2スレ目>>979~>>985

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<p> オーブンを開けると熱気と一緒に甘い香りが立ち上る。<br />  カップケーキを取り出すと、竹串を刺して中まで焼けているのを確かめる。<br />  一つ味見に齧りつく――うん、美味しい!</p> <p> こんな体になってからも、お菓子作りはやめてない。<br />  むしろ前より頻繁になったくらい。<br />  以前は体重を気にしたりもしたけど、今はお菓子のほうがずっと大事。</p> <p> 作ったお菓子は二人にも振舞う。<br />  好みが少し違うから、文句が挙がることもあるけれど、幸せな時間は三人で共有したいから。<br />  でも……</p> <p><br /> 法子「ぎ も゛ぢ わ゛る゛い゛……」</p> <p> 今日の法子ちゃんはずっとこんな感じ。<br />  天気が良かったから公園でシートを敷いて待ってたんだけど、やってきた法子ちゃんを見て無理やり帰そうかとも思ったくらい。<br />  大丈夫と言い張って聞かないからそのまま居させてるけど、さっきからロクに食べてない。</p> <p> せっかくドーナツも作ってきたのに手を付けようともしないなんて、かなり深刻な事態かもしれない。<br />  みちるちゃんも、食べながらだけど心配してる。<br />  そうして法子ちゃんに注意が向いていたとき、不意に後ろから伸びてきた手がドーナツを掴む。</p> <p><br /> ??「食べないなら貰ってもいいですか~」</p> <p> 声のした方を見ると……同い年くらいかな? なんかちょっと色っぽい人が返事も待たずにドーナツをかじってた。</p> <p>??「ん~っ、美味しい! これ手作りですか? 上手なんですね~」</p> <p>??『ちょっと菜帆ちゃん? 良いって言ってくれるまで待たないと~』</p> <p> その人を窘める誰かの声、それを聞いたとたん思わず座りなおしてしまった。<br />  なんでかは良く分からないけど、そうしなければならないと感じた。</p> <p><br /> 法子「う゛ぇ゛っ」</p> <p> 法子ちゃんが吐いた。なんでこのタイミングで……<br />  ゴトッと音をたててそれは地面に落ち……え?<br />  法子ちゃんが吐いたのは七色の、多分カースの核だった。何これ?</p> <p>法子「あー、吐いたらすっきりした」</p> <p> 法子ちゃんが回復したのはいいんだけど、コレどうするの?<br />  手をこまねいていると、さっきから居た人が核を拾って――齧った。</p> <p>??「……硬くて噛めない~」</p> <p>法子「人が吐いたもの食べようとしないで!?」</p> <p> 顔を真っ赤にして怒る法子ちゃんかわいい、じゃなくて。<br />  ああもう何が何だか。</p> <p><br /> 法子「って、誰?」</p> <p> そういえば知らない人だった。</p> <p>菜帆「私? 私は海老原菜帆っていうの~」</p> <p>ベル『そして私はベルゼブブ。暴食を司る悪魔よ~』</p> <p> あ、悪魔!?<br />  私たちは竦み上がってしまう。</p> <p>菜帆「あー、ベルちゃんったら怖がらせちゃって。いけないんだ~」</p> <p>ベル『別にそんなつもり無かったのに~』</p> <p> なんか凹んでる。<br />  そんな様子を見てると怖がったのが馬鹿みたいに思えて、私は笑っちゃった。</p> <p>ベル『あっひどいー、笑わないでよ~』</p> <p> こうして良く分からない流れで打ち解けた私たちは、四人(五人?)でお菓子を食べた。</p> <p><br /> ・</p> <p>・</p> <p>・</p> <p>菜帆「今日はごちそうさま~」</p> <p>ベル『ごちそうさま~』</p> <p> 菜帆さんたちは食べ終えるとすぐに居なくなっちゃって、私たちは三人で片づけをする。</p> <p>みちる「そういえばこの核? どうする?」</p> <p>法子「その辺に捨てちゃってもいいんじゃないかな」</p> <p>かな子「何か使い道が出てくるかも知れないから、取っておかない?」</p> <p>みちる「じゃあ任せた」</p> <p>かな子「えっ」</p> <p>法子「あたしも、吐いたもの持ってるのはイヤかな」</p> <p>かな子「あっ」</p> <p> ……言いだしっぺの法則って、あるよね。</p> <p>つづく</p> <p><br /> ??「原罪とは、要するに『人が知恵を持った罪』ですよねぇ。</p> <p>   ――ねぇ、王子様?</p> <p>   彼女が生んだ原罪は、一体『誰』が知恵を持った罪なんでしょうねぇ。</p> <p>   ……むふふ♪」</p>

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