4スレ目・その3

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<dl><dt id="a223"><span style="line-height:1.6em;">403 :</span> <span class="name" style="line-height:1.6em;color:rgb(0,128,0);">◆kaGYBvZifE</span> <span class="info" style="line-height:1.6em;">[sage]:2013/07/18(木) 21:30:15.42 ID:UrDXlaAQ0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ナターリアというかアンダーワールドの話<br /><br /> 地理的になかなかストーリーに絡めないので無理矢理状況を動かそうとする男!</dd> <dt id="a404">404 : <span class="name" style="color:#008000;">◆kaGYBvZifE</span> <span class="info">[saga]:2013/07/18(木) 21:31:05.92 ID:UrDXlaAQ0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ――――――――――<br /><br /> 「地上の都市がカースに乗っ取られただと?」<br /><br /> 思わずおうむ返しにしてから、オーバーロードは報告書を一瞥した。<br /><br /> 「例の財閥経由の情報です。首謀者は不明ですが、都市全体がカースによって封鎖されていると」<br /><br /> 情報部所属の士官が応え、オーバーロードは報告書をつまむ指に力を込めた。<br /> この公邸の執務室で受け取る報告に、よい報告があった試しはない。<br /><br /> 櫻井財閥経由でもたらされた情報の発信源は、日本政府やGDFに潜むアンダーワールドシンパの議員か、<br /> それとも散発的な紛争と緊張関係を望む軍需産業のロビイストか。<br /> どちらにせよ、断片的ではあるが情報の精度は悪くない。アンダーワールド政府が地上に放っている<br /> 諜報員からの情報と照らし合わせても大きく異なっていたことは今のところない。<br /><br /> しかし、今回の一件は寝耳に水の事態だ。<br /><br /> 地上人の犠牲者が何人出ようとそれ自体はどうでもいいことだが、問題はカースの肉体を構成する呪詛の<br /> 泥による土壌汚染と、それによる地底への影響だ。<br /> 最新の研究報告によって、カースの泥による汚染が土壌や地下水にも及ぶことがわかっている。<br /> 特に水資源への影響は、アンダーワールドでは死活問題と言ってよかった。</dd> <dt id="a405">405 : <span class="name" style="color:#008000;">◆kaGYBvZifE</span> <span class="info">[saga]:2013/07/18(木) 21:32:10.12 ID:UrDXlaAQ0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「アンダーワールドへの影響は?」<br /><br /> 「我が方のテクノロジストらに試算させていますが、ただちに影響があるとは……」<br /><br /> 「これほどの大量発生は過去に類を見ない。例のGC爆弾とやらが投下された際の発生数をすら超えている。<br />  前例がないということは、何が起こるか読めないということだ。用心にしくはない」<br /><br /> 「はっ、失礼いたしました」<br /><br /> テクノロジストの研究の完了を待ち、結果を浄化施設の各種機材に反映させるには時間もコストもかかる。<br /> しかし、今期予算の赤字と十数億のアンダーワールド人の安全を天秤にはかけられない。<br /> 三十秒ほどで試算を終え結論を導き出したオーバーロードは、太い首をわずかに傾けて言う。<br /><br /> 「研究所のテクノロジスト達に連絡を取り、状況を督促しろ。対策は急がねばならん。<br />  それから、状況によっては次の中央議会で特別予算の編成を提案することになる。資料作成を頼む」<br /><br /> ともすれば眉をひそめたくなる心持ちではあったが、オーバーロードは努めて無表情を装った。<br /> どうせもっともらしい渋面を作るのであれば、議会の場で対立政党の議員や、御身大事の利権亡者どもを<br /> 相手取るときにすればいい。<br /><br /> 指示を受けた士官が「はっ!」と短い声で応じて執務室を辞した後、オーバーロードは執務机の端末の<br /> 横に置かれたフォトフレームを手に取った。</dd> <dt id="a406">406 : <span class="name" style="color:#008000;">◆kaGYBvZifE</span> <span class="info">[saga]:2013/07/18(木) 21:32:51.58 ID:UrDXlaAQ0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 観葉植物の鉢が置いてある以外は何も飾られていない殺風景な執務室の中で、愛娘のナターリアと<br /> 撮った一葉の写真が彼の心の慰めだった。<br /><br /> あまり身体の強くなかった妻は、娘を出産してすぐに死んだ。ナターリアは母親を知らずに育ち、<br /> 自分は妻の死後間もなく行われた選挙に当選し史上最年少のオーバーロードに選出された。<br /> 以降は四度の再選を繰り返し、現在に至るまで長い任期をこなしている。<br /><br /> オーバーロードとして多忙を極める生活の中でも、なんとか娘との時間を作るよう心がけた。<br /> それは娘のためでもあったし、何より自分のためでもあったのだろう。愛する娘との語らいの時間は、<br /> 自分の背負っているもの、守るべきものを再確認するための儀式でもあったのだから。<br /><br /> (ナターリアは優しい子に育ってくれた。この父に似ず、まっすぐに育ってな……)<br /><br /> ふと、オーバーロードの強い髭面に愛嬌のある笑みが浮かぶ。<br /><br /> アンダーワールドの子供達が幸せに、豊かに暮らせる未来。そのための礎になることこそ大人の役目だ。<br /> だが、地上人とアンダーワールド人すべてを受け入れるには、地球はどうやら狭すぎる。<br /> だからこそ、近い将来地上人を排除し、地上を奪還しなくてはならないのだ。<br /> どれだけ多くの血が流れることになっても、成し遂げなければならない。<br /><br /> いつか子供達が歩く地上の道が、大人達の血と屍で舗装されることになるのだとしても、その罪は<br /> 自分達の世代で終わらせなければならない。<br /><br /> (……救われんな)<br /><br /> 笑った瞳の奥の仄暗い光がフォトフレームのガラスに映り込んでいるのが見え、オーバーロードは<br /> 顔の表皮を機械的に苦笑させた。</dd> <dt id="a407">407 : <span class="name" style="color:#008000;">◆kaGYBvZifE</span> <span class="info">[saga]:2013/07/18(木) 21:34:25.57 ID:UrDXlaAQ0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ――――――――――<br /><br /> アンダーワールド首都のアップタウンにある、私立のジュニアハイスクール。<br /> 広い教室に扇状に配置された長机の一角に、ナターリアは座っていた。<br /><br /> 教壇に立つ壮年の教師が、眼鏡の位置を直しながら朗々と声を上げている。<br /> 課題の易しさからそれなりに人気のある教師だったが、それと比例するかのように授業は退屈だった。<br /><br /> 「――であるからして、今年から人工太陽の照明ユニット改修のための工事が始まりました。<br />  改修と言っても、実質的には造り替えに近い大規模計画で、工事完了までに10年を予定しています。<br />  まずは最も老朽化の激しい第四ユニットから着手して、それから第一、第二と続く予定ですね」<br /><br /> 個人用ノートパッドのバーチャル・ディスプレイに、教師用端末から配布されている資料画像が<br /> ずらずらと表示されていく。ノートパッドは机に備え付けられた差し込み口とケーブルで接続され、<br /> 学校の内部ネットワークに接続されているのだ。<br /><br /> アンダーワールドでは、電話やネットは有線での使用が基本になっている。<br /> その背景には、先人達が地底という過酷な環境を整備していくにつれて、人の住む地域が精密機械の<br /> 集積体と化していった事情がある。浄化施設などの生命維持に直結するシステムは勿論、建物の中の<br /> 空調や発電設備などの誤動作を防ぐために、電波の取り扱いが制限された結果だった。<br /> デジタルデータの破損に備えて、重要なデータはプリントアウトしておくのも習わしである。<br /><br /> テクノロジーが高度化し複雑になっていく一方、どこかをアナログ化しておいた方が都合のいい場合もある。<br /> 数百年前の時代を復古する懐古趣味的なムーブメントが数十年周期で起こり、現在もアナログ志向の人間が<br /> 一定数存在するのも、そうした歴史の必然なのかもしれない。</dd> <dt id="a408">408 : <span class="name" style="color:#008000;">◆kaGYBvZifE</span> <span class="info">[saga]:2013/07/18(木) 21:35:16.22 ID:UrDXlaAQ0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「この計画は現オーバーロードが発案し、7年に及ぶ議論の末、ようやく始動したものです。<br />  同様の人工太陽改修計画は600年前にもありましたが、その時は予算の関係と野党の反対から<br />  小規模な補修工事に留まっており、その結果、電力系統のトラブルから第二~第五ユニットが<br />  一ヶ月近く機能を停止したという事故が起こってしまったわけです」<br /><br /> 無味乾燥な年表の羅列と、当時の事故の模様を物語る映像資料がディスプレイに浮かんだ。<br /> 一ヶ月も太陽が動かず光がないというのは、どれほど不便なのかとナターリアは考える。<br /><br /> 空のないアンダーワールドの夜はあまりにも暗く、そもそも人工太陽がなければ昼夜が存在しないのだ。<br /> きっと不安で、寂しくて、心細くて、何よりあるべきものがなくなってしまったような喪失感があるのだろう。<br /><br /> ナターリアがそうであるように、600年前の人々もそうだったはずだ。<br /><br /> 四角くて細長い太陽が天蓋に設置されていて、毎朝6時になると唸り声のような振動音を上げながら<br /> 照明ユニットに電力が通い、光り輝く太陽がアンダーワールドを照らし始めるというのが当たり前の<br /> 日常だったはずなのだ。<br /><br /> (……パパのやるコトは、全部ナターリア達のためなんだナ)<br /><br /> そして、今年から始まる人工太陽改修のための10ヶ年計画は、父がその当たり前の日常を守るために、<br /> アンダーワールドに住まうすべての人のために始めたことなのだという認識が、ナターリアの心を暖かくした。<br /><br /> ナターリアは社会科や数学のような暗記科目は苦手だったが、父の為したことにはやはり興味を禁じ得ない。<br /><br /> 物心ついたときには父は既にオーバーロードの座についていたし、自分が生まれてからの14年間ずっと<br /> オーバーロードとしての任を全うしていたというが、ナターリアは父の口から直接仕事の話を聞いたことは<br /> ほとんどなかった。</dd> <dt id="a409">409 : <span class="name" style="color:#008000;">◆kaGYBvZifE</span> <span class="info">[saga]:2013/07/18(木) 21:35:52.01 ID:UrDXlaAQ0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 週に一度か二度あるかないかという父との語らいの時間では、父は聴き手に回ることが多かった。<br /> ナターリアの話す色々なことを、ただ優しく微笑みながら聞いてくれる。<br /> ナターリアの抱える迷いや不安を、正面から受け止めて一緒に悩んでくれる。<br /> そんな父の姿に誠実さを感じる一方、仕事のことを話したがらないのだと見て取れたのも覚えている。<br /><br /> 確かに難しいことはよくわからないが、父のしている仕事をよく知りたいと思うのも子供心だ。<br /> 人伝に色々聞いたりすることはあっても、いつか父の口から直接話を聞きたいとナターリアは思っていた。<br /><br /> 「ここ数年、人工太陽の照明ユニットの不具合や誤作動はたびたび報じられてきましたが、<br />  だからといってアンダーワールドを捨てて地上へ逃れようなんてことは許されませんよ。<br />  シビリアン以下の労働者は勿論、ジェントルマンでさえも、地上へ渡ることは許されていませんからね」<br /><br /> 教室の窓の外は、昼過ぎのうららかな陽気だった。<br /> 中庭には綺麗に手入れされた芝生が広がり、背の低い樹が何本か植樹されている。中庭の向こうにある<br /> グラウンドでは、トレーニングウェアに身を包んだ生徒達が球技に興じていた。<br /><br /> 遠い昔に戦争で犠牲になった人達がいて、この地底を照らす太陽を造るのに人生を捧げた人達がいて、<br /> 地底世界を人の住めるように整備した人達がいて、彼らの遺産によって自分達は生かされている。<br /> そして父は、現在を生きている自分達と、さらに未来の人達を生かすために仕事をしている。<br /><br /> その中で生きている自分は所謂『戦争を知らない子供達』で、今日と同じ明日が訪れることに疑いを<br /> 持つことはない。人工太陽の明りが消えても、すぐに復旧されて次の日からは問題なく動くと思い、<br /> よほど運が悪かったのだと思えば他人事と呑み込むことができる。<br /><br /> それがいいことなのか悪いことなのか、今のナターリアには判断がつかなかった。</dd> <dt id="a410">410 : <span class="name" style="color:#008000;">◆kaGYBvZifE</span> <span class="info">[saga]:2013/07/18(木) 21:36:35.27 ID:UrDXlaAQ0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ――――――――――<br /><br /> 「知ってる? 地上で今、カースってのが暴れてるんだって」<br /><br /> 昼休み、クラスメイトの女子が、ノートパッドにニュース画面を表示させながら言った。<br /> どうやら社会科の講義の際、外部サイトからダウンロードしていたらしい。<br /><br /> カースという怪物が黒い泥の身体を震わせながら、人間を襲っている様子が映っている。<br /> 画像の不鮮明さが不気味さを際立たせており、本文には現在アンダーワールドでカースが出現したという<br /> 報告は今のところないとも書かれている。<br /><br /> それを見たクラスメイト達は口々に感想を漏らし、論を交わし合っていた。<br /><br /> 「それ、俺も知ってるぜ。ヒーローとかいう奴らがカースを狩ってるってさ」<br /><br /> 「うわ……これがカース? キモーイ」<br /><br /> 「……地上ってやっぱり危険なところなのかなぁ。先生もさ、地上は大気汚染がひどいって言ってたろ」<br /><br /> 「そんなの、私達を地上に行かせたくなくてわざと大袈裟に言ってるのよ。地上がそれほど危険なら、<br />  どうして地上人が生きていけるわけ?」<br /><br /> 「そりゃあ、地上人は地上人で変な進化をしてるのかもしれないだろ?」<br /><br /> 「でも実際にこんな化け物が出るんだし……危ないことには変わりないわ」<br /><br /> 「なあ、ナターリアはどう思う?」</dd> <dt id="a411">411 : <span class="name" style="color:#008000;">◆kaGYBvZifE</span> <span class="info">[saga]:2013/07/18(木) 21:37:45.16 ID:UrDXlaAQ0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 急に話を振られ、ナターリアはドキッとしながら振り向いた。<br /><br /> 「エート、なに?」<br /><br /> 「聞いてなかったのかよ? これだよこれ、カースってやつ」<br /><br /> 「お父さんから何か聞いたりしてないの?」<br /><br /> 「ウゥン。パパ、ナターリアにはお仕事の話しないヨ」<br /><br /> ナターリア個人としては、父のオーバーロードとしての仕事ぶりはニュース配信や議会中継などで<br /> 見られる範囲内のことしか知らない。だから地上で『カース』なる怪物が暴れているらしいことは<br /> ほとんど初めて知ったし、それについて父がどう考えているのかもまるで知らない。<br /> 父が普段から仕事の話をしたがらないのだから、仕方のないことではあったが。<br /><br /> 「地上のコトもそんなに……アッ、でもスシは食べたことあるヨ! スシ!」<br /><br /> 「スシ……? 何それ?」<br /><br /> 「地上の料理だヨ! ニギったコメの上にサカナが乗ってるんダ」<br /><br /> 「米の上に魚って……ライスボールかカナッペみたいなもの?」<br /><br /> 「なんか想像つかなーい。それって美味しいの?」<br /><br /> 「ウン! 細長くテ、ノリ巻いてあるのもあるヨ!」</dd> <dt id="a412">412 : <span class="name" style="color:#008000;">◆kaGYBvZifE</span> <span class="info">[saga]:2013/07/18(木) 21:38:15.47 ID:UrDXlaAQ0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ナターリアのクラスメイトは皆、アンダーワールドの貴族であるジェントルマンの子弟ばかりだが、<br /> さすがに地上の料理を食べたことのある者は少ない。アンダーワールドは公には地上との交流はなく、<br /> レシピや調理技術が伝わってこないからだ。<br /><br /> 「スシはとってもおいしくて、お口がとろけテ、ほっぺた落ちちゃいそうだったヨ♪<br />  それからスシ職人もすっごくカッコよかったナ! イタマエっていうノ!」<br /><br /> 「職人? 職人っていうと、テクノロジストみたいな……」<br /><br /> 「スシって作るのにすごい技術が要るのか?」<br /><br /> クラスメイト達がナターリアから聞いた断片的な情報から想像したのは、レストランの厨房で、白衣を着て<br /> 防護マスクをつけたスシ職人が、植物工場で生産された米を炊いて四角く成形したものに、地底湖で養殖<br /> されている脂の乗った地底魚のソテーを乗せているというおかしな光景だった。<br /><br /> 「う~ん……」<br /><br /> 「地上人はヘンテコなものを食べてるんだなぁ。母さんの作るモグラウサギのパイの方が美味そうだよ」<br /><br /> 「ナターリアも最初は驚いたヨ。でもすっごくおいしいんダ! ミンナも食べてみたらわかるヨ!」<br /><br /> 「へぇ……ナターリアさんがそういうなら、私も食べてみたいかな?」<br /><br /> 「どちらにせよ、そうそう食べられるものじゃないわよ。私達が地上に行くことなんてないんだし」</dd> <dt id="a413">413 : <span class="name" style="color:#008000;">◆kaGYBvZifE</span> <span class="info">[saga]:2013/07/18(木) 21:39:00.91 ID:UrDXlaAQ0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「でも何ヶ月か前、どこかの名家の娘が地上に行ったって噂になってただろ」<br /><br /> 「アッ、ナターリア知ってるヨ。イブキっていう名前の、カレッジの学生だっテ」<br /><br /> 「噂は噂でしょ?」<br /><br /> 「火のないところに煙は立たないし、人の口に戸は立てられない。まったくデタラメな話でもないと思うな」<br /><br /> 「……しかし、わざわざアンダーワールドを出てどこに行こうってのかな」<br /><br /> 「ああ、理解に苦しむよ。僕はアップタウン以外に住みたいなんて思わないね」<br /><br /> 男子の一人が切って捨てる声音で言う。<br /><br /> 実際、この場にいるほとんどの人間が同じ思いを共有していただろう。