4スレ目>>155~>>182


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小日向美穂は普通の少女である。


実はあの日、目覚めた能力者の一人で、

日夜秘密結社と戦ってるとか。


実は宇宙から来た異星人で、

地上を侵略するために活動しているだとか。


実は地下帝国の技術者で、

マッドなアイテムやロボットをクリエイトしているだとか。


実は魔界から来た悪魔で、

悪意と呪いをばら撒いているだとか。


そのような設定はない。

取り立てて、ごく普通、一般的な、

現代の、地上に住む、能力を持たない、人間の、女子高生であった。


卯月「さっきの授業難しくなかった?」

美穂「難しかったねー、茜ちゃんは・・・・・・。」

茜「・・・・・・。」 プスプス

美穂「だ、大丈夫?」

卯月「煙出てるね。」

茜「え、Xが少なくなるとYが増えて、そこにZとnがやってきて・・・・・・。」

茜「X・・・・・・Y・・・・・XとYの関係・・・・・あれ、Xが攻めでYが受け?」

美穂「茜ちゃん、その数学はたぶん戻って来れなくなる奴だからやめた方が。」

卯月「Xはヘタレ攻めだよね!」

美穂「卯月ちゃんも乗らないで!」


――私達の日常は平和だ。


卯月「そう言えば、」

卯月「カースに襲われたって街は大丈夫なのかな?」

美穂「今朝のニュースでもやってたけど、救出作戦難航してるみたい」

卯月「心配だね。」

美穂「うん。」

茜「きっと大丈夫だよ!」

美穂「茜ちゃん?」

茜「ヒーローはもちろんだけど、他にも世界平和のために活動してる人たちはたくさん居ますから!(亜子の事です)」

茜「最後に勝つのは、正義の味方です!」

美穂「・・・・・・うん、きっとそうだよね!」

美穂「GDFとか歌姫さんとか死神さんも居るし!」

卯月「私達が明日、能力に目覚めてババンと活躍しちゃうかもしれないし!」

美穂「それはどうかな・・・・・・?できたらいいなとは思うけど」

卯月「ウサミン、ウサミン、メルヘンチェン~ジ♪」 シュバッ

茜「安部菜々さんだね!ポーズそっくり!」

卯月「えへへ、いつか私が活躍する時の為に練習したんだー。」

美穂「菜々ちゃん、私達と同じ年でヒーローアイドルやってるなんてすごいよね!」


――世間は騒がしいけど、私の周りの世界は相変らず穏やかで、

――こんな私も平穏無事に過ごしている

 

――だけどその平和は


――

テレビ『こんばんは』

テレビ『ニュースの時間です。』

テレビ『本日も大量発生したカースに占拠された街の様子をお送りいたします。』

テレビ『今映っていますのは、隣街から撮影した映像です。』

テレビ『幾つかの機関のヒーローたちが乗り込み、カースを討伐しているようですが、』

テレビ『現在もカースは街に溢れているようです。』

テレビ『GDFはこの件に関して・・・・・・


美穂「・・・・・・。」


――その平和は、私たちを守ってくれる誰かが、

――私たちの代わりに戦ってくれるから作られていて、

――そしてきっと、その裏では誰かが傷ついてて・・・・・・


――そんな風に考えると

――この平穏は、いとも簡単に壊れてしまうんじゃないか

――なんて・・・・・・思ってしまうことがある。


――それでもいつまでも平和が続くように信じたくて


美穂(私にできることはないのかな。)


美穂(強くなれたらいいのにな。)


美穂(みんなを守れるヒーローみたいに。)


美穂(私もなれならな。)


