625 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:27:24.30 ID:1VZRnrdlo [2/26]
~前回までのあらすじ~
その日、櫻井財閥党首サクライPは、驚くべき街の声を耳にした。
子供「櫻井財閥なんてだっせーよなっ!」
子供「ユズちゃんが一番可愛いよな!」
子供「財閥なんていらないよっ!」
子供「帰ってユズちゃん応援しようぜっ!」
サクライP「・・・・・・なんて事だ。」
立つんだ!サクライP!
サクライP(どう考えても桃華の方が可愛い)
――
626 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:28:00.33 ID:1VZRnrdlo [3/26]
サクライP「初代の強欲の悪魔でございますか?」
桃華「ええ、それをこれから叩き起こしに行きますわ。」
世界の果て、人々が忘れてしまったある遺跡。
その様な場所に『強欲』の親子は来ていた。
桃華「まったく、久しぶりにPちゃまと会えましたと言いますのに」
桃華「ゆっくりとお茶を飲むこともできませんのね。」
桃華「長期休暇を利用してのハワイ旅行の予定も急遽中止になりましたし・・・・・・。」
サクライP「私の不徳が致すところです。申し訳ございません。」
桃華「いいのですわ、Pちゃま。これも仕方の無いことですもの。」
財閥を立て直す為に、サクライPは各地を駈けずり回り、
未だに完全に財閥の信頼を取り戻すには至っていないものの、
この頃はサクライPにもある程度、時間に余裕はできたようだ。
しかし、その隙間の時間、
本来であれば、娘とゆっくりお茶でも飲みながら過ごすための時間を、
このような場所で迎えることになったのは、『強欲』の悪魔の要望のためである。
桃華「この鬱憤は、そのうち死神ちゃまに何か仕掛けて晴らすとして・・・・・・」
桃華「落ち着いたらまた屋敷で一緒に紅茶を飲みましょう、お父様♪」
サクライP「勿論だよ。桃華。」
627 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:29:33.51 ID:1VZRnrdlo [4/26]
遺跡の階段を下りながら、強欲の悪魔は語る。
桃華「正確には、あの方を初代強欲の悪魔、」
桃華「あるいは初代マンモンと呼ぶのは、少し違いますわね。」
桃華「何しろ”強欲の悪魔”と言う役職が成立したのは、いささか複雑な経緯がありましたもの。」
桃華「まあ、その辺りのお話は今回は省かせていただきますわ。」
目の前には岩で出来た扉。
強欲の悪魔が軽く手を触れるだけでそれは大きく開いた。
桃華「彼女の名前は”アモン”」
桃華「その意味は”計り知れぬ者”。」
桃華「かつての魔界では、最強の悪魔の一角と恐れられていた存在。」
サクライP「・・・・・・そのような者がこの地上の遺跡に眠っているのですか?」
桃華「経緯はわかりませんが、そのようですわ。」
サクライP「よくこれまでに他の勢力に・・・・・・特に『イルミナティ』に見つかりませんでしたね。」
桃華「”強欲の証”を持つ者にだけ理解できる感覚ですわ。」
桃華「それに、この遺跡に漂う魔力の濃度は、あまりにも自然ですから。」
桃華「彼女達も見落としたのでしょう。」
桃華「とても”計り知れぬ者”が眠っているとは思えないほど、」
桃華「この場所には何も無いとしか思えないほど、」
桃華「それほどまでに、静かな魔力の流れですわね。」
628 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:30:27.44 ID:1VZRnrdlo [5/26]
何かを祀る祭壇のような広間を横切るように、強欲の親子は歩く。
『ゲッゲッゲ』
『ギャッギャッギャ』
親子の回りには、数体の小型の蝙蝠のような『強欲』のカースがバタバタと飛び回り、
その煌びやかな眼光で、辺りをサーチライトの様に照らしていた。
言うまでも無く、マンモンの配下のカースである。
