4スレ目>>30~>>47


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ここはとある教会。
小さいながらも内装は立派で、主祭壇の上方には意匠をこらした十字架がある。
そのさらに上には様々な色で作られたステンドグラスが教会内に光を取り入れている。

静寂に包まれた教会で一人の少女が椅子に座っていた。
その少女、緒方智絵里はそのステンドグラスをじっと見つめている。

そんな智絵里の後ろに一人の女性が近づいてきた。

クラリス「どうかしましたか?」

智絵里「ひゃ!」

ステンドグラスに夢中になっているところ急に後ろから話しかけられたためか智絵里は肩を震わせ小さく悲鳴を上げた。
そして恐る恐る智絵里は話しかけてきた女性、クラリスの方を向く。

智絵里「あ……えーっと……」

冷静に考えればクラリスは修道服を着ていたためこの教会のシスターであることはすぐわかるが、智絵里は何を話していいのかわからなくなっていた。


クラリス「私はこの教会でシスターをしているクラリスと申します。貴女のお名前は?」

クラリスは智絵里に優しく微笑みかける。

智絵里「あ……緒方……智絵里です」

クラリス「こんにちは、智絵里さん。この教会によくいらしてくださいました。奥でお茶でも出しましょう」

クラリスはそう言って教会の奥にある扉の方へと歩いていく。
智絵里はとりあえず立ち上がるが、おどおどしながら辺りを見回してその後

智絵里「ごめんなさい!」

頭を下げて謝った。しかしクラリスはなぜ謝られたのかわからなかった。

智絵里「その……勝手に教会の中に入っちゃって、きれいだったから、その……」

クラリス「かまいませんよ。基本的に開放されてますし、ここをきれいだと言ってくれる人を無下になんかできませんわ」

智絵里「あ……ありがとうございます」

それを聞いたクラリスは再び歩き出す。

クラリス「じゃあとっておきのお菓子を出しましょう。神父様には止められていましたけど、このかわいらしい客人をもてなさなければなりませんしね」

教会の奥の小部屋でクラリスは紅茶を淹れたカップを手に取って口へと運ぶ。

クラリス「自分が入れた紅茶ですが、我ながらほれぼれしますね。完璧ですわ」

そう言ってさらにもう一口、紅茶を口へと運ぶ。
そして机の上には小さな箱が置かれている。

クラリス「一つは神父様のですけど、今回ばかりは仕方ありませんね」

クラリスは箱のふたを開ける。
中にはショートケーキが二つ入っていた。
クラリスは迷うことなく取り出して皿に乗せた後、一つを自分の元へ、一つを智絵里の元へと置いた。

クラリス「どうぞ食べてください。遠慮はしなくていいですよ」

そう言いつつもクラリスの手にはすでに小さなフォークを手にしてケーキを小さく切っていた。

智絵里「あの……いただきます」

智絵里は少し気が引けたのかまずクラリスの入れた紅茶から手を付けた。


智絵里「……おいしい」

智絵里は自然と言葉に出していた。

クラリス「ありがとうございます」

智絵里の素直な感想にクラリスは微笑んだ。


クラリスはケーキを食べる手を止めずに智絵里に話しかける。

クラリス「ところで、私が言うのは何ですけど、この教会の何に惹かれたんですか?」

智絵里もケーキを食べながら答えた。

智絵里「えと……なんというか……よくわからないんですけど、ちょっと懐かしい感じがしたというか……」

クラリス「なるほど、教会に何か思い出があるのですね」

智絵里「はい、そんな感じです……それにこの教会、なんと言えばいいのかよくわからないんですけど……その、あったかいんです」

クラリス「ふふ……そう言ってもらえるとシスター冥利に尽きますね」

そう言ってクラリスはイチゴを口に入れた。


クラリス「この教会には私は小さいころから通ってました。そのころからこの教会は私にとって居心地のいい場所でしたから、そのように言ってもらえるということは私もこの教会を守っていけているという自信にも繋がりますわ」

智絵里「神様も……ちゃんとクラリスさんとこの教会のことを……見守ってくれてますよ!」

智絵里は先ほどまでの控えめなしゃべり方よりも、はっきりと言った。

 

 

ケーキも食べ終わって、クラリスは2杯目の紅茶を淹れている。

智絵里もかなり雰囲気に慣れてきたのか落ち着いて紅茶の香りを楽しんでいた。

そこにクラリスは急に思いついたように話を切り出す。

クラリス「ところでせっかく教会に来たのですから、懺悔、とまではいかなくとも何か悩み事でもありませんか。話せる範囲でいいですよ。悩める子羊を救うのも聖職者の仕事ですからね」

