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―――光達の中学の屋上
ルシファーの『傲慢』なる残酷な提案に屈さず、自らの『誇り』と『自信』を手に入れた小関麗奈。望月聖にも、その身に秘めた希望の光を見出され、悪のカリスマから正義のヒーローへと転職。
―――かと思われたが
麗奈「ところで南条。ちょっと聞きたいことがあるんだけど…」
光「ん?なんだ?」
麗奈「アンタと望月って昔からの知り合いなんでしょ?」
麗奈「なんか、アイツの弱点とか知らないわけ?」
光「へ?」
過去に自らの悪事を聖によって邪魔されたことを未だに根を持っており、未だにその復讐を企てていた。
光「昔からの知り合いって…聖はまだ転校してきてそんなに日は経ってないぞ?」
しかし光からの返答は麗奈にとっては間の抜けた返答そのものである。
麗奈「そういうことじゃないわよッ!」
麗奈「アイツが転校してくる前から、アンタ達は仲間だってんでしょって聞いてんのッ!」
光「アタシと聖が?」
光「いや、それならもっと再開の喜びを分かち合ってると思うぞ!」
麗奈「……」
麗奈からすれば光はバカそのもの。しかしその正義感は身を持って体験しているため、決して都合の悪いことを誤魔化したりするような奴では無いこともわかっている。
麗奈「…ホントに知らないわけ?」
光「あぁ!昔からの友人なら忘れるわけも無いからな!」
麗奈「…はぁ」
麗奈「(じゃあ、アイツは一体何者なのよ…)」
光とは全く無関係なまた別のヒーロー?そう考えると世界征服を企てる麗奈にとっては現時点では聖相手に成すすべも無い。頭の痛くなる存在だ。
麗奈「(けど、そんな奴がアタシ達のクラスに転校してくるって、いくらなんでも偶然が過ぎない?)」
麗奈「(流石に光との関係性が何かしらはあるとは思うんだけど…)」
小関麗奈。世界征服を企てるほどの大口を叩くだけあって、本人は中々に頭が回る。
麗奈「(まぁ、でも…)」
麗奈「(そういうことなら南条を利用さえすれば、アイツは手を出せないっていうことじゃ…)」
しかし、その考えは中々にこすい。
光「?」
光「麗奈、どうした?」
麗奈「なんでもないわよっ」
麗奈「ほら、教室戻るわよ。授業始まっちゃうから」
光「おっと、そうだなっ!サボりはよくない!」
麗奈と光が屋上を後にし、自らの教室へと戻っていく。その姿を望月聖と佐城雪美は物陰に隠れながら見守っていた。
聖「私も…教室に戻らなきゃ……」
雪美「……」
仮の姿とは言えど、学生の本分は学業である。その本分を聖が疎かにするのは聖なる天使としてはあるまじき行為である。しかし佐城雪美は面白くなさそうな顔をしていた。
聖「そんな顔…しないで…?」
雪美「……バッグの中……狭い……」
聖「…授業中に猫を机に置くわけにもいかないの……」
聖はお留守番に対して異を唱える雪美に根負けをし、自らの学生バッグの中に入って大人しくしているならという条件で連れてきた。猫がダメなら自分も転校生にと雪美は言うが、人間時の雪美の姿では中学生というのは無理はある。
雪美「……ぶー……」
聖「ふてくされたりしないで…」
聖がいつものように雪美を宥める。
―――その刹那だった
聖「…!!」
雪美「…!!」
なんの変哲もなく広がる青空。しかし二人は感じた。この世の物では無い、邪悪な存在の魔力を。
「あなたはミカエルね?……隣の子は誰?」
124 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2013/07/12(金) 23:48:24.45 ID:Yf7Qecmro [2/2]これから毎日ウサミン狩ろうぜ
その少女は人間の肉体を持っていた。しかし、普通の人間とは異なる。何故ならその少女は巨大な魔力を放ち、そして背中には黒き翼が生えていたのだから。
千鶴「あなたがいるなら私が求めているモノにもたどり着ける?」
少女の名は『松尾千鶴』しかしそれは、人間の肉体の名。少女は乗っ取られている。
聖「貴女……アザエル……!」
千鶴「ふぅん。天界を堕ちた私でも名前は覚えていてもらえるのね」
―――堕天使『アザエル』
『傲慢』のルシファーと共に天界から堕ち、自ら堕天使へと生まれ変わった元天使。『神により強くされた者』の異名を持つ、その巨大な存在。天界の四大天使である『聖ミカエル』こと聖が知らないはずは無かった。
聖「……どうして、貴女が…」
千鶴「ふんっ……どうしてですって?」
千鶴「あなたに言う筋合いは無い」
千鶴「……ルシファーを倒した存在を手っ取り早く見つける為には」
千鶴「破壊活動をして騒ぎを起こせば良いのだから…」
聖「……」
雪美「……聖……あの人……おしゃべり……」
聖「……彼女…独り言が多いの」
千鶴「…ハッ!?」
しかしその独り言はとても見過ごせるものではない。ルシファーが討伐され、そのルシファーと『アザエル』の関係性は聖自身も知っている。つまり要約すれば『アザエル』は力の持たない一般人を巻き込んでルシファーの敵討ちを目論んでいるということ。
聖「そんなことはさせない……!」
聖がその背中に純白の翼をはためかせる。一般人は無論のこと、まだ精神的に未熟な光や新たな希望となりうる麗奈を天使や悪魔の戦いに巻き込むわけにはいかない。それはあまりにも早すぎる。