<br /> アンダーワールド人の常識として、自分達が地上の追放者の末裔であることは誰もが知っていることだが、<br /> 2000年前の怨恨を連綿と受け継いでいる者もいれば、先人達の努力によって開拓され整備された世界を<br /> 故郷と想い慕う者も同じだけいるのだ。<br /> ジェントルマンという特権階級に属する少年少女達は、そういった意味では愛郷心豊かな存在だった。<br /><br /> 確かにアンダーワールドは楽園と呼ぶにはあまりに不十分な世界だ。<br /> だがその中で不自由なく暮らすことができ、大切な家族や友人がいるのならば、それで十分ではないか。<br /> どうして今の暮らしを壊してまで住み慣れない地上に出る必要があろうか。<br /><br /> 「土地とか食糧とか、色々なものが足りなくなるかもしれないって言われてるけど、今までだって<br />  技術を進歩させて乗り越えてきたんだしさ。増えすぎた人口もなんとかできるさ」</dd> <dt id="a414">414 : <span class="name" style="color:#008000;">◆kaGYBvZifE</span> <span class="info">[saga]:2013/07/18(木) 21:39:31.51 ID:UrDXlaAQ0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> こうした彼らの感性は自分達が「増えすぎた人口」のうちに含まれないという無根拠な確信に基づいて<br /> いるものではあったが、ミドルタウンやダウンタウンに住むシビリアンにしたところで、実体のない理念や<br /> 理想や信条よりも、現実の生活を優先するはずだ。<br /><br /> だが逆に言えば、政府がまっとうな仕事と生活を保障してくれるのであれば、彼らは間違いなく地上への<br /> 移住を支持するだろう。大衆とは常に、ごく短期的な視座においては誰よりも利口な者達なのだから。<br /><br /> 「地上になんて行きたがるのは、食い詰めたアウトレイジやスカベンジャーばっかりじゃないか?<br />  そうでなけりゃよっぽどの物好きか」<br /><br /> 「どこかのバカなテクノロジストが、地上人に、『ジェントルマンみたいな暮らしをさせてやるから<br />  アンダーワールドの技術を寄越せ』って言われたのかもよ」<br /><br /> 「でも、地上に行くような奴がいたとして、もうアンダーワールドに帰ってこられなくなるってのは<br />  わかってるのかな」<br /><br /> 地上への渡航が全面禁止され、公的に鎖国状態にあるアンダーワールドにおいて、無許可で地上へ行くのは<br /> れっきとした犯罪だ。違法出国者がノコノコと戻ってきたところで当局が黙っていまい。<br /><br /> アンダーワールドでの身分も暮らしも捨ててしまえるほど地上が素晴らしい場所なのか、確証はない。<br /> それだけの知識も情報も子供達は持ち合わせておらず、そうしたいとも今のところは思っていない。<br /><br /> 畢竟、パンドラの箱の蓋を開ける勇気も力もないと言えばそれまでだが、それはそれでひとつの見識だ。<br /> 今までの日常を躊躇いなく投げ捨ててしまえるのは果たして正常な神経の持ち主と言えるだろうか。<br /><br /> 「そうだナ……ナターリアもスシは食べに行きたいケド、帰ってくるのはアンダーワールド以外にないヨ」<br /><br /> ナターリアの認識もまた明瞭だった。<br /><br /> 生まれ育った故郷を去ることの恐れと悲哀は、多分、地上から追放された始祖達も同様だったに違いない。</dd> <dt id="a415">415 : <span class="name" style="color:#008000;">◆kaGYBvZifE</span> <span class="info">[saga]:2013/07/18(木) 21:40:04.74 ID:UrDXlaAQ0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ――――――――――<br /><br /> 天頂に横たわる太陽の基部では、青いジャンプスーツを着た作業員や白衣を着たテクノロジストが慌ただしく<br /> 動き回り、第四照明ユニットの改修工事に従事していた。<br /><br /> 膨大な熱と光でアンダーワールドに朝をもたらす人工太陽のひとつは、工事が終わるまで稼働することはない。<br /> 当然、この第四ユニット直下にある区画には工事終了まで太陽光が一切届かなくなるため、該当する区画に<br /> 住む者達には代わりの住居があてがわれ、ひと月前にはすべての住人が引越しを終えていた。<br /><br /> 休憩時間に喫煙室で紫煙をくゆらせる技師長も、二ヶ月ほど前に家族総出で余所の地区に引っ越した<br /> ばかりだった。<br /><br /> 妻も息子もすぐに引っ越しを承知してくれたのはよかったし、地上車の共同駐車場が近い物件だったのも<br /> もっけの幸いだったが、息子の転校や住所登録の変更など、煩雑な手続きに追われてとても忙しかったと<br /> 妻が愚痴を漏らしていたものだ。<br /><br /> 「第四ユニットの工事が終わるまで半年か一年か……こんな大計画には付き物の弊害かもしれんがね」<br /><br /> 慨嘆と共にタバコを吹かし、技師長は寝癖のついた頭を掻きむしった。<br /> もう一週間以上アパートに帰っておらず、技師宿舎のベッドを第二の家と決め込んでいるのは彼に限った<br /> ことではない。向こう何年こんな生活を送る羽目になるやらと考えると、実に憂鬱だった。<br /><br /> 「大変ですね、技師長。俺は独り暮らしだからその辺はスムーズに行きましたけど……」<br /><br /> 工専を卒業して間もない新米のテクノロジストが、新しいタバコをケースから取り出して言う。</dd> <dt id="a416">416 : <span class="name" style="color:#008000;">◆kaGYBvZifE</span> <span class="info">[saga]:2013/07/18(木) 21:40:48.79 ID:UrDXlaAQ0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「でも、研究所や現場からも遠くて大変ですよ。こんなことなら元のアパートに留まりたいです」<br /><br /> 「朝も昼もない暮らしでもか? あの区画は電力供給が制限されるから街灯もつかないぞ」<br /><br /> 「それはそうなんですけどね……」<br /><br /> 各々のくゆらせる紫煙が束の間たゆたい、喫煙室に備え付けられた空気清浄機に吸い込まれていく。<br /><br /> タバコはアンダーワールドの歴史の中で一度は絶滅しかけたが、今日に至るまで生き延びていた。<br /> 人体や精密機械への影響を最小限に留める低タール低ニコチン化や、化学剤と遺伝子組み換えによる<br /> 低温度燃焼葉の発明、空気清浄機の不断の改良などによってなんとか生存し、シビリアン以下の階級に<br /> ある者達の様々なストレスを軽減する慰めとなっている。<br /><br /> 政権が代わるごとに酒やタバコやドラッグに関する規制案が議会の俎上に上がり、タバコも全面禁煙を<br /> 呼びかける団体は多いのだが、彼らが人類の歴史から抹消される日は遠いらしかった。<br /> 現に、彼ら現場の人間の楽しみとして受け入れられているのだから。<br /><br /> 「考えてみりゃあ、太陽を修理するってとんでもない話ですよね。壮大っていうか」<br /><br /> 「おいおい。それなら、その太陽を造ったご先祖はもっと壮大だろう」<br /><br /> 「なけりゃあ不便なものだってのはよく理解してるし、俺もこのプロジェクトに参加できてよかったですけど、<br />  思ってたよりずっと大変でしたよ」<br /><br /> 「まだプロジェクトは始まったばかりなんだぞ。気持ちはわかるがな」<br /><br /> 歴史的な大事業に臨む誇らしさはあるが、生活の不便はまた別の話だ。<br /> 技師長も新米テクノロジストも、突き合わせた顔に偽らざる本音が書いてあった。</dd> <dt id="a417">417 : <span class="name" style="color:#008000;">◆kaGYBvZifE</span> <span class="info">[saga]:2013/07/18(木) 21:41:34.72 ID:UrDXlaAQ0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「さて、そろそろ休憩時間も終わりだ。お前もワーク・ロボットの整備に戻るんだな」<br /><br /> 「了解。あーあ、俺も技師長みたいに新型核融合炉のテストに参加してみてぇなぁ」<br /><br /> 「お前にはまだ早い。さ、行くぞ」<br /><br /> 灰皿にタバコを押しつけ、灰と吸殻が自動で吸引されるのを確認してから、二人は喫煙室を辞した。<br /> そして戸口をくぐる際、技師長は喫煙室の戸口で新米の背中を大きな掌で叩いた。<br /><br /> 「お互い環境の不便はあるけどな。それでもこのプロジェクトは大きな意義がある。わかるよな?」<br /><br /> 「は、はい。勿論」<br /><br /> 新米は軽く咳き込みながら応えた。<br /><br /> 「世界には常に改善の余地があるが、同時に適材適所って言葉もある。そうだろ?」<br /><br /> 「ええ。俺らみたいなのがアンダーワールドを支えて、将来のことはお偉いさんやガキどもが考えるんでしょ。<br />  技師長、いつもその話するじゃないですか」<br /><br /> 「大事なことだからさ。そのうちお前にもわかるよ」<br /><br /> ニッと笑った技師長につられて、新米もまた口元を緩ませて笑った。<br /> それ以上交わすべき言葉もなく、二人のテクノロジストはそれぞれの持ち場に戻っていった。</dd> <dt id="a418">418 : <span class="name" style="color:#008000;">◆kaGYBvZifE</span> <span class="info">[saga]:2013/07/18(木) 21:42:18.86 ID:UrDXlaAQ0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ――――――――――<br /><br /> その頃。<br /><br /> 穢れと呪いに満ちた街に降り注ぐ清浄な雨が、徐々に、だが確実に、街を浄化しつつあった。<br /><br /> だが地表に溶け出した澱みと歪みは、厚い地層を通り抜け、固い岩盤をもすり抜けて、今、地底深くへ<br /> 到達しようとしていた。<br /> 数百数千体に及ぶカースの残滓――おぞましい呪詛を湛えた泥が、地球そのものを汚染し始めていたのだ。<br /><br /> そして――<br /><br /> 地底世界アンダーワールドに、未曾有の異変が起きようとしていた。</dd> <dt id="a419">419 : <span class="name" style="color:#008000;">◆kaGYBvZifE</span> <span class="info">[saga]:2013/07/18(木) 21:44:15.97 ID:UrDXlaAQ0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> イベント情報<br /> ・アンダーワールドでは憤怒の街の情報が100%伝わっていません<br /> ・アンダーワールドでは現在、人工太陽改修計画が進行中です<br /> ・カースの泥による汚染が地底へと到達しようとしている……?<br /><br /> ジェントルマンの子供はおおむね現状に満足してるけど、アウトレイジやスカベンジャーはその限りではないよねという話</dd> </dl><p> </p> <dl><dt id="a426">426 : <span class="name" style="color:#008000;">◆hCBYv06tno</span> <span class="info">[saga]:2013/07/18(木) 22:57:57.03 ID:12OysYXQO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 投下しますー</dd> <dt id="a427">427 : <span class="name" style="color:#008000;">◆hCBYv06tno</span> <span class="info">[saga]:2013/07/18(木) 22:59:02.15 ID:12OysYXQO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> とある昼下がりの公園。<br /><br /> 裕子「ムムムンッ!」<br /><br /> 堀裕子はスプーンを片手に、睨めっこしていた。<br /> その瞳は宝石のように真っ赤に輝いていた。<br /><br /> 裕子「曲がれ……曲がれ!ムンッ!!」<br /><br /> どうやらスプーンを曲げようとしているようだが……<br /><br /> スプーン ハ ナントモナカッタ</dd> <dt id="a428">428 : <span class="name" style="color:#008000;">◆hCBYv06tno</span> <span class="info">[saga]:2013/07/18(木) 22:59:56.65 ID:12OysYXQO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 裕子「曲がらない……そんなまさか…」<br /><br /> 本人は落ち込んでいるが、はたからみたら異様な光景だろう。<br /><br /> 裕子「なんで?」<br /><br /> 何故なら<br /><br /> 裕子「なんでスプーンだけ曲がらないの!?」<br /><br /> 彼女の目の前の公園の木々が渦巻き状に曲がっているのだから。<br /><br /> こんなこんな光景、何処かの大精霊に見られたら処刑される気もするが…</dd> <dt id="a429">429 : <span class="name" style="color:#008000;">◆hCBYv06tno</span> <span class="info">[saga]:2013/07/18(木) 23:00:46.01 ID:12OysYXQO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 裕子「あなたもそう思わない?このエスパーユッコの目はごまかされないわ!」<br /><br /> 『………』<br /><br /> 裕子が輝く瞳を、誰もいない筈の砂場の方に向けた。<br /><br /> すると、そこに人型の泥……カースが突然現れる。<br /><br /> だが、その姿は……<br /><br /> 『お姉さん。≪あたし≫のレベル上げに協力してくれないかな?』<br /><br /> 怠惰の悪魔ベルフェゴール…それに乗っ取られてた三好紗南そっくりの声と形だった。<br /><br /> だが、その顔や衣服や身体はカースみたいに黒い泥でできていて、まるで黒塗りのシルエットのようで、表情とかはわからなかった。</dd> <dt id="a430">430 : <span class="name" style="color:#008000;">◆hCBYv06tno</span> <span class="info">[saga]:2013/07/18(木) 23:01:48.42 ID:12OysYXQO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 裕子「ふっふっふっふっ!なんだかよくわからないけど、このエスパーユッコに対する挑戦ね?」<br /><br /> 嬉しそうにそう言うと、6つのスプーンを両手の指の間に一つずつ挟みながら持ち、そのスプーンを投げはなった。<br /><br /> それぞれの方向はバラバラでどれも偽ベルフェゴールにいかないが<br /><br /> 裕子(曲がれっ!)<br /><br /> OZ≪スケアクロウ≫の力で、スプーンな通る空間を捻じ曲げ、軌道を変えて、偽ベルフェゴールに向かっていく。<br /><br /> 『面倒くさいな』<br /><br /> だが、偽ベルフェゴールは狙う場所が最初からわかってたように自然に避けた。<br /><br /> 避けられたスプーンは地面や木や遊具に≪突き刺さって≫いた。</dd> <dt id="a431">431 : <span class="name" style="color:#008000;">◆hCBYv06tno</span> <span class="info">[saga]:2013/07/18(木) 23:02:45.58 ID:12OysYXQO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 裕子「なっ!?」<br /><br /> 驚愕する裕子だが、無理もない。<br /><br /> もし、ベルフェゴールを知る人物がいたなら、タネはわかるだろう。<br /><br /> ベルフェゴールの能力。このカースはそれが使えてるのだ。<br /><br /> ベルフェゴールに比べれば劣るものの、初見の相手にとっては厄介な程だ。</dd> <dt id="a432">432 : <span class="name" style="color:#008000;">◆hCBYv06tno</span> <span class="info">[saga]:2013/07/18(木) 23:04:02.55 ID:12OysYXQO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 裕子「……ならっ!」<br /><br /> 『暗闇よ!大いなる我の力に従い!我に敵対するものの視界を閉ざせ!ダークミスト!!』<br /><br /> 裕子「!?見えない!」<br /><br /> 偽ベルフェゴールが呪文を唱えると、裕子の目は黒い霧に覆われ、何も見えなくなった。目を塞がれれば、透視能力も千里眼も空間を曲げる事もできない。<br /><br /> ベルフェゴールが使える魔術も使えるようだ。<br /><br /> そして、裕子の情報はベルフェゴールの能力。情報収集能力で読み取ったものだ。<br /><br /> 先ほどの避けたのも裕子の考えを読み取ったものである。<br /><br /><br /> 『目を塞がれれば能力使えないんだよね?じゃあ、コレでゲームオーバーだね』<br /><br /> そう言って、偽ベルフェゴールがトドメを刺そうと近づこうとした。<br /><br /> その時だった。</dd> <dt id="a433">433 : <span class="name" style="color:#008000;">◆hCBYv06tno</span> <span class="info">[saga]:2013/07/18(木) 23:05:08.16 ID:12OysYXQO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ???「は~はっはっはっはっはっは!!」<br /><br /> 『……乱入は受け付けてないんだけど』<br /><br /> 裕子「だ、だれ!?見えないよ!」<br /><br /> 突然、響く自身に満ちた笑い声。<br /><br /> そこに現れるは最近話題の謎のニューヒーロー!!!!<br /><br /> 美穂「私は!!ひなたん星人ナリ!!」<br /><br /> 渦巻き状になった木の上に一つの影!<br /><br /> 美穂「この街はまるごとつるっと!」<br /><br /> そこから飛び降り、二人の間に降り立つ!!<br /><br /> 美穂「ぜ~~んぶ!私のものひなた☆」キラッ<br /><br /> 刀を持った少女がチャーミングなポーズをとり着地する!<br /><br /> 我らの『ひなたん星人』こと小日向美穂だ!</dd> <dt id="a434">434 : <span class="name" style="color:#008000;">◆hCBYv06tno</span> <span class="info">[saga]:2013/07/18(木) 23:06:00.42 ID:12OysYXQO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 『もういいかな?サクッとクリアしたいんだけど』<br /><br /> 偽ベルフェゴールは怠そうに言った。<br /><br /> 無理もない。彼女の情報が刀で上昇されているものの、できる事が刀での攻撃しかない。<br /><br /> そんなのさっきみたいに軌道を読んでよければいい。<br /><br /> 例え避けきれなかったとしても、自分にはオートリジェネがある。だから、負ける筈はない。<br /><br /> そう偽ベルフェゴールは余裕でいた。<br /><br /><br /><br /> それが、間違いだった。</dd> <dt id="a435">435 : <span class="name" style="color:#008000;">◆hCBYv06tno</span> <span class="info">[saga]:2013/07/18(木) 23:06:57.75 ID:12OysYXQO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 美穂「じゃあ、サクッといくひなた☆」<br /><br /> その瞬間、美浦の姿は消えていて……<br /><br /> 『……はっ?』