クラリスは少しだけ胸を張ってそう言う。
智絵里は少しだけ下を向いて考えた後、そのまま上目遣いになってクラリスを見る。

智絵里「じゃあ……すこしだけ、いいですか?」

智絵里は控えめに話し始める。

智絵里「前に、友達と喧嘩してしまったんです。ちょっとした考えの違いで……それ以来、会ってないんです」

クラリス「なるほど……それで仲直りをしたいということですか?」

智絵里「あ……いえ、仲直りはしようとしてるんです。一度はしようとしたんだけど……結局だめでした」

そう言った後、智絵里は頭を伏せてしまった。

クラリス「あら……それは残念でしたね」

智絵里「でも……今度こそ、仲直りしようと思って、いろいろ考えてるんです!」

頭を下げていた智絵里は再び顔を上げてクラリスの方を向き直した。

智絵里「でも、その仲直りの方法に、ちょっとだけ……自信が持てないんです」

クラリス「なるほど、それが悩みですか。その仲直りの方法というのは、自分の仲直りの手段ではなく相手のためにしようと思っているのですか?」

クラリスのその問いに対して智絵里は頷く。

智絵里「もちろんです。また……みんなで楽しく、一緒にいたいですから」

クラリス「なら、貴女のその正しいと信じた方法を、自信をもってしましょう。その気持ちは相手に必ず伝わるはずですから。これは私の勝手な想像ですけど、相手もきっとあなたと仲直りしたいと思っていますよ」

クラリスは、相手が智絵里のことを嫌っているという可能性も考えていたがそれは口には出さなかった。
この小さな少女が一生懸命になって悩んでいることだ。余計な不安を与えたくなかったのだ。

智絵里「本当……ですか?」

クラリス「ええ、もちろんですわ」

先ほどまで少し不安そうな表情で話していた智絵里だったが、その表情には笑顔が戻っていた。

智絵里「ですよね……わ、わかりました!がんばります!」

クラリス「ふふ、きっとうまくいきますよ」

 

 

 

 


日も少し傾き始めており、クラリスと智絵里は教会の前にいた。

智絵里「あのっ、今日は、ありがとうございました!」

クラリス「いえいえ、私も貴女と話ができて楽しかったですわ。よかったらまたいらしてください」

智絵里「……はい!今度は、私の友達も一緒に来てもいいですか?」

クラリス「もちろん、大歓迎です」

智絵里「では、また……です!」

クラリス「ええ、さようなら。また、ですね」

クラリスは去りながら手を振ってくる智絵里に対して小さく手を振り返した。

 

 

 


智絵里は日が沈み始めたころ、すこし人通りの多い通りを歩いていた。
その笑顔はまぶしく、道行く人はその笑顔を見てに少し心が癒される。

ちょうど、智絵里と偶然すれ違った本田未央もその笑顔に癒されていた。

未央(いやー、まったくかわいらしい子だったなー)

未央「まるで天使みたいだったよー、って私が天使だったか。あっはっは」

などど一人芝居をしてるので周りからは智絵里とは違う意味で目立っていた。

未央「あれ、そういえばあの子、どこかで見たことがあるようなー?」

未央はそこで足を止めて少し考えるが

未央「まぁいっかー。今日の晩御飯はなんだろなー!」

やはり本田未央に期待するだけ無駄だった。

そう言ってのんきにスキップしながら晩御飯に思いを馳せ自宅への道を進んでいく。
もし、ここで未央が智絵里のことを思い出していたら、きっと大きく展開は変わっていただろう。

智絵里を見逃したことを未央は後悔するのかはわからない。

 

 

 

 

智絵里はとあるカフェへと入った。
静かな雰囲気の店内では各々が自分の時間を過ごしている。
智絵里はそのまま店内を進み一番奥の席へと座った。

そこには先客として飴細工を駆使して作られたスイーツをどこから食べようかと悩む少女、大槻唯がいた。

智絵里「ご、ごめんね。……ちょっと遅くなっちゃいました」

智絵里は少し頭を下げる。
その声でようやく智絵里が来たことに気づいたのか唯は視線を飴細工から智絵里へと移した。

唯「待ってたよー。全くどこで道草食ってたのさ」

そう言って唯は頬を少し膨らませた。

智絵里「ご、ごめんなさい!ちょっときれいな教会があったから、つい、ふらふらと、引き寄せられるように……」

智絵里の声はだんだんと小さくなっていく。

唯「協会?なんでまたそんなところに?」

唯は首をかしげる。

智絵里「その教会、神さまの加護がとっても強かったから、神さまのことが懐かしくなって、つい……」


智絵里の言葉に唯はあきれたような顔をして飴細工を突っつく。
その衝撃に立体的な形を作っていた飴細工は軽くバラバラになる。
その飴をフォークで器用に口に入れた。

唯「あのさ、あんまり全能神の目に留まるようなことは控えてほしいな。ゆいたちの行動に目をつけられたくないしね」

智絵里「で、でもそこのシスターさんが、優しくてね、その……」

智絵里は事の顛末を唯に話した。
それを聞いた後唯はため息を吐いて、くだけた飴細工の降りかかったケーキを口に入れる。

唯「なるほどね、つまり智絵里は、神の加護のある教会にホイホイ入っていって、そこのシスターに優しくされた上に、おいしい紅茶とケーキをごちそうになった挙句、悩み相談までしてもらったんだね」

