3スレ目・その3

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3スレ目・その3」(2014/04/18 (金) 04:58:12) の最新版変更点

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<dl style="padding-top:10px;"><dt id="a410"><span class="resnum">410</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/06(土) 00:30:51.54 <span class="id">ID:ESlJSvN70</span></span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">皆さん乙です <br /> 乗るしかない、この暴食のビッグウェーブに…! <br /> 忘れがちだけどこの子も一応暴食なのよってことで投下します <br /> 最初ちょっとえげつないかも</dd> <dt id="a411"><span class="resnum">411</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY<span class="namenum"><span class="namenum">2</span></span>y<span class="namenum"><span class="namenum">1</span></span>UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/06(土) 00:31:51.57 <span class="id">ID:ESlJSvN70</span></span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ―ふむ、自動翻訳装置を埋め込んであるのか…最近の闇奴隷商の技術も上がったな…そうそう、地球人の雌はいるか? <br /> ―コイツはどうです?幼いですが見た目がよく、性奴隷などには使えるかと… <br /> ―性奴隷に使うのではないが…なかなか質がよさそうじゃないか。 <br /> ―しかし所長、幼すぎませんか?少し高くてももっと年齢の高い異星人を…いっそ個人的に誘拐しても… <br /> ―いや、こいつでいい。俺の勘だがこいつは逸材だ。おい、この娘を買う。刺青?いらん。このままでいい。実験材料だからな。 <br /><br /> ―…まさか成長させて使うとは思いませんでしたよ。 <br /> ―蘇生液の失敗作がこんな形で役に立ったな。蘇生液自体はもうフランケン娘に使ってしまったが。 <br /> ―所長、そろそろ実験用の動物を購入するべきでは? <br /> ―ああ、そうだな…この間発見された爬虫類と何らかの哺乳類は購入すべきだな。 <br /> ―…どうした?ああ、腹が減ったか。…おい、適当に食わせておけ。 <br /><br /> ―所長、この被検体が騒がしくて仕方ないのですが… <br /> ―腕を切断されたらそうなるだろう?我慢しろ。ふふ…素晴らしい再生能力だ…!私が見込んだだけはある!これなら…! <br /> ―では次は…戦闘訓練を行わなければ。 <br /> ―適当に安い猛獣を購入しておきましたから、それらと戦わせればいいかと。 <br /> ―すばらしい、すばらしいぞ地球人!すでに3体も成功している!もっとだ!もっと地球人の雌を! <br /><br /> ―○◆※×▼☆! <br /> ―◇■◎○@、◆▽△○◇※★! <br /><br /><br /> 「      ?   ?」</dd> <dt id="a412"><span class="resnum">412</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/06(土) 00:32:22.05 ID:ESlJSvN70</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">「っ!」 <br /><br /> 北条加蓮は夢を見た。あまりにも生々しい夢を。 <br /><br /> 檻の中から誰かの会話を聞き続ける夢。ずっと檻の中の視点でそこにいる夢。 <br /><br /> 夢の中の『私』は、その誰かに何かをされていて。最後には言葉が分からない程に恐怖していて。 <br /><br /> 最後に暖かい光が差し込んで。 <br /><br /> あの光…あれさえあれば生きていけるような気がして。 <br /><br /> 起きれば内容は忘れてしまうのだけれど。 <br /><br /> …最近、数日に一度はこの夢を見る。 <br /><br /> 別に日常生活の中でふと思い出すことはない。心に何かが残るだけ。 <br /><br /> …今日は特にバイトもなかったし、どこかに出かけようか。</dd> <dt id="a413">413 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/06(土) 00:32:50.90 ID:ESlJSvN70</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 街中を特に行先は決めずに歩く。前は暗く見えて仕方なかった街が、明るく見える。 <br /><br /> 街が変わったのではなく、自分が変わったから。意識を変えるだけで景色はまるで変わる。 <br /><br /> さて、どこへ行こうか。 <br /><br /> 「…あ!」 <br /><br /> 人ごみの中に彼女を見つけた。自分を救ってくれたネバーディスペアの…神谷奈緒だ。 <br /><br /> 前見た時とは違い、ギプスを付けていたりしているがすぐわかった。 <br /><br /> 「奈緒!」 <br /><br /> 「ん?…あ!加蓮か!」</dd> <dt id="a414">414 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/06(土) 00:33:49.55 ID:ESlJSvN70</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 取りあえず近くのカフェに入り、軽く話す。 <br /><br /> 「まさか奈緒に会えるとは思ってなかったよ。」 <br /><br /> 「まあ暇なときは出かけるからな…。一応悪人捜査も兼ねてるんだからな?…一応。」 <br /><br /> 「そっかーまぁ息抜きは大切だよ。」 <br /><br /> 「ところで…最近どうだ?一人暮らしって大変なんだろ?」 <br /><br /> 奈緒が問うのも無理はない。身内が一人もいない状況で成人にもなっていない少女が一人暮らしというのも大変なものである。 <br /><br /> 「うん、ちょっと大変だけど…取りあえず自分ができる事、やってみたかった事、限界までしてみたいの。だから今のところ保護とかは受けないつもり。」 <br /><br /> 「そっか。まぁ難しい事はよく分かんないけどさ、いざとなったらこっち来ればいいよ。…家族が増えるのは嬉しいし。」 <br /><br /> (『家族』…奈緒にとっての家族。) <br /><br /> 管理局から解放される前、自衛の為、一通り奈緒から能力の使い方は教わっていた。 <br /><br /> エンヴィーの時は本能のままに動かせていたはずが、浄化された後は少し動かしにくくて。 <br /><br /> 『カースは感情で泥を動かすからドロドロのまま。アタシのは…動物のイメージで動かしているんだ。そうすると泥よりも固い武器になる。多分浄化前は無意識で出来たから苦労すると思うけど。』 <br /><br /> 加蓮は翼や槍や盾、それに蛇。それが一番やりやすかった。エンヴィーの時からそれらを使っていたからだろう。 <br /><br /> その時にちょっと聞いたのは、奈緒は記憶を失っている事。きらりに浄化される以前の記憶がほとんどないそうだ。 <br /><br /> …だから、彼女にとっての家族はネバーディスペアなのだ。3人には直接は言えないそうだが。 <br /><br /> (…私にも奈緒にとってのネバーディスペアみたいな存在…きっとどこかにあるんだろうな。) <br /><br /> 半分希望のようなものだけれど。それでも思ってしまった。</dd> <dt id="a415">415 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/06(土) 00:34:46.84 ID:ESlJSvN70</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「涼さん!善哉食べたいな~」 <br /><br /> 「居候が何言ってるんだよ…飲み物買うだけだからな。」 <br /><br /> 「居候じゃないよ!ちゃんと家事やってるよ!」 <br /><br /> 「…テレビの見過ぎで光熱費倍にしたのはどこのどいつだっけ?」 <br /><br /> 「…あは、あはは…ダレデシタッケー」 <br /><br /> 聞いたことのある声が向こうから聞こえた。そちらを見ればバイト仲間の涼が和服の少女と親しげに話していた。 <br /><br /> 「知り合いか?」 <br /><br /> 「うん、同じところでバイトしてる人。」 <br /><br /> そのうちに見られている事に和服の少女が気付いたようだ。 <br /><br /> 「…あの人涼さんの知り合いさん?」 <br /><br /> 「話をそらすんじゃ…って加蓮じゃん!」 <br /><br /> お互いに気付き、席の近くにやってくる。 <br /><br /> 「友達と一緒にいたのに割り込んだみたいで悪いな…」 <br /><br /> 「いや、あたしは気にしてないよ。」 <br /><br /> 「まさかこんなところで涼に会うとは思ってなかったよ…その子は?」 <br /><br /> 「あー…親戚の子だよ。うん、親戚の子。」 <br /><br /> 「えー親戚じゃないよー?あずきは涼さんの所有物だよー。」 <br /><br /> 「…え?」 <br /><br /> 「馬鹿!そういう誤解を招く妙な発言は止めろ!」 <br /><br /> 「あ…あはは、変わった子だねー」</dd> <dt id="a416">416 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/06(土) 00:35:41.81 ID:ESlJSvN70</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「変わり者すぎて困るレベルだけどな…そっちは?」 <br /><br /> 「あたし?あたしは奈緒。加蓮の友達…だな。」 <br /><br /> 「奈緒さんなんか強そうだよねーよく分かんないけどそんな気がするの!」 <br /><br /> あずきが何気なく言う。それに内心ビクリとした。勘がいいのだろうか。 <br /><br /> 「お前は初対面の相手に何言ってるんだ…。」 <br /><br /> 「んーでもあずきの『お仲間』ではないみたいだね。ちょっとさみしー…。」 <br /><br /> その時、外の方が爆発するように騒がしくなった。外にここから見えるだけでも5体以上のカースが現れたのだ。 <br /><br /> 「逃げろ!カースが出た!急げ!」 <br /><br /> 一人の男がカフェの中の人々に避難を促す。 <br /><br /> カフェの客たちは一目散に逃げ出す。良識のある客は料金を置いていったが、基本的にこういう時は食い逃げされやすい。 <br /><br /> 奈緒はすぐに店を飛び出し、電話を取り出して連絡を取った。…お金は一応席に置いておいた。 <br /><br /> 「…夏樹、カースが複数出た!…そっちにも!?あー…わかった。できる限りのことはする。5分待たなくていいか?…うん、ありがと!」 <br /><br /> 「奈緒待って!…どうしよう、奈緒行っちゃった…」 <br /><br /> 「…大丈夫なのか?…アイツが能力者でも最近のカースはヤバイって聞くぞ?」 <br /><br /> それを聞いて思い出すのは先日、のあと共闘した時のカース。たしかに彼女の知っているカースより強かった。 <br /><br /> 「行かなきゃ、カース倒すの手伝わないと…!」 <br /><br /> 「…涼さん、あたしもお手伝いしていいかな?カースいっぱいいるよ?」 <br /><br /> あずきが涼の手を引きながら言う。 <br /><br /> 「…あ~!仕方ないな!ヒーローとかが来るまでだからな!あたし能力者だけどそこまで強くないからな!」 <br /><br /> そう言って二人の手を引いて店から飛び出した。 <br /><br /> そのそばに新たな核が生まれ落ちたのが同時でなければ恰好が付いたのに…。 <br /><br /> 「グオオオオオオオオオオオオオ!」 <br /><br /> 「イラツクゼエエエエエエエエエエエ!」 <br /><br /> 「嘘!こっちにも!?」 <br /><br /> 「邪魔しないで欲しいんだけどなー!昼間は本調子じゃないの!」 <br /><br /> 「今それを言うか!?タイミングが最悪すぎるだろ!」 <br /><br /> 取りあえず今は目の前のカースを倒すしかないようだ。 <br /><br /> あずきがどこからか取り出した裁ち鋏を強化してカースを切り、投げつける。 <br /><br /> それに涼が指示を出し、空中を泳ぐように巨大な鋏が舞う。それに続く様に加蓮も槍と盾を装備して空中へ舞い上がった。</dd> <dt id="a417">417 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/06(土) 00:36:11.24 ID:ESlJSvN70</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 同じ頃、奈緒は全速力で飛行しながらカースの気を引いていた。 <br /><br /> まだ避難していない人が居れば大変なことになる。幸い、全てのカースの気が奈緒にそれた。 <br /><br /> 「ニゲンジャネエエエエエエエエエエ!」 <br /><br /> 「コッチニコイヤアアアアアアアアア!」 <br /><br /> 無数の泥で出来た腕が掴みかかる。それを飛びつつ逃げつつ爪で切り裂いてゆく。 <br /><br /> そして聴覚と視覚をフル活用して逃げ遅れがいないか把握する。…どうやらもう大丈夫そうだ。避難慣れしている市民に感謝する。 <br /><br /> 「…ちょっとだけ本気出してやるから覚悟しな!」 <br /><br /> そう言うと同時に奈緒の背から黒い泥が飛び出し、巨大な異形の形を作り上げた。</dd> <dt id="a418">418 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/06(土) 00:37:20.90 ID:ESlJSvN70</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 奈緒の本来の戦闘スタイルは危険すぎてほとんど使われていなかった。 <br /><br /> それが今、緊急事態でさらに周囲に誰もいないことでちょっと解禁された。 <br /><br /> その戦闘スタイルは、埋め込まれた暴食の核が示すように、食らう事。 <br /><br /> カースドヒューマン等との違いは…彼女自身が食らうのではなく、彼女の中の生命体がその歪な姿を現し食らうのだ。 <br /><br /> 多眼のライオンに似た生命体が、複眼のサメのような生命体が、鋭い牙を生やした馬とも言える生命体が、彼女の『食らう』イメージなのだ。 <br /><br /> カースの踊り食い。核から離された泥は普通なら霧散して消えてしまうが、究極生命体の力と核がそれを取り込むことを可能にする。 <br /><br /> 取り込めば取り込むほど、悪夢のような歪なそれらはさらに彼女から生み出される。 <br /><br /> 棘の生えた舌の蛙が、単眼の狼が、体中に口のついた熊が、奈緒のイメージ通りに狂った姿で生まれ、食らう。 <br /><br /> 黒い泥をピカピカ光る瞳の黒い生命体が食らう。操る奈緒自身が捕食されない事の方が恐ろしい程に、狂った光景。 <br /><br /> 『食らい尽くせ』 <br /><br /> 下された命令を忠実に実行し続ける。 <br /><br /> 最後の一体を食い尽くしたところで一体から全ての核が宙に吐き出される。 <br /><br /> そして全ての異形が泥に戻り、奈緒の中に帰る。核は奈緒の左手で切り裂かれた。</dd> <dt id="a419">419 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/06(土) 00:37:48.67 ID:ESlJSvN70</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">「大丈夫か!」 <br /><br /> 次々に生まれ、3人を足止めしていたカースを切り裂いて、奈緒が戻ってくる。 <br /><br /> 「奈緒!心配したんだよ!」 <br /><br /> 「ゴメン…一応これでも正義の味方だしさ…」 <br /><br /> 「一人で無茶しないで!」 <br /><br /> 「まぁ、無事でなによりだよ。…まぁあんな状況で飛び出せるんだ。ある程度強いとは思ってたけどここまでとは…」 <br /><br /> 「あずきが最初に言った事、当たってたみたい?」 <br /><br /> ハチャメチャになってしまったが、まぁそれなりに楽しい休日だった…と思うことにした。 <br /><br /> …その日、加蓮は夢を見た。</dd> <dt id="a420">420 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/06(土) 00:38:41.58 ID:ESlJSvN70</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 『あーテステス、カレンちゃん聞こえるー?』 <br /><br /> 『…あ、気付いたみたいですね。』 <br /><br /> 『驚かないでよ。夢みたいなものなんだから、聞き流してもいいしさー正直僕らめんどくさいの嫌いだしー』 <br /><br /> 男の声と女の声だ。暗闇の中二人の声が聞こえる。 <br /><br /> 「…誰?」 <br /><br /> 『僕らはねーご主人様に取り込まれたナニカの僅かに残った意識の集合体ってヤツ。僕らが雄でこの子は雌ね。』 <br /><br /> 『…私たちの仲間となっていたカレンさんにご挨拶しに来ました。今日まで気づきませんでしたから遅れてしまい、申し訳ございません。』 <br /><br /> 「仲間?」 <br /><br /> 『一応あなたは私たちと同じようにご主人様の一部のはずなんです。例外的に血で一体化してしまったのですが。』 <br /><br /> 『改めて取り込む気もないけどねー。まぁ一部になったおかげでご主人様譲りの化け物以上の再生力をゲットできたわけですしおすしー?ようこそ人外へー!』 <br /><br /> 「血って…まさか奈緒が『ご主人様』なの?」 <br /><br /> 『そうですよ。…私たちの言葉はご主人様に聞こえないので不安でしたが、貴方とはお話できてよかったです。』 <br /><br /> 『ご主人様含めると君が二人目の人間。もっと増えてお話しできると嬉しいなー。』 <br /><br /> 「…奈緒って何者なの?」 <br /><br /> 『おや、それを聞いてしまいます?ご主人様含める我らは模倣品なんですよ。遥か昔の…人の形をし、絶望から生まれた黒を内に秘めた化け物の。』 <br /><br /> 『詳しく話知らないけど、宇宙人には割と有名な話らしいぜー?星を食う黒い怪物の童話。ブラックホールを子供に分かりやすく話すための物だと思ってたけどー』 <br /><br /> 『まぁ、光の巨人が寝てる間に抱き枕にしてるおかげか、今のところ力の暴走は起こっていませんがね。暴走したらカレンさんも危ないかもしれませんよ。』 <br /><br /> 『そうそう、それを言いに来たのだった。』 <br /><br /> 『…まあ起きれば忘れてしまうのですが。』 <br /><br /> 『そういえばそうだったなーまあ夢の中なら思い出せるし、気が向いたらお話ししようぜー』 <br /><br /> フェードアウトしていく。くすくす、けらけら笑う声が消えてゆく。 <br /><br /> そして目覚めた時、完全に夢の内容は忘れてしまっていた。</dd> <dt id="a421">421 :<span class="name" style="color:#008000;"><b>@設定</b> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/06(土) 00:39:43.83 ID:ESlJSvN70</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">闇奴隷商 <br /> 様々な星の子供や女を誘拐し、金持ちに売っている闇商人。 <br /> 表向きは宇宙では一応公認されている、異星の動物を売るペットショップをしている。 <br /> 奴隷用の刺青サービス、自動翻訳装置の埋め込み等、サービスがいい。 <br /> 様々な組織が時折人材を求めて買いに来ることも。 <br /><br /> 奈緒の中の何か <br /> 奈緒に組み込まれた遺伝子や、奈緒に生きながら食われた生命体の僅かに残った意識の集合体。礼儀正しい女性の人格と、気の抜けた喋り方の男性の人格を持つ。 <br /> 複数の意識が集まっているため、一人称が「私たち」「僕ら」。 <br /> 奈緒と会話する事は出来ないが、奈緒の血を飲んだ加蓮と夢の中で会話できる。 <br /> 奈緒の失った記憶や各生命体の記憶を保持しており、そこからさまざまな情報を掴んでいる。 <br /> 奈緒自身より奈緒の事に詳しいと言っても過言ではない。</dd> <dt id="a422">422 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/06(土) 00:41:25.42 ID:ESlJSvN70</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">以上です <br /> 暴食が一大勢力になっている… <br /> ちょっと加蓮にシリアス入れようとして上手くいかなかったかもしれない… <br /> それと宇宙人出しやすいように奴隷商に設定を入れてみたり</dd> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> </dd> <dt id="a427"><span class="resnum">427</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆I2ss/4dt7o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 17:11:18.51 ID:/V1Sb39TO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 結城晴投下しますー <br /><br /> そして、楓さん借ります</dd> <dt id="a428"><span class="resnum">428</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆I<span class="namenum">2</span>ss/<span class="namenum">4</span>dt<span class="namenum">7</span>o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 17:11:55.56 <span class="id">ID:/V1Sb39TO</span></span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">ある日の公園。 <br /><br /> そこでは子供達が元気にサッカーをしていた。 <br /><br /> それを、座りながらボーッと見てる野球帽をかぶった一人の子供がいた。 <br /><br /> 名前は結城晴。本来ならああ言う場に混ざりたいのだが、ずっと≪施設≫にいた為、混ざり方がわからないのだ。 <br /><br /> 彼女は≪OZ計画≫での実験体で、脱走者の一人である。 <br /><br /> 晴「…………楽しそうだな」 <br /><br /> 言葉とは裏腹になんか無関心そうに彼らを見ていた。</dd> <dt id="a429">429 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆I<span class="namenum">2</span>ss/<span class="namenum">4</span>dt<span class="namenum">7</span>o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 17:13:12.10 ID:/V1Sb39TO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ??「見てるだけで楽しいの?」 <br /><br /> 晴「?」プクゥー <br /><br /> ガムを膨らませながら、後ろにいる人物を見る。 <br /><br /> まるでモデルのような綺麗な女性がいた。 <br /><br /> 晴「……アンタ誰?」 <br /><br /> 楓「私は高垣楓。あなたがずっとサッカーしてるの見てるから気になっちゃったの」 <br /><br /> 晴「ふーん……」プクゥー <br /><br /> 楓「一緒に混ざらないの?」 <br /><br /> 晴「アンタには関係ないだろ?」 <br /><br /> 楓「そうね。私には関係ないわね」 <br /><br /> そう言いながら、チョコンと晴の隣で体育座りをした。</dd> <dt id="a430">430 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆I2ss/4dt7o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 17:14:14.67 ID:/V1Sb39TO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 晴「………なんで隣にくるんだよ?」 <br /><br /> 楓「それは私の勝手だから、かってー事は言わないで」 <br /><br /> 晴「……そうかよ」 <br /><br /> 楓「(スルーされた……)」(´・ω・`) <br /><br /> 晴「(訳わかんねえ奴…)」チラッ <br /><br /> 渾身のダジャレを言ったのに、スルーされてションボリしてる女性とその隣でガムを膨らませながらチラ見してる子供。 <br /><br /> なんかシュールである。</dd> <dt id="a431">431 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆I2ss/4dt7o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 17:16:29.59 ID:/V1Sb39TO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 晴「……アンタはなんでオレなんかに話しかけてくるんだ?」 <br /><br /> 少しの静寂のあと、晴は話題を切り出してみた。 <br /><br /> もしかしたら、自分や友達の追っ手ではないか? <br /><br /> そんな疑心暗鬼から聞いたのだ。 <br /><br /> 楓「うーん……。なんか気になったから」 <br /><br /> 晴「……お人好しだな。アンタ」プクゥー <br /><br /> そんなこんな緩い空気が流れていき、軽く口を開いてはそれに答え、再び沈黙が流れ、また軽く口を開けばそれに答えの繰り返しをしていた。 <br /><br /> たまに、楓が「風がふいて、風邪ひきそう」とか「滑り台で滑りたい」とか「鳥のお通りだ」とかダジャレを言っていたのは割合である。 <br /><br /> そんなこんなで、いつの間にか日は落ちてきて、サッカーをしていた子供達もいつもの間にか家へと帰って行った。</dd> <dt id="a432">432 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆I2ss/4dt7o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 17:17:50.86 ID:/V1Sb39TO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br /> 楓「あなたは帰らないの?お家の人は心配しないの?」 <br /><br /> 何処か心配そうに彼女は聞いた。 <br /><br /> 当然である。公園にはこの二人以外誰もいなく、さっきまでいた子供達は帰ったのにこの子だけ一人残っているのだから。 <br /><br /> だが、晴は無関心そうにしていた。 <br /><br /> 晴「オレは帰る家ねえし…。それに家族はオレを捨てたしな」プクゥー <br /><br /> 楓「!?」 <br /><br /> 晴の言葉に楓は唖然とした。こんな子供を親が捨てた? <br /><br /> しかも家がないって…… <br /><br /> またしばらく無言が続いた。何も言えない。</dd> <dt id="a433">433 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆I2ss/4dt7o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 17:18:36.93 ID:/V1Sb39TO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 晴「それに、オレがちょっと目を離した隙に≪友達≫も何処かいっちゃったしな。……まあ、そのうち見つけてくれると思うし、オレは気長に待つだけさ」 <br /><br /> その沈黙を破るかのように、晴は素っ気なく答えた。 <br /><br /> ---だから、オレの事は気にするな、 <br /><br /> そう言ってるようにも聞こえた。 <br /><br /> ……というか、≪友達≫はどっか行ったといってるが、実際は晴がフラってサッカーしてる子供達の所へいって先にはぐれてしまったのである。つまり先に迷子になったのは晴。 <br /> まあ、そこは一旦置いておこう。</dd> <dt id="a434">434 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆I2ss/4dt7o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 17:21:24.07 ID:/V1Sb39TO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br /> そして、意を決したように、楓は切り出した。 <br /><br /> 楓「なら、私の家に来ますか?」 <br /><br /> 晴「………はっ?」パンッ <br /><br /> その言葉に思わず、膨らませたガムを割ってしまう。 <br /> 何言ってるんだコイツ?って顔で彼女を見ていた。 <br /><br /> 楓「住む所ないのよね?なら、友達が見つかるまで泊まってきなさい?」 <br /><br /> 晴「……なんでオレがアンタの所いかなきゃならないんだよ?」 <br /><br /> 楓「ダメ?」(´・ω・`) <br /><br /> 怪訝そうな顔で楓を見る晴だったが、なんだか道に捨てられた子犬のような感じで見つめる彼女に根負けしたのか、軽く息をはいた。 <br /><br /> 晴「………わかったよ。アンタ面白いから友達がくるまでいてやるよ」 <br /><br /> 楓「決まりね。じゃあ、行きましょうか。……えっと」 <br /><br /> どこか嬉しそうにしながら、この子の名前を言おうと思ったが、そういえば自分は名前を聞いてなかった事に気づき困っていた。 <br /><br /> 晴「……オレは結城晴だ」 <br /><br /> 楓を「晴くんね。じゃあ、行きましょう」 <br /><br /> そう言いながら、晴に手を差し出した。 <br /><br /> それに、晴は少し悩みながらも右手でそれを握り、ついて行くのであった。</dd> <dt id="a435">435 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆I2ss/4dt7o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 17:22:10.01 ID:/V1Sb39TO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 余談だが、お風呂に入るまで楓は晴を男の子だと思っていたのは別の話である。 <br /><br /><br /> 終わり</dd> <dt id="a436">436 :<span class="name" style="color:#008000;"><b>@設定</b> ◆I2ss/4dt7o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 17:24:19.01 ID:/V1Sb39TO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br /> 結城晴(12) <br /><br /> 職業・元実験体 <br /> 属性・OZ≪ティン≫適合者 <br /> 能力・左腕強化、電撃、傷の自己修復。 <br /><br /> 何処かぶっきらぼうなOZ適合者。 <br /><br /> 性格は男の子っぽく、なかなか感情を表にださない。 <br /><br /> 普段は普通の人間だが、≪ティン≫を発動すると、左腕が一回り大きくなり、青っぽい色のオノのような異形の腕へと変化。それは金属でできている。 <br /><br /> この状態を第一段階と呼び、彼女の場合は、左腕があった部分に≪OZ≫を移植したことにより、この姿である。 <br /> そして、この姿の時はオノのような腕の周りに電撃が付加されており、全力で地面に振り落とすと雷が落ちたような威力だ。 <br /><br /> 第二段階になると、まるで全身が金属でできたロボットのような異形の巨人の姿になるが、この姿にはならないようにしている。 <br /><br /> 彼女は産まれた時から左腕が欠損しており、異星の技術を取り入れた人工的な能力者を創り上げ、兵士として軍事利用する計画の為に、売られた犠牲者だった。 <br /> OZ計画の実験体の最年少だが、4人の中で実験体になってた時期が1番長い。 <br /> だから、ほとんど施設の中で慣れてしまっていた。 <br /> だけど、一緒にいた3人達と外に出たいから脱走した。 <br /><br /> 現在、他の三人が見つかるまで楓さんのお世話になってる。</dd> <dt id="a437">437 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆I2ss/4dt7o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 17:27:01.45 <span class="id">ID:/V1Sb39TO</span></span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">以上です。 <br /><br /> あわわ……口調が難しいよ…… <br /><br /> なんか変な所ありましたらお願いします。 <br /><br /> 晴ちゃんカワイイよ晴ちゃん</dd> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> </dd> <dt id="a441"><span class="resnum">441</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 19:42:34.67 <span class="id">ID:yYG9O9X6o</span></span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> オズはARMSっぽいなぁって思ったらARMSだった <br /> くれてやる4連見開きやるんです? <br /><br /> 荒木先生借りて泉プラスヘレン投下</dd> <dt id="a442"><span class="resnum">442</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB<span class="namenum">8</span>Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 19:43:08.92 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 泉(さて……とりあえずはエネルギー充填だよね。ワードと、私自身の) <br /><br /> 泉「はぁ……お腹減ったな。どうしよう」 <br /><br /> 泉(この時代の紙幣や硬貨なんて持ってないし……) <br /><br /> 泉(……奪う? 同じ人間からそんなことはしたくないし、しちゃダメに決まってる) <br /><br /> 泉(それに……あの警官の話が本当なら下手すれば逮捕されるらしいし) <br /><br /> 泉「能力者に、ヒーロー。侵略者に、カース……極秘資料が聞いてあきれるよ。全然あってない」 <br /><br /> 泉(エクセルは目立ちすぎるし、追手が来たらまずいし……ワードのエネルギーどうにかしたいなぁ) <br /><br /> 泉(そこらへんの人のお財布でもコピペして、中身借りようかな? 何をするにも資本主義ってめんどうだなぁ) <br /><br /> 泉「生活文化自体は資料とそこまで変化ないっていうのが何より不気味よね。あぁ、非科学的」</dd> <dt id="a443">443 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 19:44:12.21 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ―― 地球上空 円盤内 <br /><br /><br /> ???「なるほど……あれがアースね」 <br /><br /> マシン「イエス、マム」 <br /><br /> ???「フッ……美しいわ。私が身に着ける指輪に飾り付けるのも悪くない」 <br /><br /> マシン「マム、サイズがあいません」 <br /><br /> ???「私の体には合わないでしょう。でも、器という意味ならば星をひとつ指輪の飾りにしても足りないほど……そういうことよ」 <br /><br /> マシン「なるほど、一理あります」 <br /><br /><br /><br /> ヘレン「そう……私の器はまさに宇宙レベルなのだから」 <br /><br />  </dd> <dt id="a444">444 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 19:45:03.81 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">      ヴォォォォン… <br /><br /> 泉「……? なに、あれ」 <br /><br /><br />     「え、円盤だー!」     「噂の浄化ライブの円盤じゃね!?」 <br />         「宇宙人か!?」                「いや、デザインが違う……」 <br /><br /><br /> 泉「……あ、そこまで珍しいものじゃ――」 <br /><br />        カッ! <br /><br />                 ドォォォォンッ! <br /><br /><br /> 泉「……え?」 <br /><br /><br />    「うわぁぁぁ! 撃ってきたぞ!」     「怪人だー!」 <br />                                  「ヒーローを呼べー!」 <br />          「逃げろ! 危ないぞー!」</dd> <dt id="a445">445 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 19:46:24.49 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 泉「……えっと、あの円盤って珍しいものなの?」 <br /><br /> 男「え? いや、UFOは時々目撃証言があるけどあんな危ないのは初めてだ! あんたも早く逃げろ!」 <br /><br /> 泉「そう……じゃあ、あれはイレギュラーなのかな。危ないし、私も――」 <br /><br /><br /> ??「ああぁあああああああああああああああ!!!!」 <br /><br /><br /> 泉「!?」ビクッ <br /><br /> 比奈「アタシの……アタシの原稿が……やっと、ネームがまとまってきたのに……」 <br /><br /> 泉「え……え?」 <br /><br /> 比奈「……何見てるんスか……こっちは今九死に一生を得るのと同時に生き地獄を味わってるんスよ……?」 <br /><br /> 泉「あ、いえ……その、円盤が来てて危ないし避難したほうがいいんじゃないですか」 <br /><br /> 比奈「……あの円盤のせいでアタシの安住の地は吹っ飛ばされたんスね」 <br /><br /> 泉(安住の……って、そこに建ってたお店? うわ、ひどいことになってる)</dd> <dt id="a446">446 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 19:47:02.03 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ヘレン「ふふ、ご挨拶はなかなかといったところかしら」 <br /><br /> マシン「イエス、マム。驚愕の表情で人々が我々を見ています」 <br /><br /> ヘレン「ではその驚愕を、私への尊敬へと変える必要があるわね」 <br /><br /> マシン「イエス、マム。マムの御心のままに」 <br /><br /> ヘレン「マシン。今回の配下を繰り出しなさい」 <br /><br /> マシン「イエス……来い、コワスーゾ!」 <br /><br /> コワスーゾ「コワスゾー!」 <br /><br /> ヘレン「じゃあ、行くわ。コワスーゾ、あなたは私の命令だけを聞きなさい」 <br /><br /> コワスーゾ「コワスゾー!」 <br /><br /> マシン「お気をつけて、マム」 <br /><br /> ヘレン「フッ……銀河に輝く星々も、私の手のひらのうえにあるの。踊りましょう……ダンサブルに」 <br /><br /> コワスーゾ「コワスゾー!」</dd> <dt id="a447">447 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 19:48:22.71 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 比奈「……あれは」 <br /><br /> 泉(誰かが降りてくる……?) <br /><br /> ヘレン「……ずいんぶと地球人が少ないわ。私の舞台にはふさわしくないわね」 <br /><br /> コワスーゾ「コワスゾー!」 <br /><br /> 泉(あっちのは……ロボット? 隣の女は……生物に見える。それも、人間に) <br /><br /> 比奈「ちょっと、アンタ」 <br /><br /> ヘレン「……あら。私のファンかしら? フッ、既に知れ渡っているとはね」 <br /><br /> 比奈「んなわけねーっスよ。なんでこんなことしたんスか」 <br /><br /> ヘレン「なぜ? あなたは太陽に、どうして輝いているのか質問するの?」 <br /><br /> 比奈「……理由はねーってことっスね」 <br /><br /> ヘレン「えぇ。私はただそこにいるだけで周りも影響されてしまうの」 <br /><br /> 比奈「はた迷惑にもほどがあるっスよ……ホント」 <br /><br /> ヘレン「仕方ないわ。私という存在のレベルが大きすぎるのよ」 <br /><br /> 泉(微妙に会話が成立しない……)</dd> <dt id="a448">448 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 19:49:47.44 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 比奈「……世界征服が目的だ、とか言わせられるなら楽だったんスけどねぇ」 <br /><br /> ヘレン「既に私の手の中にあるものを征服する必要がある?」 <br /><br /> 比奈「はぁ……」 <br /><br /> ヘレン「いえ……世界征服じゃなくて宇宙制覇かしら。すでに完了しているのは、ね」 <br /><br /> 比奈「あー、そりゃめでてーっスね」 <br /><br /> ヘレン「そう、当然なのよ。ところで……」 <br /><br /> ヘレン「時間稼ぎはいつまでしていたいのかしら?」 <br /><br /> 比奈「……流石にバレますか」 <br /><br /> ヘレン「私と少しでも長く会話をしていたいって気持ちもわかるわ。でも……一人にかまっていられるほどヒマでもないの」 <br /><br /> 比奈「とりあえずヒーローが誰かしら来てくれると楽だったんスけどね……あぁ、ホント。なんで勢いに任せちゃったんスかねぇ」 <br /><br /> ヘレン「観客は少ないけれど、最後まで見ていきなさい。そして伝えればいい……このパワーを」 <br /><br /> 泉(すごい圧力……逃げたほうが……)</dd> <dt id="a449">449 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 19:51:15.12 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ヘレン「とりあえずコワスーゾ、そこの2人はパーティのお客様として歓迎しましょう……私の舞台は――」 <br /><br />      「撃てー!」 <br /><br />   ギンギンギンッ <br /><br /> ヘレン「――ようやく観客が来たようだから。いきなさい、コワスーゾ」 <br /><br /> コワスーゾ「コワスゾー!」 <br /><br /> GDF隊員「大丈夫か!? 君たち、早く避難を! 避難所はわかってるね?」 <br /><br /> 泉「あ……はい?」 <br /><br /> 比奈「………わかりました」 <br /><br /> 泉(避難所って……いや、この人についていけば大丈夫かな?) <br /><br /><br /><br /> ヘレン「あら? また減るのかしら……それとももっと大規模なパーティの始まり?」ギィィィン… <br /><br /> 隊員A「くそっ、バリアか! 最近怪人は現れてなかったっていうのに!」 <br /><br /> 隊員B「いいから撃て!」 <br /><br /> ヘレン「ふぅ……コワスーゾ。弾丸をすべて掴んでみせてあげなさい」 <br /><br /> コワスーゾ「コワ!」シュババババッ <br /><br />   パラパラパラパラ… <br /><br /> 隊員A「……マジかよ」 <br /><br /> 隊員B「こちらB、どうやら奴さんの防御力は一般カース以上です。追加兵装を!」</dd> <dt id="a450">450 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 19:51:53.26 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 比奈「……とりあえずここまでくれば平気っスかね」 <br /><br /> 泉「あの、避難所は……」 <br /><br /> 比奈「いや、確かに命あっての物種ではありまスけど、このネタはどうせだからメモっときたいんで」 <br /><br /> 泉「メモって……どうして?」 <br /><br /> 比奈「あいつのおかげで原稿が消し飛びましたから。もーネタにでもしないとやってらんないっスよ」 <br /><br /> 比奈「それにGDFを生で見れる機会ってのもそう多くないしいい機会かもしれないし。これぐらいしないとね」 <br /><br /> 泉(……話を聞いてもらえない) <br /><br /> 比奈「まぁ、かなり苦戦してるみたいっスけど……ん?」 <br /><br /> 泉「どうしたの?」 <br /><br /> 比奈「……あのマシン、相当硬いみたいでスけど。動きに微妙なタイムラグがあるみたいっスね」 <br /><br /> 泉「……あ、本当だ」 <br /><br /> 比奈「で、動く前に……はー、なるほど」 <br /><br /> 泉「あの……」 <br /><br /> 比奈「あなた、こんな時にやけに落ち着いてるし能力者っスよね。なんとなくわかるんスよ……よく人間観察してますから」 <br /><br /> 泉「え? いや、私は――」 <br /><br /> 比奈「ちょっと協力してほしいっス。お礼はしますから……」 <br /><br /> 泉「お礼って言われても……」</dd> <dt id="a451">451 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 19:52:46.96 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 比奈「いやね……アタシは、正直ヒーローとか侵略者とかどうでもいいんスよ……」 <br /><br /> 泉「え?」 <br /><br /> 比奈「まぁ、非日常系のネタがネタにならないって意味じゃ困っちゃぁいましたけど……でも……」 <br /><br /> 比奈「あの店は原稿を描いててもいいって言ってくれたんスよ。で、締切ギリギリでやっと完成したんスよ」 <br /><br /> 泉「……」 <br /><br /> 比奈「アタシは……今、大事なものが2つ同時に壊れてすっげー怒ってるんスよ」 <br /><br /> 比奈「とりあえず、一発ひっぱたたかなきゃ気が済まないんスよ、『私』は」 <br /><br /> 泉「そっか……理不尽なことに、怒ってるんだ」 <br /><br /> 比奈「まぁ、無理にとは言わないっス。アイツ……たぶんアタシならぎゃふんと言わせられると思っただけなんで」 <br /><br /> 泉「ううん。いいよ」 <br /><br /> 比奈「……ホントに?」 <br /><br /> 泉「やっぱり、理不尽なことには抗わなきゃって思うよね。人は、人だもん」 <br /><br /> 比奈「ってことは……手伝ってくれるんスか?」 <br /><br /> 泉「まぁ、バッテリーは心もとないけど。ハイエネトロンとかこの時代はないだろうし電気とかおごってくれるなら」 <br /><br /> 比奈「オッケー、交渉成立っス……アタシは比奈。荒木比奈……漫画家っス」 <br /><br /> 泉「私は大石泉。えっと……なんていえばいいんだろう」</dd> <dt id="a452">452 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 19:53:52.64 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 比奈「……どうしたんでスか?」 <br /><br /> 泉「なんていうか……結構信じられないことだと思うから。笑わない?」 <br /><br /> 比奈「ん、学生でもフリーターでもなんなら獣人とかでもそう珍しいもんじゃないっスよ」 <br /><br /> 泉「いや……うん。未来人なんだ」 <br /><br /> 比奈「……おー、また新しいネタっスね。なかなか悪くないっスよ」 <br /><br /> 泉「やっぱり、信じられないかな?」 <br /><br /> 比奈「いや、こんな世界でスし信じますよ。じゃあアイツをひっぱたく武器とかは?」 <br /><br /> 泉「……さっきも言ったけどバッテリーが心もとないわ。エクセル……ロボットなんだけど、それを起動させて3分持つかどうかかな」 <br /><br /> 比奈「3分……燃費はよくないんスねぇ、未来なのに」 <br /><br /> 泉「タイムトラベルしてきたところだからね」 <br /><br /> 比奈「はぁ……そこらへんもあとで詳しく教えてもらっていいっスか?」 <br /><br /> 泉「うん。大丈夫……エクセル抜きだと、銃弾とか爆弾を出したりできるかな。それぐらい」 <br /><br /> 比奈「うーん……ロボを起動させるより、あの調子に乗ってる感じならそっちでいったほうがよさそうっスねぇ……」 <br /><br /> 泉「作戦があるの?」 <br /><br /> 比奈「えぇ。ちょっと耳を――」</dd> <dt id="a453">453 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 19:54:36.75 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 隊員A「くっそ……狙撃も利かないなんてどうすれば……」 <br /><br /> ヘレン「あなたたちだけに見せているのはもったいないわ。そろそろもっと人が多いところへ行かせてもらおうかしら」 <br /><br />  「ちょおぉぉぉぉぉっと待ったあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 <br /><br /> 隊員B「!? あ、あの子たち……!」 <br /><br /> 比奈「はぁ……げほっ。大声なんて出すもんじゃねーっスね」 <br /><br /> ヘレン「あら……ひょっとしてもっと見ていたいと思ったの? 残念ね、私を縛るには人数が足りないわ」 <br /><br /> 泉「……あなたは、勘違いしているわ」 <br /><br /> ヘレン「……勘違い?」 <br /><br /> 比奈「アンタはずいぶん自分に自信を持ってるみたいっスけど……アタシ達のほうがスゴいっスよ」 <br /><br /> ヘレン「………」 <br /><br /> 泉「そのロボだって、パワーだけはあるみたいだけどずいぶんのろいみたいだしね」 <br /><br /> ヘレン「そう……生きて私の素晴らしさを伝える役になれるところだったのに、残念よ」 <br /><br /> ヘレン「潰しなさい、コワスーゾ」 <br /><br /> コワスーゾ「コワスゾー!」 <br /><br /> 泉(来たっ……!)</dd> <dt id="a454">454 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 19:55:24.44 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> コワスーゾ「コワスゾー!」ドゴォッ! <br /><br /> 比奈「うわわっ……あっぶないっスね……」 <br /><br /> 泉(すごい火力……銃撃データは劣化が激しいしペーストして破壊できるか微妙なところかな) <br /><br /> ヘレン「いいわ、そのまま掴みなさい」 <br /><br /> コワスーゾ「コワスゾー!」ブンッ! <br /><br /> 泉「きゃっ!?」 <br /><br /> 比奈「っと、大丈夫っスか?」 <br /><br /> 泉「正直若干後悔してる。なんでこんなことって」 <br /><br /> 比奈「最近はヒーローも忙しいらしいっスからねぇ……でもあいつにイラっときたのはいっしょっスよ」 <br /><br /> 泉「うん。いくよ……Ctrl、V! ペースト、ウイング!」 <br /><br /> ヘレン「……こっちに飛んでくる? ふっ、太陽に近づきすぎるとどうなるのかを知らないの?」 <br /><br /> 比奈「さぁ、どうなるんスかねぇ?」 <br /><br /> 泉「―――」バリッ <br /><br /> ヘレン「……? まぁいいわ。コワスーゾ、その――」</dd> <dt id="a455">455 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 19:55:50.92 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br /><br /><br /><br />             バリッ <br /><br /><br />  </dd> <dt id="a456">456 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 19:57:03.55 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">       / ̄ ̄ ̄\ <br />      |  無   | <br />      |  礼   | <br />      |  な   | <br />      |  二  .| <br />      |   人   | <br />      |   を   | <br />      |  潰   | <br />      |  し  / <br />      /  て / <br />     ̄ ̄ ̄ ̄</dd> <dt id="a457">457 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 19:57:40.33 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">       / ̄ ̄ ̄\ <br />      |  |   | <br />      |  |   | <br />      |  |   | <br />      |  |  .