シュークリーム。
種類によって様々だが、柔らかい生地の中に甘いクリームが入った洋菓子。
日本でも馴染みが深く、おやつにはちょうどいい物だ。
『シュークリームが食べたいにゃ、飛びっきり甘いのがいいにゃ』
『むふふ…日菜子も最近食べてませんからぁ、お願いできますかぁ?』
『シフトが一緒の子からきいたんだけど最近、近くに専門店ができたらしいにゃあ』
『日菜子も愛梨さんから聞きましたあ♪凄く評判がいいそうですよぉ』
と、ある日いきなりこんなことを同居人二人に切り出された最後の一人であるのあは
、少し考えた後、
『……行ってくるわ』
『むふふ、ありがとうございますぅ♪』
『さっすがのあチャン、話がわかるにゃあ!……ところで今日の晩御飯は何にするにゃ?』
『オニオンサラダとあさりの味噌汁と鯖の塩焼きよ』
『ゼッタイおっことわりだにゃ!!』
こんな会話をしたのが昼前である。
『ああ、食べたい食べたい食べたいです?……』
「でもお財布忘れてきましたから?……」
そして午後、しっかりシュークリームを買いに来て、手頃な値段で美味しそうなのを六個ほど購入したのあは、店の入り口でガラスに張り付いている謎の人物と遭遇していた。
『菜帆ちゃん、やっぱりここは手っ取り早く襲っちゃいましょうよ??』
「でも?、そうしたら二度とこれなくなっちゃいますよ?……」
明らかに、一人のはずなのに聞こえる声は二つで。
それで口にする事は同じこと。しかも物騒な言葉まで聞こえてくる訳で。
更に言えば、途中からこちらの方……正確には、シュークリームが入ってる袋を凝視されている始末。
「………………………………」
考える。
「………………食べる?」
『え!いいんですかぁ!?』
「ありがとうございます?♪」
………声をかけた途端、袋ごと丸々取られてしまった。
『早くたべましょうよ?!』
「そうですね?、早速いただきましょうか?」
「……待ちなさい」
『?…どうしましたぁ?』
「何かありましたか??」
「何故私まで連れていこうとしてるのかしら?」
『??』
「おかしいですかぁ?」
……どうやら、なかなか厄介な相手に絡まれたようだった。
ーーー数分後
『うわ、甘い、甘過ぎですよこれ?』
「こっちはちょうどいい感じですよ?」
「………甘いわね」
海老原菜帆とベル。
結局、そう名乗った奇妙な二人組と一緒にのあはシュークリームを食べることになった。
『んくんく…やっぱり甘いものにはこれが合いますね?』
「ですね?」
ついでに飲み物まで買わされたが、早々にのあは諦めた。
「はむっ…そういえば、記憶喪失なんですかー?」
「…ええ」
『うーん、ベルフェちゃんなら何か分かるかなぁ?』
「でも、アスモさんの話だと協力してくれなさそうですよー?」
『だよねー…うん、美味しい美味しい♪』
「でもー、私たちで何か出来ることがあったら、手伝いますよー、ねーベルちゃん!」
『えええ!?……うー、菜帆ちゃんが言うなら…あーでも…』
「大丈夫ですよー、のあさん料理できそうですし、きっと美味しい手料理を食べさせてくれますよー」
何か勝手に話が進んでいる気がする。
『うーん……菜帆ちゃんがこういう時は当たるからねー…うん、特別にだからねー!だから美味しいものよろしくね、のあちゃん!』
「……ありがとう」
それでも、不思議と嫌悪感を感じない。
…後日、みくに言ったら、
『それが友達ってやつだにゃ!』
と、得意気な顔で言われたのだが、割愛。
「んぐんぐ…はぁ、それじゃあそろそろ戻りましょうかー」
『お財布持って今度こそ食べ歩きだよ菜帆ちゃん!』
「ですねー。あ、その前にびぴっとしちゃいましょー」
二人の意見が固まると、菜帆がスマートフォンを取り出してきた。
ニュアンスから察するに、赤外線によるデータ通信だろうと思い、最近日菜子に持たされたスマートフォンを取り出す。
「ぴぴっと……もう一回ぴぴっと……はい、これで大丈夫ですよー」
『何かあったらよんでねー、ギブアンドテイクならばっちし手伝うよー』
「…ええ、任せなさい」
「じゃーそれではー」
『またねー!』
…そうして、この奇妙な『友達』達は帰っていった。
「……帰りましょう」
その前に、またシュークリームを買わなければ。
「……………………………………………」
ほとんど売り切れだった。
続く?・おまけ「流石に相手が悪かったみたいですねぇ」
とある河川敷に、その少女は居た。
「魔力管理人に魔法使い、ですかぁ……なかなか面白いことになってますねぇ、むふ♪」
今も、そちらを見れば氷と炎がぶつかりあっている。
「ちょっと早いですけど、一応ノルマは満たしてますよねぇ、王子様?」
「……そうですねぇ、こればかりは生まれないとどうなるかわかりませんからねぇ……むふ、むふふ♪」
「強欲な王様が集めた『七罪』、全て混ざりましたからぁ、さしづめ……えーと?」
「……むふふ、そうですねぇ♪それがいいと思いますよぉ♪」
「ーーー『原罪』……むふふ♪」
そう、わらう少女の後ろには、七色のグラデーションに幾何学模様の、普通ならあり得ないはずのカースの核が横たわっていた………
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