4スレ目・その2

223◆UCaKi7reYU[sage]:2013/07/14(日) 19:14:24.11ID:0mDWRzEW0
やっと完成した…なんだか難産なうえにとんでもない事にしてしまったけど投下してみます。

例によってグダグダですがどうぞ。
224◆UCaKi7reYU[sage]:2013/07/14(日) 19:16:11.02ID:0mDWRzEW0

「むふふ……皆さん頑張ってますねぇ♪」

未だ混迷を極める憤怒の街、その中の一角に日菜子の姿はあった。

各組織とカースの攻防戦は時間が経つとともに激しさを増し、一向に解決への糸口を掴むことはできないでいた。

だが、ただ待つばかりではないのがヒーロー達だ。






例えば、黒い噂が絶えず衰退への道を辿るかと思われた櫻井財閥が決死の調査で作り上げたという『地図』。

例えば、大自然の使者達がやり遂げた『救出』。

例えば、稀代の魔法使い達が作り上げた『防壁』。

例えば、気迫とともに舞い込んできた『烈風』。

例えば、新たな絆を胸に秘めた『草花』。

例えば、友に支えられた『降雨』

少しずつ、けど確実に希望という名の可能性は芽生えてきた。






――――――しかし。
225◆UCaKi7reYU[saga]:2013/07/14(日) 19:17:10.14 ID:0mDWRzEW0

むしろ本番はこれからだと日菜子は思っていた。

地下から強引に突破してきた日菜子と愛梨の二人だが、既に突入していた者達を影から支援するために二手に分かれて動くことにした。

愛梨の方は今頃は街の各所を飛び回っているだろう。

対して日菜子はフラフラと街中にいくつか点在する強い力を感じる場所を回っていた。

そして、その途中でいくつかの『異常』を確認したのだ。

「………むふふ、癒しの雨で弱いのはきえましたが……少しだけ遅かったみたいですねぇ」

「グガ…グギギギギギギ」

小さな通りの中、数体のカースが不気味に体を震わせていた。

まるで―――その内側から何かが飛び出そうとしているように。

「それに……どうやらゲストも来ているようですよぉ?」

ちらりと背後を見れば、アスファルトからにじむように、突き破るように『呪いに覆われた蛇龍』が姿を現していた。

「前には呪い、後ろにも呪いですかぁ……むふふ」

普通に考えれば、絶望的な状況だ。

「……仕方ないですねぇ、本当に皆さん頑張ってますから―――」

しかしそれでも日菜子はいつもどおり仮面を片手に佇み、口角をつり上げ本当に楽しそうに嗤う。

「―――日菜子も、しっかりお手伝いしますねぇ♪」
226 :◆UCaKi7reYU[saga]:2013/07/14(日) 19:19:41.74 ID:0mDWRzEW0

瞬間、数体のカースから孵化するようにその内側から『新たなカース』が生まれる。

―――一つの鋭角を掲げた黒馬に、

―――二つの大翼を持った黒鳥に、

―――三つの尻尾を生やした黒蜥蜴に、

―――四つの尖牙を見せつける黒狼に。

同時に、背後から日菜子を飲み込まんと蛇龍が迫るが空から降ってきた5本の剣に阻まれる。

「……さぁ王子様、久しぶりのデートですよデート♪」

ずるりと、蛇龍が3体に分裂し三方向から飛び掛かって来るのを剣を壁のように並べて防ぐ。

「ジャマナンダヨオオ!!」

そこに額の角を突きだしながら突進してくる黒馬をひらりと避けると、分身一体ともつれるように激突した。

「メザワリイイイイイイ!」

「オマエタチガアアアアア!!」

「むふ、激しいんですねぇ♪」

続いて狼が牙を剥きながら飛びかかり、更にその後ろから蜥蜴が尾を振り回して迫るがそのどちらも日菜子の服にさえ触れない。

「オレハワルクネエエ!!」

「あぁ、そんな人前で激しいのはこまりますぅ♪」

くるりくるりとステップを刻み、足元に滑り込んできた小さな蛇は宙に少し浮かせた剣を足場にして避け、急降下してくる黒鳥に対しては剣のカーテンで目くらましをして攻撃範囲から悠々と逃れる。

「王子様は相変わらずダンスがお上手ですねぇ……むふ♪」
227 :◆UCaKi7reYU[saga]:2013/07/14(日) 19:23:18.02 ID:0mDWRzEW0

蛇が、馬が、狼が、蜥蜴が、鳥があるときは正面から、あるときは死角から、あるときはなだれ込むように襲いかかるがその全てを避け続ける。

「ならもっともっと踊りませんかぁ?…むふふ♪」

そして、最初からそうなるように打ち合わせてあったかのように五体のカースが一箇所に固まり、日菜子はその輪の外に出ていた。

「さぁ王子様、前戯はここまでですよぉ♪」

くるくると仮面を手で弄び、どこまでも余裕を崩すことなくカースに背を向ける。

刹那の膠着、そして怒涛の勢いで五体のカースが日菜子を飲み込もうとして―――

「32の英雄に告げる、その刃を以て姫君を守護せよ……なぁんて、むふふ♪」

その直前に、カースに対して全方位から剣が突進………その数、32本。

馬を切り裂き、鳥を突き刺し、蜥蜴を断ち切り、狼を撥ね飛ばす。

「これで終わりなんてつまらないですよねぇ♪」

しかし、その中を蛇龍だけが離散集合を繰り返し生き残っていた。

「やっぱりですかぁ……さぁどうしましょうか、王子様?」

言うほど困った様子は無く、地を這いずりながら暴威を振るう蛇の猛攻をひらひらと避け続けながら日菜子は思案する。

「こういうの、実は日菜子ちょっと苦手なんですよねぇ…」

状況は互角、というよりもキリがないと言ったほうが正しい。

切っても突いても叩いても潰しても、生半可な物理攻撃では蛇龍にはダメージと成りえない。

逆に、蛇龍が幾ら分裂を繰り返そうが日菜子の手数は尽きることがない。
228 :◆UCaKi7reYU[saga]:2013/07/14(日) 19:24:52.48 ID:0mDWRzEW0

無数の小さな蛇が足元を狙う、数多の剣が全て切り裂く。

蛇の胴体を複数の剣が断ち切る、二つに分かれた体がそれぞれ動き出す。

「キリがないですねぇ………むふふ、なら少し趣向を変えてみましょうかぁ♪」

直後、今まで無数にあった剣が消失し代わりに赤青緑黄の4色の剣がそれぞれ日菜子の周囲に現れる。

「物語を盛り上げるには、不思議な道具も必要ですからねぇ…」

いつの間にか片手でもっていた仮面が消えていた日菜子は、しかし気にすることはなく緩やかな動きで赤い剣を手に取り、両手で振り下ろす。

「………例えば、聖剣とか魔剣と言ったものはどうでしょうかぁ…むふふ♪」

「!!?!」

振り下ろすと同時に、その直線上が全て激しい炎に包まれ片方の分裂体もろとも焼き尽くす。

「久しぶりに使うとちょっと疲れますねぇ、王子様?」

振り下ろした隙を突こうとするもう片方の分裂体に黄色と青色の剣が盾になり防ぐ。

更に、すっと赤い剣を手放した日菜子が今度は緑の剣を手に取り腰だめに突き出すと強力な突風が巻き起こり吹き飛ばす。

続いて青い剣を手に取り地面に突き刺すと日菜子を中心に氷の障壁が出来上がり先ほど炎に飲まれたはずの分裂体が地面から飛び出して来て激突する。

「むふ♪これでチェックメイトですよ!」

最後に残った黄色の剣を手に取り、氷の壁をなぎ払うように一閃。

同時に先行とともに扇状に広がった雷撃が分裂体の両方を貫き、飲み込んだ。
229 :↑誤 先行→閃光 ◆UCaKi7reYU[saga]:2013/07/14(日) 19:27:07.36 ID:0mDWRzEW0

「………あぁ、これは厄介ですねぇ」

四色の剣を展開しながら、日菜子は倒れ伏した蛇龍を見る。

正確には、その中心部、核があるであろう繭の中身を。

―――その中には、何も入っていなかった。

「…さぁ皆さん、これからが本番みたいですよぉ?」

ズルズルと、大きな何かが這いずる音が地面から聞こえた。

同時に、何か鳥が羽ばたくような音が空から聞こえる。

「………むふふ♪不謹慎ですけど、王子様はやっぱりこういった混沌としたことが好きなんですねぇ♪」

――――――オオオオォォォォ……

ふっと、巨大な影が空を覆った。

「…さぁ、行きましょうか王子様♪」

一度空を見上げた後、日菜子は再び正面を見据える

―――その視線の先では、ドロリと、『2体の蛇龍』が地面から現れる所だった。

「この様子だと『親』は地下のようですねぇ……ですけど、アレも放っておけませんし……困りますねぇ」

もう一度、日菜子は空を見上げる。

―――そこには、後に『憤怒の翼竜(ラース・ワイバーン)』と呼ばれる強大なカースが羽ばたく姿があった。


続く?
230◆UCaKi7reYU[saga]:2013/07/14(日) 19:28:37.34 ID:0mDWRzEW0
『同時刻』

―――憤怒の街への道路。

「はぁ、まったく酷い話だにゃ!」

「……ええ」

「だいたい水臭いにゃ、せめて一言くらいは欲しいにゃあ」

「…そうね」

「ま、ちゃっちゃと見つけてパパッと終わらせて帰るにゃ、帰って焼肉にするにゃ!!」

「今日は鯖の塩や「アーアーキコエナイニャアア」」

「…ま、バカやってないでそろそろ行こうかにゃあ、嫌な予感がビンビンするけど放っておくってのは無理な話にゃ」




「その通りね……準備はいいかしら?………みく」

「バッチリ完璧だにゃ!―――のあチャン!」


憤怒の街に、新たな新たな役者が加わる。
231 :@設定◆UCaKi7reYU[saga]:2013/07/14(日) 19:33:28.35 ID:0mDWRzEW0

・『憤怒の翼竜(ラース・ワイバーン)』
→一旦は沈静化するかと思われた憤怒の街に現れた巨大な翼を持った大型カース。姿は俗に言うワイバーンそのもの。
上空から憤怒の街を旋回し人の姿を発見しては攻撃を仕掛けてくる。
また、生半可な攻撃ではダメージを与えられず更に口からカース弾を吐き出してくる強力な存在。
しかし、その大きさ故に小回りがきかず、一旦地に引きずり下ろす事ができれば勝機は見えてくる。

・『嫉妬の蛇龍・量産型』
→多少弱体化した代わりにわらわらと地面から現れる嫉妬の蛇龍の量産型。
弱点であるところの繭はオリジナルと違い何も入って無い。
憤怒の街のどこかに生み出しているオリジナルが居るため、一定時間が過ぎると増える。

・『獣型カース』
→憤怒の街に出現するのはユニコーン、蜥蜴、鳥、狼の四種類。
それぞれが普通のカースよりは強いが雨のおかげで多少は弱体化している。

・『日菜子の能力・補足1』
→いつもはなんの特殊能力のない剣を幾つも作り出し戦っているが、風や炎に氷と雷等など特殊な武器も作り出せる。
ただし、その場合は多く作り出すことができず、更に自分の手で振るわなければ能力を使うことができない。

イベント情報
1・ボスカース、憤怒の翼竜があらわれました!
2・嫉妬の蛇龍が多数現れました!
3・愛梨・日菜子が憤怒の街を徘徊しています
4・のあ、みくが憤怒の街に現れました。
232@設定◆UCaKi7reYU[saga sage]:2013/07/14(日) 19:35:51.10 ID:0mDWRzEW0
投下終了……好き勝手やった結果がこれだよ!

