2スレ目>>435~>>442


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棟方愛海の朝は早い・・・

「愛海ー、そろそろ起きなさーい!朝ごはん食べる時間なくなるわよー!」

・・・わけでもない。

「・・・んー、いまいくー・・・ぁふ」

ついついこれまでのヒロイン達の記録を見返して夜更かし、なんてよくあること。

それでも病気以外では意地でも無遅刻無欠席。だって学校には楽しみがいっぱいなんだもの、いろんな意味で。

顔を洗って歯を磨いたら気分サッパリ、髪のお手入れとセットは入念に。女の子の嗜み。

トーストをもそもそ齧りながら、日課の新聞チェック。ただしヒーロー関係のみ。もっと言うならヒロイン関係のみ。

「・・・ん、『カースの活動、謎の活発化』?・・・うーん、ヒロイン達の活躍の場が増えるのは良いけど、気をつけないとなー・・・はむっ」

自ら敵役を打って出る(実際戦うのは晶葉製のロボだが)程のヒロイン大好き愛海さんだが、彼女自身は至ってか弱い女子中学生である。

カースやらの化け物連中は普通に怖いし、危ない所に自分から好んで飛び込むドM根性もない。

「・・・ん、ごちそーさまでした。さって、晶葉ちゃん迎えにいかないと」

食器を台所に持って行き、制服に着替えたら行ってきます。時間自体はかなり余裕だが、ある意味愛海の朝はここからが本番。


「あーきーはーちゃーん!!朝だよー、学校だよー!!!」

晶葉の住むマンションまでやってきて、ベルを鳴らしながら部屋の前で大声で呼びかける。幸い周りの部屋は空き家なため、朝っぱらからうるせーぞと怒鳴り込んでくる怖いお兄さんはいない。