| <br />      |   |   | <br />      |   を   | <br />      |  潰   | <br />      |  し  / <br />      /  て / <br />     ̄ ̄ ̄ ̄</dd> <dt id="a458">458 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 19:58:15.01 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">       / ̄ ̄ ̄\ <br />      |  |   | <br />      |  |   | <br />      |  |   | <br />      |  |  .| <br />      |   |   | <br />      |   を   | <br />      |  潰   | <br />      |  し  / <br />      /  て / <br />     ̄ ̄ ̄ ̄ <br /><br /><br /><br /><br />        / ̄ ̄ ̄\ <br />      |  指   | <br />      |  示   | <br />      |  す   | <br />      |  る   | <br />      |  私  / <br />      /   . / <br />     ̄ ̄ ̄ ̄</dd> <dt id="a459">459 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 19:59:00.98 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">       / ̄ ̄ ̄\ <br />      |  指   | <br />      |  示   | <br />      |  す   | <br />      |  る   | <br />      |   私  .| <br />      |   を   | <br />      |  潰   .| <br />      |  し  / <br />      /  て ./ <br />     ̄ ̄ ̄ ̄</dd> <dt id="a460">460 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 19:59:33.78 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ヘレン「『指示する私』を潰して――ハッ!?」 <br /><br /> コワスーゾ「コワスゾー!」ブンッ! <br /><br />     メキメキ……ドゴォッ! <br /><br /> 比奈「っし……『聞こえた』っスよ、あんたの命令」 <br /><br /> 泉「ビルに突っ込んでったね……と、う、わわ……やっぱり安定しないよコレ。降りよう……」 <br /><br /> 比奈「そうっスね……無音で飛ぶなんてとんだオーバーテクノロジーっス。これもネタに……なんないっスかねぇ」 <br /><br />    スタッ <br />       トッ <br /><br /> コワスーゾ「…………」 <br /><br /> 泉「ふぅ……まぁ、指示がなくなればロボも動きを止めるよね」 <br /><br /> 比奈「まぁ、腕時計みたいなのに命令を吹き込んでたみたいっスね。わかりやすい操作で、やりやすい指示方法で助かったっスよ」 <br /><br /> 隊員A「……お、おぉ」 <br /><br /> 隊員B「や、やったのか!?」 <br /><br /> 比奈「あ、そういうこというと」 <br /><br />            ガラガラガラ… <br /><br /> ヘレン「フフフ……なるほど。私の言葉だけを聞く兵として気に入っていたのに、そこを突くなんて」 <br /><br /> 比奈「あー……ヤバいっスねぇ、ブチ切れっぽいんスけど」</dd> <dt id="a461">461 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 20:00:01.57 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ヘレン「いいでしょう。宇宙レベルの私が手にするにふさわしい星だと認めてあげる」 <br /><br /> 比奈「は?」 <br /><br /> ヘレン「今日のところは帰るわ。髪も汚れて興がそがれたもの……ふぅ、私の言葉を変えるなんて面白いじゃない」 <br /><br /><br /><br /><br /> 泉「……い、いっちゃったよ? ロボットおいて」 <br /><br /> 比奈「あー……助かった、んスかねぇ……もう、二度とこういうことはしねーっスよ、ホント」 <br /><br /> 隊員B「君たち……助かったよ。でもあんな」 <br /><br /> 比奈「あーもう、ほら。お説教はごめんっス! 謝礼とかなら受け取りまスけど!」 <br /><br /> 隊員A「……それは上にかけあってみるよ」 <br /><br /> 比奈「え、ホントでスか? それなら……あ、ついでに活動の詳細とか聞いてもいいっスかね? 大丈夫、暴露本とかを作る気はないっスから……」 <br /><br /> 隊員B「お、おう」</dd> <dt id="a462">462 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 20:00:35.59 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 泉「謝礼は後日、か。でもお説教もくらっちゃった……めんどくさいんだね、こういう世界でも」 <br /><br /> 比奈「……はぁー」 <br /><br /> 泉「どうしたの?」 <br /><br /> 比奈「いや……改めて確認するとホント無茶やらかしたなーって気持ちと……」 <br /><br /> 比奈「この……やっと出来上がったはずの原稿が無に帰したんだなぁって悲しみが……襲ってきて……」 <br /><br /> 泉「………ちょっと、見せて」 <br /><br /> 比奈「え? もう切れ端しかないっスよ……それでいいなら」 <br /><br /> 泉「欠片はできる限り集めて……燃えてる部分はどうかな、たぶん……」 <br /><br /> 比奈「……?」 <br /><br /> 泉「Ctrl……Z。リターン」 <br /><br />    パァァァァ… <br /><br /> 比奈「……!? げ、原稿が」 <br /><br /> 泉「『もとに戻す』……私が過去に飛んできた技術はこれを拡大解釈したものなんだけど、時間を一部ゆがめて……」 <br /><br /> 比奈「おぉぉぉぉ! 感謝っス! 未来人ってすごいんスねぇ! わー!」 <br /><br /> 泉「……バッテリーが切れちゃった。その、充電」 <br /><br /> 比奈「充電!? そんなもんいくらでもさせまスよ!」 <br /><br /> 泉「そ、そっか。よかった……助かったよ」</dd> <dt id="a463">463 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 20:01:03.87 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 比奈「というか、便利そうだしいろいろ聞きたいし……どうっスか、未来人さん」 <br /><br /> 泉「どうって……?」 <br /><br /> 比奈「食事とエネルギーの保障はするっスよ。アタシのアシスタントやりません?」 <br /><br /> 泉「アシスタント……って」 <br /><br /> 比奈「衣食住の保障をする代わりにアタシの漫画を手伝ってほしいってことっス」 <br /><br /> 泉「……いいの、かな」 <br /><br /> 比奈「いやー、正直もうあきらめるしかないと思ってたところなんで助かったっスよー♪」 <br /><br /> 泉「そ、それじゃあ……お邪魔します」 <br /><br /><br /><br />   ――後日、荒木比奈が異常に上昇した電気代に悩まされるのは別の話。</dd> <dt id="a464">464 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 20:01:59.80 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">ヘレン(??) </dd> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><a href="http://i.imgur.com/pSOgCKj.jpg" target="_blank"><img alt="" src="http://i.imgur.com/pSOgCKj.jpg" style="width:320px;height:400px;" /></a><br /><br /> 職業:敵性宇宙人 <br /> 属性:宇宙レベルの犯罪者 <br /> 能力:配下の作成およびコントロール <br /><br /> 出身地:宇宙(そら)の向こうな『宇宙レベル』を自称する犯罪者。 <br /> 怪人・怪獣クリエイターとしての能力は超一流で生物・ロボットなど様々な配下を創り出し、操り世界征服……宇宙制覇をたくらむ。 <br /> 幹部にあたるマシンといっしょに宇宙船をのりまわし、各地に強襲を繰り返す。 <br /><br /> 本人の戦闘力もかなり高く前線に赴くことも多いが、気がのらない場合は直接戦闘はしない。</dd> <dt id="a465">465 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage]:2013/07/06(土) 20:03:33.06 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 秘密結社とか陰謀とか関係なくストレートな敵役が欲しかった <br /> ヘレンさんはどこにでも出てくるしいろんな部下を使うよ! カース以外の汎用雑魚にしてもいいよ!! <br /><br /> 泉の持ってきたオーバーテクノロジーと荒木先生の職業が合わさり最強に見える</dd> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> </dd> <dt id="a470"><span class="resnum">470</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆kaGYBvZifE</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/06(土) 23:54:14.04 <span class="id">ID:WWv5iVO20</span></span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ザ・岡崎先輩の近況</dd> <dt id="a471"><span class="resnum">471</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆kaGYBvZifE</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 23:55:20.45 <span class="id">ID:WWv5iVO20</span></span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ―――――――――― <br /><br /> 眼下に広がる風景を埋め尽くすマグマのそれに似た赤黒い波濤は、順調にカースが増え続けている <br /> ことを示す何よりの証拠だった。 <br /> 脈動する悪意が大地の底から滲み出し、形を得たそれは赤いオーラとなってカースの泥の身体から <br /> 立ち上り、遠目には街が燃えているようにも見える。 <br /> わらわらと湧き出す『憤怒』のカースの、薄闇の中に浮かび上がる姿は、地獄の悪鬼のようでさえあった。 <br /><br /> 数時間前まで平和な日常を送っていた街が呪詛の汚泥で満ちていくのをビルの屋上から眺めながら、 <br /> 岡崎泰葉は口角を歪に釣り上げて笑った。 <br /><br /> このカースの大量発生は無論、泰葉の仕業であった。 <br /> カースがどこまで自己増殖を続けることができるか、人間から発せられる感情はどれほどまで <br /> カースの成長に影響を及ぼすのか、それらを調べるための実験としての試みである。 <br /><br /> 地下鉄や下水道に多数のカースの核を仕掛け、それらを同時多発的に覚醒させ街をカースで埋め尽くし、 <br /> ヒーローやGDFに介入する暇を与えず電撃的に街を制圧。 <br /> その後は、街の人間を捕らえて実験台にするなり、素質があるようならばカースの核を埋め込んで <br /> カースドヒューマンにするなり、泰葉の思うままに事を運ぶことができる。 <br /> 今のところ、すべては予定通りに進行している。 <br /><br /> しかし今の泰葉の表情からは、実験対象を観察する学者の冷徹な目線はなく、むしろサディスティックな <br /> 法悦を湛えてさえいた。 <br /><br /> 見てみるがいい、逃げまどう者達の無様な姿を。日常とやらを理不尽に踏みにじられる様を。 <br /> 何ら疑うことなく幸福を謳歌する者の、なんと脆く弱いことか。 <br /> 尽きることのない憤怒や嫉妬がわずかばかり慰められるのを感じ、泰葉は胸が躍る気分だった。 <br /><br /> これでこそ、あの『憤怒』の声――邪龍ティアマットの甘言に乗ってやった甲斐があったというものだ。</dd> <dt id="a472">472 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆kaGYBvZifE</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 23:56:06.64 ID:WWv5iVO20</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「クッククク……おーおー、これはまた派手にやってますねぇ……」 <br /><br /> ざらつくような声を背中に受け、泰葉はちらと視線をやる。 <br /> そこにいたのは、慇懃無礼を形にしたような、顔を見ることさえ不愉快な男の姿があった。 <br /> それは泰葉の元プロデューサーであり、今は邪龍の魂に肉体を乗っ取られている男だった。 <br /><br /> ティアマットがよりにもよってこの男を選んだのは勿論、泰葉の憤怒を煽るためだろう。 <br /> 本来なら顔も見たくないのは当然として、泰葉をなお不愉快な気分にさせたのは、この男が自分の <br /> 担当アイドルに手を出して業界を追放されていたという事実だった。 <br /><br /> 唾棄すべき、見下げ果てたクズだ。ティアマットも、この元プロデューサーも。 <br /> 『憤怒の王』とやらになった暁には、真っ先に殺してやる。 <br /><br /> 胃の腑を突き上げる不快感を自覚しながら、泰葉は吐き捨てるように言う。 <br /><br /> 「……何の用? 今のところ問題は起きていないけれど」 <br /><br /> 「そうつれないこと言いなさんなよ。俺と泰葉ちゃんの仲だろぉ?」 <br /><br /> 「ふざけないで」 <br /><br /> 「クッククク……ああ、これは失礼。ククク……」 <br /><br /> この男は、いちいち人を不愉快がらせなければ話もできないのか。 <br /><br /> 泰葉の射抜くような視線を風と受け流し、ティアマットは嗤う。</dd> <dt id="a473">473 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆kaGYBvZifE</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 23:56:35.87 ID:WWv5iVO20</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「祭りの準備は順調のようですからね……ちょっとばかり手助けを、と思いまして」 <br /><br /> 「必要ない」 <br /><br /> 泰葉は内容も聞かずに断じる。 <br /> この男の『プロデュース』を受けるとはいえ、手放しに信用するほど泰葉はお人好しではない。 <br /><br /> 「主要な道路はカースの群れで完全に封鎖したわ。GDFもヒーローも迂闊には近寄ってこれない。 <br />  それこそ、また例の爆弾を使いでもしない限りは」 <br /><br /> そして、今のGDFが世論に背を向けてまでカースの大量駆除を行う性格の組織ではないことを、 <br /> 泰葉は薄々ながら感じ取っていた。テレビや新聞、インターネットで情報はいくらでも入手できるし、 <br /> GDF総司令交代に前後して行われた記者会見で事件のあらましは世間に知れ渡っていたからだ。 <br /><br /> 「クッククク……さすがご明察。私の伝手で調べていますが、今のところ連中も攻めあぐねていますねぇ」 <br /><br /> 「伝手?」 <br /><br /> 「ええ。これでいて『友達』の多い方でしてねぇ……」 <br /><br /> 露骨に当てこするような言い方に苛立ちを覚えたが、何か言い返すのも無駄だと判断した泰葉は、 <br /> 射るように睨みつける目を唯一の抗弁とした。 <br /><br /> とはいえ、不愉快なのはともかくとして、無能な男ではないのは確かだ。 <br /> 少なくとも今のところはティアマットは泰葉を裏切らないし、泰葉もティアマットに敵対するメリットはない。</dd> <dt id="a474"><span class="resnum">474</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆kaGYBvZifE</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 23:59:19.00 ID:WWv5iVO20</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「あなたの『友達』っていうのは、とても頼りになるみたいね?」 <br /><br /> 「ええ。安っぽい友情ごっこなんかじゃあ生まれえない、本物の信頼関係ですよ……クッククク」 <br /><br /> こいつのような悪魔が、言うに事欠いて信頼などと、それこそお笑い草だ。 <br /> 泰葉は内心の失笑をおくびにも出さず、ただティアマットの戯言を聞き流すのに努めた。 <br /><br /> こうしている間にも、カースは増殖を続けその生息圏を拡大し続けていく。 <br /> 『憤怒』の心性のままに、やり場のない怒りと憎悪でその身を焦がし、破壊を振り撒いていく。 <br /> そしてその過程で生まれた恐怖と悲しみが、より大きなカースを生んでいくのだ。 <br /> 泰葉が『憤怒の王』となり、世界のすべてを破壊するその日が来るまで……。 <br /><br /> 「……?」 <br /><br /> ふと泰葉は、地上から立ち上る『憤怒』のオーラで赤黒く染まった夜空へと視線を向けた。 <br /><br /> 不意に視界の端に、空の果てから地上へと伸びる一筋の輝く軌跡が映り――願い事をする間もなく、 <br /> 空から流れ落ちた星は見えなくなる。 <br /><br /> いや、自分はもう星に願いを捧ぐ年頃ではない。 <br /> あれはむしろ、古巣に留まる仲間に手向けられた餞――あるいは、惜別の涙か。 <br /><br /> そんな風に考えた泰葉の胸にちくりと後悔の棘が突き刺さったが、カースの浸食の深まった精神の中で <br /> その小さな『痛み』は行き場を失い、やがて遣る方ない腹立たしさに変わっていった。 <br /><br /><br /><br /> 「ああ――腹立たしい」</dd> <dt id="a475">475 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆kaGYBvZifE</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 00:01:30.64 ID:0KKU5keR0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">『憤怒の街』 <br /> 泰葉とティアマットの作戦によって占拠された都市。 <br /> 大量の『憤怒』のカースによって封鎖されており、迂闊に近寄れない。 <br /> 街の中には多数の民間人が取り残されている。 <br /><br /> イベント情報 <br /> ・しばらくの間、泰葉は『憤怒の街』を拠点に活動するようです。 <br /> ・憤怒Pに接触し、協力している何者かがいるようです。</dd> <dt id="a476">476 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆kaGYBvZifE</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 00:04:31.49 ID:0KKU5keR0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 宇宙レベルさんに負けじと一大勢力を築いているようです <br /> 岡崎先輩がお元気そうで何よりです(白目)</dd> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> </dd> <dt id="a480"><span class="resnum">480</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆mtvycQN0i6</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage]:2013/07/07(日) 00:43:13.90 <span class="id">ID:6d43xwjlo</span></span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">渚いきまーす</dd> <dt id="a481"><span class="resnum">481</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆mtvycQN0i6</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage]:2013/07/07(日) 00:43:41.36 ID:6d43xwjlo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「へい、パスッ!!」 <br /><br /> 「キャプテンにボールがいったよ!」 <br /><br /> 「あー、無理だ」 <br /><br /><br /> 一人の女の子にボールが渡る。誰も近寄ることはできない。 <br /><br /> その女の子はそのまま素早いドリブルでゴールを決めた。 <br /><br /> 彼女の名前は愛野 渚。この高校のバスケ部キャプテンである。 <br /><br /><br /><br /> パスッ <br /><br /><br /> ビーッ <br /><br /><br /> 「よし、今日はここまで!みんなもっと私の邪魔しなきゃダメだよッ」 <br /><br /> 「だってー、キャプテン強いんですよ」 <br /><br /> 「あとキャプテンじゃなくて渚って呼んで欲しいなァ。敬語もいらないよ」 <br /><br /><br /> 彼女は困っていた。 <br /><br /> チームメイトとの距離が遠いのだ。 <br /><br /> もちろん、嫌われているわけではなく、渚のバスケの上手さに尊敬してのことだ。 <br /><br /> だが、渚とチームメイトたちの間には一種の境界があった。</dd> <dt id="a482">482 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆mtvycQN0i6</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage]:2013/07/07(日) 00:44:23.03 ID:6d43xwjlo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「よし、じゃあみんな着替えよッか」 <br /><br /> 「あれ、キャプテンどこいくんですか?」 <br /><br /> 「水飲んでから行くよ」 <br /><br /><br /> もともと、ほかの人との境界はあった。渚は「できる子」だったから。 <br /><br /> だが、とある日を境にして、その境界が遠くなった気がした。 <br /><br /><br /> そんな渚の悩みを、悲鳴がかき消した。 <br /><br /><br /> 「どうしたのッ!!」 <br /><br /><br /> 更衣室はひどい有様だった。 <br /><br /> チームメイトは全員倒れ、その真ん中に何かが立っていた。 <br /><br /> 人間ではない。 <br /><br /><br /> 「だ、誰...?それはウサ耳?」 <br /><br /><br /> 「オレか?オレはウサミン星からやってきた」 <br /><br /><br /> 「う、宇宙人?なんのためにきたの?その子たちになにをしたァ!!」 <br /><br /><br /> 「一度に質問するなっ!」 <br /><br /><br /> 「...その子たちに何をしたの」 <br /><br /><br /> 「奴隷商人に売りつけるんだ」 <br /><br /><br /> 「な、なにを言って...」</dd> <dt id="a483">483 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆mtvycQN0i6</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage]:2013/07/07(日) 00:45:37.40 ID:6d43xwjlo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「オレは、母星じゃ虐げられてたんだ。だが、今回この地球にいくってんで密航してきた」 <br /><br /> 「んで、オレは独立しなきゃなんねえから、資金が必要なんだ」 <br /><br /> 「お前らは体を鍛えているから労働力にもなるし、奴隷にはうってつけなんだよ」 <br /><br /> 「それに、女だ。女は高く売れる!おっと、安心しろ、まだなんにもしちゃいねえ。ちょっと気絶してるだけだ」 <br /><br /><br /> 「え...な、なに...なんなのォ...」 <br /><br /><br /> 「それじゃ、お前も眠ってな!」 <br /><br /><br /> ウサミン星人は銃型のなにかを取り出すと、渚に向けて撃った。 <br /><br /><br /> 「うわァッ!!」 <br /><br /><br /> 思わず渚は目を閉じた。</dd> <dt id="a484">484 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆mtvycQN0i6</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage]:2013/07/07(日) 00:48:23.37 ID:6d43xwjlo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br /> 「な、なんだ?当たってねぇのか?」 <br /><br /><br /> 恐る恐る目を開けてみると、ウサミン星人は困惑していた。 <br /><br /><br /> 「今確かに撃ったはずなんだが...調子が悪いのか?」 <br /><br /><br /> 再び銃口を渚に向け、撃つ。 <br /><br /> だが、そこからでた光線は渚の手前で消滅した。 <br /><br /> まるで、そこが消える境界線であるみたいに。 <br /><br /><br /> 「な、なにが起きてるのォ...?」 <br /><br /><br /> 渚も困惑していた。 <br /><br /><br /> 「ちっ、こいつも能力者なのか...仕方ない、ちょっと手荒だが...」 <br /><br /><br /> ウサミン星人は別の銃を取り出すと、渚に向けて撃った。 <br /><br /> だが、その弾は、渚の手前で失速し、地面に落ちた。それ以上は届かないみたいに。 <br /><br /> 渚は気がついた。これが自分の能力なのだ、と。 <br /><br /> 最近、不思議な能力を持った人が増えてきている、と耳にしていたので、自分も能力を持っていたのだと。 <br /><br /><br /> 「帰るなら今のうちだよッ!」 <br /><br /><br /> 「くそっ、能力持ってるからっていい気になるなよ...!」 <br /><br /><br /> ウサミン星人は女の子の一人に銃口を向ける。</dd> <dt id="a485">485 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆mtvycQN0i6</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage]:2013/07/07(日) 00:50:30.96 ID:6d43xwjlo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「その子を離してッ!!」 <br /><br /><br /> 「うるせえ!!おとなしくつかまんねぇとこいつを[<font color="#FF0000">ピーーー</font>]ぞ」 <br /><br /><br /> 今、渚には自信があった。絶対に誰も死なさせないという自信が。 <br /><br /><br /> 「お、おい、近づくな!撃つぞ!」 <br /><br /><br /> 「撃てるなら撃ってみろォ!!」 <br /><br /><br /> 「ぶ、ぶっ[<font color="#FF0000">ピーーー</font>]!!」 <br /><br /><br /> 引き金を引くが、やはり手前で弾丸は落ちる。 <br /><br /> そして、渚は思いっきりウサミン星人を殴り飛ばした。 <br /><br /><br /> 「な、なんじゃこりゃあ!!」 <br /><br /><br /> ウサミン星人の長い耳は、顔に張り付いて片目を塞いでいた。まるで、もともとそこにあったみたいに、境目はなく。 <br /><br /><br /> 「う、うわああああああ!!」 <br /><br /><br /> 「大丈夫?」 <br /><br /><br /> 叫ぶウサミン星人を尻目に、渚はチームメイトたちに駆け寄った。 <br /><br /><br /> 「キャ、キャプテン...」 <br /><br /> 「良かった、大きな怪我もないみたいだし...」 <br /><br /> 「キャプテン危ないっ!!」 <br /><br /> 「え━━━━━━━」</dd> <dt id="a486">486 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆mtvycQN0i6</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage]:2013/07/07(日) 00:52:06.23 ID:6d43xwjlo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">ドロリ <br /><br /> 渚の背中から血が流れる。 <br /><br /><br /> 「フハハ、刃物は効くようだな...!」 <br /><br /><br /> 「ぐ...み、みんな...」 <br /><br /> 「「「キャプテン!!」」」 <br /><br /><br /> 「死んじまったか...まあいい、10人もいれば一財産になる」 <br /><br /><br /><br /> 私はここで死ぬのかァ... <br /><br /><br /><br /> 「い、いや...」 <br /><br /> 「やめて!」 <br /><br /><br /> 「おらおとなしくしろっ!!」 <br /><br /><br /><br /> いや、仲間を置いていくわけにはいかないッ!! <br /><br /><br /><br /><br /> 「あ...」 <br /><br /> 「う、うそ...」 <br /><br /><br /> 「ん?どこ見てやがる...」 <br /><br /><br /> 「お、お前はたった今殺したはずじゃ...う、うわああああああああああああああああああああああああああ」 <br /><br /><br /> ━━━━━━━━━</dd> <dt id="a487">487 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆mtvycQN0i6</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage]:2013/07/07(日) 00:52:31.82 ID:6d43xwjlo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">後日 <br /><br /> 「ねえ、大会の日程どうだったァ?」 <br /><br /> 「それが...」 <br /><br /> 「あちゃー、この日は私『あの日』じゃん」 <br /><br /> 「キャプ...渚、どうにかならない?能力とか使っちゃおうよ!」 <br /><br /> 「そ、それは流石にずるいと思うよッ」 <br /><br /> 「えー、そんなー」 <br /><br /><br /> オーイ、ナギサハ『アノヒ』ダッテサ! <br /><br /> シンジャヤダヨナギサ! <br /><br /> オ、オオゲサダナァ...</dd> <dt id="a488">488 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆mtvycQN0i6</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage]:2013/07/07(日) 00:53:47.57 ID:6d43xwjlo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> おとなしく一人称視点にすればよかった <br /><br /><br /> 愛野 渚(18) <br /><br /> とある高校のバスケ部キャプテン。ウサミン星人との一件で、人との境界の原因に気がつく。 <br /> 能力は、『境界線を操作する』銃弾の届く、届かない境界を作ったり、物体どうしの境界をなくしたりできる。 <br /> 某妖怪のむらさきさんとはなんの関係もございません。 <br /> ウサミン星人に刺され、命を落としかけるが、生と死の境界線に残った。『あの日』とは死に近づいてる状態のこと。 <br /> 約一月の周期で生と死の間をいったりきたりする。 <br /> 生:普通の人間となんら変わらない <br /> 死:動きが鈍くなる、存在が認識されにくくなる等 <br /><br /> バスケの腕も生死の状態によって変わるため、チームメイトはなによりも大会の日程決めを神に祈る。 </dd> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> </dd> <dt id="a494"><span class="resnum">494</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆lbKlS<span class="namenum">0</span>ZYdV.M</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage]:2013/07/07(日) 01:45:10.71 ID:g+Df2CSTo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">おつおつ <br /> 人間とソンビのハーフ…って言ったらなんか変だな… <br /><br /> 次から松尾ちゃん投下します</dd> <dt id="a496">496 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆lbKlS<span class="namenum">0</span>ZYdV.M</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 01:46:47.68 ID:g+Df2CSTo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ユズ「ん~平和っていいなぁ♪」 <br /><br /> 死神ユズは幸せを噛みしめながら、一人夜の空で次なる獲物を探し求めていた。 <br /> 神崎昼子ことブリュンヒルデはお留守番。 <br /> 何故なら学校の宿題があるからだ。 <br /><br /> ユズ「けど、お家で宿題が出来るっていうのは平和の証拠だよね♪」 <br /><br /> 先日までユズはルシファーの姦計による『偽物の自分』のせいで人間界では犯罪者扱い。 <br /> けれど無事ルシファーを討伐し晴れて無罪放免。 <br /> これでもう何も気にせず動き回れる。 <br /><br /> ユズ「後ろめたいことが無いのって気持ちいいねー♪」 <br /><br /> ユズ「まぁ、もともと悪いことしてないんだけどさ♪」 <br /><br /> ご機嫌。 <br /> ストレスから解放された反動か、つい独り言が多くなってしまう。 <br /><br /> ユズ「さてさて、これで残りは『嫉妬』と『色欲』と『強欲』だよね!」 <br /><br /> ユズ「『暴食』を狩る手間が省けたのは良いんだけどさ…」 <br /><br /> ただユズは決して無意味に独り言を放っていたわけでは無い。 <br /> むしろその独り言を聞かせていたのだ。 <br /> では、一体誰に? <br /><br /> ユズ「―――貴女ももしかして狩られる側?」 <br /><br /> 「…!」 <br /><br /> 「ふぅん……気づかれていた?」 <br /><br /> ユズの問いかけに反応し、そして言葉が返ってくる。 <br /> その言葉の主は黒き翼を持つ少女だった。</dd> <dt id="a497">497 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆lbKlS0ZYdV.M</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 01:48:00.68 ID:g+Df2CSTo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ユズ「そんな魔力をビンビンに発してて気づかないわけじゃん!」 <br /><br /> ユズ「その黒い翼……『堕天使』だね?」 <br /><br /> ユズ「アタシを追跡して何か用?」 <br /><br /> ユズは黒き翼を持つ少女に問いかける。 <br /> ユズの言う通り、その少女の正体は『悪魔』であり『堕天使』だった。 <br /><br /> 「別に、貴女のことを好き好んで追跡してるわけじゃないんだけど?」 <br /><br /> 「自意識過剰なのよ」 <br /><br /> 「……堕天使だってわかってるんだ」 <br /><br /> 少女はクールに吐き捨てる。 <br /> が、どうも語尾は独り言のようにしか聞こえないがユズはあえて気にしなかった。 <br /><br /> ユズ「自意識過剰も何も追跡してるのは事実じゃないのさっ!」 <br /><br /> ユズ「なに?サタン様の命?」 <br /><br /> 「……けど、この翼を見れば一目瞭然?」 <br /><br /> 少女は答えない。 <br /> むしろ無視して独り言を続けている。 <br /> その様子には流石のユズもカチンとくる。</dd> <dt id="a498">498 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆lbKlS0ZYdV.M</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 01:49:11.88 ID:g+Df2CSTo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ユズ「……って、『堕天使』からの監視なんてアタシでさえ聞いてないしねー」 <br /><br /> ユズ「貴女も勝手に地上に降りてきたってやつ?」 <br /><br /> 『魔族』は契約・魔王からの許可無しでの人間界での活動は法の改訂により御法度だ。 <br /> 目の前の少女がその罪を犯した存在ならば魔王に仕える身として見逃すわけにもいかない。 <br /><br /> ユズ「貴女の目的はわからないし、法の改訂についても知らなかったのかもしれないけどさっ…」 <br /><br /> ユズはバッジを手に取り、それを鎌へと変形させる。 <br /><br /> 「……この翼、どうしよう…どうしよう…」 <br /><br /> ユズ「アタシの前に出てきたのが運の尽き♪ってねーっ!」 <br /><br /> そして未だ独り言を呟いている少女の魂を目がけて躊躇いもなく振りかざした。 <br /><br /> 「……ハッ!」 <br /><br /> しかし、少女はユズの斬撃に咄嗟に反応し、すんでのところでそれを回避した。 <br /><br /> ユズ「!?…思ったより反射神経良いんだね?」 <br /><br /> 罪を犯した者に容赦は無用。 <br /> そう思って不意打ちを仕掛けたのにも関わらず、その少女の回避速度には思わずユズも驚きを隠せなかった。</dd> <dt id="a499">499 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆lbKlS0ZYdV.M</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 01:50:00.92 ID:g+Df2CSTo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「ふぅん。不意打ちね」 <br /><br /> 「けど、外れたわね。残念でした」 <br /><br /> 少女は余裕綽々と言った表情でユズのことを見下している。 <br /> 本来楽観的な性格のユズだが、どうも目の前の少女の澄まし顔は鼻が付く。 <br /><br /> ―――何故なら、その少女の態度に自分を罠に陥れた『傲慢』の感情を感じたからだ <br /><br /> 『努力』を否定するベルフェゴールも決して許すことの出来ない存在だったが、自分の姿で好き勝手やってくれたルシファーには討伐したと言えども少なからず私怨を抱いている。 <br /> 目の前の少女は性格こそルシファーとは違いお堅い印象を感じるが、それでもまるでルシファーが変化して自分の前に再び現れたような錯覚に落ちた。 <br /><br /> ユズ「理不尽な恨みって言われたらそれまでなんだけどさぁ…」 <br /><br /> ユズ「ちょっと本気で気に入らないんだよねー!」 <br /><br /> 感情に任せて、ユズは再び少女の魂を目がけて斬りかかりにいく。 <br /> スピードは十分。 <br /> 相手の虚もついているはず。 <br /> しかしあろうことか、今度は完全に余裕を持って回避される。 <br /><br /> ユズ「…!?」 <br /><br /> 「また同じ軌道?バカの一つ覚えってやつね」</dd> <dt id="a500">500 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆lbKlS0ZYdV.M</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 01:51:02.03 ID:g+Df2CSTo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ユズ「…もしかして甘く見すぎたカナ?」 <br /><br /> 魔術を使用していない分、余力は十分に残っている。 <br /> しかし、先ほどの斬撃のスピードは以前相見えたベルフェゴールの身体能力を上回るほどの速さだ。 <br /><br /> 「ふぅん。全力では無いって?強がりは立派ね」 <br /><br /> 相変わらず澄まし顔をした『堕天使』の少女。 <br /> その少女の余裕を崩してやろうとユズがもう一つのバッジに手をかけ杖に変えようとする際、目の前の少女から思わぬ言葉が零れた。 <br /><br /> 「……この子にルシファーが負けた?冗談でしょう?」 <br /><br /> ユズ「…!!」 <br /><br /> 「……」 <br /><br /> 少女の口から出た言葉はルシファーの名。 <br /> しかし少女本人はその名を口に出したことに気づいていない様子。 <br /> どうも無意識に独り言を呟く癖があるようだ。 <br /> しかし、これで合点がいった。 <br /><br /> 少女の鼻につく態度。 <br /> 自分が少女に感じた嫌悪感。 <br /> 少女が自分を追跡する理由。 <br /> 黒き翼を持つ堕天使。 <br /><br /> 実際に魔界で相見えたことは無いが、その名は聞いたことがある。 <br /> 大罪の悪魔であり、天界を堕天したルシファー。 <br /> そしてルシファーと共に堕天した、天使の存在。 <br /><br /> ユズ「―――貴女、堕天使『アザエル』だね?」 <br /><br /> 「…ハッ」</dd> <dt id="a501">501 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆lbKlS0ZYdV.M</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 01:51:37.74 ID:g+Df2CSTo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「いけない…また考えてること喋っちゃってたのね…」 <br /><br /> ユズ「ルシファーの名前だけだけどね」 <br /><br /> 「はぁ…私、独り言多いな…」 <br /><br /><br /> ―――堕天使『アザエル』 <br /><br /><br /> その名は『神により強くされた者』を意味する。 <br /><br /> ユズ「…アザエル本人は自分自身に自信が持てなかった」 <br /><br /> ユズ「けれどルシファーに唆されて、その心に『傲慢』の感情を生み出し、共に堕天した…」 <br /><br /> ユズ「こんな感じだったカナ?」 <br /><br /> 「…ふぅん」 <br /><br /> 「賢いのね……見た目より」 <br /><br /> ユズ「…最後のは余計だよ」</dd> <dt id="a502">502 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆lbKlS0ZYdV.M</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 01:52:12.77 ID:g+Df2CSTo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ユズ「まぁ、ルシファーと共に堕天したっていうことは、アレだ」 <br /><br /> ユズ「ルシファーの敵討ちに来たってわけでしょ?」 <br /><br /> 「そんな気も起きないわ……拍子抜けだもの…」 <br /><br /> 二度の斬撃を躱したことで完全に見下しているのか。 <br /> 『アザエル』はユズに興味を無くしてしまった様子だ。 <br /><br /> ユズ「じゃあ、何しに来たんだって話になるけど…」 <br /><br /> ユズ「ここまでコケにされて、アタシが「じゃあサヨナラ」なんて言うと思う?」 <br /><br /> ユズ「そして、その身体は人間のモノだね?」 <br /><br /> ユズ「契約していない人間に憑依するのは罪だって知ってるカナ?」 <br /><br /> ユズの言う通り、黒き翼が生えていえども、その少女の肉体は人間そのものだった。 <br /><br /> 千鶴「ええ。知ってるけど?」 <br /><br /> 『松尾千鶴』こと『アザエル』は、さも当然とでも言いたげに口を開く。 <br /><br /> ユズ「だったら、手加減は無用だね」 <br /><br /> ユズ「ここで狩らせてもらうよっ!」 <br /><br /> 千鶴「そう」 <br /><br /> 千鶴「―――まぁ、いいけど」</dd> <dt id="a503">503 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆lbKlS0ZYdV.M</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 01:52:42.69 ID:g+Df2CSTo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ユズが杖を手に取り『アザエル』の魔力を吹き飛ばそうとした刹那だった。 <br /><br /> ユズ「…!?」 <br /><br /> ユズ「(…魔力が込められない!?)」 <br /><br /> ユズ「(な、なんで…!?)」 <br /><br /> 魔術が使えない。 <br /> それどころか、自身の身体から魔力さえ感じなくなっている。 <br /><br /> 千鶴「どうしたの?早くしてよね?」 <br /><br /> 『アザエル』はユズに催促する。 <br /> しかし『アザエル』が何か先に仕掛けたのは明白。 <br /> でなければ、急に魔術が使えなくなるだなんてことはあり得ない。 <br /><br /> ユズ「(ていうか、まだ微かに魔力が残っているから良いけど…)」 <br /><br /> ユズ「(完全に魔力を失ったら、アタシ地面に叩き付けられちゃうよ…)」 <br /><br /> ユズ「(それに『アザエル』がアタシに何をしたのかも、わからない…)」 <br /><br /> 『魔族』は自身の魔力によって空を飛行することが出来る。 <br /> しかし、その魔力が尽きてしまえば、それは不可能となり空から叩き付けられるだけ。 <br /> 『魔族』とはいえ、この高さから叩き付けられるのは洒落にならない。 <br /><br /> ユズ「…くっ!」</dd> <dt id="a504">504 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆lbKlS0ZYdV.M</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 01:53:25.88 ID:g+Df2CSTo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 魔力を完全に練り上げるのも時間がかかる。 <br /> その間に仕掛けられたら一巻の終わりだ。 <br /><br /> 新たな標的を目の前にして不服ではあるが、やられてしまっては元も子も無い。 <br /> ここは『アザエル』が自分への興味を無くしていることを甘んじて受け入れ、この場を引くしかない。 <br /><br /> ユズ「…くっそぉ…!!」 <br /><br /> ユズ「覚えてろー!!」 <br /><br /> ユズは泣く泣くなけなしの魔力でその場から全力で逃亡した。 <br /> 当の『アザエル』はユズを追いかけるわけでも無く、ただその様子を無表情に見てる。 <br /><br /> 千鶴「まぁ、別に倒してしまっても良かったのだけれど」 <br /><br /> 千鶴「興味無くしちゃったしね」 <br /><br /> 千鶴「それよりも、彼女がルシファーを倒したというのは何かの間違いね」 <br /><br /> 千鶴「きっと、他にいるはず…」 <br /><br /> 一通り独り言を呟いたあと『アザエル』は黒い翼をはためかせて、夜の空へと消えていった。</dd> <dt id="a505">505 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆lbKlS0ZYdV.M</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 01:54:01.32 ID:g+Df2CSTo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ―――魔界更生施設 <br /><br /> ベルフェゴール「もう無理ゲー…」 <br /><br /> ユズに敗北し、キヨラに裁かれ、無力な少女の肉体のまま罪の重さの分だけ強制労働することになったベルフェゴール。 <br /> 僅かな休息時間があるものの『怠惰』を司る者としての精神は既に限界寸前だった。 <br /><br /> ベルフェゴール「これなら処刑されてデータ破損の方がマシだって…」 <br /><br /> ルシファー「貴女には生き地獄よねぇ」 <br /><br /> そんなベルフェゴールに語りかけるは、同じくキヨラによって裁かれた醜き悪魔ルシファー。 <br /> その罪はベルフェゴールよりも重く、数十世紀の強制労働は約束されている。 <br /><br /> ベルフェゴール「…こんなとこでも随分余裕じゃん」 <br /><br /> ベルフェゴール「『傲慢』にとって他の者の『下』で働くなんてプライドが許さないんじゃないの…?」 <br /><br /> ベルフェゴールの言うことはもっともである。 <br /> 自分に絶対的自身を持つ『傲慢』の感情を持つ者が『下』に見られるという屈辱に耐えられるはずがない。 <br /><br /> ルシファー「まぁねぇ」 <br /><br /> ルシファー「けど、それも後少しの辛抱よぉ?」 <br /><br /> ベルフェゴール「…どういうこと?」 <br /><br /> ルシファー「うふ…」 <br /><br /><br /> ―――『神により強くされた者』を敵に回しちゃったのはミステイクってこと♪ <br /><br /> ―――人間界が悪魔の手に落ち、そして彼女がいずれ魔界を統べるほどの力をつければ <br /><br /> ―――私たちも自由ってことね♪</dd> <dt id="a506">506 :<span class="name" style="color:#008000;"><b>@設定</b> ◆lbKlS0ZYdV.M</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 01:55:22.71 ID:g+Df2CSTo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 松尾千鶴(アザエル)(松尾千鶴の肉体は15歳) <br /><br /><s>ttp://iup.2ch-library.com/i/i0951197-1373128885.jpg </s><br /><br /> 職業:堕天使 <br /> 属性:神により強くされた者 <br /> 能力:詳細不明 <br /><br /> 本来は自分に自信の持てない天使だったが『傲慢』のルシファーに唆され、共に天界から堕天。 <br /> 『神により強くされた者』の異名を持ち、ルシファーにはその力を見出された。 <br /> 『神によって与えられた力を、神に反抗する為に使う』とまで言われているが、その能力は現在のところ不明。 <br /><br /> ルシファーと共に堕天したのだが『アザエル』自体の社交性は低く、不愛想。 <br /> 考えていることを口に出してしまう癖がある為、出来れば一人で行動したいらしい。 <br /><br /> 自分の力を見出してくれたルシファーの為か否か、ルシファーを討伐した者を追いかけている。 <br /> が、ユズには興味を無くしてしまったようだ。 <br /><br /> 憑依した人間の少女の名は『松尾千鶴』 <br /> 七三分けで太眉がチャーミングな15歳である。</dd> <dt id="a507"><span class="resnum">507</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆lbKlS0ZYdV.M</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 01:56:14.62 ID:g+Df2CSTo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">おわりです。 <br /> 四大天使出し切る前に新しい堕天使出して、またフラグだけ立てちゃった…</dd> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> </dd> <dt id="a519"><span class="resnum">519</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆j4KjALPDp2</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 03:44:48.32 ID:Qo7JiT60o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><span style="color:#0000FF;">&gt;&gt;515 </span><br /> まとめありがとうございます! <br /> ネネさん投下します</dd> <dt id="a520"><span class="resnum">520</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆j<span class="namenum">4</span>KjALPDp<span class="namenum">2</span></span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 03:45:43.99 <span class="id">ID:Qo7JiT60o</span></span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 『ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』 <br /><br /> 『オマエラウルセエンダヨオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』 <br /><br /> 『クソガオマエラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』 <br /><br /> 少し前のことです <br /> いきなりの出来事でした <br /> 突然のカースの大量発生 <br /><br /> パニックの中外を歩きまわる大量のカース <br /> どんどん理性を失って暴徒化する人々 <br /> 数時間でこの街はまさに地獄絵図の状態になってしまいました… <br /><br /> 幸い私がなんとか張った『結界』の能力で私がいた病院にはカースは近づけなくなったみたいです <br /><br /> その後周りにいた人々も少しずつここに集まってきて今に至ります <br /><br /> 今から私と同じ病院に居た『能力者』と先生が集まり対策を練るところです</dd> <dt id="a521"><span class="resnum">521</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆j4KjALPDp2</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 03:47:07.63 <span class="id">ID:Qo7JiT60o</span></span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">――― <br /><br /> 炎P「くそっ!繋がらねぇ!ヒーロー協会も!GDFもだ!」 <br /><br /> DrP「ちくしょう…ここの施設の電気もあと持って1週間って所か…」 <br /><br /> 電気P「俺の能力じゃ奴らには敵わない…どうすれば…」 <br /><br /> 炎P「ここに武器は無いのか…?」 <br /><br /> DrP「一応緊急時に備えて少しだけだったら無いこともないが…」 <br /><br /> 氷P「銃なんて使ったことねぇよ俺!」 <br /><br /> 「あの…一旦落ち着いて…」 <br /><br /> 氷P「落ち着いてられるかよ!どうしてこんな事に…許せない許せない許せない…」 <br /><br /> 炎P「お譲ちゃんの言うとおりだ!落ち着けって!」 <br /><br /> 電気P「…何だ!?こいつ様子が」 <br /><br /><br /><br /> 『ユルセナイイイイイイイイイイイイイイイ!!!』 <br /><br />  </dd> <dt id="a522">522 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆j4KjALPDp2</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 03:48:47.25 ID:Qo7JiT60o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 炎P「おい!…畜生こいつも『呑まれ』やがった!」 <br /><br /> DrP「結界の中でカースが発生されたら手の付けようが無いぞ!」 <br /><br /> 「大丈夫です…なら…私が…」 <br /><br /> 力を集中して…円のイメージ…そして… <br /><br /> 力を開放する感覚と共に人一人分くらいの半円に近い『空間』が生まれます <br /><br /> 更に…イメージ…癒し…大きな樹みたいな… <br /><br /> 『クソガアアアアアアアアァァァァァァダシヤガレエエエエエエエェェェェェェえええええええ………』 <br /><br /> すこしずつ収まる声…どさっと人が倒れる音 <br /><br /> 少ししたら覆っていた泥のようなものが『浄化』され赤黒くなりかけてた体が静まって行きます <br /><br /> なんとか…なった…?</dd> <dt id="a523">523 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆j4KjALPDp2</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 03:50:23.22 ID:Qo7JiT60o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 氷P「お…俺は…何を…」 <br /><br /> DrP「カースになりかけたんだよ!お譲ちゃんが何とか止めてくれたんだぞ!」 <br /><br /> 氷P「すまねぇ…お譲ちゃん…」 <br /><br /> 「いえ…大したことでは…」 <br /><br /> 炎P「今のを見る限りトリガーは『怒り』っぽいな…」 <br /><br /> 電気P「そんな…この状況で抑えられる方がおかしいだろ…」 <br /><br /> 炎P「お譲ちゃんにだって限界はあるし今は自分を強く持つしか…」 <br /><br /> DrP「落ち着こう…とりあえず一旦状況を整理しよう…」 <br /><br /> その後色々あって分かったことは <br /> ・歩き回っているのは『憤怒』のカースであり、怒りや憎しみが抑えられなくなると人がカース化してしまう事 <br /> ・外との連絡は一切断たれて居ること <br /> ・この街の中だったらなんとか連絡は取れ、あちこちに私達と同じような生き残りの集団があること <br /><br /> そして… <br /><br /><br /> この病院の中でカースに対抗できる能力を持つのは私だけな事 <br /><br />  </dd> <dt id="a524">524 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆j4KjALPDp2</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 03:52:03.58 ID:Qo7JiT60o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> DrP「こんな所か…」 <br /><br /> 炎P「人間がカース化なんて前例が無いぞ…」 <br /><br /> DrP「とりあえず更にに『呑まれる』人が出るのを防ぐのに俺ら以外の人たちを安心させなくちゃな…」 <br /><br /> 氷P「不安にさせないように俺達の能力が使い物にならないことは隠しておくしか…」 <br /><br /> 電気P「ちくしょう不甲斐ねぇ… 俺にももっと力があれば…」 <br /><br /> 「大丈夫です」 <br /><br /> 「きっと…なんとかなります」 <br /><br /> 「諦めちゃだめです…」 <br /><br /> 「なんて今は全然意味の無い言葉ですけど…きっと…」 <br /><br /> DrP「…そうだな、俺たちだって何も出来ないわけじゃない…この病院だけでも守ろうな」 <br /><br /> DrP「そういえば自己紹介もまだだったな…俺はドクターP、お譲ちゃんは?」 <br /><br /> 「栗原…ネネです…」 <br /><br /> DrP「ああ!栗原さんのお姉さんか!すまん思い出す余裕も無かった。ネネちゃん…今は辛い役を押し付けてしまうが…よろしくな」 <br /><br /> ネネ「はい…」 <br /><br /> とりあえず今の状況を維持しつつなんとか残りの能力者と連絡を取り合流する方法を見つけることになったようです <br /> 正直なことを言うと…未だに実感が沸きません <br /> 落ち着いてるようにみんなは思ってくれてるみたいですが今の私はこの状況をお話の中だって思い込んでるような感覚です <br /> だから今まで使ったことのない能力を使うことが出来たみたいですが… <br /> 先は全く見えませんが…きっと…この力で最悪でも…妹だけは守ってみせます…</dd> <dt id="a525">525 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆j4KjALPDp2</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 03:53:53.21 ID:Qo7JiT60o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">栗原ネネ <br /> 『結界』の能力者 <br /> 結界の中は『癒し』の力があるらしく <br /> カースから守る結界を張ったり中に入れて人を浄化したりできる <br /> 難病の妹のお見舞いに来るのに隣町から来たら不幸にも憤怒の街に呑まれてしまった <br /> 火事場の馬鹿力でなんとか張った病院を守る結界の中で生き残るため頑張っている <br /> 結界は小さいほど浄化力は高く大きいとカースが入りにくくなるくらい <br /> 頑張ればいくつか張れないことも無いが消耗が激しい <br /><br /> 炎P氷P電気P <br /> ほのおのパンチ こおりのパンチ かみなりパンチではない <br /> 能力は弱くひのこ こなゆき でんきショックくらい <br /> 運悪く巻き込まれたへっぽこ能力者 <br /><br /> DrP <br /> ネネさんの妹の担当医 <br /> カースや宇宙人襲撃に備えて少し訓練を受けてたが所詮素人に毛が生えたくらい <br /> 頑張って病院の中の人々をまとめている</dd> <dt id="a526"><span class="resnum">526</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆j4KjALPDp2</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 03:54:49.92 <span class="id">ID:Qo7JiT60o</span></span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> とりあえず予定してたネネさん使って憤怒の街の中の様子っぽいものを書いてみました <br /> すごい世紀末</dd> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> </dd> <dt id="a534">534 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆C/mAAfbFZM</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage]:2013/07/07(日) 16:19:29.73 ID:QujVUTLAO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 予約していた星輝子の方を投下します。 <br /> 時系列的には泰葉ちゃんが姿を消す前でカースドヒューマンの三人が絡みます。 </dd> <dt id="a535"><span class="resnum">535</span> :<span class="name" style="color:#008000;"><b>何故か予約していたコテと違ってるorz</b> ◆C/mAAfbFZM</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage]:2013/07/07(日) 16:30:38.10 <span class="id">ID:QujVUTLAO</span></span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 幸子「今日もボクってカワイイですね!(ドヤッ」 <br /><br /> ??「……フヒ」 <br /><br /> 幸子「ん?そこの君、このボクに何かようですか?」 <br /><br /> ??「お腹……すいた……フヒ」 <br /><br /> 幸子「何か食べたいのですか?せっかくだからカワイイボクがおごってあげますね」 <br /><br /> ??「うまそう……フヒ」 <br /><br /> 幸子「……へっ?」 <br /><br /> ??「フヒヒヒ……うまそうな血ぃ……」 <br /> 幸子「……へっ?へっ?」 <br /><br /> ??「フヒヒヒ、ヒャハハハ!お前の血ぃ、吸わせろぅぅぅ!」 <br /><br /> 幸子「ちょ、ふぎゃぁ!?」</dd> <dt id="a536"><span class="resnum">536</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆C/mAAfbFZM</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 16:32:56.75 <span class="id">ID:QujVUTLAO</span></span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ~カースドヒューマン隠れ家~ <br /><br /> 泰葉「……幸子、遅いわね」 <br /><br /> 杏「う~ん、そうだね~(ポリポリ)」 <br /><br /> 泰葉「はぁ……ただでさえ最近ヒーロー達の活動が活発になってきてると言うのに……」 <br /><br /> 杏「仕方ないよ、幸子はああいう性格なんだから」 <br /><br /> バタン! <br /><br /> 幸子「ただいま、カワイイボクが帰りましたよ!」 <br /><br /> ??「……お、お邪魔します」 <br /><br /> 杏「あっ、噂をすればなんとやらだね――ところで幸子、その後ろにいる奴誰?」 <br /><br /> 幸子「気付きましたか、杏さん――この子は星輝子ちゃんボク達の新たな仲間です!」 <br /><br /> 輝子「フフ……私、星輝子……友達はキノコだけ……」 <br /><br /> 杏「何?この明らかにコミュ障としか思えない子は」 <br /><br /> 幸子「フフン、驚かないでないでください、彼女こう見えて列記とした吸血鬼なんです!」 <br /><br /> 杏「へぇ~」 <br /><br /> 泰葉「ふぅ~ん」 <br /><br /> 輝子「……あれ?思ったより反応が薄い……」 <br /><br /> 泰葉「人外とかしょっちゅう出会ってますからね、慣れているんです――ところでこの子は何が出来るの?」 </dd> <dt id="a537"><span class="resnum">537</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆C/mAAfbFZM</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 16:35:18.67 ID:QujVUTLAO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 幸子「そうですね……杏さん、彼女の目を見てくれませんか?」 <br /><br /> 杏「……こう?」 <br /><br /> 幸子「……今です!輝子ちゃん、お願いします」 <br /><br /> 輝子「フヒ……!」 <br /><br /> 杏「……ッ!」 <br /><br /> 輝子『今から……スクワットを……してください』 <br /><br /> 杏「……(ヒンズースクワット)」 <br /><br /> 泰葉「これは……!」 <br /> 幸子「これが輝子の能力の一つ『魔眼』を使用した催眠です!(ドヤッ」 <br /><br /> 泰葉「これは中々強力な能力ね――ただ……」 <br /><br /> 杏「……ッ!ハァハァ……つ、疲れた……」 <br /><br /> 泰葉「――効果時間が数十秒なのはいくら何でも微妙すぎるは」 <br /><br /> 幸子「ま、まだとっておきがあるんですよ!――輝子ちゃん、ボクの血を飲むのです!」 <br /><br /> 輝子「う、うん……わ、わかった(カプッ」 </dd> <dt id="a538"><span class="resnum">538</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆C/mAAfbFZM</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 16:37:34.41 ID:QujVUTLAO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">ドドドド! <br /><br /> 輝子「……フヒ」 <br /><br /> 杏「おっ、心なしか空気が変わってきた気が――」 <br /><br /> 輝子(特訓後)「フヒ、フハ、フハァハハハ!ゴートゥヘル!」 <br /><br /> 杏「――って、何か色々すごい事になってる!?」 <br /><br /> 輝子「コレだよ、コレ!最高にハイッて気分だ!フハハハハ!」 <br /><br /> 泰葉「魔力もすごい事になってるわね」 <br /><br /> 幸子「フフン!輝子ちゃんはボク達カースドヒューマンの血を飲む事でパワーアップできるのです!(ドヤッ」 <br /><br /> 輝子「シイタケ!エリンギ!ブナシメジ! キノコ!……フヒ……」 <br /><br /> 泰葉「すごいわね……ただ――」 <br /><br /> 輝子(特訓前)「フ、フヒ……キノコーキノコーボッチノコーホシショウコー……」 <br /><br /> 泰葉「――最大効果時間は?」 <br /><br /> 幸子「……ボクが気絶するまで飲ませて、三分ぐらいです」 <br /> 杏「……」 <br /><br /> 泰葉「……」 <br /><br /> 杏・泰葉(色々と残念すぎる……!) <br /><br /> 泰葉「ま、まぁいいわ役に立たないと言うわけでもないし仲間にいれましょ――えっと星輝子ちゃんだっけ?私は岡崎泰葉、よろしくね」 <br /><br /> 杏「あ~、私は双葉杏だよ、まっよろしく」 <br /><br /> 輝子「……泰葉さんに、杏さん……こ、こちらこそよろしく……あっこれお近づきの印です、よかったらコレどうぞ」 </dd> <dt id="a539">539 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆C/mAAfbFZM</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 16:39:52.22 ID:QujVUTLAO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 泰葉「う、うん、ありがとう(キ、キノコの生えた植木鉢……)」 <br /><br /> 杏「き、気持ちだけは受け取っておくね~(キノコじゃなくて飴がよかった……)」 <br /><br /> 幸子「紹介もすんだ所ですしこの子をマンションまで送りますね」 <br /><br /> 輝子「……お、お邪魔しました……」 <br /><br /> パタン <br /><br /> 杏「……」 <br /><br /> 泰葉「……」 <br /><br /> 杏「これから大変だね」 <br /><br /> 泰葉「ええ、そうね……」 <br /><br /><br /><br /><br /> この出会いから数ヶ月後、岡崎泰葉が彼女達の前から姿を消してしまう事になるがそれはまた別の話である <br /><br /><br /> ~おわり~</dd> <dt id="a540">540 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆C/mAAfbFZM</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 16:42:09.28 ID:QujVUTLAO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">星輝子 <br /> 職業:吸血鬼 <br /> 属性:カースドヒューマンの仲間 <br /> 能力:催眠、吸血によるパワーアップ、その他吸血鬼関連の能力全般 <br /> 魔界出身の吸血鬼の少女で割と名家として名が通っている。 <br /> 人間界へ来た理由は本人曰わく修業なのだがご覧の有り様なので禄に他人から血を吸うことができず一週間も過ごしてしまい、その時ちょうど幸子と出会い冒頭にいたる。 <br /> 現在は幸子が定期的に献血しているため吸血衝動は抑えられている。 <br /> ちなみに日光に関しては当たっても灰にはならないがそれでも苦手らしく相当弱体化する。 </dd> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> </dd> <dt id="a549">549 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 17:08:22.11 ID:lYvz9IOo0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">投下します</dd> <dt id="a550"><span class="resnum">550</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 17:09:07.89 <span class="id">ID:lYvz9IOo0</span></span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 神崎家。蘭子の部屋にユズも含めた3人がいた。 <br /><br /> 「…それで、まだ他の大罪の連中は見つからんのか?」 <br /><br /> 「はい…最近暴食の強い魔力は感じましたけれど。他のターゲットの魔力は…見つけても痕跡は殆ど消されていて、思ったより難航してます…強欲も見失ったし…」 <br /><br /> 蘭子の部屋に3人が一緒に入ると少し狭い。まあもともと1人の部屋だから仕方ないのだが。 <br /><br /> 「大罪の悪魔がカースを生んでいるんですよね?」 <br /><br /> 「全部魔力生まれではないんです。…感情生まれの方が再生力も凶暴さも上ですが。さて、仕事の話はここまで。姫様、蘭子様、魔術の勉強しましょうか。」 <br /><br /> ユズは立ち上がると蘭子が昼子を召喚した時の魔術書を本棚から取り出した。 <br /><br /> 「よ、よろしくお願いしますね!」 <br /><br /> 「学校帰ってすぐにこれか…魔術は好きだが…疲れてるのだぞ…」 <br /><br /> 「今日は宿題が出てないのは知ってますし、教師を頼んだのは姫様ですからね?」 <br /><br /> 「人間界の勉強は魔界以上に難しいのだ!蘭子は英語読めるのだぞ!羨ましい!」 <br /><br /> 「読めるだけで文法は分からないんだけど…」 <br /><br /> 「…姫様、魔界では貴方も含めて勉強嫌いが多いだけで知能レベルは同等です…他の教育係も嘆いていましたよ…」 <br /><br /> ページをめくりながらユズが嘆く様に呟いた。</dd> <dt id="a551">551 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 17:09:39.87 ID:lYvz9IOo0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「…さて、蘭子様が姫様を召喚する時に使ったこの魔術書。魔力の基礎とか書かれているので、そこから学びましょうか。」 <br /><br /> 「えっと、ユズさんは魔力管理人さんなんですよね?やっぱりすごい職業なんですか?」 <br /><br /> 「はい。別世界も含めた魔力のバランサーをしてます。すごい…職業なんでしょうね…あはは…。あ、一応種族が死神なので魂も狩れます。」 <br /><br /> その発言に蘭子が首をかしげる。 <br /><br /> 「種族…が死神なんですか?職業じゃなくて?」 <br /><br /> 「はい。悪魔…というか魔族の種族は割と分別されているんです。馬みたいなのもいれば虫みたいなの、人みたいなのがいますし。」 <br /><br /> 「まぁ、魔界にいれば大体魔族だからな。悪魔と魔族はイコールで結ばれる。人間がこの世界の生物を分けるように、特徴で種族を分けた。」 <br /><br /> 「死神は生まれ持って魂を扱うことに長けた種族です。…生まれたその日から激務を強いられます。」 <br /><br /> 「え?げ、激務!?」 <br /><br /> 少し憂鬱そうにユズが続けた。 <br /><br /> 「…人間界で人は絶えず死に続けています。その魂を魔界へ送り、裁きを受けさせるのが仕事。…人数が足りるはずがない!」 <br /><br /> ユズは鬱憤を晴らすように聞かれてもいない死神事情を語り続けた。</dd> <dt id="a552">552 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 17:10:13.29 ID:lYvz9IOo0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 死神は狩り取り係、運搬係が何人かで組まされ、それに命令を下すリーダー、魂の数・性別・その他の記録を残す記録係、それらの管理係、そして長である死神長で形成される。 <br /><br /> 一番きついのは狩り取り係。毎日がサンタクロースだ。死人を確認したリーダーの命令で狩るのだが…高速で狩らなければ間に合わない。 <br /><br /> リーダーも死人を認識しきれずに、地縛霊とかになってしまうまで放置してしまうと責任を問われる。 <br /><br /> それを運搬するのもかなり大変だ。絶えず送られてくるそれらを魔界の門へ投げ込まないといけない。 <br /><br /> 休む時間も少なく、休みも滅多にない。裁きを受け労働を強いられる奴らよりはマシなだけ。そしてそれがおかしいと気付いている死神は少ない。 <br /><br /> だから杖に選ばれて死神業が免除されたときは暇すぎて何をすればいいかわからなかったものだ。 <br /><br /> …今はそんな時間は鍛錬に使っているが。 <br /><br /> 「…だから人間界でいうブラック企業が他人事じゃなくて…って話がそれました。」 <br /><br /> 咳払いをして魔力の説明に戻る。</dd> <dt id="a553">553 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 17:11:09.82 ID:lYvz9IOo0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「魔力とは…まあタンクとホースの説明が一番わかりやすいですよね。それと同時にゲームのMPような物でもあります。寝ると回復しますし。」 <br /><br /> 魔力の器は持っている人と持っていない人で分断される。つまり魔力を留めておけないのだ。 <br /><br /> 留めておけない者はもちろん魔法を使うことはできないし、仮に誰かから魔力を奪ったとしても消滅し、使うことはできない。 <br /><br /> そして、魔力の器を持っていない人はもちろん魔力が回復する事もない。魔力に愛されていないのだから。 <br /><br /> これはゲームシステムでも同じ。MP0のキャラにMP回復アイテムを使っても無意味だし、レベルアップでMP上限が増えることも無い。 <br /><br /> 「蘭子様は魔力の器がありますから、努力すれば器も大きくなり、それなりの魔法が使えるでしょう。全くない者にはそれは不可能ですがね。」 <br /><br /> 「本当ですか!」 <br /><br /> 「魔力管理人のアタシを信じてくださいよー。」 <br /><br /> 「…そっちの仕事は大丈夫なのか?」 <br /><br /> 「最近魔力のクリスタルの調整を行ったばかりなんで魔力の流れが綺麗になったばかりなんですよ!おかしい流れ全部戻しましたし!」 <br /><br /> 「魔力の妙な流れとか!本 来 な ら!魔力を動かせるのは自分だけのはずなんですがねぇ…サタン様辺りは自身の魔力の流れを調整できるそうですよ…見えないだけで。」 <br /><br /> 「あースマン。しっかり仕事していたようだな。」 <br /><br /> すっかり自信喪失しているようだ。 <br /><br /> 最近堕天使に襲われてからユズは魔力管理塔でおかしいところをすべて修正した。 <br /><br /> 本来ならあんなことはあり得ないのだから。…しかし努力も空しく、堕天使関係の魔力の流れは特になかった。 <br /><br /> 精々異常な量の魔力が巧妙に隠されて流れていたことぐらいだろうか。魔力の賄賂はいけないことだ。 <br /><br /> 「当たり前ですよー…まあ今言いたかったことは、鍛錬大事ってことです!鍛錬さえすれば人間でも悪魔に勝てます!」 <br /><br /> 「はい!」 <br /><br /> 「父上…与えた影響が大きすぎではないか…?」 <br /><br /> 昼子はそうつぶやく事しか出来なかった。</dd> <dt id="a554">554 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 17:11:57.35 ID:lYvz9IOo0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">「…?」 <br /><br /> ふと、違和感を感じて窓の外を見る。 <br /><br /> それよりも早く、ユズが窓に駆け寄った。 <br /><br /> 「憤怒の力を感じる…!」 <br /><br /> 「…父上は魔界にいるのではなかったのか?」 <br /><br /> 「いえ、サタン様の力は感じません。魔力ではなく、憤怒そのもの…カースの力です…!これほど大きいカース反応、あの強欲のカース以上ですよ…!」 <br /><br /> 「ご、強欲ってあの強欲の王?あれ以上憤怒のカースって…!」 <br /><br /> 「いえ、今はデカいのはいません。それでも個々の能力が異常です…あれが集まれば強欲の王以上の何かにはなる…!」 <br /><br /> 「…いくぞ。」 <br /><br /> 翼を出して飛んでいこうとする昼子をユズが止める。 <br /><br /> 「ダメです!貴方が危険な目にあったらサタン様が魔界からやってこないとも限りません!」 <br /><br /> 「それがどうした!我がそこまで弱いというのか!」 <br /><br /> 「ダメなものはダメです!サタン様があの憤怒の力の中でキレたら…!いろいろ不味いですってば!」 <br /><br /> ただでさえ体調がすぐれない(ように見える)サタンが、力を解放したらどうなるか、分かったものではない。 <br /><br /> 「…確かに、世界が滅びかねんな…しかし黙って見ていろというのか!」 <br /><br /> 別の解釈をしてくれた昼子に感謝しつつ、脳内でどう説得するか必死に考える。</dd> <dt id="a555">555 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 17:12:28.34 ID:lYvz9IOo0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 魔力以外の力の流れも操作はできないが見る事はできる。あれは異常だ。あそこにいたら気が狂ってしまいそうなほどの感情エネルギーだ。 <br /><br /> 「魔族はただでさえ人間より負の方向に感情が向きやすいんですよ!あんなところにいたら…正気でいられるとは到底思えないんです!」 <br /><br /> その時、テレビの内容が臨時ニュースに変わった。 <br /><br /> 『突如現れた大量のカース!街はご覧のように地獄絵図と化しています!』 <br /><br /> ヘリコプターに乗ったリポーターが上空から街の様子を実況している。 <br /><br /> 『人々はカースの力に飲まれ暴徒と化しています!しかしまだ正気を保った人間は生存している模様!』 <br /><br /> 「…ユズ、映像がチラついていないか?」 <br /><br /> 「ヘリコプターもカグガクしてる気が…見てて酔いそう…」 <br /><br /> 「これ…特殊な結界ですよ!機械さえ調子が狂ってしまうような…!何者なんですかこの犯人!悪魔ではないみたいですけど…!」 <br /><br /> 『現在アイドルヒーロー同盟等の突入計画も難航して…え?う、うわあああああああああああああ!』 <br /><br /> 映像が途絶えた。 <br /><br /> カメラに最後に映し出されたのは、黒い物体が大量に飛んでくる映像。おそらくカースの攻撃で撃ち落とされたのだろう。 <br /><br /> 「う…嘘…!死んじゃった…?」 <br /><br /> 「あれでは空中からの侵入も難しいぞ!」 <br /><br /> 「姫様、今回は諦めてください!お願いですから!」 <br /><br /> 懇願するようなユズの視線を受け、昼子は唸る事しか出来なかった。</dd> <dt id="a556">556 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 17:13:42.39 ID:lYvz9IOo0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ネバーディスペアも、突入計画は難航していた。 <br /><br /> 「…どう、なってんだよ…!」 <br /><br /> 頼みの綱であった夏樹の穴が上手く作れないのである。どんなにイメージしても精々手が通る程度。到底侵入はできそうにない。 <br /><br /> 「なつきち…大丈夫?」 <br /><br /> 「大丈夫だ…ここまで疲れたのは久々なだけ…」 <br /><br /> しかもかなり疲労している。十秒程開けていただけなのに。 <br /><br /> 『これは…マズイぞ…』 <br /><br /> 連絡を取っていたLPも困惑している。 <br /><br /> 「…取り残された奴らもいるんだぞ!あたしたちが行けないなら誰が行くって言うんだよ!」 <br /><br /> 奈緒が今にも飛び出しそうなのをきらりが羽交い絞めにして抑える。 <br /><br /> 「きらりも…今すぐ行きたいよ…!でも、でも!危ない事したら皆も悲しいからダメ!」 <br /><br /> 「…でも…!」 <br /><br /> 『…とりあえずこちらからも様々な組織にアプローチしている。まだ…まだ何か手段があるはずだ!だから…すまないがそれまで待機命令を出す。勝手な行動はしないようにしてくれ。』 <br /><br /> 「…了解。」 <br /><br /> 憤怒の街にまだ救いの手は来ない。</dd> <dt id="a557">557 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 17:15:20.06 ID:lYvz9IOo0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">以上です <br /> 最初はユズちゃんの魔術講座だったけど色々展開が起きたので少し路線変更。違和感があったらすみません <br /> ネバーディスペアが侵入できない理由も作ったり。なつきち含む機械類の調子が悪いみたいです。</dd> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> </dd> <dt id="a563">563 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆kaGYBvZifE</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 21:41:46.53 ID:0KKU5keR0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">黒川さん投下</dd> <dt id="a564"><span class="resnum">564</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆kaGYBvZifE</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 21:42:34.13 <span class="id">ID:0KKU5keR0</span></span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ―――――――――― <br /><br /> 黒川千秋という人物を語る言葉はいくつか挙げることができるが、そのいずれが彼女を最もよく <br /> 表しているかは、実際に会ってみてその印象から推し量るほかないだろう。 <br /><br /> それはルナール社の重役の娘であり、歌手を目指す20歳の大学生であり、常にトップを目指して努力を <br /> 怠らないストイックさを持った才媛であり、そして『歌姫』の最初のファンの一人でもあった。 <br /><br /> 『歌姫』が最初に姿を現したあの日。 <br /> 街をカースの群れが埋め尽くし、呪詛を吐き散らしながら破壊と暴力の限りを尽くさんとする、 <br /> その現場に千秋もいたのだ。 <br /><br /> ショッピングモールの中にカースが出現し、買い物客がパニックを起こす中、千秋は咄嗟の判断で <br /> スタッフルームのロッカーの中に身を隠していた。 <br /> 遠くで聞こえる破壊の音と人々の絶叫が身を震わせるのを自覚しながら、千秋はじっと息を殺し、 <br /> カースの暴威が行き過ぎるのをひたすら待った。 <br /><br /> しかし、カースは視覚や嗅覚といった五感のみならず、人間から発せられるマイナスエネルギーを <br /> 感知する超感覚を備えている。 <br /> 泥の肉体をまとった形ある呪いは、千秋の恐怖心を嗅ぎ取ってスタッフルームに踏み込んできたのだ。 <br /><br /> スチール製のロッカーの扉に硬質化した泥の爪を突き立て、扉を力任せにひしゃげさせながら、 <br /> その破壊衝動のままに彼女をも害そうと迫っていた。 <br /><br /> 千秋は、ゆっくりとこじ開けられていく扉の向こうに、黒い泥で出来た不定形の怪物を――顔のない、 <br /> しかし激情と悪意に満ちているその風貌を目に焼き付けながら、声にならない呻きを漏らした。</dd> <dt id="a565">565 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆kaGYBvZifE</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 21:43:12.75 ID:0KKU5keR0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">その時だった。 <br /><br /> 幼い頃に聴いた覚えのある優しいメロディが、震える千秋の耳朶に触れた。 <br /> そして――どこかから、歌声が聴こえた。 <br /><br /> 「……?」 <br /><br /> 気がつくと、カースは扉に手をかけたまま静止している。まるで歌声に聞き入るように。 <br /><br /> 空の果て、虹の彼方にある理想郷を思い描いて、それを目指す勇気と希望を歌い上げるその歌は、 <br /> おそらくスピーカーか何かに拡散されて、遠い蒼穹の果てまでも広がっていったのだろう。 <br /> その優しい歌声は、千秋の恐怖に塗り込められた心までをを解きほぐしていくようだった。 <br /><br /> 無意識のうちに、千秋もその歌を口ずさんでいた。 <br /><br /> 「……Somewhere over the rainbow, way up high……♪」 <br /><br /> 今まで感じたことのない、不思議な気分だった。 <br /><br /> 様々な機材を通しているが、加工もされていないだろうその歌声は、ハッキリ言って素人に毛の生えた <br /> 程度の代物だ。発声もまだまだだし、ビブラートのかけ方も下手。技術の点で言えば、自分の方が <br /> 断然優れている確信がある。 <br /><br /> けれど、何故だか心に訴えかけるものがある。 <br /><br /> 理屈では語れない、聴く者の心の澱を洗い流す何かが、そこにあったのだ。 <br /> 自分の歌には宿ることのない何かが。 <br /><br /> カースが溶けて崩れていなくなっても、千秋は歌声が聴こえなくなるまで『歌姫』と共に歌っていた。</dd> <dt id="a566">566 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆kaGYBvZifE</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 21:44:11.07 ID:0KKU5keR0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> それから数ヶ月が経過し、世界が様々な変化に晒される中、千秋の生活も大きく変わっていった。 <br /> とある芸能事務所から歌手としてデビューすることになったのである。 <br /><br /> あの日以来、彼女はレッスンの傍らあちこちを駆けまわって『歌姫』のことを調べていたが、結局 <br /> 有力な手掛かりは何一つ得られなかった。 <br /><br /> ああまで人の心を動かせるのなら、業界人の誰かが『歌姫』のことを知っているに違いないと思ったのだが、 <br /> まったく無名どころかその正体さえわからないという有様だった。 <br /> ネット上では『歌姫』の正体を特定しようとする動きもあるようだったが、そちらもダメだった。 <br /><br /> カースが大量発生した場所に現れては、歌声によってカースを浄化していく。 <br /> テレビ中継やラジオでその存在が広く知られるようになっても、彼女は何一つ語らず去っていく。 <br /> 浄化の歌を歌う際に一隻の宇宙船が姿を現し、『歌姫』の姿を空に投影することから、今のところ <br /> 『歌姫』=宇宙人説が多くの支持を集めているらしいが……。 <br /><br /> とはいえ、千秋としても『歌姫』の正体を暴いてどうするのかという具体的な展望はなかった。 <br /> ただ、会って話がしたい。せいぜいその程度のことだった。 <br /><br /> 千秋には、歌で頂点を極めたいという夢がある。 <br /><span style="color:rgb(35,20,20);font-family:'MS PGothic', Arial, sans-serif, Osaka;font-size:medium;line-height:17.600000381469727px;background-color:rgb(239,239,239);"> そのためには学業と歌手を両立もしてみせるし、どこまでも歌の道を追求していく覚悟だ。</span> <br /> ならば『歌姫』には何があるのか。どうして歌うのか? <br /> 何が彼女の根底にあればこそ、あんなにも優しい気持ちになれる歌を歌えるのか? <br /><br /> あの日、彼女の歌に心を動かされたからこそ、それを知りたかったのだ。</dd> <dt id="a567">567 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆kaGYBvZifE</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 21:45:14.49 ID:0KKU5keR0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ―――――――――― <br /><br /> プロデビューが決まったとはいえ、新人の千秋にはまだまだ仕事が少ない。 <br /><br /> 多くの時間をレッスンやレコーディングに費やしながら事務所の雑用や先輩歌手の付き人をしたり、 <br /> 時にはスポンサーとの付き合いもあり、まず顔と名前を売って人脈を築くことが肝要となる。 <br /> ツアーやコンサートのような大きな仕事は回ってきようもないだろう。 <br /><br /> その日千秋は、とあるホテルのディナーショーの前座で何曲か歌うことになっていた。 <br /><br /> 小さな仕事だが、いずれトップに立つためには必要な仕事と彼女も了解していた。 <br /> 仕事を選り好みできるような立場ではないし、元より妥協や手抜きは彼女には無縁のことだ。 <br /> それに今夜自分の歌を聴いた者の中に、将来自分のスポンサーになってくれる者がいるかもしれないと <br /> 考えれば、手抜きの自分を見せることなどできようはずもない。 <br /><br /> 「これはもっと大きな仕事に繋がる中継地点……でも、だからこそ最高の歌を聴かせないとね」 <br /><br /> 自分に言い聞かせるように口中に呟き、千秋は控室の壁の向こう側にこことは違うどこかを見ているような <br /> 面持ちで出番を待った。 <br /><br /> やがてショーが始まり、彼女の番が回ってくる。 <br /> 所詮は前座の新人歌手と軽んじられても、今は全力を尽くすのみと決め込んだ彼女の歌声は、 <br /> 一切の恐れも緊張も振り切って、堂々とホールに響き渡っていた。</dd> <dt id="a568">568 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆kaGYBvZifE</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 21:46:18.50 ID:0KKU5keR0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 千秋の出番が終わってしばらく経ったとき、一人の男が彼女を訪ねてきた。 <br /><br /> 背の高い痩身に仕立てのいいスーツを着込み目元をサングラスで隠した男は、どこか飄々とした態度で <br /> 「実は私、貴女のファンでして」と言い、口元をにたりと歪めた。 <br /><br /> 「私の見るところ、貴女はショーの前座などで収まるような人ではありません。 <br />  そちらさえよろしければ是非、貴女を支援させて頂きたいのですが」 <br /><br /> 泰然とした薄笑いを浮かべたまま言う男の印象は、ハッキリ言ってしまえばあまりにも胡散臭い。 <br /> スポンサーの申し出なら願ってもないことだが、デビューして間もない自分にそんな話が転がり込むのも <br /> 出来すぎな話だ。 <br /> 冗談で言っているか、そうでなければ身体目当ての不埒者かと当たりをつけた千秋は、牽制するように言った。 <br /><br /> 「申し出はありがたいのですけれど、私をそこまで評価してくださるのは何故かしら? <br />  自分で言うのもなんですけど、私はデビューしたてで知名度もない新人です」 <br /><br /> 千秋の言いように、男は喉奥からひきつったような笑いを絞り出す。 <br /><br /> 「クッククク……ええ、それなんですがね。実は、貴女が例の『歌姫』のことを探ってるっていうんで、 <br />  それをきっかけに貴女のことを知ったんですよ。『歌姫』に会いたがっている女性がいるってね。 <br />  そうでしょう?」 <br /><br /> 「……確かに、色々な方に『歌姫』のことをお聞きしました」 <br /><br /> 「ですが笑えますねぇ? あんな素人の歌手気取りが『歌姫』だなどと」 <br /><br /> 唐突に言い放った言葉に絶句した千秋の顔を見やり、男は口元の笑みを深くした。</dd> <dt id="a569">569 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆kaGYBvZifE</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 21:47:24.84 ID:0KKU5keR0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「所詮は無責任なメディアのつけた呼び名にすぎません。あの女は史上最低の出来損ないです。 <br />  多少運がいいというだけであんなに持て囃されているんですから、世の中不公平ですよねぇ?」 <br /><br /> 「……あなた、『歌姫』の何を知ってるの」 <br /><br /> 目の前の得体の知れない男に対する警戒感はあったが、それ以上にこの一方的な言い方に反発する <br /> 気持ちが勝っていた。驚きと、多少の怒りを滲ませた顔を向け、千秋は言葉を継いだ。 <br /><br /> 「『歌姫』が技術の面では未熟だっていうのは私にもわかっているわよ。これでもプロのはしくれだもの。 <br />  でも、あの聴いた人の心を動かす歌は――」 <br /><br /> 「そりゃあ心も動くでしょうよ。あれは全部、能力のおかげなんですから」 <br /><br /> 「え……?」 <br /><br /> 「どうも世間は誤解しているようですがね。あれは歌声によってカースを浄化する能力ではなくて、 <br />  他人の心に干渉して操作する能力なんですよ。だからカースも鎮まるし、浄化もされる。 <br />  聴いた人間の心を鎮めるくらいわけもない」 <br /><br /> 「嘘……そんなこと……」 <br /><br /> 「貴女が心を動かされたのだとすれば、歌に感動したんじゃなくて、感動『させられた』にすぎません」 <br /><br /> 言葉を失った千秋に、男はさらに畳みかけた。 <br /> まるで、彼女を追い詰めるためにしているかのように。</dd> <dt id="a570">570 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆kaGYBvZifE</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 21:49:01.86 ID:0KKU5keR0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「ああ、なんたる悲劇でしょうか! 貴女のような素晴らしい歌手がひと山いくらの前座止まり。 <br />  それに引き換え、ただ能力を持って生まれたというだけの女が、カースを浄化する謎に満ちた歌姫ときた! <br />  こいつは実に悲しく、滑稽で、腹立たしい……」 <br /><br /> 芝居がかった男の言葉は次第に熱を帯びていく。 <br /> それと正比例するかのように、徐々に千秋の心に暗い影が差す。 <br /><br /> 「そうさ、黒川千秋! お前はあんな山師の歌に感動して、あまつさえ会ってみたいとさえ思ってたのさ。 <br />  薄皮一枚剥いだ下はなんてことはねぇ、ただの狡っからい小娘だってのになぁ。 <br />  奴の能力で自分の感性を歪められたことさえ気づいてなかったんだよ」 <br /><br /> 「やめて……! 嘘よ、そんなの嘘に決まってる!」 <br /><br /> 「嘘だと思うならもう一度『歌姫』の歌を聴いてみろよ? きっと気分が落ち着くぜ。クッククク……」 <br /><br /> 男がテレビのリモコンを手に取って電源ボタンを押すと、千秋は今度こそ言葉を失った。 <br /> 何かの記録映像か、それともニュースか何かの録画か――街にカースの溢れたあの日の映像が、テレビに <br /> 映し出されたのだ。 <br /><br /> やがて青空の端からヴェールを剥ぐように宇宙船が姿を現し、『歌姫』の姿が虚空に投影される。 <br /><br /> 流れ出したメロディも、何度も口ずさんだ歌い出しの歌詞も、あの日と同じ。 <br /><br /> そして。 <br /><br /> 「――――!!」 <br /><br /> 彼女の歌声を聴いた瞬間、自分の心から不安と動揺が嘘のように引いていくことに―― <br /><br /> 千秋は気づかずにはいられなかった。</dd> <dt id="a571">571 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆kaGYBvZifE</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 21:49:42.89 ID:0KKU5keR0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「クッククク……ヒャーッハッハッハ!! 可哀想だねぇ、千秋ちゃんよぉ! <br />  気分はどうだい? 悔しいか? 妬ましいか? 腹立たしいかぁ?」 <br /><br /> へたり込んだ千秋には、もう男の嘲笑さえ聞こえていなかった。 <br /> ただ、空っぽになった頭が、自分の内側からじわじわと湧き上がってくる何かを感じ取っていた。 <br /><br /> 「おっとぉ? 絶望のあまり声も出ねぇか。ま、そっちの方が都合がいいけどよぉ」 <br /><br /> 押し寄せてくる絶望――絶望? どうして? <br /><br /> 「いくら努力したところで、お前は『歌姫』にはなれねぇんだよ。なにせお前は無能力者、 <br />  何にも持たねぇただの小娘なんだからよぉ」 <br /><br /> 何故こんなにも、『歌姫』に裏切られたと感じているの? <br /> 何故こんなにも、『歌姫』のことが妬ましいの? <br /><br /> 「お前の感じる心なんてものは、如何様にも歪められちまうような脆いものだったのさ」 <br /><br /> あのときの自分が持ち得なかった何かを、自分も得られるはずだと無邪気に信じていたから? <br /> あのとき感じた優しい気持ちが、他でもない自分の心から発したものだと確信していたから? <br /><br /> それが、彼女によって強制された感情だとも知らずに。 <br /><br /> 「クッククク……安心しろ。俺が手助けをしてやるよ……その悔しさ、腹立たしさを晴らす手助けをなぁ」 <br /><br /> 虚ろな視線の先で、ころん、と何かが床に落ちて転がった。 <br /> ピンポン玉くらいの大きさの透き通った球体が、照明を反射してぎらりと輝き……。 <br /><br /> 「せいぜい、いいカースを生んでくれや」 <br /><br /> 千秋の内奥に渦巻いた感情に引き寄せられたそれは徐々に色を変え、紫色の光を放ちながら彼女と同化した。</dd> <dt id="a572">572 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆kaGYBvZifE</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 21:50:17.06 ID:0KKU5keR0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ―――――――――― <br /><br /> 使った試しのない脳の領域が蠢き、熱を帯びるのを感じながら、千秋はゆっくりとステージに立った。 <br /><br /> 視線は虚空を見据え、闇の色をした瞳は、深く、昏い。 <br /><br /> やがて千秋は、スポットライトの下で静かに歌い始めた。 <br /> 伴奏もなく、スタッフもいない。観客は、客席にひしめく『泥』だけだった。 <br /><br /> 「――――♪」 <br /><br /> 歌声と共に『泥』が蠕動し、不定形の肉体は徐々にその形態を定めていく。 <br /> 薄暗いホールの中にひときわ濃い闇を形作るように、大量のカース達が黒い泥の身体を蠢かせ、 <br /> 千秋の歌が終わる頃には、一本角を生やした大蛇が客席を埋め尽くしていた。 <br /><br /> 憤怒、嫉妬、絶望――様々に名を持った暗い情動を掻き立てる歌声を聴きながら、舞台袖に立っている <br /> ふたつの影があった。 <br /><br /><br /><br /> 「これでよかったか? 瑞樹ちゃんよぉ」 <br /><br /> 「ええ……素晴らしい素材を見つけてくれたわね。歌でカースを活性化させるカースドヒューマンなんて」 <br /><br /> 「俺がその気になりゃあ、人間如きを大罪に堕とすくらいわけねぇよ。ところで例の件だがよぉ」 <br /><br /> 「うふふ……私に協力しろっていうんでしょう? わかるわ」 <br /><br /> 「クッククク……ま、仲良くやろうぜ。サタンの野郎をブッ殺す役は譲ってやるからよ」 <br /><br /> 「じゃあ、せいぜい役に立ってもらおうかしら。うふふっ……」</dd> <dt id="a573">573 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆kaGYBvZifE</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 21:53:30.48 ID:0KKU5keR0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">黒川千秋 <br /> 20歳 <br /> 大学生 <br /> 『嫉妬』のカースドヒューマン。