なんか色々無理やり感がありますが、何か問題があればどうぞ

それではおめ汚し失礼しました。
 
244◆zvY2y1UzWw[sage saga]:2013/07/15(月) 00:54:51.11 ID:usembZnn0
ユズちゃん先生の魔界講座と憤怒の街関連で投下します
245◆zvY2y1UzWw[sage saga]:2013/07/15(月) 00:55:33.70ID:usembZnn0
「ただいまー」

「ユズ、帰ったぞー」

「姫様、蘭子様、今日はお早いお帰りですね…」

「ちょっとあの街に近いから警戒態勢だそうです。午前授業で終わりました。あ、貸したゲーム、やってくれてたんですね。」

帰宅してみると、ユズは蘭子のゲームを借りていたようだ。

「…ユズ、一体何をしている…?」

「魔術の研究ですよ。…あー!姫様アタシを可哀想な人を見る目で見ましたね!誤解ですから!本当に役に立ちますから!」
246 :◆zvY2y1UzWw[sage saga]:2013/07/15(月) 00:56:13.58 ID:usembZnn0
「あー…そうかそうか。」

「もう…姫様、問題です。魔力管理人の古式の呼び方は?」

「…忘れた。」

「なんなんですか?」

「古式の呼び方では魔術管理人だったのです。そのため契約の際は魔術管理人と名乗る必要があるのですよ。」

「魔術に関する勉強をしていても何の不思議もないと言い張りたいのか…」

「結構ややこしいんですねー」

「まぁ私を召喚できる魔術師なんて、きっと世界を自在に操れるような輩でしょうけど…。役職持ちは強制召喚ではないですし。さて、今日の講義は『世界』です。」

ユズが本を持ちながら講義を始める。魔術の基礎であったり生い立ちであったり魔法と魔術の違いであったり…蘭子はそれをノートにまとめている。
247 :◆zvY2y1UzWw[sage saga]:2013/07/15(月) 00:57:20.01 ID:usembZnn0
「異世界なんてもう珍しくもないと思いますが、意外と世界の境界はいまだにはっきり残っています。」

「その境界が比較的薄い魔界、人間界、天界…我々魔族や天使たちはこの3つを軸として移動できます。」

「…この3つ以外の世界もあるんですか?」

「はい。昔とある魔族たちが異世界へ争いから逃げるために旅立った記録もあり、確実にそれらの種族はこの3つ以外の世界にいるそうです。」

「…軸を外れて移動したってことですか?」

「そのとおり。かなりの人数で大規模な魔術結界を形成し、その結界に乗って世界を渡ったと推測しています。これは結構な無茶です。」

ユズの講義に蘭子は実に楽しそうに質問をする。…それとは対照的に昼子は暇そうなのだが。
248 :◆zvY2y1UzWw[sage saga]:2013/07/15(月) 00:58:21.73 ID:usembZnn0
「どういった理由で無茶なんですか?」

「そうですね…電車がレールを外れて大嵐の中を走っているような物です。それを魔力で制御しながら目的の世界へ飛んだということ…わかりますか?」

「はい、分かりやすいです!」

「よかった…管理塔はそんな世界の狭間に漂っています。世界を箱やボールのような形と考え…それを敷き詰めようとしてもできる隙間が世界の狭間なのです。」

「そして常に世界は動いており、時には激しく衝突することもあります。それでも世界同士には境界が存在し、お互いに干渉することがないのです。」

「…もしも境界が無かったらどうなっているんですか?」

「予測ですが…世界は一体化するでしょう。人間の言う天国も地獄も一緒になって…生死の境界も失うでしょう。きっと無法地帯です。キヨラさんが忙しくなるなぁ…まあ無理だとは思うけど…」
249 :◆zvY2y1UzWw[sage saga]:2013/07/15(月) 00:59:29.95 ID:usembZnn0
「…キヨラさんって誰ですか?」

「えっと…罪を犯した人間を裁く施設の職員さんです。全ての生物の罪を回覧することができ、重罪人の魂を処刑することも許可されています。」

「どんなふうに裁かれるんですか?」

「裁き方は簡単。罪の確認の後、無力化されて強制労働の刑です。」

「私も…裁かれますか?」

「そうですねぇ…『身の程知らずの罪』『嘘をついた罪』『ズルをした罪』『裏切った罪』…いろいろありますからねぇ…ぶっちゃけると裁かれたことのない魂はないですよ。」

「えっと…たしか最短は聖人と称えられたような人で…刑期二週間です。それより短いのは…まともに生きることのできなかった子供とかですね。」

半分眠っていた昼子が目を覚まし、話に加わる。

「ん…ああ…キヨラの話か。あいつの処刑器具やら拷問器具やらのメンテナンスの時の笑顔は恐ろしいぞ…」

「…キヨラさんは良い人ですから。それにいつも笑顔でしょう?蘭子様に先入観を植え付けないでください。」

「…喜々として新たに習得した処刑器具召喚魔術の『ファラリスの牡牛』とやらの説明をしてくれた件についての弁明は?」

「ないです。というかなんでそんな話聞いてたんですか…」

「怖いですね…」

「まぁ、能力の悪用をしたり誰かの罪を誰かに教えたりした途端に自分の能力に殺される職業ですからねぇ…そういう人が選ばれるのかも。」

「…あ、処刑を受けた魂は二度と思考できる生物に転生できなくなるんですよ。」

付け足すようにユズが解説をする。
250 :◆zvY2y1UzWw[sage saga]:2013/07/15(月) 01:00:19.66 ID:usembZnn0
「例えばどんな生物にならなれるんですか?」

「虫とか草とか石とかです。」

「え…」

「犯罪者にはお似合いの末路だな。」

「悪魔もそうなんですか…?」

「まあ悪魔は基本的に緩和されますけど…その職員の持つカルテの顔写真に×マークがついたら処刑されます。大罪の悪魔のように例外もありますけど。」

「へー勉強になります!」

(そういえば蘭子は我の配下になったんだったな…すっかり忘れてたぞ。なら魔界について詳しくなっても損はないか…)
251 :◆zvY2y1UzWw[sage saga]:2013/07/15(月) 01:00:54.73 ID:usembZnn0
同じ頃、竜帝キバことマナミは憤怒の街へ向かい地下を歩いていた。

異常なほどの感情エネルギー。力に飲み込まれない事はできるが問題はこのエネルギーの主だ。

怒りを解放したサタンや自分よりは劣るものの、感染するようにそれは広がり続けている。

…誰だかは知らないがまともな相手ではなさそうだ。そしてかなりの実力者だろう。

憤怒を司る者が二人とも正常なのにこれほどのエネルギーを振りまいている。

カースドヒューマンなどという呪われた人間のレベルではない。…誰か、魔界の者が補助をしている可能性が高い。

調べる必要がある。そう彼女は断定していた。

だから目立たないようにわざわざ地下から侵入しているのだ。
252 :◆zvY2y1UzWw[sage saga]:2013/07/15(月) 01:01:47.75 ID:usembZnn0
『ユルサン…コロシテヤルウウウウウウウウウウ!』

『ボクノタイセツナヒトヲヨクモオオオオオオオオ!』

『オワル、セカイハオワルウウウウウウウウウウウウ!』

『ウソツキウソツキウソツキウソツキイイイイイイイイ!』

湧き出るようにカースが生まれる。挟み撃ちの形で。

「邪魔だ。」

『~~、~~~~』
『冷気よ、大いなる我が力に従い、音すら凍らせるその身で我が平穏を奪う愚か者を永久の眠りへ送り込め!ヘルブリザード!』

竜族言語魔法と魔術の同時使用。

人間として魔王の城で生きている間に身に着けた術。

右手に魔力で作った竜の顔を模したパイルバンカーから青い業火が吐き出され、左手からは命の灯を掻き消す猛吹雪が襲い掛かる。

通路の前後にそれらはそれぞれ襲い掛かり、カースを掻き消す。

綺麗に片付いた後、魔力の残骸が残らぬように掻き消す。

嫌な予感がする。それも行かなければ後悔するタイプのものだ。

僅かな不安を振り払い、マナミは街へ向かって地下のさらに奥へ歩き出した。
253 :◆zvY2y1UzWw[sage saga]:2013/07/15(月) 01:03:41.49 ID:usembZnn0
イベント情報
・木場さんが地下から街に侵入しました
・目的は元凶の調査です

 

262◆TAACIbOrYU[sage saga]:2013/07/15(月) 20:11:31.95ID:CKnYa4lmo
今から投下します

※注意
胸糞が悪くなるような描写があります
263 :◆TAACIbOrYU[sage saga]:2013/07/15(月) 20:12:02.54ID:CKnYa4lmo
――ここは絶望と憤怒の覆う街。

――あちらこちらにカースが蔓延り、

――『憤怒』の呪いで赤く染まった一帯の空が、

――怨嗟の熱気で立ち上る悪意によって、

――蜃気楼のようにゆらゆらと揺らめく。

――辺りに漂う空気は、

――肌にべったりと纏わりついてくるような、

――気味の悪く、生温い瘴気。

――吸えば吐き気を催し、

――精神にも悪影響を及ぼす。

――聞こえるものといえば、

――悲鳴と怒号、

――怨嗟と呪いの声、

――何かが崩れ落ちる音、

――何かが潰れる音、

――何かが引きずられるような音。

――今……、

――この街の惨状を、

――――地獄、

――と、形容することに、

――誰が些かほどでも抵抗を抱くものか。
264 :◆TAACIbOrYU[sage saga]:2013/07/15(月) 20:12:29.86 ID:CKnYa4lmo
――この異空間において、

――人の姿などは影すら見えず、

――あるのは、

――悪意を撒き散らす化け物が、

――建物を、

――道を、

――広場を、

――我が物顔で占拠している光景だけだ。

――そのような中でなお、

――課せられた義務があるでもなく、

――ただ、己の正義感の赴くままに、

――奮戦する少女がいた。

有香「はああああ!!!」

――彼女の名は中野有香。

――空手の有段者であり、

――『あの日』能力を得た、18歳の女の子である。
265 :◆TAACIbOrYU[sage saga]:2013/07/15(月) 20:12:57.11 ID:CKnYa4lmo
――有香は、ただの空手少女だった。

――大した理由があったわけではない。

――女の子といえど、自分の身は自分で守れなければ。

――単純にそう考えた両親が、幼い時分に空手道を歩ませた。

――その結果、有香の眠っていた才能が開花した。

――小学生の頃には、付近に相手になる者はおらず、

――中学生にもなると、全国レベルの強さを誇るようになった。

――高校生に上がった頃、名実ともに最強となった有香は、

――その力を持て余すようになる。

――しかし有香は、その後も毎日の特訓を欠かさず、

――こんなことに意味など無いと知りながらも、

――変わらず最強の座を維持し続けた。
266 :◆TAACIbOrYU[sage saga]:2013/07/15(月) 20:13:23.88 ID:CKnYa4lmo
――『あの日』、

――唐突に、

――有香は、ただでさえ持て余し気味な自身の力を、

――更に、強化する能力に目覚めた。

――――身体能力の大幅な向上。

――それは、

――人間の限界を超えた力だった。

――具体的に、

――彼女の拳の速度は、音を超えた。

――彼女の足の運びは、秒速にして数十メートルという域に達した。

――ただの手刀で、鋼を曲げるほどの膂力を得た。

――更に、それらに耐えうる体力や頑丈さ、

――人知を超えた動きを支える、動体視力と反射神経をも手に入れた。

――有香は、

――この恐るべき能力を、

――自身でも意外に思うほど、すんなりと受け入れることができた。
267 :◆TAACIbOrYU[sage saga]:2013/07/15(月) 20:13:54.25 ID:CKnYa4lmo
―――
――


――先程から、有香の周りを数体のカースが取り囲んでいた。

――各々が激情をぶち撒けながら、彼女と距離を置きつつ、

――機を伺っては襲いかかり、

有香「は……っ!」

――パパンッ! という衝撃音と共に、

――近づいた者から吹き飛ばされていく。

――有香の対カース戦法は、

――一貫してこうだ。

――『二発殴る』。

――カースには、弱点となる核が存在するが、

――それは泥のようなものに覆われており、

――一見して、何処に存在するのかがわからない。

――ならば、と、

――一発目の拳で、カースの周りの泥を吹き飛ばし、

――二発目の拳で、露出した核を砕く。

――……これを一瞬のうちに行う。

――至極単純だが、彼女にしかできないこのやり方で、

――事が起こってから今までずっと戦い続けている。
268 :◆TAACIbOrYU[sage saga]:2013/07/15(月) 20:14:28.67 ID:CKnYa4lmo
――この街に有香がいたのは、たまたまだ。