――

――

――


美穂の住む街には「万年桜」と呼ばれる、

名前の通り、年がら年中、けっして枯れることなく

咲き続ける桜の木がある。

”あの日”からその桜は、

春も、夏も、秋も、冬も、

晴れの日も、曇りの日も、雨の日も、風の日も、

ずっと、ずっと咲き誇っているのだ。


その「万年桜」のある公園に、美穂は来ていた。

本日は日曜日。

学校は休み。

天気は晴れ。


すなわち絶好の日向ぼっこ日和なり。


「万年桜」の近くでは、数人の子供達が遊んでいた。

すぐそばでは奥様方が談笑している。

よくある普通の公園の風景だ。


一年中咲く桜なんてあれば大いに賑わいそうなものだが、

実際は、それほど人気のスポットではなかった。


いや、「あの日」からしばらくは観光名所になるのではと、

思われるほどに賑わっていたのだが、

宇宙産の機械だとか、異世界の魔法だとか、特別な能力だとかが珍しくなくなってくると、

「一年中咲いてる桜?なんか地味。」

と言う理由で飽きられてしまい、

気がつけば「万年桜」の公園は、普通の公園の有り様に戻っていた。


それでも

いや、だからこそ、

美穂はこの場所が気に入っていた。

一年中うららかであたたかな香りが漂う、

この適度に静かな公園の、傍らにあるベンチで、

日向ぼっこをするのが、彼女の週末の主な過ごし方になっていた。

 

そんな訳で、本日も、この公園にある特等席にやってきたのだが、

「すー・・・・・・・すー・・・・・・・」

どうやら今日は先客が居るようであった。


美穂「寝ちゃってるのかな?」

「うーん・・・・・・・おじいちゃん・・・・・・・」


その少女は頭にスカーフを巻いていて、

背に5本の筒の様な袋を背負った、

どこか桜が似合う女の子であった。

「・・・・・・めんいんぶらっくは・・・・・・・いかすみうどんのことじゃ・・・・・・ないよ・・・・・・・・」

「すー・・・・・・すー・・・・・・」


美穂「ふふっ、どんな夢見てるのかな?」

きっと彼女も、この場所の暖かさに居心地がよくなり、

つい、眠くなってしまったのだろう。

美穂は仲間を見つけたような気分で、少し嬉しかった。


美穂「起こしちゃったら悪いよね。」

少女を起こさないように、美穂はその場を離れることにした。


――

――

――


美穂は公園を出て、駅前の方に歩き始める。

今日は日向ぼっこの予定を変えて、お買い物にでも行くことにしよう。

友達を誘うのもいいかもしれない。

卯月ちゃんは、予定あいてるかな?

そんな事を考えながら、しばらく進んだ先で

彼女は出会うことになる。


彼女の平和を侵すその存在に。


――


美穂(アレは?)


はじめは遠くから、少しずつ迫ってくるそれが何かはわからなかった。

そして、甘い香りと共にやってきたそれが、

”カース”だと気づいた頃には

何もかもが遅かった。


『アゲル・・・・・・アゲル』


そのカースの、まるで蜘蛛のようなシルエットを認識した途端、

美穂は全身から力が抜け、その場にへたり込んでしまった。

他に居た通行人達もみな、同じ様に倒れこんでしまう。


カースは、倒れ伏した通行者の一人に近づくと、

体から黒い糸の様な影を吐き出して、

器用に捕らえて、自らの中に引きずり込んでいった。


「た、助け・・・・・・」

『イザナッテ・・・アゲル・・・・・・』

『ノミコンデ・・・アゲル・・・・・・』

『タベテ・・・アゲル・・・・・・』

『クスクスクスクスクス!!』


美穂も含めて、周囲に居る人間は誰も逃げようとしない。


美穂「なん・・・・・・で・・・?」

美穂(逃げないとダメなのに・・・)

美穂(体が動かない!)


逃げないのではなく、逃げられない。

『色欲』の大蜘蛛の持つ性質は『捕らえること』

そのカースが発する毒の如き”色気”に飲まれれば、

その時点で体の自由は奪われ、逃げることは許されず、

ゆっくりと影に飲み込まれるだけであった。


大蜘蛛は時間をかけながら、

一人一人順番に、周りの人間を飲み込んでいき、

そしてようやく、美穂の番になった。

『アナタモ・・・・・・ワタシノナカニ・・・・・・』

『クスクスクスクス!』

蜘蛛が近づいてくる。


美穂(逃げ・・・・・・ないと・・・・・・)

そう思いながら足を動かそうとしても、体は言う事を聞かない。

美穂「うぅ・・・ああっ・・・・・・。」

逃げることも、叫ぶこともできない。


蜘蛛が影の糸を繰り出す。

美穂(いや・・・・・・いや・・・・・・)

それは美穂の足元まで伸びてきて・・・・・・


突如、上から振ってきた何かがその影に突き刺さった。


『ギャァアア!?』

慌てて蜘蛛は自分の体に糸を引っ込める。


美穂(たすかった・・・?)

美穂(なにが落ちてきて・・・・・・)

美穂(・・・・・・かたな?)