サクライP「どうか足元にはお気をつけ下さい。」
桃華「ウフ、心配してくださるのね♪では、手を引いてくださるかしら。」
サクライP「お安い御用です。」
サクライは娘のシルクのような手を取り、
エスコートするように、彼女が躓かないように、石造りの道を歩むのに付き添う。
629 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:31:03.19 ID:1VZRnrdlo [6/26]
迷路の様な通路に出てきた。
道は数多に枝分かれし、右も左も、北も南もわからない。
桃華「Pちゃま、そっちですわ。」
そんな通路を、まるで通い慣れた道であるかのように、
『強欲』の悪魔は行く先を、次々と決めていく。
桃華「”アモン”は”神喰い”と呼ばれる、神と同化して吸収する力を持っていたと聞きますわ。」
桃華「海王神、太陽神、豊穣神、あらゆる神々を手中にし、己の力へと変えた。」
桃華「『強欲』なる”計り知れぬ者”」
サクライP「なるほど、神すら食らうもの。」
サクライP「財閥のこれからの計画には必要となるコマ、と言う訳でしょうか。」
桃華「・・・・・・。」
桃華「残念ですけれども、”計り知れぬ者”をコマにできるほどの力は、わたくしにはありませんわ・・・・・・。」
『強欲』の悪魔の力は、相手とのレベル差とも言うべき”魂の格の違い”が非常に強く影響する。
”計り知れぬ者”はその名の通り、霊格の高さが凄まじく、計り知れない。レベルの上限が見えないのだ。
多才なスキルを持つマンモンの如何なる能力も、そのほとんどがアモンには通用しないだろう。
サクライP「・・・・・・では、その悪魔を目覚めさせるのは、大きなリスクを負う事になりますね。」
桃華「ええ、出来れば渡りたくはない危ない橋ですわ。」
630 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:32:10.58 ID:1VZRnrdlo [7/26]
桃華「ですが、これからの時代。きっと”計り知れぬ者”の力は必要となりますわ。」
桃華「そして、あの方を起こすのなら今しかあり得ませんのよ。」
桃華「皮肉にも今はどの陣営も、わたくしや財閥に対しては無警戒ですもの。」
桃華「失墜した財閥よりも、他に脅威は山ほどありますから。」
桃華「私達がここに居ることも、誰が知ることも無いはずですわ。」
桃華「ああ、次はこっちですわよ」
迷路の途中、何も無いように見える壁を指差す桃華。
サクライPは桃華の手を引き、疑問にも思わず壁に向かって進み、
その壁をすり抜けた。
進入した先は殺風景な小さな部屋。
部屋の中心には直径にして2mほどの、円形のくぼみがある
サクライPと桃華はその上に立った。
途端に世界の上下が反転する。
二人は先ほど立っていた床の下に立っていた。
小さな部屋の下に広がっていたのは、真っ黒な空間。
上下が反転したときに、カース達を連れて来れなかったため、
灯りは一つもない。
だが強欲の親子はお互いを視覚的に認識することができた。
真っ黒な空間でありながら、暗闇ではないようだ。
桃華「ここからは異界、あの方の領域のようですわね。」
631 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:33:15.17 ID:1VZRnrdlo [8/26]
『強欲』の悪魔は真っ黒な空間に歩を進める。サクライもそれに続いた。
桃華「アモンを起こして、その協力を仰ぐ。」
桃華「いえ、協力を仰げなくとも良いですわ。」
桃華「あの方が再び復活すれば、神々も天使もその存在に恐れをなす。」
桃華「そうして脅威の目をそちらに向けさせることができれば良いですの。」
サクライP「囮作戦のようなものですね。」
桃華「ただ、そのためには、今回、わたくし達は”計り知れぬ者”の前から生き残れなければなりませんわ。」
しばらく歩むと、黒い空間に無数の目が現れる。
それは大きかったり、小さかったり、近かったり、遠かったりした。
