4スレ目>>263~>>286


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

名前: ◆TAACIbOrYU[sage saga] 投稿日:2013/07/15(月) 20:12:02.54 ID:CKnYa4lmo [2/29]
――ここは絶望と憤怒の覆う街。

――あちらこちらにカースが蔓延り、

――『憤怒』の呪いで赤く染まった一帯の空が、

――怨嗟の熱気で立ち上る悪意によって、

――蜃気楼のようにゆらゆらと揺らめく。

――辺りに漂う空気は、

――肌にべったりと纏わりついてくるような、

――気味の悪く、生温い瘴気。

――吸えば吐き気を催し、

――精神にも悪影響を及ぼす。

――聞こえるものといえば、

――悲鳴と怒号、

――怨嗟と呪いの声、

――何かが崩れ落ちる音、

――何かが潰れる音、

――何かが引きずられるような音。

――今……、

――この街の惨状を、

――――地獄、

――と、形容することに、

――誰が些かほどでも抵抗を抱くものか。


――この異空間において、

――人の姿などは影すら見えず、

――あるのは、

――悪意を撒き散らす化け物が、

――建物を、

――道を、

――広場を、

――我が物顔で占拠している光景だけだ。

――そのような中でなお、

――課せられた義務があるでもなく、

――ただ、己の正義感の赴くままに、

――奮戦する少女がいた。

有香「はああああ!!!」

――彼女の名は中野有香。

――空手の有段者であり、

――『あの日』能力を得た、18歳の女の子である。


――有香は、ただの空手少女だった。

――大した理由があったわけではない。

――女の子といえど、自分の身は自分で守れなければ。

――単純にそう考えた両親が、幼い時分に空手道を歩ませた。

――その結果、有香の眠っていた才能が開花した。

――小学生の頃には、付近に相手になる者はおらず、

――中学生にもなると、全国レベルの強さを誇るようになった。

――高校生に上がった頃、名実ともに最強となった有香は、

――その力を持て余すようになる。

――しかし有香は、その後も毎日の特訓を欠かさず、

――こんなことに意味など無いと知りながらも、

――変わらず最強の座を維持し続けた。


――『あの日』、

――唐突に、

――有香は、ただでさえ持て余し気味な自身の力を、

――更に、強化する能力に目覚めた。

――――身体能力の大幅な向上。

――それは、

――人間の限界を超えた力だった。

――具体的に、

――彼女の拳の速度は、音を超えた。

――彼女の足の運びは、秒速にして数十メートルという域に達した。

――ただの手刀で、鋼を曲げるほどの膂力を得た。

――更に、それらに耐えうる体力や頑丈さ、

――人知を超えた動きを支える、動体視力と反射神経をも手に入れた。

――有香は、

――この恐るべき能力を、

――自身でも意外に思うほど、すんなりと受け入れることができた。


―――
――

――先程から、有香の周りを数体のカースが取り囲んでいた。

――各々が激情をぶち撒けながら、彼女と距離を置きつつ、

――機を伺っては襲いかかり、

有香「は……っ!」

――パパンッ! という衝撃音と共に、

――近づいた者から吹き飛ばされていく。

――有香の対カース戦法は、

――一貫してこうだ。

――『二発殴る』。

――カースには、弱点となる核が存在するが、

――それは泥のようなものに覆われており、

――一見して、何処に存在するのかがわからない。

――ならば、と、

――一発目の拳で、カースの周りの泥を吹き飛ばし、

――二発目の拳で、露出した核を砕く。

――……これを一瞬のうちに行う。

――至極単純だが、彼女にしかできないこのやり方で、

――事が起こってから今までずっと戦い続けている。


――この街に有香がいたのは、たまたまだ。

――外から助けに来たわけではない。

――彼女は、どこかの組織に所属しているわけでもなく、

――個人でヒーロー行為を行うようなこともしない。

――ただ、目の前に困っている人がいて、

――自分の力で、それをどうにかできるのであれば、

――彼女は喜んでその力を振るうだろう。

――そして今、

――有香の力は、人々を守るに足るものだった。

――――カースが発生した時、

――当然パニックが起きた。