<br /><br /> 偽ベルフェゴールの背後にいて……<br /><br /> 美穂「食らえ!ラブリージャスティスひなたんビーム!!」<br /><br /> 偽ベルフェゴールの核がある位置を狙うように袈裟斬りを放った。</dd> <dt id="a436">436 : <span class="name" style="color:#008000;">◆hCBYv06tno</span> <span class="info">[saga]:2013/07/18(木) 23:07:58.55 ID:12OysYXQO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 『な……に……これ?……無理g……』<br /><br /> 核を斬られ、偽ベルフェゴールはあっさりと消えていった。<br /><br /> いくらベルフェゴールの能力を持ったカースとはいえ、所詮は紛い物。<br /><br /> 情報を読めてもその動きに対応できなかったら意味もない。<br /><br /> 美穂「は~はっはっはっはっは!!」<br /><br /> 裕子「え?もう終わったの?見えないからわからない!」<br /><br /> 勝利の高笑いをあげる美穂と目が見えず何が何だかわからない裕子。<br /><br /> 美穂「愛と正義のはにかみ侵略者!ひなたん星人に敵うものはいないナリ!」<br /><br /> 美穂「今日もまるごとつるっとぜ~んぶ!守ってみせたひなたっ☆」キャピピーン<br /><br /> 美穂「では、さらばでひなたっ☆」<br /><br /> 勝利のポーズを決めると鞘をとりにそのまま走り去っていった。<br /><br /> 裕子「え?ちょっとー!!」<br /><br /> 公園に裕子の声が響き渡った。<br /><br /> 彼女の目が見えるようになったのはそれから数分後だった。</dd> <dt id="a437">437 : <span class="name" style="color:#008000;">◆hCBYv06tno</span> <span class="info">[saga]:2013/07/18(木) 23:08:57.65 ID:12OysYXQO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 場所は変わり中学校。<br /><br /> 瑞樹「ここの問題はこうよ?わかるわね?(試作品が負けたのね。わかるわ)」<br /><br /> 授業をしながら、川島瑞樹ことレヴィアタンは心の中でそう思った。<br /><br /> 瑞樹「じゃあ、昼子ちゃん?授業聞いてたならここはわかるわね?(ベルフェゴールとルシファーが残したカースの核で、私の呪詛により作ったドッペルカース……良い兵隊達になるはず。わかるわ)」ニコッ<br /><br /> 昼子が蘭子に助けを求める様子を見ながら、教師としてそれはあえて見ないふりをしている。<br /><br /> 瑞樹「ふふふ、昼子ちゃんは後で友達に聞きなさい(憤怒の街に行かせた分身によればキバも来ているみたいね。けど、まだ殺しはしないわ。いえ、キバは強い。妬ましいわ)」<br /><br /> キンコーンカンコーン</dd> <dt id="a438">438 : <span class="name" style="color:#008000;">◆hCBYv06tno</span> <span class="info">[saga]:2013/07/18(木) 23:10:25.30 ID:12OysYXQO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 瑞樹「では、今日の授業はここまで(憤怒の街はそろそろダメね。なら、岡崎泰葉のドッペルカースも作れたし、こっちの準備もあと少し)」<br /><br /> 生徒の一人が号令をかけ、礼をすると、瑞樹は教室を出た。<br /><br /> 瑞樹(アレらの居場所もわかったわ。あとは呼び起こすだけ)<br /><br /> 瑞樹(神が残した危険すぎると封印した古代の遺産の内の二つ。≪ノアの方舟≫。天界の連中に気づかれていない。あの神の新聞でさえもばれてない)<br /><br /> 瑞樹(そして………唯一神が余りの危険さに封印した最強の生物。サタンの娘とキバの娘を倒すための私の切り札)</dd> <dt id="a439">439 : <span class="name" style="color:#008000;">◆hCBYv06tno</span> <span class="info">[saga]:2013/07/18(木) 23:11:40.82 ID:12OysYXQO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br />         初代レヴィアタン    <br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /> 終わり</dd> <dt id="a440">440 :<span class="name" style="color:#008000;"><b>@設定</b> ◆hCBYv06tno</span> <span class="info">[saga]:2013/07/18(木) 23:13:51.54 ID:12OysYXQO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">     ドッペルカース(量産型)<br /><br /> ベルフェゴールが残してった怠惰のカースの核をレヴィアタンの呪詛により作ったカース。<br /><br /> 偽岡崎泰葉と違い、こっちは姿と声は同じだが、黒塗り。<br /><br /> 能力も身体能力もベルフェゴールの劣化だが、魔術も使える。<br /><br /> 一人だけなら倒せるだろうが大量生産されたら厄介だ。<br /><br /> まだ量産されてないが、復讐計画の為に準備をしている。<br /><br /> ルシファーのドッペルカースも今後作られる予定。<br /><br /><br /><br />     ノアの方舟と初代レヴィアタン<br /><br /> 神が残した古代の遺産。<br /><br /> あらゆる生物が保管されており、神の洪水にも耐えられる聖人ノアの為に渡した設計図により作りだされた≪ノアの方舟≫<br /><br /> いかなる攻撃も効かない神が創りし最強の生物≪初代レヴィアタン≫<br /><br /> いずれも人類に残したら危険すぎるため封印したもの。<br /><br /> コレを復活させるのが川島瑞樹の復讐計画に必要らしい。</dd> </dl><p> </p> <dl><dt id="a447">447 : <span class="name" style="color:#008000;">◆Nb6gZWlAdvRp</span> <span class="info">:2013/07/19(金) 02:50:13.93 ID:NXH3qdzxo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> たった今書き上がったカミカゼをそのまま投下だー<br /><br /> イブと裕美と先輩と杏と菜々と夕美を借りた</dd> <dt id="a448">448 : <span class="name" style="color:#008000;">◆Nb6gZWlAdvRp</span> <span class="info">[saga sage]:2013/07/19(金) 02:50:58.30 ID:NXH3qdzxo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 烈風「どうすりゃいいんだよこれ……」<br /><br /> 美世「さ、さあ……」<br /><br />  どこか優しい雨が降り注ぐ中、カースひしめく街を駆け、二人は避難民の元へと辿り着いた……が、<br />  ――そこは氷の壁に覆われて出入りができる状態ではなかった。<br /><br /> 烈風「どう見てもカースの仕業じゃねえし、下手にぶち破るわけにもいかないよな」<br /><br />  ガンガンとノックの要領で叩いてみると、分厚い壁はしっかりとした手ごたえを返してくる。<br />  これを力ずくで除けようとすれば、中の人が危険だろう。<br /><br /> ??「あら、ヒーローの方ですかぁ~?」<br /><br />  二人が手をこまねいていると、背後から間延びした声が上がる。<br />  振り返るとそこには少女が二人。<br />  宙に浮いているから、恐らく魔法使いとかだろう。</dd> <dt id="a449">449 : <span class="name" style="color:#008000;">◆Nb6gZWlAdvRp</span> <span class="info">[saga sage]:2013/07/19(金) 02:51:39.82 ID:NXH3qdzxo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 烈風「ああ、救出に来たんだけどな、この壁をどうしようか迷ってたとこだ。<br />    これはあんたらがやったのか?」<br /><br /> ??「そうです、私たちはそれの張り直しに来たんですよ。<br />    一旦魔法を解くので少々お待ちくださいね」<br /><br />  そう言って二人が壁に向かい一緒に呪文を唱えると、頑丈で分厚かった壁が煙のように消えてしまう。<br /><br /> 烈風「はあー、魔法ってのはすげえな」<br /><br /> ??「貴女みたいに拳でカースに立ち向かうのもすごいと思いますけどね」<br /><br /> 烈風「ん? なんだアタシのこと知ってたのか?」<br /><br /> 裕美「貴女は割と有名ですからね……と、名乗りが遅れましたね。<br />    私は関裕美、魔法使いをやってます。<br />    こちらが私の師匠の……」<br /><br /> イブ「イブ・サンタクロースです~♪<br />    イブ非日常相談事務所を経営してます~♪」<br /><br /> 烈風「もう知ってるみたいだけど、アタシはカミカゼやってる向井拓海だ」<br /><br /> 美世「専属メカニックの原田美世でーす」</dd> <dt id="a450">450 : <span class="name" style="color:#008000;">◆Nb6gZWlAdvRp</span> <span class="info">[saga sage]:2013/07/19(金) 02:52:15.02 ID:NXH3qdzxo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">  簡単に名乗ると、美世の装甲車に怪我人や無能力者を優先で乗せる。<br /><br /> 裕美「今回は貼り直しとタイミングが合ったようで幸いでしたが、私たちは主に病院に居ますので救助を続けてくださるならそちらへいらしてくださいね」<br /><br /> 美世「りょーかい」<br /><br /> 裕美「では、ご武運を」<br /><br /> イブ「お気をつけて~」<br /><br />  壁を貼り直す二人と別れ、カミカゼと美世は来た道を戻る。<br />  カミカゼによって一度倒された分数はまだ少ないが、それでも再び湧き出したカースによって道はすでに塞がっている。<br /><br /> 烈風「キリがねえなあ、全くよお!」<br /><br /> 美世「時間かけるだけ不利だよ、一気に駆け抜けよう!」<br /><br /> 烈風「よし、こじ開ける! リストツイスト!」<br /><br />  風を生み、道をこじ開け突き進む。</dd> <dt id="a451">451 : <span class="name" style="color:#008000;">◆Nb6gZWlAdvRp</span> <span class="info">[saga sage]:2013/07/19(金) 02:52:46.63 ID:NXH3qdzxo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">  幾度かそれを繰り返し、そろそろ半ばも過ぎようかという頃。<br /><br /> ??「随分騒がしいので見に来てみれば、好き勝手に暴れまわってくれているみたいですね」<br /><br />  角を曲がった先は既に拓けていて、ぽつりと佇む少女が一人。<br />  大人しく路地の隙間を塞ぐカースの群れは、頭を垂れているようにも見える。<br /><br /> 烈風「……美世、先に行け」<br /><br /> 美世「え、でも」<br /><br /> 烈風「いいから行け!」<br /><br />  言うが早いか、カースの一団を消し飛ばす。<br />  美世は納得のいかない表情を浮かべてはいたが、黙ってそこに向かう。<br /><br /> ??「すんなり通すと思いますか?」<br /><br /> 烈風「邪魔立てすんな!」<br /><br />  美世へ向かおうとした少女をカミカゼが弾き、美世が消えた路地はカースによって塞がる。</dd> <dt id="a452">452 : <span class="name" style="color:#008000;">◆Nb6gZWlAdvRp</span> <span class="info">[saga sage]:2013/07/19(金) 02:53:16.51 ID:NXH3qdzxo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ??「……自己犠牲で友情ごっこですか。さすがヒーロー、反吐が出ます」<br /><br /> 烈風「犠牲になるつもりなんてねえし、何より『ごっこ』じゃねえんだよ!」<br /><br />  叫び、殴りかかる。<br />  単調なそれは防がれてしまうが、衝撃で少女は大きく後退する。<br /><br />  驚愕の表情を浮かべる相手に肉薄し、追撃。<br />  今度はしっかりと受け止められ、少女が後ずさる代わりにアスファルトに亀裂が走った。<br /><br /> ??「この、馬鹿力!」<br /><br />  少女はカミカゼの腕を掴むと、力任せに放り投げた。<br />  投げ飛ばされたカミカゼは、ビルの壁に脚を突きさして着地する。<br /><br /> 烈風「人のこと言えた口か!」<br /><br />  壁を蹴って跳び、再び接近を試みる。<br />  少女は標識を引き抜くと、振りかぶって空中のカミカゼに叩きつける。<br /><br />  カミカゼが手刀で標識を切断し、少女は鋭利になった先端で突く。<br /><br />  掴んで止めると、カミカゼごとフルスイングして投げ捨てる。<br /><br />  最接近、今度は車が飛んでくる。<br /><br />  跳んでかわすと、少女もそこに居た。<br /><br /> 烈風「っ!」<br /><br />  同時に放たれた拳は互いの頬を捕え、三度距離が開く。</dd> <dt id="a453">453 : <span class="name" style="color:#008000;">◆Nb6gZWlAdvRp</span> <span class="info">[saga sage]:2013/07/19(金) 02:53:43.92 ID:NXH3qdzxo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ??「……分かりませんね。<br />    貴方の闘志には怒りが多分に含まれる、なのにどうして飲まれないのですか」<br /><br /> 烈風「んなもん知るか」<br /><br /> ??「まあ良いです。理由はどうあれ、そこに怒りがある限り私の力になるんですから。<br />    せいぜい足掻いて、怒りを振りまいてから死んでください」<br /><br /> 烈風「そうかい。生憎、相手が強いほど燃える性質なんでな、そっちの力が増す限り、アタシの力も湧き続けるんだよ!<br />    いくらでもやってやるさ!」<br /><br /> ??「減らず口を!」<br /><br />  少女の周囲に核が生まれ、そこから黒い泥が湧く。<br /><br />  カミカゼが生んだ風が核を吹き飛ばすと、少女は足を地に埋めて踏み止まる。<br /><br />  今度は吹き飛ばされないよう手の中に核を生むと、カースを武器のように振るう。<br /><br />  カミカゼは少女がそうしたように足を地に突き刺し、泥の体を受け止める。<br /><br />  そのまましばし綱引きのような状態が続き、カースの体が千切れる。<br /><br />  二人は足を引き抜くと、相手の元へ駆けながら拳を構え――</dd> <dt id="a454">454 : <span class="name" style="color:#008000;">◆Nb6gZWlAdvRp</span> <span class="info">[saga sage]:2013/07/19(金) 02:54:12.80 ID:NXH3qdzxo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br /><br /><br /><br /><br /><br />  ――少女は濡れた路面で足を滑らせた。<br /><br /><br /><br /><br /><br />  </dd> <dt id="a455">455 : <span class="name" style="color:#008000;">◆Nb6gZWlAdvRp</span> <span class="info">[saga sage]:2013/07/19(金) 02:54:43.45 ID:NXH3qdzxo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> _____________<br /><br />  杏はイヤな雨の降りしきる中、ようやく街へと侵入に成功した。<br />  GDFや報道機関などに囲まれたここへの侵入に手間取ってしまい正直うんざりしているが、まだ目的は半分も果たされていない。<br />  怒りっぽい同居人を連れ戻すために、この街をまだ駆けずりまわらなくてはならないのだ。<br /><br /> 杏「あぁもう、杏にここまでさせたんだから、泰葉には何としても返ってきてもらうよ……<br />   にしても、なんかこうNTみたいにピーンと居場所分かったりしないかな」<br /><br />  ぼやきながらも足は止まらない。こんなに動いているのはいつ以来だろうか。<br />  カースの無駄な巨体で見通しが悪い道を駆け、僅かな隙間から周囲を伺う。<br />  そうしてしばらく探索していると、不意に目の前を装甲車が走り抜けていった。<br /><br />  別に撥ねられたとて死にはしないだろうが、思わず尻もちをついた杏は立ち上がり、車の去った方を眺める。<br />  そしてふと予感めいたものを感じ取り、車が来た方へと向かう。<br />  気持ちカースの少ない方を選んで進んだ先に、果たして目的の人物は居た。<br /><br />  どうやらヒーローと戦っているようだ、加勢してあげないと。<br />  しかし二人の居る通りに駆け付けようとした矢先、泰葉は足を滑らせた。<br /><br /> 杏「ーーっ!」<br /><br />  ほぼ無意識の行動だった。<br />  生みだしたカースに自分を投げさせ、泰葉を突き飛ばす。<br />  驚いた泰葉と目が合い――痛烈な打撃が背中にめり込んだ。</dd> <dt id="a456">456 : <span class="name" style="color:#008000;">◆Nb6gZWlAdvRp</span> <span class="info">[saga sage]:2013/07/19(金) 02:55:11.12 ID:NXH3qdzxo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> _____________<br /><br /> 泰葉「どうして……」<br /><br />  自分は彼女たちに何も言わず、半ば捨てるようにして出ていったはずだ。<br />  だというのにどうして、よりによって怠け者の彼女がここに来て、しかも自分を庇うような真似をしたのだろう。<br />  さっきまで戦っていたヒーローは彼女の乱入に戸惑っていたけど、結局仲間を追って行ってしまった。<br /><br />  自分は何をしているのだろう。<br />  捨てた仲間に助けられて、邪魔者の排除にも失敗して……<br /><br /> 杏「泰葉……」<br /><br /> 泰葉「あ、杏さん! 大丈夫ですか!」<br /><br /> 杏「杏の能力知ってるでしょ? このぐらいすぐ治るって。<br />   それよりもさ、泰葉……帰ろう?<br />   泰葉が何をしたくてここに来て、こんなことまでしてるのかは知らないけどさ、全部終わってからでいいから帰ろうよ。<br /><br />   幸子も待ってるんだよ?<br />   あの場所を守るって言って、ここには来なかったけどさ。<br />   何より……げほっ」</dd> <dt id="a457">457 : <span class="name" style="color:#008000;">◆Nb6gZWlAdvRp</span> <span class="info">[saga sage]:2013/07/19(金) 02:55:38.25 ID:NXH3qdzxo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 杏「何より、杏にここまでさせたんだから、嫌って言っても首に縄付けてでも連れて帰るけどね」<br /><br /> 泰葉「分かりましたから、帰りますから! 