2スレ目>>103~>>113


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──宇宙の何処か──

真っ暗闇の空間に、何者かの声が響く。


「さて、我らの計画の進捗状況についてだが」

「……ウサミン星の一件は大きな痛手となったな」

「強固な全体主義の下で理想的な繁栄を遂げていたウサミンの崩壊」

「その原因は、彼らにもたらされた『文化』によるものだ」

「『感情』の起伏を促す『娯楽』……か」

「やはり、知的生命体にとって感情という現象は唾棄すべきものであるな」

「左様、此度のウサミン星の騒動はその恰好のモデルケースと言えよう」

「と、なれば……これ以上被害が広がる前に手を打たねばなるまい」

「ウサミン星の『グレートマザー』が持ち帰ったとされる文化の発信源は何処だ?」

「天の川銀河に属する太陽系……その第三惑星、地球だ」

「何と、そのような辺境の未開惑星が……」

「地球人は、殊更感情の起伏の大きい種族なのだ」

「故に、彼らの生み出す文化……娯楽も、相応の影響力を持つことになる」

「だがしかし、連中は未だに太陽系の外へすら出てこられないのだろう?」

「我らが手を下すまでも無く、捨て置ける問題ではないのか?」

「ならぬ、現に彼らが原因で一つの種族が滅びかけているのだ」

「矮小な存在とはいえ、不安要素は無くしておくに限る」

「左様、防疫とは早期に実施してこそ効果が上がるものだ」


「……我らの宇宙が次なる段階へと進化を遂げるために」

「障害となるものは如何なる手段を講じてでも排除せねばならん」

 

 


──宇宙管理局・太陽系支部──

LPは、暫くぶりに訪れた休暇をどう過ごそうかと思案していた。

「よう、LP」

LP「ッ!?」

突然背後から声をかけられ、身構えながら後ろを向き返る。

LP「お前は! CuP!?」

CuP「ははっ、相変わらず警戒心の強いこって」

唐突に表れたCuPと呼ばれた男は、どうやらLPとは顔見知りらしい。


LP「なんでこんな所に? 本部の指令か?」

CuP「いやなに、久しぶりに友の顔を見たくなってな……こんな理由じゃ納得できないか?」ニコォ

LP「……」ゾクッ

LP「(またこれだ、こいつといると尻がムズムズしてくるんだよな……)」

CuP「お前も休暇中なんだろ? ……一杯付き合えよ」

LP「……わかったよ」

普段は飄々としているCuPの見せた真顔にただならぬ事情を感じたLPは彼に付いていくことにした。

 


──宇宙管理局・銀河系方面司令部──

二人は居住区にある古びた居酒屋に来ていた。
CuPが店主と合言葉のようなやり取りを交わすと、店の中にある隠し部屋らしき場所へ通された。

CuP「さて……単刀直入に告げるぞ」

CuP「『評議会』が動いた……」

LP「!!」

CuP「どうやら、地球に『ソラ』を送り込んだらしい」

LP「何だと!?」

LPは思わず声をあげる。
ソラといえば……宇宙連合の影で暗躍する秘密結社『評議会』子飼いの実働要員だ。


LP「奴ら……地球をどうしようっていうんだ」

CuP「俺も詳細は掴めていないが、連中がまたぞろ厄介事を始めたってのは確かだな」

LP「……」

CuP「お前は地球にお熱らしいからな、教えておいた方が良いと思ったんだが」

CuP「それとも、伝えない方が良かったか?」

LP「いや……ありがとう、俺の方も少し情報をあたってみる……」

CuP「フッ……礼はお前の身体で「それ以上は言うな」」

 

 


