4スレ目>>902~>>915


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

名前: ◆zvY2y1UzWw[sage] 投稿日:2013/07/26(金) 00:10:56.08 ID:Sxw2pyBN0 [2/18]
ナニカは街を歩いていた。ただひたすら適当に本能の赴くままに歩いていた。

加蓮と自分は(奈緒もいるけど)繋がってるから、加蓮の住んでいる場所ぐらいわかってもおかしくない…という謎理論で歩いていた。

…それに、ナニカは初めて街を歩くのだ。ちょっとくらい寄り道してもいいじゃないか。

「…あっ い、いらっしゃいませー!」

小さなビルの一階の店に入る。記憶を読み取るとここはアイス屋らしい。

数人の人が中でアイスを食べていたが、店員を含めてナニカが中に入ってきた瞬間を認識していなかった。

…ナニカが近づくまで気付かなかったのはきっとナニカが悪いのだろうけど、腹を立てずにはいられない。

「あれれ…きづかなかったのー?」

「申し訳ありません…ご、ご注文は?」

見た目は幼い子のはずなのに、どことなく威圧感を感じる。獣人の店員は思わず敬語になっていた。

「んとね、よくわかんないから…あまいの2つのでおすすめのにする!」

「は、はい…チョコチップとイチゴミルクでいいでしょうか?」

「それでいーよー」

店員が作っている間に生物で作ったワンピースに手を突っ込んで体内に収納してある奈緒の服から財布を取り出す。

傍から見ればポケットもついていないワンピースから財布が出てきたようにしか見えないが、能力者が多いこの時代では特に騒がれない。

問題なくアイスを購入すると、店から出て再び歩き出した。

「うーん、ひろいなぁ…加蓮お姉ちゃんも『じょしりょう』も見つかんない…」

ナニカは世間知らずだった。世界の大きさを誤認しているほどには。

ナニカは再び適当な路地裏に入る。ある程度奥深くまで入った時、左腕が黒く染まり、鋭い目玉が浮かび上がった。

そして鳥の形を作るとナニカはそれを引き剥がした。

ナニカの意思で引き剥がされたそれは、黒い赤い瞳の雀の姿になっていた。

体から一部を切り離し、データを投影したのだ。キメラは作る必要がないから雀のデータだけでいいだろう。

パタパタ飛んでいく雀に命令する。「加蓮お姉ちゃんを探して、できるなら家も探して」と。

次に猫、犬、カラス、鼠、と次々に生み出す。それらにも同じ命令を下した。

血はそんなに注いでいないから十数分位したら帰ってくるだろう。

切り離した部分の肉体を再生すると、路地裏を出て再び街を歩きだそうとした…が、不意に嫌な予感のような気配のようなものを感じた。

ぞわぞわする。気味が悪い。

思わず棒立ちになってしまう。

「邪魔だ!」

「うわぁ!」

そこに背後から誰かが走ってきて衝突してしまった。

持っていたアイスが手からワンピースに落ちる。

すぐさまワンピースから舌が伸びて回収する。味は伝わったがナニカは激怒した。

体からタコのような触手が飛び出し、衝突してきた男を捕獲。

そのままある程度の広さの場所まで引っ張った。

「!?テメェ何しやがる!」

ナニカの瞳はいつも以上に真っ赤に光っていた。

「バカ、バカ、ばかぁ!あたしの…イチゴミルクかえせぇ!」

「はぁ?!ガキが何言ってやがる!ちょっと能力者だからって大人に勝てると思ってんのか!ああ!?」

男の瞳も赤く光り、ナニカの触手を引きちぎる。彼は憤怒のカースドヒューマンだったのだ。

「テメェみたいな歳のガキが一番むかつくんだよぉ!テメェも殺してやる!」

右腕で殴り掛かってきた男にナニカが突っ込む。

ナニカには奈緒程力がない。…だけど技がある。

当たる前に屈むようにして同時に体全体を泥のように変形させ、転ばせつつ体を戻す。

(おじさんから血のにおいがする…?)

