2スレ目>>799~>>807


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相変わらずベルフェゴールが屋上でゲームをしている。

そこに、再び屋上に降り立った人影。そちらに目を向けると、敵意を丸出しにして立ち上がった。

「…見逃してあげるって言ったよね?」

その人影は、先日倒して見逃した、サタンの配下の死神だった。

「邪魔するなら今度こそ容赦はしないよ?」

「そっちこそ、前と同じアタシだと思ったら大間違いだよ?」

『みーみー!』

ユズの背後から6体の使い魔も飛び出してくる。

「ふぅん…今度は数で押すつもり?でもそれって根本的な解決にはならないよね?どんなに攻撃しても無意味なんだよ。わかってるの?」

「いいや違うよ。有効な攻撃もあるんだ。修業で身に着けたからね!」

「ハァ…いくらサタンさんの直属でもたった数日の修行で出来ると思ってるの?」

ベルフェゴールは嘲笑うように体内の無限に湧き続ける魔力を開放させる。

「―そんな勇者みたいなこと、できるわけないじゃん!」


「…残念だけど、『数日』レベルじゃないんだなぁ…赤、黄、黒!青、黄緑、白!合体!」

『みっ!』

聞こえないレベルのつぶやきの後、使い魔に命令を下す。

その隙にベルフェゴールが思考を読み取る。

「…はぁ!?狂ってるよ、あたし達を倒すために時間を歪ませて『数年』修行するとか!」

理解できない。やはりサタンとその部下の思考は理解できない。

「「「勝手に言ってなよ♪」」」

そしてそこには3人のユズがいた。


「…魔術は詠唱がめんどくさいんだけどなぁ…『冷気よ、大いなる我が力に従い、音すら凍らせるその身で我が平穏を奪う愚か者を永久の眠りへ送り込め!ヘルブリザード!』」

ベルフェゴールがその魔力を攻撃に使用する。魔力が多ければ魔術に注ぎ込める魔力が多くなり、極めれば「今のは上級魔術ではない…初級魔術だ」が可能となる。

つまり無限ともいえる魔力の持ち主であるベルフェゴールの上級魔術は普通の悪魔の魔術とはレベルが違う。

暴風のような吹雪が3人のユズに襲い掛かる。

しかし、3人とも別の方向へ飛び、吹雪を避けると鎌を振る。

『魔力変換!無害な風となれ!』

3人のユズが3角形の頂点となって魔法陣を空中に作り、吹雪の温度が常温へと戻る。

「無駄だよ!どんな魔術でもあたしには効かない!」

「「きかないっよたらきかないよ!」」

再びベルフェゴールはゲーム画面でユズの情報を読み取る。…それらしき文は『生ける魔術書となった』くらいか。

「はぁ…魔術書?意味わかんない…」

「じゃあ、わからないままでいいんじゃない?」


…ユズは肉体に不可視ではあるものの呪文を刻まれた生ける魔術書だ。それも普通の魔術書ではなく管理塔のアカシック魔術書だ。

魔術書となった利点としてわかりやすいのはもちろん魔術の詠唱を覚えなくていい事や、簡単な物なら無詠唱でいい事だろう。

そしてもう一つは、付近で発動する魔術の種類がある程度分かることだ。

魔術レベル、属性、発動者、攻撃範囲、発動タイミング…それらが理解できる。

あくまで魔術だけで魔法は基本的に専門外ではあるが、魔術使い相手にさらに強くなった。


『ピリヘイオムスト!異世界の加速魔術を合成し使用する!』

そして3人のユズがベルフェゴールがどこかで聞いたことのある加速魔術を唱え、そのまま一人が鎌を振りかぶって突進してくる。

「っ!」

間一髪で回避するものの、そのスピードはあまりにも異常だ。

言葉を発する暇もなく、もう一人が突撃する。

なんとかそれもギリギリで回避する。『アレ』を使う暇もない。

「『アレ』、使えないみたいだね?」

にこにこ笑いながらユズが言う。

『アレ』とはユズを破ったあの時に使用した術だ。

位置入れ替え。単純に言ってしまえばそんな術。

しかし、持っている武器、行っている運動、構え等も入れ替えるため、攻撃の当たる瞬間に入れ替えれば、相手に相手の行おうとした攻撃を当てることができる。

しかし、今回は使う暇があっても意味がない。人間の肉体であんなスピードの相手と入れ替われば大怪我をするのは目に見えている。

そして、ベルフェゴールは完全に3人のユズに囲まれた。

そもそも突撃した2人は攻撃を当てる気など全くない。目的は背後に回る事。

つまり…

「奥の手その一!」

『合唱魔術・三角陣形結界の発動を宣言する!』

再び3人を頂点に魔法陣が形成される。最初からこれが狙いだったのだ。