中空に浮かぶ無数の目はギョロギョロと二人を見ている。
サクライP「これは?」
桃華「あの方の集めた神々の目ですわね。こちらを観察しているだけですわ。」
桃華「危害を加える事はないですから、心配することはありませんわよ。」
二人は気にする事無く、異空間を進む。
632 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:34:08.21 ID:1VZRnrdlo [9/26]
歩みに合わせて、景色が幾度と無く変わる。
砂の舞う砂漠。
風香る豊かな大草原。
怒り荒れ狂う海の上。
突き抜ける様な天空に浮かぶ雲の道。
地上の何処の国とも違う都市。
凍てつく氷の山脈。
灼熱の地獄の様な渓谷。
桃華「あの方に取り込まれ、同化した神々の記憶が作り出す景色ですわ。」
サクライP「次々と景色が変わる様は、幻想的でございますね。」
景色が幾度と変わろうとも、二人を観察する目は、
まるで空に浮かぶ星の様に位置も変えずに付いてきていた。
そして再び真っ黒な空間に辿りつく。
真っ黒な空間には、大小様々な目の星が浮かび、
それはまるで宇宙空間の様にも見えた。
633 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:34:48.14 ID:1VZRnrdlo [10/26]
桃華「もう間もなくですわ。」
”計り知れぬ者”が近いと”強欲の証”が、
反応するのを感じて、『強欲』の悪魔は呟いた。
桃華「そうそう。Pちゃま、わたくしが彼女の前で生き残れる確率は」
桃華「せいぜい10%程度だと思っているとよろしいですわよ。」
サクライP「ああ、なるほど。それで私もここに呼ばれたのですね。」
アモンを起こすだけなら、サクライPがここまで共に来る必要などない。
なら、彼が呼ばれた理由はと言えば、
桃華「ええ、だってPちゃま。」
桃華「わたくしが死んでしまった時、傍に居られないのは嫌でしょう?」
サクライP「御心遣い、感謝いたします。」
そして、真っ黒な宇宙に、一つに扉が現れる。
二人はその扉の前に立った。
634 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:35:58.04 ID:1VZRnrdlo [11/26]
桃華「さて、ここからが10%の賭けですわ。」
桃華「Pちゃま、10%を引ける自信はありまして?」
サクライP「当然でございます。全ては貴女様のために。」
桃華「ウフ♪いいお返事ですわ、Pちゃま♪」
桃華「・・・・・・。」
桃華「それでは、開けますわよ。」
『強欲』の悪魔は扉の前に立つ。
それと同時に『強欲』の証である、彼女の翼が現れ、
証に反応して、扉に開放の魔方陣が描かれる。
桃華「我は”強欲”を司る大悪魔マンモン。」
桃華「我が命を聞き、悠久の時を閉ざす扉、王への道を開くが良い。」
ギィっと音を立てて、扉が開く。
真っ黒な宇宙空間に光が洩れる。
635 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:36:31.01 ID:1VZRnrdlo [12/26]
扉の奥には、円柱状の部屋があり、中央には玉座。
玉座には一人の少女が座っていた。
俯く少女の顔は伺えない。
眠っているのだろうか。
桃華「”計り知れぬ者”よ。」
部屋に入った『強欲』の悪魔が少女に呼びかける。
桃華「お迎えに上がりましたわ。」
『強欲』の悪魔の言葉を聞いてだろうか、
玉座の少女が立ち上がった。
ゴクリとサクライPが息を呑む。
”計り知れぬ者”と呼ばれた少女は
顔を上げて、口を開く。
636 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:37:05.08 ID:1VZRnrdlo [13/26]
菲菲「どもー!マンモンちゃん!」
菲菲「”計り知れぬ者”アモンこと、ふぇいふぇいだヨー!」
桃華「・・・・・・・。」
サクライP「・・・・・・・。」
菲菲「?」
桃華「・・・・・・・。」