「・・・・・・ふぅ、今朝もダメか。まったくもー、これだけはいつまでたっても変わらないなぁ」

やれやれ、と、しかし少し楽しそうな表情で溜息ひとつ。ふたつ離れた部屋の前、消火栓から合鍵を取り出しがちゃり。

「今日はー・・・こっちだったかー」

寝室を覗くと、あどけない表情でぐっすり眠りこける晶葉の姿。だいたい作業机で突っ伏している場合が半分、昨日はしっかりベッドまで戻る体力があったらしい。

「ほーらー、起きろ晶葉ちゃーん。朝だよー学校行こうよー」

ゆさゆさ、揺り動かされてまだ尚起きようとしない晶葉。「ぅぅん・・・」と一つ唸ると、毛布を手繰り寄せ抱き枕のように抱きしめる。

「はぅぅっ!!・・・っぅ、悶えてるばあいじゃないよあたしっ、今日は学校、晶葉ちゃん起こしにきた、おーけー?・・・よしっ」

不意打ちに耐え、ノックアウトを免れた愛海は、いよいよもって晶葉を起こしにかかる。

「ほ、らっ!!起きろーっ!!」

無理やり毛布を引っぺがすと、寝ぼけまなこをこすりつつ、ようやく晶葉ちゃんお目覚めである。


「んぅ・・・あつみー・・・?なんだこんなあさっぱらからぁ・・・」

「こんな朝っぱらだから、でしょー。ほら、顔洗ってくる!寝癖もちゃんと直しなよー」

洗面所まで追いやると、その間に朝ごはんの準備。といっても、晶葉特製セミオート調理器のおかげで手間はかからない。

今朝のメニューは卵焼きサンドイッチ。香ばしい香りに思わずごくりと喉が鳴る愛海だが我慢我慢。あつみちゃんさっきたべたでしょ。

「・・・んむ、こくん。きょうのいちげんめ、なんだっけ・・・?」

「数学っ。もー、しっかりしろー」

どうにもこの天才少女、起きてからエンジン掛かるまでが遅い。それを知っているのはあたしだけだけど、と思うとちょっと優越感。

「・・・ごちそーさまでした・・・ふぁぁ」

「・・・ん、忘れものなし。ほら、遅刻遅刻っ!」

「んぅ・・・いってきまーす・・・ぁふ」

鍵をかけ、手をつないで(引っ張って、とも言う)晶葉宅を出発。これが棟方愛海のいつもの朝の光景である。


「らーんーこーちゃん!!」がばっ

「ひぁあっ!!?」

お時間変わりましてお昼休み。席に座って読書中らしいクラスメイトの神崎蘭子さんに*バックアタックだ*

「・・・むむっ、こ、これはっ!!?育ったね、また育ったのだね蘭子ちゃんっ!!!」もにゅもにゅ

「ひぅ、ぁ、やっ、やめっ、あつみちゃんっ!」わたわた

いやいやと身をよじる蘭子女史だが、いかんせん座った状態で後ろから抱きすくめられ、立ち上がることもままならない!

「やめんかおバカっ」ぽかりっ

「わが半身に何をするかっ」ぺちっ

「いたっ」

と、ここで晶葉と昼子のコンビネーション炸裂、たまらず愛海選手身を離します!

「まったく、同性でもセクハラは適応されるんだぞ?加減を考えたまえ加減を」

「いやぁ、思った以上のものをおもちだったもので・・・うひひ」

わきわき、とお得意の指の運動。愛海選手、今日も絶好調の指の冴え。

「むぅ、相変わらず度し難いほど欲に忠実なヤツよ・・・半身よ、無事か?」

「い、いきなり後ろからきたから、びっくりしただけで・・・大丈夫」

「あらあら、仲が良いのはいいことだけど、やりすぎちゃダメよ?わかるわね?」

「あ、川島先生。はーい、わかってますよー・・・ごめんね、蘭子ちゃん」

「う、うん。いつもの事だし、あんまり気にしないで・・・ひぁうっ!?」もにゅん

「と、許可も頂いたところで真正面から遠慮なく「「何を聞いていたこのおバカっ!」」痛いッ!!!」


そんなこんな賑やかな学校生活ののち、放課後。

下校中の通学路で、愛海と晶葉は『作戦会議』の真っ最中だった。

「・・・で、ロボの解析の方は順調?」

「さっぱりだ。この分だと、一回凍結処分してマーク2の起動も視野に入れるべきかもしれん」

「晶葉ちゃんでもそこまでなんだ・・・異星人の技術とかなのかな?」

「かもしれん・・・くっ、この私にも理解できないとは」

しばらく前に謎のパワーアップを遂げた晶葉ロボだが、「出どころの解らん技術などに頼れるか!」という晶葉の方針で、現在活動休止中なのである。

かつて「音声装置くらいつけたら?」という提案をした愛海に、晶葉は「ヒトと同じくらい流暢に話せるレベルになるまで実装はせん」と言ってのけたことがある。

それだけ、自分の手で作り上げたロボに誇りと愛着を持っているのだ。全て自分で満足できるレベルに仕上げて、初めて「自分が作ったロボットだ」と胸を張りたいのだ。

「・・・いつか、きちんと解析して、起こしてあげなくちゃね。ロボのこと」

「当然だ。その時にはマーク2と連携して事に当たらせようじゃないか」

「お、晶葉ちゃん案外ノリ気?楽しくなってきちゃった?」

にこやかに会話しながらの、親友との帰り道。


『・・・ネタマシイ・・・・・・ソノキズナガネタマシイイイイイイィィィィィィィ!!!!』

「「っ!?」」

そんな平和な光景は、突如現れた『嫉妬』のカースによって粉々に砕かれた。

「っ、走るよ、晶葉ちゃんっ!!」

「あ、ああっ!!」

普段からカメラ越しの荒事には慣れっこの二人だが、実際に相対するのとはわけが違う。非力な女子中学生二人に、できることなどあまりに少ない。

一目散に逃げる二人と、暴れながら二人を追うカース。

「う、うわぁっ!?」

「・・・っ」

愛海が視界の端に、小さな男の子を捉えたのはそんな時である。

気がつけば、その子にむかって体が勝手に動いていた。

「お、おい愛海ッ!!」

「晶葉ちゃん、『プロダクション』に電話してッ!たぶん『アイドルヒーロー同盟』あたりに連絡いくはずだからッ!!」

あるいは、『同盟』ならもうすでにこのカースの情報も掴んでいるだろう。それでも、実際に現場に到着するまでには、どうしてもタイムラグが発生してしまう。

(・・・それまで、この子はあたしが守る)

