のせいで母星に酷い事が起きている』って知って、正常でいられるって思ってたの!?」
 
「…それは、それが彼女にもきっと必要な事だから!」
 
「…なんで?」
 
「貴方は…ナナ様が絶望したらすぐに記憶操作したのでしょうね。」
 
「…そうだけど…。」
 
「…お願いします、私の命を犠牲にしてもかまいません。ナナ様が、絶望を乗り越えるまで…見守ってください。親友なのでしょう?」
 
夕美の動きが完全に止まる。
 
「…親友はそういう物なの?」
 
「はい。」
 
「…そっか、うん。…分かった。」
 
夕美はにっこり笑って言った。
 
「ナナちゃんは、私が見守ります!それが親友の役目なら!」
 
 
「…よかった。」
 
世間知らずの宇宙人…地球人のほとんどがそうだが…でなければ彼女が何者なのかは常識だ。
 
自然が全ての生物を支配する、名も無き星。
 
彼女…大精霊ユミは、その自然の王である世界樹の配下の一人で、植物をつかさどっている。
 
名も無き星の精霊は、様々な星に潜入しており、執着心が強く、そして世間知らずだ。
 
大精霊なのだからもう少しまともな人格だったはずなのだが…この地球の環境が悪いからだろうか?
 
すると、夕美はポンッと音を立てて、小さなぬいぐるみのような姿になった。今日の力をほとんど使い果たしたのだろう。
 
「…」
 
(今日は取りあえずこの二人を保護しよう…。)
 
頭にゼラニウムを咲かせて菜々に寄り添い眠る、小さな夕美を見つめてウサミンPは思った。
 
(…取りあえず今は学校だが今日も歌う為にここに来る沙織になんて説明すれば…)