4スレ目>>55~>>59


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55 名前: ◆cAx53OjAIrfz[saga sage] 投稿日:2013/07/12(金) 01:50:03.32 ID:9UNM1y4B0 [3/9]
П「……近いな」

地価表の上下乱高下は、世間一般の大多数の人間には関係ない話だが。
だがこの男、ひいては女子寮のオーナーたる、この男には死活問題ですらあるのだ。

茄子「これは……結構、マズイんじゃあないんですかね?」

П「だよなぁ……」

先ず隣の町がカースに占領され、アナーキズムの街と化した。
そして街の地下からは多数の下水道が張り巡らされている、勿論いくつかはコチラに流れてきているだろう。

下水処理場に流れ付けば、纏まって人間に襲いかかり兼ねないし、何より水に溶けているなら環境問題が叫ばれる現代社会。
間違いなく周囲の街の人口流出、ひいては地価の低下、更には安定した生活からはまた一歩離れ行くのだ。

П「ギリギリギリギリギリ」

新聞を見れば、悪魔が空を天使とランデブー飛行。
改造人間4人大脱走、死神悪魔狩り継続中。
GDF総司令官辞任、隣町の新型爆弾の責任とり。
親潮に流され塗れすけ少女、土左衛門ごっこが今年の流行か……

П「忌々しい世間を騒がせ、地価を落とし続ける奴らめ……」

茄子「結局、あの空を飛んでた櫻井財閥の御令嬢も、悪魔でしたし……」

П「……せっつくか、各組織を」

そう言うと立ち上がり、地域の地図を取り出し時間を逆算する。

П「確か……あの御令嬢は各方面に『自分から情報を集めに』行った帰りだったな?」

そして目配せをする、いつもの気だるげな顔ではなく、ゲスな顔をしていた。
何となく気持ちを察して、流れを少し読み回答に答える。

茄子「そーですねぇ、GDFがいくら強くても『電波の薄い、超高度から超えてきたカースには、気が付かないかもしれませんね』」

П「あの御令嬢の事だ『常に自分の周りに、数人の能力者を配置する』だが、『人気取りのため、テレビの前で自分から手を下すことは出来ない』」

地図に赤い線を引き、地図から引き出したい情報をより正確にしていく。
居間のテレビでは自分の業績だとばかりに、GDFや様々に団体に例の地図を手渡し、演説をしている少女の姿が目に映る。

П「俺は、ああいう手合いが大っ嫌いだ、政治家みたいなやつがな」

茄子「あらあら、それはそれは」

そう言い、笑顔でラムネを呷る茄子。

П「そういう奴がする一番好きな顔がある」

茄子「どんな顔なんです?」

いかにも知りませんよ?とした顔で聞いてくるので、少しイラッとしてデコピンした後、呟いた。

П「どんなに苦しくても、笑顔を作らなきゃいけないときの苦しみ混じりの笑顔だよ」

遠征帰りの街宣のごとく、黒塗りのベンツに向けてオッサンオバサン、少年少女の歓声奇声が飛び交う。
その中、Пは少し離れた公園で無言でコーラのグミを咀嚼し、空を見上げていた。
隣では、茄子が公園の購買で売っていたバニラアイスに、笑顔で齧り付き、咀嚼していた。

П「来たか」

茄子「来ましたねぇ」

事もなさげに空に映る小さな点が徐々に大きく、更に大きくなっている。
それに気付いたビルの上に居た人間が3人、すっ転んで頭を打ち、熱く焼けたコンクリートに倒れこんで気絶した。
次に外周パレードのように理路整然と並んでいた中に、ポツリポツリと倒れる数人の人間、恐らく熱中症だろう。