とりあえず今は気にせずに転ばせた男に一本抜いた髪の毛を硬化させて刺した。

針のように刺さった毛は、少しづつ男に侵入していく。

「あ、なにしや、ウグ!?」

男は突然の出来事に狼狽えるばかり。

その針を抜く事すら思いつかない程に混乱していた。

針が完全に肉体に埋まると、ナニカが呟く。

『人体改造…生物データ投影…transfur…変身しちゃえ』

男の体が変形する。不気味な音を立てて形が崩れていく。

「苦しい?ねぇ苦しい?やめてほしい?この程度でもうダメなの?」

真っ赤な瞳をぎらぎらさせてナニカが笑顔で問いかける。

「あたしにごめんなさいして?それからその『血』の持ち主だった人にもごめんなさいしてね?」

男は必死に頷く。あまりの痛みに失神しそうだ。

『浸食率3%…改造リセットするね』

ナニカがまた呟くと男の変形が止まり、痛みもなくなった。

それと同時に男が殴りかかってくる。ナニカを化け物と判断し、一瞬でも攻撃してその隙に逃げようとしたのだ。

「うそつき、ごめんなさいって言わないんだ。」

ナニカを中心に影のように泥が広がる。

そしてある程度広がると柱や柵のような物が形成されていく。

ナニカが翼を広げて離脱する。しかし男は柱に括り付けられた。

ある程度形が整うと、男を縛り付けていた触手が別の場所の馬の背に括り付ける。

…そう、それは紫と赤と黒の色で構成されたメリーゴーランドだった。

クルクル回りだす。BGMもなく、ただただ無音で動く。

「あ、あああああああああああああああああああああああああああああ!?」

男が悲鳴を上げる。それもそうだ、男が見ているのは景色ではなく悪夢なのだから。

ナニカ…いや、奈緒が経験してきた死と隣り合わせの拷問の記憶を焼き付けられているのだ。

死ぬことはないが精神的に重傷を負うのは間違いない。

柵がシャッターのように上がり完全に彼を閉じ込め、何故か防音の効果が表れる。

「…反省したら終わるからねー」

そう言ってナニカは街の方へ戻って行った。

路地裏から出た瞬間、走っていた少女に再び衝突してしまう。

「きゃ…」

「あ、ごめんなさいおねーさん…」

「大丈夫です!そんな事より眼鏡をかけていたのに前方不注意とは…!」

「それは仕方ないんじゃ…」

「眼鏡が無くても衝突する時はする物よ?」

「んー?」

眼鏡をかけた3人は、そこまで気にしてはいないようだ。

「マァーマァーメガネドーゾ!」

そのぶつかった少女の肩に乗っていた小さな透明の生命体が、ナニカに透明な眼鏡を差し出した。

「なぁにこれ?」

「メガネ!カケル!ステキ!」

「?」

手に置かれたそれを、なんとなくかけてみる。

「あっダメ!」

「―っ!?」

思考に何かが浸入してくる。塗りつぶされそうになる。あたしがあたしじゃなくなる…?

怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!


フラッシュバックするのは研究員の顔。

何度も自分を洗脳しようとしてきたあの顔。

自分がやっている事を間違っていないと信じている顔。


ナニカは記憶と感情から生まれた不安定な存在。

…だから自分か自分じゃなくなることを一番恐れる。

「あ…あ…」

「先輩!この子様子がおかしいです!」

「え?」

「…こんな小さい子にはマズイ物だったんじゃないかしら…?」

瞳が激しく揺れている。

3人は気づいていないが、黒いサンダルから黒が肌に浸食していた、

「いやああああああああああああああああああああ!」

少女が目をカッと見開くと同時に透明な眼鏡は砕け散り、黒が顔以外の体中に一気に浸食し、腕にも足にもワンピースにも無数の目玉が浮かび上がった。

そのまま黒い泥がナニカを守るように溢れ出し、先ほどの男に使った泥も戻ってきて、それらにも目玉が浮かび上がる。

「来るな、来るな、近寄るなああああああああああああああああ!!」

涙を流して絶叫しながら腕を肉食獣のそれに変える。

ナニカは上条春奈を精神操作能力持ちの異常者だと認定した。

「ま、まぁまぁ…」

春奈が一歩踏み出した瞬間、ナニカの顔が真っ二つに裂け、巨大な牙の生えた口へ変形する。

「クルナアアアアアアアアアアアアアアア!!」

『タチサレタチサレタチサレタチサレタチサレタチサレタチサレタチサレタチサレタチサレタチサレタチサレ…!』

それと同時に黒い泥からさまざまな口が浮かび上がり合唱のように立ち去れと繰り返す。

これがナニカによる精一杯の威嚇だった。

しかし、辺りが大騒ぎになりそうな事に気付くと、泥をある程度体内に収納して、あくまで威嚇を止めることなく飛び去って行った。

「…あの子、人間じゃなかったのね…って真尋ちゃん大丈夫?」

「めが、めが、めが…いっぱい…」

「眼鏡がいっぱい!?」

「ブレないわね…眼鏡拒否されてショックでも受けたかと思ったけど…」

「…いえ、きっとあの子は目がいっぱいあるから混乱してしまったのでしょう!」

「え?」

「世の中には一つ目の妖怪や!三つ目の宇宙人なんていっぱいいるでしょう!ならば私もそれぞれにフィットした眼鏡を提供したい!」

グッと手を握り締め、春奈は空を仰ぐ。

「世界、いえ宇宙…異世界含めた全世界!私たちは眼鏡の救世主として、目の数の問題を解決する必要があったのです!あの子はそれを教えてくれました!」

「そ、そうなの…」

「眼鏡の道は深く険しい!一筋縄では行きませんね!」

「め、め、めが…」

一時的狂気に襲われている真尋を眼鏡の力で正気に戻すと、春奈たちは再びどこかに向かって歩き出した。

「うわああああああああん!怖かったよおおおおお!」

『よしよし、怖かったねーでも大丈夫だよ。』

人が立ち入り禁止となっている廃ビルの屋上で、ナニカは泣いていた。

黒い泥にデータを投影した偽物の加蓮に抱き着き、自分の聞きたい言葉を言わせながら。

お人形遊びのような自己満足ではあったが…これ以外に上手く泣く方法が分からなかったのだ。

「んっ…ひぐっ…んん…」

『大丈夫、お姉ちゃんがいるから。一人にしないから。』

「加蓮お姉ちゃん…あたしもお姉ちゃんの事大好きだからね…!」

惨めだと分かっていてもギュッとその偽物をさらに強く抱きしめた。

「絶対に奈緒から守るからね!お姉ちゃんも一緒におかしくなったら嫌だもん!」

「世界をシアワセにしたらね、加蓮お姉ちゃんには特等席を用意するから!」

言いたい事を言うと、偽物の加蓮を回収する。

「…だから、あたしを見失わないで…」

丁度時間だったのか、解き放った生命体が帰ってきた。記憶情報を確認すると、ナニカは再び街に降りて歩き出した。

 

 


『拷問メリーゴーランド』
ナニカの必殺技的な何か。一種の結界ともいえる。
これまでの数々の死と隣り合わせの拷問や死の瞬間の記憶を痛みを伴って再生する。
ナニカの記憶や意識操作の断片ともいえる能力。
相手を精神的に崩壊させる恐れがある。
…ナニカは毎晩これに乗っている。