サクライP「・・・・・・・。」
菲菲「・・・・・・・。」
桃華「すみません、お部屋を間違えたみたいですわ。」
バタン。
と扉が閉められた。
637 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:37:30.80 ID:1VZRnrdlo [14/26]
――
遺跡の入り口
来た道を引き返したが、途中に他には特にそれっぽい扉は無かったので、
『強欲』の親子はここまで戻ってきたのでした。
桃華「無駄足でしたわね。」
サクライP「”強欲の証”にも勘違いはあると言う事でしょう。仕方ないことです。」
桃華「そうですわね。今回の事は諦めて、他の方法を取ることにしましょう。」
桃華「そう言えば、カースドウェポン計画の方はどうなっていますの?」
サクライP「既に、エージェントを送り込んでおります。」
桃華「流石、Pちゃまですわ。製作の方も順調に材料が集まっているようですし、」
桃華「問題はと言えば、」
菲菲「ちょっ、ちょっと待つヨー!!」
桃華「あら、貴女も出てきましたの?」
菲菲「なんで扉閉めたネ!!ふぇいふぇいに用があったはずダヨー!!」
桃華「ごめんなさい、人違いで寝ているところを起こしてしまいまして・・・・・・。」
菲菲「人違いじゃないヨ!ふぇいふぇいが”計り知れぬ者”ダヨー!」
桃華「わたくし、アモンと呼ばれる方を探してますの。貴女、お名前は?」
菲菲「ふぇいふぇ・・・・・・じゃなかった、アモンダヨー。」
桃華「やはり人違いでしたわ。おほほ、それでは御機嫌よう。」
菲菲「アモンって言ってるヨ!!帰ろうとするのやめるネ!!」
638 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:38:21.23 ID:1VZRnrdlo [15/26]
桃華「・・・・・・まあ確かに状況から言えば、」
桃華「認めたくはありませんが、貴女がアモンなのでしょう。認めたくはありませんが」
菲菲「なんで2回言ったヨ。」
桃華「ですが、その纏う魔力は何なんですの?」
桃華「悪魔としてそれなりに強力ではあるみたいですけれど、」
桃華「とても最強の悪魔の一角と呼ばれていたとは思えませんわ。」
菲菲「ずっと寝てたから、体が鈍っちゃったみたいダネ!」
桃華「あと、一人称ふぇいふぇいなのはどうしてですの?」
菲菲「地上では楊菲菲って名乗ってるヨ!!」
桃華「喋り方とか全体的に中国人っぽいのはどう言った理由がありますの?」
菲菲「中国じゃなくって香港ダヨー!」
桃華「一緒じゃありませんのっ!!」
菲菲「あまり知られてないことだけど、アモンの出身地は実は香港なんダヨー」
桃華「もう少し嘘っぽくないマシな理由はありませんのっ!?」
桃華「だいたい貴女10%チケットで引けるSRどころか、むしろハズレっぽい雰囲気が出てますのよっ!」
菲菲「ひ、ひどいヨー!そこまで言う事無いネ!ふぇいふぇいが何したヨー!」
639 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:38:57.71 ID:1VZRnrdlo [16/26]
サクライP「マンモン様。」
桃華「はっ!おほん、失礼しましたわ、少し取り乱してしまいました。」
桃華「なら、フェイフェイさんがアモンであると言う、何か証拠は見せて頂けますの?」
菲菲「それなら、ふぇいふぇいの能力を見せるヨー!」
桃華「アモンの能力と言えば、他の神々を喰らい同化したと言う」
桃華「”神喰い”ですの?」
”計り知れぬ者”を名乗った少女は首を振る。
菲菲「ふぇいふぇいと同化した神は、神とは呼べなくなって、堕天使って事になるネ!」
菲菲「だから能力名は”天使喰い”ダヨー!」
『天使喰い』
神や天使またはそれに順ずる者を喰らい、そのまま自身の力に変えてしまう『強欲』なる力。
菲菲「あっ、でもこの場には対象にできるのはマンモンちゃんだけダネ!」
桃華「ふざけないでくださ・・・・・・っ!?」
桃華(な、なんですのっ!今の悪寒は!)