無理に喋らないでください!」<br /><br /> 杏「よーし言質取った。<br />   で、駆け付けといてなんだけどさ、珍しく走り回ったもんだから疲れちゃったよ。<br />   だから、ちょっと、寝かせ、て……」<br /><br /> 泰葉「あ、杏さん!? 杏さん!?」<br /><br />  思わず杏の体を揺する。<br />  杏は呼びかけには答えず、代わりに寝息を返してきた。<br />  とりあえず生きていたことにほっと一息。<br /><br /> 泰葉「よかった……生きてる。<br />    ……とりあえず、あのヒーローは絶対に許せませんね」<br /><br />  眠る杏を起こさないよう、静かに怒りを燃やした。</dd> <dt id="a458">458 : <span class="name" style="color:#008000;">◆Nb6gZWlAdvRp</span> <span class="info">[saga sage]:2013/07/19(金) 02:56:11.63 ID:NXH3qdzxo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> _____________<br /><br />  あと少しで街の外、というところまで来て、美世は完全に立ち往生してしまった。<br />  周囲を取り囲むカースに絶えず車を叩かれ、車内が揺れる。<br />  今はまだ車体に傷一つついていないが、乗せている市民たちは皆不安になっている。<br /><br />  さてどうしたものかと考えていると、<br /><br /> 菜々「ウサミンスラッシュ!」<br /><br />  カースが真っ二つになり、<br /><br /> 夕美「咲け!」<br /><br />  アスファルトを割って生えてきた植物が核を噛み砕いた。<br /><br /> 美世「ナナちゃん! 夕美ちゃん!」<br /><br /> 菜々「正式な指令が下りたので加勢に来ましたよ!」<br /><br /> 夕美「片づけるからちょっと待ってて!」<br /><br />  加勢に来た二人によってカースが倒され、再び車が進みだす。<br />  しかし細かな蛇たちが攻撃の隙間を縫って車に這い寄る。<br /><br /> 美世「わー! 何これ、何これ!」<br /><br /> 菜々「うう、車体に張り付かれると下手に手出しが……」</dd> <dt id="a459">459 : <span class="name" style="color:#008000;">◆Nb6gZWlAdvRp</span> <span class="info">[saga sage]:2013/07/19(金) 02:56:45.16 ID:NXH3qdzxo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 烈風「真空唐竹割り!」<br /><br />  そこへ追いついたカミカゼが手刀を振るうと、発生した風の刃が蛇を切り裂く。<br />  刃は車にも襲いかかるが、傷を付けるには至らない。<br /><br /> 烈風「悪い、待たせた!」<br /><br /> 美世「ちょっと! 助かったけど乱暴過ぎるよ!」<br /><br /> 菜々「拓海さんも無事だったんですね……ってあれー!? カミカゼもなんか変わってません!?<br />    こうなったらナナも装備を新調するしか……」<br /><br /> 夕美「ナナちゃん、それは帰ってからにしようね。<br />    拓海ちゃん、新たに手に入った攻略マップとやらがあるから、騒動の原因を退治するよう指令が下りたわ」<br /><br /> 烈風「マジか! じゃあすぐに再突入だな!」<br /><br />  合流を果たし、攻略が本格化し始めた。<br /><br />       了<br /><br /> ――次回予告――<br /><br /> 美世「ナナちゃん夕美ちゃんが加わって、街での戦いも本格化!<br />    攻略の拠点とするためイブさんたちのいる病院に向かう道中、新たな敵が現れる!<br />    正気を失い暴力を振りまく少女を、止めることはできるのか!?<br /><br />    次回の特攻戦士カミカゼは、<br />    『狂戦士』!<br />    覚悟、完了!」<br /><br />  この番組は、株式会社DeNAとアイドルヒーロー同盟、ゴランノスポンサーの提供でお送りしました。</dd> <dt id="a460">460 : <span class="name" style="color:#008000;">◆Nb6gZWlAdvRp</span> <span class="info">[sage]:2013/07/19(金) 02:59:31.05 ID:NXH3qdzxo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">投下終了<br /><br /> もっとしっかりバトル書きたいけどうまく書けない<br /><br /> 次回以降もしばらく菜々と夕美借りっぱなしになるし、もうレギュラー扱いで良い気がしてきた</dd> <dd><br /></dd> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> </dd> </dl><p> </p> <dl><dt id="a466">466 : <span class="name" style="color:#008000;">◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info">[saga]:2013/07/19(金) 18:43:59.76 ID:bkZIk99wo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> シリアスな憤怒の街で盛り上がる中、宇宙レベルに空気を創り出すSS投下</dd> <dt id="a467">467 : <span class="name" style="color:#008000;">◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info">[saga]:2013/07/19(金) 18:44:49.79 ID:bkZIk99wo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ヘレン「なるほど」<br /><br />  パラパラと地上の新聞を読みつつ、ヘレンが呟く。<br />  彼女はヘレン。宇宙の向こうからやってきた侵略者だ。<br /><br /> マシン「マム、どうしました?」<br /><br /> ヘレン「地上ではヒーローが多数いるらしいわ」<br /><br /> マシン「そうなのですか。知りませんでした」<br /><br /> ヘレン「仕方のないことね。励みなさい」<br /><br />  ポンと配下のマシンの頭をヘレンが叩く。<br />  マシンは無機質にアイカメラのライトを点滅させた。<br /><br /> マシン「……多数のヒーロー、とのことですが」<br /><br /> ヘレン「えぇ、そう。どうやら正義感にあふれた子たちがいろいろと邪魔をしたがるみたいね……ふぅ、無駄な抵抗もまた美しいけれど」<br /><br />  少しの間をおいてマシンが質問を続ける。<br />  ヘレンは演技がかった動きで憂鬱さを表現し、そのあと大きなため息を吐いた。</dd> <dt id="a468">468 : <span class="name" style="color:#008000;">◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info">[saga]:2013/07/19(金) 18:45:26.68 ID:bkZIk99wo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> マシン「確かに、マムに及ぶものなどありえませんね」<br /><br /> ヘレン「そう。それは当たり前のこと……」<br /><br />  マシンはあくまでも無機質にヘレンを讃える。<br />  ヘレンもそれが当然のことであると受け止めて答えた。<br /><br /> ヘレン「だけど。それならそれで面白いことを思いついたわ」<br /><br /> マシン「面白いもの、ですか?」<br /><br />  悪いことを思いついた子供のようにヘレンが笑う。<br />  パチン、と指を鳴らすと大きなドラム式洗濯機のような機械が降って来た。<br /><br />  そしてマシンへと簡単に書かれた設計図と、どこからか取り出した資材を渡す。<br />  マシンは何も言わず、ヘレンの次の言葉を待っている。<br /><br /> ヘレン「材料はあるわ。設計はこっち。あなたは応えられる?」<br /><br /> マシン「……勿論です、マム」<br /><br />  あくまで無機質にマシンが答えると、ヘレンは満足気にうなずいてその頭へと手をやった。<br />  少し撫でたあと、そのまま奥の寝室へと彼女は向かう。<br /><br />  その後姿を見届けてから、マシンは機械を稼働させ始めた。</dd> <dt id="a469">469 : <span class="name" style="color:#008000;">◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info">[saga]:2013/07/19(金) 18:46:26.92 ID:bkZIk99wo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">――翌朝<br /><br /> ヘレン「できたかしら?」<br /><br /> マシン「えぇ、完成しました。マム」<br /><br />  奥の寝室からやってきたヘレンが声をかけると、マシンが待っていたようにゆっくりと振り返る。<br />  その後ろの機械は完成を示すようにピカピカとランプを光らせていた。<br /><br /> ヘレン「……満足できるかしら?」<br /><br /> マシン「全てはマムのために」<br /><br /> ヘレン「なら、見せてみなさい」<br /><br /> マシン「イエス、マム」<br /><br />  にぃ、とヘレンが笑い、マシンが答える。<br />  洗濯機の蓋が開き、まばゆい光があたりを襲った。</dd> <dt id="a470">470 : <span class="name" style="color:#008000;">◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info">[saga]:2013/07/19(金) 18:47:50.43 ID:bkZIk99wo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> マシン「――?」<br /><br /> ヘレン「………どうしたの?」<br /><br /> マシン「申し訳ございません、マム。どうやら失敗――」<br /><br />  開いた洗濯機の中からは何も這い出ては来ない。<br />  どうやらうまくいかなかったらしく、マシンが謝罪しようと振り返るとそこにはすでにヘレンの姿はなかった。<br /><br /> マシン「……マム?」<br /><br /> ヘレン「そう……少し、お腹が減ってるみたいね」<br /><br />  もう一度振り返る。いつの間にやらヘレンは洗濯機の横へ立ち、中をのぞき込んでいた。<br />  すぅ、と手を動かすともう一度機械を起動させる。<br /><br /> ヘレン「これでいいわ」<br /><br /> マシン「……マム、私は」<br /><br /> ヘレン「この設計図はできそこないね。あなたが完成させられないのだから」<br /><br />  マシンが謝罪の言葉を述べる前に、ヘレンが設計図を燃やしてしまう。<br />  マシンはただ、燃え上がるそれを見つめていた。</dd> <dt id="a471">471 : <span class="name" style="color:#008000;">◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info">[saga]:2013/07/19(金) 18:48:25.31 ID:bkZIk99wo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ヘレン「これでいいわ。とりあえずの試作品ね」<br /><br />  洗濯機が改めて完成を示すランプを光らせる。<br />  ドアが開き、長い毛を引きずって2つの影が這い出てきた。<br /><br /> ヘレン「……2体に分かれる。こちらの方が安定するわ」<br /><br /> マシン「マム、これは――」<br /><br />  自分の失敗だ。と続ける前にヘレンが言葉を遮る。<br /><br /> ヘレン「いえ、それはあり得ない……これでいいの。安心しなさい」<br /><br /> マシン「………イエス、マム」<br /><br /> ヘレン「もともと異なる2つの性質。同時に持たせるよりも別行動を行わせた方が楽しいでしょう?」<br /><br />  そういうヘレンの手の中には、割られた卵の殻。<br />  どうやら合成たんぱく質のバランスを変えたらしい。</dd> <dt id="a472">472 : <span class="name" style="color:#008000;">◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info">[saga]:2013/07/19(金) 18:49:16.50 ID:bkZIk99wo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> マシン「流石です、マム」<br /><br />  制作物をあっという間に別物へとつくりかえたへレンに対し、マシンはただ驚嘆の声を出す。<br />  あくまでも無機質ではあったが、ヘレンはそれを聞いて満足気に笑った。<br /><br /> ヘレン「いきなさい……アバクーゾ、ハンテーン」<br /><br />  完全に姿を現した怪人2体が唸り声をあげる。<br />  片方は長い首を持ち、全身柔らかそうな毛を纏ったつぶらな瞳の獣人。<br />  もう片方はずんぐりとした体に短い手足を持ち、短くそろえられた茶色の毛並が美しい獣人。<br /><br /> アバクーゾ「あばくぞー!」<br /><br /> ハンテーン「はんてーん!」<br /><br />  どちらも凶悪な姿には見えないが、張り切った様子で降下用の装備を装着して地上へと飛び立っていった。</dd> <dt id="a473">473 : <span class="name" style="color:#008000;">◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info">[saga]:2013/07/19(金) 18:50:32.44 ID:bkZIk99wo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> マシン「しかし、なぜあのような怪人を?」<br /><br />  怪人たちが無事に活動を開始したのを確認した後、マシンが疑問を口にする。<br />  最初に作ろうとしていたのは『性質反転』――つまり、ヒーローを悪に落とす怪人だ。<br />  改めて作られたあの怪人たちにそのような力があるようには見えない。<br /><br /> ヘレン「そうね……今の時点では満足のいくものにならなかった。私は私が満足できるものしか求めないの」<br /><br /> マシン「なるほど。あの2匹は実験体ですか」<br /><br /> ヘレン「いえ。あれは他のヒーローたちの活動を見て閃いたものよ」<br /><br /> マシン「……相手の精神へと感応し、意思と異なる行動を起こさせる。結果として孤立することを狙う。そういった理由でしょうか」<br /><br /> ヘレン「えぇ。やはりあなたは賢いわ……私が作ったのだから、当然だけど」<br /><br /> マシン「ありがとうございます、マム。ですがひとつ」<br /><br /> ヘレン「……どうしたの?」<br /><br /> マシン「本日のベーコンエッグのエッグが切れました。いかがしましょう?」<br /><br /> ヘレン「…………仕方ないわ。とってきなさい」<br /><br />  本日の朝食の材料を買いにマシンが地上へ降り立つ。<br />  ヘレンはその空腹をたたえながら朝食の時を待つことを決めた。</dd> <dt id="a474">474 :<span class="name" style="color:#008000;"><b>@設定</b> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info">[saga]:2013/07/19(金) 18:52:06.29 ID:bkZIk99wo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> !イベント情報<br /><br />  「憤怒の街」終了後の時系列の設定でドタバタ系イベント「嘘つきと本音」が開始されました<br />  日本全国津々浦々を怪人「アバクーゾ」と「ハンテーン」が襲います。<br /><br />  本人たちの戦闘力は非常に低いですが、逃げ足の速さと頑丈さはピカイチです。<br /><br /><br /> アバクーゾ<br /> 属性:アルパカ風獣人<br /> ふかふかの毛におおわれた獣人。<br /> 凶悪な爪や牙といった機能がオミットされた代わりに柔軟性にすぐれ、打撃攻撃に対して非常に高い防御力をほこる。<br /> 実はふかふかの毛には大量の『本音薬』が含まれており、叩いたり近くで暴れられると思わず自分の隠し事を大声で叫んでしまう。<br /> そのほか、本音薬を凝縮した液体を吐き出したりすることも可能。<br /><br /> ハンテーン<br /> 属性:カピバラ風獣人<br /> ずんぐりとした体形につぶらな瞳がチャームポイントの獣人。<br /> 凶悪な爪や牙といった機能がオミットされた代わりに瞬時に硬質化する毛で全身を覆っているため斬撃に対して非常に高い防御力をほこる。<br /> 実はその毛には『反転薬』が塗り込まれており、刺さると性格が反転してしまう。<br /> 反転してしまうのはあくまで表面上の性格だけのため、本質は変化しない。<br /> そのほか、毛バリを発射したりすることも可能。</dd> <dt id="a475">475 : <span class="name" style="color:#008000;">◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info">[saga]:2013/07/19(金) 18:53:47.19 ID:bkZIk99wo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 以上、ギャグイベント開始宣言でした<br /> シリアスできるかと思ったらしなかった。やはりヘレンさんは宇宙レベルであるな</dd> </dl><p> </p> <dl><dt id="a506">506 : <span class="name" style="color:#008000;">◆6osdZ663So</span> <span class="info">[sage saga]:2013/07/20(土) 11:06:36.99 ID:NW4wqk7so</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ハンテーンとアバクーゾお借りしてちょいと投下します</dd> <dt id="a507">507 : <span class="name" style="color:#008000;">◆6osdZ663So</span> <span class="info">[sage saga]:2013/07/20(土) 11:07:29.04 ID:NW4wqk7so</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br /><br /> 美穂「は~はっはっはっはっは~!!」<br /><br /><br /> 今日も今日とて一人の少女の高笑いが街に響く!<br /><br /><br /> 美穂「愛と正義のはにかみ侵略者!ひなたん星人!ただいま惨状ナリっ☆」 キュピーン<br /><br /><br /> 最近、ちょっとだけ有名になったヒーロー、ひなたん星人こと小日向美穂!<br /><br /> 怪人が現れたらしいと、街の騒ぎを聞きつけ駆けつけた!!<br /><br /><br /> なお本人は有名になりつつある事に非常に複雑な気持ちである模様<br /><br /> 少なくとも卯月ちゃんには、ひなたん星人としての活動バレないだろうから頑張れ、美穂!<br /><br /><br /> さて!そんな美穂の今回のお相手は!?<br /><br /><br /><br /> ハンテーン「はんてーん!」<br /><br /><br /><br /> 街に人々を襲う謎のカピバラ獣人!<br /><br /> その名前、能力、目的は一切不明!<br /><br /> 鳴き声から名前はとりあえずハンテーンだ!!