――外から助けに来たわけではない。

――彼女は、どこかの組織に所属しているわけでもなく、

――個人でヒーロー行為を行うようなこともしない。

――ただ、目の前に困っている人がいて、

――自分の力で、それをどうにかできるのであれば、

――彼女は喜んでその力を振るうだろう。

――そして今、

――有香の力は、人々を守るに足るものだった。

――――カースが発生した時、

――当然パニックが起きた。

――群衆が逃げ惑う中、それを襲うカースを、

――有香は片っ端から倒して回った。

――避難を助け、

――カースに囲まれた人を救助し、

――ほうぼうを走り回った。

――少なくとも、

――彼女の目の届く範囲に、

――犠牲になった人はいなかった。
269 :◆TAACIbOrYU[sage saga]:2013/07/15(月) 20:15:05.79 ID:CKnYa4lmo
有香「そろそろ行くか……」

――ここまで働き詰めだった有香は、

――能力による自身の驚異的な体力に、

――しかし、過信すること無く、

――ペース配分を考え、

――少しだけ休憩しよう、と、

――その場にとどまり、

――寄ってくるカースだけを倒し、

――しばらく体力の回復を図っていた。

――その結果、囲まれてしまった訳だが、

――元よりこの程度の数、問題ではない。

――まして、休息を終えたばかりなのだから、

――今、有香のパフォーマンスは絶好調である。
270◆TAACIbOrYU[sage saga]:2013/07/15(月) 20:15:41.10 ID:CKnYa4lmo
有香「ふっ……!」

――有香は手始めに、

――スッ、と腰を落とすと、

――一番近くにいたカースへと

――一瞬で詰め寄り、

――例のごとく、

有香「た――っ!」

――の掛け声で、

――『二発』殴った。

――パパンッ! という衝撃音が鳴り響き、

――核を砕かれたカースは、

――大げさに吹き飛んだあと、ゆるやかに消滅を始めた。

――この間、

――仲間がやられた事、どころか、

――有香が移動した、

――という事にすら、

――周りのカースは気付かなかった。

――そして気付いた時にはもう遅い、

――パパンッ! パパンッ! と連続で衝撃音が鳴り響き、

――何が起きてるのかもわからず、

――ただ仲間の数が減っていくのを眺めている内、

――次の瞬間には、自分の番だ。
271 :◆TAACIbOrYU[sage saga]:2013/07/15(月) 20:16:22.63 ID:CKnYa4lmo
有香「どうか無事で……!」

――カースの群れを片づけた有香は、

――今、逃げ遅れた人がいないか探している。

――本来なら、休む時間すら惜しかったが、

――有事に全力を出せなくては元も子もない。

――多くの人は、大きな建物に避難した。

――特に、病院にはカースを寄せ付けない能力者がいたので一番安全だ。

――それ以外の場所も、何かしらの能力を持った人たちが奮戦している。

――だがそんな建物の少ない、開けた場所……、

――公園や広場などには、まだ取り残された人がいるかもしれない。

――あらかた避難が終わった後、

――ようやくそのことに気付き、

――急いでその場に向かう有香の脳裏を、

――ちらり、と不安がよぎった。

有香(あれからどれだけ経っただろう……)

有香(逃げそびれた人がいたとして)

有香(もう……)

――と、最悪の状況を想定して、

――頭を振りながら、気を取り直す。

有香(悪いふうに考えても仕方が無い!)

有香(あたしは、今の自分にできることをするだけだ!)

――そう考える有香に、

――だが、現実はどこまでも非情であった。
272 :◆TAACIbOrYU[sage saga]:2013/07/15(月) 20:17:10.38 ID:CKnYa4lmo
有香「ぁ―――」

――結果から言えば、

――有香の不安は的中した。

――道路の真ん中で、

――人が、無造作に倒れている。

――一人や二人ではない。

――周りには血痕が飛び散り、

――中には、

――人としての原型を留めていないものもあった。

――――死んでいる。

――確認するまでもない。

――有香の常人離れした聴力が、

――この場に一つとして心臓の鼓動する音を聞き取れていないのだから。

有香「だ……」

有香「だれ……、か……」

――掠れた喉から、

――ようやく絞りだすように出た声が、

――言葉の発する者の居ないこの静寂で、

――やたら大きく響いて聞こえた。
273 :◆TAACIbOrYU[sage saga]:2013/07/15(月) 20:17:40.90 ID:CKnYa4lmo
有香「え……、うそ……」

有香「ゆめでしょ………」

――人は、

――信じ難い事態に直面した時、

――まず、これは何かの間違いだ、と思う。

――が、間違いであるはずが無いのだ。

――目の前の事実は絶対に覆らない。

――――人が死んでいる。

――じわり、じわりと、

――有香の胸に、

――受け止めきれない現実が、

――重圧となってのしかかってくる。

有香「だれ……か……」

有香「い……いませんか……」

――ガクガクと震える膝で、

――歩くということはこんなにも難儀なことだっただろうか、と思いながら

――まだ、希望が残っていないか、と、

――ゆらゆらと、

――幽鬼の如く、

――歩き続けた。
274 :◆TAACIbOrYU[sage saga]:2013/07/15(月) 20:18:08.57 ID:CKnYa4lmo
有香「…あ……、……ぁ…………」

――しかし、

――歩けど歩けど、

――屍の山だ。

――考えなかった訳では無かった。

――カースは人を襲う。

――襲われれば、人はどうなる?

――――死ぬ。

――当然だ。

――誰もがそこから目を逸らし、

――今日もまたヒーローがカースをやっつけたと称賛する。

――ヒーローがいるから大丈夫だ、と。

――その影で、

――救われなかった人は、

――抗う力の無い者は、

――憐れにもこのような姿を晒すハメになるのだ。

――わかっていたはずだ。

――気づかないふりをしていただけだ。

――目の届かない所で、

――――死んでいるのだ。
275 :◆TAACIbOrYU[sage saga]:2013/07/15(月) 20:18:36.46 ID:CKnYa4lmo
有香「あぁ―――」

――終わらぬ絶望の中で、

――一際、

――有香の目を引くものがあった。

――見なければ良かったのに、

――見てしまった。

――それは、

――若い女性だった。

――当然、鼓動は感じられない。

――でも、

――もしかしたら……、

――そんな夢想に縋りたくなるほど、

――有香は追い詰められていた。

有香「あの………」

――有香が、女性に触れる。

――もちろん、

――冷たい。
276 :◆TAACIbOrYU[sage saga]:2013/07/15(月) 20:19:03.70 ID:CKnYa4lmo
有香「く……っ……、…ぅ………」

――何故こんなことをしたのか。

――この状況で、

――希望が報われることなど無いと、わかりきっていたはずなのに。

――有香の瞳から涙が零れる。

――もう、だめだ。

――もう、耐え切れない。

――もう、沢山だ。

――この場を離れる。

――でなければ、心が壊れてしまう。

――撤退だ。

――成果など、もう何もない。

――そんな有香の目の前で、

――女性の遺体の腕から、

――ゴロン、と、

――何かが転がり落ちた。
277 :◆TAACIbOrYU[sage saga]:2013/07/15(月) 20:19:30.66 ID:CKnYa4lmo
有香「―――――――――――――あ」

――赤ん坊だった。

――この若い女性は、母親だったのだ。

――幼子の肌の色は青白く、

――触れずとも、

――冷たいのであろう、と容易に想像できる。

――鼓動も感じない。

――だというのに、

――持ち上げてしまった。

――軽い。

――冷たい。

――脈が無い。

――呼吸をしてない。

――これは、

――――骸だ。

――――死んでいる。

――――既に命が失われている。

有香「あ―――、――ああぁあ―――!!」
278 :◆TAACIbOrYU[sage saga]:2013/07/15(月) 20:20:02.33 ID:CKnYa4lmo
――若き母親の表情には、

――無念の形相が張り付いていた。

――恐らくは、

――幼い我が子を、

――命を賭してでも、

――守りたかったに違いない。

――そして、

――彼女の守りきれなかった、

――その赤ん坊の表情からは、

――はっきりと、

――恐怖と苦悶が見て取れた。

――この子は、

――あまりにも短い人生で、

――最期のその瞬間すら、

――安らかでは無かったのだ。

有香「あぁあああああああぁぁぁあああぁあぁあぁぁぁぁあああぁぁああああ!!!!!!!!」

――何故?

――何故だ!?

――何で!?

――どうして!?

――何の権利があって!!

――この母子の命を奪った!!
279 :◆TAACIbOrYU[sage saga]:2013/07/15(月) 20:20:31.12 ID:CKnYa4lmo
――ぶつん、と、

――有香の中で何かが切れた。

有香「殺すぅっっっ!!!」

――更に、

――呪いの言葉を吐いてしまったことで、

――それは決定的になった。

――タガが決壊し、

――心が、

――『憤怒』で埋め尽くされる……。


――――殺す。

――カースを一匹残らず、

――全て殺す。

――この惨事に乗じるものを、

――全て殺す。

――諸悪の根源である首謀者を、

――必ず殺す。
280 :◆TAACIbOrYU[sage saga]:2013/07/15(月) 20:20:59.95 ID:CKnYa4lmo
――理性が押し流され、

――ドス黒い感情が有香を支配し、

――彼女は『憤怒』に取り憑かれてしまった。

――今、この街で、

――こうなってしまったら、

――もう遅い。

――正気を失うほどの『憤怒』は、

――有香の周りに数多のカースを生み、

――そのカースが、

――彼女の『憤怒』の炎に油を注ぎ、

――また、炎がより一層燃え上がり、

――そして、そこからカースが生まれてくる。

――負の連鎖の堂々巡りだ。
281◆TAACIbOrYU[sage saga]:2013/07/15(月) 20:21:29.45 ID:CKnYa4lmo
――この炎は、

――この街から『憤怒』を一掃した時に、

――ようやくたち消えるものだ。

――その時が来るまで、

――中野有香は、

――カースでも、

――カースドヒューマンでも無い、

――『憤怒』の化身となり、

――その身を悪意で焦がしながら、

――目に映る全ての物を、

――衝動のままに破壊し尽くす。
282 :◆TAACIbOrYU[sage saga]:2013/07/15(月) 20:21:57.30 ID:CKnYa4lmo
有香「がァッッッッ!!!!」

――獣の咆哮を思わせる雄叫びと共に、

――目の前のカースを、『一発』の拳で、

――叩き潰す。

――有香の『憤怒』から生まれたカースは、

――真上からの岩塊の崩落にぶち当たったかのように、

――ぐしゃぐしゃにひしゃげて、

――泥も核もまとめて砕けた。

有香「ああぁ―――ッッッッ!!!!」

――次に、

――その隣に居た二体のカースへ、

――『一発』の裏拳を放ち、

――まとめてぶっ飛ばした。

――建物の解体などに使う鉄球の方が、

――まだ、可愛げがある。

――そんな衝撃をまともに受けて、

――核が無事である筈がない。
283◆TAACIbOrYU[sage saga]:2013/07/15(月) 20:22:25.56 ID:CKnYa4lmo
有香「お ォ お オ ぉ お―――ッッッ!!!!!」

――滑稽な光景だ。

――圧倒的な暴力を以って駆逐しているそのカースは、

――有香の『憤怒』から生まれたもので、

――彼女が『憤怒』に囚われている限り、

――永遠に湧き続けるのに、

――それでも有香は、止めない。

――内から溢れ出る『憤怒』を原動に、

――敵も味方も見境無く、

――ただ、力を振るい続ける者、

――狂戦士(バーサーカー)。

――そんな存在になってしまった彼女に、

――物事を判断する思考など、

――もはや残ってはいない。

――ただ……。
284 :◆TAACIbOrYU[sage saga]:2013/07/15(月) 20:22:51.49 ID:CKnYa4lmo
有香「コロスウゥゥウウゥウゥゥゥ!!!!!!」

――涙を流しながら、

――殺す、と、

――怨嗟の言葉を吐く有香に、

――本当に人を殺す事などできはしない。

――理性を失っていても、

――思考を放棄していても、

――判断ができなくとも、

――いざ、人に手をかける、

――その時に、

――彼女の脳裏を、

――今見たあの光景が、

――きっとよぎるのだ。
285 :◆TAACIbOrYU[sage saga]:2013/07/15(月) 20:23:17.94 ID:CKnYa4lmo
――有香に、