そう言う唯の顔は満面の笑みだがそこはかとなく威圧感が滲み出している。

智絵里「う……あ……ひうう……」

唯のその威圧感に智絵里は少し涙目になっている。

唯「あたしがいろんなところ走り回ってる間に、ずいぶんとのんきにすごして、その上、天使の智絵里が逆に悩み聞いてもらうってどういうことじゃー!」

唯は立ち上がり両手を大きく振り上げ激昂する。
逆に智絵里はさらに体を縮こまって小さくなる。

智絵里「その……いい人だったよ?」

唯「そういうこと聞いてんじゃねー!あんたはほんとにやる気あんのかって聞いてんだじぇ!

答えろや!『ルシフェル』!」


唯は猫のように唸りながら息を整える。
しかし智絵里はさっきまでのように怯えておらず、唯の方を向く。

智絵里「当然、やる気はあるよ。唯ちゃん。私に計画の変更はない。宇宙も、地球も、アンダーワールドも、人間も、人外も、能力者も、一般人も、悪魔も、天使も、魔界も、天界の、それらを遮る境界線を、意識の差を、格差を、正義を、悪を、全部取り払って、その後神さまと私、同じ目線から、高さから、この世界を見て回る。それが私の信じた道だから」

その言葉に唯は目を丸くする。
智絵里の目の中にあるのは絶対的な自信どころではないことが唯にはわかった。

唯(もはやこれは……盲信だね)

自信の信じたことが絶対的に正しいと信じ切った目。その正しさがたとえ智絵里自身になくとも、それが正しいと思っている。

唯「やっぱりあたしのようになんちゃって暴食じゃなくて、正真正銘の、傲慢だね、ルシフェル」

唯はゆっくりと椅子に座りなおす。

唯「そう、智絵里は、そういう子だった」

智絵里「あ……す、すみません……」

ここで智絵里は我に返ったのか頭を下げて顔を隠す。

智絵里「わ、私は……神さまに、2回、挑みました」


1回目は、堕天前。人間の素晴らしさを、世界の素晴らしさを知って、人と暮らすために、他の天使とともに愛する神にその考えを理解してもらうために挑んだ。その考えは正しいと信じて。

2回目は、堕天後。自分の考えを理解しなかった神への怒りと、それでも正しいと信じる自分の考えを愛する神も理解してくれるはずという傲慢と共に挑んだ。

智絵里「だから3回目は直接は挑まない。だけどせめて私の考えがどんなものかを知ってもらう。少し強引にでも同じ視点で見てもらえば、神さまもわかってくれるだろうから……」

唯「そう、そのための『神堕とし』、イルミナティの目的なんだから。もともとイルミナティを作ることを言い始めたのも、智絵里だからねー★」

唯はそう言った後、飴細工の皿の傍らに置いてあるカフェラテのカップを手に取って口へ運ぶ。

唯「智絵里も何か頼む?ここのスイーツ結構おいしいんだじぇー」

唯は智絵里にメニューを差し出す。

智絵里「あ……今はいいです。おなかいっぱいなので……」

唯「ふーん、了解っす♪」

差し出したメニューを唯は智絵里の少し隣に置いた。

唯「というわけでー、とりあえずこれからのことを一旦おさらいしてみよっか

『神堕とし』にも手段はいろいろあるけどさー。ゆいたちのしようとしてるのは『境界崩し』でいいんだよねっ」

『神堕とし』を試みた悪魔や堕天使、はたまた人間はそれなりの数に及ぶ。
全能神は堕ちなかったが、様々な手段が模索されて、別の神では成功例もあった。

『境界崩し』は実際に行われたことはないが、確実性が高い手法の一つとして考えられた。
その名の通りこの『世界』と『天界』の境界を無くして上位の世界と考えられている天界そのものを堕とす事である。

唯「でもこれがなかなか難しいんだよねー」


世界の境界はバランスによって成り立っていて、たとえなくそうとしても全世界の復元力によってすぐに元に戻ってしまうからだ。
しかし逆に言えばバランスを保ったまま、境界を無くせば状態を維持できるのだ。
天界に対する世界である魔界。その境界も同時に無くせば、バランスを保ち、維持できると考えたのである。