果たして、どういうわけか。

美穂の目の前に突き刺さっていたのは、

鞘に収まった一本の刀であった。


――

ところ変わって、うららかな万年桜の公園では。


肇「ふわぁ」


鬼の孫娘が目を覚まし、大きなあくびをしていた。


肇「よく寝たなぁ・・・・・・あれ?」


目覚めて、すぐに彼女は違和感に気づく。


肇「一本足りない?」

寝てる間に、背中にあった刀の数が6本から、5本に減っていた。


肇「・・・・・・『小春日和』、またどこか行っちゃったんだ。」


無くなった刀の名前は『小春日和』。

刀匠、藤原一心の作り出した『鬼神の七振り』の一本。


肇の言葉は、

そのような大事なものを”どこかになくしてしまった”と言う意味ではない。

本当に”勝手にどこかに行ってしまった”のだ。


肇「『小春日和』は傲慢のカースの核が埋め込まれた、日本一、横暴な刀。」

肇「だからプライドが高くて、人に”使われる”ことを極端に嫌う刀。」

肇「勝手に動くのは、持ち主探しを”自分でしたい”って事だと思うけど・・・・・・・」


鬼の孫娘は手元から離れてしまった刀に、思いを馳せる。


――

――


漆黒に塗られた鞘に収まったその刀は、

刃が隠されているその状態にも関わらず、

どのようにしてかカースの影の糸を断ち切り、

地面を抉って、真っ直ぐと目の前に突き刺さっていた。


その奥でカースが蠢く

『ユルシテ・・・・・・アゲナイ』

『アナタハワタシノナカデ・・・・・・』

『カワイガッテアゲル・・・・・・・』

『オカシテ、オカシテ、オカシテアゲル!』

『クスクスクスクスクスクス!』

カースの体から鞭の様な影の糸が、何十本も作り出される。


美穂(私は・・・・・・)


美穂が手を伸ばせば、目の前の刀を鞘から引き抜けるだろう。

そのくらいの動作ならば、今の美穂でも出来る気がした。

刀の方もまるでそれを待っているかの様に見えた。


美穂(強くなりたい・・・・・・)

美穂(自分を、友達を、誰かを)

美穂「守れるだけの力が欲しい!」


少女は、目の前の刀の柄を掴んだ。


そうして、その妖刀が姿を顕にする。


引き抜かれたその刀は、

見た目はごく普通の日本刀であった。

燃え盛るような『怒り』も、荒々しい『野性味』も感じさせない、

それでもあえて形容するならば「静けさ」であろう。

ただ静かに、

だが確かに、

その存在を主張する。

まるでその姿こそが、誇り高き「刀本来の姿」であるのだ。と言うかのように。


美穂「あっ?!」

そうして美穂の中に刀から”何か”が流れ込んでくる。

 

『クスクスクスクスクス!!』

そうしてる間にも、四方八方からカースの糸が襲い掛かる!


『クスクス・・・・・・?』


カースが気がつけばその糸は

美穂に届く前に全て、綺麗に切り落とされていた。

『ンァアアッ!?』


美穂「・・・・・・・」


美穂「ふはっ」


刀を構えた少女は、どこか獰猛さを感じさせる笑みを浮かべる。


――馴染む

 

美穂「ふふふふっ!」


――馴染む


美穂「あはははははっ!」


――この”身体”は実に馴染む


美穂「あ~はっはっはっはっはっ!!」


――ついに

――ついに”私”は

――最高の”所有者”に出会えたのだ


――


肇「『小春日和』はおじいちゃんの作った七振りの中でも、最も我が強い刀。」


肇「『刀が人に使われる』ことを極端に嫌っていて、」


肇「むしろ逆に、」


肇「『刀が人を使う』ことを良しとする。」


肇「そのために、刀が所有者の肉体、精神、人格を支配して、制御しようとする。」


肇「だから日本一、横暴な刀。」


肇「どこかで迷惑かけてなければいいけど・・・・・・。」

 

――


美穂「は~はっはっはっはっはっは!!」

少女は高らかに笑う。


――体つきは華奢だが、問題はない

――肉体も、刃も、負の念を帯びて、幾らでも強くなれる

――必要なのは精神だ

――純粋に『誰かを守るヒーローの様になりたい』と言う意思

――その意思は”私の人格”として”使う”のに丁度良い


美穂「私は・・・・・・」


――”私”は小日向美穂のヒーローになりたいと言う意思

――そして彼女が思い描くヒーロー像を使って

――妖刀『小春日和』により作り上げられた人格だ

――故に小日向美穂でありながら小日向美穂ではなく、

――『小春日和』でありながら、『小春日和』でない。

――ならば、新しく名前が必要だろう

 