目の前の、アモンを名乗る少女に変わった様子は無い。
表情が変わった訳でもない。纏う魔力が変わった訳でもない。
ただの言葉のやり取り、冗談交じりの言葉だけであるはずなのに、
何故、『強欲』の悪魔である自分が恐怖しているのだ。
彼女が”計り知れぬ者”だと言う根拠は何も無い。
『天使喰い』と言う能力を持っていると決まったわけではない。
なのに、どうして自分が食われてしまう未来を鮮明に想像できてしまったのだ。
640 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:39:46.95 ID:1VZRnrdlo [17/26]
菲菲「それじゃあ、さっそく」
サクライP「マンモン様っ!」
桃華「はっ!お、お待ちになって!」
サクライPの呼びかけで、我に返った『強欲』の悪魔は、慌てて少女を制止した。
菲菲「どうしたのカナ?」
それに少女が応じたのを見て、ほっと胸をなでおろす。
桃華(助かりましたわ、Pちゃま。)
サクライP(いいえ、この程度の事。守ったうちにも入りません。)
桃華「こほん、フェイフェイさん。わたくしを食べても美味しくありませんわよ。」
菲菲「そんな事ないヨ!きっと美味しいから、もっと自信持ってもいいと思うネ!」
桃華「そんな自信は持ちたくありませんわっ!!」
サクライP「・・・・・・・。」
桃華「Pちゃま、何ですの。その”話のわかる方”を見つけたような目は。」
サクライP「いえ、どうかお気になさらず。」
641 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:40:29.55 ID:1VZRnrdlo [18/26]
桃華「・・・・・・仕方ありませんわね。」
桃華「フェイフェイさん、わたくしは貴女をアモンであると信用しますわ。」
サクライP「よろしいのですか?」
桃華「・・・・・・先ほどの予感、私が殺されて食べられてしまう様な予感。」
桃華「あの予感はどうしようもなく本物である気がしますもの。」
菲菲「だから、ふぇいふぇいが”計り知れぬ者”だってずっと言ってるヨー!」
菲菲「それに殺すわけじゃないヨ!ふぇいふぇいが食べたモノはふぇいふぇいの中で息づくネ!」
菲菲「マンモンちゃんもふぇいふぇいの力として存在している事が出来たヨー。」
桃華「・・・・・・。」
その無邪気な言葉を聞いて、
やはりこの存在を目覚めさせたのは間違いだったのでは、と『強欲』の悪魔は後悔しそうになる。
桃華(らしくありませんわね。)
桃華(目覚めさせてしまったものは目覚めさせてしまったもの。)
桃華(引き返せないのなら、割り切って行動しなければなりませんわ。)
桃華(それに、わたくしはいずれ全てを手に入れる『強欲』なる悪魔。)
桃華(たとえ”計り知れぬ者”でも、必ず手中に収めて見せますわっ!)