――人を殺める覚悟は、

――無い。
286◆TAACIbOrYU[sage saga]:2013/07/15(月) 20:23:51.27 ID:CKnYa4lmo
中野有香(18)

ttp://24.media.tumblr.com/fa1111cc688e0b3a5e2d13fd17c8006c/tumblr_mpz2xryDoy1risnoxo1_1280.jpg

職業:高校生
属性:スーパー空手ガール ※現在は『憤怒』の狂戦士(バーサーカー)
能力:身体能力の大幅な向上

元々空手を習っており、全国クラスの実力者だったが
その力は『あの日』得た能力で、圧倒的と呼べるレベルにまで達した
どこかの組織に所属しているわけでも、野良ヒーローをやってるわけでも無いが
力を使って誰かを助けるということに躊躇は無い

現在、『憤怒の街』で『憤怒』に飲まれ暴走
基本的には自分の周りに湧いたカースを潰してるが
近づけば、敵も味方も見境無く攻撃してくる、というか区別が付かない
多分、相手が人間なら殺しはしないと思う、今回のトラウマのせいで
287◆TAACIbOrYU[sage saga]:2013/07/15(月) 20:24:26.10 ID:CKnYa4lmo
以上です
やりたいことをやりたいだけやった感
「え、これは……?」と思った方、俺も同じ思いです

A.パンチが音速を超えるんですか……?(震え声)
Q.バトルシーンなんて規模をでかくすりゃそれっぽくなんねん
……という俺理論で基本的に戦闘描写や設定は大げさに書いてます
この辺は、実際に書く人のさじ加減によると思ってますので、まあ
気にするほどの事では無いかと(目逸らし)

基本的に暴れてるだけです
浄化の雨で正気を取り戻した、みたいな感じでさらっと終わらせたり
天使には勝てなかったよ……、といった具合に退場させたり
最後までカースと戯れていた、的なスルーをするなりしてもらって全然構わないです
 
292◆yIMyWm13ls[sage]:2013/07/15(月) 21:38:29.35 ID:glOBqvf2o
おつおつ!

自分で生み出したカースを狩るとか虚しいな……。
ちょっと小ネタを投下。
294◆yIMyWm13ls[saga]:2013/07/15(月) 21:39:10.18 ID:glOBqvf2o


「…二人共、行っちゃいましたねぇ…」

私がイヴ非日常相談事務所に拾われて、私に不思議な力が残されてから私の日常は『非日常』になりました。

「もっとも、悪魔に憑かれてた時点で『非日常』だったのかもしれませんね…」

私に憑いていた『ルシファー』の記憶。
『傲慢の悪魔』がわざわざ私の元を去る際に都合よく記憶を消していってくれるなんて都合の良いことなんてありませんでした。

『雪菜、そこまで気にするならその記憶、完全に…とまで言わないが表面的に消すことも出来るんだぞ』

「この記憶は消せないです、悪魔に憑かれてても私がやったことです」

私に魔力があるお陰でイヴさんの使い魔のブリッツェンともお話が出来るみたいです。

『…雪菜、君がそこまで決めているなら私から言うことはない』

「ふふっ、それにこの記憶も悪いことばっかりじゃないんですよ♪」

私はブリッツェンの角から削りだして作ったワンドを掲げる。

『雷よっ!』

するとワンドの先端を中心にスパークが走る。

「『雷のワンド』の力を借りてですけど結構強力な魔法も使えます、きっと悪魔に憑かれてた時の魔力操作の記憶が無かったら
もうちょっと手間取ってました♪」

『それはいいが…天井焦げてるぞ…』

「えっ!?」

天井を見上げてみるとベージュ色の天井に黒々とした焦げ跡が…。

「…ひ、裕美ちゃんが帰ってきたら直してもらいましょう、そうしましょう♪」

「そ、そういえばブリッツェンは『憤怒の街』には行かなくていいんですか?」

とりあえず話題を逸らしておきます、ついでにさり気なく立ち位置をずらして焦げ目の着いた天井からも目を逸らします。
295 :◆yIMyWm13ls[saga]:2013/07/15(月) 21:40:15.57 ID:glOBqvf2o
『主に召喚されている時以外は雪菜を守るように言われているからな』

『それに雪菜、君はまだ力が不安定だ、それに変身能力も安定しないんだろう?』

「自分の体じゃない体って違和感が酷くってですね…身長とか」

何度やってもこれだけは違和感が凄い。『ルシファー』はよくああも他人の体を上手く扱えたものだと思います。

『…無理にその力を使う必要も無いんじゃないか』

「そうでもないですよ?別に完全に他人になる必要もないんですから」

『変身能力なんだから他人になるんじゃないのか』

「別に変わるのは私自身じゃなくても良い訳ですから♪」

「まぁ見てて下さいっ♪」

私は机の上にあった三角帽子を被り、誰も居ない方向にワンドを向ける。

「むむむぅ…!」

私は『ルシファー』であった頃の記憶を掘り返す。
一番多く変身した姿、多くの人たちを騙したあの姿を。

――そして彼女の持つ魂を狩る武器を。
296 :◆yIMyWm13ls[saga]:2013/07/15(月) 21:40:53.41 ID:glOBqvf2o
次の瞬間、私の握っていたワンドは姿を変え、見覚えのある大鎌に姿を変える。

「死神ユズだぞー!なーんてっ♪」

『…これは驚いたな』

「もっとも、私が鎌を使えるって訳じゃないので見掛け倒しですけどねっ♪」

私の手の中でそれは姿を変え続ける、裕美ちゃんのボールペン、イヴさんの箒、そして元のワンドの姿。

『しかし、これもやはり手品の域だな……』

「…やっぱりそう思います?」

「でもこれ、ちょっと面白いんですよ?」

『…面白い?』

「ほら、私の変身って『ルシファー』の劣化版ですからっ♪」

『威張ることじゃないんじゃないか?』

「いえいえ、そのお陰でちょっと凄いんですよ?」

私は再び雷のワンドを鎌の姿に変える。

「それで少しだけ魔力を加えるだけで……」

バチリ、バチリと鎌の刃の部分がスパークする。
297 :◆yIMyWm13ls[saga]:2013/07/15(月) 21:41:41.37 ID:glOBqvf2o
『…これはどういうことだ…?』

ブリッツェンが目を丸くします。
多分……丸くしているんだと…思います…?

「本当に『見掛け倒し』なんです」

「この鎌はあくまで『鎌の形をした雷のワンド』なんです」

『つまり変身させる前の性質を受け継いでいるということか?』

「私自身詳しくないから分からないんですけど多分そうなんだと思います」

『…そうか…』

私がそこまで話すとブリッツェンは唐突に黙り込みます。


『主は雪菜、君に自衛の手段を与えるために魔法を教え、さらには異能の制御を教えた』

「は、はい……?」

ブリッツェンがこれまで以上に真面目に話始めたので少し驚きます。

『それは悪魔に憑かれ、魔力の器が出来た君をこのまま帰すのはむしろ危険だと判断したからだ』
298 :◆yIMyWm13ls[saga]:2013/07/15(月) 21:42:11.36 ID:glOBqvf2o
「えと…それで結局どういうことなんでしょう?」

『君は充分に自衛以上の力を身につけている、君のしたいように生きるといい』

「…そうですか…」

『一般人として平和に暮らすのもいい、イヴ非日常相談事務所の一員として残るもよし、『アイドルヒーロー同盟』のような
場所で華やかな世界に身を置きたいなら文を送るように主に伝えよう、それが決まるまでここで魔法を学ぶといい』

『雪菜、君は元々は悪魔に憑かれた一般人だ…無理に『非日常』に身を置くこともないんだぞ?』

「…ブリッツェン、私は……」

考えがまとまらない。私はこれから何をして…このままここでイヴさんや裕美ちゃんと一緒に…?

…私は、私自身は…一体どうしたいんでしょう?
299 :◆yIMyWm13ls[saga]:2013/07/15(月) 21:43:18.04 ID:glOBqvf2o
終わり。

・大幅にプロフィールが変更されました。

井村雪菜(ルシファー)(井村雪菜の肉体年齢は17歳)

職業:悪魔
属性:傲慢
能力:メタモルフォーゼ

七つの大罪の一つ「傲慢」を司るルシファーの名を持つ悪魔。
「傲慢」のカースは彼女が作り出す黄色の核が原因で生み出される。

彼女自身「傲慢」に含まれる「虚飾」の感情が非常に強く、常に自分の姿形を別の姿形に変形させており、本物の彼女を姿を見たことある者は数少ない。
当然だが「傲慢」の感情も強く、いかなる場面においても余裕は崩さない。

何故、人間界へ降りてきてカースを生み出すのか。
その目的は今は不明である。



井村雪菜(17)

職業:見習い魔法使い
属性:雷寄り(杖のせいで)
能力:メタモルフォーゼ

元七つの大罪の一つ「傲慢」を司るルシファーの名を持つ悪魔。

『ルシファー』であった記憶を残したまま新たに『魔力の器』が出来た人間。

見掛けだけの『メタモルフォーゼ』の能力が残った。

メイクをすることで他人に変身することが出来る。

一部分だけを変える『部分変身』にはメイクが要らない模様。


Item 雷のワンド

所有者 井村雪菜

ブリッツェンの角を削りだして作ったワンド。
雷の魔法や魔術をサポートしたり強化したり出来る。
独力で放電も出来る。


雪菜さんも元々ただの一般人なんだよなぁって思ったらこういうお話に。
このまま誰かが拾ってくれてもいいし日常に戻して戦える一般人にしてもいいです。
まぁこのままイヴさんの所に残っててもいいしね!

 

303◆hCBYv06tno[saga]:2013/07/15(月) 22:45:22.99ID:nvdBYqNFO
投下します

ちょっとグロテスクな表現があるかもしれませんので、ご注意を
304◆hCBYv06tno[saga]:2013/07/15(月) 22:46:10.10ID:nvdBYqNFO
----夢を見た。

----暗い…暗い…一面真っ黒な場所。

----そこに一人の小さな女の子が泣いている。

「どうしたの?何処か痛いの?お姉ちゃんに話してみて?」

----優しく声をかけると、女の子は顔を上げて………
305◆hCBYv06tno[saga]:2013/07/15(月) 22:47:20.96 ID:nvdBYqNFO
--------

北条加蓮は、世界を呪う存在だった。

病に侵され、周りを妬み、嫉妬にかられ、呪いを振りまく者となった。
自由も、友達も、家族も、健康も、思い出も、娯楽も、何もかも手に入らず羨んでいた。

いつも彼女はひとりぼっちだった。

けど、今は違う。

一度死に、新たな生を受け、今まで自分ができなかったこと。
ただ羨むことしかできなかったことを、自分の手で掴もうとしている。

もし、自分が≪彼女達≫に出会わなかったら、取り返しのつかない事をやらかしてしまっていたと。

だからなのか……今、彼女は……
306◆hCBYv06tno[saga]:2013/07/15(月) 22:48:34.76 ID:nvdBYqNFO
「んっ……よく寝た」

加蓮が目覚めると、そこは自分が住んでる女子寮ではなかった。

荒れ果てた家、外は雨が降っていた。

だけど、彼女を起こしたのは、雨でも、小鳥の声でも、目覚まし時計の音でもない。

『ゼッタイニユルサナイ!ゼッタイニダ!』
『マジデムカツク!!』
『オコダヨ!』

憤怒のカース達の叫び声。

外を見ると、鳥、トカゲ、一角を生やした黒馬の姿をした黒い泥がむかってきてるのがわかる。

「起きていきなりなんだ…」

溜息を吐きながら、建物から飛び出し、背中から黒い翼を生やし、右手に黒い槍を作り飛びあがる。
307 :◆hCBYv06tno[saga]:2013/07/15(月) 22:49:52.19 ID:nvdBYqNFO
どうして、彼女がここにいるのか?