</dd> <dt id="a508">508 : <span class="name" style="color:#008000;">◆6osdZ663So</span> <span class="info">[sage saga]:2013/07/20(土) 11:08:05.28 ID:NW4wqk7so</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br /> 美穂「か、カワイイひなたっ!」<br /><br /> ハンテーン「?」<br /><br /><br /> カピバラモデルのその怪人、<br /><br /> ずんぐりとしたその姿は穏やかそうで、どこかゆるく、<br /><br /> 怪人でなければお持ち帰りしたいほどキュートであったりした。<br /><br /><br /> 美穂「ひなたんは、アレのぬいぐるみの商品化を希望するひなたっ!」<br /><br /><br /> 何処にだ。<br />  </dd> <dt id="a509">509 : <span class="name" style="color:#008000;">◆6osdZ663So</span> <span class="info">[sage saga]:2013/07/20(土) 11:08:39.57 ID:NW4wqk7so</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br /> それはさておき、<br /><br /><br /> 美穂「ひなたんの力は本来カースを狩るためにあるナリ」<br /><br /> 美穂「けれど、街を騒がす存在も放っておくわけにはいかないひなたっ!」<br /><br /><br /> その人格と力の維持に、負のエネルギーを必要とするひなたん星人は<br /><br /> エネルギーを補充できるカース狩りのとき以外はできるだけ力を抑えておくべきなのだが、<br /><br /> 美穂自身にはそんな事情は関係なく、守れる人は守りたいと思っていて、<br /><br /><br /> ひんたん星人にしても、そんな美穂のヒーロー像をベースにして作られた人格なのだ。<br /><br /> 街の騒ぎにはヒーローとしての血が騒ぎ(?)、できるだけ駆けつけたくなるらしい。<br /><br /><br /><br /> 美穂「この街はまるごとつるっとぜ~んぶ私のものひなたっ☆」 キラッ<br /><br /><br /> 美穂「他の誰にも、たとえカピバラさんにもあげることはできないナリっ!」<br /><br /><br /> そう言って刀を構える少女<br /><br /><br /> ハンテーン「はんてん!!」<br /><br /><br /> 主の敵であるところのヒーローとやらが臨戦態勢に入ったのを見て、<br /><br /> ハンテーンもまたやる気満々だ!</dd> <dt id="a510">510 : <span class="name" style="color:#008000;">◆6osdZ663So</span> <span class="info">[sage saga]:2013/07/20(土) 11:09:54.99 ID:NW4wqk7so</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br /><br /> ハンテーン「はん!」<br /><br /><br /> 先に動いたのはカピバラ獣人だった!<br /><br /> 自身の体毛の一部を硬質化させ!<br /><br /><br /> ハンテーン「てーん!!」<br /><br /><br /> 一気に射出!<br /><br /> 数え切れない毛針攻撃が美穂に襲い掛かる!<br /><br /><br /> だが<br /><br /><br /> 美穂「こんなものひなた?」<br /><br /><br /> 目前で刀をただ一振り<br /><br /> それだけで襲い来る毛針の全てを叩き落してしまった!<br /><br /><br /> ハンテーン「はんてん?!」<br /><br /> 自身の攻撃を物ともしない少女の様子に怪人は驚く<br /><br /><br /> 美穂「ひなたん星人の秘密☆その5!」<br /><br /> 美穂「聖なる乙女を守るバリアーがひなたんを守ってくれるナリ☆」<br /><br /><br /> バリアー(物理)である。</dd> <dt id="a511">511 : <span class="name" style="color:#008000;">◆6osdZ663So</span> <span class="info">[sage saga]:2013/07/20(土) 11:10:28.02 ID:NW4wqk7so</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br /><br /> 美穂「今度はこっちから行くひなたっ☆」<br /><br /><br /> そう言うと少女は凄まじいスピードでハンテーンに駆け寄ってくる<br /><br /><br /> ハンテーン「は、はんてん!!はんてん!!」<br /><br /><br /> 毛針を射出し、近づけさせまいと応戦するが無駄。<br /><br /> その全てが叩き落され、簡単に接近を許してしまった。<br /><br /><br /> 美穂「悔い改めるナリ☆」<br /><br /> ハンテーン「はんてん!?」<br /><br /> 美穂「ラブリージャスティスひなたんフラーッシュっ!!」<br /><br /><br /> 全てを一刀両断にするひなたん星人の一撃が怪人に向けて放たれる!<br /><br /><br /> が、しかし!!<br /><br /><br /> ハンテーン「はんてん!!」<br /><br /><br /> ハンテーンは全身の毛並みを一気に硬質化!<br /><br /> なんとラブリージャスティスひなたんフラッシュ(物理)をその体で受け止めたっ!!</dd> <dt id="a512">512 : <span class="name" style="color:#008000;">◆6osdZ663So</span> <span class="info">[sage saga]:2013/07/20(土) 11:11:02.86 ID:NW4wqk7so</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br /><br /> 美穂「!」<br /><br /><br /> まるで信じられないものを見るように驚く少女の隙を逃すハンテーンではない!<br /><br /> 硬質化した毛をさらに爆発するように全方位に射出!<br /><br /> さながら炸裂弾の如し!<br /><br /><br /> 美穂「くっ!」<br /><br /><br /> 慌てて飛び退き、飛んできた針を刀で打ち落とすが、<br /><br /> しかし討ち漏らした何本かの毛針が手足の数箇所に刺さってしまった。<br /><br /><br /> ハンテーン「はんてーん♪」<br /><br /><br /> ドヤ顔でしてやったりとでも言いたげなハンテーンであった。</dd> <dt id="a513">513 : <span class="name" style="color:#008000;">◆6osdZ663So</span> <span class="info">[sage saga]:2013/07/20(土) 11:11:45.22 ID:NW4wqk7so</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br /><br /> 美穂「ど、どういうことナリ・・・・・・?」<br /><br /> ハンテーン「?」<br /><br /> 美穂「ひなたんの必殺技であるところの」<br /><br /> 美穂「ラブリージャスティスひなたんフラッシュが効かないなんて信じられないひなたっ!」<br /><br /> ハンテーン「はんてん?」<br /><br /><br /> これはおかしいとハンテーンは思う。<br /><br /> 針弾自体に威力はさほど無いから、刺さってもケロっとしているのはいい。<br /><br /> だが、自身の針弾に塗りこまれた『反転薬』、その効果すら少女には無いように見えた。<br /><br /><br /> 美穂「ひなたん星人の秘密☆その6」<br /><br /> 美穂「天使の祝福によって、ひなたんにはどんな毒も効かないナリっ☆」<br /><br /><br /> 妖刀『小春日和』の効力である。<br /><br /> 『小春日和』はあまりに精神支配力が強い、日本一、横暴な刀。<br /><br /> ひなたん星人には、いかなる薬であろうと精神に作用する効果であるならそれは通じない。</dd> <dt id="a514">514 : <span class="name" style="color:#008000;">◆6osdZ663So</span> <span class="info">[sage saga]:2013/07/20(土) 11:12:38.14 ID:NW4wqk7so</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br /><br /> ハンテーン「・・・・・・。」<br /><br /><br /> カピバラ獣人ハンテーンは考える。<br /><br /> 今相手にしている少女。<br /><br /> この娘は、自身の能力が通じない上に戦闘能力があまりに高い。<br /><br /> ただ、刀による攻撃しか出来ないようなので、<br /><br /> 斬撃に対して非常に強い耐性を持つハンテーンの毛並みは、少しばかり彼女に対して優位であろう。<br /><br /><br /> ただし、先ほどの全方位毛針攻撃で、<br /><br /> 全身の毛の数割を射出した今はその限りではない。<br /><br /> 毛の再生には多少の時間が掛かる。<br /><br /><br /> そもそも毛針が通じなかった以上、この場で戦う理由が何一つないのだ。<br /><br /> ならば、やる事は一つ。<br /><br /><br /> ハンテーン「はんてん!」<br /><br /> 言葉の通り、体の向きを反転させて、<br /><br /><br /> 美穂「あっ!!ちょっと待つナリ!!」<br /><br /><br /> カピバラ怪人ハンテーンは逃げ出した。</dd> <dt id="a515">515 : <span class="name" style="color:#008000;">◆6osdZ663So</span> <span class="info">[sage saga]:2013/07/20(土) 11:13:20.43 ID:NW4wqk7so</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br /><br /> 美穂「な、なんて逃げ足の速い怪人ひなたっ」<br /><br /><br /> それはもう瞬く間に、<br /><br /> はぐれメタルもびっくりなスピードで怪人は去っていった。<br /><br /><br /> 美穂「それにしても、怪人を逃がしてしまうなんてひなた・・・・・・」<br /><br /> 美穂「ひなたん星人、一生の不覚ナリっ・・・・・・」<br /><br /><br /> ひなたん星人がショックを受けるのは無理も無い。<br /><br /> 日本一の刀による、日本一の技術を発揮した<br /><br /> まさに日本一の斬撃を、あの怪人は受け止めたのだ。<br /><br /> 『傲慢』な刀から生まれた人格としては少々受け入れがたい事であろう。<br /><br /><br /> 美穂「・・・・・・修行が必要ひなた」<br /><br /> 美穂「もっともっと強くなって!必ずあの怪人を!」<br /><br /> 美穂「まるっとつるっと一刀両断にしてみせるひなたっ☆」<br /><br /><br /> だが、ひなたん星人は挫けない!<br /><br /> 斬撃の効かない相手にあえて斬撃で挑み、見事勝ってみせると誓うのであった!<br /><br /><br /> そして少女は刀を鞘に納める。</dd> <dt id="a516">516 : <span class="name" style="color:#008000;">◆6osdZ663So</span> <span class="info">[sage saga]:2013/07/20(土) 11:14:08.93 ID:NW4wqk7so</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br /><br /> 美穂「さてと、これからどうしようかひなた☆」<br /><br /><br /> 美穂「・・・・・・・ん?」<br /><br /><br /> 美穂「おかしいナリ、ちゃんと『小春日和』は鞘に収めたのにひなた」<br /><br /><br /> 脇に抱える刀は、どう見ても鞘に収まっている。<br /><br /> なのに、何故だろうか<br /><br /><br /> 美穂「どうして、”私”の人格がまだ出てるナリ??」<br /><br /><br /> 何度、刀を抜き差ししても『ひなたん星人』の人格が引っ込む事は無かった。<br /><br /><br /><br /> 『小春日和』の精神支配が強まるのは、あくまで”刀を抜いている”間だけである。<br /><br /> ”鞘に収まっている”間、薬の効力が薄まるわけではなかったようで。<br /><br /> 『反転薬』は恥ずかしがり屋の小日向美穂の内にあった、『ひなたん星人』の人格と合わさり、<br /><br /> この様な形で効果を発揮したのだった。<br /><br /><br /> 美穂「ふっふっふ」<br /><br /><br /> 美穂「は~はっはっはっはっはっは!」<br /><br /><br /> 美穂「薬の効果がどのくらい続くかはわからないナリ」<br /><br /><br /> 美穂「けれど、こうなったら私も精一杯日常を楽しむひなたっ☆」 キラッ<br /><br /><br /><br /> 小日向美穂は薬の効果が切れるまでしばらくの間、ひなたん星人のまま生活をする事になるようだ。</dd> <dt id="a517">517 : <span class="name" style="color:#008000;">◆6osdZ663So</span> <span class="info">[sage saga]:2013/07/20(土) 11:16:10.39 ID:NW4wqk7so</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br /> ――<br /><br /> ――<br /><br /> 一方その頃<br /><br /><br /> アバクーゾ「あばくぞー!」<br /><br /><br /> 別の場所ではアバクーゾが暴れており、民衆はパニックに陥っていた。<br /><br /><br /> 肇「怪人ですね。」<br /><br /><br /> 肇は冷静に暴れる怪人を分析する。<br /><br /> どうやら、それに近寄ると自分の恥ずかしい秘密を大声で叫んでしまうらしかった。<br /><br /> そのせいで多くの人々が、恥ずかしさのあまりうな垂れ再起不能になっている。<br /><br /><br /> 肇「『戟王丸』なら遠距離から一撃で倒せるけれど・・・・・・。」<br /><br /> 流石に一般人を巻き込みすぎるから、この案は却下だ。<br /><br /><br /> 肇「それなら」<br /><br /> と別の刀を取り出そうとするが、<br /><br /> アバクーゾ「あばくぞー!」<br /><br /> 肇「!」<br /><br /> その前にアバクーゾが近づいてきていて<br /><br /> 『本音薬』の含まれた毛が舞う。<br /><br /><br /> 肇「へっくち、しまっ・・・・・・」<br /><br /> くしゃみと共に少女の目が怪しくきらめく</dd> <dt id="a518">518 : <span class="name" style="color:#008000;">◆6osdZ663So</span> <span class="info">[sage saga]:2013/07/20(土) 11:17:12.85 ID:NW4wqk7so</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br /> 肇「メンルイパワーでバハムに出張♪」<br /><br /> 肇「みんな大好き 好き好き大好き うー☆どおぉん!!」<br /><br /> 肇「メンルイハートにキュンキュンきらめく」<br /><br /> 肇「ホントの気持ち 頑固☆一徹16歳!」<br /><br /> 肇「だいじなだいじなトウゲイだもん!」 キャピピーン<br /><br /><br /> 肇「・・・・・はっ!!」<br /><br /><br /> 肇はかつて『小春日和』を所持していたことがある。<br /><br /> 日本一、横暴な刀は鬼の少女のうちにも例外なく人格を作っており、<br /><br /> 今のは当時、『小春日和』を抜いて戦った時に使われていた人格の再現であった。<br /><br /><br /> 肇「・・・・・・墓場まで持っていくって決めてたのにっ!」 ガクリ<br /><br /><br /> アバクーゾ「あばくぞー♪」<br /><br /><br /> 鬼の孫娘の秘密を暴いたアバクーゾは、機嫌よく去って行ったのだった</dd> <dt id="a519">519 : <span class="name" style="color:#008000;">◆6osdZ663So</span> <span class="info">[sage saga]:2013/07/20(土) 11:17:47.39 ID:NW4wqk7so</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br /> おしまい<br /><br /> それもこれもだいたい小春日和って奴のせいなんだ。</dd> </dl><p> </p> <dl><dt id="a524">524 : <span class="name" style="color:#008000;">◆yIMyWm13ls</span> <span class="info">[saga]:2013/07/20(土) 13:54:25.02 ID:gCY/ehtJ0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> うー☆どおぉん!!<br /> が反則的に腹筋を攻撃してくるんですが…<br /><br /> 小ネタを投下</dd> <dt id="a525">525 : <span class="name" style="color:#008000;">◆yIMyWm13ls</span> <span class="info">[saga]:2013/07/20(土) 13:55:59.37 ID:gCY/ehtJ0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ハンテーンは後悔していた。<br /> ハンテーンはマムにより仮初の命を与えられ、役目を得て地上に降り立った。<br /><br /> ハンテーン「は、はんてん!?」<br /><br /> だというのにこの有様は何だ?<br /><br /> ジグザグに走りながら二人の追手に毛バリを飛ばす。<br /><br /> リン『炎よ!』<br /><br /> 虚しくも、自慢の毛バリは突如せり立つように現れた炎に焼かれ役目を果たせず燃え尽きる。<br /><br /> リン「一応このハリって燃えるんだ、モチーフが動物だからかな?」<br /><br /> 沙織「あ、あんまり寄り道するとわだすたちウサミンさんに怒られてしまいません?」<br /><br /> ハンテーンの後を追うように二人の少女たちが駆ける。<br /><br /> リン「…沙織、これは他人に迷惑を掛けるロボットを捕まえるボランティアだよ」<br /><br /> …絶対嘘だ。<br /> ハンテーンは確信していた。</dd> <dt id="a526">526 : <span class="name" style="color:#008000;">◆yIMyWm13ls</span> <span class="info">[saga]:2013/07/20(土) 13:58:29.18 ID:gCY/ehtJ0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">―<br /><br /> 思えば単純にこの場所で暴れすぎたのかもしれない。<br /> なにせこの容姿だ。自分で言うのもなんだがらぶりーでぷりちーなカピバラさんだ。<br /> ハンテーン自身が人間に近づいていかなくても向こうから女子供が寄ってくる。<br /> そして撫でようとして手を伸ばしてきたところで少し食い込む程度に毛を逆立ててやればいい。<br /> そうすれば人間は『反転』した。<br /> それでいい、あくまでマムはハンテーンに人を過度に傷つけるように命令されなかった。<br /> ハンテーンは何人もの人間を『反転』させて調子に乗っていた。<br /><br /> 沙織「ウサミンさんは放っておぐと変なものしか食べませんがら」<br /><br /> リン「それで食材買いに来たの?」