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聖は望月家の自室で思い澄ましていた。光を心を救った、ヒカリ。
それは木漏れ日のような優しき暖かさを持った少女。「高森藍子」についてだ。
聖「(負の感情を……浄化する能力……)」
聖「(感じた……希望の息吹を……)」
聖「(あの能力は、彼女本来が持つ能力…?)」
聖「(それとも……誰かに授けられた能力…?)」
聖「(私にも…わからない…)」
聖「(…けれど)」
『必ず守るから』
―――優しく、そして力強い意思
―――彼女ならきっとヒカルと共に
―――この世界を導いて…
黒猫(雪美)「…すぅすぅ」
藍子の優しき能力を間近で感じ取っていたせいだろうか。雪美は望月家に戻るなり、猫の姿に変化し安心したように眠っている。
そんな姿を見て、聖は願った。ささやかだけど、確かな。未来の世界でも、そんな幸せが存在していることを。
こんこん。自室のドアが叩かれる音がする。
聖「…どうぞ」
がらっ…
礼子「調子はどうかしら?」
聖「だいぶ…良くなりました…」
この日、聖は雪美のわがままで人間の本分である学業を放棄し学校を欠席していた。欠席の理由を「この世界」での母親である礼子には体調不良と伝えている。まさか猫がワガママを…なんて理由にもならない。何故なら礼子は普通の人間だからだ。
聖「ペロと一緒に……薬局にも行けましたし……」
けれど、実はこの「薬局」というのは外に出るために使った口実。実際はヒカルの危機を感じ取り、その場所へ向かうために望月家を出たわけだ。しかし、手ぶらで帰宅するわけにもいかないので一応薬局にも出向き、栄養剤を購入してから帰宅した。
礼子「それなら良かったわ」
礼子「今日は精力のつくジューシーな料理を作ってあげるから…」
礼子「きっと明日には元気に学校へ行けるわよ♪」
精力のつく料理…ニンニクやウナギだろうか?ニンニクもウナギもあまり好きな方では無い…
聖「……楽しみ、です」
けれど、聖の聖女たる性格ゆえか。礼子に批判をあげることは出来なかった。
―――その翌日、とある学校の屋上にて
人間界での「三好紗南」ことベルフェゴールは今日も変わらずフェンスに寄りかかってゲーム機の画面と見つめ合っていた。しかし、昨日までとは少し違う。それはゲームをプレイしてる屋上の場所だ。
昨夜、ベルフェゴールはサタン直属の死神であるユズからの襲撃を受けた。自分にはもう関わるなと、念を押してはおいたが彼女の目的は自分の魂を狩ることだ。同じ場所に留まっていては、いつまたゲームの邪魔をされるかわかったものじゃない。わりとお気に入りの場所だったのだが、二度と見つからないように仕方なくこうして別の学校の屋上へと移ってきたわけだ。
雪菜「襲撃を受けたのはわかったけど、なんでまた学校の屋上なのぉ?」
今日もまたベルフェゴールが携帯ゲームをプレイしてる姿を眺めている「井村雪菜」ことルシファーが疑問を呈する。
紗南「良いじゃんさー。あたしがどこでゲームしてようが」
紗南「てかさー、ルシファーさんはなんで今日もあたしに会いに来てるの?」
紗南「なんかフラグ立っちゃってる?」
雪菜「うふ♪あなたの魔力なら、私の考えていることぐらいわかるでしょ?」
対象相手の思考の読み取り。魔力によって対象の情報を獲得することが出来るベルフェゴールには造作も無いことだが、面倒だから正直自分の口から手短に用件を伝えて欲しいのが本音だ。しかしゲームを一人静かに再開するには、それを伝えるよりも自身が思考を読み取った方が早いと判断し、仕方なくルシファーの思考を読み取る。
すると間もなくして二つの情報が、ゲーム機の画面に表示された。
紗南「……1つは用件でもなんでもないね」
ベルフェゴールが面倒くさそうに息を吐く。
雪菜「そんなことないわよぉ!」
そんなベルフェゴールの締まらない態度にルシファーはわざとらしくふくれ面を見せる。しかしベルフェゴールはそんなルシファーに見向きもせずに言葉を続ける。