歌の道で頂点を極めたい新人歌手。 <br /> レヴィアタンと取引をした憤怒Pことティアマットによってカースの核を埋め込まれた。 <br /> 一本角を持つ蛇のカースを生み出す能力と、歌によってカースを活性化させる能力を持つ。 <br /><br /> イベント情報 <br /> ・憤怒Pとkwsmsnは……ズッ友だョ……!(棒)</dd> <dt id="a574">574 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆kaGYBvZifE</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 21:54:55.46 <span class="id">ID:0KKU5keR0</span></span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 加蓮に代わる2代目の嫉妬のカースドヒューマン登場 <br /> おぐやまさんの能力って下手したら洗脳だよなぁと思いながら書いた</dd> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> </dd> <dt id="a578">578 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆<span class="namenum">6</span>osdZ<span class="namenum">663</span>So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 22:37:02.90 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 世間は憤怒の町で賑わってるけど <br /> そんなの関係ねえのばかりにお爺ちゃんっ子投下します <br /> カミカゼお借りしてます</dd> <dt id="a579">579 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 22:46:25.45 <span class="id">ID:CzGsh73Do</span></span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">―― <br /><br /><br /> 桃華「カースドウェポン計画?」 <br /><br /><br /> これは、まだ死神ユズに『人類の敵』と言う容疑すら掛かっておらず、 <br /><br /> 櫻井財閥にまだ巨大な権力があった頃の話。 <br /><br /> 屋敷の中で『強欲』の悪魔と野心に燃える男は、とある計画について話していた。 <br /><br /><br /> サクライP「武具にカースの核を埋め込む事で、」 <br /><br /> サクライP「カースの力を武器として扱うことをできる。そう言った趣向の計画でございます。」 <br /><br /> サクライP「発想のヒントはキングオブグリードが発生した際に、」 <br /><br /> サクライP「その中心にあったとされる特殊な銃に関する映像記録です。」 <br /><br /> サクライP「察するには、カースの核からエネルギーを引き出して、利用していたようで。」 <br /><br /><br /> 桃華「ウフ、面白いですわね♪」 <br /><br /> 桃華「カースの核をそんな風に扱うなんて、よっぽど変わり者なんでしょう。」 <br /><br /><br /> サクライP「おそらくは、アンダーワールドの『テクノロジスト』の仕業でしょう。」 <br /><br /> サクライP「もっとも彼らはまだ『カース』に関しての研究はあまり進めてはいないはず。」 <br /><br /> サクライP「魔法銃を作り出した『テクノロジスト』は、彼らの中でも少し外れた部類かと思われます。」 <br /><br /><br /> 桃華「変わり者の中の変わり者。と言ったところですわね♪」 <br /><br /> 桃華「そう言うお方、わたくし好きですわよ♪」</dd> <dt id="a580">580 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 22:47:48.08 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 桃華「それで、計画と言うからには、Pちゃまはその銃を再現しよう。となされてるのかしら?」 <br /><br /> サクライP「いえ、銃だけに留まらず多くの兵器にその技術を流用できれば良いと考えてます。」 <br /><br /> 桃華「なるほど、聞くだけで面白そうな話ではありますわ。」 <br /><br /> 桃華「けれど、Pちゃま。精神を侵されずにカースの核を武器に加工するなんて本当にできるんですの?」 <br /><br /><br /> サクライP「・・・・・・件の『テクノロジスト』がどのような手段を使い、」 <br /><br /> サクライP「カースの核による精神汚染を防いだのかはわかりません。」 <br /><br /> サクライP「ですが、私達はカースの核に精神を侵されない者達がいることを知っています。」 <br /><br /> サクライP「その一つが、カースの呪いの持つ属性そのものを司る存在。」 <br /><br /><br /> 桃華「わたくし達、悪魔ですわね。」 <br /><br /> 桃華「当たり前の事過ぎて、言われるまで気づきませんでしたわ。」 <br /><br /> 桃華「確かに、わたくし達ならカースの核に精神を侵されず、核を扱う事ができますわね。」 <br /><br /> 桃華「もっとも、わたくしには武器製作に関する知識がありませんから、」 <br /><br /> 桃華「『カースドウェポン』の製作はできませんけれど。」</dd> <dt id="a581">581 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 22:49:39.77 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 桃華「『イルミナティ』に属する悪魔であれば、その手の技術に詳しい者がいそうですわ。」 <br /><br /> 桃華「けれど、彼女達に借りを作りたくありませんわね。わたくしとは反りが合いませんもの。」 <br /><br /><br /> サクライP「いえ、今回は彼らの手を借りずともよいのです。」 <br /><br /> サクライP「財閥には、他にも心当たりがありましたから。」 <br /><br /><br /> サクライP「悪魔以外に」 <br /><br /> サクライP「カースの呪いのエネルギーに精神を侵されることなく、核を加工することが出来るであろう。」 <br /><br /> サクライP「ある種族の、武器職人にです。」 <br /><br /><br /> サクライP「そして既に、その者には話をつけております。」 <br /><br /> サクライP「財閥の資産と研究施設を好きなだけ使ってよい。」 <br /><br /> サクライP「その代わり、どんな形でもカースドウェポンを開発せよ。と」 <br /><br /><br /> 桃華「手が早いですのね♪」 <br /><br /><br /> サクライP「カースドウェポンが完成すれば、」 <br /><br /> サクライP「貴女様の『強欲』なる悲願に、また一歩近づくことになるかと。」 <br /><br /><br /> 桃華「ウフフ、楽しみにしてますわ♪」 <br /><br /><br /><br /> しかし、この計画は、 <br /><br /> 後の死神騒ぎで財閥が傾いた事によって、志半ばで頓挫してしまうことになる。 <br /><br /> 現在、財閥の所有していたカースドウェポンの研究施設は既に解体されてしまったそうだ。 <br /><br /><br /> そして、その研究の成果は闇に葬られる・・・・・・ <br /><br /><br /> と言う事には、どうやらならなかったらしい。</dd> <dt id="a582">582 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 22:51:23.46 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">―― <br /><br /><br /> 「い、いや・・・・・・。」 <br /><br /><br /> その少女は絶体絶命の危機であった! <br /><br /><br /> 『うまそううまそう』 <br /> 『ジョーチャン、ワシラトツキアッテクレヤー』 <br /> 『フンガァアアアアア』 <br /><br /> なんの前兆も無く、突如地面から現れた3体のカース! <br /><br /> 『暴食』!『色欲』!『憤怒』! <br /><br /> 抵抗する術のない少女はあっという間に囲まれてしまった! <br /><br /> 「だ、だれか・・・・・・助けて!」 <br /><br /><br /> だが心配ご無用! <br /><br /><br /> カミカゼ「待たせたな!」 <br /><br /> この時代! <br /><br /> 誰かがピンチとあれば、ヒーローは必ず駆けつけるからだっ! <br /><br /> 現れたヒーローはアイドルヒーロー同盟の特攻戦士カミカゼだぁあ!!!</dd> <dt id="a583">583 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 22:52:38.40 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">『へへへ???』 <br /> 『ナンヤナンヤ』 <br /><br /> 突然のヒーローの来襲に混乱するカース達! <br /><br /> カミカゼはその隙に素早く近づき <br /><br /> カミカゼ「オラァア!!」 <br /><br /> 『ヘヴンッ!!!!』 <br /><br /> 駆けつけ一発っ!! <br /><br /> カミカゼの容赦ない拳が炸裂っ!!まずは1体が爆散!!! <br /><br /> 残り2体のカースは現れた存在が敵である事にやっと気づき、 <br /><br /> その体から幾つもの太い触手を繰り出す! <br /><br /> だが、それは遅すぎたっ! <br /><br /> 触手が向かった先には既にカミカゼの姿はなく、 <br /><br /><br /> カミカゼ「怪我はないか?」 <br /><br /> 「は、はい!その、あ、ありがとうございます!」 <br /><br /> 瞬く間にカース達の間を抜き去ったカミカゼは、 <br /><br /> 少女を抱きかかえ、救出していた!</dd> <dt id="a584">584 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 22:53:40.32 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> カミカゼは少し離れた安全な場所に少女を降ろし、逃げるように促す。 <br /><br /> そして自身は、残るカース達と向き合った。 <br /><br /> 獲物を奪われたそいつらは何とも判別の付かない言葉で吼えている。 <br /><br /><br /> カミカゼ「さて、後はお前達を料理するだけだな。」 <br /><br /> カミカゼ「あいにく今回は仕事じゃねーからよ。」 <br /><br /> カミカゼ「テメェらザコ相手に、派手に戦う必要もねぇ。」 <br /><br /> カミカゼ「一瞬で終わらせてやるっ!」 <br /><br /><br /> カミカゼがセリフを言い終わると同時に、カース達が襲い掛かる!! <br /><br /> そして!! <br /><br /> ・・・・・・ <br /><br /><br /> カミカゼ「ふぅ・・・・・・これで終わり、だな。」 <br /><br /><br /> そう言って、赤色に輝くカースの核を握りつぶし砕く。 <br /><br /> ああ、哀れカース。 <br /><br /> 彼らは見せ場も無ければ、必殺技を使われるまでもなく。 <br /><br /> 台詞通りに一瞬で終わってしまったのだった。</dd> <dt id="a585">585 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 22:55:27.60 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> カミカゼ(しかし、最近はカースも活発になりやがったな・・・・・・。) <br /><br /> カミカゼ(例の大量発生って言うのが関係してんのかね。) <br /><br /><br /> そんな思考をしながら、カミカゼこと、向井拓海は変身を解き、 <br /><br /> 辺りの状況をきょろきょろと伺う。 <br /><br /> 以前、自分の攻撃に人を巻き込んでしまってから、 <br /><br /> 戦闘の終わりには、必ず戦いに巻き込まれた人間がいないか確認を行うようにしていた。 <br /><br /><br /> 拓海(とは言っても・・・・・・同盟に入ってからは特に気をつけてるし、) <br /><br /> 拓海(今回は周りに迷惑かかるような攻撃はしてな・・・・・・) <br /><br /> 拓海(・・・・・・あ?) <br /><br /><br /> 居た。 <br /><br /> 戦場から少し離れた場所に、人が倒れていた。 <br /><br /> 嫌な汗が流れてくる。 <br /><br /><br /> 拓海(嘘だろ・・・・・・もしかして、またやっちまったのか?) <br /><br /><br /> すぐさま駆け寄る。 <br /><br /> 拓海「おい、アンタ!しっかりしろ!」 <br /><br /> 肇「う、うぅ・・・・・・おじい・・・ちゃん。」 <br /><br /> その娘は一目見た限りでは、怪我はないように見えた。</dd> <dt id="a586">586 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 22:57:05.63 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 拓海「大丈夫か!?」 <br /><br /> 肇「お、お腹が・・・・・・。」 <br /><br /> 拓海「腹が痛むのかっ!?!」 <br /><br /> 肇「お腹がすいた・・・・・・。」 <br /><br /> 拓海「・・・・・・は?」 <br /><br /><br /> ぐー <br /><br /> 辺りに間抜けな音が響く。 <br /><br /><br /> 拓海「・・・・・・。」 <br /><br /> 拓海(ただの行き倒れかよっ!) <br /><br /> どうやら腹が減って、たまたま近くで倒れていただけらしい。 <br /><br /> 戦いに巻き込んだ訳ではないと分かり、少しだけ安心する拓海。 <br /><br /><br /> 肇「ご、ごはん・・・・・・。」 <br /><br /> 拓海「っと、いけねぇ。安心してる場合じゃねぇな。」 <br /><br /> 拓海「しっかりしろ、すぐ何か食わせてやるから。近くのファミレスにでも入って・・・・・・」 <br /><br /> 肇「あの・・・・・・。」 <br /><br /> 拓海「どうした?」 <br /><br /> 肇「できれば、うどんがいいです。」 <br /><br /> 拓海「指定するのかよっ!?」</dd> <dt id="a587">587 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 22:58:29.29 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">―― <br /><br /> 肇「つるつる」 <br /><br /> 拓海「・・・・・・。」 <br /><br /> 肇「もぐもぐ」 <br /><br /> 拓海「・・・・・・。」 <br /><br /> 肇「ごっくん」 <br /><br /> 拓海「・・・・・・。」 <br /><br /> 肇「すみません、おかわりいいですか?」 <br /><br /> 拓海「おい、何杯目だ。それ。」 <br /><br /><br /> とりあえず拓海は、彼女を連れてたまたま近くにあったうどんチェーン店に入ったのだった。 <br /><br /> 席に着くなり、彼女はそれはもう凄い勢いでうどんを食べ始め、 <br /><br /> 気がつけば5杯目である。 <br /><br /><br /> 拓海「そんなにうどん好きなのか?」 <br /><br /> 肇「いえ、普通ですけど。」 <br /><br /> 拓海「好きじゃねーのかよっ!」 <br /><br /> 肇「あ、でも器はいいどんぶり使ってますね。」 <br /><br /> 拓海「聞いてねえっ!」</dd> <dt id="a588">588 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:00:16.78 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 拓海「しっかし、まあずいぶんと腹減ってたんだな。」 <br /><br /> 肇「お恥ずかしながら・・・・・・慣れない土地に出てきたばかりで。」 <br /><br /> よく見れば、この娘荷物が多い。 <br /><br /> 特に目を引くのが背中に背負う細長い袋だろう。 <br /><br /> その数七つ、何か棒状の物を仕舞っているらしい。 <br /><br /> 頭に巻いたスカーフも相まって、彼女の格好は少々変わって見える。 <br /><br /> 拓海(おのぼりさんって奴なのかね。) <br /><br /> 拓海「・・・・・・一応聞いておくけど、金は持ってるのかよ。」 <br /><br /> 肇「かね?」 <br /><br /> 拓海「おい、そこからなのか。そこからなのに5杯も食べたのか。」 <br /><br /> 肇「あっ、お金!お金ですね!大丈夫です。」 <br /><br /> 肇「たしかおじいちゃんに持たされたのが・・・・・・この辺りに。」 <br /><br /> 拓海「本当に大丈夫か?」 <br /><br /> 肇「・・・・・・。」 <br /><br /> 拓海「・・・・・・。」 <br /><br /> 肇「お、落としたみたいです。」 <br /><br /> 拓海「おいっ!」 <br /><br /> 肇「その・・・・・・すみません・・・・・・・。」 <br /><br /> 拓海「くっ・・・・・・だぁっ!もう!仕方ねーな。」 <br /><br /> 拓海「ここの御代は持ってやるから!だからそんな泣きそうな顔すんなっ!」 <br /><br /> 肇「えっ!そんな、悪いです。」 <br /><br /> 拓海「でも払えないんだろ、だったら甘えとけよ。」 <br /><br /> 肇「・・・・・・ありがとうございます!」 <br /><br /> 肇「ふふっ、あなたいい人ですね。」 <br /><br /> 拓海「うっせー」</dd> <dt id="a589">589 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:01:52.40 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 拓海「私は向井拓海だ。アンタ、名前は?」 <br /><br /> 肇「あ、自己紹介もまだでしたね。ごめんなさい。」 <br /><br /><br /> 肇「藤原肇と言います。出身は鬼の里。」 <br /><br /> 肇「鬼匠・藤原一心の孫娘で、刀匠見習いをやってます。」 <br /><br /> 拓海「んあ?」 <br /><br /> 鬼、鬼と言ったかこの娘。 <br /><br /><br /> 拓海「鬼って言うと、あの鬼か。」 <br /><br /> 肇「はい、あの鬼ですよ。」 <br /><br /> 事も無げに返答する娘。 <br /><br /><br /> 拓海「・・・・・・とてもそうは見えねーな。」 <br /><br /> 能力に目覚めてから奇天烈な知り合いが増えた拓海。 <br /><br /> 私鬼なんです!などと言われても軽く流せる程度にはなってしまったが、 <br /><br /> 目の前の娘は、それなりに奇抜な格好こそしていても見た目は普通の人間の女の子に見える。 <br /><br /> 拓海のイメージする毛むくじゃらで筋肉質の、いかにも乱暴そうな鬼とは正反対だ。</dd> <dt id="a590">590 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:03:16.77 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 肇「では、これでどうでしょう?」 <br /><br /> ハラリと、肇は頭に巻いていたスカーフを外す。 <br /><br /> 拓海「・・・・・・なるほどな。」 <br /><br /> そこには小さな二本の角。 <br /><br /> 拓海(ちょっと可愛いな。) <br /><br /> 拓海が納得したのを確認すると、肇はスカーフを巻きなおした。 <br /><br /> 肇「私のおじいちゃんが鬼で、おばあちゃんは人間。私はクォーターと言う事になりますね。」 <br /><br /> 肇「拓海さんはいい人そうなので教えましたけど、他のみなさんには内緒にしてください。」 <br /><br /> 拓海「ん、わかった。」 <br /><br /><br /> 拓海「それで、その鬼の孫娘がどうして人里で行き倒れてたんだ?」 <br /><br /> 肇「この辺りには刀の材料を探しに来たんです。」 <br /><br /> 拓海「刀、ねえ。そう言えばさっき刀匠とか言ってたな。」 <br /><br /> 拓海「その背中に背負ってるのもやっぱり刀なのか?」 <br /><br /> 肇「見ますか?」 <br /><br /> そう言って肇は背中にある七の袋の内、一つを取り出した。 <br /><br /> 赤地に色とりどりの花が描かれたその袋から出てきたのは、 <br /><br /> やはり一本の刀であった。 <br /><br /> 拓海(そんな物をこんな場所で取り出していいのか。) <br /><br /> と思ったが、周囲に気にしてる人間は特に居ないようなので軽くスルー。</dd> <dt id="a591">591 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:05:54.26 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 鮮やかな真紅の鞘に、輝く龍模様の金細工。 <br /><br /> 鍔にも同じく龍が模られ、柄の頭には宝石まで備付けられております。 <br /><br /> ただただ見た目に豪華だとわかるその一品。 <br /><br /><br /> 肇「日本一の刀匠であるおじいちゃんの渾身の傑作。」 <br /><br /> 肇「『鬼神の七振り』のうち一本。」 <br /><br /> 肇「日本一、キレる刀。」 <br /><br /> 肇「その名を『戟王丸』と言います。」 <br /><br /><br /> 拓海「ほう」 <br /><br /> と、感嘆の声を出したものの、実はそれほど感心した訳ではなかった。 <br /><br /> 刀の事はよくわからないが、何事もやはり肝心なのは見た目より中身だろう。 <br /><br /><br /> しかし、そう思いながらも、その刀の姿に何処か引っ掛かるところがあった。 <br /><br /> 取り付けられた真っ赤に輝く宝石。 <br /><br /> つい最近どこかで見たような。 <br /><br /><br /> 拓海「・・・・・・それ、カースか。」 <br /><br /> 肇「拓海さんはよくご存知ですね。」 <br /><br /> 肇「如何にもです。これはカースの核ですよ。」 <br /><br /> 鬼の少女は肯定する。</dd> <dt id="a592">592 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:08:19.58 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 拓海「なんでまた、刀にそんなのくっついてるんだ。」 <br /><br /> 肇「おじいちゃんの作る刀は普通の刀じゃありません。」 <br /><br /> 肇「摩訶不思議な神秘を帯びた刀。言うなれば妖刀です。」 <br /><br /> 肇「おじいちゃんが鬼匠と呼ばれる所以でもありますね。」 <br /><br /> 肇「おじいちゃんの手で取り付けられたカースの核は、刀に特別な力を付与します。」 <br /><br /> 拓海「ぶっ飛んでるな、爺さん。」 <br /><br /> 嘘か真か、刀にカースの核を取り付ける事で刀に神秘が宿るらしい。 <br /><br /><br /> 肇「この『戟王丸』は『憤怒』のカースの核を取り付けてあります。」 <br /><br /> 肇「だから、日本一キレる刀なんです。」 <br /><br /> 拓海「駄洒落かよ!茶目っ気あるな、爺さん!」 <br /><br /><br /> そこでふと思い出す。 <br /><br /> 拓海「『鬼神の七振り』って言ったな。全部で七本。」 <br /><br /> 拓海「カースの核も7種類・・・・・。」 <br /><br /> 拓海「って事は、肇の後ろにあるそれ全部か?」 <br /><br /> 肇「そうですよ。」 <br /><br /> 肇「『日本一、淫らな刀』『日本一、横暴な刀』『日本一、嫉妬深い刀』」 <br /><br /> 肇「『日本一、自堕落な刀』『日本一、大食らいな刀』『日本一、欲張りな刀』」 <br /><br /> 肇「それが、私の背負ってる残りの六本です。」 <br /><br /> 拓海「碌なの無いな・・・・・・。」</dd> <dt id="a593">593 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:10:53.97 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 拓海「しかし、どんな形にしてもカースの核を持ち歩いてるなんて普通じゃねーな。」 <br /><br /> カースの核は例え浄化されていても、放置していれば周囲の負のエネルギーを集め、 <br /><br /> 新たに呪いの異形を生み出す、存在するだけで危険なものだ。 <br /><br /><br /> 拓海「しかもそんなのを七つだ。危なくねーのかよ。」 <br /><br /> 肇「危ないですよ。」 <br /><br /> 拓海「危ないのかよっ!普通に!」 <br /><br /> 別に加工してあるから安全と言う事もないらしい。 <br /><br /><br /> 肇「ふふっ、心配してくれてありがとうございます。」 <br /><br /> 肇「けど私は1/4は鬼です。鬼の血を引いてるので、負のエネルギーの扱い方の心得はありますから。」 <br /><br /> 肇「カースの核もある程度は安全に扱えます。」 <br /><br /> 拓海「そうなのかもしれねーけどよ・・・・・・。」 <br /><br /><br /> 続けて肇は語る。 <br /><br /> 肇「それに、『そこにあるだけで危険』と言うのは、元より刃その物も同じなんですよ。」  <br /><br /> 肇「刀は心の鏡。それが危険であるかどうかはその柄を持つ者次第。」 <br /><br /> 肇「澄み切った心をもって正面から向き合えば、それは正しい力となります。」 <br /><br /> 拓海「カースの核も同じだって言うのか?」</dd> <dt id="a594">594 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:12:34.15 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 肇「カースの核が集める力も、正しく心の力の一面です。」 <br /><br /> 肇「抑圧された心。負の感情。目を背けたくなる人の嫌な部分。」 <br /><br /> 肇「でもおじいちゃんは『それは必ずしも悪しき物になるわけではない。』って言ってました。」 <br /><br /> 肇「昔は『悪』だと断じられた、鬼だからこその考え方なのかもしれませんが。」 <br /><br /><br /> 肇「きちんと向き合えば、負の感情も正しき力となる。」 <br /><br /> 肇「『鬼神の七振り』はおじいちゃんのそう言う思いが篭った刀なんです。」 <br /><br /> 拓海「なんつーか、すげえ爺さんだな。」 <br /><br /> 拓海(そんな風には考えた事もなかったが、言われてみれば分からなくもないかもな。) <br /><br /> 言いながら拓海は自分の過去を振り返る。 <br /><br /> 力に目覚める前の事、後の事。自分の事や友達の事。 <br /><br /><br /> 拓海「・・・・・・どんな力も使う奴次第ってことか。」 <br /><br /> 肇「ええ。この子達にもよい使い手が見つかるといいんですが。」 <br /><br /> 拓海「ああん?使い手だ?」</dd> <dt id="a595">595 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:13:47.66 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 肇「おじいちゃんが言うには、刀には真に持つべき者が居るそうです。」 <br /><br /> 肇「『鬼神の七振り』は人間のために作った刀。持つべきは人間だろう。とも」 <br /><br /> 肇「私が人の街に出てきたのは、おじいちゃんの思いを汲んで、」 <br /><br /> 肇「この子達を正しく使ってくれる人を探すためでもあるんです。」 <br /><br /> 拓海「・・・・・・さっき材料を探しに来たって言ったのは?」 <br /><br /> 肇「それはまた別件ですね。」 <br /><br /> 拓海「その正しい使い手って言うのが、見つかったらどうするんだよ。」 <br /><br /><br /> 肇「無論、刀を預けます。」 <br /><br /><br /> 肇の目は真剣そのものであった。 <br /><br /><br /> 拓海(んーっ、放っておいていいのか。これは・・・・・・)</dd> <dt id="a596">596 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:14:52.93 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 向井拓海は悪と戦い、人々を守るヒーローである。 <br /><br /> 彼女には守るべき者を守らなければならない。と言う責任感がある。 <br /><br /><br /> だから目の前の、鬼の少女の目的を聞いて悩んだ。 <br /><br /> カースの呪いを使った刀。それを見知らぬ誰かに渡すつもりであるらしい。 <br /><br /> それは一歩間違えれば、惨事を引き起こしかねない事であろう。 <br /><br /><br /> しかし少女には悪事を為すつもりはない。 <br /><br /> 正しく扱えば、負の感情も力になる。 <br /><br /> 故に、正しく扱える人間を探しているのだと。 <br /><br /><br /> 止めるべきか判断に困り、出した結論は。 <br /><br /><br /> 拓海(・・・・・・今はいいか。) <br /><br /><br /> 保留であった。 <br /><br /> 拓海(いざとなったら、その時にアタシがケジメつけさせてやりゃあいい)</dd> <dt id="a597">597 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:16:07.59 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">―― <br /><br /> 肇「今日はごちそうさまでした。」 <br /><br /> 拓海「おう、いいって事よ。」 <br /><br /><br /> 肇が6杯目のうどんを食べ終わり、 <br /><br /> 7杯目のおかわりの許可を求めてきたので、却下して店から出てきた。 <br /><br /> 聞けばここまで来るのに何日も彷徨ってたそうで、腹が減ってるのはわかるが、 <br /><br /> 流石にそれ以上食べられると、安いうどんであっても財布に手痛いダメージを残しそうだ。 <br /><br /> さる事情で給料少ないし。 <br /><br /><br /> 肇「このお礼はいずれ必ず!」 <br /><br /> 拓海「おう」 <br /><br /> 拓海「それより肇はこれからどうするんだ?金ないんだろ?」 <br /><br /> 肇「しばらくはこの辺りを拠点にして、働けるところを探そうと思います。」 <br /><br /> 拓海「当てはあんのか?」 <br /><br /> 肇「いえ、特には。」 <br /><br /> 拓海「ノープランか・・・・・・」</dd> <dt id="a598">598 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:17:20.16 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 拓海「仕方ねーな、ここで会ったのも何かの縁だろ。」 <br /><br /> 拓海「アタシも知り合いに当たってやるよ。働き口なら幾つかあるだろ。」 <br /><br /> 肇「えっ、いえ・・・・・・でもそこまでお世話になるのも。」 <br /><br /> 拓海「今更、遠慮してんじゃねーよ。」 <br /><br /> 拓海「ここまで来たら、知らん振りするのも返って目覚めが悪いってもんだろ。」 <br /><br /> 肇「拓海さん・・・・・・嬉しいです。ありがとうございます。」 <br /><br /> 拓海「いいってことよ。大船に乗ったつもりで任せときなっ!」 <br /><br /> 肇「ふふっ、本当に心強いです。」 <br /><br /> 拓海「そうと決まれば連絡先教え・・・・・・っと。」 <br /><br /> 拓海「鬼の里から出てきたんだよな、流石に携帯電話とか持ってねーか。」 <br /><br /><br /> 肇「あっ、持ってますよ。スマホ。」 <br /><br /> 拓海「持ってるのかよ!!」 <br /><br /> 鬼の娘と言えども現代っ子と言うことか。 <br /><br /> まあ、行倒れていたのを見ると全く使いこなせてはいないようで。</dd> <dt id="a599">599 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:18:42.30 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 肇「家族が持たせてくれたんですよ。あると便利だからって。」 <br /><br /> 肇「ふふっ、心配性ですよね。」 <br /><br /> 拓海「心配なのはわかるけどな。行倒れてたし。」 <br /><br /> 肇「まあ鬼の里とは連絡できないんですけどね。圏外ですから。」 <br /><br /> 拓海「あー・・・・・・そうなんだろうな。」 <br /><br /> 妙に納得する拓海。 <br /><br /> 言いながらお互い連絡先を交換する。 <br /><br /><br /> 拓海「って事は、普段は家族に連絡とかはしてねーのか。」 <br /><br /> 肇「いえ、手紙で連絡はとりあってますよ。」 <br /><br /> 拓海「手紙か、なるほど。古風だな。」 <br /><br /> 肇「例えば、鳥に手紙を持たせて、鬼のおまじないを掛けて里まで飛ばすことが多いですね。」 <br /><br /> 拓海「鳥ねえ。」 <br /><br /><br /> 鳥。と聞いてふと、空を見上げる。 <br /><br /><br /> 拓海「・・・・・・」 <br /><br /> 拓海「おい」 <br /><br /><br /> 拓海「なんだ、アレ。」 <br /><br /><br /><br /> 『クレエエエエエエエエエッ!!!』 <br /><br /><br /> 拓海の見上げる先。 <br /><br /> そのカースは翼を広げ、空を飛んでいた。</dd> <dt id="a600">600 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:20:43.05 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 街の中に突如現れた、空の怪物。 <br /><br /><br /> 『クレエエエエエェェェェェエえええええ!!』 <br /><br /><br /> その姿に周囲の人々は慌てて逃げ始める。 <br /><br /><br /> 拓海「あんなの始めてみるぞ。」 <br /><br /><br /> 腕のような器官、足のような器官。触手のような器官。口のような器官。 <br /><br /> そんな部位を持つカース達とは山ほど戦ってきたが。 <br /><br /> 翼のような器官を持ち、あまつさえ、それを広げて空を飛ぶカースなどはじめてみる。 <br /><br /><br /> 肇「カラスみたいですね。」 <br /><br /><br /> なるほど、肇の言うとおり。 <br /><br /> 真っ黒な体、真っ黒な翼、獲物を探すようにギラギラと黄金に輝く目。 <br /><br /> そのカースは巨大なカラスのようであった。</dd> <dt id="a601">601 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:21:46.54 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> カースは空中から獲物を見定めると、 <br /><br /> 地上に急降下し、地面に接触するかと思えば、 <br /><br /> その勢いのまま角度を大きく曲げて大空に飛び上がる。 <br /><br /> それを何度も繰り替えして、 <br /><br /> まるで餌を啄ばむかのように地上の人間に脅威を与えていた。 <br /><br /><br /> 『クレッ!クレッ!!クレッ!!』 <br /><br /><br /> 下品な鳥の鳴き声は、よく聞けばそれは物乞いの様に何かを欲する声。 <br /><br /><br /> 拓海「属性は『強欲』か、あの目玉みてーに見えるところが核ってわけだな。」 <br /><br /><br /> 拓海(この短い間に『暴食』『色欲』『憤怒』、そして『強欲』・・・・・・) <br /><br /> 拓海(人の休日に随分と豪勢なことだな、おい) <br /><br /> 拓海(近くでカース達のパーティーでもあるのかよ。) <br /><br /><br /> それは近頃世間を騒がせるカースの大量発生の影響か。 <br /><br /> あるいは『憤怒の街』の気にあてられた者達の邪念が、作り出してしまったものなのか。 <br /><br /> もしくは別の何かの企みか。</dd> <dt id="a602">602 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:22:59.88 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 拓海「いずれにせよ、やる事はいつもと変わらねえ。」 <br /><br /> ヒーローとしてカースをぶちのめす。 <br /><br /> だが、 <br /><br /><br /> 拓海(アタシにあんな高い位置の敵と戦えるのか・・・・・・。) <br /><br /><br /> 今回の敵は鳥型のカース。 <br /><br /> 先ほど地上に降下する時の姿を思い返せば、 <br /><br /> 上下の機動力に、俊敏さも持ち合わせているようだ。 <br /><br /> おそらくは空中戦を得意とするのであろう。 <br /><br /> 対してカミカゼが得意とするのは地上での肉弾戦。とにかく相性の悪い相手だ。 <br /><br /><br /> 拓海(バイクで助走をつけてから飛び上がってのキック・・・・・・いや、とどかねえ。) <br /><br /> もっとも高度と威力を両立できるだろう先制の一撃。 <br /><br /> しかしそれでも奴の滞空する位置には届きそうにはない。 <br /><br /><br /> 拓海(降りてくる瞬間を狙って攻撃するのはどうだ・・・・・・?) <br /><br /> 地上に向けて奴が体当たりをしてくる瞬間を狙って、迎撃する。 <br /><br /> これを狙うならば、攻撃に高度が必要ではなくなる。 <br /><br /> だが、この場合問題になるのは敵の機動力の高さ。 <br /><br /> まともにパンチを狙いに行くのでは、接近する前に上下に退避されるのがオチだろう。</dd> <dt id="a603">603 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:24:26.85 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 拓海(なら手は一つしかねえか。) <br /><br /><br /> カミカゼの必殺技の一つ「ギガフラッシュ」 <br /><br /> 現在、彼女の持つ攻撃の中で唯一の飛道具。 <br /><br /> 奴の攻撃に合わせて近づき、向かってきたところに放てば、 <br /><br /> その一撃で殲滅できるだけの威力もある。 <br /><br /> ただし、チャンスは一回。 <br /><br /> かわされればそれでお終いだ。 <br /><br /><br /> ギロリと、カースの目が拓海達の方を向く。 <br /><br /> 次はこちらに狙いを定めたようだ。 <br /><br /> どうやらあれこれ考えてる暇はもう無いらしい。 <br /><br /><br /> 『クレっ!!クレエエエエエエエエえええええッ!!』 <br /><br /> 空飛ぶカースがこちらに向かって急降下をはじめる。 <br /><br /> 拓海は、横に居る肇に下がってろと言おうとして、 <br /><br /><br /> 肇「拓海さん、下がっていてください。」 <br /><br /><br /> 先を越された。 <br /><br /> 肇が一歩前に出る。</dd> <dt id="a604">604 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:26:00.07 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 拓海「おい、肇!まさかお前、アイツを」 <br /><br /><br /> 拓海は、何か言おうとして <br /><br /><br /> 次の瞬間、彼女は炎に包まれた。 <br /><br /><br /> 拓海「あつっ!?」 <br /><br /> 拓海「いや、ちげえ・・・・・・。」 <br /><br /> 急に発生した辺りの熱気に、まるで自分が燃やされるかの様な錯覚に陥る。 <br /><br /><br /> 拓海が気づくと、肇は一本の刀を鞘から抜いていた。 <br /><br /><br /> そう、熱源の正体は、鞘から抜かれたばかりのその刀であった。 <br /><br /> 刀の名前は『戟王丸』。 <br /><br /> 外に晒された刀身は、燃え盛る様に紅蓮に煌き、 <br /><br /> 今にも周囲の全てを壊さんと、熱の篭った威圧感を放っている。</dd> <dt id="a605">605 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:27:26.50 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 肇「この熱と光は、戟王丸が溜め込んでいた『怒り』の作り出したイメージです。」 <br /><br /><br /> 辺りは熱気に包まれ、上空からカースが迫ってきているにも関わらず、 <br /><br /> 肇は先ほど拓海と話していた時と変わらぬ穏やかな口調のまま言葉を紡ぐ。 <br /><br /><br /> 肇「お願いです、力を貸してください。」 <br /><br /><br /> そう言って、彼女は戟王丸を構えた。 <br /><br /><br /> 拓海(この位置から?!) <br /><br /><br /> その構えは、まるで今立つ地面から、はるか空の敵を切り落とせるかのような姿勢で。 <br /><br /> そして、 <br /><br /> 肇「やああっ!!」 <br /><br /><br /> 刀が振りぬかれる。 <br /><br /><br /> その瞬間、戟王丸に篭っていた怒りのエネルギーは開放され、 <br /><br /> 紅蓮色の斬撃が空間を真っ二つにしながら、怒号のように真っ直ぐと <br /><br /> 空中の敵に向かい、駆け登る。</dd> <dt id="a606">606 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:27:57.01 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">  <br /><br /> スパァン <br /><br /><br /> と、軽快な音がが一度だけ響き、 <br /><br /> それっきり辺りは静寂に包まれた。 <br /><br /><br /> 降下中であった強欲のカースは音が響くと共に、その場で静止していたが、 <br /><br /> 数瞬の間の後、 <br /><br /> その身体は左右に半分に割れ、 <br /><br /> そのまま、空中で崩れ去った。 <br /><br /><br /> 後には、ジリジリとした熱気だけが残り、 <br /><br /> 肇が戟王丸を鞘に収めると、その熱気も立ち消える。 <br /><br /><br /> 肇「拓海さん、終わりましたよ。」 <br /><br /> 少女は穏やかに言った。</dd> <dt id="a607">607 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:29:04.89 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">拓海の感情は <br /><br /> ずばり開いた口が塞がらないと言うそれだった。 <br /><br /><br /> なるほど、この刀を作ったやつは <br /><br /> 伊達や酔狂でカースの核を刀に取り付けようと思ったわけではないらしい。 <br /><br /><br /> 『日本一、キレる刀』と言う、うたい文句。 <br /><br /> それも今聞けば納得するところである。 <br /><br /><br /> 拓海「て言うか、」 <br /><br /> 拓海「刀からビーム出すのかよ。」 <br /><br /><br /> 色々言いたいことはあったが、とりあえずはそこを突っ込んだ。</dd> <dt id="a608">608 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:30:28.23 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br /> 肇は鞘に納めた戟王丸を掲げる。 <br /><br /><br /> 肇「こうしてる間にも戟王丸は、周囲から怒りの感情エネルギーを吸い取ってます。」 <br /><br /><br /> 『憤怒』のカースの核を埋め込まれた戟王丸は、 <br /><br /> 常に周囲から『怒りの感情』を吸い取り、その内に溜め込む性質を持つ。 <br /><br /><br /> 肇「溜めこんだ怒りを刀に乗せて振るう事で、怒りに志向性を持たせ、」 <br /><br /> 肇「怒りのエネルギーを特定の対象に放ち、ぶつけることができる。」 <br /><br /> 肇「それが日本一、キレる刀『戟王丸』の性質です。」 <br /><br /><br /> それが刀から、ビームが出た理屈らしい。 <br /><br /><br /> 肇「ちなみに戟王丸の鞘には怒りを鎮める浄化の作用があります。」 <br /><br /> 呪いの刀に対して、鞘が浄化の力を持つ。 <br /><br /> 浄化の力を持つ鞘があるからこそ、カースの呪いを暴走させずに扱うことができる。 <br /><br /> それが藤原一心の作り上げた『鬼神の七振り』の仕組みであった。 <br /><br /> 拓海(だから鞘から抜かれた瞬間に、威圧感放ってやがったのか。) <br /><br /><br /> 肇「鞘の浄化作用より、刀が怒りを溜め込む方が早いので、」 <br /><br /> 肇「時々こうして発散してあげないとダメなんですけどね。」 <br /><br /> 拓海「今のは刀のストレス発散ってことか?」 <br /><br /> 肇「最近は『憤怒』が活発みたいなので、戟王丸もストレス貯めこみやすくて。」 <br /><br /> 拓海「思春期かよ。」</dd> <dt id="a609">609 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:31:48.95 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> そんな会話をしていると、空から何かが落ちてきた。 <br /><br /><br /> 拓海「ん?」 <br /><br /> 拓海「なんだこれ」 <br /><br /><br /> 果たして落ちてきたものは <br /><br /> 拓海「がま口の財布だな。」 <br /><br /> 拓海「空から落ちてきたって事は・・・・・・あのカースが持ってやがったのか。」 <br /><br /><br /> 『強欲』のカースは金品や宝石を集める性質がある。 <br /><br /> 先ほどのカースの、カラスの様に地上に降りてきて何かを啄ばむような動作。 <br /><br /> アレは地上に落ちている金品を集めていたのだろう。 <br /><br /><br /> 拓海(あんなデカイなりして、やってた事は意外としょぼいな・・・・・・。) <br /><br /> 拓海(けど、あんなタイプのカースが出てくるとはな。) <br /><br /> 拓海(カースも進化してやがるのか?) <br /><br /><br /> 肇「あっ。そのお財布、私のです。」 <br /><br /> 拓海「あん?じゃあ、落としたって言ってたのこれか。」 <br /><br /><br /> 肇が落とした財布をカースが拾っていたらしい。 <br /><br /> 人の世を侵す、呪いもたまには役に立つことがあるようだ。</dd> <dt id="a610">610 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:33:06.63 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">―― <br /><br /> そうして、しばらく会話した後 <br /><br /> 彼女達はいずれまた会う事を約束して別れたのであった。 <br /><br /><br /> 肇「拓海さん、本当に心が綺麗な人だったな。」 <br /><br /><br /> 落とした財布を取り戻したので、肇はうどんの代金を払おうとしたが、 <br /><br /> 結局、拓海はそれを受け取らなかった。 <br /><br /> 曰く、一度おごると言ったのだから、それを撤回する様なかっこ悪いことはできないとのことで。 <br /><br /><br /> 肇「拓海さんみたいな人なら、おじいちゃんの刀を正しく使ってくれると思ったんだけど。」 <br /><br /> ちなみにその提案も断られた。 <br /><br /> 曰く、器じゃねーよ、とのことで。 <br /><br /> 肇としてはそんな事はないと思うのだが。 <br /><br /><br /> 肇「いつかこの子達を受け取ってくれる人も、心が綺麗な人ならいいな。」 <br /><br /> そんな思いを胸に、鬼の孫娘は今日も人の里を行く。 <br /><br /><br /> 肇「あ、そうだ、新しい刀の材料も探さないと。」 <br /><br /> 肇「『日本一、罪深い刀』を作るために必要な『原罪の核』」 <br /><br /> 肇「そんなの見つかるのかなあ・・・・・・」 <br /><br /><br /> 彼女が次に出会うのは、果たしてどんな人だろうか。 <br /><br /><br /> おしまい。</dd> <dt id="a611">611 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:33:48.37 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">藤原肇(16歳) <br /><br /> 職業:鬼の刀鍛冶見習い <br /> 属性:おじいちゃんっ子 <br /> 能力:精神統一によって負の感情をある程度コントロールできる。 <br /><br /> 七本の刀を背負って人里までやってきた鬼の孫娘。 <br /> 頭から2本の小さい角が生えてるが、普段は頭にスカーフを巻いて隠している。 <br /> 鬼の血のおかげで僅かながら、多少の神通力は使える。 <br /> その背に背負う七本の刀は、彼女のおじいちゃんである鬼、藤原一心の作った怪作『鬼神の七振り』 <br /> これらの刀を相応しい人間に渡すために、おじいちゃんから預かってきたとのこと。 <br /> 会話のたびに「おじいちゃん」の名前が何度も出てくるほどのおじいちゃんっ子。 <br /> おじいちゃんの作る刀は日本一だと信じている。 <br /> よくうどんが好きだと勘違いされるが、それほどでもないらしい。 <br /><br /><br /> 藤原一心(???歳) <br /><br /> 職業:鬼の刀鍛冶、鬼匠 <br /> 属性:頑固爺 <br /> 能力:妖刀、魔刀の製作。 <br /><br /> 藤原肇のおじいちゃんで、刀鍛冶をやってる鬼。 <br /> 妖刀、魔刀の製作者として、ある界隈では有名だとか。 <br /> とある財閥の協力おかげで、カースの核を組み込んだ刀『鬼神の七振り』の製作に成功する。 <br /> 『鬼神の七振り』は、本来財閥の手に渡るはずであったが、財閥が傾いてしまったために、 <br /> 彼の作った刀が回収されることはなくなった。 <br /> しかし「人の為に作った刀は、人の世に渡るべき。」だと考え、孫にそれらを渡して旅に出す。 <br /> 「目に入れても痛くないほど可愛い孫ほど旅させろ」派。 <br /> 「やるからには完璧を目指す」と言う信念のもとに、今も「日本一、罪深い刀」の製作を目論んでいるようだ。</dd> <dt id="a612">612 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:36:22.51 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">『鬼神の七振り』 <br /><br /> 刀匠・藤原一心の作り上げた七本の妖刀。 <br /> 「呪い」の力をもって、「呪い」を討つための刀。別名、カースドブレード。 <br /> 負のエネルギーの扱いに長けた鬼の手であるからこそ、作ることの出来た妖具。 <br /> 七本の刀それぞれに七つの属性のカースの核が埋め込まれており、属性に応じた特有の性質を持つ。 <br /><br /> 『憤怒』 刀名「戟王丸」 日本一、キレる刀 <br /> 『色欲』 刀名「???」 日本一、淫らな刀 <br /> 『傲慢』 刀名「???」 日本一、横暴な刀 <br /> 『嫉妬』 刀名「???」 日本一、嫉妬深い刀 <br /> 『怠惰』 刀名「???」 日本一、自堕落な刀 <br /> 『暴食』 刀名「???」 日本一、大食らいな刀 <br /> 『強欲』 刀名「???」 日本一、欲張りな刀 <br /><br /> いずれの刀も使用する度に、あるいはカースを切る度に負のエネルギーが溜まり、 <br /> 放って置けばいずれ所有者の精神を侵す危険な刀だが、 <br /> 専用の鞘に収めておくことで、刀に溜め込まれた負のエネルギーは浄化される。 <br /> 浄化の力を持つ鞘のおかげで、使い手は刀の持つカースの力を暴走させずにコントロールできると言う仕組み。 <br /><br /><br /> 『戟王丸』 <br /><br /> 『鬼神の七振り』の1本で、日本一、キレる刀。 <br /> 鞘や柄は真紅に染められ、龍を模った金細工が飾られている。 <br /> 柄の頭には『憤怒』のカースの核が取り付けられており、 <br /> 鞘に収まってる間も周囲の怒りの感情から力を吸収する。 <br /> 一度鞘から抜かれれば、集めていた怒りを一気に開放し、怒りのままに敵を一刀両断にする。 <br /> 抜き身のまま置いておくと、周囲から莫大な負のエネルギーを集めるために <br /> 使用後は必ず鞘に収めなければならない。 <br /> 鞘に収めた状態でも週に一度は溜まった怒りを開放する必要がある。 <br /> これを怠ると怒りの感情を制御できなくなるので注意すること。</dd> <dt id="a613"><span class="resnum">613</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:37:35.73 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 無駄に長くなちゃッたけど <br /> 要は呪いの刀系の設定作りたかったんです、 <br /> 反省はしてません</dd> </dl><h4>その3へ</h4>