唯「だからこその必要な条件は境界があいまいになりやすい『混沌とした世界』と世界を繋げるための『接点』が必要になるけどさ」

智絵里「『あの日』のおかげで世界は、混沌としていますから、今がチャンス……なんです!」

条件の一つはほぼ整っている。
あとはもう一つ、『接点』が必要なのである。

唯「うーん、アンダーワールドや宇宙人とのコネはあるんだけどねー。重要な天界と魔界の『接点』がないんだよねー。ベルちゃんには振られちゃったし」

唯は腕を組みながらうなる。

智絵里「あの……魔界の『接点』はたぶん大丈夫です。アザエルちゃんが、いるので」

唯「あー……あー、なるほどなるほど、『暗示』はまだかけたままなんだよねっ?」


かつてルシフェルは人間と共に暮らすために神に談判し、反抗した。
ルシフェルは神とともに堕天をしたかったが、それを神は拒否したのだ。

ルシフェルは堕天して傲慢の悪魔ルシファーになっても変わらず神と共に堕ちることを願った。
その2回目の反抗の際に負けたルシフェルは神によってほとんどの力を奪われて、消滅寸前にまで追い込まれたのだ。

智絵里、ルシフェルはそうなることが、なんとなく予感はしていたので、その時ついて行こうとしたアザエルに暗示をかけたのだ。

『傲慢の証を持つものを私、ルシフェルと認識すること』

それと傲慢の証にもある呪いを仕掛けた。

『傲慢の証を持つものはアザエルを友人と認識し、傲慢の力を見たものはアザエルに関する違和感を感じなくなる』

その二つの暗示の力はいまだに智絵里によって制御されていた。

智絵里「さすがに……アザエルちゃんを、あのとき連れていくわけにいかなかったから……」

智絵里の友人を大切に思う気持ちはたとえ独善であっても本物である。
ゆえに無事では済まない戦いに友人を連れていくのを拒んだのだ。


唯「でもその暗示に使った力ってかなり強い力じゃなかったっけ?その力を残しておけば全能神にも勝てたかもーみたいなことはなかったの?」

智絵里「え……まだ余裕はあった気がするけど……」

唯「……智絵里って天使だったのに力はほんとに超・神級だよね~」

智絵里「……とにかく、計画実行前には、暗示は解こうと、思ってるんです。きっと私以外の、お友達も……できたと思うので」

智絵里はアザエルの交友関係の乏しさを心配していたので、そういった暗示をかけたのも理由の一つであった。

唯「だけど、堕天使のアザエルだけじゃ魔界の『接点』としては弱いから純粋な悪魔も仲間に欲しいと思うんだよねー。
だったらアザエルのお友達にも手伝ってもえればいいと思うな☆」

智絵里「たしかに……それも、いいですね」

唯(証持ちの悪魔、傲慢のルシファーなら『接点』としても申し分ないかも)

唯「……うひひ、だけどアザエルに関しては、暫くはそのままにしておいた方がいいかも。多分今はちょーっと忙しいだろうしっ☆」

智絵里「?」

智絵里は何の事だかわからず首をかしげた。

唯(泳がしておけば今のルシファーを魔界からつれてきてくれるだろうしね☆)

 

唯「あとは天界の『接点』。どっかに天界の神とか天使でも落ちてればいいんだけどなっ!」

 



緒方智絵里(??)
職業 イルミナティ創設メンバー
属性 天使
能力 不明

かつて神にも等しい力を持ったといわれる大天使長、ルシフェル
人間と共に共に過ごすために、神と堕天をすることを目的に神に反乱を起こしたが失敗。
その後魔界に落とされ、初代傲慢の悪魔ルシファーとなり再び神に挑むも失敗。その際に力をほぼすべて無くし、消滅寸前までになった。
その後バアルに回収されて人間の世界ですごしてきた。『魔』の力はほぼすべて無くしていたが、天使としての力は回復していった。
イルミナティ創設の言いだしっぺは彼女だが、あまり仕事はしていない。
人間であっても神であっても悪魔であっても誰にでも優しいマジ天使。
ただし独善的であり、自分が正しいと思ったら絶対に曲げることはない。これが傲慢である理由になっている。
緒方智絵里は現在名乗っている名前。
アザエルとは天界にいた頃からの友達。

境界崩し
世界を隔てる境界線そのものを取り払う儀式。
必要条件として『混沌とした世界』と『接点』が必要。
混沌とした世界によって境界があいまいになり、その上で『接点』としてその世界と深いかかわりを持った者が必要。
また世界の復元力によって境界をなくしてもすぐに再生してしまうので魔界と天界、両方の境界を同時に取り払ってバランスを保たなければならない。
『あの日』によって世界は混沌としているが、この儀式にはさらなる混沌が必要になる。
また世界内のあらゆる『境界』を無くしておくと、さらに確実性は上がる。
智絵里たちではすでに魔界や天界とのつながりは途絶えているので『接点』にはなりえない。