<br /><br /> 沙織「わだずあんまり器用でねぇからこういう形でねぇと感謝してるって言えねぇし…」<br /><br /> 沙織「ウ、ウサミンさんのこと話せる知り合いってリンさんぐらいしか知らねぇし…」<br /><br /> リン「…沙織は女の子だね」<br /><br /> などと会話に華を咲かせてる少女たちを次のターゲットに絞ろうなどと思ってしまったことも運が悪かった。<br /> しかしまさか近寄った瞬間に少女たちの片割れに『機械油の臭い』などと言う理由で自分の正体がバレるとは思わなかった。<br /> そしてこの辺りでアルパカを撫でた直後に性格が変わるなどという噂が丁度流れ始めてしまったのも悪かった。<br /> やることをやったならさっさとトンズラしておけば良かったのだ。<br /> そして何よりも運が悪かったのは…<br /><br /> リン『これって中身どうなってるんだろうね?』<br /><br /> 少女の片割れが人畜無害な羊なんかではなく飢えた狼だったことだ。</dd> <dt id="a527">527 : <span class="name" style="color:#008000;">◆yIMyWm13ls</span> <span class="info">[saga]:2013/07/20(土) 13:59:23.36 ID:gCY/ehtJ0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> リン「出来るだけ傷つけないで捕獲したいんだけどな」<br /><br /> などと言って少女がショルダーバックから何かの砲身のようなものを取り出しこちらに向けてくる。<br /><br /> リン「足の駆動ユニットぐらいなら私でも直せるから…」<br /><br /> 砲身から何かが飛び出しハンテーンの足元のアスファルトが砕ける。<br /><br /> ハンテーン『は、ははは、はーん!?』<br /><br /> 冗談じゃない、とんだ外れくじだ。<br /><br /> 沙織「リ、リンちゃん!?やりすぎでねぇか!?」<br /><br /> リン「大丈夫、当てても峰打ちに……」<br /><br /> 四肢が粉砕されるのはこの少女にとっては峰打ちなのだろうか?<br /> どちらにしても捕まってもロクなことにはならないことは分かりきっていた。<br /> 慌てて近くでハンテーンと同じく人々の隠し事を暴いているであろうアバクーゾに救難信号を送る。<br /> 買い物袋を引っさげた二人の少女に追い込まれているだなんて情けないことは伝えられない。<br /> 『ベェ、コイツマジヤベェわ』程度に伝わればいい。</dd> <dt id="a528">528 : <span class="name" style="color:#008000;">◆yIMyWm13ls</span> <span class="info">[saga]:2013/07/20(土) 14:01:06.29 ID:gCY/ehtJ0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">―<br /><br /> アバクーゾ『あばくぞー!』<br /><br /> おお、我が友よ、来てくれたか。<br /><br /> リン「一体増えた…」<br /><br /> 少女は砲身を今度はアバクーゾに向ける。<br /> 今度はメキョリとアバクーゾの二本の前足の間のアスファルトが砕ける。<br /><br /> リン「むぅ、当たらない…」<br /><br /> 渋顔を浮かべてアバクーゾに再び砲身を向ける。<br /><br /> アバクーゾ『あば、あばくぞー!?』<br /><br /> アバクーゾは慌てて体を揺すり毛を撒き散らす。<br /> アバクーゾの毛には本音を暴かせる『本音薬』が…。<br /> すると少女は何かを懐から取り出してアバクーゾに投げ込みながら叫ぶ。<br /><br /> リン『風よっ!』<br /><br /> 突然暴風が吹き荒れて撒き散らした『本音薬』が二体の後方に居た人たちに降り注ぐ。</dd> <dt id="a529">529 : <span class="name" style="color:#008000;">◆yIMyWm13ls</span> <span class="info">[saga]:2013/07/20(土) 14:02:50.21 ID:gCY/ehtJ0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 『ガチャチケでSR引いたとか自慢したけど実はあずささんです』<br /><br /> 『あべなな、さんじゅうななさい』<ナ、ナンダコノショクブツ!?<br /><br /> 『あべ、ななじゅうななさい』<ハナセー!<br /><br /> 『実世ちゃんに優しくメンテされたい』<br /><br /><br /> リン「わざわざ毛を散らしたんだから何かあると思うんだけどなんなんだろうねこれ?」<br /><br /> 沙織「わだずに聞かれても…」<br /><br /> 沙織「それよりさっきの人二人ほどなんかでっけぇ植物に攫われてったけんど…」<br /><br /> リン「…気のせいじゃない?」<br /><br /> ハンテーンは確信した。<br /> この少女、鬼であると。<br /> どうやったのかは分からないが風を起こしてわざわざ他人に『本音薬』を被らせて実験したのだ。<br /><br /> アバクーゾ『あ、あばくぞー!』<br /><br /> 恐らくアバクーゾも『ベェ、コイツマジヤベェわ』の意味を真に理解したのだろう。<br /> アバクーゾも二人の少女に背中を向けて走り出そうとする。</dd> <dt id="a530">530 : <span class="name" style="color:#008000;">◆yIMyWm13ls</span> <span class="info">[saga]:2013/07/20(土) 14:04:10.33 ID:gCY/ehtJ0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">―<br /><br /> 「田舎に行って機械から離れた生活がしたい…」<br /><br /> ポツリと唐突に危ないほうの少女が呟く。<br /><br /> 「い、いきなりどした!?リンちゃんそんなキャラじゃねぇんじゃ…」<br /><br /> 危ないほうの少女の肩をもう片方の少女が揺する。<br /><br /> 「…なんかもう…毎日土弄って過ごしたい」<br /><br /><br /><br /> ハンテーン『てーん…!てーん…!!』<br /><br /> その頃ハンテーンは達成感に酔いしれていた。<br /> アバクーゾの毛に紛れさせて飛ばしておいた毛バリが暴風に負けずに無事に当たったようだ。<br /> 後は危ない方の少女が正気を取り戻さないうちに逃げるだけだ。<br /><br /> リン「まっくろく○すけが住んでそうな家に引っ越したい…」<br /><br /> リン「あと沙織…これあげる…」<br /><br /> そう言ってショルダーバックから砲身の正体、ブラズマバスターをズルリと取り出す。<br /><br /> 沙織「こ、こんなん貰っても持てねって!?」<br /><br /> リン「私はもう…川のせせらぎを聞きながら山の恵みだけで生きて行きたい…」<br /><br /> 沙織「リンちゃんが壊れた…」<br /><br /> そんな二人を尻目にハンテーンとアバクーゾは去って行った。</dd> <dt id="a531">531 : <span class="name" style="color:#008000;">◆yIMyWm13ls</span> <span class="info">[saga]:2013/07/20(土) 14:05:03.26 ID:gCY/ehtJ0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">終わり。<br /><br /> 沙織「…クジケソウになったヶどハンテーンぉぃかけた」<br /><br /> 沙織「さぉりは、がんばったョ!だけど、メカにはぉいつかなかった・・・」<br /><br /> 沙織「トーゼンだよメカだもん・・・さぉり激おこ・・・」<br /><br /><br /> 沙織もハンテーンでギャル語で喋る謎キャラにして壊そうと思ったけど収集付かなくて諦めた。<br /> 植物に攫われた二人は無事に?帰ってきたらしいです。</dd> </dl><p> </p> <dl><dt id="a536">536 : <span class="name" style="color:#008000;">◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info">[saga sage]:2013/07/20(土) 21:07:34.12 ID:tvpnfxwi0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> アバクーゾとハンテーンネタで投下します</dd> <dt id="a537">537 : <span class="name" style="color:#008000;">◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info">[saga sage]:2013/07/20(土) 21:08:15.86 ID:tvpnfxwi0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「あずきバーがおいしい季節だねー!」<br /><br /> 「はいはい。買わないからな。」<br /><br /> 涼とあずきは街中を歩いていた。さすがにこの季節になるとあずきの浴衣姿も少々目立たなくなるようだ。<br /><br /> 『お仲間』を探したいらしく、勝手に一人で出かけることが結構あるのだが、帰って来ない事も多く、暇なときは一緒に行っているのだ。<br /><br /> …そもそも彼女の言う『お仲間』というのもよく分からないのだが。妖怪仲間だろうか?</dd> <dt id="a538">538 : <span class="name" style="color:#008000;">◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info">[saga sage]:2013/07/20(土) 21:08:41.61 ID:tvpnfxwi0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ふと、視界の端にもこもこした何かが見えた。<br /><br /> 「あっばくぞー!」<br /><br /> 「涼さん涼さん!あそこになんか可愛いのがいる!」<br /><br /> 「…こんな季節に着ぐるみ…。」<br /><br /> 「…一緒に写真とかとらない?」<br /><br /> 「とらない。それにアレが可愛い…?」<br /><br /> なんか妙に顔の辺りがリアルな気がして、涼的にはカワイイとは思えなかった。</dd> <dt id="a539">539 : <span class="name" style="color:#008000;">◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info">[saga sage]:2013/07/20(土) 21:09:08.95 ID:tvpnfxwi0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「あーばーくーぞー!」<br /><br /> 『俺はテストをしたくないあまりに仮病をした!』<br /><br /> 『俺の書いてる小説で次死ぬのは校長だぁ!』<br /><br /> 『ボク、女の人より男の人の方が好きぃ!』<br /><br /> 『俺は妹と結婚したい!!』<br /><br /> 妙なことに、そのキグルミの周りでは人々が大声で何やら叫んでる。<br /><br /> …そしてあの鳴き声。<br /><br /> 「…あいつ、怪人とかいう類のやつじゃないか?」<br /><br /> 「え、マスコットじゃないの!?」<br /><br /> 「なんか『暴くぞー』とか言ってるし、碌な奴じゃなさそうだな…。」<br /><br /> 「じゃあ退治しよう!退治したらあずきバー奢ってよ!なんか弱そう!」<br /><br /> 「ちょ!?勝手に決めるなって!」</dd> <dt id="a540">540 : <span class="name" style="color:#008000;">◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info">[saga sage]:2013/07/20(土) 21:10:11.82 ID:tvpnfxwi0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> あずきは涼の脇をすり抜けて怪人を上空から半透明な腕で殴り掛かった。<br /><br /> 昼間だから夜の時よりは小さいが、かなりの威力…のはずだった。<br /><br /> 「あばー!」<br /><br /> 打撃だったが故に、その怪人に全くダメージが通らなかったのだ。<br /><br /> 「あれれー?…ていうかなんか湿ってるー!?やだやだー!」<br /><br /> 半透明の腕を、水分を飛ばすように振る。もちろん、飛び散ったそれは本音液で…<br /><br /> 『メイドのみくちゃんでいつもあんなことやこんなことの妄想をしてた!』<br /><br /> 『たくみんと結婚したいよおおおおお!』<br /><br /> 『ひなたん星人は俺の嫁ええええ!』<br /><br /> もちろん涼にもそれはかかっていた。<br /><br /> 『せーの、うさちゃんピース!!』<br /><br /> 「…はっ!?」<br /><br /> …少し前に親戚の子と一緒に行った遊園地でのとある出来事の一部である。<br /><br /> 涼にとってはもう思い出したくもない、ずっと隠していたい記憶だった。</dd> <dt id="a541">541 : <span class="name" style="color:#008000;">◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info">[saga sage]:2013/07/20(土) 21:10:45.23 ID:tvpnfxwi0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「あ…ああ…!」<br /><br /> 顔が真っ赤になる。<br /><br /> 「あばばばばー♪」<br /><br /> アバクーゾはご機嫌そうだ。スキップをしながら去って行こうとしていた。<br /><br /> 「…絶対に許さないぞ…毛むくじゃら野郎!」<br /><br /> 「え、あの…涼さーん?顔が怖いよー?」<br /><br /> 『あずき、いつも持っている裁ち鋏を強化してから渡してくれないか。』<br /><br /> 無意識の能力使用。それは付喪神…つまり物であるあずきにはあまりにも効果的だった。<br /><br /> 「…はい。どうぞ涼様。」<br /><br /> 「よし…。『アイツの毛を切れ!』」<br /><br /> 鋏が涼の手から放たれ、アバクーゾの頭の毛を切り、ハゲの部分ができる。<br /><br /> 「あばー!?」</dd> <dt id="a542">542 : <span class="name" style="color:#008000;">◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info">[saga sage]:2013/07/20(土) 21:11:21.46 ID:tvpnfxwi0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> アバクーゾは焦った。さすがに鋏が飛んでくるとは思ってもいなかったからだ。<br /><br /> 物理は良いが斬られるのはダメだ。そういうのは相方の専門だ。<br /><br /> 空中を執拗に追いかけてきながら舞う鋏を何とか回避しながらアバクーゾは全力疾走した。<br /><br /> しかし、真後ろから何かが高速で接近していた。<br /><br /> 靴に能力を使い、飛行した涼が追いかけてきていたのだ。<br /><br /> 今までそんな発想もなかったのに必死に追いかける方法を模索した結果、靴に能力を使うという発想が生まれたのだ。<br /><br /> 怒りのパワーってすごい。<br /><br /> その後ろをあずきが追いかけているがアバクーゾには涼しか目に入っていない。<br /><br /> 「逃げられると思ったか…!」<br /><br /> 「あ!?あばくぞーっ!」<br /><br /> 何なんだコイツは。怒らせちゃいけないタイプだったか。<br /><br /> 取りあえず振り切るまで全力での鬼ごっこが始まった。</dd> <dt id="a543">543 : <span class="name" style="color:#008000;">◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info">[saga sage]:2013/07/20(土) 21:12:06.15 ID:tvpnfxwi0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「涼さーん?どこー?」<br /><br /> あずきは涼からはぐれてしまった。今回はさすがにあっちが悪いから怒られることはないだろうが…今自分がいる場所さえ分からない。<br /><br /> 「どうしよう…」<br /><br /> 「はんてーん!」<br /><br /> 「ん?」<br /><br /> どことなくさっきの毛むくじゃらと似た雰囲気を持つ茶色い怪人が、道を歩いていた。<br /><br /> 「きゃーかわいいー!」<br /><br /> 「はーんてーん!」<br /><br /> 「オラ!邪魔だキモキャラ!」<br /><br /> 「はん?!」<br /><br /> そこに少女が笑いながら駆け寄り、何故か罵って帰って行った。</dd> <dt id="a544">544 : <span class="name" style="color:#008000;">◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info">[saga sage]:2013/07/20(土) 21:12:36.83 ID:tvpnfxwi0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> (あの怪人のお仲間なら、居場所分かるかなー?)<br /><br /> 涼はあの怪人を追いかけているのだからそっちの居場所が分かればいい。<br /><br /> それにあの茶色いのは人を襲っているようには見えなかった。<br /><br /> 「あのー?」<br /><br /> 「はーん?」<br /><br /> 「けむくじゃらの怪人さんが知り合いにいませんかー?」<br /><br /> 「はん!?」<br /><br /> コイツは何を言っている?アバクーゾに何かあったのか?<br /><br /> 「あ、会話できない感じかな?…どうしよう」<br /><br /> そもそも無警戒に怪人に怪人と分かって話しかけてくるはずがない。罠がある。コイツは危険だ。そうハンテーンは考えた。</dd> <dt id="a545">545 : <span class="name" style="color:#008000;">◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info">[saga sage]:2013/07/20(土) 21:13:16.60 ID:tvpnfxwi0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「はーん!」<br /><br /> 「きゃあ!?」<br /><br /> 毛針が容赦なくあずきに襲い掛かった。<br /><br /> 「…和服はやっぱり時代遅れ…この時代、やっぱり洋服よ…」<br /><br /> 「はーんてーん♪」<br /><br /> 暗い性格の洋服好きになってしまったあずきを見て、ハンテーンはスタコラサッサと逃げていった。</dd> <dt id="a546">546 : <span class="name" style="color:#008000;">◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info">[saga sage]:2013/07/20(土) 21:14:30.28 ID:tvpnfxwi0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 以上です。反転って難しいね…<br /> 涼さんは激おこぷんぷん丸状態ですが、振り切ったことにしても追跡中にしてもいいかと。</dd> </dl><p> </p> <dl><dt id="a551">551 : <span class="name" style="color:#008000;">◆hCBYv06tno</span> <span class="info">[sage]:2013/07/22(月) 10:20:12.10 ID:y6gkJJkb0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 投下します<br /><br /> イベント設定おかりします</dd> <dt id="a554">554 : <span class="name" style="color:#008000;">◆hCBYv06tno</span> <span class="info">[saga]:2013/07/22(月) 10:38:20.49 ID:y6gkJJkb0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> とある平日の朝<br /><br /> 川島瑞樹---レヴィアタンは、人間としての生活として、いつものように教師として学校へ向かっていた。