菲菲「ところで、ふぇいふぇいを起こしたのは結局、何の用だったヨー?」
桃華「用があるといえばありますし、無いと言えば無いのですけれど、」
桃華「これからの時代に、貴女の力が必要になると、わたくしは考えたのですわ。」
桃華「”計り知れぬ者”アモン、どうかわたくし達に手を貸してはいただけませんか?」
彼女にしては、非常に珍しい、純粋な頼み事であった。
菲菲「・・・・・・。」
642 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:41:24.88 ID:1VZRnrdlo [19/26]
計り知れぬ魔神は、しばらく考えてから口を開いた。
菲菲「マンモンちゃんは、魔界出身の仲間だカラ、何かあった時は手伝ってもいいヨー。」
桃華「本当ですのっ!?」
菲菲「だけど、代わりにふぇいふぇいの手伝いもして欲しいナっ!」
桃華「フェイフェイさんの手伝いですの?」
菲菲「一つ目は、今の地上の事を教えて欲しいヨ!」
菲菲「ずっと寝てたから、ふぇいふぇいにはわからない事だらけネ!」
桃華「それはお安い御用ですわ。この世界の事、財閥の知る隅から隅までお伝えいたしますわよ♪」
と、言いつつ全てを教える気は無いのだが。
菲菲「二つ目は、昔の友達を探すのを手伝って欲しいヨ!」
桃華「・・・・・・昔の友達?」
流石にその要求は訝しむ。彼女にとって昔の友達と言うのは、何時の時代の友達だと言うのだろう。
菲菲「マンモンちゃんも知ってると思うヨ!」
菲菲「ふぇいふぇいの昔の友達。」
菲菲「それはルシフェルちゃんの事ダヨー!」
桃華「ルシフェル・・・・・・?」
643 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:41:56.25 ID:1VZRnrdlo [20/26]
ルシフェル、よく聞き覚えのある傲慢の悪魔の名前だ。
しかし、死神ユズに敗れたルシファーの方ではなく。
初代『強欲』の悪魔とも呼ばれるアモンの親友なのだから、
それは、初代『傲慢』の悪魔の方なのであろう。
桃華(初代ルシファーは全能なる神にニ度挑み、敗れてからは消息不明のはずですわ。)
桃華「初代『傲慢』の悪魔である彼女が生きていると言いますの?」
菲菲「生きているも何も、今地上に居るはずダヨ?」
桃華「なっ!?」
サクライP「なんと。」
寝耳に水の情報。後ろで黙って聞いていた、サクライPまでもが驚く。
菲菲「何処に居るかはわからないけど、ふぇいふぇいには何となくわかるヨー。」
彼女の感覚だけが情報源であるが、他ならぬ彼女が言うのであれば、信憑性は高い。
サクライP「おそらくは、いえ確実に『イルミナティ』でしょうね。」
桃華「妙な勢力だとは思ってましたけれど、随分な大物が裏に居たではありませんの。」
644 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:42:39.64 ID:1VZRnrdlo [21/26]
サクライP「如何致しましょう。」
サクライPは問う。今後の『イルミナティ』に対する接し方をだ。
桃華「・・・・・・できるだけ関わるのは控えるべきですわね。」
桃華「少なくとも、現在の財閥の計画を成し遂げ、新たな力を獲得するまでは・・・・・・ですのよ。」
菲菲「ちょっと待つヨー!」
菲菲「その、いるみなてぃにルシフェルちゃんが居るなら、関わって貰わないとふぇいふぇい困るヨー!」
計り知れぬ魔神は、今の会話で、だいたいの事は察したらしい。
桃華(わたくしとしては、この方が『イルミナティ』に接触するのも控えて欲しいのですけれど。)
桃華「フェイフェイさんの都合もわかりますけれど、」
桃華「『イルミナティ』はどちらかと言えば裏で暗躍されている組織ですから、」
桃華「こちらから接触してのルシフェルの捜索は、どちらにしても難しいと思いますわ。」
菲菲「うーん、困ったネー。」
桃華「彼女達が表に出てきたとき、何か情報を掴めたなら提供いたしますわ。」
桃華「わたくし達にはそこまでしか出来ませんけれど、それでもよろしくて?」
菲菲「そうダネ、じゃあふぇいふぇいの手伝いはそれでいいヨー!」
あっさりと彼女が譲歩して、
桃華「それでは、これからよろしくお願いいたしますわ。」
