1スレ目>>150~>>170


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それなりに大きく、四方を壁で囲まれた場所に少女が一人立っている。
 
天井のスピーカーから男性の声が流れる。
 
『射撃訓練開始。』
 
夏樹「…了解。」
 
夏樹は普通の少女ではない。彼女の周りに複数の目玉型ユニットが浮かんでおり、周囲を旋回している。
 
夏樹の背後にターゲットが出現した次の瞬間、ユニットの一つが光線を放ち、貫いた。
 
次々と出現してくるそれらを、夏樹自身は全く動かずにクリアする。
 
最後に目の前に現れた巨大なそれに、二つのレーザーが当たるも壊れない。
 
夏樹は最後の最後に手袋をした両手を動かした。
 
夏樹「バン!」
 
そして最後のターゲットは破壊され、夏樹は持っていなかったはずの拳銃を両手に持っていた。
 
『お見事だ。さぁ、次の訓練を開始する…』
 
 
夏樹「ハァ…」
 
「疲労しているのか?あの娘との面会を中止するか?」
 
夏樹「…するわけないじゃん。」
 
「ならばもっと素早く無駄のない行動をしろ。」
 
夏樹「はいはい。」
 
 
李衣菜「なつきち!」
 
夏樹「よぉ、だりー。」
 
牢屋の中にいたのは、つぎはぎだらけの肌の、頭にボルトが刺さった、眼帯の少女。夏樹の親友である。
 
李衣菜「今日も訓練お疲れ様!」
 
夏樹「ん、ありがと。そっちは何かあったか?」
 
李衣菜「えっと、今日はね…」
 
 
…木村夏樹と多田李衣菜、彼女達は交通事故で搬送されているところを悪質な宇宙人に誘拐された。
 
四肢が使い物にならなくても辛うじて生きていた夏樹は改造人間に。
 
ほぼ即死状態だった李衣菜はフランケンのような怪物に。
 
彼らはどうやらどこかの政府に反逆を目論んでいるらしく、その駒として使われるらしい。
 
数日に一度の牢屋越しの会話。彼女、李衣菜は、夏樹にとってのある種の人質である。
 
二人の首には首輪が巻かれており、研究員の意思で好きに電流を流したり、爆破させることができる。
 
夏樹は空間を移動できる穴を自由に生成する能力を持っており、その能力で自在に武器を取り出せるのだが…その気になれば脱走も反逆もできる。
 
しかし、それでは李衣菜は殺されてしまうのだ。無許可で牢屋を出た瞬間に、銃を向けた瞬間に…一度死んで、また死ぬのだ。理不尽に。
 
それは李衣菜にとっての夏樹でもあった。怪力と電流攻撃を搭載された李衣菜でも、逆らうことができないのだ。
 
 
夏樹「…そういえばさ、だりーはあの扉、知ってるか?」
 
李衣菜「あの扉?」
 
見張りはこちらの会話に興味はないようだ。こっそりと話を続ける。
 
夏樹「アタシの牢屋の近くに、分厚い扉があって…連れてこられたばっかりの時、小学1年生位の女の子が入れられた所なんだけど…。」
 
李衣菜「あ、あの扉!それがどうかしたの?」
 
夏樹「いや、最近あの扉の中に毎日いろいろ入れられていてさ…なんか聞いてたりしないか?」
 
李衣菜「うーん、特に何も…あの口が軽い監視の時にさりげなく聞いておこうか?たしかあと三日であの人の番だし。」
 
夏樹「怪しまれない程度にしておけよ?」
 
李衣菜「大丈夫!そのふらふぃ、ふ、ふが…。」
 
夏樹「げ、声帯補助装置ずれたか?」
 
