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380 名前: ◆zvY2y1UzWw[sage saga] 投稿日:2013/07/18(木) 19:53:09.85 ID:4bSwgeVb0 [3/16]ナニカは夢を見ていた。ギロチンで首と体を別々にされたり、毒を飲まされた夢を。
ナニカは夢を見ている。縛られて冷たい水槽に沈められたり、銃で頭を撃たれた夢を。
ナニカはずっと夢の中。怖い人たちに滅茶苦茶にされる夢の中。
最初は何も思う心がなかった。夢の中にいることが役割だった。
けれど流れ込んできた感情を読み取るうちに…偶然にも意識が生まれていた。
痛いのはイヤだ。怖いのもイヤだ。苦しいのもイヤだ。助けて、誰か助けて…。
消した恐怖の記憶、幼い子供のような感情…『主』のなくしてしまったもの、封じこんでしまったものの集合体がナニカだった。
だからある意味ではナニカは『主』だった。少し劣るが『主』であった。
けれど本来は生まれる事のない意識体。自我は殆どなかった。感情も封じ込められた感情を再現するだけ。
『主』はナニカの事を知らない。『主』が恐怖の記憶を認識しないようにしていたら、ナニカも全てに認識されないようになっていた。
ナニカは誰にも認識されずにいたある日、偶然に浮上した意識の中、無意識に今の『主』の記憶を読み取った。
その日が恐らく、自我の生まれた日。
嫉妬から何かが生まれたのだ。
いいなぁ、うらやましいなぁ。
なんで『主』にはあるものがあたしにはないんだろう。
あたしもほしいなぁ。
『家族』がほしい。きらりお姉ちゃんも、夏樹お姉ちゃんも、李衣菜お姉ちゃんも、お兄ちゃんもほしい。
ズルいなぁ。
…『奈緒』だけズルいじゃん。あたしに全部押し付けて!
あたしだって奈緒なのに!
嫌い、キライ、大嫌い!奈緒なんて奈緒なんて!
あたしは、アイツから、『奈緒』から自由になりたい!
あたしはみんなに愛してもらいたい!
ナニカは名無しの子。『奈緒』という名前を捨てた、奈緒の記憶から生まれた人格。
…その人格は死に続ける夢と嫉妬で歪んでしまったのだけれど。
ナニカが『奈緒』を認めない限り、ナニカは『何か』であり続ける。
夜。11時30分。
ナニカは最近意識の浮上の頻度が上がっていた。
偶然か必然か、一部になった≪嫉妬≫という性質を持っていた浄化された核と波長が合い、その主である加蓮と友達になったナニカは以前よりも自我がはっきりしてきたのだ。
『奈緒』から流れてくる感情以外の感情を発することが多くなり、彼女らしさが芽生えていた。
だからなのか、行動時間が伸びていた。今からきっかり30分。毎日この時間が外で行動できる時間だった。
ナニカは誰にも認識されない。奈緒から分離して起き上ると、泥人形のように形を作る。
分離できる大きさもそれなりになっていた。
真っ赤な瞳がピカピカ光る、全てが黒い泥で作られた幼い少女。
それは真っ黒いワンピースを着ている真っ黒な…幼い頃の奈緒そのものだった。
ナニカはこの姿があまり好きではないけれど、人の姿はこれ以外なれないから仕方ない。
誰かを踏まないように小さな羽で浮遊しながら寝室を出て、パソコンのある部屋へ行く。
ナニカは機械が好き。触れさえすれば動いてくれるから。
いっぱい外の事を知った。たくさんの人が悲しい思いをしていることも、辛い思いをしていることも。
もっとシアワセな世界がいいな。そうすればみんなで愛し合えるはずだよね。
ナニカは知っていた。自分の真の力を。星を喰らう怪物の存在意義を。
世界をシアワセにする方法を。
けれど知っているだけじゃ意味がない。力を全て使わないと無理な事。
『奈緒』がジャマだ。何事においてもアイツはジャマだ。
だから、奈緒を乗っ取って自分と同じ苦しみを味あわせてやる。方法はもう思いついている。
加蓮お姉ちゃんの住んでいる場所さえわかればいい。そうすれば作戦は実行できる。
あとはタイミング。ヒーローたちに邪魔されるのは嫌だから。
きっその時の姿は怪物みたいな物だろうから。
最高のタイミングで、最高にシアワセな世界を生み出そう。
「キシ、キシシシシシ…」
愛に飢えた小さな怪物は、赤い瞳を輝かせて不器用に笑った。
12時1分前。引っ張られるような感覚が起きる。
もう戻る時間だ。履歴を消すとナニカは大人しく寝室へと戻って行った。
シンデレラみたい?なら早く王子様に来てほしい。
かなり かなり かなり来てほしい。
そうすればきっと『悪い魔女』は消えるでしょ?
ああ、シンデレラに悪い魔女は居なかったっけ。
じゃあどうでもいいや。
王子様より家族が欲しい。友達が欲しい。
いっぱい愛してほしいから。
データ更新
ナニカ(かみやなお)属性:愛に飢えた怪物能力:泥の操作、精神・記憶・認識操作(未覚醒)
誰にも認識されないように、認識しないように奈緒が封じ込めていた悪夢。それと同時に消したはずの幼児性が組み合わさって生まれた人格。死に続ける記憶を見すぎたせいか、子供のような正確なのにどこか狂ってしまっている。知識も結構偏っており、漢字も読めるが書けない。そこは見た目と口調相応だろう。認識できないのがデフォルトなので、例外を除き認識操作で『認識できる』ようにしないといけない。しかしまだその力に目覚めてはいない。目覚めていないだけでその力の鱗片は時々見え隠れしている。本人は基本的に気付いていないが。見た目は真っ赤な瞳がピカピカ光る黒い泥人形。しかしドロドロしているわけではない。外での活動時は自由に見た目を変えられるが、12時には引き戻されてしまう。現在、少しづつ活動時間が伸びている模様。『世界をシアワセにする方法』を知っているらしく、今は虎視眈々と下剋上を兼ねたその実行タイミングを伺っている。
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