138 名前: ◆zvY2y1UzWw[sage] 投稿日:2013/07/30(火) 21:45:15.74 ID:mqyPD9Cu0
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憤怒の街。そこから溢れてくるカースをGDFや様々な団体は防衛チームを派遣し、被害を最低限に抑えるべく戦っていた。
カースは基本的には道に沿って移動するがもちろん例外はいる。ネバーディスペアはそんなカースを討伐していた。
「とりゃあ!」
封鎖された線路を進んでいたカースの最後の一体の核を奈緒が破壊する。
「夏樹、次はどこだ?」
「ちょっと待て…本部からのデータ座標データを確認…行くぞ!」
夏樹の視界には複数のユニットからの映像と様々なデータが見える。
かなりの量のカースが防衛されてない場所を移動しているのだがそれもかなり数が減っているようだった。
夏樹が穴を生み出し、4人はそこに入っていく。
次の場所にいたカースは普通のカースに獣型数体。それとデカブツとしか言いようのない大型カースがいた。
139 名前: ◆zvY2y1UzWw[sage] 投稿日:2013/07/30(火) 21:45:58.51 ID:mqyPD9Cu0
[4/13]
「開幕ぅ~!W★きらりん☆ビーム、極太ばーん!!」
穴から出てすぐにきらりが広範囲にビームを放つ。
広範囲故に威力は低いが、弱いカースは消滅し、強いカースもひるんでしまう。
さらに奈緒が先陣を切って飛び込み、様々な生物の爪と牙を泥に投影。羽のようにそれを背中や手足に生やして乱舞するようにカースを切り裂く。
その乱舞から逃れたカースに李衣菜が電撃で攻撃。そして一瞬見えた核を逃さず夏樹がレーザーで貫き、きらりもビームを放った。動きの鈍い大型は後回しだ。
しかし、それすら逃れた素早い獣型カースが夏樹に飛び掛かった。
「なつきちっ!」
「っ!」
140 名前: ◆zvY2y1UzWw[sage] 投稿日:2013/07/30(火) 21:47:13.34 ID:mqyPD9Cu0
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押し倒されるが右腕が微妙に動くと服の袖を切り裂いて刃物が飛び出し、それでそのカースの頭部を切り裂いた。
核は頭部には無かったようだが、それにより一瞬拘束が緩んだ隙に脚部と同化している靴の裏からジェットのように炎が噴き出し、空中に逃れた。
そして夏樹の周囲を浮かぶユニットからレーザーが6方向に飛び、穴が大量に出現した。
6本のレーザーが計算されたように穴を経由して縦横無尽に弾幕のように飛び交い、空中で自由の利かない彼女を狙ってきた複数のカースを打ち抜く。
そしてその大量の穴を消すと、別の穴からバズーカを取り出し、真下の大型カースに打ち込むと当たり所が良かったのかそれはあっけなく爆散した。
それと同時に夏樹の真上に穴が出現し、反動を利用して空中と地面を繋げたその穴からまるで地下から飛び出したかのように現れ見事に着地した。
それはまるでちょっとした曲芸のようでもあった。
141 名前: ◆zvY2y1UzWw[sage] 投稿日:2013/07/30(火) 21:48:19.91 ID:mqyPD9Cu0
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「きらりんもみじぱわー☆!夏樹ちゃん、だいじょーぶー!?」
核が打ち抜かれなかったカースは奈緒と李衣菜の攻撃で消滅。近寄ってきたカースはきらりにビンタされて消滅した。
「問題ないよ。」
「なつきちー…ゴメンね?」
「そっちに逃がしちまった…!」
ここにいたカースは全滅したようで、李衣菜と奈緒も駆け寄ってくる。
「大丈夫だって…。ん、連絡だ。」
視界に映るデータにLPからの連絡が来たことを知らせるサインが表示された。
「……デカい波は収まったらしい。一時休憩だそうだ。」
「了解…さすがに指令入ってからずっと休みなしだったもんね…」
再び穴を生み出し、ネバーディスペアは隠れ家に戻って行った。
142 名前: ◆zvY2y1UzWw[sage] 投稿日:2013/07/30(火) 21:49:34.54 ID:mqyPD9Cu0
[7/13]
隠れ家にはLPや管理局の技師たちが待ち構えていた。
軽い食事の後、地下室で李衣菜の充電と冷却用液体の補充と血液代わりの帯電液のチェック、夏樹の四肢とユニットの手入れ、様々な事を済ませておく。
ウサミン星人の中でもあの研究所のメンバーはマッドサイエンティストの部類らしく、その技術はかなりウサミンの科学から離れている。
オカルトチックな蘇生液・帯電液・究極生命体や安全な機械の四肢等も作り上げてしまうほどには生への執念があったようだ。
