「へぇ、これが魔法銃?」茜は亜子の知り合いが先日のガラクタを改造したその銃を手に持ってまじまじと見ていた。「そうそう。ちょっと一回撃ってみてほしいんよ。」亜子は取りあえず知り合いを使ってごく普通の地上人が使えるかテストを行っていた。「魔法は一番安全そうな水の魔法にしておいたから遠慮せずやったって!」「うん、えっと『水よ!』」茜が引き金を引いて唱えると、銃の先端から勢いよく水流が飛び出し壁を少し削った。「よしよし、茜も使えるみたいやね!」満足そうに頷く。これなら誰にでも高値で売り払えそうだ。
その時だった。黒い泥のような物…カースが茜の背後に核を中心として形成しだしているのを亜子は目撃した。「貸して!『水よ!』」亜子は思わず茜から魔法銃をひったくると、引き金を引いた。まだ小さな水たまりサイズだったカースの核は魔法の水により砕け散った。(…!)そして亜子は背筋に謎の悪寒を感じた。思わず銃の取り換え部分を外してみると、浄化されていたはずのカースの核が少しではあるが金色に染まっていた。「あ、ああああああああ!」亜子が焦って核を取り出し捨てようとするも、逆に核は亜子の手から少しずつ浸食してゆく。「やだ、やだ!まだ死にたくない!」「亜子ちゃん!」茜が駆け寄り、少し亜子に食い込んでいる核を思い切り掴むと地面に投げ捨てた。「早く逃げよう!」「あ、ありがと…」茜は亜子の手を掴むと、全力で逃げ出した。
「…ああっー!」取りあえず遠くに来て、亜子は悲鳴を上げた。「さっきまで入れてあった水の魔法のビー玉が無い…!」「お、落としちゃった…?」「きっと核を外した時や!ああああ!核はまだ取り換えがあるから何とかなるけど!ああああ!」大損だ!とにかく亜子は自分の咄嗟の行動を呪わずにはいられなかった。
その頃、捨てられた核はエネルギーを補給するためのエネルギー源を欲していた。僅かなエネルギーで黒い泥をだし、何とか動きつつ探す。そしてその核はビー玉サイズの謎のエネルギー体を発見する。とにかくエネルギーを欲していた核はそのエネルギーを取り込んだ。
翌日GDF陸戦部隊が数体の2~3メートルサイズのカースと戦闘していた。火器による圧倒的火力を受け、カースたちはほぼ核だけの状態となった。「核が露出しました!」「破壊せよ!」その時だった。付近に会った川から大量の水流が飛び出し、GDFの隊員たちを襲った。「うわぁぁぁぁ!」「なんだ!新手か!?」「隊長!火器が使い物になりません!」「何ィ!?」GDF隊員たちは武器を失い途方に暮れる。そこに、1メートルにも満たない小さなカースが現れた。「隊長!小サイズのカースです!」「知るか!武器もないんだぞ!とにかく今はあの核を岩でもぶつけて破壊せよ!」隊員たちが動き出す。とにかく物理的にでも破壊するために。しかし、彼らより小さなカースの動きの方が早かった。異常なほど俊敏に動き、露出して少しずつ回復しつつあった核を取り込んだのだ。普通と違うのは、取り込んだ核が体内ではなく体表にあること。それはまるで核を宝石に見立てて着飾っているようだった。新たなエネルギーを取り込み、その体は大きくなる。「隊長!不味いです!」「…総員、退避っー!」しかし、核が数回点滅するように光ると、そのカースは消えてしまっていた。「な、なんなんだ…一体…」
それからその奇妙な異常に素早いカースは様々なところで目撃された。宝石店を襲撃し、カースとアイドルヒーローの戦闘に乱入し、浄化された核さえ取り込んでいた。どんどんそのサイズは大きくなり、アイドルヒーロー同盟、GDF、宇宙管理局地球支部…様々な組織が討伐命令を下した。…しかし、現在もそのカースは大きくなり続けている。
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