380 名前: ◆TAACIbOrYU[sage saga] 投稿日:2013/08/06(火) 23:57:53.76 ID:nHHg/cJFo
[2/6]
周子「問題は無さそうかなー」
――『憤怒の街』から少し離れた場所。
――塩見周子の視線の先に、
――『浄化の雨』を降らせている間、動けずにいるナチュルスターと、
――彼女たちを、迫り来るカースから護衛している能力者たちの姿があった。
――周子は、更に別の場所からそれを見守り、
――何かあったときにいつでも助太刀できるようスタンバイしながら、
――後進の奮戦を眺めていた。
周子(人数も増えたし、連携も上手くなってきてる)
周子(志乃さんが大本を潰してくれたおかげで、体力も保ちそうだから)
周子(心配の必要は無い、かな)
――協力し合い、善戦する様に頼もしさを感じ、
――自分の出る幕は無さそうだ、
――と、安心すると同時に、
――あまりにも危なげのないこの状況に、
周子「暇だなー……」
――若干の退屈を持て余していた。
381 名前: ◆TAACIbOrYU[sage saga] 投稿日:2013/08/06(火) 23:58:21.19 ID:nHHg/cJFo
[3/6]
――周子は、志乃にこの場を任されているが、
――事態がどんどん好転していき、
――もう、悪い方には転がりそうにないとなると、
――ただ、ぼーっと見ていてもつまらないし、
――いつまでもここに留まっている必要も無いだろう。
――と、考え始めていた。
――どこであろうと、有事にはすぐさま駆けつけられる。
――ならば、何もせずにいるよりは、
――彼らの手伝いをした方が有意義であろう。
――無論、裏方に徹しながら、だが。
382 名前: ◆TAACIbOrYU[sage saga] 投稿日:2013/08/06(火) 23:58:54.79 ID:nHHg/cJFo
[4/6]
周子「アレをやるか」
――周子の瞳が、
――閉じられた地獄の釜……、
――カースの湧き出ていた箇所から、
――ナチュルスター達のいる場所まで、
――ずらりと列を成し、
――行軍するカースの群れを捉える。
――現状、
――アレを全滅させば勝利条件達成、
――といったところだ。
――つまり、アレをいくらか片付ければ、
――あの場で戦う彼らの負担を、
――ある程度は軽減できるだろう。
383 名前: ◆TAACIbOrYU[sage saga] 投稿日:2013/08/06(火) 23:59:23.16 ID:nHHg/cJFo
[5/6]
周子「さて……」
――と、軽く伸びをして、
――それでは行くか、となった時に、
――ふと、
周子「そっか、一人か」
――そんなことに気付いた。
――私情を挟んだ戦いなど、だいぶ長いことしていなかった。
――歳を取るごとに、荒事などはだんだん面倒になってしまい、
――今や、自分から争いを仕掛けることなど殆ど無い。
――基本的には、誰かのサポートなり、助力なり、
――他の人について戦うことが多くなった。
――だから、なんとなく不思議な感覚だった。
――久しぶりに、
――誰を手伝うでもなく、
――自分から、一人で、自身の裁量で、
――この力を振るう。
――と、いうことが。
384 名前: ◆TAACIbOrYU[sage saga] 投稿日:2013/08/06(火) 23:59:57.58 ID:nHHg/cJFo
[6/6]
周子「相手はカース……」
――周子の瞳に、
――妖しい光が灯る。
周子「じゃあ」
周子「たまには……、いいよね?」
――ゾッとするほど、冷たい声だった。
――その唇は邪悪に歪み、
――周子の纏う空気が、
――どす黒いものに変質する。
――今日、
――周子の目に留まってしまったカースは、
――運が無い。
385 名前: ◆TAACIbOrYU[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 00:00:25.38 ID:RXk4i6gXo
[1/25]
――この辺一帯のカース達は、
――煩わしい『雨』を降らせている存在に気づき、
――その者の息の根を止めんと、
――群れを成し、行軍している。
――そんな中、
――いくらかのカースが、列を外れ、
――ふらふらどこかへと、
――まるで誘われるように彷徨いだした。
――その数はどんどん増えていき、
――皆、てんでバラバラの方向へ向かうようでいて、
――最終的に、とある一箇所へと集まっていった。
――ビルや、高速道路などの建築物に阻まれ、
――若干、周りから見えづらくなっている場所。
――そこに、
――周子が居た。
386 名前: ◆TAACIbOrYU[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 00:01:01.67 ID:RXk4i6gXo
[2/25]
――周子を取り囲むように、
――大量のカースがひしめいていた。
――皆一様に押し黙り、
――ゆらゆらと、その場でうつろに揺れている。
――周子の力によって、催眠のかかったような状態になり、
――正気を失っているのだ。
――それは、
――パァンっ!