紗南「あたしさ、天使様にだって興味無いんだよ?」
―――天使様
本来「三好紗南」が通っているはずの中学校に転校してきた望月聖のことだ。ベルフェゴール達、悪魔とは因縁を持つ存在だがベルフェゴールはルシファーに指摘されるまで、その存在が自身のすぐ近くにあったことすら知らなかった。最も、知ったところでルシファーみたいにちょっかいかける気も無いのだが。
紗南「そんなあたしがさ~」
紗南「―――お姫様なんてバグに興味を示すと思う?」
雪菜「―――情報は多い方が良いでしょっ♪」
偶然か否か。ベルフェゴールが新たなお気に入りの場所を探して辿り着いた学校の屋上。
―――それは悪姫ブリュンヒルデが学生として通っている中学校の屋上だった
紗南「試す気にもならない攻略情報なんていらないよ」
雪菜「まぁ、サタンの娘ってだけで「怠惰」を司る貴女からすれば興味の対象外よねぇ」
その通りだ。努力や鍛錬を謳うサタン、ましてやその娘など「怠惰」からすれば致命的なバグ。不愉快なこと極まりない。
雪菜「けど、そんな貴女が今回サタン直属の死神に襲撃されたっていうんだから面白いわよね♪」
雪菜「真逆に生きているからこその宿命かしらねぇ♪」
ルシファーはまるで愉快とも言わんばかりの態度だ。
紗南「たのしそーでなにより」
紗南「あたし、さっさとゲームしたいから次の用件行くよっ」
ルシファーのその態度に苛立ちを覚えたのか、はたまたやはり面倒だから相手にしないだけなのか。ベルフェゴールはルシファーの言葉を軽く流して次の話へと進める。二つ目の情報だ。
雪菜「あ、そうそう。重要なのはそっちの方なんだけどぉ、どうかしら?」
ルシファーは悪びれる様子も無くベルフェゴールに問いかける。
紗南「まっ、このぐらいの協力プレイならしても良いよ」
雪菜「あっ、ホントぉ?」
雪菜「うふ…話せるわねぇ、ベルフェゴール♪」
紗南「けど、終わったらもう帰ってよね?」
雪菜「わかってるわよぉ♪」
ルシファーの二つ目の用件。重要とは言うが、この用件はベルフェゴールの話を聞いて、その場で思いついた頼み事。本来はブリュンヒルデとベルフェゴールの接近に興味を持って、この学校に訪れただけだった。
紗南「7492045+P」
ベルフェゴールが魔力を集中させコマンドを唱える。目の前の対象の情報や一部の情報のみの再生には必要は無いが、ベルフェゴールはコマンドを唱えることで一度「見た」対象の情報の「全て」を再生することが出来る。 その能力によって、再生された対象の情報。
―――それは昨夜ベルフェゴールと相見えた死神、ユズの情報だった
ゲーム機の画面にはユズの全身像が映し出され、その能力、性格、喋り方、軌跡に至っては昨夜ベルフェゴールを襲撃し敗北したことまでもが事細かに記されていた。ベルフェゴールはダウンロードを完了すると同時に、その画面をルシファーに向かって差し出す。
雪菜「ふんふん…」
ルシファーはその画面をまじまじと見る。すると何かを確認したあと、その一瞬でまるで謀をめぐらしたかのような表情しながら肩にかけているポシェットの口を開いた。
紗南「もう良いの?」
雪菜「容姿と性格と喋り方がわかれば充分よぉ♪」
ルシファーがポシェットの中に手を入れる。中から取り出された物、それはピンクのルージュ。
―――そして「傲慢」の証である、手鏡だった
雪菜「たったそれだけの情報があれば女の子は素敵に大変身ってね♪」
そう言い終わると同時に、ピンクのルージュを唇に引き、その姿を手鏡に映し出す。手鏡に姿を映し出した瞬間、恐らく瞬きをする間も無いほどの時間だったであろうか。
「その魂狩らせてもらうよ!なーんて!へへっ♪」
―――手鏡に映し出され、その場に存在していたのは「死神ユズ」の姿
―――ではなく「死神ユズ」に「メタモルフォーゼ」した「ルシファー」の姿だった
紗南「あたしの前で声や喋り方まで再現しないでよー」