――群衆が逃げ惑う中、それを襲うカースを、

――有香は片っ端から倒して回った。

――避難を助け、

――カースに囲まれた人を救助し、

――ほうぼうを走り回った。

――少なくとも、

――彼女の目の届く範囲に、

――犠牲になった人はいなかった。


有香「そろそろ行くか……」

――ここまで働き詰めだった有香は、

――能力による自身の驚異的な体力に、

――しかし、過信すること無く、

――ペース配分を考え、

――少しだけ休憩しよう、と、

――その場にとどまり、

――寄ってくるカースだけを倒し、

――しばらく体力の回復を図っていた。

――その結果、囲まれてしまった訳だが、

――元よりこの程度の数、問題ではない。

――まして、休息を終えたばかりなのだから、

――今、有香のパフォーマンスは絶好調である。


有香「ふっ……!」

――有香は手始めに、

――スッ、と腰を落とすと、

――一番近くにいたカースへと

――一瞬で詰め寄り、

――例のごとく、

有香「た――っ!」

――の掛け声で、

――『二発』殴った。

――パパンッ! という衝撃音が鳴り響き、

――核を砕かれたカースは、

――大げさに吹き飛んだあと、ゆるやかに消滅を始めた。

――この間、

――仲間がやられた事、どころか、

――有香が移動した、

――という事にすら、

――周りのカースは気付かなかった。

――そして気付いた時にはもう遅い、

――パパンッ! パパンッ! と連続で衝撃音が鳴り響き、

――何が起きてるのかもわからず、

――ただ仲間の数が減っていくのを眺めている内、

――次の瞬間には、自分の番だ。


有香「どうか無事で……!」

――カースの群れを片づけた有香は、

――今、逃げ遅れた人がいないか探している。

――本来なら、休む時間すら惜しかったが、

――有事に全力を出せなくては元も子もない。

――多くの人は、大きな建物に避難した。

――特に、病院にはカースを寄せ付けない能力者がいたので一番安全だ。

――それ以外の場所も、何かしらの能力を持った人たちが奮戦している。

――だがそんな建物の少ない、開けた場所……、

――公園や広場などには、まだ取り残された人がいるかもしれない。

――あらかた避難が終わった後、

――ようやくそのことに気付き、

――急いでその場に向かう有香の脳裏を、

――ちらり、と不安がよぎった。

有香(あれからどれだけ経っただろう……)

有香(逃げそびれた人がいたとして)

有香(もう……)

――と、最悪の状況を想定して、

――頭を振りながら、気を取り直す。

有香(悪いふうに考えても仕方が無い!)

有香(あたしは、今の自分にできることをするだけだ!)

――そう考える有香に、

――だが、現実はどこまでも非情であった。


有香「ぁ―――」

――結果から言えば、

――有香の不安は的中した。

――道路の真ん中で、

――人が、無造作に倒れている。

――一人や二人ではない。

――周りには血痕が飛び散り、

――中には、

――人としての原型を留めていないものもあった。

――――死んでいる。

――確認するまでもない。

――有香の常人離れした聴力が、

――この場に一つとして心臓の鼓動する音を聞き取れていないのだから。

有香「だ……」

有香「だれ……、か……」

――掠れた喉から、

――ようやく絞りだすように出た声が、

――言葉の発する者の居ないこの静寂で、

――やたら大きく響いて聞こえた。


有香「え……、うそ……」

有香「ゆめでしょ………」

――人は、

――信じ難い事態に直面した時、

――まず、これは何かの間違いだ、と思う。

――が、間違いであるはずが無いのだ。

――目の前の事実は絶対に覆らない。

――――人が死んでいる。

――じわり、じわりと、

――有香の胸に、

――受け止めきれない現実が、

――重圧となってのしかかってくる。

有香「だれ……か……」

有香「い……いませんか……」

――ガクガクと震える膝で、

――歩くということはこんなにも難儀なことだっただろうか、と思いながら

――まだ、希望が残っていないか、と、

――ゆらゆらと、

――幽鬼の如く、

――歩き続けた。

有香「…あ……、……ぁ…………」

――しかし、

――歩けど歩けど、

――屍の山だ。

――考えなかった訳では無かった。

――カースは人を襲う。

――襲われれば、人はどうなる?