――と、周子が大きく手を叩くと、
――一斉に取り戻され、
――各々、しばらくは現状に戸惑いを見せたものの、
――すぐに目の前の少女へと『憤怒』の罵声を浴びせかけ、
――圧倒的な物量で押し潰さんと襲いかかり、
――そして……。
周子「悪いけど……」
――ピタリと止まった。
387 名前: ◆TAACIbOrYU[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 00:01:30.98 ID:RXk4i6gXo
[3/25]
――カース達の動きを止めたのは、
――『恐怖』であった。
――本来、カースの抱き得る感情は、
――七つの大罪、それぞれに該当するどれか一つであり、
――彼らの場合は『憤怒』だ。
――それ以外の感情は一切持たず、
――ただひたすら『憤怒』の激情のままに行動する。
――そのカースが、今『恐怖』を抱いていた。
――――目の前の少女にだ。
周子「今日は」
――初めて訪れた感情に戸惑い、
――それが何なのかわからず、
――動ける筈なのに動けぬことに混乱し、
――わけもわからぬまま、
――より、『恐怖』の深みへとはまっていく。
388 名前: ◆TAACIbOrYU[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 00:02:03.38 ID:RXk4i6gXo
[4/25]
周子「愉しませてもらうよ」
――瞬間、
――目に見えぬ、
――何かおぞましいものが、
――この場を覆った。
――暗く、
――昏く、
――どこまでも深い、
――闇。
――ぽっかりと開いた、
――穴。
――地獄の底の、
――更に奥、
――何も見えぬ陰を、
――上から塗りつぶす程の、
――漆黒。
――望む望まぬに関わらず、
――覗きこんでしまった、
――深淵。
――その時気付く、
――深淵もまた、
――こちらを覗いていることに……。
389 名前: ◆TAACIbOrYU[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 00:02:32.57 ID:RXk4i6gXo
[5/25]
――その場全てのカースが震えだす。
――許容を超えた『恐怖』が、更に膨れ上がり、
――周りを伝播して、飽和状態になった。
――そして、たった一言、
カース「―――――コワイ」
――と、誰かが呟いたのをきっかけに、
カース「ウ……、ウワアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」
カース「イヤダアアアアアアアアアアアアアアアァアァアア!!!!!!!!!!」
カース「タスケテェェェェェエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!!」
カース「ヒィィィィイイイイイイィイィィィィイイイイィィイイ!!!!!!!」
――パニックが起こった。
390 名前: ◆TAACIbOrYU[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 00:03:02.37 ID:RXk4i6gXo
[6/25]
――皆が皆、
――我先にと逃げ惑う。
――周りを押しのけ、踏みつけ、転ばしながら、
――自分だけは、と、
――必死になってもがく。
――周りは建物も多いため、
――中には、物陰に隠れる者もあった。
――それらを眺めると、
――周子は、ニィ……、と口角を吊り上げる。
――背筋の凍るほど恐ろしい、
――妖艶な笑みであった。
周子「一匹も逃さないよ……♪」
391 名前: ◆TAACIbOrYU[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 00:03:29.88 ID:RXk4i6gXo
[7/25]
――周子は、
――左右、道なりに逃げ出したカースへ、
――両手を広げ、
――掌をそれぞれへと向ける。
――その瞬間、
――カースたちは、
――不可視の糸に絡まれたような錯覚を覚えた。
――それも、
――死人の髪の毛から作られた、
――怨念の宿る糸、
――触れることすら忌避される、
――身の毛もよだつような何か。
――覆っているのだ、
――逃げているのに、
――捕まっているのだ。
――あまりの絶望に、
――逃げることを止めた者も現れた。
392 名前: ◆TAACIbOrYU[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 00:03:56.54 ID:RXk4i6gXo
[8/25]
――今度は、
――開いた掌を、
――ぐっ、と握ると、
――逃げるカースが尽く、
――動きを止めた。
――否、
――止められた。
――絡まった糸が、
――とうとう、身体を締めあげ、
――呪いのように、
――ピクリとも動けなくなる。
――この時点で、
――人であれば、
――恐怖のあまり、既に死んでしまう者が現れる頃だが、
――不幸なことに、
――カースは、死なない。
――死ねないのだ。
393 名前: ◆TAACIbOrYU[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 00:04:24.54 ID:RXk4i6gXo
[9/25]
――そして、
――そのまま肘を内側に曲げる。
――すると、カースたちが動き出した、
――周子の方へ、
――ズルズルと、
――引きずられるように。
カース「イヤダァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」