李衣菜「ふが、ふがっふふぉが…ふぅ、急にずれたからびっくりしたぁ…」
 
夏樹「まったく…びっくりさせやがって…ん、そろそろ時間か…。」
 
ピピピピピピピピ…
 
夏樹がつぶやくと同時に監視員が持っていたタイマーが鳴り、欠伸をしていた監視員が真面目な顔に戻る。
 
「…あ、時間か。…ほら時間だ!面会時間は終わりだ!」
 
夏樹「はいはい、わかってるって。じゃあな、また次の面会まで頑張れよ!」
 
李衣菜「なつきちもね!」
 
名残惜しい別れ。監視員に背を押され、李衣菜の牢屋のあるスペースの自動ドアの外に出る。
 
自分の牢屋のあるスペースの自動ドアをくぐって自分の牢屋に入り、牢屋のカギをかけられ、冷たいベッドに横になる。
 
両腕に目玉型ユニットをしまうと完全に視界が無くなる。両目はもう義眼だから光を拾えない。
 
そのまま目を閉じて更なる暗闇の中へ落ちてゆく。これがもう慣れてしまった日常…だった。
 
 
あの日が来るまでは。
 
 
訓練から帰る途中。今日は李衣菜との面会もない日。
 
ドォォォォンと、響くような音が鳴った。
 
夏樹「…?なんだ?」
 
ビービー!ビービー!
 
「はい、こちら…な!?侵入者!?母星の軍か?…宇宙管理局!?了解!直ちにこいつを向かわせる!」
 
白くて長い耳を動かして振り返ってくる。
 
「おい、侵入者だ!直ちに撃退命令を下す!」
 
夏樹「…了解。」ダッ
 
「あのフランケン娘にも連絡は行っているからな…ふふ、政府の奴らめ…我らの技術力を甘く見ない方がいい…」
 
 
きらり「きらりん☆ビーム!」
 
チュドーン
 
管理局軍「壁が壊れたぞ!突撃―!」ドドドドド
 
きらり「にょわー!」ドドドド
 
管理局軍・L「誘拐された被験体の少女たちは無力化するだけでいい!研究員は逃がすな!」
 
 
李衣菜「なつきち!こっちこっち!相手の死角っぽい!」
 
夏樹「…あれが侵入者か…どうする?」
 
李衣菜「…助けてもらえないかな?」
 
夏樹「…今は無理だな。首輪を何とかしないと…」
 
きらり「…ほえ?」
 
夏樹「!」ヒュン
 
管理局軍・L「きらり、どうした?」
 
きらり「あ、リーダーちゃん!あっちに女の子がいたのー!目があったら消えちゃってきらりすっごくびっくり!照れ屋さん?モジモジ?うっきゃー!」
 
管理局軍・L「…きらり、少し声の大きさを考えてくれ…。」
 
きらり「はーい!」
 
 
夏樹「あっぶねぇ…」
 
李衣菜「予告なしにワープ穴作らないでよぉ…」
 
夏樹「あーゴメンな。あのデカいの、目からビーム出してたから撃たれるかと思って焦った…。で、ここはどこ…」
 
「でかいのって、もしかしてきらりの事―?」
 
夏樹「」
 
李衣菜「」
 
きらり「きらりん☆」
 
 
夏樹「な、なんで…」
 
きらり「きらりね、二人が消えたところで、会いたいなーって思ったら、きらりんぱわーがビビッ!てなって、ばびゅーん!ってここに来てたの!」
 
夏樹「消えきってなかった微かな穴の残骸か…!」
 
きらり「…?首に着けてるの、なんだかはぴはぴじゃないにぃ…?」
 
李衣菜「さ、触っちゃダメ!爆発しちゃうから!」
 
夏樹「おい馬鹿、相手は敵だぞ!?」
 
きらり「…よーし!」コォォォォ
 
きらり「W★きらりん☆ビーム!極小圧縮ばーん!」ヒュヒュン!
 