美穂「私は!『ひなたん星人』ナリ!!」


小日向美穂のヒーロー像から作られたその人格は、自信満々に名乗り上げた。

 

美穂「この街はまるごとつるっと!」


美穂「ぜ~んぶ!私のものひなたっ☆」キラッ


さらにチャーミングなポーズを決めて、口上を続ける少女。


そこに、カースの足が少女を踏み潰そうと襲い掛かる。

『クスクスクスクス!』


彼女はそれを飛び上がってかわした。

そしてそのままカースの頭上に着地する。

『エエッ!?』

カースが驚くのも仕方ない。

それはただの人間の少女にはあり得ない跳躍。


美穂「むぅー、ヒーローの前口上に返事もしないで、」

美穂「すぐに攻撃するなんて失礼なカースナリ」

美穂「そんな悪い子は♪私がお仕置きしちゃうぞひなたっ☆」

 

頭上に立つ少女を振り落とそうと、

カースは体を大きく揺さぶるが、

彼女は少しも慌てず、飛び上がると

バランスを崩さず、綺麗に地面に着地する。


美穂「ひなたん星人の秘密☆その1!」

美穂「遠い宇宙の果てからやって来たひなたんは、」

美穂「重力を自在に操ることができる!ひなたっ☆」


美穂「そして!」

『小春日和』を構える少女。

目の前のカースは、前足を振り上げている。


美穂「ひなたん星人の秘密☆その2!」

美穂「この星の精霊に選ばれたひなたんは、」

美穂「不浄の存在を愛と正義のパワーで浄化することができるナリ!」


美穂「食らえ!」

美穂「ラブリージャスティスひなたんビーム!」


『キャアアアアッ!』


見事な”袈裟切り”であった。

カースの前足二本が同時に切り落とされる。


妖刀『小春日和』は、その潜在能力を発揮するために、

所有者の肉体の動作を刀自体が制御し、

さらに刀に溜め込まれた負のエネルギーが、その力を増幅して補う。

これによって所有者は、どんなにか弱い人間でも、

日本一の剣豪と同等の技術、そして超人的な身体能力を発揮する事ができるのだ。


なお重力制御能力だとか、愛と正義の浄化能力は一切関係ない。

 

足を切り落とされて、姿勢を崩したカースは前方に転倒する。


美穂「ひなたん星人の秘密☆その3」

美穂「天からの使者に授かった、この千里眼!」

美穂「あなたの核の位置もまるっとお見通しひなたっ☆」

美穂「きっとそのお腹の中にあるナリ☆」


呪いの刀に埋め込まれた核の、共鳴によって、

『鬼神の七振り』の所有者は、カースの核の位置がなんとなくわかる。

当然だが、彼女に千里眼のような能力はない。


転倒したカースの足の再生が終わる前に、

少女は刀を振りぬいて、その腹を裂く。

『キャァ・・・アアアア』


その時、彼女のアホ毛が揺れ動いた。


美穂「むむっ、レーダーが生命反応をキャッチしたナリ」


呪いの刀が、カースの内部に居る人間の負の感情を感知したのだろう。

もちろん、彼女にレーダーなんて搭載されてない。

 