──その頃・地球──

評議会の工作員であるソラは、身分を隠し地球人『野々村そら』として行動していた。
活動拠点の確保に成功した彼女は、これまでに得られた情報を整理していた。

そら「(私に与えられた任務は、この星の文化を他所に広げないこと……)」

そら「(その為の手段は制限されていないから、文明を丸ごと滅ぼしてしまうのが最も単純かつ確実)」

そら「(とりあえず、利用できそうな勢力をもう一度洗い出してみるか)」


そら「(地球人に敵対している存在で……最も一般的なのは負の思念体カース)」

そら「(ただ、これらの能力は周囲に多少の混乱を引き起こす程度……地球人を滅ぼすなんて期待はできそうにない)」

そら「(他には、はぐれ異星人やら、宇宙犯罪組織やらが散発的に地球人に対して被害を与えている……けど)」

そら「(これも既にある程度の対策がとられている……役には立ちそうにない)」


そら「(地球外生命体と言えば、人型プラントイドが活動していたな)」

そら「(確か、例の……植物の星の大精霊、ユミ……だったか)」

そら「(それと接触を図って、彼らの『計画』の実行を焚き付けるのもアリか)」

そら「(けど、地球を守るアイドルヒーロー同盟とやらの組織の一員らしいから)」

そら「(交渉に失敗した場合のリスクが大きい……)」

そら「(やはり、種族内での内輪揉めを誘発させるのが一番か……)」

そら「(GDFとやらを利用するのはどうか……一応地球上ではかなりの規模を誇る組織らしい)」

そら「(幹部連中は宇宙管理局と通じてるみたいだから、管理局に居る我々の工作員を通じて懐柔できるかも)」


そら「(他には、アンダーワールドと呼ばれる地底に住む連中が、地上を攻撃しようと画策しているとの話もある、こちらもかなりの規模だ)」

そら「(ここ数日の調査で知識や技術に関して貪欲らしいということが分かっているから)」

そら「(我々にとっては既に陳腐化している数世代前のテクノロジーでも、ちらつかせてやれば容易に籠絡できるだろう)」


そら「(ただ、地球で活動するにあたっていくつか懸念材料がある……)」

そら「(一つは、はぐれウサミン星人と共に行動している、奥山沙織という地球人だ)」

そら「(彼女の『歌』は……はっきり言って危険だ、私の精神プロテクトを破りかねない物だった)」

そら「(この二人に関しては……なんらかの対策を講じる必要がありそうだ……)」

そら「(もう一つは、地球人が『神』と呼ぶ、高次の存在だ)」

そら「(本来なら、彼らが物質界に干渉することなどほとんどないはずなのに)」

そら「(どういうわけか、この星にはそういう存在がひしめいている……)」

そらが長い事思案していると、部屋の何処からか鐘の音が鳴った。
地球の文化について学んであったそらは、それが自分を呼んでいるものだと知っていた。

そら「はーい! 今出ますよーっ」

ガチャッ

そら「どちらさま?」

扉を開けると、そらが活動拠点としている建物の管理人(の部屋に居候しているらしい女性)が立っていた。
名は確か、鷹富士茄子といったか……たったいま懸念材料としていた高次の存在である。

茄子「えっと、そらちゃん"越して来たばかり"だから、ちゃんと馴染めてるかなーって気になったので」

茄子「一緒にお夕飯でもどうですか?」

そら「お夕飯……?」

長年の工作員として活動してきた勘が警鐘を鳴らす。
心理や思考、精神等に侵入されないための訓練を受けてはいるが、神が相手ともなればどうなるか分からない。
心を読まれれば、地球に害をなす存在であると知られてしまう。

そら「(ものすごく拒否したいけど、それはそれで怪しまれそうだ……)」

そら「(あるいは『神』を身近に置いて、腹を探ることも必要か)」

そら「うん! せっかくだから、ごしょーばんにあずかろうかな☆」

茄子「ふふっ、喜んでもらえると良いんですけど!」

 


──Пの部屋──

そら「おじゃましまぁーっす☆」

茄子「どうぞお構いなく」

П「一応言っておくが、ここは俺の部屋だからな?」

茄子「ちなみに、今夜はカレーライスですよ」

茄子「さあ、遠慮しないで召し上がれ」

П「一応言っておくが、作ったのは俺だからな?」


そら「(今のところ、神にも地球人の男の方にも敵意は感じない……この食物にも細工の気配はない)」

そら「それじゃ遠慮なく! いっただっきまぁーす!」モグモグ

二人は、そらがカレーを食べる様子を見守っている。

そら「(すごく食べ辛い……)」モグモグ

とりあえず一口分咀嚼し終え、スプーンを置く。

そら「おいしーっ!」

П「そうか、それは結構」

そら「こんなにおいしーかれーらいすが食べられて、あたしはっぴー!」

実際は味なんてわかりはしないのだが、地球人の娘だったらこんな風に反応するんだろうという想像の下で発言する。

茄子「Пさん、良かったですね! 美味しいって言ってもらえましたよ!」

П「……」ギューッ

茄子「痛い痛い!お腹つねらないで!」


──食べ終えました──

そら「ごちそーさまー☆」

茄子「お粗末様でした」

П「(もはや突っ込まんぞ……)」


П「しかしそらよ、お前のそのはっぴーな喋り方はどうにかならんか」

П「なんだか落ち着かないんだが……」

そら「!!」

そらは口調について指摘を受け、思わず固まってしまう。
彼女のこの口調は、別に元気の良い地球人を演じているというわけではなかった。
彼女の種族は若いうちは、このように少し特殊な喋り方をしてしまうのだ、意識してもこればかりはどうしようもないことらしい。
もっとも、その種族も遠い昔に滅びてしまったのだが。

そら「え……えっと……」

そらが口ごもっていると、茄子が庇うように口を開いた。

茄子「もう! Пさんダメですよ? そんなこと言っちゃ!」

茄子「そらちゃん、この人の言うことは気にしないでくださいね? 私は可愛いと思いますよ、その喋り方」

そら「う……うん……ありがとう」


そら「えっと……今日は誘ってくれてありがとう!」

そら「あたしもいずれ、二人にはっぴーなお返しするから☆」

茄子「うふふ、期待していますね」

П「あー、なんかすまなかったな……またな」

 

 


──そらの部屋──

そらは、先ほどの男の言葉を引きずっていた。

そら「はっぴーはっぴー……か」

そらは自分の種族についての記憶が曖昧で、それでも別段意識したことなど無かった。
しかし、口調について指摘を受けて意識し始めると、そればかりが頭に浮かんで離れない。

そら「(どうしてハッピーという単語が口をついて出てしまうのだろうか……)」

そら「(ハッピー……幸福?)」

そら「(私とは無縁のものだ……)」


そら「(そういえば……私と同じような喋り方の人が……いたっけ)」

そら「(……確かに……いたはず……なんだけど)」

そらの記憶の片隅に、ほんのわずかに残っていた。
自分と似たような喋り方の…………自分と同じ種族の何物かの存在が。

そら「(顔も名前も、姿も声も思い出せないが、確かにいた事は覚えている)」

そら「(一体、あの人は……私は、何者なんだろう……)」


ふと、自分が意味の無い思考にとらわれている事に気づき、頭を振る。
今なすべきは与えられた任務を遂行することである。
自分が何者であるか……などという余計な雑念は、必要ないばかりか任務遂行の邪魔になるだけだ。

そら「(今日はもう休もう……そして、明日からは行動を開始しよう……)」

そら「(地球人を……滅ぼすために……)」

自分の目的を再確認した彼女は、意識を遮断すると休息状態に入るのだった。