483 名前: ◆zvY2y1UzWw[saga sage] 投稿日:2013/07/20(土) 00:56:55.18 ID:tvpnfxwi0
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更生施設の職員にはもう一つ仕事がある。
カルテの写真に×マークの付いた重罪人の処刑である。
「許してくれえええ!いやだ!二回も死にたくねええええ!」
今日はとある連続殺人鬼の処刑だ。更生施設の外の広場で今まさに行われようとしていた。
「我らのカルテによって、汝の悪行は償いきれないと判決は下された。次からは虫として生きるがいい。」
「そうすれば虫さんたちの魂のループから一つの魂が人として生きることになりますからねー♪じゃあ、始めましょうか。」
「うむ、頼んだぞキヨラ。」
「どれがいいですかね?首つりに電気椅子に鉄の処女にギロチン…やっぱりあれですね♪」
キヨラがメスを魔法のステッキのように振りながら呪文を唱える。
『汝の悪行、魂の死によって罰せられる。処刑器具の名は『ファラリスの雄牛』!天界の全能神に生まれたことを詫びて死になさい!』
罪人の真横に青銅のような物で作られた牛が召喚される。
背中の扉が開き、中から黒い手が溢れ出し、罪人を中に連れ込み、鍵をかける。
そして牛の真下に炎が燃え上がった。
…あとはお察しください。
朝の処刑を終え、施設の裏庭にキヨラはやってきていた。
「ベルフェゴールちゃん、ルシファーちゃん、お仕事の調子はどう?」
「…ハイ、オシゴトシテマス」
「…ちゃんとやってますよぉ?」
少女の姿のベルフェゴールと、怪物の姿のルシファーがひたすら穴を掘っては埋める作業をしていた。
最近はやっと敬語が身についてきたというところか。いや、ベルフェゴールはまだ敬語がぎこちない。
ちなみに…ルシファーには『人間界の崩壊を望んだ罪』『脱走を企んだ罪』が追加されていた。
働くことを喜びとせずに余計な事を考えれば罪となり、刑期は伸びるばかり。ここはそういう仕組みなのである。
「お疲れ様です♪やっぱり体がない魂の状態だとこれしかすることが無いのよね…。」
「…じゃあ体を得たらどういうことさせられるのさ…」
「大半の子は、掃除とか洗濯とか…悪魔の召使いになる修業をするのよ♪…ただの召使いじゃないんだけどね。お給料をくれるのもご主人様の気分次第だし…。」
(そりゃ20時間労働だもんね…絶対召使いじゃすまないよ)
「ということで!職人さんが特注品の大罪の悪魔さん用の体を作ってくれたので入ってくださいね!」
袋から…山羊・熊・ライオン・犬・狐の小さなぬいぐるみを取り出す。
「そぉれ♪」
熊とライオンのぬいぐるみを掲げると、二人の魂は吸い込まれてしまった。
「気分はどう?」
「…最悪…というかなんで熊?…ですか?」
「可愛くないですよぉ…これじゃあ大罪の悪魔(笑)ですよぉ…」
それは魂を閉じ込める檻。痛覚が魂にリンクされており、ぬいぐるみのような体なのに痛いときは痛い。
しかし素材は魔界で最も強い防具の素材の一つとされている皮で作られており、魔法にはかなり耐性がある。…物理に関しては人並みだが。
万が一破損しても縫えば回復したのと同じ効果を得る。
「大丈夫そうね♪これでみんなと一緒に…」
「キヨラ、今大丈夫か?話がある!」
扉を開けて、施設長が少し慌てた様子でキヨラを呼び出した。
「はーい、今行きます!…二人とも取りあえず穴掘り続けててね♪…やらなかったらすぐわかるから…うふふ♪」
「は、はい…」
職員が全員集まる中、キヨラは会議室の中央に立っていた。
「キヨラ、最も優秀な職員である君に、人間界へ行ってもらいたい。」
「…何故ですか?」
「…天使・魔族・人間…地球と天界と魔界の全ての者の罪を認識できるのが我ら。我々は死んだ魂を裁き、教育するのが仕事だ。」
「しかし、悪魔や堕天使等に『実行できる能力を持っている者が世界の崩壊を企んだ罪』が現れた。…今まではこんなことはなかった。」
「裁きのカルテが今までにない罪を認識したと…。」
「…ああ。我々はこれを危機と捉えた。堕天使は境界崩しを企み、嫉妬の悪魔が封印された悪魔を復活させようとしている。」
その言葉に他にもいた職員が騒めく。
当たり前だ。境界が崩れてしまったら生死の境界もなくなり、人々は人を殺すことに躊躇しないだろうし、初代嫉妬の悪魔はあまりにも強い。
…ここにいる全員が堕天使と嫉妬の悪魔をどう処刑するかヒソヒソと話し出した。
かわいいルシフェルはギロチンがいい!きっといい顔をしてくれる!