夏樹「」
 
李衣菜「」
 
きらり「これでもうだいじょーぶ!首輪はきらりがヒュンヒュンポロン♪な感じで切ったの!」
 
李衣菜「…嘘、こんなあっけなく…?」
 
夏樹「だ、だりー!アタシ達もう自由だ!」
 
李衣菜「うん…!」
 
きらり「うんうん!はぴはぴで、きらりんぱわーがゴゴゴゴ!滾ってきたぁ!いってきまー!」ダッダダダダダダダ
 
 
夏樹「…!そういえば、あの扉の奥の女の子!」
 
李衣菜「!…えっと、きらり?って人に知らせた方がいいのかな?」
 
夏樹「…取りあえず追いかけるか…そもそも帰り方が分かんねぇし…。いくぞ。」ヒュン
 
李衣菜「だからいきなり穴を足元に作らないdふぉ…ふがぁぁぁぁ…」ヒューン
 
 
「所長!二体の首輪の反応が消えました!」
 
「何?…仕方ない。我らの作った究極生命体を開放するしかないな…」
 
「!?あ、あ、あいつは危険です!今は遠隔操作で餌を与えているから大丈夫なだけで!あいつは我々が手綱を握れる相手ではありません!」
 
「うるさい!いまは管理局の連中を全滅させることだけを考えろ!」
 
 
管理局軍「リーダー!研究員全員が一つの扉に向かっています!」
 
管理局軍・L「非常口か!?」
 
夏樹「…いや、違うと思うな。」
 
管理局軍・L「…君はこの施設の被験者か?」
 
夏樹「…そうだ。テレポートみたいなことができる。さっきアンタ達の仲間のきらりって奴に助けてもらった。」
 
李衣菜「ふふがふ!」
 
管理局軍・L「そうか。…ならばあの扉の向こうには何がある?」
 
夏樹「…直接見たことはないけど、女の子やいろんな動物が中に入れられていたのを見たんだ。」
 
管理局軍「…どうします、リーダー?」
 
きらり「リーダーちゃーん!行くの?行かないの?どっちどっち?」
 
管理局軍・L「我々の任務は誘拐された被験者の保護と研究員の捕獲だ。どちらにしろ行かなくてはならない。」
 
きらり「よぉーし!じゃあきらり先頭ねー!」
 
きらりが分厚い扉を開く。その扉の中には…地下へと伸びる階段のみがあった。
 
相談の結果、きらりを先頭に、リーダー、夏樹、李衣菜、その後ろに管理局軍全員が入ることとなった。
 
管理局軍「…いいんですかリーダー?あの二人まで連れてきて…」
 
管理局軍・L「本人の希望だ。それにあの年上の方はテレポート能力を持っている。いざとなれば避難してくれるはずだ。」
 
 
地下へと伸びる階段は、薄暗い明かりに照らされている。
 
降り切ると広場のようになっていて、その広場の壁に大きな鉄の扉があった。
 
地面をよく観察すると、研究員たちの物らしき足跡が一直線にその扉に伸びていた。
 
きらり「ここ?」
 
管理局軍・L「二人は下がっていてくれ。突撃用意!」
 
しかし、突撃する前に扉が所長によって開けられる。
 
「ようこそ。我らの最高傑作のショーに!」
 
所長は他の研究員達の下へ優雅に戻りながら語りだす。
 
あっけにとられたのか、それとも情報が欲しいのか、管理局軍は手出しをしない。
 
そして高校生くらいだろうか、ボロボロの白いワンピースの少女が目隠しをされ、足枷と手錠で壁と繋がれていた。
 
普通の人間と違うところは、見える限りでは虎の耳と左手、それに蛇の尻尾のみだ。
 
 
「やれ。」
 
そう所長が言うと、研究員達は彼女の足枷と手錠を外す。
 
そして最後に所長が目隠しを外す。
 
管理局軍・L「総員警戒態勢!」
 
少女が目を開ける。真っ赤な瞳が辺りを見渡し…研究員を捕えた瞬間
 
「おなか、すいた」
 
部屋中が黒で染まった。
 
 
…いや、目玉型ユニットで視覚を得ている夏樹だけが状況を把握していた。
 