怯えてしまって、腰が抜けたのだろう。愛海が駆け寄って抱き上げても、一向に震えが止まらない。

それに、愛海自身もきっと恐怖で震えているだろう。走って逃げようにも力がでないのは、男の子を抱えているからだけではないはずだ。

そして、それを見逃すカースではない。目ざとく目標を愛海に絞り、襲いかからんと身を振りかぶる!


『ウォラアアアアアアアアアアア・・・アアアアアァァァァッッッ!!!??』

やがて訪れる衝撃を想像して、愛海はぎゅっと目をつぶる。・・・しかし、いつまで経っても一向に衝撃は来ないし、体も痛くない。

恐る恐る目を開いた愛海の目の前に映ったのは、

「・・・・・・ろ、ぼ」

『無事ですか、愛海!!』ピピッ

ラボで休眠状態にあるはずの、ロボの姿であった。

「愛海ッ、大丈夫かッ!!」

「あきは、ちゃん・・・え、ロボ、なんで」

「ロボ、クロークモード!!私と愛海、この少年も抱えて運べっ!!!」

『了解です、博士!!』ピピッ

がっし、と愛海と少年、晶葉を一斉に抱えると、ステルス状態『クロークモード』を起動、一目散にカースから距離を取るロボ。

『ッ、ドコダッ!!ドコヘイッタアアアアアアァァァァァ!!』

襲いかかる対象を見失い、めちゃくちゃに暴れまわるカースと、どこからか聞こえてくるバイクのエンジン音が、ぐんぐん遠ざかる。

すっかりカースの姿も見えなくなったところで、ようやくロボは三人を下ろした。

「・・・ここまで来れば一安心か。キミ、歩けるか?」

「・・・う、うん。あの、ありがとう、おねーちゃん」

「何、気にする事はない。私たちだって逃げるのに必死だっただけだ・・・一人で帰れるか?」

「大丈夫、ここ、おうちのすぐ近くだもん!」

「ん、そうか。気を付けて帰るんだぞ」


「うん!おねーちゃんたち、ありがとー!!」

ぶんぶんと手を振って歩いて行く少年に、転ぶんじゃないぞー、と声を掛けながら手を振り返す晶葉。

「・・・・・・ロボ、どうやってここまできたの?」

それまで茫然としていた愛海が、ようやく口を開いた。

「緊急時にはすぐに遠隔起動できるようにしておいたんだ。今回ばかりは、機能が追加されていて助かったな」

『博士たちが無事でなによりですよ』ピピッ

「・・・だって、晶葉ちゃん、今のロボは動かしたくないって」


「・・・そんなちっぽけなプライドなんかよりッ!!」


ぎゅっ、と強く抱きしめられる感覚。


「お前のっ、愛海の無事の方が、大事に決まっているだろうッ!!」


「・・・あき、は、ちゃん」

ぽたっ、ぽたっ、と、肩にかかる温かい水の感触。

「っ、昔っから、いつもそうだっ!一人で突っ走って、後のこと考えないでっ、それで怪我してっ」

「っく、今回なんてっ、ひっく、けがじゃすまなかったかもしれないんだぞっ!!あつみがっ、いなくなったらっ、わた、わたしっ・・・」

「・・・ごめんね、晶葉ちゃん。心配かけて・・・・・・」

ぎゅっ、と優しく抱きしめ返す。じわりと涙があふれてくるが、我慢することはないだろう。

『・・・しばらく、周りを見張ってますね。何かあったら、また戻ってきます』ピピッ

そんな空気を読んで、ロボはその場を少しだけ離れる。

二人は、お互いに落ち着くまで、しばらくずっと、抱きあって泣いていた。