菲菲「こっちこそよろしくダヨー!」
『強欲』なる悪魔達は手を取り合ったのだった。
645 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:43:31.70 ID:1VZRnrdlo [22/26]
――
その後、父が次の仕事に向かうまでのわずかな時間、親子は語り合う。
桃華「まったく、わたくし達の野望には、何かと障害が多すぎますわ。」
桃華「目的が世界の全てでは当然かもしれませんわね。」
サクライP「今もなお、広がり続ける世界の全てを手に入れる。」
サクライP「人の手には、途方も無い夢の様にも思えます。」
サクライP「ですが、だからこそ私はそこまで手を伸ばしたい。」
桃華「ウフ♪珍しく語りますわね、Pちゃま。」
サクライP「・・・・・・近頃は、こうして貴女様と語らう時間すら取れず申し訳なく思います。」
桃華「Pちゃまが頑張ってることは、わかってますのよ?」
桃華「だからこう言った時間は時々でもいいのですわ♪」
桃華「この次の機会には、ゆっくりとお茶でも飲みながら、これからのお話でもしましょう?」
おしまい
646 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:44:19.44 ID:1VZRnrdlo [23/26]
楊菲菲/アモン
職業:悪魔、魔神
属性:計り知れぬ者
能力:『天使喰い』
かつては強大すぎる力を持っていた神々の王であった魔神。”計り知れぬ者”。
しかし親友のルシフェルの反乱を手伝ったために、魔界に追放される。
魔界に堕ちた際、力の大部分を失ったが、それでも当時の魔界最強の一角だったようだ。
そんな彼女が地上で寝ていた理由は不明。長く寝ていたことで、残った力もさらに大部分失ったらしい。
魔界でも屈指の優しい娘で、魔界出身者は全員仲間だと思ってる節さえある。
そんな娘なので、この混沌とした地上で魔界出身者が不自由なく生活できているかがこの頃の気がかり。
現在の目的は、来るべきの時のために力を取り戻しながら、かつての親友ルシフェルの捜索。
起こしてもらった事と、仮の拠点を提供して貰った恩があるので、櫻井桃華の要望があれば多少の協力はする。
とは言え、特に現在の『強欲』の悪魔に肩入れしている訳ではなく、そもそも魔界出身者にはだいたい協力的。
現在は財閥を拠点にしているが、かなり自由に行動しているようだ。
地上では楊菲菲を名乗る。全体的に中華風な理由は一身上の都合。
『天使喰い』
計り知れぬ者アモンの能力。後に『強欲』なる力と呼ばれる。
神々、天使、悪魔などを喰らい、その力を一切の劣化無くまるっとそのまま自分の力へと変える。
全盛期はこの力で、海王神、豊穣神、太陽神を吸収し、強大な力を得たとか。
”臆病な天使”を食べたと言う伝説もある。
今ではそれほど強大な力は飲み込めないが、下級の神程度ならむしゃむしゃ食べる。
神霊に対する特攻能力であるため、霊体が彼女に捕まると抵抗する術が無い。
肉体を持つ者に対しては、その肉体に憑依した霊魂や、霊的存在に由来する力、だけを取り込む事ができるが、
肉体本来の魂に対しては害を与えることができず、
霊体に対して発動した時より抵抗されやすいため、成功率が著しく下がる。
『計り知れぬ者/隠された者』
アモンは”計り知れぬ者/隠された者”と言う意味を持つ名前。
彼女は自然体に存在する能力を有する。強大な力を周囲に溶け込ませ隠す才能。
あまりに当然の様にそこに居るため、どれほど観察眼に優れた者でも、
あどけない仕種を見せる彼女の、その本来の実力を見極めるのは難しい。
647 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:45:30.08 ID:1VZRnrdlo [24/26]
◆方針
櫻井桃華 … 財閥は新しい力の獲得に向けて頑張る
楊菲菲 … ルシフェル探しつつも、自由行動
神様対策どうにかしておきたい
→アモンさんが神を取り込む力を持ってたらしい、コレだ
→神を取り込む・・・神を食べる・・・天使食べる・・・天使食い・・・
→フェイフェイダヨー!
と言うお話でした。
でもフェイフェイでシリアスな事する気はあまり無いヨー