2スレ目>>705~>>716


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「強欲の王…見つけましたぁ~♪」

イヴは遥か上空、自身の操る箒の上から夜の闇の中、河川敷に佇むきらびやかに飾られた泥を見下ろす。

「最近は裕美ちゃんに何でも投げちゃってますからぁ…」

「たまには所長らしいこともしなくちゃですよねぇ~♪」

そう言ってイヴは指先を遥か上空へ向ける。

『氷よ!寄り集まりて塊になれぇ~♪』

魔法で生み出された氷塊はカースの遥か上空で少しずつ、少しずつ大きくなる。

「そろそろですねぇ…」

強欲の王をまるまる覆えるくらいまで大きくなった氷塊が重力から解き放たれ落下する。

『ギギャッ!』

突然空から降ってきた氷塊が強欲の王をへと迫る。



氷塊が強欲の王に当たる直前、強欲の王から猛烈な勢いの水が吹き出し、氷塊の勢いを緩める。

『キエタクナイ!ゼンブ、ゼンブワタシガノミコム!』

「凄いですねぇ~、カースがどこで魔法とテレポートなんて覚えたんでしょう~♪」

氷塊を避けてなお、右へ左へ転々とワープを続ける強欲の王を見てポツリと呟くイヴ。

「当たったとしてもあのくらいじゃあのカースは消せないと思うよ?」

「…初めて見るお顔ですね~♪」

いつの間にか箒に腰掛けるイヴの隣にはふわりと宙に浮いた少女が居た。


「それにしてもそれなりにおっきい魔力の反応って思ったら人間かぁ…ちょっとがっかりかな?」

練武の山から戻ってきたユズはガッカリしていた。

「…七罪かと思ったけど魔法使い…カースの方は力試しにはちょっと物足りない獲物だしやっぱり…」

「ユズ的には貴女のほうが気になるかな?」

ユズはちらりと隣のイヴを見やる。


「ねぇねぇ、ユズと手合わせしてくれないかな?」

「そうですねぇ~」

「こう見えて私、人に教えるのって大得意なんですよぉ~♪」

「そっか、うん、じゃあユズがちゃちゃっとこのカース処分してくるから♪」

人間がユズに教えるようなことがあるのだろうかと若干疑問に思いながらもユズは軽快に答える。

ユズはふわりと地上に降り立つと鎌を強欲の王へと向ける。

『ワタシノモノ!ゼンブ!ゼンブ!!』

「ちょっとこの後アタシ約束があるから一撃で終わらせるよー!」

ユズは強欲の王に杖を向けて魔力を吹き飛ばす。

すると異変に気づいたカースがにわかに慌て出す。

『ワタシの!マリョク!ミズノチカラモ!!!ナイ!!ナイ!!!』

「はい、これでテレポートも魔法もおしまいっ♪」

 