憤怒の街をテレビで見た時、≪何か≫を感じていた。

その何かがわからず、いつも通りに過ごしていた。自分では何もできないと無力感にかられながら。

ある日、心配で憤怒の街の様子を見に行った時、それを感じた。

元カースドヒューマンだからこそわかる。カースドヒューマン特有の呪いを……

恐らく、憤怒の街を作り出したのはカースドヒューマンだ。
そう思うと、加蓮はいてもたってもいられなかった。

それは、過去の自分と向き合うかのように…

「もしかしたら、私がコレをやっていたのかも」

ポツリと呟くソレはどこか悲しそうだった。
308 :◆hCBYv06tno[saga]:2013/07/15(月) 22:51:36.58 ID:nvdBYqNFO
場面は戻る。

「はぁぁぁぁあ!!!」
空中で、鳥の鋭い嘴を避け、背中に降り立つと、そこに槍を突き刺す。

鳥は叫び声をあげながら、暴れまわる。

その隙をついて、トカゲが建物の壁にはってきながら、飛び上がり、加蓮へとくらいかかろうとする。

「くっ……」

加蓮はとっさに背中に生えた翼を無数の蛇に変え、向かってくるトカゲを核ごと食いちぎった。

だが、翼を消した事により、暴れ疲れた鳥と共に地面に落下して行く。
309 :◆hCBYv06tno[saga]:2013/07/15(月) 22:54:01.66 ID:nvdBYqNFO
『ブチコロォォォオス!!!


「あっ………」

グサッ!!!グチュッ!!グチャッ…

待ち構えていた黒馬の角が、加蓮の腹を貫いた。

ズブズブと奥へと食い込む角をつたい、血がポタポタと流れ落ち、痛みが身体中に走り出す。

作り出してた槍も蛇も全部泥となり溶けて消えて行く。

降っている雨のせいなのか体温が下がっていくのがわかる。

----私、また死んじゃうんだ……

そう思考しながら、加蓮の意識が途切れた。
310 :◆hCBYv06tno[saga]:2013/07/15(月) 22:55:39.33 ID:nvdBYqNFO
----あれ?私死んだよね?ここはどこ?

『そんなのじゃ、加蓮お姉ちゃんは死なないよ?』

----え?

『だって、奈緒の一部なんだから』

----そういえばいつもの子達もいって…あ、今朝の夢の…

『よかった。お姉ちゃんは私が見えて聞こえるんだ』

----どういう事?

『けど、ここでしか会話できないんだ……』

『もう時間みたいだけど、頑張ってね!!』

『また来てね。お姉ちゃん』

『だって……』
311 :◆hCBYv06tno[saga]:2013/07/15(月) 22:56:39.23 ID:nvdBYqNFO






ひとりぼっちはさみしいもんね 




 
312 :◆hCBYv06tno[saga]:2013/07/15(月) 22:57:58.62 ID:nvdBYqNFO
----

加蓮が目を覚ますと、それは自分が、ちょうど意識を手放してからまだ数秒もたっていなかった。

だからなのか、自分が意識を失っていた事にきづいてなかった。≪夢≫を見てた事もその内容も忘れている。

だけど、さっきと違い、自分の身体がまだ動けるのはわかった。
313◆hCBYv06tno[saga]:2013/07/15(月) 22:58:52.43 ID:nvdBYqNFO
「はぁぁぁぁあ!!!」
『!?』

黒馬は驚愕した。

確かに倒したと思った女がいきなり、動きだし、腹に刺さった自分の角を、右手から新たに作り出した黒い泥で、数匹の蛇を作り出し、絡ませて、へし折ったのだ。

そして、刺さってる角を抜き、投げ捨てた。

腹の傷は血が止まり、じょじょにだが、ふさがっていった。
314 :◆hCBYv06tno[saga]:2013/07/15(月) 22:59:50.89 ID:nvdBYqNFO
「お返しだよっ!」

そう言うと、一本の槍を作り出して、黒馬に投げつけた。

黒馬は避けようとするが、槍は途中で数十匹の蛇となり、黒馬に絡みついた。

暴れまわる黒馬だが蛇たちを振り払う事ができず、絡みつかれ、しめられ、噛みつかれ、食いちぎられていった。

バリンッ!

核を砕かれる音が響き、加蓮は疲れたようにその場にへたり込んだ。
315◆hCBYv06tno[saga]:2013/07/15(月) 23:01:08.82 ID:nvdBYqNFO
「……どうして?」

自分が先程、貫かれてた場所を触るが、傷跡一つなかった。

まるで、何事もなかったかのように。

だけど、敗れた服や血の跡からして、自分が一回重傷をおっていたのがわかった。

毎回、夢で言われた事や先程の夢の事を覚えてたのなら理解するだろうが、あいにく彼女は夢の出来事を一切覚えてないのだ。

また夢に入れば思い出すのだが……
316 :◆hCBYv06tno[saga]:2013/07/15(月) 23:02:02.00 ID:nvdBYqNFO
「………よくわからないけど、今は行かないと」

自分の身体に起こってる事だが、一回死んだ身としてはそのくらいでは動じないのか、はたまた考えるのが苦手な残念な子なのかわからないが。

彼女は立ち上がり、憤怒の街を進む。

自分と同じ過ちを犯してしまってる人を止めるために。
317 :◆hCBYv06tno[saga]:2013/07/15(月) 23:03:00.97 ID:nvdBYqNFO





『加蓮お姉ちゃん』

『私の始めての友達』

『今は奈緒の一部だけど』

『奈緒には絶対あげない』


ぜ  っ  た  い  に






終わり
318@設定◆hCBYv06tno[saga]:2013/07/15(月) 23:04:16.33 ID:nvdBYqNFO
・加蓮が憤怒の街に入りました。

・加蓮の中にナニカきました。

・やったね。加蓮ちゃん!友達が増えたよ!!

 

326◆zvY2y1UzWw[sage saga]:2013/07/16(火) 02:08:41.55 ID:zrwh3gmW0
夕美と菜々投下します
327◆zvY2y1UzWw[sage saga]:2013/07/16(火) 02:09:14.63 ID:zrwh3gmW0
精霊に選ばれた少女たちが降らした癒しの雨が降り注ぐ。

それを夕美は笑顔で受け止めていた。

体中に力がみなぎる。雨の日はいつもよりも調子がいいが、雨の中の精霊の力の影響かいつもよりいい感じだ。

「やっぱり水はいいねー水と太陽と空気があれば生きていけるし!」

「でもハンバーガーショップで『水だけ。』って言ったときはどこのラッパーかと…」

その時、菜々の背後にカースが現れる。

黒い、一本角の馬型カース。それが怒り狂っていた。
328 :◆zvY2y1UzWw[sage saga]:2013/07/16(火) 02:10:07.04 ID:zrwh3gmW0
「こ、これはユニコーン型カースですか!?初めて見ました!」

あわてて高く飛び上がり、突進を避ける。

「ナナは処女ですって!まったく!」

「突進しか能のない害獣かな?」

にっこり夕美は笑うと、近くにいた普通のカースに駆け寄り、手から緑色に光るネットのようなものを放出し、捕獲。

見る見るうちにカースが小さな種になってしまう。

普段なら結構疲れるのに、癒しの雨と相性がいいのか、全然そんなことはない。

その種を地面に投げ、ユニコーンの視界に入る。

「ほら、おいで。」

『ヤッテヤンヨオオオオオオオオ!!』

一直線に突進してくるそれの目の前に、いきなり大木が生えた。

角が突き刺さり、そこから一気に樹液が噴き出す。

もちろん地球の植物ではない。夕美の母星の植物だ。

その樹液は生物の呼吸器官から侵入し、息を止めて急速に腐敗させ肥料にする。

カースには呼吸器官はないようだが、粘着質の樹液は空気に触れていると高速で固まる。動きを制限したのだ。

…そもそも角が抜けないようだが。
329 :◆zvY2y1UzWw[sage saga]:2013/07/16(火) 02:11:18.95 ID:zrwh3gmW0
「そぉい!」

菜々が夕美に渡された竹槍でカースを貫く。ちょうど核にヒットしたようで消滅した。

「この植物…どうするんですか?」

「そうだねぇ…あ、いい事思いついた!」

その母星の木に触れると夕美は呪文のような物を唱える。

『生まれ変われ…適応せよ…恐れることはない…!』

すると密林に生えていそうな外見の木があっという間にクスノキになってしまう。

『魔除けの木、クスノキよ!癒しの雨の力に答え、祝福の地を形成せよ!』

夕美がぱっと腕を開くと木を中心に半径3メートル程の花畑がアスファルトを裂いて形成される。

その近くにいたカースは苦しみ悶え、消えてゆく。

「よーしよしよし。雨が降ってるからとはいえこんなにうまくいくとは…」

「これ、どういう雨なんですか?なんだかカースの勢いが減った気が…」

「癒しの雨だよ。精霊の力が宿ってるの。あの子達、成長したなー」

「精霊…あー!ナチュルスターの力ですか!」

「そうだね…街を救ったら改めて会いに行こうかなー?それに…」

「それに?」
330 :◆zvY2y1UzWw[sage saga]:2013/07/16(火) 02:11:54.49 ID:zrwh3gmW0
「森は海の恋人って言うしね!」

微笑みながらカースを消滅させていく。

最高にいい気分。今なら瘴気に包まれた、植物の全くない…あの忌々しいネオトーキョーだって植物化できそう。

…実際はまだ難しいのだけれど。…まぁそんな気分だ。

そんな彼女の上空を大きな影が横切る。憤怒の翼竜だ。

口から吐き出された弾が、クスノキをへし折った。

その瞬間。夕美の笑顔が般若のそれに変わる。
331 :◆zvY2y1UzWw[sage saga]:2013/07/16(火) 02:13:06.27 ID:zrwh3gmW0
急いでクスノキを再生すると、足元から童話の豆の木のように大きな植物が生え、夕美と菜々を上空へ運ぶ。

「菜々ちゃん、届く?」

「…やってみましょうか。ウサミン・バンブーショット!」

「ナチュラル・ソーサー!」

通り過ぎた竜に向かって菜々の腕に形成した小さな大砲から竹槍が飛び出し、夕美から円盤のようなエネルギーが襲い掛かる。

「グオオオオオオオ!」

しかしエネルギーは固い鱗を傷つけただけ。

比較的鱗の薄そうな足に竹槍がヒットするが、貫くことはできなかった。

「ちょっと遠かったですね…」

「…あんなに速いなら仕方ないね、はやく二人を探して4人でアイツを倒そう。…美世ちゃんは避難?」

「そこは聞いてみないと。以外に戦えるかもしれませんし。」

とりあえず木から降りると、二人は探し人を再び探し始めた。
332 :◆zvY2y1UzWw[sage saga]:2013/07/16(火) 02:13:54.97 ID:zrwh3gmW0
イベント情報
・夕美が肉食植物以外にも精霊の祝福を受けた木を設置し始めました。それぞれ複数設置しています
・翼竜の足に僅かに傷がつきました。

精霊の祝福を受けた木
浄化効果を持った花畑に囲まれた木。休憩所としてどうぞ。
魔力回復促進、疲労回復促進効果があります。
333◆zvY2y1UzWw[sage saga]:2013/07/16(火) 02:15:39.37 ID:zrwh3gmW0
以上です
夕美ちゃんがトラッパーとして本気出してきました
ナチュルスターにさらに興味がわいてきた模様

ちなみに
夕美ちゃんのキライ度
友達を悲しませる事>ネオトーキョー>欲深い人>>越えられない壁>>害虫・害獣
となっています

 

337◆lhyaSqoHV6[sage]:2013/07/16(火) 07:39:07.46 ID:JU1FnDSro
一週間以上過ぎちゃったけど、予約はいってないからいいよね!
水本ゆかり出来たので投下します