そしてそのレシピや理論書・計画書・設計図は管理局で保管されている。それによって常にベストな状態を保てるというわけだ。
143 名前: ◆zvY2y1UzWw[sage] 投稿日:2013/07/30(火) 21:50:36.53 ID:mqyPD9Cu0
[8/13]
「しかし、また一枚盛大に駄目にしたなぁ…これは縫っても目立つよなぁ…」
袖がすっぱり切れている上着を持って奈緒が呟く。
「構造上仕方ないだろ…全く、何で腕に刃付けたんだか…」
右腕と両足の整備中の為、夏樹が車椅子に乗った状態でため息をつく。
「まあまあ…さっきのなつきちすごくロックだったよ?」
いつものどこかぎこちない笑顔で充電中の李衣菜が褒めているのか慰めなのかわからない発言をする。
曰く、表情筋が上手く動かないそうだ。たしかに声と表情があっていない時は結構ある。
「…はいはい。」
「あ、馬鹿にした!?」
「いつも通りだなぁ…」
そんな二人を奈緒が少しほほえましそうに見ていた。
144 名前: ◆zvY2y1UzWw[sage] 投稿日:2013/07/30(火) 21:52:53.21 ID:mqyPD9Cu0
[9/13]
そこに地下室の扉を開けてきらりが入ってきた。
「みんなー!リーダーちゃんからキャンディもらってきたよー!」
きらりが袋を持って皆に差し出す。
「お、サンキュ。コーラ味ある?」
「じゃああたしイチゴ。」
「はいは~い☆あ、あとねーリーダーちゃんが夏樹ちゃんに多めに渡してって!とーぶんとっとけだって!」
「…糖分か。」
六つの目を持つ夏樹は視界が広い。常に全体を見渡せる程に。
慣れているとはいえそれはやはり脳に少なからず負担はあるし、視界が広い故に戦闘中最も思考を巡らせているのは夏樹だ。
それにこの中で最も人に近いのも夏樹だ。疲れ知らずの他の3人とは違い一般人よりも遥かに疲れにくいとはいえ疲労する。
…LPはそんな彼女を気遣っているのだろう。
「…ありがたく頂いておくよ。…そういえば次の出撃時間とかは聞いてないのか?」
「あ!…きらりってばうっかりさーん☆えっとねーあと30分で全部のメンテナンスが終わるから~そこから調子見てさらに15分後に出撃だって!」
「私の充電もその頃には終わるよー」
「じゃああたし達は上に戻ってるよ。用事がないのにあまり長居するのもなんだしな。行こっかきらり。」
「わかった~!ねぇねぇ何しようっか?アニメ見るぅ?」
「一話ぐらいしか見れないんじゃ…」
145 名前: ◆zvY2y1UzWw[sage] 投稿日:2013/07/30(火) 21:55:53.35 ID:mqyPD9Cu0
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二人が地下室から出ていくのを確認してから李衣菜が呟いた。
「…無茶しちゃだめだよ?」
「なっ…なんで急にそんなこと…」
「だって無茶しそうな顔してたから。…なつきち、悔しいだろうなって思っただけ。」
「…」
街の悲惨さを知っているのに機械の体と言う理由で入れない悔しさ。それは確かにあった。
…それにカミカゼ…拓海が街に突入したのだ。彼女も頑張っているのに自分はここで休んでいていいのか。そう思ってしまったのだ。
「…カミカゼの技術が私達にもあればよかったかな…?…でもさ、行けない悔しさもわかるけど…なつきちが無茶してどうするの…死んだらどうするの?」
淡々と、『らしくない』様子で言葉を発していく。けれどどこか迫真としていて。
「…ゴメン。」
「あ、こっちこそゴメン!」
ハッとなって慌てて李衣菜も謝る。
146 名前: ◆zvY2y1UzWw[sage] 投稿日:2013/07/30(火) 21:57:41.65 ID:mqyPD9Cu0
[11/13]
「いいって。アタシ達にはアタシ達なりに、最善を尽くす。なんか憑き物が取れた感じだ。ハハハ、拓海や美世に知られたら笑われるかもな。」
「うん、ありがちだけど…やっと笑ったね」
「…本当にありがちだな。」
「でも笑えるでしょ。良い事だよ?…絶望して無いってことだから!『正義の味方』が辛気臭い顔してどうするの!」
やっぱりぎこちない笑顔で李衣菜が言う。
「…じゃあだりーも…って、おわっ!」
「なつきち!」
左手を伸ばそうとしてバランスを崩してしまう。車椅子から落ちたところを李衣菜が受け止めた。
「今は足と右手無いでしょ…素でやった?」
「…素だった。」
「もう…かっこ悪いよ?」
「あ、サンキュ。」
李衣菜が夏樹を持ち上げて車椅子に座らせる。
「取りあえず今くらい休もう?また戦うんだから。」
「そうだな。…拓海達を信じてこっちは帰る場所を守らないとな!」
ネバーディスペア…『絶望するなかれ』。哀れな境遇の少女たちは、自らの心にこの言葉を焼き付けて生きている。
最善を尽くし、一人でも多くの人にとっての『正義の味方』として生きるべく。
一人でも多くの人の心を絶望から守るべく。