<dl style="padding-top:10px;"><dt id="a410"><span class="resnum">410</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/06(土) 00:30:51.54 <span class="id">ID:ESlJSvN70</span></span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">皆さん乙です <br /> 乗るしかない、この暴食のビッグウェーブに…! <br /> 忘れがちだけどこの子も一応暴食なのよってことで投下します <br /> 最初ちょっとえげつないかも</dd> <dt id="a411"><span class="resnum">411</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY<span class="namenum"><span class="namenum">2</span></span>y<span class="namenum"><span class="namenum">1</span></span>UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/06(土) 00:31:51.57 <span class="id">ID:ESlJSvN70</span></span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ―ふむ、自動翻訳装置を埋め込んであるのか…最近の闇奴隷商の技術も上がったな…そうそう、地球人の雌はいるか? <br /> ―コイツはどうです?幼いですが見た目がよく、性奴隷などには使えるかと… <br /> ―性奴隷に使うのではないが…なかなか質がよさそうじゃないか。 <br /> ―しかし所長、幼すぎませんか?少し高くてももっと年齢の高い異星人を…いっそ個人的に誘拐しても… <br /> ―いや、こいつでいい。俺の勘だがこいつは逸材だ。おい、この娘を買う。刺青?いらん。このままでいい。実験材料だからな。 <br /><br /> ―…まさか成長させて使うとは思いませんでしたよ。 <br /> ―蘇生液の失敗作がこんな形で役に立ったな。蘇生液自体はもうフランケン娘に使ってしまったが。 <br /> ―所長、そろそろ実験用の動物を購入するべきでは? <br /> ―ああ、そうだな…この間発見された爬虫類と何らかの哺乳類は購入すべきだな。 <br /> ―…どうした?ああ、腹が減ったか。…おい、適当に食わせておけ。 <br /><br /> ―所長、この被検体が騒がしくて仕方ないのですが… <br /> ―腕を切断されたらそうなるだろう?我慢しろ。ふふ…素晴らしい再生能力だ…!私が見込んだだけはある!これなら…! <br /> ―では次は…戦闘訓練を行わなければ。 <br /> ―適当に安い猛獣を購入しておきましたから、それらと戦わせればいいかと。 <br /> ―すばらしい、すばらしいぞ地球人!すでに3体も成功している!もっとだ!もっと地球人の雌を! <br /><br /> ―○◆※×▼☆! <br /> ―◇■◎○@、◆▽△○◇※★! <br /><br /><br /> 「      ?   ?」</dd> <dt id="a412"><span class="resnum">412</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/06(土) 00:32:22.05 ID:ESlJSvN70</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">「っ!」 <br /><br /> 北条加蓮は夢を見た。あまりにも生々しい夢を。 <br /><br /> 檻の中から誰かの会話を聞き続ける夢。ずっと檻の中の視点でそこにいる夢。 <br /><br /> 夢の中の『私』は、その誰かに何かをされていて。最後には言葉が分からない程に恐怖していて。 <br /><br /> 最後に暖かい光が差し込んで。 <br /><br /> あの光…あれさえあれば生きていけるような気がして。 <br /><br /> 起きれば内容は忘れてしまうのだけれど。 <br /><br /> …最近、数日に一度はこの夢を見る。 <br /><br /> 別に日常生活の中でふと思い出すことはない。心に何かが残るだけ。 <br /><br /> …今日は特にバイトもなかったし、どこかに出かけようか。</dd> <dt id="a413">413 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/06(土) 00:32:50.90 ID:ESlJSvN70</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 街中を特に行先は決めずに歩く。前は暗く見えて仕方なかった街が、明るく見える。 <br /><br /> 街が変わったのではなく、自分が変わったから。意識を変えるだけで景色はまるで変わる。 <br /><br /> さて、どこへ行こうか。 <br /><br /> 「…あ!」 <br /><br /> 人ごみの中に彼女を見つけた。自分を救ってくれたネバーディスペアの…神谷奈緒だ。 <br /><br /> 前見た時とは違い、ギプスを付けていたりしているがすぐわかった。 <br /><br /> 「奈緒!」 <br /><br /> 「ん?…あ!加蓮か!」</dd> <dt id="a414">414 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/06(土) 00:33:49.55 ID:ESlJSvN70</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 取りあえず近くのカフェに入り、軽く話す。 <br /><br /> 「まさか奈緒に会えるとは思ってなかったよ。」 <br /><br /> 「まあ暇なときは出かけるからな…。一応悪人捜査も兼ねてるんだからな?…一応。」 <br /><br /> 「そっかーまぁ息抜きは大切だよ。」 <br /><br /> 「ところで…最近どうだ?一人暮らしって大変なんだろ?」 <br /><br /> 奈緒が問うのも無理はない。身内が一人もいない状況で成人にもなっていない少女が一人暮らしというのも大変なものである。 <br /><br /> 「うん、ちょっと大変だけど…取りあえず自分ができる事、やってみたかった事、限界までしてみたいの。だから今のところ保護とかは受けないつもり。」 <br /><br /> 「そっか。まぁ難しい事はよく分かんないけどさ、いざとなったらこっち来ればいいよ。…家族が増えるのは嬉しいし。」 <br /><br /> (『家族』…奈緒にとっての家族。) <br /><br /> 管理局から解放される前、自衛の為、一通り奈緒から能力の使い方は教わっていた。 <br /><br /> エンヴィーの時は本能のままに動かせていたはずが、浄化された後は少し動かしにくくて。 <br /><br /> 『カースは感情で泥を動かすからドロドロのまま。アタシのは…動物のイメージで動かしているんだ。そうすると泥よりも固い武器になる。多分浄化前は無意識で出来たから苦労すると思うけど。』 <br /><br /> 加蓮は翼や槍や盾、それに蛇。それが一番やりやすかった。エンヴィーの時からそれらを使っていたからだろう。 <br /><br /> その時にちょっと聞いたのは、奈緒は記憶を失っている事。きらりに浄化される以前の記憶がほとんどないそうだ。 <br /><br /> …だから、彼女にとっての家族はネバーディスペアなのだ。3人には直接は言えないそうだが。 <br /><br /> (…私にも奈緒にとってのネバーディスペアみたいな存在…きっとどこかにあるんだろうな。) <br /><br /> 半分希望のようなものだけれど。それでも思ってしまった。</dd> <dt id="a415">415 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/06(土) 00:34:46.84 ID:ESlJSvN70</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「涼さん!善哉食べたいな~」 <br /><br /> 「居候が何言ってるんだよ…飲み物買うだけだからな。」 <br /><br /> 「居候じゃないよ!ちゃんと家事やってるよ!」 <br /><br /> 「…テレビの見過ぎで光熱費倍にしたのはどこのどいつだっけ?」 <br /><br /> 「…あは、あはは…ダレデシタッケー」 <br /><br /> 聞いたことのある声が向こうから聞こえた。そちらを見ればバイト仲間の涼が和服の少女と親しげに話していた。 <br /><br /> 「知り合いか?」 <br /><br /> 「うん、同じところでバイトしてる人。」 <br /><br /> そのうちに見られている事に和服の少女が気付いたようだ。 <br /><br /> 「…あの人涼さんの知り合いさん?」 <br /><br /> 「話をそらすんじゃ…って加蓮じゃん!」 <br /><br /> お互いに気付き、席の近くにやってくる。 <br /><br /> 「友達と一緒にいたのに割り込んだみたいで悪いな…」 <br /><br /> 「いや、あたしは気にしてないよ。」 <br /><br /> 「まさかこんなところで涼に会うとは思ってなかったよ…その子は?」 <br /><br /> 「あー…親戚の子だよ。うん、親戚の子。」 <br /><br /> 「えー親戚じゃないよー?あずきは涼さんの所有物だよー。」 <br /><br /> 「…え?」 <br /><br /> 「馬鹿!そういう誤解を招く妙な発言は止めろ!」 <br /><br /> 「あ…あはは、変わった子だねー」</dd> <dt id="a416">416 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/06(土) 00:35:41.81 ID:ESlJSvN70</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「変わり者すぎて困るレベルだけどな…そっちは?」 <br /><br /> 「あたし?あたしは奈緒。加蓮の友達…だな。」 <br /><br /> 「奈緒さんなんか強そうだよねーよく分かんないけどそんな気がするの!」 <br /><br /> あずきが何気なく言う。それに内心ビクリとした。勘がいいのだろうか。 <br /><br /> 「お前は初対面の相手に何言ってるんだ…。」 <br /><br /> 「んーでもあずきの『お仲間』ではないみたいだね。ちょっとさみしー…。」 <br /><br /> その時、外の方が爆発するように騒がしくなった。外にここから見えるだけでも5体以上のカースが現れたのだ。 <br /><br /> 「逃げろ!カースが出た!急げ!」 <br /><br /> 一人の男がカフェの中の人々に避難を促す。 <br /><br /> カフェの客たちは一目散に逃げ出す。良識のある客は料金を置いていったが、基本的にこういう時は食い逃げされやすい。 <br /><br /> 奈緒はすぐに店を飛び出し、電話を取り出して連絡を取った。…お金は一応席に置いておいた。 <br /><br /> 「…夏樹、カースが複数出た!…そっちにも!?あー…わかった。できる限りのことはする。5分待たなくていいか?…うん、ありがと!」 <br /><br /> 「奈緒待って!…どうしよう、奈緒行っちゃった…」 <br /><br /> 「…大丈夫なのか?…アイツが能力者でも最近のカースはヤバイって聞くぞ?」 <br /><br /> それを聞いて思い出すのは先日、のあと共闘した時のカース。たしかに彼女の知っているカースより強かった。 <br /><br /> 「行かなきゃ、カース倒すの手伝わないと…!」 <br /><br /> 「…涼さん、あたしもお手伝いしていいかな?カースいっぱいいるよ?」 <br /><br /> あずきが涼の手を引きながら言う。 <br /><br /> 「…あ~!仕方ないな!ヒーローとかが来るまでだからな!あたし能力者だけどそこまで強くないからな!」 <br /><br /> そう言って二人の手を引いて店から飛び出した。 <br /><br /> そのそばに新たな核が生まれ落ちたのが同時でなければ恰好が付いたのに…。 <br /><br /> 「グオオオオオオオオオオオオオ!」 <br /><br /> 「イラツクゼエエエエエエエエエエエ!」 <br /><br /> 「嘘!こっちにも!?」 <br /><br /> 「邪魔しないで欲しいんだけどなー!昼間は本調子じゃないの!」 <br /><br /> 「今それを言うか!?タイミングが最悪すぎるだろ!」 <br /><br /> 取りあえず今は目の前のカースを倒すしかないようだ。 <br /><br /> あずきがどこからか取り出した裁ち鋏を強化してカースを切り、投げつける。 <br /><br /> それに涼が指示を出し、空中を泳ぐように巨大な鋏が舞う。それに続く様に加蓮も槍と盾を装備して空中へ舞い上がった。</dd> <dt id="a417">417 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/06(土) 00:36:11.24 ID:ESlJSvN70</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 同じ頃、奈緒は全速力で飛行しながらカースの気を引いていた。 <br /><br /> まだ避難していない人が居れば大変なことになる。幸い、全てのカースの気が奈緒にそれた。 <br /><br /> 「ニゲンジャネエエエエエエエエエエ!」 <br /><br /> 「コッチニコイヤアアアアアアアアア!」 <br /><br /> 無数の泥で出来た腕が掴みかかる。それを飛びつつ逃げつつ爪で切り裂いてゆく。 <br /><br /> そして聴覚と視覚をフル活用して逃げ遅れがいないか把握する。…どうやらもう大丈夫そうだ。避難慣れしている市民に感謝する。 <br /><br /> 「…ちょっとだけ本気出してやるから覚悟しな!」 <br /><br /> そう言うと同時に奈緒の背から黒い泥が飛び出し、巨大な異形の形を作り上げた。</dd> <dt id="a418">418 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/06(土) 00:37:20.90 ID:ESlJSvN70</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 奈緒の本来の戦闘スタイルは危険すぎてほとんど使われていなかった。 <br /><br /> それが今、緊急事態でさらに周囲に誰もいないことでちょっと解禁された。 <br /><br /> その戦闘スタイルは、埋め込まれた暴食の核が示すように、食らう事。 <br /><br /> カースドヒューマン等との違いは…彼女自身が食らうのではなく、彼女の中の生命体がその歪な姿を現し食らうのだ。 <br /><br /> 多眼のライオンに似た生命体が、複眼のサメのような生命体が、鋭い牙を生やした馬とも言える生命体が、彼女の『食らう』イメージなのだ。 <br /><br /> カースの踊り食い。核から離された泥は普通なら霧散して消えてしまうが、究極生命体の力と核がそれを取り込むことを可能にする。 <br /><br /> 取り込めば取り込むほど、悪夢のような歪なそれらはさらに彼女から生み出される。 <br /><br /> 棘の生えた舌の蛙が、単眼の狼が、体中に口のついた熊が、奈緒のイメージ通りに狂った姿で生まれ、食らう。 <br /><br /> 黒い泥をピカピカ光る瞳の黒い生命体が食らう。操る奈緒自身が捕食されない事の方が恐ろしい程に、狂った光景。 <br /><br /> 『食らい尽くせ』 <br /><br /> 下された命令を忠実に実行し続ける。 <br /><br /> 最後の一体を食い尽くしたところで一体から全ての核が宙に吐き出される。 <br /><br /> そして全ての異形が泥に戻り、奈緒の中に帰る。核は奈緒の左手で切り裂かれた。</dd> <dt id="a419">419 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/06(土) 00:37:48.67 ID:ESlJSvN70</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">「大丈夫か!」 <br /><br /> 次々に生まれ、3人を足止めしていたカースを切り裂いて、奈緒が戻ってくる。 <br /><br /> 「奈緒!心配したんだよ!」 <br /><br /> 「ゴメン…一応これでも正義の味方だしさ…」 <br /><br /> 「一人で無茶しないで!」 <br /><br /> 「まぁ、無事でなによりだよ。…まぁあんな状況で飛び出せるんだ。ある程度強いとは思ってたけどここまでとは…」 <br /><br /> 「あずきが最初に言った事、当たってたみたい?」 <br /><br /> ハチャメチャになってしまったが、まぁそれなりに楽しい休日だった…と思うことにした。 <br /><br /> …その日、加蓮は夢を見た。</dd> <dt id="a420">420 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/06(土) 00:38:41.58 ID:ESlJSvN70</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 『あーテステス、カレンちゃん聞こえるー?』 <br /><br /> 『…あ、気付いたみたいですね。』 <br /><br /> 『驚かないでよ。夢みたいなものなんだから、聞き流してもいいしさー正直僕らめんどくさいの嫌いだしー』 <br /><br /> 男の声と女の声だ。暗闇の中二人の声が聞こえる。 <br /><br /> 「…誰?」 <br /><br /> 『僕らはねーご主人様に取り込まれたナニカの僅かに残った意識の集合体ってヤツ。僕らが雄でこの子は雌ね。』 <br /><br /> 『…私たちの仲間となっていたカレンさんにご挨拶しに来ました。今日まで気づきませんでしたから遅れてしまい、申し訳ございません。』 <br /><br /> 「仲間?」 <br /><br /> 『一応あなたは私たちと同じようにご主人様の一部のはずなんです。例外的に血で一体化してしまったのですが。』 <br /><br /> 『改めて取り込む気もないけどねー。まぁ一部になったおかげでご主人様譲りの化け物以上の再生力をゲットできたわけですしおすしー?ようこそ人外へー!』 <br /><br /> 「血って…まさか奈緒が『ご主人様』なの?」 <br /><br /> 『そうですよ。…私たちの言葉はご主人様に聞こえないので不安でしたが、貴方とはお話できてよかったです。』 <br /><br /> 『ご主人様含めると君が二人目の人間。もっと増えてお話しできると嬉しいなー。』 <br /><br /> 「…奈緒って何者なの?」 <br /><br /> 『おや、それを聞いてしまいます?ご主人様含める我らは模倣品なんですよ。遥か昔の…人の形をし、絶望から生まれた黒を内に秘めた化け物の。』 <br /><br /> 『詳しく話知らないけど、宇宙人には割と有名な話らしいぜー?星を食う黒い怪物の童話。ブラックホールを子供に分かりやすく話すための物だと思ってたけどー』 <br /><br /> 『まぁ、光の巨人が寝てる間に抱き枕にしてるおかげか、今のところ力の暴走は起こっていませんがね。暴走したらカレンさんも危ないかもしれませんよ。』 <br /><br /> 『そうそう、それを言いに来たのだった。』 <br /><br /> 『…まあ起きれば忘れてしまうのですが。』 <br /><br /> 『そういえばそうだったなーまあ夢の中なら思い出せるし、気が向いたらお話ししようぜー』 <br /><br /> フェードアウトしていく。くすくす、けらけら笑う声が消えてゆく。 <br /><br /> そして目覚めた時、完全に夢の内容は忘れてしまっていた。</dd> <dt id="a421">421 :<span class="name" style="color:#008000;"><b>@設定</b> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/06(土) 00:39:43.83 ID:ESlJSvN70</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">闇奴隷商 <br /> 様々な星の子供や女を誘拐し、金持ちに売っている闇商人。 <br /> 表向きは宇宙では一応公認されている、異星の動物を売るペットショップをしている。 <br /> 奴隷用の刺青サービス、自動翻訳装置の埋め込み等、サービスがいい。 <br /> 様々な組織が時折人材を求めて買いに来ることも。 <br /><br /> 奈緒の中の何か <br /> 奈緒に組み込まれた遺伝子や、奈緒に生きながら食われた生命体の僅かに残った意識の集合体。礼儀正しい女性の人格と、気の抜けた喋り方の男性の人格を持つ。 <br /> 複数の意識が集まっているため、一人称が「私たち」「僕ら」。 <br /> 奈緒と会話する事は出来ないが、奈緒の血を飲んだ加蓮と夢の中で会話できる。 <br /> 奈緒の失った記憶や各生命体の記憶を保持しており、そこからさまざまな情報を掴んでいる。 <br /> 奈緒自身より奈緒の事に詳しいと言っても過言ではない。</dd> <dt id="a422">422 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/06(土) 00:41:25.42 ID:ESlJSvN70</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">以上です <br /> 暴食が一大勢力になっている… <br /> ちょっと加蓮にシリアス入れようとして上手くいかなかったかもしれない… <br /> それと宇宙人出しやすいように奴隷商に設定を入れてみたり</dd> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> </dd> <dt id="a427"><span class="resnum">427</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆I2ss/4dt7o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 17:11:18.51 ID:/V1Sb39TO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 結城晴投下しますー <br /><br /> そして、楓さん借ります</dd> <dt id="a428"><span class="resnum">428</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆I<span class="namenum">2</span>ss/<span class="namenum">4</span>dt<span class="namenum">7</span>o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 17:11:55.56 <span class="id">ID:/V1Sb39TO</span></span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">ある日の公園。 <br /><br /> そこでは子供達が元気にサッカーをしていた。 <br /><br /> それを、座りながらボーッと見てる野球帽をかぶった一人の子供がいた。 <br /><br /> 名前は結城晴。本来ならああ言う場に混ざりたいのだが、ずっと≪施設≫にいた為、混ざり方がわからないのだ。 <br /><br /> 彼女は≪OZ計画≫での実験体で、脱走者の一人である。 <br /><br /> 晴「…………楽しそうだな」 <br /><br /> 言葉とは裏腹になんか無関心そうに彼らを見ていた。</dd> <dt id="a429">429 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆I<span class="namenum">2</span>ss/<span class="namenum">4</span>dt<span class="namenum">7</span>o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 17:13:12.10 ID:/V1Sb39TO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ??「見てるだけで楽しいの?」 <br /><br /> 晴「?」プクゥー <br /><br /> ガムを膨らませながら、後ろにいる人物を見る。 <br /><br /> まるでモデルのような綺麗な女性がいた。 <br /><br /> 晴「……アンタ誰?」 <br /><br /> 楓「私は高垣楓。あなたがずっとサッカーしてるの見てるから気になっちゃったの」 <br /><br /> 晴「ふーん……」プクゥー <br /><br /> 楓「一緒に混ざらないの?」 <br /><br /> 晴「アンタには関係ないだろ?」 <br /><br /> 楓「そうね。私には関係ないわね」 <br /><br /> そう言いながら、チョコンと晴の隣で体育座りをした。</dd> <dt id="a430">430 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆I2ss/4dt7o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 17:14:14.67 ID:/V1Sb39TO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 晴「………なんで隣にくるんだよ?」 <br /><br /> 楓「それは私の勝手だから、かってー事は言わないで」 <br /><br /> 晴「……そうかよ」 <br /><br /> 楓「(スルーされた……)」(´・ω・`) <br /><br /> 晴「(訳わかんねえ奴…)」チラッ <br /><br /> 渾身のダジャレを言ったのに、スルーされてションボリしてる女性とその隣でガムを膨らませながらチラ見してる子供。 <br /><br /> なんかシュールである。</dd> <dt id="a431">431 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆I2ss/4dt7o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 17:16:29.59 ID:/V1Sb39TO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 晴「……アンタはなんでオレなんかに話しかけてくるんだ?」 <br /><br /> 少しの静寂のあと、晴は話題を切り出してみた。 <br /><br /> もしかしたら、自分や友達の追っ手ではないか? <br /><br /> そんな疑心暗鬼から聞いたのだ。 <br /><br /> 楓「うーん……。なんか気になったから」 <br /><br /> 晴「……お人好しだな。アンタ」プクゥー <br /><br /> そんなこんな緩い空気が流れていき、軽く口を開いてはそれに答え、再び沈黙が流れ、また軽く口を開けばそれに答えの繰り返しをしていた。 <br /><br /> たまに、楓が「風がふいて、風邪ひきそう」とか「滑り台で滑りたい」とか「鳥のお通りだ」とかダジャレを言っていたのは割合である。 <br /><br /> そんなこんなで、いつの間にか日は落ちてきて、サッカーをしていた子供達もいつもの間にか家へと帰って行った。</dd> <dt id="a432">432 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆I2ss/4dt7o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 17:17:50.86 ID:/V1Sb39TO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br /> 楓「あなたは帰らないの?お家の人は心配しないの?」 <br /><br /> 何処か心配そうに彼女は聞いた。 <br /><br /> 当然である。公園にはこの二人以外誰もいなく、さっきまでいた子供達は帰ったのにこの子だけ一人残っているのだから。 <br /><br /> だが、晴は無関心そうにしていた。 <br /><br /> 晴「オレは帰る家ねえし…。それに家族はオレを捨てたしな」プクゥー <br /><br /> 楓「!?」 <br /><br /> 晴の言葉に楓は唖然とした。こんな子供を親が捨てた? <br /><br /> しかも家がないって…… <br /><br /> またしばらく無言が続いた。何も言えない。</dd> <dt id="a433">433 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆I2ss/4dt7o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 17:18:36.93 ID:/V1Sb39TO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 晴「それに、オレがちょっと目を離した隙に≪友達≫も何処かいっちゃったしな。……まあ、そのうち見つけてくれると思うし、オレは気長に待つだけさ」 <br /><br /> その沈黙を破るかのように、晴は素っ気なく答えた。 <br /><br /> ---だから、オレの事は気にするな、 <br /><br /> そう言ってるようにも聞こえた。 <br /><br /> ……というか、≪友達≫はどっか行ったといってるが、実際は晴がフラってサッカーしてる子供達の所へいって先にはぐれてしまったのである。つまり先に迷子になったのは晴。 <br /> まあ、そこは一旦置いておこう。</dd> <dt id="a434">434 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆I2ss/4dt7o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 17:21:24.07 ID:/V1Sb39TO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br /> そして、意を決したように、楓は切り出した。 <br /><br /> 楓「なら、私の家に来ますか?」 <br /><br /> 晴「………はっ?」パンッ <br /><br /> その言葉に思わず、膨らませたガムを割ってしまう。 <br /> 何言ってるんだコイツ?って顔で彼女を見ていた。 <br /><br /> 楓「住む所ないのよね?なら、友達が見つかるまで泊まってきなさい?」 <br /><br /> 晴「……なんでオレがアンタの所いかなきゃならないんだよ?」 <br /><br /> 楓「ダメ?」(´・ω・`) <br /><br /> 怪訝そうな顔で楓を見る晴だったが、なんだか道に捨てられた子犬のような感じで見つめる彼女に根負けしたのか、軽く息をはいた。 <br /><br /> 晴「………わかったよ。アンタ面白いから友達がくるまでいてやるよ」 <br /><br /> 楓「決まりね。じゃあ、行きましょうか。……えっと」 <br /><br /> どこか嬉しそうにしながら、この子の名前を言おうと思ったが、そういえば自分は名前を聞いてなかった事に気づき困っていた。 <br /><br /> 晴「……オレは結城晴だ」 <br /><br /> 楓を「晴くんね。じゃあ、行きましょう」 <br /><br /> そう言いながら、晴に手を差し出した。 <br /><br /> それに、晴は少し悩みながらも右手でそれを握り、ついて行くのであった。</dd> <dt id="a435">435 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆I2ss/4dt7o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 17:22:10.01 ID:/V1Sb39TO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 余談だが、お風呂に入るまで楓は晴を男の子だと思っていたのは別の話である。 <br /><br /><br /> 終わり</dd> <dt id="a436">436 :<span class="name" style="color:#008000;"><b>@設定</b> ◆I2ss/4dt7o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 17:24:19.01 ID:/V1Sb39TO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br /> 結城晴(12) <br /><br /> 職業・元実験体 <br /> 属性・OZ≪ティン≫適合者 <br /> 能力・左腕強化、電撃、傷の自己修復。 <br /><br /> 何処かぶっきらぼうなOZ適合者。 <br /><br /> 性格は男の子っぽく、なかなか感情を表にださない。 <br /><br /> 普段は普通の人間だが、≪ティン≫を発動すると、左腕が一回り大きくなり、青っぽい色のオノのような異形の腕へと変化。それは金属でできている。 <br /><br /> この状態を第一段階と呼び、彼女の場合は、左腕があった部分に≪OZ≫を移植したことにより、この姿である。 <br /> そして、この姿の時はオノのような腕の周りに電撃が付加されており、全力で地面に振り落とすと雷が落ちたような威力だ。 <br /><br /> 第二段階になると、まるで全身が金属でできたロボットのような異形の巨人の姿になるが、この姿にはならないようにしている。 <br /><br /> 彼女は産まれた時から左腕が欠損しており、異星の技術を取り入れた人工的な能力者を創り上げ、兵士として軍事利用する計画の為に、売られた犠牲者だった。 <br /> OZ計画の実験体の最年少だが、4人の中で実験体になってた時期が1番長い。 <br /> だから、ほとんど施設の中で慣れてしまっていた。 <br /> だけど、一緒にいた3人達と外に出たいから脱走した。 <br /><br /> 現在、他の三人が見つかるまで楓さんのお世話になってる。</dd> <dt id="a437">437 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆I2ss/4dt7o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 17:27:01.45 <span class="id">ID:/V1Sb39TO</span></span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">以上です。 <br /><br /> あわわ……口調が難しいよ…… <br /><br /> なんか変な所ありましたらお願いします。 <br /><br /> 晴ちゃんカワイイよ晴ちゃん</dd> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> </dd> <dt id="a441"><span class="resnum">441</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 19:42:34.67 <span class="id">ID:yYG9O9X6o</span></span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> オズはARMSっぽいなぁって思ったらARMSだった <br /> くれてやる4連見開きやるんです? <br /><br /> 荒木先生借りて泉プラスヘレン投下</dd> <dt id="a442"><span class="resnum">442</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB<span class="namenum">8</span>Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 19:43:08.92 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 泉(さて……とりあえずはエネルギー充填だよね。ワードと、私自身の) <br /><br /> 泉「はぁ……お腹減ったな。どうしよう」 <br /><br /> 泉(この時代の紙幣や硬貨なんて持ってないし……) <br /><br /> 泉(……奪う? 同じ人間からそんなことはしたくないし、しちゃダメに決まってる) <br /><br /> 泉(それに……あの警官の話が本当なら下手すれば逮捕されるらしいし) <br /><br /> 泉「能力者に、ヒーロー。侵略者に、カース……極秘資料が聞いてあきれるよ。全然あってない」 <br /><br /> 泉(エクセルは目立ちすぎるし、追手が来たらまずいし……ワードのエネルギーどうにかしたいなぁ) <br /><br /> 泉(そこらへんの人のお財布でもコピペして、中身借りようかな? 何をするにも資本主義ってめんどうだなぁ) <br /><br /> 泉「生活文化自体は資料とそこまで変化ないっていうのが何より不気味よね。あぁ、非科学的」</dd> <dt id="a443">443 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 19:44:12.21 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ―― 地球上空 円盤内 <br /><br /><br /> ???「なるほど……あれがアースね」 <br /><br /> マシン「イエス、マム」 <br /><br /> ???「フッ……美しいわ。私が身に着ける指輪に飾り付けるのも悪くない」 <br /><br /> マシン「マム、サイズがあいません」 <br /><br /> ???「私の体には合わないでしょう。でも、器という意味ならば星をひとつ指輪の飾りにしても足りないほど……そういうことよ」 <br /><br /> マシン「なるほど、一理あります」 <br /><br /><br /><br /> ヘレン「そう……私の器はまさに宇宙レベルなのだから」 <br /><br />  </dd> <dt id="a444">444 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 19:45:03.81 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">      ヴォォォォン… <br /><br /> 泉「……? なに、あれ」 <br /><br /><br />     「え、円盤だー!」     「噂の浄化ライブの円盤じゃね!?」 <br />         「宇宙人か!?」                「いや、デザインが違う……」 <br /><br /><br /> 泉「……あ、そこまで珍しいものじゃ――」 <br /><br />        カッ! <br /><br />                 ドォォォォンッ! <br /><br /><br /> 泉「……え?」 <br /><br /><br />    「うわぁぁぁ! 撃ってきたぞ!」     「怪人だー!」 <br />                                  「ヒーローを呼べー!」 <br />          「逃げろ! 危ないぞー!」</dd> <dt id="a445">445 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 19:46:24.49 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 泉「……えっと、あの円盤って珍しいものなの?」 <br /><br /> 男「え? いや、UFOは時々目撃証言があるけどあんな危ないのは初めてだ! あんたも早く逃げろ!」 <br /><br /> 泉「そう……じゃあ、あれはイレギュラーなのかな。危ないし、私も――」 <br /><br /><br /> ??「ああぁあああああああああああああああ!!!!」 <br /><br /><br /> 泉「!?」ビクッ <br /><br /> 比奈「アタシの……アタシの原稿が……やっと、ネームがまとまってきたのに……」 <br /><br /> 泉「え……え?」 <br /><br /> 比奈「……何見てるんスか……こっちは今九死に一生を得るのと同時に生き地獄を味わってるんスよ……?」 <br /><br /> 泉「あ、いえ……その、円盤が来てて危ないし避難したほうがいいんじゃないですか」 <br /><br /> 比奈「……あの円盤のせいでアタシの安住の地は吹っ飛ばされたんスね」 <br /><br /> 泉(安住の……って、そこに建ってたお店? うわ、ひどいことになってる)</dd> <dt id="a446">446 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 19:47:02.03 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ヘレン「ふふ、ご挨拶はなかなかといったところかしら」 <br /><br /> マシン「イエス、マム。驚愕の表情で人々が我々を見ています」 <br /><br /> ヘレン「ではその驚愕を、私への尊敬へと変える必要があるわね」 <br /><br /> マシン「イエス、マム。マムの御心のままに」 <br /><br /> ヘレン「マシン。今回の配下を繰り出しなさい」 <br /><br /> マシン「イエス……来い、コワスーゾ!」 <br /><br /> コワスーゾ「コワスゾー!」 <br /><br /> ヘレン「じゃあ、行くわ。コワスーゾ、あなたは私の命令だけを聞きなさい」 <br /><br /> コワスーゾ「コワスゾー!」 <br /><br /> マシン「お気をつけて、マム」 <br /><br /> ヘレン「フッ……銀河に輝く星々も、私の手のひらのうえにあるの。踊りましょう……ダンサブルに」 <br /><br /> コワスーゾ「コワスゾー!」</dd> <dt id="a447">447 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 19:48:22.71 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 比奈「……あれは」 <br /><br /> 泉(誰かが降りてくる……?) <br /><br /> ヘレン「……ずいんぶと地球人が少ないわ。私の舞台にはふさわしくないわね」 <br /><br /> コワスーゾ「コワスゾー!」 <br /><br /> 泉(あっちのは……ロボット? 隣の女は……生物に見える。それも、人間に) <br /><br /> 比奈「ちょっと、アンタ」 <br /><br /> ヘレン「……あら。私のファンかしら? フッ、既に知れ渡っているとはね」 <br /><br /> 比奈「んなわけねーっスよ。なんでこんなことしたんスか」 <br /><br /> ヘレン「なぜ? あなたは太陽に、どうして輝いているのか質問するの?」 <br /><br /> 比奈「……理由はねーってことっスね」 <br /><br /> ヘレン「えぇ。私はただそこにいるだけで周りも影響されてしまうの」 <br /><br /> 比奈「はた迷惑にもほどがあるっスよ……ホント」 <br /><br /> ヘレン「仕方ないわ。私という存在のレベルが大きすぎるのよ」 <br /><br /> 泉(微妙に会話が成立しない……)</dd> <dt id="a448">448 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 19:49:47.44 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 比奈「……世界征服が目的だ、とか言わせられるなら楽だったんスけどねぇ」 <br /><br /> ヘレン「既に私の手の中にあるものを征服する必要がある?」 <br /><br /> 比奈「はぁ……」 <br /><br /> ヘレン「いえ……世界征服じゃなくて宇宙制覇かしら。すでに完了しているのは、ね」 <br /><br /> 比奈「あー、そりゃめでてーっスね」 <br /><br /> ヘレン「そう、当然なのよ。ところで……」 <br /><br /> ヘレン「時間稼ぎはいつまでしていたいのかしら?」 <br /><br /> 比奈「……流石にバレますか」 <br /><br /> ヘレン「私と少しでも長く会話をしていたいって気持ちもわかるわ。でも……一人にかまっていられるほどヒマでもないの」 <br /><br /> 比奈「とりあえずヒーローが誰かしら来てくれると楽だったんスけどね……あぁ、ホント。なんで勢いに任せちゃったんスかねぇ」 <br /><br /> ヘレン「観客は少ないけれど、最後まで見ていきなさい。そして伝えればいい……このパワーを」 <br /><br /> 泉(すごい圧力……逃げたほうが……)</dd> <dt id="a449">449 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 19:51:15.12 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ヘレン「とりあえずコワスーゾ、そこの2人はパーティのお客様として歓迎しましょう……私の舞台は――」 <br /><br />      「撃てー!」 <br /><br />   ギンギンギンッ <br /><br /> ヘレン「――ようやく観客が来たようだから。いきなさい、コワスーゾ」 <br /><br /> コワスーゾ「コワスゾー!」 <br /><br /> GDF隊員「大丈夫か!? 君たち、早く避難を! 避難所はわかってるね?」 <br /><br /> 泉「あ……はい?」 <br /><br /> 比奈「………わかりました」 <br /><br /> 泉(避難所って……いや、この人についていけば大丈夫かな?) <br /><br /><br /><br /> ヘレン「あら? また減るのかしら……それとももっと大規模なパーティの始まり?」ギィィィン… <br /><br /> 隊員A「くそっ、バリアか! 最近怪人は現れてなかったっていうのに!」 <br /><br /> 隊員B「いいから撃て!」 <br /><br /> ヘレン「ふぅ……コワスーゾ。弾丸をすべて掴んでみせてあげなさい」 <br /><br /> コワスーゾ「コワ!」シュババババッ <br /><br />   パラパラパラパラ… <br /><br /> 隊員A「……マジかよ」 <br /><br /> 隊員B「こちらB、どうやら奴さんの防御力は一般カース以上です。追加兵装を!」</dd> <dt id="a450">450 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 19:51:53.26 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 比奈「……とりあえずここまでくれば平気っスかね」 <br /><br /> 泉「あの、避難所は……」 <br /><br /> 比奈「いや、確かに命あっての物種ではありまスけど、このネタはどうせだからメモっときたいんで」 <br /><br /> 泉「メモって……どうして?」 <br /><br /> 比奈「あいつのおかげで原稿が消し飛びましたから。もーネタにでもしないとやってらんないっスよ」 <br /><br /> 比奈「それにGDFを生で見れる機会ってのもそう多くないしいい機会かもしれないし。これぐらいしないとね」 <br /><br /> 泉(……話を聞いてもらえない) <br /><br /> 比奈「まぁ、かなり苦戦してるみたいっスけど……ん?」 <br /><br /> 泉「どうしたの?」 <br /><br /> 比奈「……あのマシン、相当硬いみたいでスけど。動きに微妙なタイムラグがあるみたいっスね」 <br /><br /> 泉「……あ、本当だ」 <br /><br /> 比奈「で、動く前に……はー、なるほど」 <br /><br /> 泉「あの……」 <br /><br /> 比奈「あなた、こんな時にやけに落ち着いてるし能力者っスよね。なんとなくわかるんスよ……よく人間観察してますから」 <br /><br /> 泉「え? いや、私は――」 <br /><br /> 比奈「ちょっと協力してほしいっス。お礼はしますから……」 <br /><br /> 泉「お礼って言われても……」</dd> <dt id="a451">451 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 19:52:46.96 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 比奈「いやね……アタシは、正直ヒーローとか侵略者とかどうでもいいんスよ……」 <br /><br /> 泉「え?」 <br /><br /> 比奈「まぁ、非日常系のネタがネタにならないって意味じゃ困っちゃぁいましたけど……でも……」 <br /><br /> 比奈「あの店は原稿を描いててもいいって言ってくれたんスよ。で、締切ギリギリでやっと完成したんスよ」 <br /><br /> 泉「……」 <br /><br /> 比奈「アタシは……今、大事なものが2つ同時に壊れてすっげー怒ってるんスよ」 <br /><br /> 比奈「とりあえず、一発ひっぱたたかなきゃ気が済まないんスよ、『私』は」 <br /><br /> 泉「そっか……理不尽なことに、怒ってるんだ」 <br /><br /> 比奈「まぁ、無理にとは言わないっス。アイツ……たぶんアタシならぎゃふんと言わせられると思っただけなんで」 <br /><br /> 泉「ううん。いいよ」 <br /><br /> 比奈「……ホントに?」 <br /><br /> 泉「やっぱり、理不尽なことには抗わなきゃって思うよね。人は、人だもん」 <br /><br /> 比奈「ってことは……手伝ってくれるんスか?」 <br /><br /> 泉「まぁ、バッテリーは心もとないけど。ハイエネトロンとかこの時代はないだろうし電気とかおごってくれるなら」 <br /><br /> 比奈「オッケー、交渉成立っス……アタシは比奈。荒木比奈……漫画家っス」 <br /><br /> 泉「私は大石泉。えっと……なんていえばいいんだろう」</dd> <dt id="a452">452 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 19:53:52.64 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 比奈「……どうしたんでスか?」 <br /><br /> 泉「なんていうか……結構信じられないことだと思うから。笑わない?」 <br /><br /> 比奈「ん、学生でもフリーターでもなんなら獣人とかでもそう珍しいもんじゃないっスよ」 <br /><br /> 泉「いや……うん。未来人なんだ」 <br /><br /> 比奈「……おー、また新しいネタっスね。なかなか悪くないっスよ」 <br /><br /> 泉「やっぱり、信じられないかな?」 <br /><br /> 比奈「いや、こんな世界でスし信じますよ。じゃあアイツをひっぱたく武器とかは?」 <br /><br /> 泉「……さっきも言ったけどバッテリーが心もとないわ。エクセル……ロボットなんだけど、それを起動させて3分持つかどうかかな」 <br /><br /> 比奈「3分……燃費はよくないんスねぇ、未来なのに」 <br /><br /> 泉「タイムトラベルしてきたところだからね」 <br /><br /> 比奈「はぁ……そこらへんもあとで詳しく教えてもらっていいっスか?」 <br /><br /> 泉「うん。大丈夫……エクセル抜きだと、銃弾とか爆弾を出したりできるかな。それぐらい」 <br /><br /> 比奈「うーん……ロボを起動させるより、あの調子に乗ってる感じならそっちでいったほうがよさそうっスねぇ……」 <br /><br /> 泉「作戦があるの?」 <br /><br /> 比奈「えぇ。ちょっと耳を――」</dd> <dt id="a453">453 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 19:54:36.75 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 隊員A「くっそ……狙撃も利かないなんてどうすれば……」 <br /><br /> ヘレン「あなたたちだけに見せているのはもったいないわ。そろそろもっと人が多いところへ行かせてもらおうかしら」 <br /><br />  「ちょおぉぉぉぉぉっと待ったあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 <br /><br /> 隊員B「!? あ、あの子たち……!」 <br /><br /> 比奈「はぁ……げほっ。大声なんて出すもんじゃねーっスね」 <br /><br /> ヘレン「あら……ひょっとしてもっと見ていたいと思ったの? 残念ね、私を縛るには人数が足りないわ」 <br /><br /> 泉「……あなたは、勘違いしているわ」 <br /><br /> ヘレン「……勘違い?」 <br /><br /> 比奈「アンタはずいぶん自分に自信を持ってるみたいっスけど……アタシ達のほうがスゴいっスよ」 <br /><br /> ヘレン「………」 <br /><br /> 泉「そのロボだって、パワーだけはあるみたいだけどずいぶんのろいみたいだしね」 <br /><br /> ヘレン「そう……生きて私の素晴らしさを伝える役になれるところだったのに、残念よ」 <br /><br /> ヘレン「潰しなさい、コワスーゾ」 <br /><br /> コワスーゾ「コワスゾー!」 <br /><br /> 泉(来たっ……!)</dd> <dt id="a454">454 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 19:55:24.44 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> コワスーゾ「コワスゾー!」ドゴォッ! <br /><br /> 比奈「うわわっ……あっぶないっスね……」 <br /><br /> 泉(すごい火力……銃撃データは劣化が激しいしペーストして破壊できるか微妙なところかな) <br /><br /> ヘレン「いいわ、そのまま掴みなさい」 <br /><br /> コワスーゾ「コワスゾー!」ブンッ! <br /><br /> 泉「きゃっ!?」 <br /><br /> 比奈「っと、大丈夫っスか?」 <br /><br /> 泉「正直若干後悔してる。なんでこんなことって」 <br /><br /> 比奈「最近はヒーローも忙しいらしいっスからねぇ……でもあいつにイラっときたのはいっしょっスよ」 <br /><br /> 泉「うん。いくよ……Ctrl、V! ペースト、ウイング!」 <br /><br /> ヘレン「……こっちに飛んでくる? ふっ、太陽に近づきすぎるとどうなるのかを知らないの?」 <br /><br /> 比奈「さぁ、どうなるんスかねぇ?」 <br /><br /> 泉「―――」バリッ <br /><br /> ヘレン「……? まぁいいわ。コワスーゾ、その――」</dd> <dt id="a455">455 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 19:55:50.92 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br /><br /><br /><br />             バリッ <br /><br /><br />  </dd> <dt id="a456">456 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 19:57:03.55 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">       / ̄ ̄ ̄\ <br />      |  無   | <br />      |  礼   | <br />      |  な   | <br />      |  二  .| <br />      |   人   | <br />      |   を   | <br />      |  潰   | <br />      |  し  / <br />      /  て / <br />     ̄ ̄ ̄ ̄</dd> <dt id="a457">457 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 19:57:40.33 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">       / ̄ ̄ ̄\ <br />      |  |   | <br />      |  |   | <br />      |  |   | <br />      |  |  .