609 名前: ◆llXLnL0MGk[saga] 投稿日:2013/08/10(土) 22:02:06.80 ID:K8eBLBnD0 [2/12]
??「何故なのですか? 何故わたくしだけが……」
とある大きな屋敷の一室で、少女が執事風の男に詰め寄る。
執事「それは危険だからでございます。旦那様も奥様も、星花お嬢様の事を思えばこそ……」
星花「危険なのはみな同じでしょう? それなのにわたくしだけ安全に護られているというのは、
納得いきませんわ。わたくしにも、戦うための力はありますのに……」
執事「ご自愛下さい、星花お嬢様。確かに貴女様は戦えます。しかし、だからといって必ずしも
戦う必要は無いのでございます。GDF、アイドルヒーロー同盟、ナチュルスター等……
既に戦っている者は大勢おります。お嬢様が危険を冒す必要なございません」
やがて星花は俯き、力なく呟く。
星花「……わかりましたわ」
執事「ご理解いただけてなによりでございます。では、お夕飯の準備が整いましたら、まだお呼びに伺います」
そう言って執事は部屋から出て行った。
星花「…………ごめんなさい、お父様、お母様」
執事が部屋から離れていくのを足音で確認した星花は、ケースからバイオリンを取り出した。
星花「星花は……悪い子になります」
星花がバイオリンを構え、演奏を始める。
すると、部屋の隅に鎮座してある大きな鉄の人形が、鈍い音を立てながら動き出した。
星花「……ストラディバリ、開演。……では、お願いいたしますね、ストラディバリ」
ストラディバリ『レディ』
ストラディバリと呼ばれた人形は握りこぶしを作り、壁に向けて叩き付けた。
轟音と共に壁は崩れ去り、大きな穴がぽっかりと開いている。
星花「ありがとうございます。では、ストラディバリ。わたくしを連れ出して下さいな」
ストラディバリ『レディ』
ストラディバリは星花をヒョイと抱き上げ、壁の穴から飛び降りた。
そして着地の寸前、ストラディバリは機械音と共に姿を変えた。
その姿は、さながら神話に登場するユニコーンのように見える。
星花「家出……ですわね。ドキドキしますわ……行きましょう、ストラディバリ」
ストラディバリ『レディ』
星花が手綱を握ると、ストラディバリは夕日が沈む方角に向けて走り出した。
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610 名前: ◆llXLnL0MGk[saga] 投稿日:2013/08/10(土) 22:03:13.70 ID:K8eBLBnD0
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夕暮れの街をカイと亜季、そしてホージローが歩いていた。
亜季「この世界は、異形な者に対して異様に寛容でありますな」
カイ「そうだね、隠してたホージローが見つかったときはどうなるかと思ったけど……」
通行人『あ、サメのロボット』
通行人『ほんとだ』
亜季「……で、終わりでしたなぁ」
『キンキン』
苦笑する亜季にホージローが答える。
サイボーグである亜季は、今は普通の人間と変わらない姿をしている。
カイ「まあ、隠さなくていいのは気が楽だよね。亜季のマイシスターも案外平気だったり?」
亜季「そうかもしれませんな。さて…………ッ!」
亜季が不意に足を止める。
カイ「……亜季?」
亜季「静かに。……殺意が」
カイ「!?」
二人の視線の先には、アンダーワールドの傭兵、アイがいた。
引き連れているのは、鋼鉄のシャコ、ハナ。
カイ「戦闘外殻!? 何なのあんた!」
アイ「私は傭兵さ。君を抹殺するよう依頼されていてね」
611 名前: ◆llXLnL0MGk[saga] 投稿日:2013/08/10(土) 22:04:27.28 ID:K8eBLBnD0
[4/12]
アイはニィッと口元を歪ませ、ハナに号令をかけた。
アイ「いこうか、ハナ。オリハルコン、セパレイション」
一瞬出遅れながらも、カイも同じくホージローに呼びかける。
カイ「こっちも、ホージロー! オリハルコン、セパレイション!」
亜季「続きます! SC-01、バトルターン!」
亜季も戦闘形態へと移行する。
アイ「アビスグラップル、ウェイクアップ」
カイ「アビスナイト、ウェイクアァップ! 先手必勝ぉ!」
カイが地面を蹴ってアイに殴りかかる。しかし、
アイ「おや」
カイの拳はいとも簡単にいなされてしまった。
次の瞬間、アイの膝がカイの腹に突き刺さる。
カイ「ぐふっ!?」
亜季「カイ!? マイシスター!」
マイシスターから亜季に投下されたのは、ハンドサイズのレールガン。
パシュン、パシュンという音と共に発射されたレールガンは、どちらもアイに容易く避けられる。
アイ「邪魔をしないでもらえるかい?」
亜季はレールガンを盾に、アイから投げつけられたナイフを防ぐ。
亜季「トモダチを傷つける輩を放ってはおけません! マイシスター!」
続いて大型のガトリングガンが二丁。
亜季「カイ、潜って下さい!」
カイ「う、うん!」
カイが地面に潜ると同時に、亜季はガトリングガンを乱射した。
612 名前: ◆llXLnL0MGk[saga] 投稿日:2013/08/10(土) 22:05:17.35 ID:K8eBLBnD0
[5/12]
アイ「……ふっ!」
ギャギャギャギャギャ、と耳をつんざくような音が辺りに響いた。
そして弾を撃ち切った亜季は、驚きの声を上げた。
亜季「ッ、馬鹿な!?」
目の前には、無傷で立つアイ。
そして、真っ二つに両断されて足元に転がる大量の弾丸だった。
亜季(あれだけの弾丸を……ナイフ二本で切り払ったというのでありますか!?)