<br /><br /> 瑞樹(……面倒くさいわね)<br /><br /> そう思いながら、立ち止まり、前方の光景を見ていた。<br /><br /> それは……</dd> <dt id="a555">555 : <span class="name" style="color:#008000;">◆hCBYv06tno</span> <span class="info">[saga]:2013/07/22(月) 10:39:34.68 ID:y6gkJJkb0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 『あっばくぞー』<br /><br /> 通行人A「小学生は最高だぜー!!盗撮サイコー!!!!」<br /><br /> 通行人B「たくみんに踏まれたい!むしろ虫をみるような目で見てもらいたい!!」<br /><br /> 通行人C「夜道で全裸で走るのサイコー!!!!」<br /><br /> 加蓮「16歳になって始めて友達できて、交換ノートとかお泊まり会とかできるか楽しみで最近夜も寝られない!!入院してた時からやりたい事考えたノートは机の引き出しの中にある!!」<br /><br /> ふかふかの毛におおわれた獣人が、次々と通行人に触っていっては、触られた人達は何かを暴露していた。<br /><br /> 暴露した人達は頭を抱えていて、内二人は小さい婦警さんに連行されていったが……</dd> <dt id="a556">556 : <span class="name" style="color:#008000;">◆hCBYv06tno</span> <span class="info">[saga]:2013/07/22(月) 10:40:46.97 ID:y6gkJJkb0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 瑞樹(アレに触れられたら秘密を喋ってしまうのね。わかるわ)<br /><br /> 瑞樹(嫉妬の証を使えば、あの光景を見たからあの能力は私には効かないわ)<br /><br /> 瑞樹(けど……こんなのでそれを使ったらアイツの部下に居場所がばれてしまうわね。同じ理由で私自身がアレを攻撃するのもできないわね。こんな人通りの多い所で能力者でもない川島瑞樹という人間があの怪人を攻撃をしたら、怪しいわ)<br /><br /> 人々の秘密を暴露させて、喜んでる怪人を見ながら彼女は思考する。</dd> <dt id="a557">557 : <span class="name" style="color:#008000;">◆hCBYv06tno</span> <span class="info">[saga]:2013/07/22(月) 10:41:47.94 ID:y6gkJJkb0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 瑞樹(だからといって、受けてもダメね。もし私の正体をバラすような事や計画の事を言ってしまったらそれこそ今までのが水の泡になるわ)<br /><br /> そして出た答えはこの場から急いで立ち去るだ。<br /><br /> 幸い、あの怪人は喜んでいてこちらには気づいてない。<br /><br /> なら、今のうち逃げるのみ。<br /><br /> そう思い、来た道を戻ろうと走りだした。</dd> <dt id="a558">558 : <span class="name" style="color:#008000;">◆hCBYv06tno</span> <span class="info">[saga]:2013/07/22(月) 10:43:59.86 ID:y6gkJJkb0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 『あば?あばくぞー!!』<br /><br /> 瑞樹「!?」<br /><br /> だが、怪人は逃げようとする彼女を見て<br /><br /> あ、コイツバラされたくない秘密あるな。やっちゃうかー<br /><br /> って軽いノリで、向かって来た。<br /><br /> 瑞樹(くっ…仕方ないわ)<br /><br /> 走りながら後ろをチラ見した彼女の服の袖からコッソリと一匹の蛇が地面をはっていき<br /><br /> 『あば!?』<br /><br /> 追いかけて来た怪人の足に絡みつき、足を崩した。<br /><br /> 追いかけようと猛スピードで走って来たせいもあり、壮大に転けてしまった。<br /><br /> 常日頃、保険用に何匹か分身の蛇を仕込んでいたのだ。<br /><br /> コレなら大きな魔術を使わないかぎり、自分の存在がばれないようにかつ怪しまれずに自衛はできるだろうし、この光景ははたから見れば怪人が蛇に絡まれて、勝手に転けたようにしかみえない。<br /><br /> そのまま、彼女は逃げ出した。</dd> <dt id="a559">559 : <span class="name" style="color:#008000;">◆hCBYv06tno</span> <span class="info">[saga]:2013/07/22(月) 10:45:27.21 ID:y6gkJJkb0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> だが、彼女は気づくべきだった。<br /><br /> アバクーゾの能力は触れたら効いてしまう事。<br /><br /> 暴露するのは自分の隠している恥ずかしい秘密。<br /><br /> そして、それが≪分身≫の蛇にも効いてしまう事を………</dd> <dt id="a560">560 : <span class="name" style="color:#008000;">◆hCBYv06tno</span> <span class="info">[saga]:2013/07/22(月) 10:46:36.85 ID:y6gkJJkb0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /> 「寝る前に、昔から大事にしているぬいぐるみのサークンとキバタンを抱きしめながら寝てるわ!!!」<br /><br /><br /><br /><br /><br /><br />  </dd> <dt id="a561">561 : <span class="name" style="color:#008000;">◆hCBYv06tno</span> <span class="info">[saga]:2013/07/22(月) 10:48:55.09 ID:y6gkJJkb0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> この日、川島瑞樹は学校を休んだ。<br /><br /> 理由は体調不良だ。<br /><br /> だが……実際の理由は魔界の時から、治そうとしてもどうしても治らなかった癖を自分が大声で叫んでしまった事。<br /><br /> それにより、恥ずかしさの余り家に帰って、悶えてしまっているのだが……<br /><br /> そして、そのぬいぐるみの名前の由来が、憧れを抱いていて、今は憎しみと妬みを抱いている二人からとったものなのだが……それを知る者は多分いないだろう。<br /><br /> 終わり<br /><br /><br /> 余談だが、そのあと怪人を追いかけるカースがいたとかいないとか…</dd> <dt id="a562">562 : <span class="name" style="color:#008000;">◆hCBYv06tno</span> <span class="info">[saga]:2013/07/22(月) 10:52:32.53 ID:y6gkJJkb0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">以上です<br /><br /> 最近、悪巧み中のkwsmsnにたまにはギャグっぽいのをさせたかったのに……どうしてこうなった?<br /><br /> そして……あの年でぬいぐるみ抱きながら寝てるkwsmsn。わかるわね?</dd> </dl><p> </p> <dl><dt id="a569">569 : <span class="name" style="color:#008000;">◆3Y/5nAqmZM</span> <span class="info">[saga sage]:2013/07/22(月) 15:36:00.95 ID:O3XfpYaDo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 本音と反転が盛り上がっている中、投下するよー!<br /> 麗奈サマとイルミナティをお借りしておりますー</dd> <dt id="a570">570 : <span class="name" style="color:#008000;">◆3Y/5nAqmZM</span> <span class="info">[saga sage]:2013/07/22(月) 15:36:50.03 ID:O3XfpYaDo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 小関麗奈は、後悔していた。慣れない事などするものではないと。<br /><br /><br /> 「……もういっぺん聞くわよ?アンタ、名前は?」<br /><br /> 「こずえはー……こずえだよー?こずえはねー……おにんぎょうさんなのー……」<br /><br /> 「お人形さん、って何よ……苗字は?」<br /><br /> 「んー……みょうじー……?」<br /><br /> 「……はぁ、もういいわ。で、アンタどっから来たの?」<br /><br /> 「……こずえはねー……ここじゃないところからー……きたんだってー」<br /><br /> 「……その『ここじゃないところ』がどこかって聞いてんのよ」<br /><br /> 「ここじゃないところはー……ここじゃないところだよー……?」<br /><br /> 「……だぁぁぁもう、埒が明かない!!」</dd> <dt id="a572">572 : <span class="name" style="color:#008000;">◆3Y/5nAqmZM</span> <span class="info">[saga sage]:2013/07/22(月) 15:37:21.21 ID:O3XfpYaDo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 学校帰りにたまたまその少女を見かけた。十歳にもならないだろうか、とても小柄なその少女は、あっちへふらふら、こっちへきょろきょろ、たった一人で歩き回っていた。<br /><br /> どこからどう見ても迷子の女の子、普段の麗奈ならば素通りしていただろう。だが、何故だかその日は、なんとなく声を掛けてやってもいいか、と思ってしまった。<br /><br /> しかし、何度聞いてみても「名前はこずえ」「ここじゃないところから来た」以外の情報がとんと出てこない。<br /><br /> 小さな子供の相手をするのが得意ではない麗奈にしては粘った方だが、そろそろ限界を感じ始めていた。<br /><br /> 「ハァ……もうとっとと交番連れて行こ。っていうか、最初からそうしてりゃ良かったのよ」<br /><br /> 「こうばんー……?」<br /><br /> 「オマワリが居る所よ。迷子の親捜し位ならやってくれるでしょ」<br /><br /> 「んー……まいごー……?」<br /><br /> 「なにきょとんとした顔してんのよ、アンタよアンタ」<br /><br /> 「こずえー……?こずえ、まいごじゃないよー……?」<br /><br /> 「迷子じゃない、って……じゃあアンタ、一人で何してたのよ?」<br /><br /> 「んー……こずえねー……かくれんぼしてたのー……」<br /><br /> 「かくれんぼ、って……」<br /><br /> あっちこっちふらふら歩きまわっていてかくれんぼも何もあるものか、とツッコミを入れようとした、その時である。</dd> <dt id="a573">573 : <span class="name" style="color:#008000;">◆3Y/5nAqmZM</span> <span class="info">[saga sage]:2013/07/22(月) 15:38:01.99 ID:O3XfpYaDo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 『クワセロォ……クワセロォォォォオ!!』<br /><br /> 「っ、カース……ッ!?」<br /><br /> 間の悪いことに、カースと出くわしてしまった。<br /><br /> (何だってこんな時にッ…!コイツの前で変身するワケにもいかないし……)<br /><br /> 実際はルシファーが魔界へ連れ戻されたせいで麗奈は力を失っているのだが、当人はまだそのことに気づいていない。<br /><br /> どうにか隙を窺って逃げるか、癪に障るがヒーローの助けを待つしかないか。<br /><br /> 「……やー、なの……」<br /><br /> 逡巡する麗奈の手を、こずえがぎゅっと握った。<br /><br /> 「……こっちきたら、いやなのー……!」<br /><br /> そして、こずえがそう声を上げた、次の瞬間。<br /><br /><br /> 「……えっ?」<br /><br /> 麗奈とこずえの前から、カースの姿は消え去っていた。</dd> <dt id="a574">574 : <span class="name" style="color:#008000;">◆3Y/5nAqmZM</span> <span class="info">[saga sage]:2013/07/22(月) 15:38:56.13 ID:O3XfpYaDo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> いや、その表現は正確ではない。<br /><br /> 「……ちょっと、どこよここ……?」<br /><br /> 正しくは、『麗奈とこずえが、カースの前から姿を消した』のである。二人の周囲の景色は、先ほどまで立っていた場所とは全く別物になっていた。<br /><br /> 「かくれんぼ、って、もしかしてさっきのカースから逃げてたってこと……?」<br /><br /> 景色が切り替わる前、こずえは「こっちに来るな」とカースに言い放っていたはずだ。<br /><br /> 「んー……ちがうよー?さっきの、うにょーってしたのはー……こっちきたらやなのー……」<br /><br /> 「…………」<br /><br /> 駄目だ、まるで意志の疎通ができない。子供ってこんなに話するの難しい相手だったっけ、と麗奈は頭を抱える。<br /><br /> 「……じゃあー、こずえ、もういくねー……」<br /><br /> 「え?あ、ちょっと……」<br /><br /> そう一言だけ残して、いつの間にか繋いだ手を離していたこずえは、ばいばい、と手を振りながらとことこ歩き去ってしまった。<br /><br /> 色々な事が一度に起こりすぎて茫然としていた麗奈は、それを追うことも忘れてしばらくぽかんと立ち尽くしていた。<br /><br /> 「……いや、ちょっと、マジで待ちなさい!結局ここはどこなのよッ!こら、戻ってこいこずえーッ!!」<br /><br /> しばらく周囲を歩きまわり、やっとこさ見つけた案内板を見てみれば二つ隣の町。<br /><br /> その日、麗奈が家に帰れたのはとっぷりと日の暮れた頃になってしまったトカ。</dd> <dt id="a575">575 : <span class="name" style="color:#008000;">◆3Y/5nAqmZM</span> <span class="info">[saga sage]:2013/07/22(月) 15:39:52.02 ID:O3XfpYaDo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「で、まーだ見つかんないカンジ?」<br /><br /> 「……申し訳ありません。監視体制は整えていたはずなのですが」<br /><br /> 「いーよいーよ、世界一つヒョイっと飛び越えちゃうようなトンデモちゃん相手だし、そのうち逃げちゃうとは思ってたから」<br /><br /> 「まるでその場から消滅したかのように魔力を検知できなくなった事を考えると、やはり別の世界へ転移したのでしょうか」<br /><br /> 「そう見せかけてるだけじゃない?消えたワケじゃなくて一時的に隠したとか。そうやってこっちの目をくらますつもりなんだろーね。<br />  ま、あんだけの膨大な魔力、そうそう長いこと隠しきれるもんでもないっしょ。別にこれからのことに必須ってワケでもないし、気長に探せばオッケーってことで」<br /><br /> 「了解しました。隠蔽魔術の痕跡が無いかを中心に捜索してみます」<br /><br /> 「ん、がーんばってねー」<br /><br /><br /> 「……まーでも、ここまで早く逃げられるとはねー。よっぽど無理やり起こされたのがぉこだったのかにゃー?」<br /><br /> 「ま、どこまで行ったのかは知んないけどサ。ゆいから簡単に逃げられるとは思わない方がいいよー……」</dd> <dt id="a576">576 : <span class="name" style="color:#008000;">◆3Y/5nAqmZM</span> <span class="info">[saga sage]:2013/07/22(月) 15:40:19.66 ID:O3XfpYaDo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br /><br /><br /> 「『妖精の秘宝』ちゃん♪」<br /><br /><br />  </dd> <dt id="a577">577 :<span class="name" style="color:#008000;"><b>@設定</b> ◆3Y/5nAqmZM</span> <span class="info">[saga sage]:2013/07/22(月) 15:41:45.44 ID:O3XfpYaDo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> こずえ(??)<br /><br /> 属性:自立型マジックアイテム<br /> 能力:未知数(大部分は封印中)<br /><br /> 唯/バアルによって強制的に覚醒させられた『妖精の秘宝』。彼女らに使われることを良しとせず、イルミナティから逃げ出してきた。<br /> その際、捜索の目を撹乱させるために保有する魔力と能力の大部分を自ら封印した。現在使用できる能力は『傷の回復』と『テレポート』のみ。<br /> 強力な封印術を使用した反動で身体つきや思考能力が子供と同等になっており、自らを『おにんぎょうさん』と称する。</dd> <dt id="a578">578 : <span class="name" style="color:#008000;">◆3Y/5nAqmZM</span> <span class="info">[saga sage]:2013/07/22(月) 15:42:56.25 ID:O3XfpYaDo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ビビッと来たので新キャラで早速やらかしちまいました(テヘペロ</dd> </dl><p> </p> <dl><dt id="a482">482 : <span class="name" style="color:#008000;">◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info">[saga sage]:2013/07/20(土) 00:56:20.28 ID:tvpnfxwi0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> キヨラさんと捕まった大罪の悪魔達を投下します</dd> <dt id="a589">589 : <span class="name" style="color:#008000;">◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info">[sage]:2013/07/22(月) 19:10:45.95 ID:D9dekgl+0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> キヨラは魔界更生施設の職員である。<br /><br /> 職員達は皮肉を込めて『魔界の天使』と呼ばれる。…決して天界と因縁があるわけではないのだが。<br /><br /> 何故なら彼女を含めた更生施設の職員たちには、全能紳が与えたとされる職員の証というべき持ち物があるからだ。<br /><br /> それは全能紳が決めた罪と善行が個人別に記される裁きのカルテ。その能力は2つある。<br /><br /> 「いやだ!二回も死にたくねええええええ!」