2スレ目>>243~>>247


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『あ・・・あぁ・・・・・・』

暴れまわるバケモノ。なぎ払われていく人、人、人。

『いや・・・やだよ・・・もうやめてよぉッ・・・!!』

崩れていく建物。燃え盛る家、家、家。

『ぁ・・・ぅあ、あああっ・・・・・・!!!』

そして、ひときわ大きくて眩しい光が、視界いっぱいに広がって、『あたし』は・・・・・・・

『あ、あぁぁ・・・うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!!!」
 

「・・・かっ、莉嘉っ!どうしたの、莉嘉っ!」

「あ、あああああああっ!!やだ、やだやだやだっ、やめて、やめてえええええええええええっっ!!!」

「落ち着きなって、莉嘉っ!莉嘉っ、痛っ、だい、じょうぶっ、だからっ!!」

アタシの声も聞こえていないみたいで、ベッドの上から落ちそうになるくらいに暴れる莉嘉。

めちゃくちゃに振り回す腕に足に何度も叩かれながら、どうにか莉嘉をぎゅっと抱きしめる。

「大丈夫、大丈夫だよ!何にも怖いことないから、アタシがついてるから!!」

背中をぽんぽんと叩きながら、必死に声をかけてなだめすかす。

「あ、うあああっ・・・あ・・・お、ねえ、ちゃん・・・?」

涙やいろんなものでぐしゃぐしゃになった顔で、ようやく莉嘉はアタシの方を向いてくれた。

「・・・ん、やっと落ち着いた。どうしたのさ、怖い夢でも見たの?」

「・・・お、ねえちゃんっ。アタシ、アタシっ・・・!!」

不安そうな顔で、ぶるぶる震えて俯く莉嘉。

「・・・思い出すのも怖いんなら、無理に説明しなくてもいいよ。落ち着くまで一緒にいたげる。それとも、隣で一緒に寝てあげようか?」

「・・・っく、うん。いっしょに、ねる・・・・・・」

「ん、じゃあちょっと待っててね。枕と毛布取ってくるから・・・っと」

いったん莉嘉を離して立ち上がろうとすると、袖をきゅっとつかまれて、よろけてベッドに倒れ込んでしまう。

莉嘉の方を見ると、さっきよりはだいぶマシになったけど、それでもまだ不安そうにしている。

まるで、このままアタシを行かせたら、もう戻ってこないんじゃないか、って考えてるみたいに。

「・・・アタシのベッドに行こっか。枕と毛布、持っておいで」

「・・・うん」


アタシが『莉嘉』と死に別れたのは、二年前のこと。

高校生になってから一人暮らしを始めてしばらく、久々に莉嘉と二人で出掛けようと待ち合わせた日。

莉嘉はちょっとねぼすけなところがあって、その日もやっぱりちょっと遅れてきて。

よっぽどアタシと久しぶりに会うのが楽しみだったんだろうな。遠くからアタシの姿が見えたとたん、嬉しくなって走りだしちゃって。

―――――――居眠り運転のトラックが突っ込んできたのは、丁度そのタイミングで。

その時の莉嘉の茫然とした表情も、まるでサッカーボールみたいに勢いよく吹っ飛んでいく姿も、今だに瞼にこびりついて離れない。

病院に運ばれはしたが、誰の目が見てもわかるくらい、はっきりと即死だった、らしい。

事故の瞬間はいやになるくらいしっかり記憶に残っているのに、それから一週間近くの記憶は断片的にしか憶えていないのはなんだか不思議な感覚だ。

それでも、お葬式のとき、自分でもどうかしてるんじゃないかって位、一滴も涙が出なかったのははっきりと思い出せる。

たぶん、どうしても納得できなかったんだろう。理解できなかったんだろう。

それでもどうにか現実をなんとか呑みこんで、受け入れて。


アタシが『リカ』に出会ったのは、一か月前のことだった。

シャンプーが切れてるのを忘れてて、慌てて近所のドラッグストアまで行った帰り道だった。

通りかかった公園から、いきなりぴかーっ、て光がして。一体何だろう、って恐る恐るそっちを向くと、

―――――――死んだはずの莉嘉が、そこにいた。

きっとあれから成長したらこうなるだろうな、っていう姿で、ぼろぼろのまま茫然と立ち尽くす『莉嘉』を見て、居てもたってもいられなくなったアタシは、すぐに『莉嘉』にかけよって声をかけた。

―――莉嘉、莉嘉っ。わかる、アタシだよ、おねえちゃんだよっ。

―――お、ねえ、ちゃん?

光のない目で、そう一言だけつぶやいて気を失った『莉嘉』を、アタシは家まで運んだ。

それから一日たって目を覚ました『莉嘉』は、

―――あなたは、だれ?

それまでの記憶を、一切失っていた。

かろうじて『リカ』という自分の名前と、ここが自分の生まれた『世界』ではないことだけはわかるみたいだったけど、それ以外は何一つ憶えていなかった。

これだけ瓜二つの見た目で、しかも名前が同じ『りか』。偶然とは思えないし、きっと思いたくなかったんだろう。

―――アタシが、あなたの『お姉ちゃん』になってあげる。だから、しばらくここに居なよ。

そう言って、彼女の面倒を見ることに決めた。


一か月たった今でも、三日に一回は『怖い夢』―――おそらく、『元の世界であったこと』なんだと思う―――を見て、夜中に飛び起きて、パニックを起こす。

きっと、どうしても受け止められない、受け入れたくない出来事だったんだと思う。そして、それだけの出来事なら、きっと簡単に逃れる事なんてできない。

いつか、リカのもとに、『怖い夢』を見せた元凶がやってくるんだろう。

そのときまで、ううん、そのときがきても。アタシが、この子を守らなきゃ。

たとえ何が起こったって、もう二度と、『大切な妹』を失って、たまるもんか。