アイ「……余計な体力は使いたくないんだがね」
じり、じり、とアイが詰め寄る。その背後から、
ザザザザザザザザザザザザザザ……ボンッ
カイ「シャーク・バイトォッッ!!」
潜ったままだったカイが、助走と共に飛び出してきた。
アイ「むっ……」
カイ(もらった! 向こうはこっちにたった今気付いた。対応するより早く、顎を閉じられ……)
ごしゃっ
次の瞬間、カイも亜季も目を疑った。
カイの目に映るのは、視界いっぱいに広がるコンクリート。
そして、亜季の目にはアイに組み伏せられ、地面に叩きつけられるカイの姿が映っていた。
カイ(そんな! あの速度で反応された!?)
亜季「っ、カイ!」
亜季はカイを助けるべく、ビームソードを構え翼を展開し突進する。
アイ「……ふっ」
しかしアイはビームソードを難なくかわし、逆に亜季の横腹に回し蹴りを叩き込んだ。
亜季「ぐぅっ!」
アイ「さて、邪魔が入ったが……これで依頼達成だね」
アイはカイに馬乗りになると、ナイフを構えた。
カイ「くっ……!」
亜季「か、カイっ!」
613 名前: ◆llXLnL0MGk[saga] 投稿日:2013/08/10(土) 22:06:30.00 ID:K8eBLBnD0 [6/12]
??「オーラロケットパンチですわ!」
??『レディ』
アイ「ぐぁっ……! な、何だ!?」
油断しきっていたアイの背に、鋼鉄の巨大な「腕」が直撃した。
カイ「えっ……?」
亜季「今のは……?」
アイ「この二人も知らない……何者だ、君は?」
アイは腕が飛んできた方向へ問いかける。
その先には、バイオリンを構えた少女と、腕を飛ばしたであろう鉄の人形が立っていた。
星花「わたくしは涼宮星花と申します。こちらはストラディバリ」
ストラディバリ『レディ』
星花の演奏にあわせ、ストラディバリが軽くお辞儀をする。
アイ「……それで、その星花さんが何の様かな。こちらにはこちらの事情があるんだがねぇ……!」
星花「こちらにもこちらの事情がございます。無碍に人命を奪おうとする貴女を、捨て置けません!」
アイの威嚇にも一切怯まず、星花は毅然と答える。
アイ「そうか。なら少し痛い目を見てもらおうか……」
614 名前: ◆llXLnL0MGk[saga] 投稿日:2013/08/10(土) 22:07:32.80 ID:K8eBLBnD0
[7/12]
アイがナイフを構えなおし、星花に飛び掛る。しかし、星花は物怖じすることなく演奏を始めた。
星花「オーラストリング!」
ストラディバリ『レディ』
ストラディバリがアイへ手のひらを向ける。と、
アイ「っ!? ……右腕が動かない……!? 何だこれは……!」
星花「オーラの糸で貴女を縛っています。もう一度!」
ストラディバリ『レディ』
いつの間にか戻ってきた右手からもオーラの糸を放ち、アイの左腕を封じる。
アイ「しまった……! 何故だ、今確かに右腕を縛る糸を切り裂いた筈……」
星花「お生憎様ですが、わたくしのオーラはそう簡単には切れません! ストラディバリ、オーラバレット!」
ストラディバリ『レディ』
ストラディバリの頭部に空いた二つの穴からエネルギー弾が連続して放たれる。
アイ「ぐぅぅぅぅっ!?」
カイ「……あっ、アームズチェンジ! ハンマーヘッドシャークアームズ!」
呆気に取られていたカイだったが、ふと我に返り、アイへの砲撃を開始した。
亜季「……っ、わ、私も!」
亜季も懐から取り出した拳銃で砲撃に加わる。
アイ「ぐっ……………ぅぁああああああああっ!!」
十字砲火を受けていたアイが、突然咆哮と共に体の自由を取り戻した。
星花「わたくしのオーラストリングを引きちぎった!?」
アイ「はぁっ……はぁっ……ふん、ここまで消耗するとはね。どうやら出直すしかないようだ」
アイは歯軋りをしながらそう言うと、カイに向き直る。
アイ「他の依頼もあるから、しばらく君たちの前には現れないよ。…………次は仕留める」
吐き捨てたアイとハナは突如現れた水柱の中に消えた。
星花「……ふう。ありがとう、ストラディバリ」
ストラディバリ『レディ』
片膝をついたストラディバリの頭を、星花は優しく撫でてやる。
カイ「ね、ねえ……助けてくれたのは感謝するけど……」
亜季「あなたは……何者ですか?」
星花「……?」
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615 名前: ◆llXLnL0MGk[saga] 投稿日:2013/08/10(土) 22:08:38.03 ID:K8eBLBnD0
[8/12]
