名前: ◆hCBYv06tno[saga] 投稿日:2013/07/25(木) 14:18:27.14 ID:VeTOYlWEO [2/21]
憤怒の街・内部
北条加蓮は、獣型カースを倒しながら進んで行った。
途中、沢山の死体を見てしまい、なんとも言えぬ感情と、もしかしたら自分もこの惨劇を繰り広げていたかもしれないという思いが溢れた。
「ごめんね。助けられなくって……」
そういいながら彼女は一人でその死体を丁寧に建物に一ヶ所に集め、並べる事にした。
中には苦しそうに目を見開く死体もいたが、加蓮は瞳を優しく閉じてあげたりした。せめて安らかに眠れるようにと。
お墓も作りたかったが、そこはこの街を沈静化させてから、ちゃんとした業者に頼むべきだと思ったからやめた。
死体を建物にいれ終え、彼女は再び先に進もうと歩き出した。
その時だった。
何か気配を感じ、加蓮は黒い泥の翼を作り、前へ思いっきり飛んだ!
加蓮がさっきまでいた場所に何かが落ちて来て、コンクリートが大きな亀裂を作り砕けていた。
「!?」
『不意打ちのつもりだったのに避けましたね。腹立たしい…!』
そこには右の拳を振るいおえ、立ち上がる一人の少女の姿があった。
憤怒の街の王……岡崎泰葉。
だが、加蓮は知らない。彼女は偽物。≪憤怒の人形≫その内の一体である事を。
そして、ここは櫻井財閥が記した4つの発生地点の一つである事を。
「……この街をこうしたのは貴女なの?」
『そうだと言ったらなんですか?貴女もヒーローみたいに偽善者ぶるんですか?』
「私にはそんな資格ないよ」
そういいながら、加蓮は右手に黒い泥でできた槍を作り出す。
「手遅れかもしれないけど、≪元同類≫として止めに来ただけ」
『……貴女も私と同じカースドヒューマンですか。なのに止める?笑わせないで!!』
怒りに満ちた表情で、加蓮を睨みながら、近くにあった壊れた車を片手で掴むと持ち上げ。
『呪いを振りまくカースドヒューマンが同じカースドヒューマンに対し説教とか………』
それを野球の投手の如く、大きく振りかぶり
『何様よ!?』
加蓮に目掛けて豪速球で投げた。
それに対し、加蓮は翼をはためかせ、上空へ飛びよけ、泰葉に急接近する。
加蓮は地上の獲物を捕らえにくる鷹のように、急降下しながら、斜め上から泰葉の左肩を狙い、右手の槍で貫こうとした。
それに対し、泰葉は貫こうとする槍を左手で掴むと、持っている加蓮ごと思いっきり引き寄せ、加蓮の顔を右の拳で殴ろうとする。
「甘いっ!」
『!?』
だが、加蓮は槍をすぐさま黒い泥へと戻し、それにより引っ張るものが急になくなったせいで泰葉のバランスを一瞬だけ崩した。
そこに加蓮は身体を一回転させて、泰葉の顎に向かい、蹴りを放とうとする。
『くっ……まだまだぁぁあ!!』
「しまっ……」
当たるギリギリのところで、泰葉は咄嗟に加蓮の足を掴み
「ぐっ………はっ!!」ゴホッ
加蓮を地面に叩きつけた。
叩きつけられた場所のコンクリートはひび割れ、加蓮の口から赤い花を咲かし、背中からバキボキッと嫌な音が響く。
念入りにと言わないばかり更に何度も叩きつける。
血は飛び散り、骨はむき出し、肉は砕け、コンクリートを赤に染めていき、加蓮は動かなくなった。
『手間取らせて……』
倒れた加蓮をキッと睨みながら、泰葉は呟く。
普通の人間だったら間違いなく死にいたるであろう攻撃を叩き込んだのだ。
例え、生きてたとしても、杏のような再生能力を持っていても、すぐには立ち上がれないだろう。
そう泰葉は確信していた。
『≪私≫は止まらない。仲間を…友達を捨ててまでやってるの……止まるわけにはいかない』
ザッザッとその場を去ろうとする。
『世界に≪私≫を証明させるために……≪私≫が人形じゃないってことを……≪私≫の怒りを!』
グチャッ……グジュ……メキャッ……
『!?』
泰葉の足が止まる。そして、急いで加蓮の方を向いた。
「今なんて言った?」
小さく静かな…だが強い意思をこめたような声が響く。
「友達を捨てた?」
砕けた筈の骨が、肉を突き破り飛び出た骨が、裂けた肉が、痛んだ肉が、不気味な音を立てながら元の姿に戻って行く。
「人形じゃない?世界に証明する?」
先ほど動かなかった肉体ではなく、最初の時のような姿で立ち上がり、先ほどのでボロボロになった服を着ている加蓮がいた。
いや………
「ふざけないで!!妬ましい!!」
先ほどと違い、露出してある肌には紫の蛇のような模様がひしめいていた。
それはまるで……エンヴィーだった時のように。
加蓮の足元には黒い泥が影のように溢れていき、広がっていく。
『……妬ましい?ふざけるな?何がですか?私は…』
「貴女の友達は貴女を人形だと思ってたの!?」
『!?』
加蓮の言葉に泰葉の顔が一瞬、引きつる。
「友達がいるのに、それを捨ててまで人形じゃないと証明する?恵まれてカースドヒューマンでも幸せを掴み取ってるのに、その幸せを捨てる?それで怒りを世界にぶつけて呪いを振りまいて、自分を証明する?」
「私にとって貴女は羨ましいほど幸せなのに……それを捨てる?妬ましいに決まってる!」
≪嫉妬≫の感情が高まり、再びエンヴィーにもなってもおかしくない状況。
このまま再びエンヴィーになるのか?