このバアル・ゼブルは? そうだなぁ、鉄の処女とかどうです?いい感じの声が出そうだと思いません?
レヴィアタンは…電気椅子でいいだろ。 いや、現役大罪の悪魔は労働だ、あきらめろ。
…アザエルは?堕天使だし処刑してもいいんだろ? 俺は雄牛を希望する。首つりでもいいけど。
「静粛に。」
施設長の言葉で皆が黙る。
「さらにだ。『魂の状態で生き続ける罪』を犯した竜がいるのはもう皆知っていると思うが…嫉妬の悪魔と手を組んだそうだ。」
職員全員が歓喜の声を上げる。
竜の処刑ができるなんて! ユズちゃんもヒーローも頑張れ超頑張れ!
こいつこそ雄牛でいいな! きっといい悲鳴あげてくれるねぇ!
俺が処刑する! 駄目よあたしが処刑するのよ!
いやボクがすべきだと思うね! 私も処刑したいなぁ!
自分も処刑したいぞ! いいえ、ワタクシこそが相応しい!
「静 粛 に !」
シーンと静まり返る。
「皆で仲良く処刑すればいい!それよりもキヨラだ!」
全員が頷く。
「…キヨラにはその重罪人退治の補助を行う為に人間界へ行ってほしいのだ。」
「…私に、ですか。」
「そうだ。お前が一番優秀だからこそ、この任務を任せたい。」
一呼吸おいて、キヨラはいつもの笑顔で答えた。
「お任せください。」
人間界。街中にキヨラは居た。
柳清良。それがここでの名前。
清楚な服にオシャレなバッグ。しっかり普通の女性のように見える。
…その両脇に二体の動くぬいぐるみが無ければ。
…まぁ「能力者なんだろう」で済むから便利なものである。
「なんでアタシ達まで連れてこられるのさ!」
熊のぬいぐるみのベルフェゴールが文句を言うも、笑顔で窘められる。
「貴方たちは私が担当なんだから当たり前でしょう?それに終われば一世紀分の刑期免除でしょう?」
「そうだけど…ですけどさー経験値ゼロの呪いの装備をしているアタシ達じゃ戦力にならないでしょう?」
「能力の制限はある程度解いたじゃない。情報収集能力だって今までのデータも使えるんだし、わがまま言っちゃダメよ。」
「えー…」
キヨラの情報を見ようとしてもできない。逃げようとしても次の瞬間には頭が飛んでいる。
…ベルフェゴールはどうしろととしか思えなかった。
ライオンのぬいぐるみのルシファーは、どこからか手鏡を取り出すと雪菜の姿へ変化した。
「ちゃんと変身できますねぇ…感覚的に数分程度かしらぁ。」
「レベル1ってことはMPもほとんど無いからねぇ…」
そのままショーウィンドウを見つめていると、背後に黒い泥が生まれたのが見えた。
『ドウシテドウシテドウシテエエエエ!』
『メンドクサイヨォ…ハタラキタクナイヨォ』
「あら?」
「高慢のカース…操作はできないわねぇ…なんか腹が立たない?」
「あー怠惰もだ。操作できないとかマジ…?キヨラさん、どうするのさ?」
「…」
バッグから明らかに入らないであろうサイズの医療用ノコギリを取り出すと、にっこりほほ笑んだ。
「悪い子はオシオキしないと♪」
ふわりとキヨラの周りにはメスが浮かび、指で示したカースに一直線に飛んでいく。
『イウトオリニシヤガレェ!』
ドロドロの腕を振り回して高慢のカースがメスを受け止める。
『汝、我が魔の力を受け、呪われよ。その呪いの名は【死の癒し】!毒を薬に、薬を毒に!呪われた哀れな者となり、性質よ反転せよ!』