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星花「海底都市に平行世界……まだまだ世界は不思議に満ちていますわね」
三人とホージロー、マイシスター、ストラディバリは、近くの公園に移動していた。
カイ「生命の力、オーラを操る能力と……」
亜季「バイオリンを通してオーラを注ぎ動かす人形……でありますか」
星花「はい。この力を皆様の為に役立てたいのです」
カイ「そのために家出を……?」
亜季「ずいぶんと思い切ったのですな……」
目の前のか細いお嬢様からは想像もつかないバイタリティ溢れる行動に、二人とも驚きを隠せない。
星花「はい。それで、ご相談なのですが……わたくしを、お二人に同行させていただけませんか?」
亜季「うーむ……私としては問題ありませんが……カイは?」
カイ「うん、あたしもいいと思うよ。それにほら」
『キキキキンキィン、キッキンキン』
ヴーン ヴーン
ストラディバリ『レディ』
616 名前: ◆llXLnL0MGk[saga] 投稿日:2013/08/10(土) 22:09:33.05 ID:K8eBLBnD0 [9/12]
カイが指差した先では、ホージローとマイシスターとストラディバリの三体が仲良く談笑(?)していた。
カイ「あっちはあっちでもう打ち解けたみたいだし」
星花「ふふ、そうですわね」
亜季「え、あれ打ち解けてるのですか? あれっ、分からない私が異常なんでありますか?」
カイ「それは置いといて。ともかく歓迎するよ、星花」
星花「ありがとうございます、カイさん、亜季さん。それで、このチームはなんというお名前ですの?」
カイ「名前?」
亜季「……そういえば考えた事も無かったでありますな」
星花「お名前を持ってヒーローチームとして活動した方が、色々面倒も無くなるのではないでしょうか」
カイ「そうだね。じゃあ考えようか」
星花の提案に乗り、三人はチーム名について考えた。
そして数十分後。
カイ「よし、これで決まりかな。あたしは同胞に反旗を翻した」
亜季「私は上官の命令に逆らった」
星花「わたくしはお家から家出をした」
亜季「そしてみな鋼の相棒を連れて戦う」
星花「故に、『鋼鉄の反逆者達』……」
カイ「名づけて、『フルメタル・トレイターズ』!!」
この日、新たなヒーローチームが産声を上げた。
続く
617 名前: ◆llXLnL0MGk[saga] 投稿日:2013/08/10(土) 22:10:46.15 ID:K8eBLBnD0
[10/12]
・涼宮星花
職業
家出少女
属性
お嬢様
能力
オーラ、及びオーラを用いてのストラディバリの操作
詳細説明
大財閥涼宮家の一人娘。
「あの日」以降人間の生命の力であるオーラを操る能力に目覚め、自分が戦うための力であるストラディバリを作らせた。
しかしいざ完成すると、本気にしていなかった両親から反対をくらい、ストラディバリ諸共部屋に閉じ込められる。
そしてある日ついに思い立ち、家出を決行。
道中助太刀したカイや亜季とチーム「フルメタル・トレイターズ」を結成する。
バイオリンが得意で穏やかながら、悪を許せず義憤に燃える弾丸お嬢様。
関連アイドル
カイ(仲間)
亜季(仲間)
関連設定
ストラディバリ
・ストラディバリ
星花の指示で涼宮家の総力を挙げて造られた戦闘人形。
星花がバイオリンを介してオーラを送り込む事で、簡単ながら自立行動が可能。
しかし細かい動作や臨機応変な行動となると、星花の指示が必要になる。
また、ユニコーンを模した高速移動形態への変形も可能。
オーラは自動回復するが、あまり短時間に連続使用すると星花がひどい疲労状態に陥ってしまう。
・オーラロケットパンチ
圧縮したオーラで前腕を発射する技。
・オーラストリング
オーラを練った糸で相手の動きを封じる。見た目以上に頑丈。
・オーラバレット
頭部から少量のオーラで出来た弾丸を連射する技。
・フルメタル・トレイターズ
詳細不明の新鋭ヒーローチーム。
カイ、ホージロー、亜季、マイシスター、星花、ストラディバリの六人(?)を正式メンバーとする。
メインとなる三人が反逆の経験者(裏切り、命令違反、家出)である事と、
鋼のボディを持つパートナーを連れている事から『鋼鉄の反逆者達』を英訳して名前がついた。
「敵が現れたら市民に被害が出る前にさっさと倒す」という信条で行動している。
拠点やバック組織などを持たない、完全フリーとして動いている。
・イベント追加情報
ヒーローチーム「フルメタル・ストレイターズ」が結成されました。
一人娘突然の家出に涼宮財閥は現在てんやわんや中のようです。