憤怒の街一切関係無いですごめんなさい
338◆lhyaSqoHV6[saga]:2013/07/16(火) 07:39:36.08 ID:JU1FnDSro

──宇宙の何処か──

真っ暗闇の空間に、何者かの声が響く。


「以上が、偵察ドローンから送られてきた映像だ」

「ふむ……ソラの洗脳プログラムが解除されるとはな……」

「我々でさえ解けなかったというのに……此奴は何者だ?」

「恐らく、地球人が『神』あるいは『悪魔』と呼んでいる者だろう」

「そもそも、我々とは全く異質の存在だよ」

「ソラの得た情報によると、中には因果律を意のままに制御できる者もいるらしい」

「なんと……そのような存在が闊歩しているとは、やはり特異な星であるな」


「それで、地球についてはどうするのだ? ソラの代わりを送り込むか?」

「いや、迂闊に手は出さん方が良いやも知れぬな」

「では見過ごすか? いつまた連中の文化に当てられた種族が、暴走するとも分からんぞ」

「……ここは私が行こう」

「!? 長官が自ら出向くというのかね?」

「今まで我らが成し得なかったソラの洗脳が解除された件もそうだが」

「地球人は、負の感情エネルギーを除去する術も持っているらしい」

「ともすれば、地球は我らの進化のカギとなるやもしれん……」

「……」

「滅ぼしてしまうのは早計だ……実際にこの目で、彼らの様子を見てみたいのだ」

「なるほど……では、我らは顛末を見守る事としようか」

「まあ、吉報を待っていてくれたまえよ」
339 :◆lhyaSqoHV6[saga]:2013/07/16(火) 07:41:34.69 ID:JU1FnDSro

声が止むと、暗かった部屋に明かりが戻った。
部屋の中央には、今しがた評議会での会合で長官と呼ばれた人物が座っていた。
見た目の年齢のほどは(地球人でいうと)15歳くらいの少女だ。

「ソラの自我が戻った……なんて」

少女は思いつめたように呟く。

「償いになんてならないかもしれない……」

「けど、傍に居ることで彼女の負担が減らせるなら……」

少女は手元のコンソールを操作し、かつて工作員を送り込み、そしてこれから自分も赴くことになる星を目の前のモニターに映す。

「地球……か」


少女は辺境の惑星である地球へ向け出立する前に、父親の下を訪れていた。

「お父様、お加減はいかがですか?」

円筒型の介護用チャンバーの中に横たわる男性──彼女の父親に語り掛ける。

「ユカリか……なんとかな」

ユカリと呼ばれた少女は、評議会での会話の内容を伝えた。

ユカリ「彼らに話は通しました」

ユカリ「私はこれから、地球へ向かおうと思います」

父「うむ……私がもう少し若ければ、お前にこのような役を負わせることもなかったろうに」

父親は苦々しげに呟く。


父「我らは結成当初より、目的の為に手を尽くしてきた……」

父「時には、人道にもとる非情な手段も用いてな」

ユカリ「……」

非情な手段……父の言葉にユカリは身につまされる思いを感じる。

父「だが、未だに宇宙から争いは絶えん……」

父「『先駆者』に追いつくまでの道のりは、果て無く遠い……」

父「すまんなユカリ……お前にまで背負わせてしまって」

ユカリ「いいえ……」

ユカリ「これは我々にとって……ひいてはこの宇宙に住む者達にとって必要なことですから」

ユカリ「地球へ行き、地球人について学べば、きっとその近道になると思うのです」

父「ああ……せめて、お前の無事を祈らせてくれ」

ユカリ「ありがとうございます……それでは、行って参りますね」

ユカリは父親に一礼すると、部屋から出ていった。
340 :◆lhyaSqoHV6[saga]:2013/07/16(火) 07:42:30.44 ID:JU1FnDSro

──宇宙管理局・太陽系支部──

宇宙連合の本部を離れたユカリは、地球まであと一歩のところに居た。
だが、どうやら懸念事項があるらしく、その顔は晴れない。

ユカリ「(さて……何事もなく太陽系にまでやって来たけど)」

ユカリ「(多分、諜報部の『彼』は、私の事を嗅ぎ付けているだろう)」

ユカリ「(そろそろ私を捕縛するために行動を起こすところだと思うけど)」

ユカリ「……」

ユカリ「(全てを話して、それでも納得させられなければ……その時はその時か)」

「動くな」

ユカリ「っ!」

突然背後から声をかけられ、身体を強張らせる。
背中には何か突起物が押し付けられている感触がある。
恐らく銃の類だろう。


「妙な真似はするなよ」

ユカリ「……あなたが来ることは分かっていましたよ、『CuP』さん」

「ッ!?」

背後の人物の狼狽している様子が、目に見えずともありありと伝わる。
恐らくユカリの指摘の通り、銃を突き付けているのは管理局諜報部の隊員──CuPで間違いないのだろう。

ユカリ「こちらに抵抗する意思はありません」

CuP「……ついて来い」
341 :◆lhyaSqoHV6[saga]:2013/07/16(火) 07:43:06.13 ID:JU1FnDSro

CuPに連れられ人気のない路地裏にある居酒屋に入る。
店の外見も内装も、雰囲気は場末のバーのそれである。

ユカリ「(ここは……諜報部の隠れ家の一つか)」

周囲に人の気配が無い事を確かめると、CuPが口を開いた。

CuP「それで、どうして俺の事を知っている? 何処から漏れた」

ユカリ「父の育てた諜報部の人員は優秀だと、知っていますから」

ユカリ「あなたが私の行動を察知するであろうことは予測できていました」

CuP「父の育てた……?」

CuP「ちょっと待て……父って、長官の事か?」

ユカリ「一線を退いて久しいですが、未だにそう呼ばれることもあるみたいですね」

ユカリ「お察しの通り、私の父……宇宙管理局初代長官は、『評議会』の構成員です」

CuP「な……なんてこった……」

目の前の男の表情を見るに、かなり動揺しているらしい。
自分が今まで追ってきた組織の一員が、元上司だと知らされたのだ。
ユカリにも、その心情は察するに容易だった。

CuP「……お前達は……何なんだ……何が目的なんだ……?」

CuPはユカリを睨みつけながら震える声で訪ねる。
ユカリは、評議会の結成理由と、その目的を語り始めた。
342 :◆lhyaSqoHV6[saga]:2013/07/16(火) 07:43:52.39 ID:JU1FnDSro

ユカリ「かつて我々に知性を授けた、創造主とも言える存在……あなたも聞いたことがあるでしょう」

CuP「『先駆者』か……でも、あれは単なるおとぎ話だろう」

かつて宇宙を席巻していたという超文明があったという。
現代においてそれが実在していたという確認は取れていないが、
宇宙連合内では口伝だとか、伝承といった形で話を聞いたことがある者も多い。

ユカリ「おとぎ話ではありません、彼らが存在していたとされる根拠は多く見つかっています」

ユカリ「彼らはより高次の存在へと進化を遂げ、肉体を必要としなくなり、その結果この宇宙──物質界から姿を消したのです」

CuP「……」


ユカリ「かつて起こった宇宙規模の大戦の理由、今では知っている者は殆どいないでしょう」

かつて起こった宇宙戦争……宇宙に住む者にとって忘れる事のない出来事である。
何時から、何が原因で始まったかも定かでないほどの長い年月を、宇宙に住む者達の間で争ってきたのだ。
その間に多くの種族が滅亡し消えていくこととなり、戦争が終わってしばらく経った今でも、その傷は癒えていない。

ユカリ「宇宙に住まうほとんどの種族は、先駆者の保護の下で繁栄し、文明を発達させてきました」

ユカリ「しかし、彼らが宇宙を去ったために、庇護を失った我らの祖先は怯え、嘆き、怒り……」

ユカリ「そして、いつ終わるとも知れない滅ぼし合いに……身を投じることになったのです」

CuP「……」

ユカリの語った内容は、にわかには信じがたいものだった。
だが、話の真偽はともかくCuPの目下の目的は評議会の情報を得る事である。

CuP「なかなか興味深い話だが……歴史の授業を受けたいわけじゃない、お前達の目的を話せ」

ユカリ「我々の目的は、先駆者達に追いつくこと……この宇宙に住む知的生命体を、次なる段階へと進化させることにあります」

CuP「……知的生命体を進化させる?」
343 :◆lhyaSqoHV6[saga]:2013/07/16(火) 07:45:05.48 ID:JU1FnDSro

ユカリ「……戦争末期に、我々に向けて先駆者が遺したとされる文書が発見されました」

ユカリ「曰く『置き去りにしてゴメン! 先に行って待っているからネ!』ということでした」

ユカリ「彼らは肉体を捨て、思念体へと進化した今でも、この宇宙を見守っているというのです」

ユカリ「見捨てられたわけではなかったと知った先達は、同士を集め、彼らの後を追うための組織を結成しました」

CuP「それが評議会……か」

ユカリ「はい、その後評議会は争っていた各種族をまとめ上げ宇宙連合を結成し、戦争を終わらせることに成功するのです」

CuP「……」

CuP「(先駆者は実際に存在していて、評議会の結成の理由にもなってるだって……?)」

CuP「(まったくバカげてる……どうかしてるぜ)」


ユカリ「我々評議会は、『負の感情に囚われてはならない』という先駆者達の教えに従っています」

ユカリ「長年の戦争によってそのことを身をもって実感した我々は、感情を抑制する術を学び、宇宙の秩序を保つ為に活動してきました」

CuP「それで、その宇宙の秩序を乱すかもしれない種族を、滅ぼしてきたってわけか」

宇宙戦争の終結後も、内乱によっていくつかの種族が滅びるのを見てきた管理局は、その原因を探るうちにとある組織にたどり着く。
どうやら、その組織──評議会と呼ばれる者達が工作員を送り込み内乱を誘発させ、
彼らにとって邪魔な種族が滅亡するように誘導していたということが判明していたのだが……

CuP「(評議会の調査を命じていた長官自身がそのメンバーだったとはな……実体が掴めないわけだ)」


ユカリ「我々評議会が滅ぼしてきた種族は、皆精神的に未熟で、感情の制御がままならない者達でした」

ユカリ「彼らを放置すれば、負の感情に囚われて暴走し、争いの火種となりかねなかった……」

ユカリ「我々はもう二度と、あの大戦の様な悲劇を繰り返すわけにはいかないのです」

CuP「なるほど……ロクでもない連中だとは思ってはいたが」

CuP「想像以上に過激で、独善的だったんだな」

ユカリ「……っ」

CuPの、ある意味当然ではあるのだが、毒を含んだ物言いにユカリは顔をしかめた。
他人に言われなくとも、自分達のしてきた行為がどういうものであるか、充分に理解している。


ユカリ「……この物質界のすべての事象には『寿命』があります……この宇宙でさえ例外ではありません」

ユカリ「我々に与えられた時間は、無限ではない……」

ユカリ「精神的に未熟な種族が、我々と対等な存在になるまで成長するのを待っていられるほどの余裕は無いのです」

CuP「どのように言い繕ったって、その行為は許されることじゃない」

ユカリ「その通りです……我々とて、自らの行為がどれほど大それたものかは理解しています」

CuP「……」

CuP「(開き直ったかのようなこの態度、気に入らんな……)」

CuP「(まだ自己弁護でもしてくれた方がやりやすいってもんなんだがな)」
344 :◆lhyaSqoHV6[saga]:2013/07/16(火) 07:46:05.66 ID:JU1FnDSro

CuP「まあいい……それで、なぜ評議会の幹部様がわざわざ地球に出向くんだ?」

ユカリ「地球人を調査しているうちに、彼らの持つ能力──」

ユカリ「他者の心を癒す力が、あるいは我々の目的に利用できるのではないかと考えた結果です」

ユカリ「彼らの能力があれば、宇宙から負の感情を取り除くことも可能であるかもしれません」

CuP「つまり、地球を滅ぼす気は無くなったってか? ソラはどうしたんだ」

ユカリ「っ!!」

ソラの名前を聞いた途端、ユカリは驚いたように体を震わせ、表情を曇らせた。


ユカリ「それも、私が地球へ赴く理由の一つです……」

ユカリ「彼女は……ソラは、我々の犯した過ちの象徴なのです」

CuP「ヤツは、ただの工作員ではないのか?」

ユカリ「ソラは本来ならば、他者の幸福と平穏を心から望む性質を持った種族なのです」

ユカリ「しかし、大戦中に彼女の種族と敵対していた者達に誘拐され、他の種族を滅ぼすための洗脳と教育を受け──」

ユカリ「その結果、自らの種族を滅ぼしてしまった……」

CuP「……」

ユカリ「洗脳を施した者達も、戦争の間に滅び……ソラは最終的に我々が保護したのですが」

ユカリ「我々の技術を以ってしても、彼女の洗脳を完全に解く事は出来ませんでした」

ユカリ「そこで、我々の指示に従うように洗脳プログラムを改変し、工作員として利用することになったのです」

CuP「……実に胸糞悪い話だな」

ユカリ「利用できるものは、なんでも利用する……」

ユカリ「……評議会は目的のためには手段を選びません」

CuP「……」

言いながらも、ユカリは唇を噛む。
抑制してはいるものの、良心の呵責に苛まれるだけの感情は残っているのだ。
345 :◆lhyaSqoHV6[saga]:2013/07/16(火) 07:46:49.41 ID:JU1FnDSro