ユズ(雪菜)「うふ…貴女のその不満気な反応見る限り、今回の変身(メイク)もキマってるってことでいいかしらぁ♪」
ルシファーは普段の喋り方をしながら、ユズの姿で満足気に笑う。
ルシファーの頼み事。それは死神ユズについての情報を自身に提供してもらうことだった。
紗南「キマってるかどうかは自分が一番よくわかってるんじゃない?」
ユズ(雪菜)「こういうのは他人の意見が大切なのよぉ」
ユズ(雪菜)「でもぉ…」
ルシファーは自身の服に付いていたバッチを手に取り、魔力を送る。
ユズに変化したルシファーは彼女の服装までもを完全再現していた。その服には、いつも彼女が身につけてい二つのバッチまでもがしっかりと付いている。しかし、ユズの持つバッチはただのバッチでは無い。彼女の武器である杖と鎌を持ち運びやすくする為にバッチにしたもの。
自身が所持する武器の変化は、その術者の魔力を込めたからこそ。他の者がユズのバッチに触れても、それはただのバッチでしかない。解除するには術者の魔力が必要であり、見た目だけの「虚飾」の存在には不可能である。
―――しかし
ユズ(雪菜)「―――私になれない姿なんて存在しないんだけどね♪」
―――あろうことか、ルシファーが手にしたバッチはユズが所持していた、鎌そのものへと変化をした
―――ルシファーの「メタモルフォーゼ」
―――それは自身の見た目を変化させるだけでなく、その変化の対象の性質さえも手にする能力。
紗南「納得の出来ってことね」
紗南「けど、その姿、あたしからのレビューは酷評だよ」
紗南「満足したなら早く帰ってくれない?」
これでルシファーの用件は終わりだ。それが済んだのなら、ベルフェゴールからはもう話すことも無い。ましてや、ゲームの邪魔をした死神の存在の姿が視界に映るのは不愉快だ。一刻も早くゲームだけに集中したいからこそ、ルシファーにそう言い放つ。
ユズ(雪菜)「へへっ♪わかってるってば♪」
ルシファーはわざとらしくユズの喋り方で、ベルフェゴールの言葉に応える。流石のベルフェゴールもその態度に思わず眉間に皺を寄せてしまう。
すると、ルシファーは変化を解除し「井村雪菜」の姿へと戻る。
雪菜「ただの冗談じゃなぁい♪そんな怖い顔したらお肌に悪いわよぉ♪」
雪菜「これでもちゃんと感謝してるのよぉ♪メイクのレパートリーを増やしてくれてありがとっ!」
別に感謝されてるされてないはどうでもいい。死神に化けて何を企んでいるのかとかも興味が無い。早く帰って欲しい。
紗南「…間違っても、死神さんの姿になって、あたしに会いに来ないでよねっ」
紗南「能力使わないと、あたしだって本物か偽物か見分けがつかないんだから」
雪菜「うふ…わかってるってば♪」
雪菜「それじゃあ、またね!」
ルシファーはその場から姿を消す。気配が完全に消えたのを確認して、ベルフェゴールは深くため息をついて…
紗南「なんだかあたしの運のポイント、低くなってる気がするなぁ…」
そう小さく呟く。
ベルフェゴールがそう呟いてしまうのも無理は無い。少し前までは静かに学校の屋上でゲームをして1日を過ごすだけの毎日だったのに、それが急変してしまったからだ。
以前のお気に入りの屋上には、望月聖が転校してきて…ゲームショップで魔力を使用したら死神に目を付けられ…あまつさえ新たに移動してきた屋上は忌み嫌うサタンの娘、悪姫ブリュンヒルデが生徒して通う中学校の屋上…
紗南「(お姫様がいるってことは、死神さんの監視下でもあるかもしれないしね…)」
紗南「(見つかるのも時間の問題っぽいなぁ…)」
紗南「(まぁ、またマップ移動するのは面倒だし、ギリギリまで粘るつもりだけどね)」
紗南「(乱入お断りの警告もしておいたし!)」
紗南「(けど、それでもまたあたしのゲームの時間に乱入してきちゃったその時は、気は進まないけど…)」
―――データの破損
―――それぐらいされても文句は言えないよね?
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