<br /><br /> 「罪人・○○。貴様には『人殺しの罪』『騙した罪』『神を冒涜した罪』『複数の女性との関係を持った罪』等、許しがたい罪を犯した。」<br /><br /> 「裁きのカルテは貴様に死刑の判決を下したのだ。」<br /><br /> カルテには今叫んでいる彼の写真。そこに大きく×マークが記されている。<br /><br /> 機能その1.すでに捕まった・死んだ魂に近づけるとその対象の罪と死刑判決・刑期の確認。<br /><br /> 「お前の処刑人はキヨラだ!…頼んだぞ。」<br /><br /> 「お任せください。」<br /><br /> メスを杖のように構えると、キヨラは呪文を唱える。<br /><br /> 『汝の悪行、魂の死によって罰せられる。処刑器具の名は『ファラリスの雄牛』!天界の全能神に生まれたことを詫びて死になさい!』<br /><br /> 罪人の真横に青銅のような物で作られた牛が召喚される。<br /><br /> 背中の扉が開き、中から黒い手が溢れ出し、罪人を中に連れ込み、鍵をかける。<br /><br /> そして牛の真下に炎が燃え上がった。<br /><br /> …あとはお察しください。</dd> <dt id="a590">590 : <span class="name" style="color:#008000;">◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info">[sage]:2013/07/22(月) 19:11:16.74 ID:D9dekgl+0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 職員達は朝の処刑を終え、食堂で食事をとっていた。<br /><br /> 「キヨラさん、お疲れ様です。」<br /><br /> 「今日の処刑もいい感じでしたねぇ。ファラリスの雄牛はやっぱり悲鳴が醍醐味ですし!」<br /><br /> 「ふふ、そうねぇ。」<br /><br /> 食事はいたって普通のもの。トカゲや虫を食べたりはしない。<br /><br /> さすがに人間界とは食材が違うが、似たようなものが作られている。<br /><br /> 「やあやあ、皆さん。今日も頑張っていきましょうか。」<br /><br /> 新聞を読みながら男性職員が話しかけてくる。<br /><br /> 一見まともに見える彼も、裏ルートで仕入れているというよく分からない新聞を毎日読んでいる。<br /><br /> そしてそこに載っていた、名前もわからない堕天使のブレまくりの写真に一目惚れしてしまい、毎日彼女をどう処刑するかばかり考えている。<br /><br /> 新聞を読む意味も、彼女の情報がないかと探すことになってしまったらしい。<br /><br /> キヨラ達は堕天使の写真など全く興味がないのだが。</dd> <dt id="a591">591 : <span class="name" style="color:#008000;">◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info">[sage]:2013/07/22(月) 19:11:46.72 ID:D9dekgl+0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 食事を済ませた後、施設の裏庭にキヨラはやってきていた。<br /><br /> 「ベルフェゴールちゃん、ルシファーちゃん、お仕事の調子はどう?」<br /><br /> 「…ハイ、オシゴトシテマス」<br /><br /> 「…ちゃんとやってますよぉ?」<br /><br /> 少女の姿のベルフェゴールと、怪物の姿のルシファーがひたすら穴を掘っては埋める作業をしていた。<br /><br /> 最近はやっと敬語が身についてきたというところか。いや、ベルフェゴールはまだ敬語がぎこちない。<br /><br /> ちなみに…ルシファーには『人間界の崩壊を望んだ罪』『脱走を企んだ罪』が追加されていた。<br /><br /> 働くことを喜びとせずに余計な事を考えれば罪となり、刑期は伸びるばかり。ここはそういう仕組みなのである。<br /><br /> 「お疲れ様です♪やっぱり体がない魂の状態だとこれしかすることが無いのよね…。」<br /><br /> 「…じゃあ体を得たらどういうことさせられるのさ…」<br /><br /> 「大半の子は、掃除とか洗濯とか…悪魔の召使いになる修業をするのよ♪…ただの召使いじゃないんだけどね。お給料をくれるのもご主人様の気分次第だし…。」<br /><br /> (そりゃ20時間労働だもんね…絶対召使いじゃすまないよ)<br /><br /> 「ということで!職人さんが特注品の大罪の悪魔さん用の体を作ってくれたので入ってくださいね!」<br /><br /> 袋から…山羊・熊・ライオン・犬・狐の小さなぬいぐるみを取り出す。<br /><br /> 「そぉれ♪」<br /><br /> 熊とライオンのぬいぐるみを掲げると、二人の魂は吸い込まれてしまった。<br /><br /> 「気分はどう?」<br /><br /> 「…最悪…というかなんで熊?…ですか?」<br /><br /> 「可愛くないですよぉ…これじゃあ大罪の悪魔(笑)ですよぉ…」<br /><br /> それは魂を閉じ込める檻。痛覚が魂にリンクされており、ぬいぐるみのような体なのに痛いときは痛い。<br /><br /> しかし素材は魔界で最も強い防具の素材の一つとされている皮で作られており、魔法にはかなり耐性がある。…物理に関しては人並みだが。<br /><br /> 万が一破損しても縫えば回復したのと同じ効果を得る。<br /><br /> 「大丈夫そうね♪これでみんなと一緒に…」<br /><br /> その時、放送が鳴り響いた。<br /><br /> 『今すぐ職員は全員会議室へ集まるように!繰り返す、今すぐ職員は会議室に集まるように!』<br /><br /> 呼び出しだ。それもかなり緊急事態のように思える。<br /><br /> 「…二人とも取りあえず穴掘り続けててね♪…やらなかったらすぐわかるから…うふふ♪」<br /><br /> 「!?」<br /><br /> 「は、はい…」</dd> <dt id="a592">592 : <span class="name" style="color:#008000;">◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info">[sage]:2013/07/22(月) 19:13:38.21 ID:D9dekgl+0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 会議室に全員が集まると、施設長は口を開いた。<br /><br /> 「全能紳によってカルテが更新された。アップデート内容は罪の追加だ。」<br /><br /> 全能紳によるカルテの更新。確かに呼び出されるのも無理はない。<br /><br /> 「そして、そのアップデートにより追加された罪の一つ。『実行可能な滅亡を企んだ罪』。これに該当する者が数名いる。」<br /><br /> 「え…滅亡ですか?」<br /><br /> 「それじゃあ…お仕事がなくなるじゃないですかぁ!」<br /><br /> 「それは嫌だな…」<br /><br /> ざわざわと、職員が騒めく。仕事がなくなることは生きがいが無くなる事。一大事な問題だ。<br /><br /> 機能その2.罪の内訳人数と一部データ回覧。<br /><br /> これを使う職員はあまりいない。罪が追加された時に施設長がみたり、暇なときに見る趣味を持っているような奴らが見るのだ。<br /><br /> 名前も顔もわからないけれど、犯した罪の人数と、その罪を犯した者の他の罪を確認できる検索機能のような物。<br /><br /> その機能経由でカルテを見ても顔写真は真っ黒。名前欄等は真っ白。罪の内容と死刑判決の×マークだけが分かる。<br /><br /> 『嘘をついた罪』のレベルでは役に立たない。あまりにも該当者が多いから。<br /><br /> けれど例えば『堕天した罪』を調べれば堕天使が何人いるか分かる。『カースを生み出した罪』なら大罪の悪魔が出るだろう。…その程度の機能。<br /><br /> 朝の堕天使に惚れた職員はその堕天使がそれなりの人数がいるカルテからどれが愛しの堕天使のカルテか推理しているらしい。<br /><br /> しかし、キヨラはそんな機能、全く使ったことも無いし興味もなかった。</dd> <dt id="a593">593 : <span class="name" style="color:#008000;">◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info">[sage]:2013/07/22(月) 19:14:56.81 ID:D9dekgl+0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> だが『実行可能な滅亡を企んだ罪』…それを犯した者が数名もいるとなれば騒めくのも無理はなかった。<br /><br /> 何故ならカルテに間違いはないから。実行可能な力を持つ者が、世界の滅亡を企んでいる。その事実が実際にあるのだから。<br /><br /> 「…人間界にしろ魔界にしろ天界にしろ…滅亡するのはまずい。輪廻の理が崩れる。」<br /><br /> 「そこで、最も優秀な職員であるキヨラに、その危険を排除してもらいたい。」<br /><br /> 「わ、私に…ですか?」<br /><br /> 「他の罪を見るに、人間界で行動しているのは分かる。そしてきっと大事を起こすだろう。そして…それをヒーローという者達が討伐しようとするだろう。」<br /><br /> 「その時にキヨラ、君にはそのヒーローたちの手助けという形でその重罪人を倒してもらいたい。」<br /><br /> 「危険な任務だ。誰が重罪人かもわからない。潜伏する必要性もある。…それでもやって欲しいんだ。」<br /><br /> 「…ヒーローに倒させれば罪に問われることも無い。あくまで補助をすればいい。…やってくれるか?」<br /><br /> 一呼吸おいて、キヨラはいつもの笑顔で答えた。<br /><br /> 「お任せください。」</dd> <dt id="a594">594 : <span class="name" style="color:#008000;">◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info">[sage]:2013/07/22(月) 19:15:45.75 ID:D9dekgl+0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 人間界。街中にキヨラは居た。<br /><br /> 柳清良。それがここでの名前。<br /><br /> 清楚な服にオシャレなバッグ。しっかり普通の女性のように見える。<br /><br /> …その両脇に二体の動くぬいぐるみが無ければ。<br /><br /> …まぁ「ぬいぐるみを使う能力者なんだろう」で済むから便利なものである。<br /><br /> 「なんでアタシ達まで連れてこられるのさ!」<br /><br /> 熊のぬいぐるみのベルフェゴールが文句を言うも、笑顔で窘められる。<br /><br /> 「貴方たちは私が担当なんだから当たり前でしょう?それに終われば一世紀分の刑期免除でしょう?」<br /><br /> 「そうだけど…ですけどさー経験値ゼロの呪いの装備をしているアタシ達じゃ戦力にならないでしょう?」<br /><br /> 「能力の制限はある程度解いたじゃない。情報収集能力だって今までのデータも使えるんだし、わがまま言っちゃダメよ。」<br /><br /> 「えー…」<br /><br /> キヨラの情報を見ようとしてもできない。逃げようとしても次の瞬間には頭が飛んでいる。<br /><br /> …ベルフェゴールはどうしろととしか思えなかった。<br /><br /> ライオンのぬいぐるみのルシファーは、どこからか手鏡を取り出すと雪菜の姿へ変化した。<br /><br /> 「ちゃんと変身できますねぇ…感覚的に数分程度かしらぁ。」<br /><br /> 「レベル1ってことはMPもほとんど無いからねぇ…」</dd> <dt id="a595">595 : <span class="name" style="color:#008000;">◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info">[sage]:2013/07/22(月) 19:16:13.21 ID:D9dekgl+0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> そのままショーウィンドウを見つめていると、背後に黒い泥が生まれたのが見えた。<br /><br /> 『ドウシテドウシテドウシテエエエエ!』<br /><br /> 『メンドクサイヨォ…ハタラキタクナイヨォ』<br /><br /> 「あら?」<br /><br /> 「高慢のカース…操作はできないわねぇ…なんか腹が立たない?」<br /><br /> 「あー怠惰もだ。操作できないとかマジ…?キヨラさん、どうするのさ?」<br /><br /> 「…」<br /><br /> バッグから明らかに入らないであろうサイズの医療用ノコギリを取り出すと、にっこりほほ笑んだ。<br /><br /> 「悪い子はオシオキしないと♪」</dd> <dt id="a596">596 : <span class="name" style="color:#008000;">◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info">[sage]:2013/07/22(月) 19:16:51.35 ID:D9dekgl+0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ふわりとキヨラの周りにはメスが浮かび、指で示したカースに一直線に飛んでいく。<br /><br /> 『イウトオリニシヤガレェ!』<br /><br /> ドロドロの腕を振り回して高慢のカースがメスを受け止める。<br /><br /> 『汝、我が魔の力を受け、呪われよ。その呪いの名は【死の癒し】!毒を薬に、薬を毒に!呪われた哀れな者となり、性質よ反転せよ!』<br /><br /> キヨラの右手に持っていたメスから黒い光が怠惰のカースに飛び、呪う。<br /><br /> 『光よ!大いなる我が力に従い、その優しい微笑みのような力で我が示す者を癒せ!ヒーリング!』<br /><br /> 連続で回復魔術を怠惰のカースへ発する。<br /><br /> 死の癒しの呪いによって、痛みはないのに内側から崩壊する。<br /><br /> 『ア、アア、アアアア』<br /><br /> 核が飛び出すと、その手からメスが飛び出し、貫いた。</dd> <dt id="a597">597 : <span class="name" style="color:#008000;">◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info">[sage]:2013/07/22(月) 19:17:20.28 ID:D9dekgl+0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 『ムシスルナアアアア!』<br /><br /> 「ベルフェゴールちゃん!」<br /><br /> 「ちょ!?ぎゃああああああああああああ!」<br /><br /> 『!?』<br /><br /> キヨラがベルフェゴールを高慢のカースが伸ばしてきた腕に投げる。もちろん正面衝突だ。<br /><br /> カースもさすがにそっちに気がとられる。<br /><br /> 「…余所見しちゃ駄目よ?」<br /><br /> 声はさっき立っていたところの真逆の方向から。<br /><br /> 投げた時に一個だけ軌道をずらし、背後で空中に浮かんでいたメスの上に器用に立っていた。</dd> <dt id="a598">598 : <span class="name" style="color:#008000;">◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info">[sage]:2013/07/22(月) 19:17:51.33 ID:D9dekgl+0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 次の瞬間にはさっきまで全く使っていなかったノコギリでカースを真っ二つにしていた。<br /><br /> 『ゴア、グアアアア!』<br /><br /> しかし核を砕かなければ意味がない。二つに切り裂いた体の片方が再生を始めていた。<br /><br /> …抜かりはない。<br /><br /> 『汝は悪の塊。我ら、悪は滅するのみ。処刑器具の名は『鉄の処女』!天界の全能神に生まれたことを詫びて死になさい!』<br /><br /> カースの真上に大きなサイズのその処刑器具が召喚される。<br /><br /> 棺が開き、中から無数の黒い腕が伸びてカースを中へと連れ込んだ。<br /><br /> 扉が閉まる。<br /><br /> 『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!』<br /><br /> 耳をつんざく程の音量。ルシファーは耳を覆っている。<br /><br /> 「ふぅ…。」<br /><br /> しかしキヨラは満足気な表情をしていた。</dd> <dt id="a599">599 : <span class="name" style="color:#008000;">◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info">[sage]:2013/07/22(月) 19:19:01.23 ID:D9dekgl+0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> カースに殴られ気絶したものの、すでに体は自分の能力で回復しているベルフェゴールを回収する。<br /><br /> 「…」<br /><br /> ルシファーも無言でぬいぐるみの姿に戻ると、キヨラに回収された。<br /><br /> 「…誰が重罪人かはさっぱりわかりませんし…まずは姫様やユズちゃんから探しましょうか!」<br /><br /> 「え!?あの死神に会う!?」<br /><br /> 「…ダメですか?」<br /><br /> ぬいぐるみを引き連れた女性は、そのまま人ごみへ消えていった。</dd> <dt id="a497">497 : <span class="name" style="color:#008000;">◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info">[saga sage]:2013/07/20(土) 01:09:24.42 ID:tvpnfxwi0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">情報更新<br /> キヨラ<br /> 施設長の命令を受け、人間界で暴れまわる重罪人の討伐の補助をするためにやって来た。<br /> 重罪人と戦うヒーロー達なら無償で援護します。<br /> 施設長からもらった四次元バッグからは魔法の医療器具を取り出し放題。ただし職員以外にはただのバッグである。<br /> 人間界に来るにあたって、レベルドレインは大幅に制限を受け、一人のレベルを5分だけ奪える程度に収まっている。<br /> しかし、奪ったレベルを他の誰かにその5分以内なら貸し借りできる。<br /> 罪人やその内容は決して口にしてはいけないが把握している。<br /> 自分から行くことは少ないが、売られた喧嘩は買う。<br /><br /> ベルフェゴール(ぬいぐるみ)<br /> 熊のぬいぐるみに入っているがちゃんと大罪の悪魔。<br /> その力は大幅に衰えているが消えたわけではない。<br /> 大罪の証はまだ不明。<br /> 回復が早いことが災いしているのか、キヨラさんに容赦されてない。<br /><br /> ルシファー(ぬいぐるみ)<br /> ライオンのぬいぐるみに入っているがちゃんと大罪の悪魔。<br /> その力は大幅に衰えているが消えたわけではない。<br /> 大罪の証による変身も結構劣化してしまっている模様。<br /><br /> 魔界更生施設<br /> 実力のあるドSの巣屈。殆どの職員が戦争の生き残りである。<br /> 職員は基本的に閻魔のように罪人を裁く役割や、罪人の更生をしているが、処刑人もしている。<br /> 死神と同様に天界とのつながりが深い。</dd> <dt id="a600">600 :<span class="name" style="color:#008000;"><b>@設定</b> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info">[sage]:2013/07/22(月) 19:19:37.67 ID:D9dekgl+0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 裁きのカルテ<br /> 全能紳が決めた罰と善行をした者が記録されるカルテ。<br /> 罪の判定が厳しいことに定評があり、『全能紳はいつまで知恵の実を食べる前のアダムとイヴに固執しているんだよ』とまで言われる。</dd> </dl>

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