切り裂いた大蜘蛛の腹を横に大きく広げ、

少女はするりとその中に入り込む。


蜘蛛の内部には、ドーム状の空間になっており、

泥の肉壁には、蜘蛛に取り込まれた人間が

まだ生かされた状態で埋め込まれていた。


美穂「・・・・・・今助けるからね」


少女は刀を、空間の中心に宙吊りにされている桃色の核に向ける。

泥の壁から何百本もの触手が産まれる。

『コロシテ・・・・・・アゲル』

それらは一斉に彼女に向かって襲い掛かってきた。


美穂「ひなたん星人の秘密!その・・・・・・幾つだっけ?」

美穂「まあいいひなたっ!」

美穂「この刀は、人の為に作られた呪いの刀『小春日和』!」

美穂「斬ったものや周囲の感情から負のエネルギーを吸い取って、」

美穂「自分のものにする、『傲慢』なる刀ナリ!」


日本一、横暴な刀はこの空間に満ちるあらゆる負の感情を、

己のエネルギーに変えてゆく。

美穂の体から黄色いオーラが迸る。

美穂「はぁああ!!」


少女は襲い掛かってくる触手を全て薙ぎ払いながら、突き進み、

そして、核に向けて刀を振り上げる。


美穂「でこぽぉんんっ!!!」


桃色の核が砕かれる


――


『ンァアアアアアアッ!!???』


核の破壊によって、

大蜘蛛の体は泥の様に崩れ、じょじょに溶けていく。

そうして最後は何も無かったかのように、消失した。


その場には倒れ伏す人々と

刀を持った少女が残される。


美穂「は~はっはっはっはっは!!」


カースに勝利した少女が高らかに笑う。


美穂「愛と正義のはにかみ侵略者!ひなたん星人に敵うものはいないナリ!」


美穂「今日もまるごとつるっとぜ~んぶ!守ってみせたひなたっ☆」 キャピピーン


最後に勝利のポーズ。


そして、少女は足元に落ちてた刀の鞘を拾い上げて、

『小春日和』を収めた。


美穂「・・・・・・。」


美穂「・・・・・・はっ!」

 

美穂「い、今・・・私何をして・・・・・・。」


刀を浄化の鞘に納めたことで、『ひなたん星人』の人格が引っ込んだ。

今ここに立っているのは紛れも無い小日向美穂、本人そのものの人格だ。


美穂「・・・・・・。」


記憶が無いわけではない。

彼女ははっきりと覚えている。

刀のおかげで、まるでヒーローのようにカースを討伐できたも覚えているし、

自分が何を喋っていたのかも、一語一句はっきり思い出せる。


黙って周囲を見渡す。

状況を見れば、どうやら先ほどまでの事は夢ではなかったようだ。


気絶して倒れてる者も少なくはなかったが、

目覚めている者は全て、彼女に目を向けていた。


「ありがとう」

誰かが言った。

「ありがとー、ひなたん星人!」

 

「ひなたん!ありがとう!!」

「カッコよかったよ!ひなたん!!」

「ひなたん星人って、ウサミン星人と関係あるの?」

「ひなたん!ひなたん!ひなたん!」


彼女に助けられた大勢の人から称賛の声があがる。


美穂「は・・・・はは・・・・・・」


美穂「はずかしぃいい!!!!」


たまらず小日向美穂はその場から逃げ出した。

その腕に呪いの刀を抱えたまま。


少し離れた場所からその様子を見守る者が居た。


肇「・・・・・・。」

肇「お爺ちゃん、『小春日和』はいい持ち主を見つけたみたい。」

肇「彼女ならきっと、あの子を正しく使って・・・・・・いや、使われて?」

肇「・・・・・・。」

肇「たぶん大丈夫だよね。うん。」

どこか自分に言い聞かせるように呟いて、鬼の少女は美穂を見送った。


――後日

卯月「そう言えば、最近この辺りで新しいヒーローが活躍してるらしいよ。」

茜「へぇー、どんなヒーローなの?」

卯月「ひなたん星人って言うんだって」

美穂「ぶふっ!」

卯月「ど、どうしたの美穂ちゃん!?急に吹き出したりして!?」

美穂「な、なんでもない!!なんでもないよ!?」


あの時以来、美穂は何度かカース討伐を行っていた。

拾った刀、『小春日和』と言うらしいが、

あの刀を持っていると、時々、『カースを狩らなければならない。』

と言う焦燥感に襲われる。


美穂(カースからみんなを守れるヒーローに憧れてたから、その事はいいけれど)


戦うために刀を抜けば、『あの人格』が出てくるのが問題なのだ。


卯月「みんみん、うっさみーん♪」

美穂「菜々ちゃん、って本当にすごいよね。」

卯月「?」

茜「あっ、そう言えば、最近美穂ちゃん木刀の袋持ってるよね!」

卯月「剣道でも始めたの?最近物騒だもんね!」

美穂「そ、そんなところ・・・・・・かな?あの、できれば気にしないで。」

美穂(あの姿、友達だけには見せられない!)