   「ねぇ、これで貴方はただのカースだよね?」


『業火よ!大いなる我が力に従い、罪人の魂すら焼くその身で我が障害となる者の骨すら残さず焼き尽くせ!ヘルフレイム!』

ただ少し堅いだけのカースを炎は無慈悲に、躊躇なく飲み込み、蹂躙し、後には熱によって砕けた大量の核と少し大きめの僅かに光を放つ核だけが残されていた。

「はい、おしまいっ♪」

ユズは鎌柄で躊躇なく唯一光を放っていた核を砕く。

「これで私と手合わせしてくれるよねっ?」

「いいですよぉ~♪」

イヴはこの光景を見ても特に驚きもせず答える。


「ルールは相手に参ったって言わせるまででいいかな?」

「はい~♪」

「手加減はするけど死なないでね?魔法使いサン?」

「どんと来いですよぉ~死神サン?」

「今は死神じゃないんだけどね…そういうのって分かるの?」

「…秘密ですぅ~♪」

『へへへっ♪』 『あはっ♪』

二人は笑い声を零す。そして

『火炎よ!大いなる我が力に従い、その高温の身を槍に変え、我に刃向うことの愚かさを我が敵の身に焼き付けよ!フレイムスピア!』

『氷よ!寄り集まりて塊になれ!』

炎の大槍と突如現れた巨大な氷塊がぶつかり合う。


「凄いね!ただの魔法なのに中級とはいえ、魔術を防いでみせるなんて!」

ユズは炎の槍に半ば貫かれながらも主人を守りきった氷塊を見て感嘆する。

「魔力量にはちょっと自信があるんですよぉ~♪」

「へぇ」

ユズはにやりとして杖に手を掛けようとして……やめる。

「…いいんですかぁ~?」

イヴが砕けかけた氷越しにユズを見ながら言う。

「フェアじゃないかなって思っただけだよ♪」

「それならしょうがないですねぇ~♪」

「うん、しょうがないね!」

ユズは楽しそうに答える。


『火炎よ!暴風よ!大いなる魔力管理者である我の力に答え、自然の理を読み解きその身を重ね、紅蓮の炎を更に激しく吹き散らせ!フレイムストーム!』

遠慮無く管理者の特権、複合魔術を唱える。

「…初めて見る魔術ですねぇ~♪」

それはそうだ、私しか使えないんだからとユズは苦笑いを浮かべる。

「う~ん、やってみましょうかぁ~」

『意思持つ箒よぉ~♪』

イヴはそう言って箒に乗り込み炎の竜巻を避けながら竜巻をくるりと覆うように飛ぶ。

「一体何を見せてくれるのかなっ!」

期待に目を輝かせるユズ。

『魔力変換!全部自然に還ってくださいねぇ~♪』

すると、イヴが箒で竜巻を囲むように通った後が光の魔法陣となり竜巻が消滅し、足の高い草の生えた草原になる。


「あはは!期待以上だね!次いくよー!」

「皆、ゴーッ!」

『みー!』

ユズの掛け声と共に使い魔が放たれる。

黄緑のぷちユズが風に乗って一直線に箒に乗ったままのイヴに襲いかかる。

『付与!雷の加護よぉ~♪』

イヴは真っ直ぐに飛んできぷちユズに乗っている箒の先端を突きつける。

黄緑のぷちユズが慌てて方向変換しようとするも軽間に合わず箒の先端にぶつかる、すると箒の先端から激しくスパークが弾け、ぷちユズがたまらず落下する。

イヴは地上に降り立ち箒から降り、虚空に手をかざす。

「ブリッツェン、ゴー♪」

魔法陣が現れ、そこから鼻垂れトナカイが現れる。

『主人よ、これはまたとんでもないのと戦ってるな…』

「ただの手合わせですよぉ~♪」

『……そうか…』

ブリッツェンはなぜか焼け野原だったりなぜか一部分だけ円形に草原になっている光景を見て諦めた。

……考えるだけ無駄だと。


「ブリッツェンはこの子達の相手をお願いしますねぇ♪」

『…承った』

「私の魔力も有限ですから私だけじゃどうしようも無くってぇ♪」

「しょうがないなぁ、みんな、そこの…えと……何?」

『…トナカイなんだがな…』

「……ご、ごめんね?み、みんな!そこの『トナカイ』の相手してあげて!」

強調されても虚しいものだと嘆息するブリッツェンだが恐らく限りなく表情に変化が無いのでイヴ以外は気が付かない。

「ブリッツェン、ふぁいとっ!」

主人の優しさが身に染みるブリッツェンであった。


「今回はね、魔術の実験なんだ、私がどこまで魔術書をコントロール出来てるかのね」

「だから、次で見せてあげるよ、新しい複合魔術!同属性の複合魔術!」

『業火よ!大いなる我が力に従い、罪人の魂すら焼く業火を槍に変え我が障害となる者の骨すら残さず貫き、焼き尽くせ!ヘルフレイムスピア!』

火炎の海が荒れ狂い業火の中から火炎の槍が無数に飛び出してくる。

「これは…どうしようもないですねぇ…」

イヴはこちらに迫りながら荒れ狂う炎の壁から時折飛んでくる炎の槍を氷を付与した箒で叩き落としながら呟く。

「…参りましたぁ♪」

イヴはルール通り降参のサインをして微笑む、すると荒れ狂っていた炎がスッっと消える。

荒れ狂っていた炎の止んだ後に僅かに残った炎に向かって杖を突き出して魔術をかき消すユズ。


「…うん、楽しかった!ありがとうね!」

「私も初めて見る魔術が沢山あって新鮮でしたぁ~♪」

「そう言ってもらえると嬉しいかな!」

ユズはスッキリした顔で微笑みながら言う。

「またお願いしてもいいかな?」

「私で良かったらいつでもいいですよぉ~♪」

「私が居る場所はぁ……」

「大丈夫、大丈夫♪貴女……え…と…」

「イヴですぅ~♪」

「そっかそっか!アタシはユズ、イヴさんの魔力の波長はもう覚えたから後でアタシから会いに行くから!」

「はい~♪」

そう言ってユズは夜の暗闇を滑るようにして飛んでいった。


「…で、その結果がこの惨状なの…?」

裕美は目の前の焼け野原と一部溶解している河川敷のフェンスを見ながら呟く。

「…え、えへっ♪」

「えへっ♪じゃないよイヴさん!」

「ひ、人払いの魔法はきちんと掛けたんですよぉ…?」

『元ある形に戻れっ!』

「…人が起きだす早朝までに直せるかなぁ…これ…」


裕美の受難は終わらない。