| <br />      |   |   | <br />      |   を   | <br />      |  潰   | <br />      |  し  / <br />      /  て / <br />     ̄ ̄ ̄ ̄</dd> <dt id="a458">458 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 19:58:15.01 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">       / ̄ ̄ ̄\ <br />      |  |   | <br />      |  |   | <br />      |  |   | <br />      |  |  .| <br />      |   |   | <br />      |   を   | <br />      |  潰   | <br />      |  し  / <br />      /  て / <br />     ̄ ̄ ̄ ̄ <br /><br /><br /><br /><br />        / ̄ ̄ ̄\ <br />      |  指   | <br />      |  示   | <br />      |  す   | <br />      |  る   | <br />      |  私  / <br />      /   . / <br />     ̄ ̄ ̄ ̄</dd> <dt id="a459">459 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 19:59:00.98 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">       / ̄ ̄ ̄\ <br />      |  指   | <br />      |  示   | <br />      |  す   | <br />      |  る   | <br />      |   私  .| <br />      |   を   | <br />      |  潰   .| <br />      |  し  / <br />      /  て ./ <br />     ̄ ̄ ̄ ̄</dd> <dt id="a460">460 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 19:59:33.78 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ヘレン「『指示する私』を潰して――ハッ!?」 <br /><br /> コワスーゾ「コワスゾー!」ブンッ! <br /><br />     メキメキ……ドゴォッ! <br /><br /> 比奈「っし……『聞こえた』っスよ、あんたの命令」 <br /><br /> 泉「ビルに突っ込んでったね……と、う、わわ……やっぱり安定しないよコレ。降りよう……」 <br /><br /> 比奈「そうっスね……無音で飛ぶなんてとんだオーバーテクノロジーっス。これもネタに……なんないっスかねぇ」 <br /><br />    スタッ <br />       トッ <br /><br /> コワスーゾ「…………」 <br /><br /> 泉「ふぅ……まぁ、指示がなくなればロボも動きを止めるよね」 <br /><br /> 比奈「まぁ、腕時計みたいなのに命令を吹き込んでたみたいっスね。わかりやすい操作で、やりやすい指示方法で助かったっスよ」 <br /><br /> 隊員A「……お、おぉ」 <br /><br /> 隊員B「や、やったのか!?」 <br /><br /> 比奈「あ、そういうこというと」 <br /><br />            ガラガラガラ… <br /><br /> ヘレン「フフフ……なるほど。私の言葉だけを聞く兵として気に入っていたのに、そこを突くなんて」 <br /><br /> 比奈「あー……ヤバいっスねぇ、ブチ切れっぽいんスけど」</dd> <dt id="a461">461 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 20:00:01.57 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ヘレン「いいでしょう。宇宙レベルの私が手にするにふさわしい星だと認めてあげる」 <br /><br /> 比奈「は?」 <br /><br /> ヘレン「今日のところは帰るわ。髪も汚れて興がそがれたもの……ふぅ、私の言葉を変えるなんて面白いじゃない」 <br /><br /><br /><br /><br /> 泉「……い、いっちゃったよ? ロボットおいて」 <br /><br /> 比奈「あー……助かった、んスかねぇ……もう、二度とこういうことはしねーっスよ、ホント」 <br /><br /> 隊員B「君たち……助かったよ。でもあんな」 <br /><br /> 比奈「あーもう、ほら。お説教はごめんっス! 謝礼とかなら受け取りまスけど!」 <br /><br /> 隊員A「……それは上にかけあってみるよ」 <br /><br /> 比奈「え、ホントでスか? それなら……あ、ついでに活動の詳細とか聞いてもいいっスかね? 大丈夫、暴露本とかを作る気はないっスから……」 <br /><br /> 隊員B「お、おう」</dd> <dt id="a462">462 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 20:00:35.59 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 泉「謝礼は後日、か。でもお説教もくらっちゃった……めんどくさいんだね、こういう世界でも」 <br /><br /> 比奈「……はぁー」 <br /><br /> 泉「どうしたの?」 <br /><br /> 比奈「いや……改めて確認するとホント無茶やらかしたなーって気持ちと……」 <br /><br /> 比奈「この……やっと出来上がったはずの原稿が無に帰したんだなぁって悲しみが……襲ってきて……」 <br /><br /> 泉「………ちょっと、見せて」 <br /><br /> 比奈「え? もう切れ端しかないっスよ……それでいいなら」 <br /><br /> 泉「欠片はできる限り集めて……燃えてる部分はどうかな、たぶん……」 <br /><br /> 比奈「……?」 <br /><br /> 泉「Ctrl……Z。リターン」 <br /><br />    パァァァァ… <br /><br /> 比奈「……!? げ、原稿が」 <br /><br /> 泉「『もとに戻す』……私が過去に飛んできた技術はこれを拡大解釈したものなんだけど、時間を一部ゆがめて……」 <br /><br /> 比奈「おぉぉぉぉ! 感謝っス! 未来人ってすごいんスねぇ! わー!」 <br /><br /> 泉「……バッテリーが切れちゃった。その、充電」 <br /><br /> 比奈「充電!? そんなもんいくらでもさせまスよ!」 <br /><br /> 泉「そ、そっか。よかった……助かったよ」</dd> <dt id="a463">463 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 20:01:03.87 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 比奈「というか、便利そうだしいろいろ聞きたいし……どうっスか、未来人さん」 <br /><br /> 泉「どうって……?」 <br /><br /> 比奈「食事とエネルギーの保障はするっスよ。アタシのアシスタントやりません?」 <br /><br /> 泉「アシスタント……って」 <br /><br /> 比奈「衣食住の保障をする代わりにアタシの漫画を手伝ってほしいってことっス」 <br /><br /> 泉「……いいの、かな」 <br /><br /> 比奈「いやー、正直もうあきらめるしかないと思ってたところなんで助かったっスよー♪」 <br /><br /> 泉「そ、それじゃあ……お邪魔します」 <br /><br /><br /><br />   ――後日、荒木比奈が異常に上昇した電気代に悩まされるのは別の話。</dd> <dt id="a464">464 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 20:01:59.80 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">ヘレン(??) </dd> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><a href="http://i.imgur.com/pSOgCKj.jpg" target="_blank"><img alt="" src="http://i.imgur.com/pSOgCKj.jpg" style="width:320px;height:400px;" /></a><br /><br /> 職業:敵性宇宙人 <br /> 属性:宇宙レベルの犯罪者 <br /> 能力:配下の作成およびコントロール <br /><br /> 出身地:宇宙(そら)の向こうな『宇宙レベル』を自称する犯罪者。 <br /> 怪人・怪獣クリエイターとしての能力は超一流で生物・ロボットなど様々な配下を創り出し、操り世界征服……宇宙制覇をたくらむ。 <br /> 幹部にあたるマシンといっしょに宇宙船をのりまわし、各地に強襲を繰り返す。 <br /><br /> 本人の戦闘力もかなり高く前線に赴くことも多いが、気がのらない場合は直接戦闘はしない。</dd> <dt id="a465">465 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆IRWVB8Juyg</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage]:2013/07/06(土) 20:03:33.06 ID:yYG9O9X6o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 秘密結社とか陰謀とか関係なくストレートな敵役が欲しかった <br /> ヘレンさんはどこにでも出てくるしいろんな部下を使うよ! カース以外の汎用雑魚にしてもいいよ!! <br /><br /> 泉の持ってきたオーバーテクノロジーと荒木先生の職業が合わさり最強に見える</dd> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> </dd> <dt id="a470"><span class="resnum">470</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆kaGYBvZifE</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/06(土) 23:54:14.04 <span class="id">ID:WWv5iVO20</span></span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ザ・岡崎先輩の近況</dd> <dt id="a471"><span class="resnum">471</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆kaGYBvZifE</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 23:55:20.45 <span class="id">ID:WWv5iVO20</span></span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ―――――――――― <br /><br /> 眼下に広がる風景を埋め尽くすマグマのそれに似た赤黒い波濤は、順調にカースが増え続けている <br /> ことを示す何よりの証拠だった。 <br /> 脈動する悪意が大地の底から滲み出し、形を得たそれは赤いオーラとなってカースの泥の身体から <br /> 立ち上り、遠目には街が燃えているようにも見える。 <br /> わらわらと湧き出す『憤怒』のカースの、薄闇の中に浮かび上がる姿は、地獄の悪鬼のようでさえあった。 <br /><br /> 数時間前まで平和な日常を送っていた街が呪詛の汚泥で満ちていくのをビルの屋上から眺めながら、 <br /> 岡崎泰葉は口角を歪に釣り上げて笑った。 <br /><br /> このカースの大量発生は無論、泰葉の仕業であった。 <br /> カースがどこまで自己増殖を続けることができるか、人間から発せられる感情はどれほどまで <br /> カースの成長に影響を及ぼすのか、それらを調べるための実験としての試みである。 <br /><br /> 地下鉄や下水道に多数のカースの核を仕掛け、それらを同時多発的に覚醒させ街をカースで埋め尽くし、 <br /> ヒーローやGDFに介入する暇を与えず電撃的に街を制圧。 <br /> その後は、街の人間を捕らえて実験台にするなり、素質があるようならばカースの核を埋め込んで <br /> カースドヒューマンにするなり、泰葉の思うままに事を運ぶことができる。 <br /> 今のところ、すべては予定通りに進行している。 <br /><br /> しかし今の泰葉の表情からは、実験対象を観察する学者の冷徹な目線はなく、むしろサディスティックな <br /> 法悦を湛えてさえいた。 <br /><br /> 見てみるがいい、逃げまどう者達の無様な姿を。日常とやらを理不尽に踏みにじられる様を。 <br /> 何ら疑うことなく幸福を謳歌する者の、なんと脆く弱いことか。 <br /> 尽きることのない憤怒や嫉妬がわずかばかり慰められるのを感じ、泰葉は胸が躍る気分だった。 <br /><br /> これでこそ、あの『憤怒』の声――邪龍ティアマットの甘言に乗ってやった甲斐があったというものだ。</dd> <dt id="a472">472 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆kaGYBvZifE</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 23:56:06.64 ID:WWv5iVO20</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「クッククク……おーおー、これはまた派手にやってますねぇ……」 <br /><br /> ざらつくような声を背中に受け、泰葉はちらと視線をやる。 <br /> そこにいたのは、慇懃無礼を形にしたような、顔を見ることさえ不愉快な男の姿があった。 <br /> それは泰葉の元プロデューサーであり、今は邪龍の魂に肉体を乗っ取られている男だった。 <br /><br /> ティアマットがよりにもよってこの男を選んだのは勿論、泰葉の憤怒を煽るためだろう。 <br /> 本来なら顔も見たくないのは当然として、泰葉をなお不愉快な気分にさせたのは、この男が自分の <br /> 担当アイドルに手を出して業界を追放されていたという事実だった。 <br /><br /> 唾棄すべき、見下げ果てたクズだ。ティアマットも、この元プロデューサーも。 <br /> 『憤怒の王』とやらになった暁には、真っ先に殺してやる。 <br /><br /> 胃の腑を突き上げる不快感を自覚しながら、泰葉は吐き捨てるように言う。 <br /><br /> 「……何の用? 今のところ問題は起きていないけれど」 <br /><br /> 「そうつれないこと言いなさんなよ。俺と泰葉ちゃんの仲だろぉ?」 <br /><br /> 「ふざけないで」 <br /><br /> 「クッククク……ああ、これは失礼。ククク……」 <br /><br /> この男は、いちいち人を不愉快がらせなければ話もできないのか。 <br /><br /> 泰葉の射抜くような視線を風と受け流し、ティアマットは嗤う。</dd> <dt id="a473">473 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆kaGYBvZifE</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 23:56:35.87 ID:WWv5iVO20</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「祭りの準備は順調のようですからね……ちょっとばかり手助けを、と思いまして」 <br /><br /> 「必要ない」 <br /><br /> 泰葉は内容も聞かずに断じる。 <br /> この男の『プロデュース』を受けるとはいえ、手放しに信用するほど泰葉はお人好しではない。 <br /><br /> 「主要な道路はカースの群れで完全に封鎖したわ。GDFもヒーローも迂闊には近寄ってこれない。 <br />  それこそ、また例の爆弾を使いでもしない限りは」 <br /><br /> そして、今のGDFが世論に背を向けてまでカースの大量駆除を行う性格の組織ではないことを、 <br /> 泰葉は薄々ながら感じ取っていた。テレビや新聞、インターネットで情報はいくらでも入手できるし、 <br /> GDF総司令交代に前後して行われた記者会見で事件のあらましは世間に知れ渡っていたからだ。 <br /><br /> 「クッククク……さすがご明察。私の伝手で調べていますが、今のところ連中も攻めあぐねていますねぇ」 <br /><br /> 「伝手?」 <br /><br /> 「ええ。これでいて『友達』の多い方でしてねぇ……」 <br /><br /> 露骨に当てこするような言い方に苛立ちを覚えたが、何か言い返すのも無駄だと判断した泰葉は、 <br /> 射るように睨みつける目を唯一の抗弁とした。 <br /><br /> とはいえ、不愉快なのはともかくとして、無能な男ではないのは確かだ。 <br /> 少なくとも今のところはティアマットは泰葉を裏切らないし、泰葉もティアマットに敵対するメリットはない。</dd> <dt id="a474"><span class="resnum">474</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆kaGYBvZifE</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/06(土) 23:59:19.00 ID:WWv5iVO20</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「あなたの『友達』っていうのは、とても頼りになるみたいね?」 <br /><br /> 「ええ。安っぽい友情ごっこなんかじゃあ生まれえない、本物の信頼関係ですよ……クッククク」 <br /><br /> こいつのような悪魔が、言うに事欠いて信頼などと、それこそお笑い草だ。 <br /> 泰葉は内心の失笑をおくびにも出さず、ただティアマットの戯言を聞き流すのに努めた。 <br /><br /> こうしている間にも、カースは増殖を続けその生息圏を拡大し続けていく。 <br /> 『憤怒』の心性のままに、やり場のない怒りと憎悪でその身を焦がし、破壊を振り撒いていく。 <br /> そしてその過程で生まれた恐怖と悲しみが、より大きなカースを生んでいくのだ。 <br /> 泰葉が『憤怒の王』となり、世界のすべてを破壊するその日が来るまで……。 <br /><br /> 「……?」 <br /><br /> ふと泰葉は、地上から立ち上る『憤怒』のオーラで赤黒く染まった夜空へと視線を向けた。 <br /><br /> 不意に視界の端に、空の果てから地上へと伸びる一筋の輝く軌跡が映り――願い事をする間もなく、 <br /> 空から流れ落ちた星は見えなくなる。 <br /><br /> いや、自分はもう星に願いを捧ぐ年頃ではない。 <br /> あれはむしろ、古巣に留まる仲間に手向けられた餞――あるいは、惜別の涙か。 <br /><br /> そんな風に考えた泰葉の胸にちくりと後悔の棘が突き刺さったが、カースの浸食の深まった精神の中で <br /> その小さな『痛み』は行き場を失い、やがて遣る方ない腹立たしさに変わっていった。 <br /><br /><br /><br /> 「ああ――腹立たしい」</dd> <dt id="a475">475 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆kaGYBvZifE</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 00:01:30.64 ID:0KKU5keR0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">『憤怒の街』 <br /> 泰葉とティアマットの作戦によって占拠された都市。 <br /> 大量の『憤怒』のカースによって封鎖されており、迂闊に近寄れない。 <br /> 街の中には多数の民間人が取り残されている。 <br /><br /> イベント情報 <br /> ・しばらくの間、泰葉は『憤怒の街』を拠点に活動するようです。 <br /> ・憤怒Pに接触し、協力している何者かがいるようです。</dd> <dt id="a476">476 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆kaGYBvZifE</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 00:04:31.49 ID:0KKU5keR0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 宇宙レベルさんに負けじと一大勢力を築いているようです <br /> 岡崎先輩がお元気そうで何よりです(白目)</dd> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> </dd> <dt id="a480"><span class="resnum">480</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆mtvycQN0i6</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage]:2013/07/07(日) 00:43:13.90 <span class="id">ID:6d43xwjlo</span></span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">渚いきまーす</dd> <dt id="a481"><span class="resnum">481</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆mtvycQN0i6</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage]:2013/07/07(日) 00:43:41.36 ID:6d43xwjlo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「へい、パスッ!!」 <br /><br /> 「キャプテンにボールがいったよ!」 <br /><br /> 「あー、無理だ」 <br /><br /><br /> 一人の女の子にボールが渡る。誰も近寄ることはできない。 <br /><br /> その女の子はそのまま素早いドリブルでゴールを決めた。 <br /><br /> 彼女の名前は愛野 渚。この高校のバスケ部キャプテンである。 <br /><br /><br /><br /> パスッ <br /><br /><br /> ビーッ <br /><br /><br /> 「よし、今日はここまで!みんなもっと私の邪魔しなきゃダメだよッ」 <br /><br /> 「だってー、キャプテン強いんですよ」 <br /><br /> 「あとキャプテンじゃなくて渚って呼んで欲しいなァ。敬語もいらないよ」 <br /><br /><br /> 彼女は困っていた。 <br /><br /> チームメイトとの距離が遠いのだ。 <br /><br /> もちろん、嫌われているわけではなく、渚のバスケの上手さに尊敬してのことだ。 <br /><br /> だが、渚とチームメイトたちの間には一種の境界があった。</dd> <dt id="a482">482 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆mtvycQN0i6</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage]:2013/07/07(日) 00:44:23.03 ID:6d43xwjlo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「よし、じゃあみんな着替えよッか」 <br /><br /> 「あれ、キャプテンどこいくんですか?」 <br /><br /> 「水飲んでから行くよ」 <br /><br /><br /> もともと、ほかの人との境界はあった。渚は「できる子」だったから。 <br /><br /> だが、とある日を境にして、その境界が遠くなった気がした。 <br /><br /><br /> そんな渚の悩みを、悲鳴がかき消した。 <br /><br /><br /> 「どうしたのッ!!」 <br /><br /><br /> 更衣室はひどい有様だった。 <br /><br /> チームメイトは全員倒れ、その真ん中に何かが立っていた。 <br /><br /> 人間ではない。 <br /><br /><br /> 「だ、誰...?それはウサ耳?」 <br /><br /><br /> 「オレか?オレはウサミン星からやってきた」 <br /><br /><br /> 「う、宇宙人?なんのためにきたの?その子たちになにをしたァ!!」 <br /><br /><br /> 「一度に質問するなっ!」 <br /><br /><br /> 「...その子たちに何をしたの」 <br /><br /><br /> 「奴隷商人に売りつけるんだ」 <br /><br /><br /> 「な、なにを言って...」</dd> <dt id="a483">483 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆mtvycQN0i6</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage]:2013/07/07(日) 00:45:37.40 ID:6d43xwjlo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「オレは、母星じゃ虐げられてたんだ。だが、今回この地球にいくってんで密航してきた」 <br /><br /> 「んで、オレは独立しなきゃなんねえから、資金が必要なんだ」 <br /><br /> 「お前らは体を鍛えているから労働力にもなるし、奴隷にはうってつけなんだよ」 <br /><br /> 「それに、女だ。女は高く売れる!おっと、安心しろ、まだなんにもしちゃいねえ。ちょっと気絶してるだけだ」 <br /><br /><br /> 「え...な、なに...なんなのォ...」 <br /><br /><br /> 「それじゃ、お前も眠ってな!」 <br /><br /><br /> ウサミン星人は銃型のなにかを取り出すと、渚に向けて撃った。 <br /><br /><br /> 「うわァッ!!」 <br /><br /><br /> 思わず渚は目を閉じた。</dd> <dt id="a484">484 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆mtvycQN0i6</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage]:2013/07/07(日) 00:48:23.37 ID:6d43xwjlo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br /> 「な、なんだ?当たってねぇのか?」 <br /><br /><br /> 恐る恐る目を開けてみると、ウサミン星人は困惑していた。 <br /><br /><br /> 「今確かに撃ったはずなんだが...調子が悪いのか?」 <br /><br /><br /> 再び銃口を渚に向け、撃つ。 <br /><br /> だが、そこからでた光線は渚の手前で消滅した。 <br /><br /> まるで、そこが消える境界線であるみたいに。 <br /><br /><br /> 「な、なにが起きてるのォ...?」 <br /><br /><br /> 渚も困惑していた。 <br /><br /><br /> 「ちっ、こいつも能力者なのか...仕方ない、ちょっと手荒だが...」 <br /><br /><br /> ウサミン星人は別の銃を取り出すと、渚に向けて撃った。 <br /><br /> だが、その弾は、渚の手前で失速し、地面に落ちた。それ以上は届かないみたいに。 <br /><br /> 渚は気がついた。これが自分の能力なのだ、と。 <br /><br /> 最近、不思議な能力を持った人が増えてきている、と耳にしていたので、自分も能力を持っていたのだと。 <br /><br /><br /> 「帰るなら今のうちだよッ!」 <br /><br /><br /> 「くそっ、能力持ってるからっていい気になるなよ...!」 <br /><br /><br /> ウサミン星人は女の子の一人に銃口を向ける。</dd> <dt id="a485">485 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆mtvycQN0i6</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage]:2013/07/07(日) 00:50:30.96 ID:6d43xwjlo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「その子を離してッ!!」 <br /><br /><br /> 「うるせえ!!おとなしくつかまんねぇとこいつを[<font color="#FF0000">ピーーー</font>]ぞ」 <br /><br /><br /> 今、渚には自信があった。絶対に誰も死なさせないという自信が。 <br /><br /><br /> 「お、おい、近づくな!撃つぞ!」 <br /><br /><br /> 「撃てるなら撃ってみろォ!!」 <br /><br /><br /> 「ぶ、ぶっ[<font color="#FF0000">ピーーー</font>]!!」 <br /><br /><br /> 引き金を引くが、やはり手前で弾丸は落ちる。 <br /><br /> そして、渚は思いっきりウサミン星人を殴り飛ばした。 <br /><br /><br /> 「な、なんじゃこりゃあ!!」 <br /><br /><br /> ウサミン星人の長い耳は、顔に張り付いて片目を塞いでいた。まるで、もともとそこにあったみたいに、境目はなく。 <br /><br /><br /> 「う、うわああああああ!!」 <br /><br /><br /> 「大丈夫?」 <br /><br /><br /> 叫ぶウサミン星人を尻目に、渚はチームメイトたちに駆け寄った。 <br /><br /><br /> 「キャ、キャプテン...」 <br /><br /> 「良かった、大きな怪我もないみたいだし...」 <br /><br /> 「キャプテン危ないっ!!」 <br /><br /> 「え━━━━━━━」</dd> <dt id="a486">486 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆mtvycQN0i6</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage]:2013/07/07(日) 00:52:06.23 ID:6d43xwjlo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">ドロリ <br /><br /> 渚の背中から血が流れる。 <br /><br /><br /> 「フハハ、刃物は効くようだな...!」 <br /><br /><br /> 「ぐ...み、みんな...」 <br /><br /> 「「「キャプテン!!」」」 <br /><br /><br /> 「死んじまったか...まあいい、10人もいれば一財産になる」 <br /><br /><br /><br /> 私はここで死ぬのかァ... <br /><br /><br /><br /> 「い、いや...」 <br /><br /> 「やめて!」 <br /><br /><br /> 「おらおとなしくしろっ!!」 <br /><br /><br /><br /> いや、仲間を置いていくわけにはいかないッ!! <br /><br /><br /><br /><br /> 「あ...」 <br /><br /> 「う、うそ...」 <br /><br /><br /> 「ん?どこ見てやがる...」 <br /><br /><br /> 「お、お前はたった今殺したはずじゃ...う、うわああああああああああああああああああああああああああ」 <br /><br /><br /> ━━━━━━━━━</dd> <dt id="a487">487 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆mtvycQN0i6</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage]:2013/07/07(日) 00:52:31.82 ID:6d43xwjlo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">後日 <br /><br /> 「ねえ、大会の日程どうだったァ?」 <br /><br /> 「それが...」 <br /><br /> 「あちゃー、この日は私『あの日』じゃん」 <br /><br /> 「キャプ...渚、どうにかならない?能力とか使っちゃおうよ!」 <br /><br /> 「そ、それは流石にずるいと思うよッ」 <br /><br /> 「えー、そんなー」 <br /><br /><br /> オーイ、ナギサハ『アノヒ』ダッテサ! <br /><br /> シンジャヤダヨナギサ! <br /><br /> オ、オオゲサダナァ...</dd> <dt id="a488">488 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆mtvycQN0i6</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage]:2013/07/07(日) 00:53:47.57 ID:6d43xwjlo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> おとなしく一人称視点にすればよかった <br /><br /><br /> 愛野 渚(18) <br /><br /> とある高校のバスケ部キャプテン。ウサミン星人との一件で、人との境界の原因に気がつく。 <br /> 能力は、『境界線を操作する』銃弾の届く、届かない境界を作ったり、物体どうしの境界をなくしたりできる。 <br /> 某妖怪のむらさきさんとはなんの関係もございません。 <br /> ウサミン星人に刺され、命を落としかけるが、生と死の境界線に残った。『あの日』とは死に近づいてる状態のこと。 <br /> 約一月の周期で生と死の間をいったりきたりする。 <br /> 生:普通の人間となんら変わらない <br /> 死:動きが鈍くなる、存在が認識されにくくなる等 <br /><br /> バスケの腕も生死の状態によって変わるため、チームメイトはなによりも大会の日程決めを神に祈る。 </dd> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> </dd> <dt id="a494"><span class="resnum">494</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆lbKlS<span class="namenum">0</span>ZYdV.M</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage]:2013/07/07(日) 01:45:10.71 ID:g+Df2CSTo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">おつおつ <br /> 人間とソンビのハーフ…って言ったらなんか変だな… <br /><br /> 次から松尾ちゃん投下します</dd> <dt id="a496">496 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆lbKlS<span class="namenum">0</span>ZYdV.M</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 01:46:47.68 ID:g+Df2CSTo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ユズ「ん~平和っていいなぁ♪」 <br /><br /> 死神ユズは幸せを噛みしめながら、一人夜の空で次なる獲物を探し求めていた。 <br /> 神崎昼子ことブリュンヒルデはお留守番。 <br /> 何故なら学校の宿題があるからだ。 <br /><br /> ユズ「けど、お家で宿題が出来るっていうのは平和の証拠だよね♪」 <br /><br /> 先日までユズはルシファーの姦計による『偽物の自分』のせいで人間界では犯罪者扱い。 <br /> けれど無事ルシファーを討伐し晴れて無罪放免。 <br /> これでもう何も気にせず動き回れる。 <br /><br /> ユズ「後ろめたいことが無いのって気持ちいいねー♪」 <br /><br /> ユズ「まぁ、もともと悪いことしてないんだけどさ♪」 <br /><br /> ご機嫌。 <br /> ストレスから解放された反動か、つい独り言が多くなってしまう。 <br /><br /> ユズ「さてさて、これで残りは『嫉妬』と『色欲』と『強欲』だよね!」 <br /><br /> ユズ「『暴食』を狩る手間が省けたのは良いんだけどさ…」 <br /><br /> ただユズは決して無意味に独り言を放っていたわけでは無い。 <br /> むしろその独り言を聞かせていたのだ。 <br /> では、一体誰に? <br /><br /> ユズ「―――貴女ももしかして狩られる側?」 <br /><br /> 「…!」 <br /><br /> 「ふぅん……気づかれていた?」 <br /><br /> ユズの問いかけに反応し、そして言葉が返ってくる。 <br /> その言葉の主は黒き翼を持つ少女だった。</dd> <dt id="a497">497 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆lbKlS0ZYdV.M</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 01:48:00.68 ID:g+Df2CSTo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ユズ「そんな魔力をビンビンに発してて気づかないわけじゃん!」 <br /><br /> ユズ「その黒い翼……『堕天使』だね?」 <br /><br /> ユズ「アタシを追跡して何か用?」 <br /><br /> ユズは黒き翼を持つ少女に問いかける。 <br /> ユズの言う通り、その少女の正体は『悪魔』であり『堕天使』だった。 <br /><br /> 「別に、貴女のことを好き好んで追跡してるわけじゃないんだけど?」 <br /><br /> 「自意識過剰なのよ」 <br /><br /> 「……堕天使だってわかってるんだ」 <br /><br /> 少女はクールに吐き捨てる。 <br /> が、どうも語尾は独り言のようにしか聞こえないがユズはあえて気にしなかった。 <br /><br /> ユズ「自意識過剰も何も追跡してるのは事実じゃないのさっ!」 <br /><br /> ユズ「なに?サタン様の命?」 <br /><br /> 「……けど、この翼を見れば一目瞭然?」 <br /><br /> 少女は答えない。 <br /> むしろ無視して独り言を続けている。 <br /> その様子には流石のユズもカチンとくる。</dd> <dt id="a498">498 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆lbKlS0ZYdV.M</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 01:49:11.88 ID:g+Df2CSTo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ユズ「……って、『堕天使』からの監視なんてアタシでさえ聞いてないしねー」 <br /><br /> ユズ「貴女も勝手に地上に降りてきたってやつ?」 <br /><br /> 『魔族』は契約・魔王からの許可無しでの人間界での活動は法の改訂により御法度だ。 <br /> 目の前の少女がその罪を犯した存在ならば魔王に仕える身として見逃すわけにもいかない。 <br /><br /> ユズ「貴女の目的はわからないし、法の改訂についても知らなかったのかもしれないけどさっ…」 <br /><br /> ユズはバッジを手に取り、それを鎌へと変形させる。 <br /><br /> 「……この翼、どうしよう…どうしよう…」 <br /><br /> ユズ「アタシの前に出てきたのが運の尽き♪ってねーっ!」 <br /><br /> そして未だ独り言を呟いている少女の魂を目がけて躊躇いもなく振りかざした。 <br /><br /> 「……ハッ!」 <br /><br /> しかし、少女はユズの斬撃に咄嗟に反応し、すんでのところでそれを回避した。 <br /><br /> ユズ「!?…思ったより反射神経良いんだね?」 <br /><br /> 罪を犯した者に容赦は無用。 <br /> そう思って不意打ちを仕掛けたのにも関わらず、その少女の回避速度には思わずユズも驚きを隠せなかった。</dd> <dt id="a499">499 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆lbKlS0ZYdV.M</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 01:50:00.92 ID:g+Df2CSTo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「ふぅん。不意打ちね」 <br /><br /> 「けど、外れたわね。残念でした」 <br /><br /> 少女は余裕綽々と言った表情でユズのことを見下している。 <br /> 本来楽観的な性格のユズだが、どうも目の前の少女の澄まし顔は鼻が付く。 <br /><br /> ―――何故なら、その少女の態度に自分を罠に陥れた『傲慢』の感情を感じたからだ <br /><br /> 『努力』を否定するベルフェゴールも決して許すことの出来ない存在だったが、自分の姿で好き勝手やってくれたルシファーには討伐したと言えども少なからず私怨を抱いている。 <br /> 目の前の少女は性格こそルシファーとは違いお堅い印象を感じるが、それでもまるでルシファーが変化して自分の前に再び現れたような錯覚に落ちた。 <br /><br /> ユズ「理不尽な恨みって言われたらそれまでなんだけどさぁ…」 <br /><br /> ユズ「ちょっと本気で気に入らないんだよねー!」 <br /><br /> 感情に任せて、ユズは再び少女の魂を目がけて斬りかかりにいく。 <br /> スピードは十分。 <br /> 相手の虚もついているはず。 <br /> しかしあろうことか、今度は完全に余裕を持って回避される。 <br /><br /> ユズ「…!?」 <br /><br /> 「また同じ軌道?バカの一つ覚えってやつね」</dd> <dt id="a500">500 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆lbKlS0ZYdV.M</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 01:51:02.03 ID:g+Df2CSTo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ユズ「…もしかして甘く見すぎたカナ?」 <br /><br /> 魔術を使用していない分、余力は十分に残っている。 <br /> しかし、先ほどの斬撃のスピードは以前相見えたベルフェゴールの身体能力を上回るほどの速さだ。 <br /><br /> 「ふぅん。全力では無いって?強がりは立派ね」 <br /><br /> 相変わらず澄まし顔をした『堕天使』の少女。 <br /> その少女の余裕を崩してやろうとユズがもう一つのバッジに手をかけ杖に変えようとする際、目の前の少女から思わぬ言葉が零れた。 <br /><br /> 「……この子にルシファーが負けた?冗談でしょう?」 <br /><br /> ユズ「…!!」 <br /><br /> 「……」 <br /><br /> 少女の口から出た言葉はルシファーの名。 <br /> しかし少女本人はその名を口に出したことに気づいていない様子。 <br /> どうも無意識に独り言を呟く癖があるようだ。 <br /> しかし、これで合点がいった。 <br /><br /> 少女の鼻につく態度。 <br /> 自分が少女に感じた嫌悪感。 <br /> 少女が自分を追跡する理由。 <br /> 黒き翼を持つ堕天使。 <br /><br /> 実際に魔界で相見えたことは無いが、その名は聞いたことがある。 <br /> 大罪の悪魔であり、天界を堕天したルシファー。 <br /> そしてルシファーと共に堕天した、天使の存在。 <br /><br /> ユズ「―――貴女、堕天使『アザエル』だね?」 <br /><br /> 「…ハッ」</dd> <dt id="a501">501 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆lbKlS0ZYdV.M</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 01:51:37.74 ID:g+Df2CSTo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「いけない…また考えてること喋っちゃってたのね…」 <br /><br /> ユズ「ルシファーの名前だけだけどね」 <br /><br /> 「はぁ…私、独り言多いな…」 <br /><br /><br /> ―――堕天使『アザエル』 <br /><br /><br /> その名は『神により強くされた者』を意味する。 <br /><br /> ユズ「…アザエル本人は自分自身に自信が持てなかった」 <br /><br /> ユズ「けれどルシファーに唆されて、その心に『傲慢』の感情を生み出し、共に堕天した…」 <br /><br /> ユズ「こんな感じだったカナ?」 <br /><br /> 「…ふぅん」 <br /><br /> 「賢いのね……見た目より」 <br /><br /> ユズ「…最後のは余計だよ」</dd> <dt id="a502">502 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆lbKlS0ZYdV.M</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 01:52:12.77 ID:g+Df2CSTo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ユズ「まぁ、ルシファーと共に堕天したっていうことは、アレだ」 <br /><br /> ユズ「ルシファーの敵討ちに来たってわけでしょ?」 <br /><br /> 「そんな気も起きないわ……拍子抜けだもの…」 <br /><br /> 二度の斬撃を躱したことで完全に見下しているのか。 <br /> 『アザエル』はユズに興味を無くしてしまった様子だ。 <br /><br /> ユズ「じゃあ、何しに来たんだって話になるけど…」 <br /><br /> ユズ「ここまでコケにされて、アタシが「じゃあサヨナラ」なんて言うと思う?」 <br /><br /> ユズ「そして、その身体は人間のモノだね?」 <br /><br /> ユズ「契約していない人間に憑依するのは罪だって知ってるカナ?」 <br /><br /> ユズの言う通り、黒き翼が生えていえども、その少女の肉体は人間そのものだった。 <br /><br /> 千鶴「ええ。知ってるけど?」 <br /><br /> 『松尾千鶴』こと『アザエル』は、さも当然とでも言いたげに口を開く。 <br /><br /> ユズ「だったら、手加減は無用だね」 <br /><br /> ユズ「ここで狩らせてもらうよっ!」 <br /><br /> 千鶴「そう」 <br /><br /> 千鶴「―――まぁ、いいけど」</dd> <dt id="a503">503 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆lbKlS0ZYdV.M</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 01:52:42.69 ID:g+Df2CSTo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ユズが杖を手に取り『アザエル』の魔力を吹き飛ばそうとした刹那だった。 <br /><br /> ユズ「…!?」 <br /><br /> ユズ「(…魔力が込められない!?)」 <br /><br /> ユズ「(な、なんで…!?)」 <br /><br /> 魔術が使えない。 <br /> それどころか、自身の身体から魔力さえ感じなくなっている。 <br /><br /> 千鶴「どうしたの?早くしてよね?」 <br /><br /> 『アザエル』はユズに催促する。 <br /> しかし『アザエル』が何か先に仕掛けたのは明白。 <br /> でなければ、急に魔術が使えなくなるだなんてことはあり得ない。 <br /><br /> ユズ「(ていうか、まだ微かに魔力が残っているから良いけど…)」 <br /><br /> ユズ「(完全に魔力を失ったら、アタシ地面に叩き付けられちゃうよ…)」 <br /><br /> ユズ「(それに『アザエル』がアタシに何をしたのかも、わからない…)」 <br /><br /> 『魔族』は自身の魔力によって空を飛行することが出来る。 <br /> しかし、その魔力が尽きてしまえば、それは不可能となり空から叩き付けられるだけ。 <br /> 『魔族』とはいえ、この高さから叩き付けられるのは洒落にならない。 <br /><br /> ユズ「…くっ!」</dd> <dt id="a504">504 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆lbKlS0ZYdV.M</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 01:53:25.88 ID:g+Df2CSTo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 魔力を完全に練り上げるのも時間がかかる。 <br /> その間に仕掛けられたら一巻の終わりだ。 <br /><br /> 新たな標的を目の前にして不服ではあるが、やられてしまっては元も子も無い。 <br /> ここは『アザエル』が自分への興味を無くしていることを甘んじて受け入れ、この場を引くしかない。 <br /><br /> ユズ「…くっそぉ…!!」 <br /><br /> ユズ「覚えてろー!!」 <br /><br /> ユズは泣く泣くなけなしの魔力でその場から全力で逃亡した。 <br /> 当の『アザエル』はユズを追いかけるわけでも無く、ただその様子を無表情に見てる。 <br /><br /> 千鶴「まぁ、別に倒してしまっても良かったのだけれど」 <br /><br /> 千鶴「興味無くしちゃったしね」 <br /><br /> 千鶴「それよりも、彼女がルシファーを倒したというのは何かの間違いね」 <br /><br /> 千鶴「きっと、他にいるはず…」 <br /><br /> 一通り独り言を呟いたあと『アザエル』は黒い翼をはためかせて、夜の空へと消えていった。</dd> <dt id="a505">505 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆lbKlS0ZYdV.M</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 01:54:01.32 ID:g+Df2CSTo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ―――魔界更生施設 <br /><br /> ベルフェゴール「もう無理ゲー…」 <br /><br /> ユズに敗北し、キヨラに裁かれ、無力な少女の肉体のまま罪の重さの分だけ強制労働することになったベルフェゴール。 <br /> 僅かな休息時間があるものの『怠惰』を司る者としての精神は既に限界寸前だった。 <br /><br /> ベルフェゴール「これなら処刑されてデータ破損の方がマシだって…」 <br /><br /> ルシファー「貴女には生き地獄よねぇ」 <br /><br /> そんなベルフェゴールに語りかけるは、同じくキヨラによって裁かれた醜き悪魔ルシファー。 <br /> その罪はベルフェゴールよりも重く、数十世紀の強制労働は約束されている。 <br /><br /> ベルフェゴール「…こんなとこでも随分余裕じゃん」 <br /><br /> ベルフェゴール「『傲慢』にとって他の者の『下』で働くなんてプライドが許さないんじゃないの…?」 <br /><br /> ベルフェゴールの言うことはもっともである。 <br /> 自分に絶対的自身を持つ『傲慢』の感情を持つ者が『下』に見られるという屈辱に耐えられるはずがない。 <br /><br /> ルシファー「まぁねぇ」 <br /><br /> ルシファー「けど、それも後少しの辛抱よぉ?」 <br /><br /> ベルフェゴール「…どういうこと?」 <br /><br /> ルシファー「うふ…」 <br /><br /><br /> ―――『神により強くされた者』を敵に回しちゃったのはミステイクってこと♪ <br /><br /> ―――人間界が悪魔の手に落ち、そして彼女がいずれ魔界を統べるほどの力をつければ <br /><br /> ―――私たちも自由ってことね♪</dd> <dt id="a506">506 :<span class="name" style="color:#008000;"><b>@設定</b> ◆lbKlS0ZYdV.M</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 01:55:22.71 ID:g+Df2CSTo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 松尾千鶴(アザエル)(松尾千鶴の肉体は15歳) <br /><br /><s>ttp://iup.2ch-library.com/i/i0951197-1373128885.jpg </s><br /><br /> 職業:堕天使 <br /> 属性:神により強くされた者 <br /> 能力:詳細不明 <br /><br /> 本来は自分に自信の持てない天使だったが『傲慢』のルシファーに唆され、共に天界から堕天。 <br /> 『神により強くされた者』の異名を持ち、ルシファーにはその力を見出された。 <br /> 『神によって与えられた力を、神に反抗する為に使う』とまで言われているが、その能力は現在のところ不明。 <br /><br /> ルシファーと共に堕天したのだが『アザエル』自体の社交性は低く、不愛想。 <br /> 考えていることを口に出してしまう癖がある為、出来れば一人で行動したいらしい。 <br /><br /> 自分の力を見出してくれたルシファーの為か否か、ルシファーを討伐した者を追いかけている。 <br /> が、ユズには興味を無くしてしまったようだ。 <br /><br /> 憑依した人間の少女の名は『松尾千鶴』 <br /> 七三分けで太眉がチャーミングな15歳である。</dd> <dt id="a507"><span class="resnum">507</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆lbKlS0ZYdV.M</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 01:56:14.62 ID:g+Df2CSTo</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">おわりです。 <br /> 四大天使出し切る前に新しい堕天使出して、またフラグだけ立てちゃった…</dd> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> </dd> <dt id="a519"><span class="resnum">519</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆j4KjALPDp2</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 03:44:48.32 ID:Qo7JiT60o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><span style="color:#0000FF;">&gt;&gt;515 </span><br /> まとめありがとうございます! <br /> ネネさん投下します</dd> <dt id="a520"><span class="resnum">520</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆j<span class="namenum">4</span>KjALPDp<span class="namenum">2</span></span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 03:45:43.99 <span class="id">ID:Qo7JiT60o</span></span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 『ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』 <br /><br /> 『オマエラウルセエンダヨオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』 <br /><br /> 『クソガオマエラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』 <br /><br /> 少し前のことです <br /> いきなりの出来事でした <br /> 突然のカースの大量発生 <br /><br /> パニックの中外を歩きまわる大量のカース <br /> どんどん理性を失って暴徒化する人々 <br /> 数時間でこの街はまさに地獄絵図の状態になってしまいました… <br /><br /> 幸い私がなんとか張った『結界』の能力で私がいた病院にはカースは近づけなくなったみたいです <br /><br /> その後周りにいた人々も少しずつここに集まってきて今に至ります <br /><br /> 今から私と同じ病院に居た『能力者』と先生が集まり対策を練るところです</dd> <dt id="a521"><span class="resnum">521</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆j4KjALPDp2</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 03:47:07.63 <span class="id">ID:Qo7JiT60o</span></span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">――― <br /><br /> 炎P「くそっ!繋がらねぇ!ヒーロー協会も!GDFもだ!」 <br /><br /> DrP「ちくしょう…ここの施設の電気もあと持って1週間って所か…」 <br /><br /> 電気P「俺の能力じゃ奴らには敵わない…どうすれば…」 <br /><br /> 炎P「ここに武器は無いのか…?」 <br /><br /> DrP「一応緊急時に備えて少しだけだったら無いこともないが…」 <br /><br /> 氷P「銃なんて使ったことねぇよ俺!」 <br /><br /> 「あの…一旦落ち着いて…」 <br /><br /> 氷P「落ち着いてられるかよ!どうしてこんな事に…許せない許せない許せない…」 <br /><br /> 炎P「お譲ちゃんの言うとおりだ!落ち着けって!」 <br /><br /> 電気P「…何だ!?こいつ様子が」 <br /><br /><br /><br /> 『ユルセナイイイイイイイイイイイイイイイ!!!』 <br /><br />  </dd> <dt id="a522">522 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆j4KjALPDp2</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 03:48:47.25 ID:Qo7JiT60o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 炎P「おい!…畜生こいつも『呑まれ』やがった!」 <br /><br /> DrP「結界の中でカースが発生されたら手の付けようが無いぞ!」 <br /><br /> 「大丈夫です…なら…私が…」 <br /><br /> 力を集中して…円のイメージ…そして… <br /><br /> 力を開放する感覚と共に人一人分くらいの半円に近い『空間』が生まれます <br /><br /> 更に…イメージ…癒し…大きな樹みたいな… <br /><br /> 『クソガアアアアアアアアァァァァァァダシヤガレエエエエエエエェェェェェェえええええええ………』 <br /><br /> すこしずつ収まる声…どさっと人が倒れる音 <br /><br /> 少ししたら覆っていた泥のようなものが『浄化』され赤黒くなりかけてた体が静まって行きます <br /><br /> なんとか…なった…?</dd> <dt id="a523">523 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆j4KjALPDp2</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 03:50:23.22 ID:Qo7JiT60o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 氷P「お…俺は…何を…」 <br /><br /> DrP「カースになりかけたんだよ!お譲ちゃんが何とか止めてくれたんだぞ!」 <br /><br /> 氷P「すまねぇ…お譲ちゃん…」 <br /><br /> 「いえ…大したことでは…」 <br /><br /> 炎P「今のを見る限りトリガーは『怒り』っぽいな…」 <br /><br /> 電気P「そんな…この状況で抑えられる方がおかしいだろ…」 <br /><br /> 炎P「お譲ちゃんにだって限界はあるし今は自分を強く持つしか…」 <br /><br /> DrP「落ち着こう…とりあえず一旦状況を整理しよう…」 <br /><br /> その後色々あって分かったことは <br /> ・歩き回っているのは『憤怒』のカースであり、怒りや憎しみが抑えられなくなると人がカース化してしまう事 <br /> ・外との連絡は一切断たれて居ること <br /> ・この街の中だったらなんとか連絡は取れ、あちこちに私達と同じような生き残りの集団があること <br /><br /> そして… <br /><br /><br /> この病院の中でカースに対抗できる能力を持つのは私だけな事 <br /><br />  </dd> <dt id="a524">524 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆j4KjALPDp2</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 03:52:03.58 ID:Qo7JiT60o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> DrP「こんな所か…」 <br /><br /> 炎P「人間がカース化なんて前例が無いぞ…」 <br /><br /> DrP「とりあえず更にに『呑まれる』人が出るのを防ぐのに俺ら以外の人たちを安心させなくちゃな…」 <br /><br /> 氷P「不安にさせないように俺達の能力が使い物にならないことは隠しておくしか…」 <br /><br /> 電気P「ちくしょう不甲斐ねぇ… 俺にももっと力があれば…」 <br /><br /> 「大丈夫です」 <br /><br /> 「きっと…なんとかなります」 <br /><br /> 「諦めちゃだめです…」 <br /><br /> 「なんて今は全然意味の無い言葉ですけど…きっと…」 <br /><br /> DrP「…そうだな、俺たちだって何も出来ないわけじゃない…この病院だけでも守ろうな」 <br /><br /> DrP「そういえば自己紹介もまだだったな…俺はドクターP、お譲ちゃんは?」 <br /><br /> 「栗原…ネネです…」 <br /><br /> DrP「ああ!栗原さんのお姉さんか!すまん思い出す余裕も無かった。ネネちゃん…今は辛い役を押し付けてしまうが…よろしくな」 <br /><br /> ネネ「はい…」 <br /><br /> とりあえず今の状況を維持しつつなんとか残りの能力者と連絡を取り合流する方法を見つけることになったようです <br /> 正直なことを言うと…未だに実感が沸きません <br /> 落ち着いてるようにみんなは思ってくれてるみたいですが今の私はこの状況をお話の中だって思い込んでるような感覚です <br /> だから今まで使ったことのない能力を使うことが出来たみたいですが… <br /> 先は全く見えませんが…きっと…この力で最悪でも…妹だけは守ってみせます…</dd> <dt id="a525">525 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆j4KjALPDp2</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 03:53:53.21 ID:Qo7JiT60o</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">栗原ネネ <br /> 『結界』の能力者 <br /> 結界の中は『癒し』の力があるらしく <br /> カースから守る結界を張ったり中に入れて人を浄化したりできる <br /> 難病の妹のお見舞いに来るのに隣町から来たら不幸にも憤怒の街に呑まれてしまった <br /> 火事場の馬鹿力でなんとか張った病院を守る結界の中で生き残るため頑張っている <br /> 結界は小さいほど浄化力は高く大きいとカースが入りにくくなるくらい <br /> 頑張ればいくつか張れないことも無いが消耗が激しい <br /><br /> 炎P氷P電気P <br /> ほのおのパンチ こおりのパンチ かみなりパンチではない <br /> 能力は弱くひのこ こなゆき でんきショックくらい <br /> 運悪く巻き込まれたへっぽこ能力者 <br /><br /> DrP <br /> ネネさんの妹の担当医 <br /> カースや宇宙人襲撃に備えて少し訓練を受けてたが所詮素人に毛が生えたくらい <br /> 頑張って病院の中の人々をまとめている</dd> <dt id="a526"><span class="resnum">526</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆j4KjALPDp2</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 03:54:49.92 <span class="id">ID:Qo7JiT60o</span></span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> とりあえず予定してたネネさん使って憤怒の街の中の様子っぽいものを書いてみました <br /> すごい世紀末</dd> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> </dd> <dt id="a534">534 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆C/mAAfbFZM</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage]:2013/07/07(日) 16:19:29.73 ID:QujVUTLAO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 予約していた星輝子の方を投下します。 <br /> 時系列的には泰葉ちゃんが姿を消す前でカースドヒューマンの三人が絡みます。 </dd> <dt id="a535"><span class="resnum">535</span> :<span class="name" style="color:#008000;"><b>何故か予約していたコテと違ってるorz</b> ◆C/mAAfbFZM</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage]:2013/07/07(日) 16:30:38.10 <span class="id">ID:QujVUTLAO</span></span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 幸子「今日もボクってカワイイですね!(ドヤッ」 <br /><br /> ??「……フヒ」 <br /><br /> 幸子「ん?そこの君、このボクに何かようですか?」 <br /><br /> ??「お腹……すいた……フヒ」 <br /><br /> 幸子「何か食べたいのですか?せっかくだからカワイイボクがおごってあげますね」 <br /><br /> ??「うまそう……フヒ」 <br /><br /> 幸子「……へっ?」 <br /><br /> ??「フヒヒヒ……うまそうな血ぃ……」 <br /> 幸子「……へっ?へっ?」 <br /><br /> ??「フヒヒヒ、ヒャハハハ!お前の血ぃ、吸わせろぅぅぅ!」 <br /><br /> 幸子「ちょ、ふぎゃぁ!?」</dd> <dt id="a536"><span class="resnum">536</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆C/mAAfbFZM</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 16:32:56.75 <span class="id">ID:QujVUTLAO</span></span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ~カースドヒューマン隠れ家~ <br /><br /> 泰葉「……幸子、遅いわね」 <br /><br /> 杏「う~ん、そうだね~(ポリポリ)」 <br /><br /> 泰葉「はぁ……ただでさえ最近ヒーロー達の活動が活発になってきてると言うのに……」 <br /><br /> 杏「仕方ないよ、幸子はああいう性格なんだから」 <br /><br /> バタン! <br /><br /> 幸子「ただいま、カワイイボクが帰りましたよ!」 <br /><br /> ??「……お、お邪魔します」 <br /><br /> 杏「あっ、噂をすればなんとやらだね――ところで幸子、その後ろにいる奴誰?」 <br /><br /> 幸子「気付きましたか、杏さん――この子は星輝子ちゃんボク達の新たな仲間です!」 <br /><br /> 輝子「フフ……私、星輝子……友達はキノコだけ……」 <br /><br /> 杏「何?この明らかにコミュ障としか思えない子は」 <br /><br /> 幸子「フフン、驚かないでないでください、彼女こう見えて列記とした吸血鬼なんです!」 <br /><br /> 杏「へぇ~」 <br /><br /> 泰葉「ふぅ~ん」 <br /><br /> 輝子「……あれ?思ったより反応が薄い……」 <br /><br /> 泰葉「人外とかしょっちゅう出会ってますからね、慣れているんです――ところでこの子は何が出来るの?」 </dd> <dt id="a537"><span class="resnum">537</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆C/mAAfbFZM</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 16:35:18.67 ID:QujVUTLAO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 幸子「そうですね……杏さん、彼女の目を見てくれませんか?」 <br /><br /> 杏「……こう?」 <br /><br /> 幸子「……今です!輝子ちゃん、お願いします」 <br /><br /> 輝子「フヒ……!」 <br /><br /> 杏「……ッ!」 <br /><br /> 輝子『今から……スクワットを……してください』 <br /><br /> 杏「……(ヒンズースクワット)」 <br /><br /> 泰葉「これは……!」 <br /> 幸子「これが輝子の能力の一つ『魔眼』を使用した催眠です!(ドヤッ」 <br /><br /> 泰葉「これは中々強力な能力ね――ただ……」 <br /><br /> 杏「……ッ!ハァハァ……つ、疲れた……」 <br /><br /> 泰葉「――効果時間が数十秒なのはいくら何でも微妙すぎるは」 <br /><br /> 幸子「ま、まだとっておきがあるんですよ!――輝子ちゃん、ボクの血を飲むのです!」 <br /><br /> 輝子「う、うん……わ、わかった(カプッ」 </dd> <dt id="a538"><span class="resnum">538</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆C/mAAfbFZM</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 16:37:34.41 ID:QujVUTLAO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">ドドドド! <br /><br /> 輝子「……フヒ」 <br /><br /> 杏「おっ、心なしか空気が変わってきた気が――」 <br /><br /> 輝子(特訓後)「フヒ、フハ、フハァハハハ!ゴートゥヘル!」 <br /><br /> 杏「――って、何か色々すごい事になってる!?」 <br /><br /> 輝子「コレだよ、コレ!最高にハイッて気分だ!フハハハハ!」 <br /><br /> 泰葉「魔力もすごい事になってるわね」 <br /><br /> 幸子「フフン!輝子ちゃんはボク達カースドヒューマンの血を飲む事でパワーアップできるのです!(ドヤッ」 <br /><br /> 輝子「シイタケ!エリンギ!ブナシメジ! キノコ!……フヒ……」 <br /><br /> 泰葉「すごいわね……ただ――」 <br /><br /> 輝子(特訓前)「フ、フヒ……キノコーキノコーボッチノコーホシショウコー……」 <br /><br /> 泰葉「――最大効果時間は?」 <br /><br /> 幸子「……ボクが気絶するまで飲ませて、三分ぐらいです」 <br /> 杏「……」 <br /><br /> 泰葉「……」 <br /><br /> 杏・泰葉(色々と残念すぎる……!) <br /><br /> 泰葉「ま、まぁいいわ役に立たないと言うわけでもないし仲間にいれましょ――えっと星輝子ちゃんだっけ?私は岡崎泰葉、よろしくね」 <br /><br /> 杏「あ~、私は双葉杏だよ、まっよろしく」 <br /><br /> 輝子「……泰葉さんに、杏さん……こ、こちらこそよろしく……あっこれお近づきの印です、よかったらコレどうぞ」 </dd> <dt id="a539">539 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆C/mAAfbFZM</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 16:39:52.22 ID:QujVUTLAO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 泰葉「う、うん、ありがとう(キ、キノコの生えた植木鉢……)」 <br /><br /> 杏「き、気持ちだけは受け取っておくね~(キノコじゃなくて飴がよかった……)」 <br /><br /> 幸子「紹介もすんだ所ですしこの子をマンションまで送りますね」 <br /><br /> 輝子「……お、お邪魔しました……」 <br /><br /> パタン <br /><br /> 杏「……」 <br /><br /> 泰葉「……」 <br /><br /> 杏「これから大変だね」 <br /><br /> 泰葉「ええ、そうね……」 <br /><br /><br /><br /><br /> この出会いから数ヶ月後、岡崎泰葉が彼女達の前から姿を消してしまう事になるがそれはまた別の話である <br /><br /><br /> ~おわり~</dd> <dt id="a540">540 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆C/mAAfbFZM</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 16:42:09.28 ID:QujVUTLAO</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">星輝子 <br /> 職業:吸血鬼 <br /> 属性:カースドヒューマンの仲間 <br /> 能力:催眠、吸血によるパワーアップ、その他吸血鬼関連の能力全般 <br /> 魔界出身の吸血鬼の少女で割と名家として名が通っている。 <br /> 人間界へ来た理由は本人曰わく修業なのだがご覧の有り様なので禄に他人から血を吸うことができず一週間も過ごしてしまい、その時ちょうど幸子と出会い冒頭にいたる。 <br /> 現在は幸子が定期的に献血しているため吸血衝動は抑えられている。 <br /> ちなみに日光に関しては当たっても灰にはならないがそれでも苦手らしく相当弱体化する。 </dd> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> </dd> <dt id="a549">549 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 17:08:22.11 ID:lYvz9IOo0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">投下します</dd> <dt id="a550"><span class="resnum">550</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 17:09:07.89 <span class="id">ID:lYvz9IOo0</span></span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 神崎家。蘭子の部屋にユズも含めた3人がいた。 <br /><br /> 「…それで、まだ他の大罪の連中は見つからんのか?」 <br /><br /> 「はい…最近暴食の強い魔力は感じましたけれど。他のターゲットの魔力は…見つけても痕跡は殆ど消されていて、思ったより難航してます…強欲も見失ったし…」 <br /><br /> 蘭子の部屋に3人が一緒に入ると少し狭い。まあもともと1人の部屋だから仕方ないのだが。 <br /><br /> 「大罪の悪魔がカースを生んでいるんですよね?」 <br /><br /> 「全部魔力生まれではないんです。…感情生まれの方が再生力も凶暴さも上ですが。さて、仕事の話はここまで。姫様、蘭子様、魔術の勉強しましょうか。」 <br /><br /> ユズは立ち上がると蘭子が昼子を召喚した時の魔術書を本棚から取り出した。 <br /><br /> 「よ、よろしくお願いしますね!」 <br /><br /> 「学校帰ってすぐにこれか…魔術は好きだが…疲れてるのだぞ…」 <br /><br /> 「今日は宿題が出てないのは知ってますし、教師を頼んだのは姫様ですからね?」 <br /><br /> 「人間界の勉強は魔界以上に難しいのだ!蘭子は英語読めるのだぞ!羨ましい!」 <br /><br /> 「読めるだけで文法は分からないんだけど…」 <br /><br /> 「…姫様、魔界では貴方も含めて勉強嫌いが多いだけで知能レベルは同等です…他の教育係も嘆いていましたよ…」 <br /><br /> ページをめくりながらユズが嘆く様に呟いた。</dd> <dt id="a551">551 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 17:09:39.87 ID:lYvz9IOo0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「…さて、蘭子様が姫様を召喚する時に使ったこの魔術書。魔力の基礎とか書かれているので、そこから学びましょうか。」 <br /><br /> 「えっと、ユズさんは魔力管理人さんなんですよね?やっぱりすごい職業なんですか?」 <br /><br /> 「はい。別世界も含めた魔力のバランサーをしてます。すごい…職業なんでしょうね…あはは…。あ、一応種族が死神なので魂も狩れます。」 <br /><br /> その発言に蘭子が首をかしげる。 <br /><br /> 「種族…が死神なんですか?職業じゃなくて?」 <br /><br /> 「はい。悪魔…というか魔族の種族は割と分別されているんです。馬みたいなのもいれば虫みたいなの、人みたいなのがいますし。」 <br /><br /> 「まぁ、魔界にいれば大体魔族だからな。悪魔と魔族はイコールで結ばれる。人間がこの世界の生物を分けるように、特徴で種族を分けた。」 <br /><br /> 「死神は生まれ持って魂を扱うことに長けた種族です。…生まれたその日から激務を強いられます。」 <br /><br /> 「え?げ、激務!?」 <br /><br /> 少し憂鬱そうにユズが続けた。 <br /><br /> 「…人間界で人は絶えず死に続けています。その魂を魔界へ送り、裁きを受けさせるのが仕事。…人数が足りるはずがない!」 <br /><br /> ユズは鬱憤を晴らすように聞かれてもいない死神事情を語り続けた。</dd> <dt id="a552">552 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 17:10:13.29 ID:lYvz9IOo0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 死神は狩り取り係、運搬係が何人かで組まされ、それに命令を下すリーダー、魂の数・性別・その他の記録を残す記録係、それらの管理係、そして長である死神長で形成される。 <br /><br /> 一番きついのは狩り取り係。毎日がサンタクロースだ。死人を確認したリーダーの命令で狩るのだが…高速で狩らなければ間に合わない。 <br /><br /> リーダーも死人を認識しきれずに、地縛霊とかになってしまうまで放置してしまうと責任を問われる。 <br /><br /> それを運搬するのもかなり大変だ。絶えず送られてくるそれらを魔界の門へ投げ込まないといけない。 <br /><br /> 休む時間も少なく、休みも滅多にない。裁きを受け労働を強いられる奴らよりはマシなだけ。そしてそれがおかしいと気付いている死神は少ない。 <br /><br /> だから杖に選ばれて死神業が免除されたときは暇すぎて何をすればいいかわからなかったものだ。 <br /><br /> …今はそんな時間は鍛錬に使っているが。 <br /><br /> 「…だから人間界でいうブラック企業が他人事じゃなくて…って話がそれました。」 <br /><br /> 咳払いをして魔力の説明に戻る。</dd> <dt id="a553">553 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 17:11:09.82 ID:lYvz9IOo0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「魔力とは…まあタンクとホースの説明が一番わかりやすいですよね。それと同時にゲームのMPような物でもあります。寝ると回復しますし。」 <br /><br /> 魔力の器は持っている人と持っていない人で分断される。つまり魔力を留めておけないのだ。 <br /><br /> 留めておけない者はもちろん魔法を使うことはできないし、仮に誰かから魔力を奪ったとしても消滅し、使うことはできない。 <br /><br /> そして、魔力の器を持っていない人はもちろん魔力が回復する事もない。魔力に愛されていないのだから。 <br /><br /> これはゲームシステムでも同じ。MP0のキャラにMP回復アイテムを使っても無意味だし、レベルアップでMP上限が増えることも無い。 <br /><br /> 「蘭子様は魔力の器がありますから、努力すれば器も大きくなり、それなりの魔法が使えるでしょう。全くない者にはそれは不可能ですがね。」 <br /><br /> 「本当ですか!」 <br /><br /> 「魔力管理人のアタシを信じてくださいよー。」 <br /><br /> 「…そっちの仕事は大丈夫なのか?」 <br /><br /> 「最近魔力のクリスタルの調整を行ったばかりなんで魔力の流れが綺麗になったばかりなんですよ!おかしい流れ全部戻しましたし!」 <br /><br /> 「魔力の妙な流れとか!本 来 な ら!魔力を動かせるのは自分だけのはずなんですがねぇ…サタン様辺りは自身の魔力の流れを調整できるそうですよ…見えないだけで。」 <br /><br /> 「あースマン。しっかり仕事していたようだな。」 <br /><br /> すっかり自信喪失しているようだ。 <br /><br /> 最近堕天使に襲われてからユズは魔力管理塔でおかしいところをすべて修正した。 <br /><br /> 本来ならあんなことはあり得ないのだから。…しかし努力も空しく、堕天使関係の魔力の流れは特になかった。 <br /><br /> 精々異常な量の魔力が巧妙に隠されて流れていたことぐらいだろうか。魔力の賄賂はいけないことだ。 <br /><br /> 「当たり前ですよー…まあ今言いたかったことは、鍛錬大事ってことです!鍛錬さえすれば人間でも悪魔に勝てます!」 <br /><br /> 「はい!」 <br /><br /> 「父上…与えた影響が大きすぎではないか…?」 <br /><br /> 昼子はそうつぶやく事しか出来なかった。</dd> <dt id="a554">554 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 17:11:57.35 ID:lYvz9IOo0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">「…?」 <br /><br /> ふと、違和感を感じて窓の外を見る。 <br /><br /> それよりも早く、ユズが窓に駆け寄った。 <br /><br /> 「憤怒の力を感じる…!」 <br /><br /> 「…父上は魔界にいるのではなかったのか?」 <br /><br /> 「いえ、サタン様の力は感じません。魔力ではなく、憤怒そのもの…カースの力です…!これほど大きいカース反応、あの強欲のカース以上ですよ…!」 <br /><br /> 「ご、強欲ってあの強欲の王?あれ以上憤怒のカースって…!」 <br /><br /> 「いえ、今はデカいのはいません。それでも個々の能力が異常です…あれが集まれば強欲の王以上の何かにはなる…!」 <br /><br /> 「…いくぞ。」 <br /><br /> 翼を出して飛んでいこうとする昼子をユズが止める。 <br /><br /> 「ダメです!貴方が危険な目にあったらサタン様が魔界からやってこないとも限りません!」 <br /><br /> 「それがどうした!我がそこまで弱いというのか!」 <br /><br /> 「ダメなものはダメです!サタン様があの憤怒の力の中でキレたら…!いろいろ不味いですってば!」 <br /><br /> ただでさえ体調がすぐれない(ように見える)サタンが、力を解放したらどうなるか、分かったものではない。 <br /><br /> 「…確かに、世界が滅びかねんな…しかし黙って見ていろというのか!」 <br /><br /> 別の解釈をしてくれた昼子に感謝しつつ、脳内でどう説得するか必死に考える。</dd> <dt id="a555">555 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 17:12:28.34 ID:lYvz9IOo0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 魔力以外の力の流れも操作はできないが見る事はできる。あれは異常だ。あそこにいたら気が狂ってしまいそうなほどの感情エネルギーだ。 <br /><br /> 「魔族はただでさえ人間より負の方向に感情が向きやすいんですよ!あんなところにいたら…正気でいられるとは到底思えないんです!」 <br /><br /> その時、テレビの内容が臨時ニュースに変わった。 <br /><br /> 『突如現れた大量のカース!街はご覧のように地獄絵図と化しています!』 <br /><br /> ヘリコプターに乗ったリポーターが上空から街の様子を実況している。 <br /><br /> 『人々はカースの力に飲まれ暴徒と化しています!しかしまだ正気を保った人間は生存している模様!』 <br /><br /> 「…ユズ、映像がチラついていないか?」 <br /><br /> 「ヘリコプターもカグガクしてる気が…見てて酔いそう…」 <br /><br /> 「これ…特殊な結界ですよ!機械さえ調子が狂ってしまうような…!何者なんですかこの犯人!悪魔ではないみたいですけど…!」 <br /><br /> 『現在アイドルヒーロー同盟等の突入計画も難航して…え?う、うわあああああああああああああ!』 <br /><br /> 映像が途絶えた。 <br /><br /> カメラに最後に映し出されたのは、黒い物体が大量に飛んでくる映像。おそらくカースの攻撃で撃ち落とされたのだろう。 <br /><br /> 「う…嘘…!死んじゃった…?」 <br /><br /> 「あれでは空中からの侵入も難しいぞ!」 <br /><br /> 「姫様、今回は諦めてください!お願いですから!」 <br /><br /> 懇願するようなユズの視線を受け、昼子は唸る事しか出来なかった。</dd> <dt id="a556">556 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 17:13:42.39 ID:lYvz9IOo0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ネバーディスペアも、突入計画は難航していた。 <br /><br /> 「…どう、なってんだよ…!」 <br /><br /> 頼みの綱であった夏樹の穴が上手く作れないのである。どんなにイメージしても精々手が通る程度。到底侵入はできそうにない。 <br /><br /> 「なつきち…大丈夫?」 <br /><br /> 「大丈夫だ…ここまで疲れたのは久々なだけ…」 <br /><br /> しかもかなり疲労している。十秒程開けていただけなのに。 <br /><br /> 『これは…マズイぞ…』 <br /><br /> 連絡を取っていたLPも困惑している。 <br /><br /> 「…取り残された奴らもいるんだぞ!あたしたちが行けないなら誰が行くって言うんだよ!」 <br /><br /> 奈緒が今にも飛び出しそうなのをきらりが羽交い絞めにして抑える。 <br /><br /> 「きらりも…今すぐ行きたいよ…!でも、でも!危ない事したら皆も悲しいからダメ!」 <br /><br /> 「…でも…!」 <br /><br /> 『…とりあえずこちらからも様々な組織にアプローチしている。まだ…まだ何か手段があるはずだ!だから…すまないがそれまで待機命令を出す。勝手な行動はしないようにしてくれ。』 <br /><br /> 「…了解。」 <br /><br /> 憤怒の街にまだ救いの手は来ない。</dd> <dt id="a557">557 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 17:15:20.06 ID:lYvz9IOo0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">以上です <br /> 最初はユズちゃんの魔術講座だったけど色々展開が起きたので少し路線変更。違和感があったらすみません <br /> ネバーディスペアが侵入できない理由も作ったり。なつきち含む機械類の調子が悪いみたいです。</dd> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> </dd> <dt id="a563">563 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆kaGYBvZifE</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 21:41:46.53 ID:0KKU5keR0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">黒川さん投下</dd> <dt id="a564"><span class="resnum">564</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆kaGYBvZifE</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 21:42:34.13 <span class="id">ID:0KKU5keR0</span></span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ―――――――――― <br /><br /> 黒川千秋という人物を語る言葉はいくつか挙げることができるが、そのいずれが彼女を最もよく <br /> 表しているかは、実際に会ってみてその印象から推し量るほかないだろう。 <br /><br /> それはルナール社の重役の娘であり、歌手を目指す20歳の大学生であり、常にトップを目指して努力を <br /> 怠らないストイックさを持った才媛であり、そして『歌姫』の最初のファンの一人でもあった。 <br /><br /> 『歌姫』が最初に姿を現したあの日。 <br /> 街をカースの群れが埋め尽くし、呪詛を吐き散らしながら破壊と暴力の限りを尽くさんとする、 <br /> その現場に千秋もいたのだ。 <br /><br /> ショッピングモールの中にカースが出現し、買い物客がパニックを起こす中、千秋は咄嗟の判断で <br /> スタッフルームのロッカーの中に身を隠していた。 <br /> 遠くで聞こえる破壊の音と人々の絶叫が身を震わせるのを自覚しながら、千秋はじっと息を殺し、 <br /> カースの暴威が行き過ぎるのをひたすら待った。 <br /><br /> しかし、カースは視覚や嗅覚といった五感のみならず、人間から発せられるマイナスエネルギーを <br /> 感知する超感覚を備えている。 <br /> 泥の肉体をまとった形ある呪いは、千秋の恐怖心を嗅ぎ取ってスタッフルームに踏み込んできたのだ。 <br /><br /> スチール製のロッカーの扉に硬質化した泥の爪を突き立て、扉を力任せにひしゃげさせながら、 <br /> その破壊衝動のままに彼女をも害そうと迫っていた。 <br /><br /> 千秋は、ゆっくりとこじ開けられていく扉の向こうに、黒い泥で出来た不定形の怪物を――顔のない、 <br /> しかし激情と悪意に満ちているその風貌を目に焼き付けながら、声にならない呻きを漏らした。</dd> <dt id="a565">565 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆kaGYBvZifE</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 21:43:12.75 ID:0KKU5keR0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">その時だった。 <br /><br /> 幼い頃に聴いた覚えのある優しいメロディが、震える千秋の耳朶に触れた。 <br /> そして――どこかから、歌声が聴こえた。 <br /><br /> 「……?」 <br /><br /> 気がつくと、カースは扉に手をかけたまま静止している。まるで歌声に聞き入るように。 <br /><br /> 空の果て、虹の彼方にある理想郷を思い描いて、それを目指す勇気と希望を歌い上げるその歌は、 <br /> おそらくスピーカーか何かに拡散されて、遠い蒼穹の果てまでも広がっていったのだろう。 <br /> その優しい歌声は、千秋の恐怖に塗り込められた心までをを解きほぐしていくようだった。 <br /><br /> 無意識のうちに、千秋もその歌を口ずさんでいた。 <br /><br /> 「……Somewhere over the rainbow, way up high……♪」 <br /><br /> 今まで感じたことのない、不思議な気分だった。 <br /><br /> 様々な機材を通しているが、加工もされていないだろうその歌声は、ハッキリ言って素人に毛の生えた <br /> 程度の代物だ。発声もまだまだだし、ビブラートのかけ方も下手。技術の点で言えば、自分の方が <br /> 断然優れている確信がある。 <br /><br /> けれど、何故だか心に訴えかけるものがある。 <br /><br /> 理屈では語れない、聴く者の心の澱を洗い流す何かが、そこにあったのだ。 <br /> 自分の歌には宿ることのない何かが。 <br /><br /> カースが溶けて崩れていなくなっても、千秋は歌声が聴こえなくなるまで『歌姫』と共に歌っていた。</dd> <dt id="a566">566 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆kaGYBvZifE</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 21:44:11.07 ID:0KKU5keR0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> それから数ヶ月が経過し、世界が様々な変化に晒される中、千秋の生活も大きく変わっていった。 <br /> とある芸能事務所から歌手としてデビューすることになったのである。 <br /><br /> あの日以来、彼女はレッスンの傍らあちこちを駆けまわって『歌姫』のことを調べていたが、結局 <br /> 有力な手掛かりは何一つ得られなかった。 <br /><br /> ああまで人の心を動かせるのなら、業界人の誰かが『歌姫』のことを知っているに違いないと思ったのだが、 <br /> まったく無名どころかその正体さえわからないという有様だった。 <br /> ネット上では『歌姫』の正体を特定しようとする動きもあるようだったが、そちらもダメだった。 <br /><br /> カースが大量発生した場所に現れては、歌声によってカースを浄化していく。 <br /> テレビ中継やラジオでその存在が広く知られるようになっても、彼女は何一つ語らず去っていく。 <br /> 浄化の歌を歌う際に一隻の宇宙船が姿を現し、『歌姫』の姿を空に投影することから、今のところ <br /> 『歌姫』=宇宙人説が多くの支持を集めているらしいが……。 <br /><br /> とはいえ、千秋としても『歌姫』の正体を暴いてどうするのかという具体的な展望はなかった。 <br /> ただ、会って話がしたい。せいぜいその程度のことだった。 <br /><br /> 千秋には、歌で頂点を極めたいという夢がある。 <br /><span style="color:rgb(35,20,20);font-family:'MS PGothic', Arial, sans-serif, Osaka;font-size:medium;line-height:17.600000381469727px;background-color:rgb(239,239,239);"> そのためには学業と歌手を両立もしてみせるし、どこまでも歌の道を追求していく覚悟だ。</span> <br /> ならば『歌姫』には何があるのか。どうして歌うのか? <br /> 何が彼女の根底にあればこそ、あんなにも優しい気持ちになれる歌を歌えるのか? <br /><br /> あの日、彼女の歌に心を動かされたからこそ、それを知りたかったのだ。</dd> <dt id="a567">567 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆kaGYBvZifE</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 21:45:14.49 ID:0KKU5keR0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ―――――――――― <br /><br /> プロデビューが決まったとはいえ、新人の千秋にはまだまだ仕事が少ない。 <br /><br /> 多くの時間をレッスンやレコーディングに費やしながら事務所の雑用や先輩歌手の付き人をしたり、 <br /> 時にはスポンサーとの付き合いもあり、まず顔と名前を売って人脈を築くことが肝要となる。 <br /> ツアーやコンサートのような大きな仕事は回ってきようもないだろう。 <br /><br /> その日千秋は、とあるホテルのディナーショーの前座で何曲か歌うことになっていた。 <br /><br /> 小さな仕事だが、いずれトップに立つためには必要な仕事と彼女も了解していた。 <br /> 仕事を選り好みできるような立場ではないし、元より妥協や手抜きは彼女には無縁のことだ。 <br /> それに今夜自分の歌を聴いた者の中に、将来自分のスポンサーになってくれる者がいるかもしれないと <br /> 考えれば、手抜きの自分を見せることなどできようはずもない。 <br /><br /> 「これはもっと大きな仕事に繋がる中継地点……でも、だからこそ最高の歌を聴かせないとね」 <br /><br /> 自分に言い聞かせるように口中に呟き、千秋は控室の壁の向こう側にこことは違うどこかを見ているような <br /> 面持ちで出番を待った。 <br /><br /> やがてショーが始まり、彼女の番が回ってくる。 <br /> 所詮は前座の新人歌手と軽んじられても、今は全力を尽くすのみと決め込んだ彼女の歌声は、 <br /> 一切の恐れも緊張も振り切って、堂々とホールに響き渡っていた。</dd> <dt id="a568">568 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆kaGYBvZifE</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 21:46:18.50 ID:0KKU5keR0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 千秋の出番が終わってしばらく経ったとき、一人の男が彼女を訪ねてきた。 <br /><br /> 背の高い痩身に仕立てのいいスーツを着込み目元をサングラスで隠した男は、どこか飄々とした態度で <br /> 「実は私、貴女のファンでして」と言い、口元をにたりと歪めた。 <br /><br /> 「私の見るところ、貴女はショーの前座などで収まるような人ではありません。 <br />  そちらさえよろしければ是非、貴女を支援させて頂きたいのですが」 <br /><br /> 泰然とした薄笑いを浮かべたまま言う男の印象は、ハッキリ言ってしまえばあまりにも胡散臭い。 <br /> スポンサーの申し出なら願ってもないことだが、デビューして間もない自分にそんな話が転がり込むのも <br /> 出来すぎな話だ。 <br /> 冗談で言っているか、そうでなければ身体目当ての不埒者かと当たりをつけた千秋は、牽制するように言った。 <br /><br /> 「申し出はありがたいのですけれど、私をそこまで評価してくださるのは何故かしら? <br />  自分で言うのもなんですけど、私はデビューしたてで知名度もない新人です」 <br /><br /> 千秋の言いように、男は喉奥からひきつったような笑いを絞り出す。 <br /><br /> 「クッククク……ええ、それなんですがね。実は、貴女が例の『歌姫』のことを探ってるっていうんで、 <br />  それをきっかけに貴女のことを知ったんですよ。『歌姫』に会いたがっている女性がいるってね。 <br />  そうでしょう?」 <br /><br /> 「……確かに、色々な方に『歌姫』のことをお聞きしました」 <br /><br /> 「ですが笑えますねぇ? あんな素人の歌手気取りが『歌姫』だなどと」 <br /><br /> 唐突に言い放った言葉に絶句した千秋の顔を見やり、男は口元の笑みを深くした。</dd> <dt id="a569">569 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆kaGYBvZifE</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 21:47:24.84 ID:0KKU5keR0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「所詮は無責任なメディアのつけた呼び名にすぎません。あの女は史上最低の出来損ないです。 <br />  多少運がいいというだけであんなに持て囃されているんですから、世の中不公平ですよねぇ?」 <br /><br /> 「……あなた、『歌姫』の何を知ってるの」 <br /><br /> 目の前の得体の知れない男に対する警戒感はあったが、それ以上にこの一方的な言い方に反発する <br /> 気持ちが勝っていた。驚きと、多少の怒りを滲ませた顔を向け、千秋は言葉を継いだ。 <br /><br /> 「『歌姫』が技術の面では未熟だっていうのは私にもわかっているわよ。これでもプロのはしくれだもの。 <br />  でも、あの聴いた人の心を動かす歌は――」 <br /><br /> 「そりゃあ心も動くでしょうよ。あれは全部、能力のおかげなんですから」 <br /><br /> 「え……?」 <br /><br /> 「どうも世間は誤解しているようですがね。あれは歌声によってカースを浄化する能力ではなくて、 <br />  他人の心に干渉して操作する能力なんですよ。だからカースも鎮まるし、浄化もされる。 <br />  聴いた人間の心を鎮めるくらいわけもない」 <br /><br /> 「嘘……そんなこと……」 <br /><br /> 「貴女が心を動かされたのだとすれば、歌に感動したんじゃなくて、感動『させられた』にすぎません」 <br /><br /> 言葉を失った千秋に、男はさらに畳みかけた。 <br /> まるで、彼女を追い詰めるためにしているかのように。</dd> <dt id="a570">570 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆kaGYBvZifE</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 21:49:01.86 ID:0KKU5keR0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「ああ、なんたる悲劇でしょうか! 貴女のような素晴らしい歌手がひと山いくらの前座止まり。 <br />  それに引き換え、ただ能力を持って生まれたというだけの女が、カースを浄化する謎に満ちた歌姫ときた! <br />  こいつは実に悲しく、滑稽で、腹立たしい……」 <br /><br /> 芝居がかった男の言葉は次第に熱を帯びていく。 <br /> それと正比例するかのように、徐々に千秋の心に暗い影が差す。 <br /><br /> 「そうさ、黒川千秋! お前はあんな山師の歌に感動して、あまつさえ会ってみたいとさえ思ってたのさ。 <br />  薄皮一枚剥いだ下はなんてことはねぇ、ただの狡っからい小娘だってのになぁ。 <br />  奴の能力で自分の感性を歪められたことさえ気づいてなかったんだよ」 <br /><br /> 「やめて……! 嘘よ、そんなの嘘に決まってる!」 <br /><br /> 「嘘だと思うならもう一度『歌姫』の歌を聴いてみろよ? きっと気分が落ち着くぜ。クッククク……」 <br /><br /> 男がテレビのリモコンを手に取って電源ボタンを押すと、千秋は今度こそ言葉を失った。 <br /> 何かの記録映像か、それともニュースか何かの録画か――街にカースの溢れたあの日の映像が、テレビに <br /> 映し出されたのだ。 <br /><br /> やがて青空の端からヴェールを剥ぐように宇宙船が姿を現し、『歌姫』の姿が虚空に投影される。 <br /><br /> 流れ出したメロディも、何度も口ずさんだ歌い出しの歌詞も、あの日と同じ。 <br /><br /> そして。 <br /><br /> 「――――!!」 <br /><br /> 彼女の歌声を聴いた瞬間、自分の心から不安と動揺が嘘のように引いていくことに―― <br /><br /> 千秋は気づかずにはいられなかった。</dd> <dt id="a571">571 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆kaGYBvZifE</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 21:49:42.89 ID:0KKU5keR0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 「クッククク……ヒャーッハッハッハ!! 可哀想だねぇ、千秋ちゃんよぉ! <br />  気分はどうだい? 悔しいか? 妬ましいか? 腹立たしいかぁ?」 <br /><br /> へたり込んだ千秋には、もう男の嘲笑さえ聞こえていなかった。 <br /> ただ、空っぽになった頭が、自分の内側からじわじわと湧き上がってくる何かを感じ取っていた。 <br /><br /> 「おっとぉ? 絶望のあまり声も出ねぇか。ま、そっちの方が都合がいいけどよぉ」 <br /><br /> 押し寄せてくる絶望――絶望? どうして? <br /><br /> 「いくら努力したところで、お前は『歌姫』にはなれねぇんだよ。なにせお前は無能力者、 <br />  何にも持たねぇただの小娘なんだからよぉ」 <br /><br /> 何故こんなにも、『歌姫』に裏切られたと感じているの? <br /> 何故こんなにも、『歌姫』のことが妬ましいの? <br /><br /> 「お前の感じる心なんてものは、如何様にも歪められちまうような脆いものだったのさ」 <br /><br /> あのときの自分が持ち得なかった何かを、自分も得られるはずだと無邪気に信じていたから? <br /> あのとき感じた優しい気持ちが、他でもない自分の心から発したものだと確信していたから? <br /><br /> それが、彼女によって強制された感情だとも知らずに。 <br /><br /> 「クッククク……安心しろ。俺が手助けをしてやるよ……その悔しさ、腹立たしさを晴らす手助けをなぁ」 <br /><br /> 虚ろな視線の先で、ころん、と何かが床に落ちて転がった。 <br /> ピンポン玉くらいの大きさの透き通った球体が、照明を反射してぎらりと輝き……。 <br /><br /> 「せいぜい、いいカースを生んでくれや」 <br /><br /> 千秋の内奥に渦巻いた感情に引き寄せられたそれは徐々に色を変え、紫色の光を放ちながら彼女と同化した。</dd> <dt id="a572">572 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆kaGYBvZifE</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/07(日) 21:50:17.06 ID:0KKU5keR0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> ―――――――――― <br /><br /> 使った試しのない脳の領域が蠢き、熱を帯びるのを感じながら、千秋はゆっくりとステージに立った。 <br /><br /> 視線は虚空を見据え、闇の色をした瞳は、深く、昏い。 <br /><br /> やがて千秋は、スポットライトの下で静かに歌い始めた。 <br /> 伴奏もなく、スタッフもいない。観客は、客席にひしめく『泥』だけだった。 <br /><br /> 「――――♪」 <br /><br /> 歌声と共に『泥』が蠕動し、不定形の肉体は徐々にその形態を定めていく。 <br /> 薄暗いホールの中にひときわ濃い闇を形作るように、大量のカース達が黒い泥の身体を蠢かせ、 <br /> 千秋の歌が終わる頃には、一本角を生やした大蛇が客席を埋め尽くしていた。 <br /><br /> 憤怒、嫉妬、絶望――様々に名を持った暗い情動を掻き立てる歌声を聴きながら、舞台袖に立っている <br /> ふたつの影があった。 <br /><br /><br /><br /> 「これでよかったか? 瑞樹ちゃんよぉ」 <br /><br /> 「ええ……素晴らしい素材を見つけてくれたわね。歌でカースを活性化させるカースドヒューマンなんて」 <br /><br /> 「俺がその気になりゃあ、人間如きを大罪に堕とすくらいわけねぇよ。ところで例の件だがよぉ」 <br /><br /> 「うふふ……私に協力しろっていうんでしょう? わかるわ」 <br /><br /> 「クッククク……ま、仲良くやろうぜ。サタンの野郎をブッ殺す役は譲ってやるからよ」 <br /><br /> 「じゃあ、せいぜい役に立ってもらおうかしら。うふふっ……」</dd> <dt id="a573">573 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆kaGYBvZifE</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 21:53:30.48 ID:0KKU5keR0</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">黒川千秋 <br /> 20歳 <br /> 大学生 <br /> 『嫉妬』のカースドヒューマン。歌の道で頂点を極めたい新人歌手。 <br /> レヴィアタンと取引をした憤怒Pことティアマットによってカースの核を埋め込まれた。 <br /> 一本角を持つ蛇のカースを生み出す能力と、歌によってカースを活性化させる能力を持つ。 <br /><br /> イベント情報 <br /> ・憤怒Pとkwsmsnは……ズッ友だョ……!(棒)</dd> <dt id="a574">574 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆kaGYBvZifE</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 21:54:55.46 <span class="id">ID:0KKU5keR0</span></span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 加蓮に代わる2代目の嫉妬のカースドヒューマン登場 <br /> おぐやまさんの能力って下手したら洗脳だよなぁと思いながら書いた</dd> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> </dd> <dt id="a578">578 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆<span class="namenum">6</span>osdZ<span class="namenum">663</span>So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 22:37:02.90 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 世間は憤怒の町で賑わってるけど <br /> そんなの関係ねえのばかりにお爺ちゃんっ子投下します <br /> カミカゼお借りしてます</dd> <dt id="a579">579 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 22:46:25.45 <span class="id">ID:CzGsh73Do</span></span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">―― <br /><br /><br /> 桃華「カースドウェポン計画?」 <br /><br /><br /> これは、まだ死神ユズに『人類の敵』と言う容疑すら掛かっておらず、 <br /><br /> 櫻井財閥にまだ巨大な権力があった頃の話。 <br /><br /> 屋敷の中で『強欲』の悪魔と野心に燃える男は、とある計画について話していた。 <br /><br /><br /> サクライP「武具にカースの核を埋め込む事で、」 <br /><br /> サクライP「カースの力を武器として扱うことをできる。そう言った趣向の計画でございます。」 <br /><br /> サクライP「発想のヒントはキングオブグリードが発生した際に、」 <br /><br /> サクライP「その中心にあったとされる特殊な銃に関する映像記録です。」 <br /><br /> サクライP「察するには、カースの核からエネルギーを引き出して、利用していたようで。」 <br /><br /><br /> 桃華「ウフ、面白いですわね♪」 <br /><br /> 桃華「カースの核をそんな風に扱うなんて、よっぽど変わり者なんでしょう。」 <br /><br /><br /> サクライP「おそらくは、アンダーワールドの『テクノロジスト』の仕業でしょう。」 <br /><br /> サクライP「もっとも彼らはまだ『カース』に関しての研究はあまり進めてはいないはず。」 <br /><br /> サクライP「魔法銃を作り出した『テクノロジスト』は、彼らの中でも少し外れた部類かと思われます。」 <br /><br /><br /> 桃華「変わり者の中の変わり者。と言ったところですわね♪」 <br /><br /> 桃華「そう言うお方、わたくし好きですわよ♪」</dd> <dt id="a580">580 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 22:47:48.08 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 桃華「それで、計画と言うからには、Pちゃまはその銃を再現しよう。となされてるのかしら?」 <br /><br /> サクライP「いえ、銃だけに留まらず多くの兵器にその技術を流用できれば良いと考えてます。」 <br /><br /> 桃華「なるほど、聞くだけで面白そうな話ではありますわ。」 <br /><br /> 桃華「けれど、Pちゃま。精神を侵されずにカースの核を武器に加工するなんて本当にできるんですの?」 <br /><br /><br /> サクライP「・・・・・・件の『テクノロジスト』がどのような手段を使い、」 <br /><br /> サクライP「カースの核による精神汚染を防いだのかはわかりません。」 <br /><br /> サクライP「ですが、私達はカースの核に精神を侵されない者達がいることを知っています。」 <br /><br /> サクライP「その一つが、カースの呪いの持つ属性そのものを司る存在。」 <br /><br /><br /> 桃華「わたくし達、悪魔ですわね。」 <br /><br /> 桃華「当たり前の事過ぎて、言われるまで気づきませんでしたわ。」 <br /><br /> 桃華「確かに、わたくし達ならカースの核に精神を侵されず、核を扱う事ができますわね。」 <br /><br /> 桃華「もっとも、わたくしには武器製作に関する知識がありませんから、」 <br /><br /> 桃華「『カースドウェポン』の製作はできませんけれど。」</dd> <dt id="a581">581 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 22:49:39.77 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 桃華「『イルミナティ』に属する悪魔であれば、その手の技術に詳しい者がいそうですわ。」 <br /><br /> 桃華「けれど、彼女達に借りを作りたくありませんわね。わたくしとは反りが合いませんもの。」 <br /><br /><br /> サクライP「いえ、今回は彼らの手を借りずともよいのです。」 <br /><br /> サクライP「財閥には、他にも心当たりがありましたから。」 <br /><br /><br /> サクライP「悪魔以外に」 <br /><br /> サクライP「カースの呪いのエネルギーに精神を侵されることなく、核を加工することが出来るであろう。」 <br /><br /> サクライP「ある種族の、武器職人にです。」 <br /><br /><br /> サクライP「そして既に、その者には話をつけております。」 <br /><br /> サクライP「財閥の資産と研究施設を好きなだけ使ってよい。」 <br /><br /> サクライP「その代わり、どんな形でもカースドウェポンを開発せよ。と」 <br /><br /><br /> 桃華「手が早いですのね♪」 <br /><br /><br /> サクライP「カースドウェポンが完成すれば、」 <br /><br /> サクライP「貴女様の『強欲』なる悲願に、また一歩近づくことになるかと。」 <br /><br /><br /> 桃華「ウフフ、楽しみにしてますわ♪」 <br /><br /><br /><br /> しかし、この計画は、 <br /><br /> 後の死神騒ぎで財閥が傾いた事によって、志半ばで頓挫してしまうことになる。 <br /><br /> 現在、財閥の所有していたカースドウェポンの研究施設は既に解体されてしまったそうだ。 <br /><br /><br /> そして、その研究の成果は闇に葬られる・・・・・・ <br /><br /><br /> と言う事には、どうやらならなかったらしい。</dd> <dt id="a582">582 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 22:51:23.46 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">―― <br /><br /><br /> 「い、いや・・・・・・。」 <br /><br /><br /> その少女は絶体絶命の危機であった! <br /><br /><br /> 『うまそううまそう』 <br /> 『ジョーチャン、ワシラトツキアッテクレヤー』 <br /> 『フンガァアアアアア』 <br /><br /> なんの前兆も無く、突如地面から現れた3体のカース! <br /><br /> 『暴食』!『色欲』!『憤怒』! <br /><br /> 抵抗する術のない少女はあっという間に囲まれてしまった! <br /><br /> 「だ、だれか・・・・・・助けて!」 <br /><br /><br /> だが心配ご無用! <br /><br /><br /> カミカゼ「待たせたな!」 <br /><br /> この時代! <br /><br /> 誰かがピンチとあれば、ヒーローは必ず駆けつけるからだっ! <br /><br /> 現れたヒーローはアイドルヒーロー同盟の特攻戦士カミカゼだぁあ!!!</dd> <dt id="a583">583 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 22:52:38.40 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">『へへへ???』 <br /> 『ナンヤナンヤ』 <br /><br /> 突然のヒーローの来襲に混乱するカース達! <br /><br /> カミカゼはその隙に素早く近づき <br /><br /> カミカゼ「オラァア!!」 <br /><br /> 『ヘヴンッ!!!!』 <br /><br /> 駆けつけ一発っ!! <br /><br /> カミカゼの容赦ない拳が炸裂っ!!まずは1体が爆散!!! <br /><br /> 残り2体のカースは現れた存在が敵である事にやっと気づき、 <br /><br /> その体から幾つもの太い触手を繰り出す! <br /><br /> だが、それは遅すぎたっ! <br /><br /> 触手が向かった先には既にカミカゼの姿はなく、 <br /><br /><br /> カミカゼ「怪我はないか?」 <br /><br /> 「は、はい!その、あ、ありがとうございます!」 <br /><br /> 瞬く間にカース達の間を抜き去ったカミカゼは、 <br /><br /> 少女を抱きかかえ、救出していた!</dd> <dt id="a584">584 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 22:53:40.32 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> カミカゼは少し離れた安全な場所に少女を降ろし、逃げるように促す。 <br /><br /> そして自身は、残るカース達と向き合った。 <br /><br /> 獲物を奪われたそいつらは何とも判別の付かない言葉で吼えている。 <br /><br /><br /> カミカゼ「さて、後はお前達を料理するだけだな。」 <br /><br /> カミカゼ「あいにく今回は仕事じゃねーからよ。」 <br /><br /> カミカゼ「テメェらザコ相手に、派手に戦う必要もねぇ。」 <br /><br /> カミカゼ「一瞬で終わらせてやるっ!」 <br /><br /><br /> カミカゼがセリフを言い終わると同時に、カース達が襲い掛かる!! <br /><br /> そして!! <br /><br /> ・・・・・・ <br /><br /><br /> カミカゼ「ふぅ・・・・・・これで終わり、だな。」 <br /><br /><br /> そう言って、赤色に輝くカースの核を握りつぶし砕く。 <br /><br /> ああ、哀れカース。 <br /><br /> 彼らは見せ場も無ければ、必殺技を使われるまでもなく。 <br /><br /> 台詞通りに一瞬で終わってしまったのだった。</dd> <dt id="a585">585 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 22:55:27.60 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> カミカゼ(しかし、最近はカースも活発になりやがったな・・・・・・。) <br /><br /> カミカゼ(例の大量発生って言うのが関係してんのかね。) <br /><br /><br /> そんな思考をしながら、カミカゼこと、向井拓海は変身を解き、 <br /><br /> 辺りの状況をきょろきょろと伺う。 <br /><br /> 以前、自分の攻撃に人を巻き込んでしまってから、 <br /><br /> 戦闘の終わりには、必ず戦いに巻き込まれた人間がいないか確認を行うようにしていた。 <br /><br /><br /> 拓海(とは言っても・・・・・・同盟に入ってからは特に気をつけてるし、) <br /><br /> 拓海(今回は周りに迷惑かかるような攻撃はしてな・・・・・・) <br /><br /> 拓海(・・・・・・あ?) <br /><br /><br /> 居た。 <br /><br /> 戦場から少し離れた場所に、人が倒れていた。 <br /><br /> 嫌な汗が流れてくる。 <br /><br /><br /> 拓海(嘘だろ・・・・・・もしかして、またやっちまったのか?) <br /><br /><br /> すぐさま駆け寄る。 <br /><br /> 拓海「おい、アンタ!しっかりしろ!」 <br /><br /> 肇「う、うぅ・・・・・・おじい・・・ちゃん。」 <br /><br /> その娘は一目見た限りでは、怪我はないように見えた。</dd> <dt id="a586">586 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 22:57:05.63 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 拓海「大丈夫か!?」 <br /><br /> 肇「お、お腹が・・・・・・。」 <br /><br /> 拓海「腹が痛むのかっ!?!」 <br /><br /> 肇「お腹がすいた・・・・・・。」 <br /><br /> 拓海「・・・・・・は?」 <br /><br /><br /> ぐー <br /><br /> 辺りに間抜けな音が響く。 <br /><br /><br /> 拓海「・・・・・・。」 <br /><br /> 拓海(ただの行き倒れかよっ!) <br /><br /> どうやら腹が減って、たまたま近くで倒れていただけらしい。 <br /><br /> 戦いに巻き込んだ訳ではないと分かり、少しだけ安心する拓海。 <br /><br /><br /> 肇「ご、ごはん・・・・・・。」 <br /><br /> 拓海「っと、いけねぇ。安心してる場合じゃねぇな。」 <br /><br /> 拓海「しっかりしろ、すぐ何か食わせてやるから。近くのファミレスにでも入って・・・・・・」 <br /><br /> 肇「あの・・・・・・。」 <br /><br /> 拓海「どうした?」 <br /><br /> 肇「できれば、うどんがいいです。」 <br /><br /> 拓海「指定するのかよっ!?」</dd> <dt id="a587">587 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 22:58:29.29 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">―― <br /><br /> 肇「つるつる」 <br /><br /> 拓海「・・・・・・。」 <br /><br /> 肇「もぐもぐ」 <br /><br /> 拓海「・・・・・・。」 <br /><br /> 肇「ごっくん」 <br /><br /> 拓海「・・・・・・。」 <br /><br /> 肇「すみません、おかわりいいですか?」 <br /><br /> 拓海「おい、何杯目だ。それ。」 <br /><br /><br /> とりあえず拓海は、彼女を連れてたまたま近くにあったうどんチェーン店に入ったのだった。 <br /><br /> 席に着くなり、彼女はそれはもう凄い勢いでうどんを食べ始め、 <br /><br /> 気がつけば5杯目である。 <br /><br /><br /> 拓海「そんなにうどん好きなのか?」 <br /><br /> 肇「いえ、普通ですけど。」 <br /><br /> 拓海「好きじゃねーのかよっ!」 <br /><br /> 肇「あ、でも器はいいどんぶり使ってますね。」 <br /><br /> 拓海「聞いてねえっ!」</dd> <dt id="a588">588 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:00:16.78 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 拓海「しっかし、まあずいぶんと腹減ってたんだな。」 <br /><br /> 肇「お恥ずかしながら・・・・・・慣れない土地に出てきたばかりで。」 <br /><br /> よく見れば、この娘荷物が多い。 <br /><br /> 特に目を引くのが背中に背負う細長い袋だろう。 <br /><br /> その数七つ、何か棒状の物を仕舞っているらしい。 <br /><br /> 頭に巻いたスカーフも相まって、彼女の格好は少々変わって見える。 <br /><br /> 拓海(おのぼりさんって奴なのかね。) <br /><br /> 拓海「・・・・・・一応聞いておくけど、金は持ってるのかよ。」 <br /><br /> 肇「かね?」 <br /><br /> 拓海「おい、そこからなのか。そこからなのに5杯も食べたのか。」 <br /><br /> 肇「あっ、お金!お金ですね!大丈夫です。」 <br /><br /> 肇「たしかおじいちゃんに持たされたのが・・・・・・この辺りに。」 <br /><br /> 拓海「本当に大丈夫か?」 <br /><br /> 肇「・・・・・・。」 <br /><br /> 拓海「・・・・・・。」 <br /><br /> 肇「お、落としたみたいです。」 <br /><br /> 拓海「おいっ!」 <br /><br /> 肇「その・・・・・・すみません・・・・・・・。」 <br /><br /> 拓海「くっ・・・・・・だぁっ!もう!仕方ねーな。」 <br /><br /> 拓海「ここの御代は持ってやるから!だからそんな泣きそうな顔すんなっ!」 <br /><br /> 肇「えっ!そんな、悪いです。」 <br /><br /> 拓海「でも払えないんだろ、だったら甘えとけよ。」 <br /><br /> 肇「・・・・・・ありがとうございます!」 <br /><br /> 肇「ふふっ、あなたいい人ですね。」 <br /><br /> 拓海「うっせー」</dd> <dt id="a589">589 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:01:52.40 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 拓海「私は向井拓海だ。アンタ、名前は?」 <br /><br /> 肇「あ、自己紹介もまだでしたね。ごめんなさい。」 <br /><br /><br /> 肇「藤原肇と言います。出身は鬼の里。」 <br /><br /> 肇「鬼匠・藤原一心の孫娘で、刀匠見習いをやってます。」 <br /><br /> 拓海「んあ?」 <br /><br /> 鬼、鬼と言ったかこの娘。 <br /><br /><br /> 拓海「鬼って言うと、あの鬼か。」 <br /><br /> 肇「はい、あの鬼ですよ。」 <br /><br /> 事も無げに返答する娘。 <br /><br /><br /> 拓海「・・・・・・とてもそうは見えねーな。」 <br /><br /> 能力に目覚めてから奇天烈な知り合いが増えた拓海。 <br /><br /> 私鬼なんです!などと言われても軽く流せる程度にはなってしまったが、 <br /><br /> 目の前の娘は、それなりに奇抜な格好こそしていても見た目は普通の人間の女の子に見える。 <br /><br /> 拓海のイメージする毛むくじゃらで筋肉質の、いかにも乱暴そうな鬼とは正反対だ。</dd> <dt id="a590">590 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:03:16.77 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 肇「では、これでどうでしょう?」 <br /><br /> ハラリと、肇は頭に巻いていたスカーフを外す。 <br /><br /> 拓海「・・・・・・なるほどな。」 <br /><br /> そこには小さな二本の角。 <br /><br /> 拓海(ちょっと可愛いな。) <br /><br /> 拓海が納得したのを確認すると、肇はスカーフを巻きなおした。 <br /><br /> 肇「私のおじいちゃんが鬼で、おばあちゃんは人間。私はクォーターと言う事になりますね。」 <br /><br /> 肇「拓海さんはいい人そうなので教えましたけど、他のみなさんには内緒にしてください。」 <br /><br /> 拓海「ん、わかった。」 <br /><br /><br /> 拓海「それで、その鬼の孫娘がどうして人里で行き倒れてたんだ?」 <br /><br /> 肇「この辺りには刀の材料を探しに来たんです。」 <br /><br /> 拓海「刀、ねえ。そう言えばさっき刀匠とか言ってたな。」 <br /><br /> 拓海「その背中に背負ってるのもやっぱり刀なのか?」 <br /><br /> 肇「見ますか?」 <br /><br /> そう言って肇は背中にある七の袋の内、一つを取り出した。 <br /><br /> 赤地に色とりどりの花が描かれたその袋から出てきたのは、 <br /><br /> やはり一本の刀であった。 <br /><br /> 拓海(そんな物をこんな場所で取り出していいのか。) <br /><br /> と思ったが、周囲に気にしてる人間は特に居ないようなので軽くスルー。</dd> <dt id="a591">591 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:05:54.26 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 鮮やかな真紅の鞘に、輝く龍模様の金細工。 <br /><br /> 鍔にも同じく龍が模られ、柄の頭には宝石まで備付けられております。 <br /><br /> ただただ見た目に豪華だとわかるその一品。 <br /><br /><br /> 肇「日本一の刀匠であるおじいちゃんの渾身の傑作。」 <br /><br /> 肇「『鬼神の七振り』のうち一本。」 <br /><br /> 肇「日本一、キレる刀。」 <br /><br /> 肇「その名を『戟王丸』と言います。」 <br /><br /><br /> 拓海「ほう」 <br /><br /> と、感嘆の声を出したものの、実はそれほど感心した訳ではなかった。 <br /><br /> 刀の事はよくわからないが、何事もやはり肝心なのは見た目より中身だろう。 <br /><br /><br /> しかし、そう思いながらも、その刀の姿に何処か引っ掛かるところがあった。 <br /><br /> 取り付けられた真っ赤に輝く宝石。 <br /><br /> つい最近どこかで見たような。 <br /><br /><br /> 拓海「・・・・・・それ、カースか。」 <br /><br /> 肇「拓海さんはよくご存知ですね。」 <br /><br /> 肇「如何にもです。これはカースの核ですよ。」 <br /><br /> 鬼の少女は肯定する。</dd> <dt id="a592">592 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:08:19.58 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 拓海「なんでまた、刀にそんなのくっついてるんだ。」 <br /><br /> 肇「おじいちゃんの作る刀は普通の刀じゃありません。」 <br /><br /> 肇「摩訶不思議な神秘を帯びた刀。言うなれば妖刀です。」 <br /><br /> 肇「おじいちゃんが鬼匠と呼ばれる所以でもありますね。」 <br /><br /> 肇「おじいちゃんの手で取り付けられたカースの核は、刀に特別な力を付与します。」 <br /><br /> 拓海「ぶっ飛んでるな、爺さん。」 <br /><br /> 嘘か真か、刀にカースの核を取り付ける事で刀に神秘が宿るらしい。 <br /><br /><br /> 肇「この『戟王丸』は『憤怒』のカースの核を取り付けてあります。」 <br /><br /> 肇「だから、日本一キレる刀なんです。」 <br /><br /> 拓海「駄洒落かよ!茶目っ気あるな、爺さん!」 <br /><br /><br /> そこでふと思い出す。 <br /><br /> 拓海「『鬼神の七振り』って言ったな。全部で七本。」 <br /><br /> 拓海「カースの核も7種類・・・・・。」 <br /><br /> 拓海「って事は、肇の後ろにあるそれ全部か?」 <br /><br /> 肇「そうですよ。」 <br /><br /> 肇「『日本一、淫らな刀』『日本一、横暴な刀』『日本一、嫉妬深い刀』」 <br /><br /> 肇「『日本一、自堕落な刀』『日本一、大食らいな刀』『日本一、欲張りな刀』」 <br /><br /> 肇「それが、私の背負ってる残りの六本です。」 <br /><br /> 拓海「碌なの無いな・・・・・・。」</dd> <dt id="a593">593 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:10:53.97 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 拓海「しかし、どんな形にしてもカースの核を持ち歩いてるなんて普通じゃねーな。」 <br /><br /> カースの核は例え浄化されていても、放置していれば周囲の負のエネルギーを集め、 <br /><br /> 新たに呪いの異形を生み出す、存在するだけで危険なものだ。 <br /><br /><br /> 拓海「しかもそんなのを七つだ。危なくねーのかよ。」 <br /><br /> 肇「危ないですよ。」 <br /><br /> 拓海「危ないのかよっ!普通に!」 <br /><br /> 別に加工してあるから安全と言う事もないらしい。 <br /><br /><br /> 肇「ふふっ、心配してくれてありがとうございます。」 <br /><br /> 肇「けど私は1/4は鬼です。鬼の血を引いてるので、負のエネルギーの扱い方の心得はありますから。」 <br /><br /> 肇「カースの核もある程度は安全に扱えます。」 <br /><br /> 拓海「そうなのかもしれねーけどよ・・・・・・。」 <br /><br /><br /> 続けて肇は語る。 <br /><br /> 肇「それに、『そこにあるだけで危険』と言うのは、元より刃その物も同じなんですよ。」  <br /><br /> 肇「刀は心の鏡。それが危険であるかどうかはその柄を持つ者次第。」 <br /><br /> 肇「澄み切った心をもって正面から向き合えば、それは正しい力となります。」 <br /><br /> 拓海「カースの核も同じだって言うのか?」</dd> <dt id="a594">594 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:12:34.15 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 肇「カースの核が集める力も、正しく心の力の一面です。」 <br /><br /> 肇「抑圧された心。負の感情。目を背けたくなる人の嫌な部分。」 <br /><br /> 肇「でもおじいちゃんは『それは必ずしも悪しき物になるわけではない。』って言ってました。」 <br /><br /> 肇「昔は『悪』だと断じられた、鬼だからこその考え方なのかもしれませんが。」 <br /><br /><br /> 肇「きちんと向き合えば、負の感情も正しき力となる。」 <br /><br /> 肇「『鬼神の七振り』はおじいちゃんのそう言う思いが篭った刀なんです。」 <br /><br /> 拓海「なんつーか、すげえ爺さんだな。」 <br /><br /> 拓海(そんな風には考えた事もなかったが、言われてみれば分からなくもないかもな。) <br /><br /> 言いながら拓海は自分の過去を振り返る。 <br /><br /> 力に目覚める前の事、後の事。自分の事や友達の事。 <br /><br /><br /> 拓海「・・・・・・どんな力も使う奴次第ってことか。」 <br /><br /> 肇「ええ。この子達にもよい使い手が見つかるといいんですが。」 <br /><br /> 拓海「ああん?使い手だ?」</dd> <dt id="a595">595 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:13:47.66 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 肇「おじいちゃんが言うには、刀には真に持つべき者が居るそうです。」 <br /><br /> 肇「『鬼神の七振り』は人間のために作った刀。持つべきは人間だろう。とも」 <br /><br /> 肇「私が人の街に出てきたのは、おじいちゃんの思いを汲んで、」 <br /><br /> 肇「この子達を正しく使ってくれる人を探すためでもあるんです。」 <br /><br /> 拓海「・・・・・・さっき材料を探しに来たって言ったのは?」 <br /><br /> 肇「それはまた別件ですね。」 <br /><br /> 拓海「その正しい使い手って言うのが、見つかったらどうするんだよ。」 <br /><br /><br /> 肇「無論、刀を預けます。」 <br /><br /><br /> 肇の目は真剣そのものであった。 <br /><br /><br /> 拓海(んーっ、放っておいていいのか。これは・・・・・・)</dd> <dt id="a596">596 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:14:52.93 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 向井拓海は悪と戦い、人々を守るヒーローである。 <br /><br /> 彼女には守るべき者を守らなければならない。と言う責任感がある。 <br /><br /><br /> だから目の前の、鬼の少女の目的を聞いて悩んだ。 <br /><br /> カースの呪いを使った刀。それを見知らぬ誰かに渡すつもりであるらしい。 <br /><br /> それは一歩間違えれば、惨事を引き起こしかねない事であろう。 <br /><br /><br /> しかし少女には悪事を為すつもりはない。 <br /><br /> 正しく扱えば、負の感情も力になる。 <br /><br /> 故に、正しく扱える人間を探しているのだと。 <br /><br /><br /> 止めるべきか判断に困り、出した結論は。 <br /><br /><br /> 拓海(・・・・・・今はいいか。) <br /><br /><br /> 保留であった。 <br /><br /> 拓海(いざとなったら、その時にアタシがケジメつけさせてやりゃあいい)</dd> <dt id="a597">597 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:16:07.59 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">―― <br /><br /> 肇「今日はごちそうさまでした。」 <br /><br /> 拓海「おう、いいって事よ。」 <br /><br /><br /> 肇が6杯目のうどんを食べ終わり、 <br /><br /> 7杯目のおかわりの許可を求めてきたので、却下して店から出てきた。 <br /><br /> 聞けばここまで来るのに何日も彷徨ってたそうで、腹が減ってるのはわかるが、 <br /><br /> 流石にそれ以上食べられると、安いうどんであっても財布に手痛いダメージを残しそうだ。 <br /><br /> さる事情で給料少ないし。 <br /><br /><br /> 肇「このお礼はいずれ必ず!」 <br /><br /> 拓海「おう」 <br /><br /> 拓海「それより肇はこれからどうするんだ?金ないんだろ?」 <br /><br /> 肇「しばらくはこの辺りを拠点にして、働けるところを探そうと思います。」 <br /><br /> 拓海「当てはあんのか?」 <br /><br /> 肇「いえ、特には。」 <br /><br /> 拓海「ノープランか・・・・・・」</dd> <dt id="a598">598 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:17:20.16 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 拓海「仕方ねーな、ここで会ったのも何かの縁だろ。」 <br /><br /> 拓海「アタシも知り合いに当たってやるよ。働き口なら幾つかあるだろ。」 <br /><br /> 肇「えっ、いえ・・・・・・でもそこまでお世話になるのも。」 <br /><br /> 拓海「今更、遠慮してんじゃねーよ。」 <br /><br /> 拓海「ここまで来たら、知らん振りするのも返って目覚めが悪いってもんだろ。」 <br /><br /> 肇「拓海さん・・・・・・嬉しいです。ありがとうございます。」 <br /><br /> 拓海「いいってことよ。大船に乗ったつもりで任せときなっ!」 <br /><br /> 肇「ふふっ、本当に心強いです。」 <br /><br /> 拓海「そうと決まれば連絡先教え・・・・・・っと。」 <br /><br /> 拓海「鬼の里から出てきたんだよな、流石に携帯電話とか持ってねーか。」 <br /><br /><br /> 肇「あっ、持ってますよ。スマホ。」 <br /><br /> 拓海「持ってるのかよ!!」 <br /><br /> 鬼の娘と言えども現代っ子と言うことか。 <br /><br /> まあ、行倒れていたのを見ると全く使いこなせてはいないようで。</dd> <dt id="a599">599 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:18:42.30 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 肇「家族が持たせてくれたんですよ。あると便利だからって。」 <br /><br /> 肇「ふふっ、心配性ですよね。」 <br /><br /> 拓海「心配なのはわかるけどな。行倒れてたし。」 <br /><br /> 肇「まあ鬼の里とは連絡できないんですけどね。圏外ですから。」 <br /><br /> 拓海「あー・・・・・・そうなんだろうな。」 <br /><br /> 妙に納得する拓海。 <br /><br /> 言いながらお互い連絡先を交換する。 <br /><br /><br /> 拓海「って事は、普段は家族に連絡とかはしてねーのか。」 <br /><br /> 肇「いえ、手紙で連絡はとりあってますよ。」 <br /><br /> 拓海「手紙か、なるほど。古風だな。」 <br /><br /> 肇「例えば、鳥に手紙を持たせて、鬼のおまじないを掛けて里まで飛ばすことが多いですね。」 <br /><br /> 拓海「鳥ねえ。」 <br /><br /><br /> 鳥。と聞いてふと、空を見上げる。 <br /><br /><br /> 拓海「・・・・・・」 <br /><br /> 拓海「おい」 <br /><br /><br /> 拓海「なんだ、アレ。」 <br /><br /><br /><br /> 『クレエエエエエエエエエッ!!!』 <br /><br /><br /> 拓海の見上げる先。 <br /><br /> そのカースは翼を広げ、空を飛んでいた。</dd> <dt id="a600">600 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:20:43.05 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 街の中に突如現れた、空の怪物。 <br /><br /><br /> 『クレエエエエエェェェェェエえええええ!!』 <br /><br /><br /> その姿に周囲の人々は慌てて逃げ始める。 <br /><br /><br /> 拓海「あんなの始めてみるぞ。」 <br /><br /><br /> 腕のような器官、足のような器官。触手のような器官。口のような器官。 <br /><br /> そんな部位を持つカース達とは山ほど戦ってきたが。 <br /><br /> 翼のような器官を持ち、あまつさえ、それを広げて空を飛ぶカースなどはじめてみる。 <br /><br /><br /> 肇「カラスみたいですね。」 <br /><br /><br /> なるほど、肇の言うとおり。 <br /><br /> 真っ黒な体、真っ黒な翼、獲物を探すようにギラギラと黄金に輝く目。 <br /><br /> そのカースは巨大なカラスのようであった。</dd> <dt id="a601">601 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:21:46.54 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> カースは空中から獲物を見定めると、 <br /><br /> 地上に急降下し、地面に接触するかと思えば、 <br /><br /> その勢いのまま角度を大きく曲げて大空に飛び上がる。 <br /><br /> それを何度も繰り替えして、 <br /><br /> まるで餌を啄ばむかのように地上の人間に脅威を与えていた。 <br /><br /><br /> 『クレッ!クレッ!!クレッ!!』 <br /><br /><br /> 下品な鳥の鳴き声は、よく聞けばそれは物乞いの様に何かを欲する声。 <br /><br /><br /> 拓海「属性は『強欲』か、あの目玉みてーに見えるところが核ってわけだな。」 <br /><br /><br /> 拓海(この短い間に『暴食』『色欲』『憤怒』、そして『強欲』・・・・・・) <br /><br /> 拓海(人の休日に随分と豪勢なことだな、おい) <br /><br /> 拓海(近くでカース達のパーティーでもあるのかよ。) <br /><br /><br /> それは近頃世間を騒がせるカースの大量発生の影響か。 <br /><br /> あるいは『憤怒の街』の気にあてられた者達の邪念が、作り出してしまったものなのか。 <br /><br /> もしくは別の何かの企みか。</dd> <dt id="a602">602 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:22:59.88 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 拓海「いずれにせよ、やる事はいつもと変わらねえ。」 <br /><br /> ヒーローとしてカースをぶちのめす。 <br /><br /> だが、 <br /><br /><br /> 拓海(アタシにあんな高い位置の敵と戦えるのか・・・・・・。) <br /><br /><br /> 今回の敵は鳥型のカース。 <br /><br /> 先ほど地上に降下する時の姿を思い返せば、 <br /><br /> 上下の機動力に、俊敏さも持ち合わせているようだ。 <br /><br /> おそらくは空中戦を得意とするのであろう。 <br /><br /> 対してカミカゼが得意とするのは地上での肉弾戦。とにかく相性の悪い相手だ。 <br /><br /><br /> 拓海(バイクで助走をつけてから飛び上がってのキック・・・・・・いや、とどかねえ。) <br /><br /> もっとも高度と威力を両立できるだろう先制の一撃。 <br /><br /> しかしそれでも奴の滞空する位置には届きそうにはない。 <br /><br /><br /> 拓海(降りてくる瞬間を狙って攻撃するのはどうだ・・・・・・?) <br /><br /> 地上に向けて奴が体当たりをしてくる瞬間を狙って、迎撃する。 <br /><br /> これを狙うならば、攻撃に高度が必要ではなくなる。 <br /><br /> だが、この場合問題になるのは敵の機動力の高さ。 <br /><br /> まともにパンチを狙いに行くのでは、接近する前に上下に退避されるのがオチだろう。</dd> <dt id="a603">603 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:24:26.85 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 拓海(なら手は一つしかねえか。) <br /><br /><br /> カミカゼの必殺技の一つ「ギガフラッシュ」 <br /><br /> 現在、彼女の持つ攻撃の中で唯一の飛道具。 <br /><br /> 奴の攻撃に合わせて近づき、向かってきたところに放てば、 <br /><br /> その一撃で殲滅できるだけの威力もある。 <br /><br /> ただし、チャンスは一回。 <br /><br /> かわされればそれでお終いだ。 <br /><br /><br /> ギロリと、カースの目が拓海達の方を向く。 <br /><br /> 次はこちらに狙いを定めたようだ。 <br /><br /> どうやらあれこれ考えてる暇はもう無いらしい。 <br /><br /><br /> 『クレっ!!クレエエエエエエエエえええええッ!!』 <br /><br /> 空飛ぶカースがこちらに向かって急降下をはじめる。 <br /><br /> 拓海は、横に居る肇に下がってろと言おうとして、 <br /><br /><br /> 肇「拓海さん、下がっていてください。」 <br /><br /><br /> 先を越された。 <br /><br /> 肇が一歩前に出る。</dd> <dt id="a604">604 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:26:00.07 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 拓海「おい、肇!まさかお前、アイツを」 <br /><br /><br /> 拓海は、何か言おうとして <br /><br /><br /> 次の瞬間、彼女は炎に包まれた。 <br /><br /><br /> 拓海「あつっ!?」 <br /><br /> 拓海「いや、ちげえ・・・・・・。」 <br /><br /> 急に発生した辺りの熱気に、まるで自分が燃やされるかの様な錯覚に陥る。 <br /><br /><br /> 拓海が気づくと、肇は一本の刀を鞘から抜いていた。 <br /><br /><br /> そう、熱源の正体は、鞘から抜かれたばかりのその刀であった。 <br /><br /> 刀の名前は『戟王丸』。 <br /><br /> 外に晒された刀身は、燃え盛る様に紅蓮に煌き、 <br /><br /> 今にも周囲の全てを壊さんと、熱の篭った威圧感を放っている。</dd> <dt id="a605">605 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:27:26.50 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 肇「この熱と光は、戟王丸が溜め込んでいた『怒り』の作り出したイメージです。」 <br /><br /><br /> 辺りは熱気に包まれ、上空からカースが迫ってきているにも関わらず、 <br /><br /> 肇は先ほど拓海と話していた時と変わらぬ穏やかな口調のまま言葉を紡ぐ。 <br /><br /><br /> 肇「お願いです、力を貸してください。」 <br /><br /><br /> そう言って、彼女は戟王丸を構えた。 <br /><br /><br /> 拓海(この位置から?!) <br /><br /><br /> その構えは、まるで今立つ地面から、はるか空の敵を切り落とせるかのような姿勢で。 <br /><br /> そして、 <br /><br /> 肇「やああっ!!」 <br /><br /><br /> 刀が振りぬかれる。 <br /><br /><br /> その瞬間、戟王丸に篭っていた怒りのエネルギーは開放され、 <br /><br /> 紅蓮色の斬撃が空間を真っ二つにしながら、怒号のように真っ直ぐと <br /><br /> 空中の敵に向かい、駆け登る。</dd> <dt id="a606">606 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:27:57.01 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">  <br /><br /> スパァン <br /><br /><br /> と、軽快な音がが一度だけ響き、 <br /><br /> それっきり辺りは静寂に包まれた。 <br /><br /><br /> 降下中であった強欲のカースは音が響くと共に、その場で静止していたが、 <br /><br /> 数瞬の間の後、 <br /><br /> その身体は左右に半分に割れ、 <br /><br /> そのまま、空中で崩れ去った。 <br /><br /><br /> 後には、ジリジリとした熱気だけが残り、 <br /><br /> 肇が戟王丸を鞘に収めると、その熱気も立ち消える。 <br /><br /><br /> 肇「拓海さん、終わりましたよ。」 <br /><br /> 少女は穏やかに言った。</dd> <dt id="a607">607 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:29:04.89 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">拓海の感情は <br /><br /> ずばり開いた口が塞がらないと言うそれだった。 <br /><br /><br /> なるほど、この刀を作ったやつは <br /><br /> 伊達や酔狂でカースの核を刀に取り付けようと思ったわけではないらしい。 <br /><br /><br /> 『日本一、キレる刀』と言う、うたい文句。 <br /><br /> それも今聞けば納得するところである。 <br /><br /><br /> 拓海「て言うか、」 <br /><br /> 拓海「刀からビーム出すのかよ。」 <br /><br /><br /> 色々言いたいことはあったが、とりあえずはそこを突っ込んだ。</dd> <dt id="a608">608 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:30:28.23 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br /> 肇は鞘に納めた戟王丸を掲げる。 <br /><br /><br /> 肇「こうしてる間にも戟王丸は、周囲から怒りの感情エネルギーを吸い取ってます。」 <br /><br /><br /> 『憤怒』のカースの核を埋め込まれた戟王丸は、 <br /><br /> 常に周囲から『怒りの感情』を吸い取り、その内に溜め込む性質を持つ。 <br /><br /><br /> 肇「溜めこんだ怒りを刀に乗せて振るう事で、怒りに志向性を持たせ、」 <br /><br /> 肇「怒りのエネルギーを特定の対象に放ち、ぶつけることができる。」 <br /><br /> 肇「それが日本一、キレる刀『戟王丸』の性質です。」 <br /><br /><br /> それが刀から、ビームが出た理屈らしい。 <br /><br /><br /> 肇「ちなみに戟王丸の鞘には怒りを鎮める浄化の作用があります。」 <br /><br /> 呪いの刀に対して、鞘が浄化の力を持つ。 <br /><br /> 浄化の力を持つ鞘があるからこそ、カースの呪いを暴走させずに扱うことができる。 <br /><br /> それが藤原一心の作り上げた『鬼神の七振り』の仕組みであった。 <br /><br /> 拓海(だから鞘から抜かれた瞬間に、威圧感放ってやがったのか。) <br /><br /><br /> 肇「鞘の浄化作用より、刀が怒りを溜め込む方が早いので、」 <br /><br /> 肇「時々こうして発散してあげないとダメなんですけどね。」 <br /><br /> 拓海「今のは刀のストレス発散ってことか?」 <br /><br /> 肇「最近は『憤怒』が活発みたいなので、戟王丸もストレス貯めこみやすくて。」 <br /><br /> 拓海「思春期かよ。」</dd> <dt id="a609">609 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:31:48.95 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> そんな会話をしていると、空から何かが落ちてきた。 <br /><br /><br /> 拓海「ん?」 <br /><br /> 拓海「なんだこれ」 <br /><br /><br /> 果たして落ちてきたものは <br /><br /> 拓海「がま口の財布だな。」 <br /><br /> 拓海「空から落ちてきたって事は・・・・・・あのカースが持ってやがったのか。」 <br /><br /><br /> 『強欲』のカースは金品や宝石を集める性質がある。 <br /><br /> 先ほどのカースの、カラスの様に地上に降りてきて何かを啄ばむような動作。 <br /><br /> アレは地上に落ちている金品を集めていたのだろう。 <br /><br /><br /> 拓海(あんなデカイなりして、やってた事は意外としょぼいな・・・・・・。) <br /><br /> 拓海(けど、あんなタイプのカースが出てくるとはな。) <br /><br /> 拓海(カースも進化してやがるのか?) <br /><br /><br /> 肇「あっ。そのお財布、私のです。」 <br /><br /> 拓海「あん?じゃあ、落としたって言ってたのこれか。」 <br /><br /><br /> 肇が落とした財布をカースが拾っていたらしい。 <br /><br /> 人の世を侵す、呪いもたまには役に立つことがあるようだ。</dd> <dt id="a610">610 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:33:06.63 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">―― <br /><br /> そうして、しばらく会話した後 <br /><br /> 彼女達はいずれまた会う事を約束して別れたのであった。 <br /><br /><br /> 肇「拓海さん、本当に心が綺麗な人だったな。」 <br /><br /><br /> 落とした財布を取り戻したので、肇はうどんの代金を払おうとしたが、 <br /><br /> 結局、拓海はそれを受け取らなかった。 <br /><br /> 曰く、一度おごると言ったのだから、それを撤回する様なかっこ悪いことはできないとのことで。 <br /><br /><br /> 肇「拓海さんみたいな人なら、おじいちゃんの刀を正しく使ってくれると思ったんだけど。」 <br /><br /> ちなみにその提案も断られた。 <br /><br /> 曰く、器じゃねーよ、とのことで。 <br /><br /> 肇としてはそんな事はないと思うのだが。 <br /><br /><br /> 肇「いつかこの子達を受け取ってくれる人も、心が綺麗な人ならいいな。」 <br /><br /> そんな思いを胸に、鬼の孫娘は今日も人の里を行く。 <br /><br /><br /> 肇「あ、そうだ、新しい刀の材料も探さないと。」 <br /><br /> 肇「『日本一、罪深い刀』を作るために必要な『原罪の核』」 <br /><br /> 肇「そんなの見つかるのかなあ・・・・・・」 <br /><br /><br /> 彼女が次に出会うのは、果たしてどんな人だろうか。 <br /><br /><br /> おしまい。</dd> <dt id="a611">611 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:33:48.37 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">藤原肇(16歳) <br /><br /> 職業:鬼の刀鍛冶見習い <br /> 属性:おじいちゃんっ子 <br /> 能力:精神統一によって負の感情をある程度コントロールできる。 <br /><br /> 七本の刀を背負って人里までやってきた鬼の孫娘。 <br /> 頭から2本の小さい角が生えてるが、普段は頭にスカーフを巻いて隠している。 <br /> 鬼の血のおかげで僅かながら、多少の神通力は使える。 <br /> その背に背負う七本の刀は、彼女のおじいちゃんである鬼、藤原一心の作った怪作『鬼神の七振り』 <br /> これらの刀を相応しい人間に渡すために、おじいちゃんから預かってきたとのこと。 <br /> 会話のたびに「おじいちゃん」の名前が何度も出てくるほどのおじいちゃんっ子。 <br /> おじいちゃんの作る刀は日本一だと信じている。 <br /> よくうどんが好きだと勘違いされるが、それほどでもないらしい。 <br /><br /><br /> 藤原一心(???歳) <br /><br /> 職業:鬼の刀鍛冶、鬼匠 <br /> 属性:頑固爺 <br /> 能力:妖刀、魔刀の製作。 <br /><br /> 藤原肇のおじいちゃんで、刀鍛冶をやってる鬼。 <br /> 妖刀、魔刀の製作者として、ある界隈では有名だとか。 <br /> とある財閥の協力おかげで、カースの核を組み込んだ刀『鬼神の七振り』の製作に成功する。 <br /> 『鬼神の七振り』は、本来財閥の手に渡るはずであったが、財閥が傾いてしまったために、 <br /> 彼の作った刀が回収されることはなくなった。 <br /> しかし「人の為に作った刀は、人の世に渡るべき。」だと考え、孫にそれらを渡して旅に出す。 <br /> 「目に入れても痛くないほど可愛い孫ほど旅させろ」派。 <br /> 「やるからには完璧を目指す」と言う信念のもとに、今も「日本一、罪深い刀」の製作を目論んでいるようだ。</dd> <dt id="a612">612 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:36:22.51 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">『鬼神の七振り』 <br /><br /> 刀匠・藤原一心の作り上げた七本の妖刀。 <br /> 「呪い」の力をもって、「呪い」を討つための刀。別名、カースドブレード。 <br /> 負のエネルギーの扱いに長けた鬼の手であるからこそ、作ることの出来た妖具。 <br /> 七本の刀それぞれに七つの属性のカースの核が埋め込まれており、属性に応じた特有の性質を持つ。 <br /><br /> 『憤怒』 刀名「戟王丸」 日本一、キレる刀 <br /> 『色欲』 刀名「???」 日本一、淫らな刀 <br /> 『傲慢』 刀名「???」 日本一、横暴な刀 <br /> 『嫉妬』 刀名「???」 日本一、嫉妬深い刀 <br /> 『怠惰』 刀名「???」 日本一、自堕落な刀 <br /> 『暴食』 刀名「???」 日本一、大食らいな刀 <br /> 『強欲』 刀名「???」 日本一、欲張りな刀 <br /><br /> いずれの刀も使用する度に、あるいはカースを切る度に負のエネルギーが溜まり、 <br /> 放って置けばいずれ所有者の精神を侵す危険な刀だが、 <br /> 専用の鞘に収めておくことで、刀に溜め込まれた負のエネルギーは浄化される。 <br /> 浄化の力を持つ鞘のおかげで、使い手は刀の持つカースの力を暴走させずにコントロールできると言う仕組み。 <br /><br /><br /> 『戟王丸』 <br /><br /> 『鬼神の七振り』の1本で、日本一、キレる刀。 <br /> 鞘や柄は真紅に染められ、龍を模った金細工が飾られている。 <br /> 柄の頭には『憤怒』のカースの核が取り付けられており、 <br /> 鞘に収まってる間も周囲の怒りの感情から力を吸収する。 <br /> 一度鞘から抜かれれば、集めていた怒りを一気に開放し、怒りのままに敵を一刀両断にする。 <br /> 抜き身のまま置いておくと、周囲から莫大な負のエネルギーを集めるために <br /> 使用後は必ず鞘に収めなければならない。 <br /> 鞘に収めた状態でも週に一度は溜まった怒りを開放する必要がある。 <br /> これを怠ると怒りの感情を制御できなくなるので注意すること。</dd> <dt id="a613"><span class="resnum">613</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/07(日) 23:37:35.73 ID:CzGsh73Do</span></dt> <dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> 無駄に長くなちゃッたけど <br /> 要は呪いの刀系の設定作りたかったんです、 <br /> 反省はしてません</dd> </dl><h4><a href="http://www57.atwiki.jp/mobamasshare/pages/371.html">その4へ</a></h4>

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