――


刀を手放すことも考えたが、結局それはできなかった。

と言うより一度、何処かに置き忘れて、

家に帰ったら、『小春日和』が先に部屋に帰っていたので、

たぶんずっと手放せないのだろう。


今日も街の何処かで、刀を持った少女のアホ毛が揺れ動く。


美穂「カースの気配ナリ」


美穂「私は愛と正義のはにかみ侵略者!ひなたん星人!」


美穂「カースはまるごとつるっとぜ~んぶ!私が倒しちゃうひなたっ☆」キラッ


美穂「あ~はっはっはっはっはっ!!」

 

それから、街のあっちこっちで

「ひなたん星人」を名乗り、カースを狩る少女が目撃されてるとか。


おしまい

 

 


小日向美穂

所属:高校生
属性:人間
能力:特になし

最近まで普通だった女の子。
友達を守れる力を持ったヒーローに憧れていた。
鬼神の七振りの一本『小春日和』に所有者(使われ手)として選ばれたせいで、
刀に振り回される毎日を過ごしている。


『小春日和』

『鬼神の七振り』の1本で、日本一、横暴な刀。
黒一色に三輪の菊が描かれた鞘には、見た目には地味でごく普通の刀が納まっている。
『傲慢』のカースの核が埋め込まれているためか、プライドが高く
”刀が人に使われる”のを良しとせず、”刀が人を使う”関係を理想とする。
そのために使われ手(使い手ではない)は『小春日和』自身が選び、
所有者の中に新たな人格を作り上げて、内側から支配する。日本一、横暴な刀である所以。
所有者は刀に精神的にも肉体的にも支配され、体の動作を刀の作った人格に行わされるために、
例え刀の扱いを知らない少女でも、日本一の剣豪と同等の技術を発揮することができる。
また精神的に支配されるために、他の精神攻撃をシャットアウトできるのも特徴。
カースを斬れば斬るほど、刀に負のエネルギーが溜まる。
これにより肉体動作を補うエネルギーは増えるので身体的にはより強くなるが、
刀の精神支配力も強まるので、浄化の鞘に収めないまま長時間の使用は望ましくない。


『ひなたん星人』

日本一、横暴な刀『小春日和』によって、小日向美穂の中に作られた人格。
小日向美穂の考えるヒーロー像をベースにして作られており、
美穂が『小春日和』を鞘から抜いた時のみ、ひなたん星人の人格は現れる。
「愛と正義のはにかみ侵略者」を自称。戦闘中に自らの「設定」を語るが、
彼女が語る「設定」はどれも明確には定まっておらず、ヒーローか侵略者なのかも曖昧。
これでも一応はカースを狩るために作られた人格だと言う自覚はあるらしい。
彼女の人格は小日向美穂のものなのか、『小春日和』のものなのか、彼女自身よくわかっていないようだ。
趣味は高笑い、侵略、カース狩り。あと日向ぼっこ。
中でもカース狩りに関しては、刀に溜まっている負のエネルギーが尽きると人格消失さえありえるため死活問題。
そのため、鞘に『小春日和』が収まってる間も、積極的に美穂をカースの下に連れ出そうと誘導する。
戦闘スタイルは負のエネルギーを肉体と刀に纏わせて、敵を「斬る」だけ。
『小春日和』の精神支配によって日本一の剣術使いと同等の能力を持つが、やはりやる事は「斬る」だけ。
ちなみに彼女の人格が出ている間、小日向美穂の意識と記憶が消えたりすることはない。


『万年桜』

名前の通り、ずっと花が咲き続けてる桜の木。
雨で萎れようが、風で散ろうが、虫に食われようが、人が枝を切ろうが、
次の日には満開の桜を咲かせてると言う、ヤバいくらい気合入ってる木。
なぜこの桜だけずっと咲き続けてるのか、原因も原理も未だに不明。
この桜のある公園は一年中あたたかな空気に包まれている。

(小日向ちゃんに外で日向ぼっこさせたかったけど、
季節を温かい時期に限定したくなかったから作った設定。)


『大蜘蛛のカース』

ただのやられ役の癖に妙に強い能力と高い知能を持った蜘蛛型の『色欲』のカース。
体から人間の思考力を麻痺させるフェロモンを出しており、
獲物がその毒にやられてる隙に、糸状の影を絡めて捕らえる。
捕らえた獲物は体内に貯蔵しつつ、快楽を与えてやることで、
生じた『色欲』の感情を自らのエネルギーにする。
フェロモンの影響を受けない機械などにはめっぽう弱い。
美穂は『小春日和』によって精神を支配されていたために、フェロモンが効かなかった。
何者かに作られたものなのか、感情由来のカースが独自に進化したものか、詳細は不明。