――――死ぬ。

――当然だ。

――誰もがそこから目を逸らし、

――今日もまたヒーローがカースをやっつけたと称賛する。

――ヒーローがいるから大丈夫だ、と。

――その影で、

――救われなかった人は、

――抗う力の無い者は、

――憐れにもこのような姿を晒すハメになるのだ。

――わかっていたはずだ。

――気づかないふりをしていただけだ。

――目の届かない所で、

――――死んでいるのだ。

有香「あぁ―――」

――終わらぬ絶望の中で、

――一際、

――有香の目を引くものがあった。

――見なければ良かったのに、

――見てしまった。

――それは、

――若い女性だった。

――当然、鼓動は感じられない。

――でも、

――もしかしたら……、

――そんな夢想に縋りたくなるほど、

――有香は追い詰められていた。

有香「あの………」

――有香が、女性に触れる。

――もちろん、

――冷たい。

有香「く……っ……、…ぅ………」

――何故こんなことをしたのか。

――この状況で、

――希望が報われることなど無いと、わかりきっていたはずなのに。

――有香の瞳から涙が零れる。

――もう、だめだ。

――もう、耐え切れない。

――もう、沢山だ。

――この場を離れる。

――でなければ、心が壊れてしまう。

――撤退だ。

――成果など、もう何もない。

――そんな有香の目の前で、

――女性の遺体の腕から、

――ゴロン、と、

――何かが転がり落ちた。

有香「―――――――――――――あ」

――赤ん坊だった。

――この若い女性は、母親だったのだ。

――幼子の肌の色は青白く、

――触れずとも、

――冷たいのであろう、と容易に想像できる。

――鼓動も感じない。

――だというのに、

――持ち上げてしまった。

――軽い。

――冷たい。

――脈が無い。

――呼吸をしてない。

――これは、

――――骸だ。

――――死んでいる。

――――既に命が失われている。

有香「あ―――、――ああぁあ―――!!」

――若き母親の表情には、

――無念の形相が張り付いていた。

――恐らくは、

――幼い我が子を、

――命を賭してでも、

――守りたかったに違いない。

――そして、

――彼女の守りきれなかった、

――その赤ん坊の表情からは、

――はっきりと、

――恐怖と苦悶が見て取れた。

――この子は、

――あまりにも短い人生で、

――最期のその瞬間すら、

――安らかでは無かったのだ。

有香「あぁあああああああぁぁぁあああぁあぁあぁぁぁぁあああぁぁああああ!!!!!!!!」

――何故?

――何故だ!?

――何で!?

――どうして!?

――何の権利があって!!

――この母子の命を奪った!!

――ぶつん、と、

――有香の中で何かが切れた。

有香「殺すぅっっっ!!!」

――更に、

――呪いの言葉を吐いてしまったことで、

――それは決定的になった。

――タガが決壊し、

――心が、

――『憤怒』で埋め尽くされる……。


――――殺す。

――カースを一匹残らず、

――全て殺す。

――この惨事に乗じるものを、

――全て殺す。

――諸悪の根源である首謀者を、

――必ず殺す。

――理性が押し流され、

――ドス黒い感情が有香を支配し、

――彼女は『憤怒』に取り憑かれてしまった。

――今、この街で、

――こうなってしまったら、

――もう遅い。

――正気を失うほどの『憤怒』は、

――有香の周りに数多のカースを生み、

――そのカースが、

――彼女の『憤怒』の炎に油を注ぎ、

――また、炎がより一層燃え上がり、

――そして、そこからカースが生まれてくる。

――負の連鎖の堂々巡りだ。

――この炎は、

――この街から『憤怒』を一掃した時に、

――ようやくたち消えるものだ。

――その時が来るまで、

――中野有香は、

――カースでも、

――カースドヒューマンでも無い、

――『憤怒』の化身となり、

――その身を悪意で焦がしながら、

――目に映る全ての物を、

――衝動のままに破壊し尽くす。

有香「がァッッッッ!!!!」

――獣の咆哮を思わせる雄叫びと共に、

――目の前のカースを、『一発』の拳で、

――叩き潰す。

――有香の『憤怒』から生まれたカースは、

――真上からの岩塊の崩落にぶち当たったかのように、

――ぐしゃぐしゃにひしゃげて、

――泥も核もまとめて砕けた。

有香「ああぁ―――ッッッッ!!!!」

――次に、

――その隣に居た二体のカースへ、

――『一発』の裏拳を放ち、

――まとめてぶっ飛ばした。

――建物の解体などに使う鉄球の方が、

――まだ、可愛げがある。

――そんな衝撃をまともに受けて、

――核が無事である筈がない。

有香「お ォ お オ ぉ お―――ッッッ!!!!!」

――滑稽な光景だ。

――圧倒的な暴力を以って駆逐しているそのカースは、

――有香の『憤怒』から生まれたもので、

――彼女が『憤怒』に囚われている限り、

――永遠に湧き続けるのに、

――それでも有香は、止めない。

――内から溢れ出る『憤怒』を原動に、

――敵も味方も見境無く、

――ただ、力を振るい続ける者、

――狂戦士(バーサーカー)。

――そんな存在になってしまった彼女に、

――物事を判断する思考など、

――もはや残ってはいない。

――ただ……。


有香「コロスウゥゥウウゥウゥゥゥ!!!!!!」

――涙を流しながら、

――殺す、と、

――怨嗟の言葉を吐く有香に、

――本当に人を殺す事などできはしない。

――理性を失っていても、

――思考を放棄していても、

――判断ができなくとも、

――いざ、人に手をかける、

――その時に、

――彼女の脳裏を、

――今見たあの光景が、

――きっとよぎるのだ。

――有香に、

――人を殺める覚悟は、

――無い。

 


中野有香(18)

職業:高校生
属性:スーパー空手ガール ※現在は『憤怒』の狂戦士(バーサーカー)
能力:身体能力の大幅な向上

元々空手を習っており、全国クラスの実力者だったが
その力は『あの日』得た能力で、圧倒的と呼べるレベルにまで達した
どこかの組織に所属しているわけでも、野良ヒーローをやってるわけでも無いが
力を使って誰かを助けるということに躊躇は無い

現在、『憤怒の街』で『憤怒』に飲まれ暴走
基本的には自分の周りに湧いたカースを潰してるが
近づけば、敵も味方も見境無く攻撃してくる、というか区別が付かない
多分、相手が人間なら殺しはしないと思う、今回のトラウマのせいで