雪美「………!!」
雪美も聖の信念を感じ取ったのか本来の姿である『グリフォン』へと戻り、聖に加勢しようとする。しかし、それは聖によって制されてしまう。
雪美「…聖……どうして……?」
聖「貴女の力は信用している…」
聖「だからこそ…」
聖「―――彼女相手には、命取りなの」
千鶴「……やっぱり私、独り言多いな…」
千鶴「勝手に話を進めないでもらえる?」
千鶴「別に、私は貴女には興味無いのだけれど?」
平静を取り繕う『アザエル』しかしそれは表面上だけのものでは無い。
千鶴「まぁ…」
千鶴「―――あなたが望むなら倒してしまっても構わないけど」
聖「……!!」
ルシファーから教えられた『傲慢』の感情。その『傲慢』はハッタリでは無く、聖相手にも絶対的自信を持っているからこそだった。
聖「……確かに」
聖「貴女の力…私でも退けないかもしれない……」
雪美「……!?」
雪美は驚いた。聖の強さは知っている。『聖ミカエル』は天使の中でも最強の存在だってこともわかっている。その聖が退くことの出来ない存在。彼女にはとても考えられなかった。
千鶴「わかってるの?なら敵意を向けるのやめてよね」
千鶴「あなたの力は私の……いや、お喋りが過ぎたわね」
『アザエル』がすんでのところで独り言を飲み込む。
聖「雪美……彼女の力はルシファーに似ていて…」
聖「けれど…ルシファーより強力……」
千鶴「…ちょっと!?人がせっかく独り言を飲み込んだのに…!」
『アザエル』の抗議の声。しかし聖は構わず続ける。
聖「彼女の力…」
聖「―――相手の能力を先読みして相手に返すこと」
雪美「……能力を……返す……?」
千鶴「……」
千鶴「知られたところでどうにかなるとも思わないけど」
『アザエル』は諦めて傍観する。聖が雪美に説明している間に行動を起こさないのは『傲慢』たる余裕だろうか。
聖「例えば…彼女の魔力を吹き飛ばす魔術を使おうとする…」
聖「けれど……使おうとしたときにはもう…こちらの魔力が吹き飛ばされている…」
聖「炎の魔術を使えば……先に燃やされているのはこちらの方…」
聖「こちらが何か仕掛けようとした時には、アザエルがもう既にその能力を使っている……」
聖「つまり彼女は…」
聖「―――私達の能力を、私達より先にそのまま使うことが出来る」
雪美「……!!」
聖「けれどルシファーと違って、自在に使えるわけじゃない…」
聖「ルシファーは私たちに変化して、その性質さえも己のモノにする……」
聖「でも、アザエルはこちらが能力を使わない限り、その能力を己のモノにすることは出来ない…」
聖「さらに彼女が使える能力は、彼女自身に対して向けられた能力のみ…」
聖「ルシファーの姿形を変える『変化』……『怠惰』のベルフェゴールの『自己再生能力』といった能力は己のモノに出来ない…」
雪美「……直接……叩くのは?」
聖「物理攻撃なら……彼女に打撃を与えることは可能……」
聖「だけど…」
千鶴「それに対応出来るだけのポテンシャルは私にはあるの」
聖の説明に痺れを切らしたのか『アザエル』が横から口を挟んでくる。
千鶴「―――お喋りの時間は、終わりよ」
千鶴が魔力を解放する。魔力抵抗が無い者ならば空間を纏う魔力にあてられただけで、気後れしてしまうであろう。それに対して聖はひるむことなく、強い眼差しで千鶴のことを見据える。自分ならば多少なりとも『アザエル』の足止めは出来るはず。聖に制された雪美も負けじと『アザエル』をキッと睨む。
しかし『アザエル』の取った行動は二人の予期せぬものだった。
千鶴「多くの魔力の集まりを感じる…」
千鶴「あなたを倒すよりは、よっぽど有意義ね」
千鶴「……労せず、探し求めている人物に辿り着けそう」
聖「…!?」
『アザエル』はあろうことか身を翻し、聖たちの前を後にし羽ばたいていく。決して聖たちに臆したわけではない。自分の目的はあくまで『ルシファー』を討伐した者との交戦、撃墜。
―――そして
千鶴「―――全ての生命を巻き込んで、戦争を、起こすのよ」
聖「……逃がさない!」
それを追うように聖と雪美もそれぞれの翼をはためかせ『アザエル』を追いかける。ルシファーと違い『アザエル』は既に目的の誰かを手にかけることを公言し、それに実行を移しだそうとしている。そのためには手段は選んだりはしない。彼女はそういった『堕天使』だ。無駄な犠牲を増やさないためにも、ここで逃がすわけにはいかない。
―――『アザエル』が魔力の集まりを感じ、それを辿って向かった先
―――『聖なる天使』と『堕ちた天使』が今『憤怒の街』へと降り立とうとしていた
・『神により強くされた『傲慢』の力』
自分に向けられた術を自分の術にして、そのまま相手へと返す能力。反射とは違い、先読みしての発動の為、相手の虚をついた攻撃が出来る。術の効果は対象の魔力に依存する為、対象の魔力が高ければ高いほど、その効果は絶大なものになる。
ただしこの能力は、自分に対して向けられた術にしか意味を成さず、自己の能力を高めるといった術は自分のモノには出来ない。また反射する能力ではない為、魔力を込められた打撃や斬撃などの物理攻撃には無意味。
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