『夜の闇をさまよう魂よ、この結界の理により、全ての存在が肉体と魂の繋がりを失い、汝と等しく魂の存在へ成り果てる。デルタオブソウル!』

さすがに危機感を持ったのか、魔法陣から逃れようとするも、結界と外の間に見えない壁が発生し、妨害する。

そして無慈悲にも魔術が発動し、三好紗南の肉体から2つの魂が飛び出した。

一つは意識を失った三好紗南本人。そしてもう一つが魂の姿になっても彼女の姿を取り続けるベルフェゴールだ。

もちろん、ユズとその使い魔も魂の状態だが、ユズは魂の姿にもう慣れている。しかし、憑依する時しか魂の姿にならなかったベルフェゴールはもたつく。

使い魔に指示をだし、三好紗南の魂と肉体を結界の外へ運ぶと鎌を構えた。

「なにこれ、チートすぎ…非戦闘魔族にここまでやる…?」

「チートじゃないよ…これが、貴方の嫌った鍛錬の結果だよ♪」

『死神の力を用いて、汝と現世の繋がりを永久に断ち切らん!』

ユズの振った鎌がベルフェゴールに当たると、人魂のような形になり、ユズの手元に収まった。

「他の奥の手を使うまでもなかったね。」


魔界

ユズはすぐさまその魂をサタンの下へ連れてきた。

「ユズ、よくやった…ところでベルフェゴールよ。貴様は敗北し、現世との繋がりを失った。ほぼ死者の魂と同じだ。この意味が分かるか?」

「わかるわけないじゃん!あたし法律とか詳しくないから!」

未だに少女の姿のままのベルフェゴールは、死の癒しの呪いがかかった地面に着くか着かないかの位置に涙目で吊るされている。

「ならば言ってやろう。貴様は死者の魂と同様に裁かれ、最弱魔物の肉体で罪の重さの分だけ強制労働させられるのだ…!」

「う、嘘でしょ!?嘘って言ってよ!ねえ!?あたしの罪は軽いよね!?」

必死に叫ぶ。怠惰の彼女にとって強制労働という言葉は恐ろしいものだ。


「…それを裁くのはその専門の『役職持ち』だ。キヨラ、入っていいぞ。」

「はーい♪」

黒いナース服の悪魔が入ってくる。大きな注射器が目立っているが、彼女自身から強者の雰囲気が出ている。

カルテのようなものを取り出すと、ベルフェゴールの罪状を読み上げた。

「えー…『契約・許可無しで人間界に滞在した罪』『カースを生み出した罪』『契約していない人間に憑依した罪』『契約していない・指定されていない人間の評価を変えた罪』『ゲームデータを窃盗した罪』…他にもありますね。」

「そ、そんなに!?」

「大罪さんたちの中では軽い方ですよ?…うふ、まずは教育です♪その為には…ちょっと痛いけど我慢してね~♪」

キヨラと呼ばれたその悪魔が、吊るされたベルフェゴールに注射器を突き刺す。

採血をするようにピストンを引くと、奇妙な色の液体がベルフェゴールから採られていた。

「な…何それ…?」

「うふふ、貴方が分かりやすい言い方でいうとね、経験値を奪っているの。レベル1になるまでね♪」

「え…?」

言い終わるのと同時に注射器が抜かれる。中の液体はキヨラが手をかざすと彼女の中に溶け込んでいった。

「いやだ…返せ!経験値ドロボー!」

「悪い子だった貴方がいけないのよ?」

ベルフェゴールはカースを生み出そうとするが、核がビーズレベルの極小な物が1個出てきただけだった。

逃げ出そうとするも、地面には死の癒しの呪い。そうでなくても、急激に身体能力が激減し、思う様に動けない。

「あ…ああ…」

「さあ、更生施設に行きましょうね~♪そこで勤労の素晴らしさを教え込んであげますから、他の悪魔さんの下で…数百年程度は働いてお金を稼いで、生まれ変わってくださいね!」

「い、いやあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

無力な悪魔となり、キヨラに引きずられていくベルフェゴールの叫びが、ただ魔王城に響き渡った。


「…サタン様、処刑じゃないんですか?」

ずっと魔王の傍で見ていたユズが問う。

「処刑して魂が散れば新たなベルフェゴールが生まれるだけだ。ならば無力化して管理下に置いた方がいい。」

「…他の大罪の悪魔にもああするつもりですか?」

「無論。人間の使者と同列に扱われるのだ、これほどの屈辱もあるまい。」

「…すぐに他の奴らも狩ってきますから!」

「ああ、期待しているぞ、ユズ。」

「もちろんですよ!…何回でも何度でも、アタシは戦います!」

「…無茶はするなよ?」

魔王の最後の言葉を聞いたか聞かないかのタイミングで、ユズは杖に跨り、通常の飛行よりも速いスピードで、人間界へ飛んでいった。