キヨラの右手に持っていたメスから黒い光が怠惰のカースに飛び、呪う。
『光よ!大いなる我が力に従い、その優しい微笑みのような力で我が示す者を癒せ!ヒーリング!』
連続で回復魔術を怠惰のカースへ発する。
死の癒しの呪いによって、痛みはないのに内側から崩壊する。
『ア、アア、アアアア』
核が飛び出すと、その手からメスが飛び出し、貫いた。
『ムシスルナアアアア!』
「ベルフェゴールちゃん!」
「ちょ!?ぎゃああああああああああああ!」
『!?』
キヨラがベルフェゴールを高慢のカースが伸ばしてきた腕に投げる。もちろん正面衝突だ。
カースもさすがにそっちに気がとられる。
「…余所見しちゃ駄目よ?」
声はさっき立っていたところの真逆の方向から。
投げた時に一個だけ軌道をずらし、背後で空中に浮かんでいたメスの上に器用に立っていた。
次の瞬間にはさっきまで全く使っていなかったノコギリでカースを真っ二つにしていた。
『ゴア、グアアアア!』
しかし核を砕かなければ意味がない。二つに切り裂いた体の片方が再生を始めていた。
…抜かりはない。
『汝は悪の塊。我ら、悪は滅するのみ。処刑器具の名は『鉄の処女』!天界の全能神に生まれたことを詫びて死になさい!』
カースの真上に大きなサイズのその処刑器具が召喚される。
棺が開き、中から無数の黒い腕が伸びてカースを中へと連れ込んだ。
扉が閉まる。
『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!』
耳をつんざく程の音量。ルシファーは耳を覆っている。
「ふぅ…。」
しかしキヨラは満足気な表情をしていた。
カースに殴られ気絶したものの、すでに体は自分の能力で回復しているベルフェゴールを回収する。
「…」
ルシファーも無言でぬいぐるみの姿に戻ると、キヨラに回収された。
「さて、まずは姫様やユズちゃんから探しましょうか!」
情報更新
キヨラ
施設長の命令を受け、人間界で暴れまわる重罪人の討伐の補助をするためにやって来た。
重罪人と戦うヒーロー達なら無償で援護します。
施設長からもらった四次元バッグからは魔法の医療器具を取り出し放題。ただし職員以外にはただのバッグである。
人間界に来るにあたって、レベルドレインは大幅に制限を受け、一人のレベルを5分だけ奪える程度に収まっている。
しかし、奪ったレベルを他の誰かにその5分以内なら貸し借りできる。
罪人やその内容は決して口にしてはいけないが把握している。
自分から行くことは少ないが、売られた喧嘩は買う。
ベルフェゴール(ぬいぐるみ)
熊のぬいぐるみに入っているがちゃんと大罪の悪魔。
その力は大幅に衰えているが消えたわけではない。
大罪の証はまだ不明。
回復が早いことが災いしているのか、キヨラさんに容赦されてない。
ルシファー(ぬいぐるみ)
ライオンのぬいぐるみに入っているがちゃんと大罪の悪魔。
その力は大幅に衰えているが消えたわけではない。
大罪の証による変身も結構劣化してしまっている模様。
魔界更生施設
実力のあるドSの巣屈。殆どの職員が戦争の生き残りである。
職員は基本的に閻魔のように罪人を裁く役割や、罪人の更生をしているが、処刑人もしている。
死神と同様に天界とのつながりが深い。