名前: ◆OJ5hxfM1Hu2U[sage] 投稿日:2013/07/22(月) 21:23:07.62 ID:tCFDNKcDO [3/12]‐これまでのあらすじ‐
連続強姦魔にして色欲のカースドヒューマン、バイフォースは、ランニング中の斉藤洋子を新たな標的に選んだ。追跡の末に行き着いた公園で、ついに足を止めた洋子。バイフォースはチャンスを見逃さない。健康的な美肌に今、不健全な漆黒の魔手が迫る!
‐1‐
バイフォースの体から、握り拳大の黒い泥が2つ、3つと落ちた。泥は黒いサソリに形を変え、洋子の足元へと這っていく。色欲サソリは極小型のカースだが、その精神毒は強力である。
(モウスグダ コムスメ、オマエハ カイラクヲ ムサボル テゴメニンギョウニ ナルノダ!)
今やサソリ達は洋子の足に辿り着き、目的を果たそうとしていた。…だが!
(バカナッ!?)
バイフォースは出かかった言葉を辛うじて飲み込んだ。色欲サソリ達は、洋子の足に触れぬまま炎に包まれ、白い灰になったのだ!
(どうも怪しいと思ったら…カースなら手加減しないよっ)
洋子は追跡に気づいていた。ヒノタマにより強化された身体能力でも撒けない追跡者が、少なくとも普通の人間ではないことも。そして今や確信している。追跡者はカースだ。洋子は軽やかに振り向き、言う。
「走っただけじゃ物足りないって感じですねっ、もっと熱くなりませんか?」
無邪気な誘い。その裏にあるのは、洋子自身も意識していないヒノタマの意思だ。
『お前を、焼き尽くしてやる』
強烈な熱気が放たれると同時に、洋子の輪郭が揺らめき、ぼやける。熱気は瞬く間に広がり、静かな早朝の公園は真夏の昼下がりめいて形を失っていく。
‐2‐
今やバイフォースは公園ではなく、石畳めいた神秘的円形空間にいる。巨大な空間の中心には、やはり石から彫られたらしい祭壇と、燃え盛る朱色の炎。そして、つい先程まで目の前にいた洋子の姿は…どこにも見えない。
しかし彼に動揺はなかった。バイフォースの体から、黒い泥が流れ出る。どこに収まっていたのか、その体積は元の体の数十倍!黒い泥は悍ましく蠢いてバイフォースをも飲み込み、飴細工めいて形を変え、巨大な人面サソリとなった!
「デテコイ コムスメ! イマナラ ヤサシク ファックシテヤル!」
人面サソリが叫んだ次の瞬間、その周囲を朱色の炎が取り囲み、徐々に勢いを増していく。さらに炎は無数の手となり、人面サソリの爪を、脚を、卑猥な形の尾を掴む!
「グオオー! オアー!」
炎の手が、人面サソリの爪を、脚を、卑猥な形の尾を、乱暴に引きちぎる!人面サソリのパーツは見る間に燃え尽き、白い灰と化して熱風に散る!
「ウワー! アアー!」
支えを失い、無様に地べたを転がり苦しむ人面サソリを、炎が容赦なく焼く!脚を再生して脱出するか、尾を再生して反撃するか…無理だ! 再生したそばから灰になっていく!あまりに一方的! 戦いの行方は、もはや決したかに思われた! …だが!
「よーっし! このまま一気に…っ!?」
それはヒノタマの声なき警告か。洋子は下腹部に嫌な感覚を覚え、意識を現実世界に引き戻した。眼前に迫る黒い巨人…バイフォースだ! 炎に焼かれ、力尽きたのではなかったか!?
‐3‐
洋子が使用したカエン・イリュージョンは、炎のイメージで精神を焼く、一種の攻撃性テレパスである。カースの場合、根源たる感情を焼くことで、体そのものにダメージが及ぶ。有効な攻撃だ。だが、バイフォースはただのカースではない。人間的な思考能力を残すカースドヒューマンなのだ。
(ミヌイタゾ、オマエノ ワザヲ!)
この恐るべき精神攻撃の原理は、剥き出しの精神を直接ぶつけるという極めて原始的なものだ。彼を焼く炎は洋子の精神そのものであり、看破できれば反撃さえ容易。致命的な弱点!
現実世界に戻るのが一瞬でも遅ければ、彼女はテゴメ人形になっていただろう。そして、カエン・イリュージョンは目の前の敵にもう通用しない。非常にピンチだ!この状況にあってなお、洋子は動じない。怯えも嘆きもせず、楽しげに微笑んでさえいる!
(キガ フレタカ。ナンダッテイイ、ファックスル カラダサエ ノコッテ イレバ!)
バイフォースが丸太のごとき両腕で、洋子を掴みにかかる! その名の通り「力ずく」だ!
「…はァッ!!」
鋭いシャウト、一拍遅れて彼の両腕が燃え落ちた。思わず一歩後ずさるバイフォース。その目の前で洋子は朱色の炎に包まれる。炎が、ファンタジー踊り子めいた装束を形作る。煽情的ながらも神秘的、肌色の部分が多い!
「《プリミティヴ》、バーニングダンサーです。情熱のダンス、心にしっかり焼き付けてくださいねっ」
‐エピローグ‐
洋子は時計を見上げた。午前5時30分。戦闘開始から5分と経っていない。足元には白い灰の山。もはや原形を留めていない、バイフォースだったものだ。洋子は無傷、しかし油断ならない相手だった。まさかアシュラ馬形態なる奥の手を隠していたとは。
「ともかく、これでしばらくは落ち着くかな…ふぅっ、早く帰ってお風呂お風呂っ」
装束を形作る朱色の炎が弱まり、徐々に肌色の部分が広がっていく。ランニングウェアは炎に燃え、既に失われている。のんびりしてはいられない。洋子は老朽安アパートに帰るべく走り出した。
斉藤洋子、またの名をバーニングダンサー。かつて人類が火を神と崇めた時代、神に身を捧げた聖火纏う踊り子。彼女はその魂“ヒノタマ”を宿す古の戦士《プリミティヴ》である。
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