名前: ◆UCaKi7reYU[saga] 投稿日:2013/07/24(水) 16:20:20.75 ID:2+Xxjuk50 [2/12]
「よかった…」
憤怒の街の小さなビル、その屋上から下を見ていた愛梨は安堵の息を吐いた。
その視線の先には、生き残りを乗せた装甲車が相葉夕美と安倍菜々、そしてカミカゼの三人によって守られていた所だった。
人知れず街中のカースを撃破し続けていた愛梨だったが、その途中で街を疾走する装甲車を発見。
その進路を邪魔しようとしているカースを倒して、こっそり街の外側まで密かについて行った所で菜々と夕美が来たのであった。
「夕美ちゃん、あんな風に笑うようになったんだ」
切迫した状況にもかかわらず、それでも笑い合ったアイドル達を見つめる。
「…頑張ってね」
そうして、愛梨がその場を立ち去ろうとした時、ふっと視界の端に見覚えのある姿が見えた。
「あれ……みくちゃん…?」
―――同時刻。
「だあああもうしっつこいにゃ!!」
「ニゲヤガッテエエエエエ!!」
「ウラギリモノガアアアア!!」
小さな通りを疾走するいくつかの影。
その先頭を走るのは、先刻憤怒の街に突入したみく。
そして、その後ろには何体もの狼型カースの群れが迫っていた。
「のあチャンとも離れちゃうし電話は使えないしってかここどこにゃ!?」
―――突入してしばらくは何事も問題なく突き進んでいた二名だが、途中で大量に固まっているカースに遭遇してしまった。
―――しかも間が悪い事に上空から憤怒の翼竜によるカース弾と、来た道からもカースの一団が現れたために逃げることも叶わなかった。
―――仕方なく突破を試みたのだが、気づいたときにはのあの姿はなくみく一人が抜け出していたのだ。
「オオオオオオオオオ!!」
「ニゲンジャネエエエエ!!」
「しかも増えるにゃあああ!!」
とにかく走る走る、しかし追いかける狼を振り切ることは出来ないばかりか騒ぎに呼び寄せられて近くのカースが集まってきていた。
「オラアアアア!!」
「うっさいにゃ!」
真横から飛び出してきた狼をカギ爪で思いっきり叩き落す。
だが、それで一瞬止まってしまったみくに対し背後から数匹飛びかかるが直感で避けてみせた。
「……なぁんか最近、ロクな目にあってない気がするにゃあ」
周りを見れば狼、狼、狼、時々蜥蜴で完全に四方を塞がれた状況であった。
「はぁ……さっさと終わらせてやるにゃ!」
その言葉が終わるか終わらないかの内に、数匹の狼が牙を剥き飛びかかってくる。
それを避け、叩き落とし、切り裂き、時には蹴り飛ばし目まぐるしく動き続ける。
そうしながら少しづつ包囲の外側に動き、脱出も図る。
「こっ……の程度!!なんっともないにゃ!!」
時折爪や牙が肌をかするが、それ以上に倒す。
核に当たらなくても足を切り落とし首を切り落とし胴を切り落とし、とにかく一度に来る攻撃を減らす。
更に横から尻尾を振り回した蜥蜴が襲いかかるが、逆に切断してやる。
―――ゴガアアアアアアァァァァ………
「ちょ!?今こっちにくんにゃ!?」
徐々に徐々に数を減らしようやく包囲を破れると思った矢先、上空から翼竜がカース弾を吐き出した。
―――目標は、どうやらみく。
慌ててその場を離れ、カース弾は狼を数匹巻き込み着弾するがみくは壁際に追い込まれてしまった。
「……ちょっとまずいかにゃあ?」
壁際に追い込まれた事で、これまで通りの縦横無尽に動き回るみく本来の動きが制限される。
それまでずっと、全方位に動き回れるように立ち回っていたから均衡を保つことが出来たわけで、それが出来なくなった以上は多少くらうのは仕方ないとすぐに割り切る。
そして、ならばと逆に自分から飛び込もうと思い、一歩踏み出す。
―――同時に、突如吹き荒れた風が半数以上を吹き飛ばした。
「これで!」
続いて、凝縮された風の槍が次々と残りのカースを貫き殲滅していく。
「…最後!」
いつの間にか、見慣れた顔を持った人影が現れたと思った時には最後に残った数体のカースが真空の風に切り刻まれていた。
「……え…愛梨チャン?」
「…どうしてここにいるの?」
