1スレ目>>293~>>307


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神崎蘭子。彼女は普通の女子中学生である。決して魔王のような言葉では喋らない。
…少しオカルト好きなところを除けば。
 
オカルトと言っても好みはかなり偏っており、悪魔や魔術の本ばかり読んでいる。
 
そんな彼女は、異変が起こったその日にある能力を身に着けた。
…残念ながら彼女が望んだような『魔の力』ではなかったが。
 
 
彼女の能力は『どんな文章も読み解く能力』。
英語も仏語も独語も、挙句の果てには入手さえできれば異星の言語さえ脳内で自動で和訳して読むことができる。
 
暫く落ち込んだ彼女であったが、少しポジティブに考えて…外国語のオカルト本を読むことにした。
 
図書館にはオカルト本は少なかったが、とある古本屋に気まぐれで立ち寄った時、まるで自分を呼んでいるかのように目が離せなくなった一冊の本があった。
 
恐らく伊語で書かれたその本の名前は和訳して『魔の世界』。
ぱらぱらとめくり、内容には彼女の知識にない事ばかり書いてあるのを確認すると、すぐさまレジに持っていく。
 
「こ、この本買います!」
「あ、はい…350円になります…。」
 
思ったより安い。彼女は舞い上がるような気分で自宅へと帰って行った。
 
 
その頃、とある魔界
 
「父上!父上!」
 
「姫様、何事ッスか!?」
 
部下の言葉は気にもせず、姫と呼ばれた少女は城の廊下を駆けてゆく。
 
 
「父上!何故…こんな仕打ちを我に!」
 
「娘よ…何が言いたい?」
 
「何故、攻撃魔法の練習を禁止する!魔術教師に問い詰めたら父上が禁止していると聞き、真意を問いに来たのだ!我に才能がないからか!?」
 
姫が怒りを露わにしながら父に問いかける。
 
「…娘よ、汝は戦う必要はないのだ。」
 
「父上、貴方が言うことが理解できませぬ…!魔族とは!悪魔とは!人々を恐怖に陥れて初めて存在が確立されるのに!」
 
あくまでも冷静な父に対し、姫は怒りを隠しきれない。
 
 
「あの日以来だ!人間が力を身に着けてから!異星の者が現れてから!父上はもう魔族の事なぞどうでもいいのか!」
 
「…もう、世界に今までのような魔族は必要ではないのだ…ただそれだけだ。」
 
「…」
 
その言葉を聞いた次の瞬間、姫は魔王の間を飛び出していた。
 
「魔王様、追いかけなくてもいいんスか?」
 
配下の魔物の問いに父…魔王は首を振った。
 
「まだ…若いな。さすが我が娘よ。」
 
 
人間界
 
蘭子は、ご機嫌モードのまま、買った本の中に会ったとある術を試そうとしていた。
 
願いが叶う呪文と悪魔が下僕となる呪文を合わせ、魂を取られないようにする理論で作られた魔術らしい。
 
カーテンを閉め、紐で作った円の中心に本を置き、自分の血が付いた紙(偶然紙で手が切れたのでその血を使用)をその上に。
 
満を持して、黒いコートを装備し雰囲気を作り、円の周りをゆっくり歩きながら呪文を唱える。
 
…ちなみに本に書かれた魔術を行うのは初めてである。今までは必要な道具にいろいろとアレなものが多かったのだ。
 
「…我が名は神崎蘭子。黒き衣を纏いし者。魔の世界に住む者よ、血の契約を、主従の契約を結び、我が願い叶えたまえ…!」
 
そして…あり得ないはずの事が起こったのだ。本が光を放ち、目の前に翼を持った少女が現れたのだ。
 
 
 
「フフフ…ハァーッハッハッハ!ひれ伏せ!我こそが第5魔界を統一する偉大なる魔王の一人娘!悪姫ブリュンヒルデであるぞ!」
 
 
 