「だから止める!貴女の為にも!その友達の為にも!!そして、私みたいに罪を償って生きて!」
だが、加蓮は≪嫉妬≫に飲まれて、再びカースドヒューマンになってるようではなかった。
一度浄化された影響なのか?奈緒の一部になってるからなのか?はたまた≪ナニカ≫の影響なのか?それはわからない。
加蓮の言葉に、泰葉の頭の中で仲間達と暮らした思い出が蘇る。
賑やかで、お互い深く干渉しなくっても信頼しあっていて、退屈はしなかった。唯一、彼女が怒りを収め笑いあった楽しい日々。
それがまるで、鎖のように絡みつく感じがする。
『う……うるさいっ!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!!!!』
それを振り払うかのように、叫び声をあげる。
『もう一回黙ってください!!』
再び加蓮を攻撃する為に、彼女は走りだした。
「もう、負けない」
そう加蓮が言った瞬間、影のように広がっていた泥が一斉に無数の大蛇となり、泰葉を襲う。
その精密性は普段の時やエンヴィーの時と比べて確実に上がっていた。
それに対し、泰葉は襲いかかる蛇の頭を砕き、蛇の頭を引きちぎり、武器にしてと、大立ち回りを繰り広げていた。
だが、倒しても倒してもそれは数を減らす事なく次々と現れてくる。
そして、その攻防は長くは続かなかった。
「隙あり!」
『なっ!?』
泰葉が大蛇達の相手をしてる好きに、加蓮は接近していた。
加蓮は、右手に槍を作り出し、大蛇と大蛇の合間からそれを泰葉の右足に突き刺した。
それにより、バランスを崩した泰葉を取り押さえるように大蛇が絡みついた。
『くっ……』
「私の勝ちだね」
黒い大蛇によりグルグル巻きにされ身動きがとれなくなってる泰葉に向かい、そう言った。
引きちぎろうとしても、それはすぐに再生し、更に身動きをとれなくさせる。
『……さっきの言葉。私じゃなく≪私≫にいってください』
「えっ?それはどういうk…」
加蓮はそこで言葉が止まった。
何故なら、泰葉の身体がだんだん黒い泥になり溶けているのだから。
『どうやら失敗したから、私は用済みみたいね……腹立たしい』
身体が溶けていく事に焦る様子もなく、忌々し気に呟いた。
『忠告しといてあげる。本物の≪私≫を止めたかったら、≪私≫を誑かしてる奴を止める事ね』
「ちょっと待って!?本物は別にいるの?誑かしてる奴って!?」
だが、加蓮の質問に答えることなく、泰葉……いや、≪憤怒の人形≫は泥となり消え、核だけが残り、自然に割れた。
どうやら、事態は自分が思ってるより深刻らしい。
それに彼女の話を信じるなら、本物の彼女を誑かしてる黒幕がいるという事だ。
だとしたら許せない。
そう心に誓い、その場に座り込んだ。
久しぶりに、力を使いこなしたから…いや、エンヴィーの時以上に使いこなしたせいと血を大量に失ったせいで、しばらくは動けそうにない。
肌をひしめいていた紫の蛇みたいな模様も消え、加蓮は休憩する事にした。
泰葉を止める為に、黒幕をぶん殴る為に。
終わり
・エンヴィーモード
加蓮が瀕死の状態で、嫉妬の感情が上がった時に発動する。
発動した時は、肌に紫の蛇のような模様がひしめいている。
エンヴィーだった頃の加蓮の姿になり、黒い泥の精密操作も普段の時より上昇する。
肉体の再生速度も普段より速くなり、身体能力も急激に上がる。
ただし、解除した後は急激な疲れに襲われしばらくは動けなくなる。
もちろんカースドヒューマンではない為カースも産みだせない。
・ブラック・ヒュドラ
加蓮がエンヴィーモードの時、発動した技。
加蓮の足元に黒い泥を影のように溢れさせて広げる事により発動する。
その泥から大蛇を無数に作り出し、相手を襲う。倒しても倒してもヒュドラの首のように次々と現れる。
その為、それを解除させる為には加蓮を倒すしかない。
・イベント情報追加
憤怒の人形一体撃破しました