それは、みくの目的の人物の一人、愛梨であった
「なーんにも言わないで出てった愛梨チャン達には言われたくないにゃ」
「う……」
助けに来たまではいいが、若干言葉につまる愛梨。
………実際、何も言わずに来たのだから仕方ない。
「でも、なんでここって……あ、まさか」
「里美チャンに問い詰めたにゃ。あんな書置きだけ残していったら気にするなってほうが無理だにゃ」
「やっぱり里美ちゃんかぁ…」
日菜子と愛梨がここにいることは、本人たち以外には『別件』について動いている榊原里美しか知らない。
「……そういえば、みくちゃんだけ?」
「……のあチャンも来てるけど……ちょっとドジってはぐれたにゃ…携帯も繋がらないしどこに行ったかさっぱりにゃ」
「この街だと機械は使えなくなるからね………あれ?」
と、ここで一つの事実に気がつく。
「のあさん大丈夫なの?この街だと機械はダメになるんじゃ…」
みくと一緒に来たという未だ謎の女性、のあ。
そののあの戦い方と言えば、様々な火器や機械仕掛けの装備を召喚して戦うことではなかったか。
「にゃ?別になんともなさそうだったけどにゃ」
「うーん?……ここで考えても仕方ないね、なら一緒にさがそうよ」
「にゃ!……ところで日菜子チャンは一緒じゃないのかにゃ?」
「あー…うん、今は別々で動いてるんだ」
「まぁだろうと思ったにゃ。パパッと見つけてさっさと終わらせようにゃあ……なんか知らないけど、この街には色々ヤバい奴らがたくさん居る気がするにゃ」
顔に渋面を作りながらみくは答える。
実際、逃げ回っている途中でやたらめったら暴れている女の子や、次々と湧いていた蛇の群れ等を目撃しているため少しだけ来たことを後悔していた。
「うん……とりあえず、はぐれた場所まで行ってみようよ」
「そうするのが一番かにゃあ」
そうして二人は、みくがのあと別れた場所まで戻る事にしたのだった。
―――同じ頃。
「……………」
街中の大通りに面しているビル、その中の一つの屋上にのあはいた。
みくと別れた後、ある程度逃げた所で逃走を諦めてカースを一度全滅させたはいいが連絡がつかない。
少しの間探し回っても見つかる気配は無く、ならばいっそと比較的街を見渡せるビルを登ってきたところであった。
《Weapon:対魔力障壁弾併用アンチマテリアルライフル[亡牙]》
そして、まともに目で探すわけにもいかないので亡牙を召喚し追加装備の狙撃用スコープとついでに同じく長距離狙撃用のロングバレルを装着。
みくと別れた地点を重点的に探していたのだが、なかなか見つからない。
「………きたわね」
一度スコープから目を離し、物陰に身を隠すと頭上を憤怒の翼竜が通り過ぎる。
「……………」
通り過ぎた翼竜を目で追いながら、のあは思案する。
突入してからずっと、あの翼竜はこの街の上空を飛び回りカース弾を吐き出しては人間を襲っているらしかった。
だが、何名かのヒーロー達が突入しているにもかかわらず翼竜はほぼ無傷。
今出している亡牙ならば、あの翼竜に有効打を打てるはず。
しかし、現状それはあの強大な存在と一対一の戦いになるわけで。
「……やめておきましょう」
再び物陰からでて、こんどはさらに広範囲をスコープで探す。
―――頭の片隅には、かの翼竜を落とす算段を立てながら。
―――そして、この時のあが真下を見ていれば気づいたであろう。
―――混沌を宿した少女が、地下鉄の駅構内に下っていく姿を。
続く?
・「愛梨の能力補足・1」
→だいたいは風を操る能力で、風の槍を作ったり真空の刃を作ったり竜巻も作れたりする。
さらにいえば気流や副次的なものとして冷気も操作できるが、最大の特徴は「風との同化」。
テレポートと同じような感覚で移動でき、煙が風に吹かれたように消えては現れる。
さらに物理攻撃無効という一見チートじみたものだが、完全に消える前ならば魔法や魔術など魔力による攻撃で捉えることは可能。
イベント情報
1.愛梨とみくが合流しました!
2.スナイパーのあさんが出現しました、屋外ならば強力な援護射撃が期待できます。
3.日菜子がまた地下に潜ったようです、目的は蛇龍の出現を止める事だと思われます。