カース「ハナシテエェェエエエエエエエェェェェエエエエエ!!!!!!!!!!!!!」
カース「コワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイ!!!!!!!!!!!!」
――自分の元へと寄ってくるカースを、
――嗜虐の篭った瞳で、
――周子が眺める。
――そこに、
――確たる怜悧の色が残っている、
――ということが、
――一層、恐ろしかった。
394 名前: ◆TAACIbOrYU[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 00:04:53.01 ID:RXk4i6gXo
[10/25]
――一方、
――隠れる事を選んだカースたちは、
――見つからぬよう、息を潜め、
――止まらぬ震えを何とか抑えつけながら、
――周りへと注意を払っていた。
――外の様子を伺いたかったが、
――身体を遮蔽物から出した途端、
――”アレ”に見つかってしまいそうで、
――あまりにも恐ろしく、
――ただ、小さく縮こまる他無かった。
395 名前: ◆TAACIbOrYU[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 00:05:20.66 ID:RXk4i6gXo
[11/25]
カース「ギィィィィイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!」
――そんな彼らの元へ、
カース「ヤメテエエエェェエエエエエエエエエェエエエエエエ!!!!!!!」
――仲間の悲鳴が、
カース「ア゙ア゙アア゙アア゙アア゙ァ゙ァァアア゙ア゙アァ゙アアアアア!!!!!!!」
――届いてきた、
カース「ゴメンナサイィイィィイイイイイィイィィィイイイイ!!!!!!!!!!」
――何か、
カース「ユ゙ル゙ジデェェェエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!!」
――よくわからないが、
カース「グル゙ジイ゙ィィイィイイイイイイィィイイィイイイイイ!!!!!!!!!!」
――おぞましい事が、
カース「イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ!!!!!!!!!!!!!」
――行われている、
カース「ダズゲデェエエエェエエエエエェェェェエェェエエエエエ!!!!!!!!!」
――らしい。
396 名前: ◆TAACIbOrYU[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 00:05:47.93 ID:RXk4i6gXo
[12/25]
――何が起きているのかは不明だが、
――見つかれば、
――捕まれば、
――自分も同じ目に遭う。
――嫌だ。
――ゴメンだ。
――誰か、助けて。
――ヒーローはいないのか。
――今なら神だって信じる。
――楽に死ねるなら、悪魔でもいい。
――怖くて堪らない。
――恐ろしくて仕方ない。
――救いは無いのか。
――誰か。
――誰か。
397 名前: ◆TAACIbOrYU[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 00:06:16.28 ID:RXk4i6gXo
[13/25]
――気がつけば、
――いつの間にか外は静かになっていた。
――一体どうなったのだろうか。
――周りの状況を確認することも、
――何もせず、この場に留まり続けることも、
――どちらも恐ろしく、
――気が変になってしまいそうで、
――迷った挙句、
――少しだけ覗いてみることにした。
――結果から言うと、
――”何も無くなっていた”。
――仲間のカースも、
――あの恐ろしい存在も、
――どこにも見当たらない。
――別の場所に行ったのだろうか。
――そんな希望的観測は、
「見ぃつけた……♪」
――死の抱擁によって、
――握りつぶされた。
398 名前: ◆TAACIbOrYU[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 00:06:46.78 ID:RXk4i6gXo
[14/25]
―――
――
―
周子「はぁぁ~……」
――泥にまみれ、
――恍惚の表情を浮かべながら、
――周子が、桃色の吐息を吐く。
――カースを、一体残らず狩り尽くし、
――意地悪く弄んだことで、悦に浸っている。
――指先に付着した泥を舐めとり、
――口に含むと、舌の上で転がし、
――艶かしく嚥下する。
――カースの身体は、核も泥も呪いの塊だ。
――ただの人間にとっては危険極まりないが、
――周子にとっては、極上の甘露であった。
399 名前: ◆TAACIbOrYU[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 00:07:14.00 ID:RXk4i6gXo
[15/25]
周子「あーあ、はしたない……」
――”甘露”にまみれた自分の姿を見て、
――少しはしゃぎ過ぎた、と、
――反省しながら、
――そう独りごちた。
――くるり、と、
――その場で華麗にターンを決めると、
――全身に付着した泥が、
――綺麗に全て剥がれ落ちる。
周子「よし」
400 名前: ◆TAACIbOrYU[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 00:07:41.17 ID:RXk4i6gXo
[16/25]
――周子は九尾の狐である。
――九尾の狐といえば、悪女と相場が決まっている。