「…む?」
 
「…え!?」
 
二人はお互いの顔を見合わせた。服装や髪形は違うものの、鏡を見たかのようにそっくりだったのだ。
 
「貴様、ドッペルゲンガーか?」
 
「え?ち、違います!私は人間です!」
 
 
「…そうか。…ふむ、貴様はなかなかの魔術のセンスがあるようだな。」
 
「ほ、本当ですか!?」
 
蘭子は悪姫の言葉を聞いて再び舞い上がる。まぁ確かにこんな魔術を成功させるのだから嘘ではないだろう。
 
「…だが、肝心の魔翌力がない。放水する時にホースはかなり放水できる物でも、タンクに水がほとんど無いようなものだな。」
 
「…そうですか。」
 
「…貴様の願いは何だ?我ができることは何でも叶えてやろう。」
 
 
悪姫の問いに落ち込んでいた蘭子が顔を上げて呟くように言った。
 
「…すごい魔術が使えるようになりたかったんです。」
 
「…何故だ?」
 
「世界は今、宇宙人とか急に超能力に目覚めた人たちがいっぱいいるんです。そんな中で魔術師として悪い人たちと戦えたらなぁ…って。」
 
「…貴様、なかなか見所があるな。あんな連中が堂々と歩いてる中、魔術…そう、悪魔の技術に見惚れるとは。」
 
悪姫は少し思案して一つの提案をした。
 
「…願いをかなえるのは無理だが…貴様なら、我の思想が分かるかもしれんな。」
 
「…?」
 
「我は今日からこの人間界に住む!目的はそう!魔術による世界征服!」
 
「え!?」
 
そこまで求めていません!と言おうとするが口が動かない。
 
「…もちろん、我もまだ父上に比べれば未熟。そこでだ。貴様が我が部下となり、二人で一人の魔術師になるのだ!共に歩め!敬語は無しだ!」
 
「ええっー!?」
 
 
そして数日後
 
「蘭子ー!昼子ー!おはよう!」
 
「うん、おはよう!」
 
「フン、煩わしい太陽ね!」
 
悪姫…人間名・神崎昼子は、記憶操作の魔術を使い、蘭子と双子であると周囲に刷り込んだ。
 
そして…
 
 
『フハハハ!どうだ!大量の水を学校中に撒いてやったぞ!』ピピッ
 
「…通り雨が降ったようなものだな…」
 
「…今日は午後から体育のクラス、あったけ?」
 
「ないな…もう昼休みだぜ?タイミング悪いというか…」
 
「というか今日は部活ないしな。テスト準備期間で。」
 
「あ、テメェ!嫌なこと思い出させるなよー!」
 
『さぁさぁかかってこいヒロイン!!私は逃げも隠れもしないぞー!!』ピピッ
 
「今日も出ましたね…!早く行かなくては…!」
 
――ハーッハッハッハッ!――
 
「む!先を越されましたか…。でも誰が…?」
 
『来たか!』ピピッ
 
「ひれ伏せ!我こそが第5魔界を統一する偉大なる魔王の一人娘!悪姫ブリュンヒルデであるぞ!」
 
 
空中には悪魔の姿をしたブリュンヒルデ。屋上には正体がばれないように黒いローブを羽織った蘭子がいる。
 
「あ、今まで見たことのないヒロイン!」
 
「マジだ!ていうか飛んでる!すげぇ!」
 
『初めて会うな!だが、誰であろうと容赦はしないぞ!』ピピッ
 
「それはこちらとて同じ事!忌々しい機械め!人間が悪魔を恐れなくなった原因の一つ!」
 
「…ひ、昼子ちゃん…!」
 
(あまり喋るな、蘭子よ。貴様に拡声魔法がかかってないからといって、正体がばれるのが嫌なら声はあまり出さない方がいい。)
 
(あ、うん…。脳内で会話するのまだ慣れなくて…。)
 
 
「ここには我が家臣もいるのだ!大いなる魔術の力、記憶しろ!」
 
『…二対一か?忍者といい、またこしゃくな!』ピピッ
 
「知るか!『合唱魔術の発動を宣言する!』」
 
手を振り上げたブリュンヒルデが魔術を唱えるのに合わせて蘭子も唱える。
 
「「水よ!大いなる我が力に従い、その静寂なる身を激動に身を任せ我が敵を排除せよ!」」
 
「「スプラッシュ!」」
 
呪文が終わるのと同時に、プールの水がまるで意思を持ったかのように動き出し、ロボに襲い掛かる。
 
『何ィ!?』ピピッ
 
激流に耐えきれず、ロボは遠くの川まで水流ごと流されていった。
 
数十秒後、プールの水はロボを川に放置して元ある場所にしっかり戻ってきた。
 
「フハハ!我が世界征服計画の第一歩になれたのだ!光栄に思うがいい!フハハハハハ!」
 
「何あれ…かっけぇ…」
 
「悪魔なのか…すげぇ…」
 
「人間どもよ!さらばだ!闇に飲まれよ!」
 
「あ、待って待って!」
 
飛び去るブリュンヒルデに蘭子がしがみつき、飛んでいった。
…のは幻影で、本当は再び人間に擬態し、蘭子は着替えて教室に戻って行った。
 
 
 
『…博士、戻りました…』ピピッ
 
「ロボ、どうした!?ビショビショじゃないか!防水は完璧だから大丈夫だとは思うが…」
 
「え?またプールにでも落ちたの?」
 
『…プールに襲われました』ピピッ
 
「「は?」」