夏樹「…!?」
 
黒いドロドロしたものが少女の体から湧き上がり、食らう様に研究員達に襲い掛かかり、部屋中をその黒で覆い尽くしたのだ。
 
そして、部屋中の壁に、無数の目玉が浮かび上がった。
 
統一性もない、無数の動物の瞳。
 
李衣菜「ヒィ!」
 
管理局軍「な、何事だ!?」
 
ギラギラ、ピカピカ光る目玉。皮肉にもそれが明かりの代わりとなって部屋中の様子を映し出した。
 
部屋の壁には研究員が…まるで壁から生えたような生き物たちに丸呑みにされていた。
 
少女自身もまるでその黒に溶けてしまいそうに見えた…実際、体の半分ほどがその黒に浸食されているのだが。
 
 
黒からはたくさんの生き物が食らおうと襲い掛かってくる。
 
少女はその様子を…本当に見てるのか定かではない、死んだ瞳で見ていた。
 
「おなか、すいたよぉ…ちがう、すいてなんかない…」
 
ボソリ、ボソリと呟きながら。
 
しかし、その部屋のほとんどの人間が壁や床、天井から湧き続ける動物たちの対処に追われ、聞こえていない。
 
 
きらり「…」
 
そんな中、きらりは自分に噛みついてくるそれらを振り払いながら少女に駆け寄った。
 
きらり「だいじょーぶ?怖いの?」
 
「…おねぇちゃん、だれ?」
 
見た目よりも幼い言葉遣いで彼女は問う。
 
きらり「きらりは、きらりだよ!君は?」
 
「…なお。かみや、なお。」
 
急に、動物たちの動きが鈍くなる。
 
きらり「そっかー!なおちゃんって言うんだぁ!はぐはぐしてもいいー?」
 
なお「…うん。」
 
きらり「うっきゃー!なおちゃんかわいー!!はぴはぴが、なおちゃんにもいきますよーに!」
 
きらりの両手から、光が放たれる。そしてその光が部屋を覆い尽くしていた黒の動きを完全に止めた。
 
なお「…あったかい…。」
 
きらり「なおちゃん?」
 
部屋の中の黒が彼女に収束して、彼女の体を蝕んでいた黒も消え去った。
 
丸呑みにされていた研究員もそのままの姿で地に伏せている。
 
すぐさま管理局軍が駆け寄り拘束し、全てが終わった。
 
 
これが約一年前の事。今、彼女たちは地球で暮らしていた。
 
『グオオオオオ!俺が!一番!強いんだヨォォォォォォォォ!』
 
奈緒「夏樹!周辺の住民は?」
 
夏樹「避難完了だ!思いっきりやろうか!」
 
李衣菜「おっけー!」
 
きらり「おにゃーしゃー!」
 
奈緒が虎の姿になり、きらりを乗せながらカースを錯乱。
 
きらり「きらりん☆ビーム!」
 
錯乱した隙だらけのカースにきらりと夏樹が攻撃を打ち込み続ける。
 
夏樹「だりー!今だ!」
 
夏樹が作った穴に飛び込み、カースの真上から李衣菜が飛び込む。
 
李衣菜「くらえ!」
 
黒いドロドロの体に思い切り李衣菜が放電する。その体に電気に反応して輝く部分があった。
 
奈緒「見つけた!」
 
きらりを降ろした奈緒が左の虎の手で切り裂く。カースの黒い体と黄色い核が見事に粉々になった。
 
きらり「よーし!大成功―!リーダーちゃんも喜んでくれるよね!」
 
 
菜々「プロデューサーさん!ネバーディスペアが高慢のカースを狩ったようです。」
 
『何!?ハァ…あの子達、アイドルやってくれないかなぁ…』
 
菜々「…無理だと思いますよ?」
 
『それは分かるが…こう、うちの営業のある種の妨害になってるというか…同盟の偉い人があの子たちの悪口ばかり言うからさ…』
 
夕美「…汚い人。」ボソッ
 
菜々「しーっ!夕美ちゃん!?それはマズイですから!もっとオブラートに包んで!」
 
『…ネバーディスペア…いったい何者なんだ…?』
 
彼女たちは、今日もどこかで絶望を狩る。