――例に漏れず、彼女もそうだ。
――角が取れ、丸くなったとはいえ、
――魂の根っこの部分は、やはり”悪”なのだ。
――生まれ持っての”悪”。
――それも、”邪悪”と言っていいほどの、
――ドス黒く、おぞましいもの。
――他人を嬲り、痛めつけることに快楽を覚え、
――怯える者を追い詰め、恐怖に慄く様を嗤う。
――この街の惨状を見て、
――『悪くないが、まだまだ可愛らしいものだ』、
――『国が傾くわけでもあるまいし』、
――と、”まだ足りぬ”と判断する。
401 名前: ◆TAACIbOrYU[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 00:08:10.90 ID:RXk4i6gXo
[17/25]
――周子本人も、悪趣味だと感じている。
――だから、普段は隠している。
――そもそも、周子程にもなれば、
――自身の感情の制御など造作もない。
――趣味を我慢することなど、
――1年だろうと、10年だろうと、100年だろうと、
――容易に耐えられる。
――今回はたまたま、
――場所とタイミングと相手が良かった。
――周りに誰もおらず、
――倒すことに躊躇の無いカースを、
――一人で始末する。
――我慢する必要の無い状況だ。
――となれば当然、
――する。
――解禁。
402 名前: ◆TAACIbOrYU[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 00:08:41.55 ID:RXk4i6gXo
[18/25]
――思えば、
――志乃は、気を使ってくれたのだろうか。
――普段できないことをする場を設けてくれたのかもしれない。
――どうせ隠し事などしても仕方の無い相手だが、
――それでも、やはりこの姿は見られたくない。
――だから、あえて何も言わず、
――この場に一人残して、
――単独、行動に移った、
――……というのは考えすぎだろうか。
403 名前: ◆TAACIbOrYU[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 00:09:18.31 ID:RXk4i6gXo
[19/25]
周子「しっかし、こんな姿、人に見せられないなー……」
――志乃に見られれば、
――相変わらずいい趣味してるわね、
――と、皮肉を言われる程度で済むだろうが、
――もし、
――美玲に見られたら、
――『プロダクション』の皆に見られたら、
――と、考える。
――恐れを抱くだろうか。
――軽蔑するだろうか。
――もし、
――紗枝に見られたら……、
――どんな表情を浮かべるだろう。
――周子の胸に、
――チクリとした小さな痛みが去来する。
404 名前: ◆TAACIbOrYU[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 00:09:52.06 ID:RXk4i6gXo
[20/25]
――根が”悪”だとして、
――しかし、
――美玲を拾い育て、
――娘のように愛で。
――紗枝を気にかけ、
――想いを寄せる。
――その優しい気持ちも、
――本物だ。
――人を虐め、愉しむ、
――暗い悦びを知っている。
――同時に、
――人を愛し、慈しむ
――暖かい喜びも知っている。
――一概に、
――彼女を、悪人だの善人だのと、
――色眼鏡を掛けて見るべきではない。
405 名前: ◆TAACIbOrYU[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 00:10:19.96 ID:RXk4i6gXo
[21/25]
志乃「あら、少し片付けてくれたのね」
周子「うわっ、と」
――スッ、とその場から湧いて出たように、
――唐突に志乃が現れた。
――まったく、雲のように掴めない人だ、
――と、周子は改めて思う。
志乃「それにしても、相変わらずいい趣味してるわね」
周子「う……」
――想定していた皮肉の内容と、
――一言一句違わぬ台詞だ。
――読心術か何かではあるまいか、と邪推してしまう。
志乃「まったく……」
志乃「周子さん、怖い人だわ、貴女って本当に」
周子「……それはお互い様だと思うよ、志乃さん」
志乃「あら、酷いわね」
406 名前: ◆TAACIbOrYU[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 00:10:46.83 ID:RXk4i6gXo
[22/25]
――『憤怒の街』の少し外。
――恐ろしい程に強い力を持つ二人。
――揃って、ただ縁の下の力持ちに徹し、
――静かに佇みながら、成り行きを見守る。
――この二人なら、あるいは、
――本気で解決に乗り出せば、
――大きな進展もありえるかもしれない。
――ともすれば、
――あっさり全てが解決するかもしれない。
――しかし、
――それはしない。
――強い力を持つ者ほど、
――それを安易に行使することは無い。
――今日の周子だって、
――ただの戯れで、
――本気の10分の1も出していないのだ。
407 名前: ◆TAACIbOrYU[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 00:11:14.10 ID:RXk4i6gXo
[23/25]
志乃「さて、それじゃあ、あの子たちの所へ戻りましょうか」
周子「そだね」
――いつの時代も、
――問題事を解決するのは若い力だ。
――周子と志乃の二人は、
――若者たちに期待を託し、
――力強く支えながら、
――いつか、事が終わるのを、
――ただ、待つのみ。