П「後『能力者』は何人だと思う?」

茄子「もう居ないと思いたいですねぇ」

П「……居ないさ、多分な」

アイスクリームを事もなさげに食べ終え、手を叩き鞄の中からナフキンで拭いた頃。
遠くから動物のような、低い声が微かに聞こえ、ゆっくり走っていた黒塗りのベンツのエンジンに、深々と泥のような色をした槍状の固形物が刺さり、動作を停止した。
歓声は悲鳴に、奇声は怒号、笑顔は叫び声に変わり、民衆はてんやわんやの中、出口を求め『黒塗りのベンツ』から散り散りに離れてゆく。

茄子「流石に大きいですねぇ、アレ」

П「頃合いかね」

カースは舌なめずりをしていた、地ベタに這いずり回り何も出来ないくせに、頭ひとつ抜けてるだけで決まり事を作る奴。

そんな決まり事にペコペコ頭を下げ、アリガタミを感じるチンケな虫けらども。

決まり事に違反すると、心を苛む『道徳』を植え付ける、制度システム……

カース「イライラスルンダョォオオオオオ!!ブッコワシテヤルァアアアアアア!」

先ずは、権力の象徴であるベンツを壊してやった、壊した瞬間ブツブツと毛穴が開き得体のしれない快感が身を焼く。

もっとだ!もっと俺は……力を得たのだから!

だが次の瞬間、全身が強烈な衝撃を受け、胸から下が消滅し落ちているのが分かった。

わけも分からず、公園のベンチに腰掛ける、うだつのあがらない男の顔を見た辺りでカースは掻き消えた。

П「流石にデカイなぁ、音」

茄子「いやぁスゴイですね、『隕石』って、私初めて見ちゃいました」

耳栓を付けていてもうるさく感じる騒音、周囲に散らばる振動によって割れた都市の窓ガラス、そして呆然と空を見上げる人々を差し置き。

П「こんにちはぁ……初めまして、櫻井桃華……ちゃん?いやあ、偶然ってコワイねぇ?隕石とカースがこの車に向かってたんだってねぇ?まあ、両方ぶつかってかき消えちゃったけどね」

Пがニタァァと邪悪な笑みを浮かべ、窓ガラスにヒビの入ったベンツのドアを開けて、中の人物に挨拶をする。
外では、サクサクと音を立てて、笑顔で茄子がクッキーを食べているのが桃華からは見えた。

桃華「……」

三好「だ、誰…?」

П「ああ、申し遅れましたぁ、一応能力者のПっていう人なんだけどさぁ……まあ、出なよ演説の時間だぜ、桃ちゃん?舞台準備は万全だぁな?」

桃華「……」

不機嫌な表情のまま、Пを見返す桃華は何を考えてるかもわからず、Пもニヤニヤ笑みを浮かべる中、遠くからヘリコプターの音が聞こえてくる。
恐らく情報機関のヘリコプターだろう、何故かってここは報道局の近くだからだ、恐らくこの状況は偶然ではないのだろう。

П「ホラ言わなくちゃあ『GDFは何をしているんだ!民衆の税金で固めた装備はゴミクズ同然か!あんなカースを撃ち漏らすなんて!』ってさぁ?」

П「早く動いてない組織をせっつけよ!成りたいんだろぉ?支配者、じゃあならせてやろうじゃねぇか!善政をしく、『清く正しい支配者』に!」

П「そして、早く助けてみろよ!きっと新聞の1面記事に載るぜ!デカデカとよぉ!『櫻井財閥!勇ましき御令嬢主導となり、カースに支配された街を開放す』ってさぁ!」

突然現れ、終いにはゲラゲラ笑う男と不機嫌な桃華を、見て紗南は困惑し続けるのだった。

П「後、不審な動きしたら……えーっと、こういうんだっけ、わ か る わ よ ね ?ってな」

П「だって、僕と君とは、お友達!だもんねぇ!だから確約してあげる!『君はどうあがこうが、今回の件ではヒーローとして讃えられる!』ってな!」

そう言うと、Пは益々不機嫌になった桃華のほっぺたを突っつき、ドアを閉めてゲラゲラ笑いながら立ち去っていくのだった。