4スレ目>>626~>>634


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名前: ◆zvY2y1UzWw[sage] 投稿日:2013/07/23(火) 00:14:26.29 ID:wjGsSIs60 [2/20]
きらりと奈緒は仲良く一緒に買い物をしていた。

いつも通りの食料を買って、買い物袋を引っ提げて歩く。

スーパーからの帰り道、奇妙なマスコットキャラ(?)がいた。

「きゃーかわいいー!」

「ハンテーン!」

「オラ!邪魔だキモキャラ!」

「ハ、ハン?!」

…なぜか近寄って行った少女が急にそのマスコットを罵っていたのだが。

「うっきゃー!かわいー☆奈緒ちゃん!写真!一緒に写真とろー!」

「ええ!?ああいうのはちっちゃい子がするもんだろ!?」

「むぇー奈緒ちゃんのケチー」

ちょっと会話しているうちに、浴衣の少女と何か話していたのも終わったらしい。テッテケテーと去って行っていた。

「まってまってー!きらりと一緒に写真とってー!」

「冷凍食品あるんだぞ!?溶けるから!溶けるから!」

夏樹がいれば最悪穴経由で李衣菜に渡して冷凍庫に入れてもらうのだが生憎2人しかいない。

しかもきらりが冷凍食品の方の袋を持っているのでどっち道追いかけなくてはならなかった。

「はんてーん!」

「うっきゃー!かわいいー!」

「てーん!?」

いきなり見たことないレベルの大きさの女が子供のような奇声を上げながら近寄ってきて結構のんきしてたハンテーンはビビったが、他の少女たちと同じように針を刺した。

「?なんかチクッってしたねー☆」

「は、はーん…」

きらりには精神プロテクトがついている。生半可な精神系攻撃は通用しない。

…しかし、物事の本質を見ているきらりが悪と判定していない辺り、やはり子悪党レベルなのだろうか。

ハンテーンは困惑していた。

またか。また通じない相手か。抱き着いてくるのはいいが、少し苦しい。

ジタバタしても短い手足では意味をなさない。

…どうしようかと思考していると、おそらくこの女を追いかけてきたのであろう少女が目に入った。

「きらりー!そいつ迷惑してるだろ!?やめr…!?」

「はんてーん!」

やけくそだ。その少女に耐性が無いとも言い切れないが、知り合いが攻撃されたら目を奪われるだろう。…多分。

少女に毛針が飛んでいくが、少女から溢れだした黒いなにかがそれを受け止めた。

「はんてーん!?」

もういやだ。通じない相手なら逃げるしかない。

ハンテーンは緩んだ女の腕から逃れると、走り出そうとした。…だが少しおかしなことが起こった。

「…う!?」

受け止めたものの、体の一部であるそれで受け止めてしまった奈緒は目を白黒させて少し呻くと気絶し倒れた。

きらりは逃げ出そうとしたハンテーンに問いかけた。

「…君、悪い子なの?『奈緒ちゃんはどこ?』どこに行っちゃったの!?」

「は、はーん?」

奈緒ちゃんというのは目の前の奴じゃないのか?

とにかく逃げろ。本能が告げている。

「はーんてん!」

俺しらねー!何もしてねー!そういう気持ちを込めてハンテーンは逃げ出した。

「まってー!奈緒ちゃんを返して!」

きらりもそれを追いかけて行ってしまった。

…むくりと『奈緒』が起き上る。

しかしその起き上り方は不自然で、人通りの全くないこの道でなかったら奇異を見る目で見られていただろう。

…いや、人が通っても彼女の存在に気付いている人はほとんどいなかった。

「…きらりお姉ちゃん?」

歩きだしたが、ショーウィンドウに映る自分に気付くと路地裏に入って行った。

誰の目にもつかないような奥深くに入ると、目玉を生やした自分の手を腹の中に突っ込んだ。

手も腹も黒くドロドロとしたものになっていて、それに伴う様に体中が黒くドロドロとしたものになっていく。

手を引っこ抜くと、体も元に戻った。

「…奈緒も『お兄ちゃん達』、『お姉ちゃんたち』も気を失ってる…キシシ、ラッキー♪」

その『奈緒』はナニカになっていたのだ。

ナニカは自分が奈緒を乗っ取った訳ではないと気付いている。あの怪人の技の効果が変な方向に作用した結果なのだろう。

ずっとというわけではなさそうだ。本当に幸運なことに、いつも表にいる奈緒と裏にいる自分が反転して、今の状態なのだろう。

計画を実行するにしても今の不安定さでは無理だろう。

だったら今を満喫しよう。

「…太陽…本物だぁ…」

空をみてナニカは記憶の中や映像を経由してしか見たことのない太陽の下に自分がいると改めて認識する。

記憶の夢の中の景色は檻や手術室や変な部屋ばかりだったし、意識の浮上は夜だけ。

…だから改めてナニカは奈緒に嫉妬する。

「…奈緒の姿はイヤ…」

ナニカは奈緒より能力の使い方を知っている。まずは虎の物になっている左手から。

ギプスを外すと、背中から黒い腕が伸びて左手を掴む。

そして虎の手が黒い泥になると、別の生物の左手のデータを投影する。

グチャグチャ、バキバキと音がするが、ナニカは全く気にしていない。

暫くすると左手はしっかりと人の手になっていた。

「でも…大きさが違うや。」

左手は幼い頃の奈緒の左手になっていた。もちろん右手とは大きさが違う。

黒い腕を今度は両手へ動かす。人のデータは昔の奈緒と今の奈緒と加蓮の物だけ。だから大きさがそろう手を作った。

「キシシ、加蓮お姉ちゃんの手ー!」

奈緒の両腕に加蓮の両手がついている。爪は整えられていて、肌の色も白い。ナニカはグーパーと手を動かすと謎の充実感を得ていた。

「…でも全部加蓮お姉ちゃんというわけにはいかないしなぁ…」

仕方なく、体をいつもの昔の奈緒の姿に変える。

…手と体のバランスが悪くなってさすがに気味が悪いので、手も戻した。

分離ではないので、奈緒の来ていた服がダボダボになって邪魔だ。

何もかも脱ぐと、まとめて丸めて体内に収納した。

異物感はあるけど置いていくわけにもいかない。

心が奈緒に戻るときに服を吐き出すようにして、異物感は耐えるしかない。

急いで黒い泥で膝下までの長さのワンピースとサンダルを作ると、路地裏を飛び出した。

加蓮の住んでいる場所はパソコンでもわからなかったし、ただでさえ貴重な夢の中でそんな事を聞いて時間を浪費するのもイヤだ。

…奈緒の記憶を覗いても、「じょしりょう」という所に一人で住んでいる事しかわからなかった。位置は分からなかった。奈緒は使えない。

今がチャンスなのだ。「じょしりょう」という場所を探すチャンスなのだ。

加蓮に会いたいけれど、夢の中の事は全部起きている間は忘れているから仕方ない。

きっと会ってもわからない。…本当に仕方ない。

小さな黒ずくめの少女は、「じょしりょう」を探しに街を彷徨い始めた。