ユカリ「平和を望み、他者を受け入れる寛容さを持っていたかの種族は、最も進化に近い立場にいたと言えるのですが」

ユカリ「彼らの崇高な精神性も、あの戦争によって……失われてしまった」

ユカリ「その、数少ない生き残りであるソラは、保護されなければならないのです……」

CuP「工作員として利用してた奴が、何言ってんだ」

ユカリ「だからこそです!」

戯れ言だと言わんばかりに鼻で笑うCuPの様子を見て、ユカリは語気を強めて語る。


ユカリ「地球に送られたソラは、現地で何某かの存在によって洗脳が解かれました」

ユカリ「本来心優しい彼女は、いずれ自らの行為を顧みて、悔恨の念に苛まれるでしょう」

ユカリ「その時に私は、彼女に非道な行為を強いた者として、その咎を共に背負っていかなければならない……」

ユカリ「だから私は、彼女に会うために地球へ行く必要があるのです」

CuP「そうかい……」

CuPは急に興味を無くしたかのように呟いた。
346 :◆lhyaSqoHV6[saga]:2013/07/16(火) 07:47:23.90 ID:JU1FnDSro

CuP「あんたの言い分は分かったが、こっちもようやく捕まえた評議会の人間をみすみす逃す訳にはいかなくてね」

CuPは腰に下げたプラズマブラスターをホルスターから引き抜くと、ユカリに突き付ける。

CuP「コイツはな、形見なんだ……」

CuP「評議会を追っていて、殺された……俺の親友のな」

ユカリ「……」

CuP「俺はこの銃に誓った……いつかお前ら評議会をぶっ潰して、アイツの無念を晴らすってな」

ユカリは銃を突き付けられても動じた様子は無く、決意を秘めた双眸でCuPを見据えていた。

ユカリ「私は、自らの行いに対して、許しを請うつもりはありません」

ユカリ「……それであなたの気が済むのであれば、どうぞ撃ってください」

CuP「ッ!!」


CuP「(この目は……そうだ、長官と同じ目だ……)」

CuP「(長官はどんな逆境に置かれても、使命を遂げるまで決して諦めない人だった)」

CuP「(この娘も、あの人と同じだっていうのか……)」

CuP「チッ……」
347 :◆lhyaSqoHV6[saga]:2013/07/16(火) 07:48:18.17 ID:JU1FnDSro

CuP「やめだやめだ!」

吐き捨てるように言うと、CuPは突き付けていた銃を下ろした。

CuP「折角評議会の幹部と捕らえたと思ったら、妄想癖のあるわけわからん小娘だったとはな」

CuP「先駆者が実在してるだの、知的生命体の進化だの……そんな与太話を上にどう報告しろってんだ」

ユカリ「……」

CuPはお手上げといった様子で、頭を振る。


CuP「……何処へでも失せな……俺の気が、変わらないうちに……」

ユカリ「……わかりました」

CuPの言葉を受けたユカリは、そのまま出口へと向かう。
彼女が建物から出ていくのを見届けると、CuPは糸が切れたように脱力し、近くのソファーに座り込んだ。

CuP「なあ……俺は、どうすれば良かったんだろうな……」

親友の形見を手に取り、それを見つめながら、CuPは誰にともなく呟くのだった。



ユカリ「(CuPさん、ごめんなさい……そしてありがとうございます)」

諜報部の隠れ家を出たユカリは、振り返ると内心でCuPに詫びた。

ユカリ「(許してくれなんて言えない……けど、いつかあなたとも分かり合えると、信じています)」

罪悪感を振り切り、地球へ向かうため宇宙港へと足を向ける。

ユカリ「今は、自分に出来る事をするしかないから……」

ユカリ「ソラさん……待っていてくださいね」
348@設定◆lhyaSqoHV6[saga]:2013/07/16(火) 07:50:36.88 ID:JU1FnDSro

※先駆者

かつて宇宙のほとんどを支配していたとされる超文明。
その高度な科学力と比例するように高い精神性を有していたらしい。
彼らの庇護の下で多くの種族が繁栄していたが、ある時期を境に宇宙から姿を消してしまう。
残された種族は保護者を失い混乱を極め、その後長きに渡り争い合うことになる。


ユカリ(地球人名:水本ゆかり)

職業:評議会幹部の娘
属性:感情を抑えきれてない系異星人
能力:特になし

老いた父に代わって評議会を取り仕切っていた少女。
地球人の他者の心を癒す力(藍子とか沙織とかの)を研究することと、
洗脳が解けたそらを支えるために地球にやってきた。

ユカリとその父は、異星人の中でも割かし感情が豊かな種族らしい。
評議会で決定された事案に従って多くの非道な計画を進めてきたが、内心ではかなり心を痛めている。
349 :◆lhyaSqoHV6[sage]:2013/07/16(火) 07:51:45.28 ID:JU1FnDSro
投下終わりです


ウサミンPに協力者が出来るかもしれないフラグが立ちました
評議会の設定を掘り下げるつもりが、冗長でわけの分からない話になってしまったけど…

評議会が言う進化っていうのは、知的生命体がお互いを受け入れ理解し合うことによって、
個というものの境界が曖昧になって精神体やら思念体やらとして融合するとかなんとかそんな感じなんじゃないかなあ?
先駆者とかぶっちゃけ適当にでっち上げただけなので、スルーしちゃってください

 

361◆cAx53OjAIrfz[saga sage]:2013/07/17(水) 02:22:37.09ID:0o/+YsS+0
よし誰も居ないな、投下します

142cm3人衆お借りしますよー
362◆cAx53OjAIrfz[saga sage]:2013/07/17(水) 02:25:15.16 ID:0o/+YsS+0
未来は不確定である、という科学的論述が出てきたのは何年前の話だろうか。

基本的には世の中の出来事は、観測するまでは物事は確定しないという話だ。

不確定性原理、説明としては猫箱がよく引用される。

茄子「要するにですね、神様というのは暇じゃないんです、一日中世界を見て回ることは出来ません」

茄子「ここでいう世界というのは、地球全体ではなく、限定的な密封された観測地点と考えて下さい」

茄子「もっと分かりやすくいいましょう、所謂宗教が伝播した場所そこが神様における観測地点です」

П「へぇ」

茄子「そして、その伝播した世界を見て回る際、ある法則を共同で設けました、物事の事象の確定です」

П「うーん?」

茄子「所謂各世界に伝播する物事は、朝日の上りと共に確定します」

П「詰まり、Aという事象が起きたとして、干渉できるのは太陽が出てくるまでということか?」

冷えたそうめんをすすりながら、茄子の『講義』に耳を傾ける。

茄子「うーん、分かりやすく言うと『過去に起きたこと』も、実際には何一つ確定できない事象なので、ハッキリ言うと『その場における人の生き死にだけ』なのですよ、確定できるのは」

П「随分ズボラじゃないか、ってことは世界中の死神しか働いてないってことに、ズズッ、なるじゃないか」

茄子「まあ、ぶっちゃけるとですね、昔々、時の神様ってのは一応居たんですけどね、何分人間の味方につきすぎたせいで、神様方は偉いお怒りになって」

П「どうしちまったんだ?」

茄子「一度天界に行ったんですが、結局地獄勤務にされちゃったんですね、体の良い左遷です」

П「まるでハーデスみたいだな」

茄子「まあ、良い人なんですけどね、それ以降誰もまともにやらなくなっちゃいましてね」
363 :◆cAx53OjAIrfz[saga sage]:2013/07/17(水) 02:27:27.63 ID:0o/+YsS+0
П「ズズズッ……まあ、兎に角基督教本やらなんやらが、関係してるってことか?」

最後のそうめんをすすりながら、質問をする。

茄子「天界移住後はただ農耕に精を出す人だったんですけど、その中から勝手に役目を決められて、まあまだ人を見守れるからいいかと静観してたんですけど…」

ここで、精一杯おどろおどろしい声(実際には無理をした上ずった声)で、話し始める。

だが、幸福の女神というのは幸福に溢れすぎてて、恐ろしいものの表現が壊滅的に下手くそらしい、怖くなかった。

茄子「ここで、ある人々と人々に差異が生まれちゃったんですね、言うならば富める者、貧しい者そこでとある神様は考えました、宗教を作ろう、と」

П「まあ、世紀末とかにはよくある話だな」

茄子「まあそこから今まで続く話に続いちゃうんですが、兎に角その宗派は生まれたてで、どんな力でも欲しかった」

П「まあ、そりゃあそうだな、0からものを作るんだから、人手は必要だな」

茄子「それが、少し理想論に傾きすぎてたみたいで……結局宗派は分裂、人間同士のいざこざの種になってしまいましたとさ」

茄子「そこでその、勝手に役割を与えられてた神様は怒って、役職を辞任、そしたら地獄に落とされちゃいました」

П「で、結局何が言いたいんだ?」

そうめんの汁を流しに持ってゆき、コーナーポストに流しながら結論付ける。

割りとこいつは会話が流れていきがちなので、一々戻してやらないと話が終わらないのだ。

茄子「あれ?何の話でしたっけ?あ、そうそう分かりやすく噛み砕くとですね、神様は人が死んだら死人帳簿というのを書くんですが、それを書き始めるのが夜明け」

茄子「だから、人の死が魔術で不変(基本的には)になるのは、『その日の夜明け』と言うことになります。」

茄子「それを死神に手渡して、人の魂を回収させるんですよー」

П「割とさっぱりした内容だったな、ともあれ、人が死んだら出来るだけ早く蘇生させろってことか?」

茄子「ですねー、タイムマシーンがない限りはそーなりますねー」

П「そんな内容をクドクドと長話にしやがって……兎に角、過去に死んだ生き物が帰って来ない、ってだけでだいぶ安心だな」

茄子「割りと昔から多方面に喧嘩売ってますもんねぇ、Пさん」
364 :◆cAx53OjAIrfz[saga sage]:2013/07/17(水) 02:28:30.84 ID:0o/+YsS+0
П「あーそうだな、地上げ屋とか、ヤクザとか……兎に角、平穏であるならいいってのに、何だってあいつらは一々喧嘩を売ってくるのやら……」

目の前で正座で『治療中』の新田美波(大学生)を見つつ、何気なく麦茶を飲み込む。

茄子「あ、邪魔しないでくださいね、まだ終わってないので」

П「……効果あるのかこれ?」

和室に正座し、目の前の小さな十字型に波羅蜜多を唱える、という何とも不思議な光景を見れば、どんな人間も効果を疑いたくもなるものだ。

茄子「あります、鰯の頭も信心からという言葉があるように、恐らくカースは魔界産なので、こうやって心からのお祈りが心の防御力をあげて、カースを追い出す…筈!です!」

何となく強い語気に押され、何も言えなくなってしまう。

とはいえ、この十字からここまで話が伸びるとは思わなかった。

兎にも角にももうそろそろ30分経過で、今日のお祈りは終わりのはずだ。
365 :◆cAx53OjAIrfz[saga sage]:2013/07/17(水) 02:29:46.45 ID:0o/+YsS+0
美波「……ふぅ」

П「終わったらとっとと帰れー」

麦茶を飲み干しながら、手を振りとっとと帰宅を促す。

夏のうだるような暑さの中、よくもまあ平気な……わけでもないらしく、汗を流しコチラをチラチラ見てくる。

П「何だ気持ち悪い……」

美波「ふふふ……聞きましたよ!Пさんが女性が苦手だという話!」

П「あ?」

美波「だから、反撃されないって……」

立ち上がりケツを蹴り飛ばした、話の元は茄子だろうが、そりゃあ残念俺よりか弱ければの話だ。

美波「な、なんでぇー」

П「ケッ、健康優良大学生がふざけやがって……」

美波「だからあの3人を見逃してると思ったのに……」

П「…は?」

美波「え?知らないんですか?女子寮の私の部屋の隣の、変なきのこ栽培してる3人組」

П「…はっ?、いやまて、アソコは一人だけのはずじゃあ」
366 :◆cAx53OjAIrfz[saga sage]:2013/07/17(水) 02:32:07.02 ID:0o/+YsS+0
変な汗が出てきた、ヤバイ何この感覚、部屋できのこ?え?カビ?部屋ヤバくない?

П「あば、ばばばばああばばっば」

美波「あ……行っちゃった……」

全力で家を飛び出し、目的の部屋に走り駆け込む。

マスターキーでドアを開けると、そこは床に広げられたブルーシートの上に、黄色いドロドロした泥にキノコが無作為に繁殖している。

暗室の中、ホラー映画を見る3人の少女の姿が見て取れるが、今はどうでもいい、急ぎ壁周辺を探索するがどこもカビては居ないようだ。

П「部屋にはなんとも無い……良かった」

心の底から安堵する、と言うか何か小便臭かった。

П「…ん?」

寝癖のような、跳ねっけの頭の少女が小便を漏らしていた……え、ナニコレ。

幸子「あーっ!あーっ!あー!」

小便まみれのスカートが、顔目掛けて飛んできた、ションベン臭い汁が口に入る。

しょっぱかった、ただただしょっぱかった、というかションベンだった。

Пは激怒した。
367 :◆cAx53OjAIrfz[saga sage]:2013/07/17(水) 02:33:12.55 ID:0o/+YsS+0
П「……」

幸子「何でボクがこんな……」

ぶつくさ言いながら目の前の少女が、自分のスカートをよくわからない袴を履いて手洗いしている。

別に友達を作るのは良い、俺もあーだこーだは言わん、だがな部屋で、しかも大体的にキノコを栽培するのはやめろ。

と言った内容の説教を3人にして、服を小便汁まみれにした少女に自分で服を洗わせる。

洗濯機もあるが、正直ションベン臭いまま入れられると俺が困る。

というか、ホラー映画を見ていて、突然現れた俺が死体みたいだったとか、小梅に言われて余計腹が立つ。

幸子「大体おかしいんですよ、ここら辺だとボクの能力が使えないし……」

П「偶にはお前らの服の洗濯してる、機械類の気持ちになるですよ……」

幸子「何でこんなに!カワイイボクが!手洗いで洗濯をしなくちゃあいけないんですか!」

П「カワイイは関係ないだろ!とっとと洗え!」

幸子「あれれ?今カワイイって否定しませんでしたね?いいんですよ?カワイイって言っても」

П「あんまりうるさいとスカイダイビングやらせんぞ、女子寮の屋上から」

そう言うと、またぶつくさ言いながら服を洗いにかかる。

その間、隣の部屋で吸血鬼ごっこをやり出した小学生(?)二人を見つつ、口の中を液体ハミガキですすぐ。

まだ取れない、本当にイライラする。
368 :◆cAx53OjAIrfz[saga sage]:2013/07/17(水) 02:35:13.24 ID:0o/+YsS+0
茄子「あ、Пさん、食事出来ましたよー」

そう、こいつらは食費を稼ぐ宛がないのだ、マジかよ家帰れよと言いたいが。

小梅に言う直前に頭を横に振られた、何でアイツ俺の言うこと分かんの?

というか、茄子は何処から服を用意してんの?何なのあの和服。

輝子「ふ、フヒヒ……あ、新しい、トモダチ……」

小梅「Пさん、今度肝試し……ゾンビ役やろう……」

П「うるせぇ」

幸子「カワイイボクに食べて貰えるなんて、光栄な食事ですね!」

П「とっととスカートを、洗濯機に放り込んでこい」

幸子「あれれ?管理人さんはまだ食べないんですかぁ?」

コイツ……今度絶対スカイダイビングさせる、絶対だ。

段々口の中の不快な味が消えてくる中、そう考えるПだった。
369 :◆cAx53OjAIrfz[saga sage]:2013/07/17(水) 02:40:01.40 ID:0o/+YsS+0
今日の流れ

美波「修行するぞ修行するぞ修行するぞ」

輝子「きのこ栽培したい」

幸子「ボク達の家だとちょっと……」

小梅「い、いい場所ある…」

П「おまえーっ!」

茄子「あらあら」

段々茄子さんがおかーさんみたいになってきてる…

今日はここまで

 

379◆zvY2y1UzWw[sage saga]:2013/07/18(木) 19:52:19.16 ID:4bSwgeVb0
ナニカちゃん小話投下するよー
380◆zvY2y1UzWw[sage saga]:2013/07/18(木) 19:53:09.85 ID:4bSwgeVb0
ナニカは夢を見ていた。ギロチンで首と体を別々にされたり、毒を飲まされた夢を。

ナニカは夢を見ている。縛られて冷たい水槽に沈められたり、銃で頭を撃たれた夢を。

ナニカはずっと夢の中。怖い人たちに滅茶苦茶にされる夢の中。

最初は何も思う心がなかった。夢の中にいることが役割だった。

けれど流れ込んできた感情を読み取るうちに…偶然にも意識が生まれていた。

痛いのはイヤだ。怖いのもイヤだ。苦しいのもイヤだ。助けて、誰か助けて…。
381◆zvY2y1UzWw[sage saga]:2013/07/18(木) 19:53:43.58 ID:4bSwgeVb0
消した恐怖の記憶、幼い子供のような感情…『主』のなくしてしまったもの、封じこんでしまったものの集合体がナニカだった。

だからある意味ではナニカは『主』だった。少し劣るが『主』であった。

けれど本来は生まれる事のない意識体。自我は殆どなかった。感情も封じ込められた感情を再現するだけ。

『主』はナニカの事を知らない。『主』が恐怖の記憶を認識しないようにしていたら、ナニカも全てに認識されないようになっていた。

ナニカは誰にも認識されずにいたある日、偶然に浮上した意識の中、無意識に今の『主』の記憶を読み取った。

その日が恐らく、自我の生まれた日。

嫉妬から何かが生まれたのだ。
382 :◆zvY2y1UzWw[sage saga]:2013/07/18(木) 19:54:27.99 ID:4bSwgeVb0
いいなぁ、うらやましいなぁ。

なんで『主』にはあるものがあたしにはないんだろう。

あたしもほしいなぁ。

『家族』がほしい。きらりお姉ちゃんも、夏樹お姉ちゃんも、李衣菜お姉ちゃんも、お兄ちゃんもほしい。

ズルいなぁ。

…『奈緒』だけズルいじゃん。あたしに全部押し付けて!

あたしだって奈緒なのに!

嫌い、キライ、大嫌い!奈緒なんて奈緒なんて!

あたしは、アイツから、『奈緒』から自由になりたい!

あたしはみんなに愛してもらいたい!
383 :◆zvY2y1UzWw[sage saga]:2013/07/18(木) 19:55:14.12 ID:4bSwgeVb0
ナニカは名無しの子。『奈緒』という名前を捨てた、奈緒の記憶から生まれた人格。

…その人格は死に続ける夢と嫉妬で歪んでしまったのだけれど。

ナニカが『奈緒』を認めない限り、ナニカは『何か』であり続ける。
384 :◆zvY2y1UzWw[sage saga]:2013/07/18(木) 19:56:22.54 ID:4bSwgeVb0
夜。11時30分。

ナニカは最近意識の浮上の頻度が上がっていた。

偶然か必然か、一部になった≪嫉妬≫という性質を持っていた浄化された核と波長が合い、その主である加蓮と友達になったナニカは以前よりも自我がはっきりしてきたのだ。

『奈緒』から流れてくる感情以外の感情を発することが多くなり、彼女らしさが芽生えていた。

だからなのか、行動時間が伸びていた。今からきっかり30分。毎日この時間が外で行動できる時間だった。

ナニカは誰にも認識されない。奈緒から分離して起き上ると、泥人形のように形を作る。

分離できる大きさもそれなりになっていた。

真っ赤な瞳がピカピカ光る、全てが黒い泥で作られた幼い少女。

それは真っ黒いワンピースを着ている真っ黒な…幼い頃の奈緒そのものだった。

ナニカはこの姿があまり好きではないけれど、人の姿はこれ以外なれないから仕方ない。
385 :◆zvY2y1UzWw[sage saga]:2013/07/18(木) 19:56:50.78 ID:4bSwgeVb0
誰かを踏まないように小さな羽で浮遊しながら寝室を出て、パソコンのある部屋へ行く。

ナニカは機械が好き。触れさえすれば動いてくれるから。

いっぱい外の事を知った。たくさんの人が悲しい思いをしていることも、辛い思いをしていることも。

もっとシアワセな世界がいいな。そうすればみんなで愛し合えるはずだよね。

ナニカは知っていた。自分の真の力を。星を喰らう怪物の存在意義を。

世界をシアワセにする方法を。

けれど知っているだけじゃ意味がない。力を全て使わないと無理な事。

『奈緒』がジャマだ。何事においてもアイツはジャマだ。

だから、奈緒を乗っ取って自分と同じ苦しみを味あわせてやる。方法はもう思いついている。
386 :◆zvY2y1UzWw[sage saga]:2013/07/18(木) 19:57:23.57 ID:4bSwgeVb0
加蓮お姉ちゃんの住んでいる場所さえわかればいい。そうすれば作戦は実行できる。

あとはタイミング。ヒーローたちに邪魔されるのは嫌だから。

きっその時の姿は怪物みたいな物だろうから。

最高のタイミングで、最高にシアワセな世界を生み出そう。

「キシ、キシシシシシ…」

愛に飢えた小さな怪物は、赤い瞳を輝かせて不器用に笑った。

12時1分前。引っ張られるような感覚が起きる。

もう戻る時間だ。履歴を消すとナニカは大人しく寝室へと戻って行った。
387 :◆zvY2y1UzWw[sage saga]:2013/07/18(木) 19:57:53.53 ID:4bSwgeVb0
シンデレラみたい?なら早く王子様に来てほしい。

かなり かなり かなり来てほしい。

そうすればきっと『悪い魔女』は消えるでしょ?

ああ、シンデレラに悪い魔女は居なかったっけ。

じゃあどうでもいいや。

王子様より家族が欲しい。友達が欲しい。

いっぱい愛してほしいから。
388@設定◆zvY2y1UzWw[sage saga]:2013/07/18(木) 19:58:47.01 ID:4bSwgeVb0
データ更新

ナニカ(かみやなお)
属性:愛に飢えた怪物
能力:泥の操作、精神・記憶・認識操作(未覚醒)

誰にも認識されないように、認識しないように奈緒が封じ込めていた悪夢。それと同時に消したはずの幼児性が組み合わさって生まれた人格。
死に続ける記憶を見すぎたせいか、子供のような正確なのにどこか狂ってしまっている。
知識も結構偏っており、漢字も読めるが書けない。そこは見た目と口調相応だろう。
認識できないのがデフォルトなので、例外を除き認識操作で『認識できる』ようにしないといけない。しかしまだその力に目覚めてはいない。
目覚めていないだけでその力の鱗片は時々見え隠れしている。本人は基本的に気付いていないが。
見た目は真っ赤な瞳がピカピカ光る黒い泥人形。しかしドロドロしているわけではない。
外での活動時は自由に見た目を変えられるが、12時には引き戻されてしまう。
現在、少しづつ活動時間が伸びている模様。
『世界をシアワセにする方法』を知っているらしく、今は虎視眈々と下剋上を兼ねたその実行タイミングを伺っている。
389 :◆zvY2y1UzWw[sage saga]:2013/07/18(木) 20:01:31.79 ID:4bSwgeVb0
以上です
露骨にフラグを建てたよ!
イベントが終わったら終わりのはずのキャラなのに妙に愛着が湧いて困っている…
時系列は加蓮と会った後、という事しか決めてない感じです

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最終更新:2014年04月29日 16:07