3スレ目・その4

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3スレ目・その4 - (2014/04/18 (金) 04:59:13) のソース

<dl style="padding-top:10px;"><dt id="a629"><span class="resnum">629</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆cAx53OjAIrfz</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage]:2013/07/08(月) 01:57:56.60 ID:Yz4ZaXw30</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
フレちゃんデキター <br /><br />
後奏ちゃんに悪意があって、ボロクソに書いてるわけではないということは先に断っておきます <br />
不愉快になったら本当にごめんね…</dd>
<dt id="a630">630 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆cAx<span class="namenum">53</span>OjAIrfz</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage]:2013/07/08(月) 01:59:18.99 ID:Yz4ZaXw30</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
私ははたと地面に降り立ち、息を吸い込み肩をゴキゴキと鳴らした。 <br /><br />
フレデリカ「ん……ふぅ、やっぱりシャバの空気は最高ね!」 <br /><br />
久しぶりの友人との再開は、中々面白いものだった。 <br />
特にとなりに居た男は、中々変わった精神軸を持つ男だった。 <br />
彼女もなかなか面白いモノを見つけてくるものだ、と少し感心する。 <br /><br />
フレデリカ「それにしても……お腹すいたー」 <br /><br />
街を歩き、回りを見回すとすっかり、景色は変わってしまっていた。 <br />
前に来た時はハイカラさんが町並みを闊歩し、人間世界中心の時代の並を感じたものだった。 <br />
いや、ある意味今も激動ではある、そして何よりも今は面白い時代なのだ。 <br /><br />
フレデリカ「…あ、アソコの洋風料亭なんていいかしら」 <br /><br />
しかしだいぶ時代も変わったものだ、昔ならばこの外見で歩けば誰しもが振り返るものだったのだが…… <br /><br />
フレデリカ「モダンタイムスってやつかしらね、果たして機械にこき使われる時代になったのかしら?」 <br /><br />
だが昔雑誌に掲載されていた、銀色の流線型の乗り物も、妙にキラキラと光るような服も、顔がタコのように進化した人類も居なくて、いささかがっかりした。 <br />
とはいえ、昔よりも遥かに能力が向上した人間や、超能力に目覚めた人間、特殊な学術による魔術などの似非科学と。 <br />
少し前の人間に、ケッチョンケッチョンに貶された生き物たちは、今は我が物顔で街を歩いているようで何分面白い。 <br />
取り敢えずふぁみりーれすとらん、と外国語で銘打たれた店に足を運ぶと、そそくさとウェイターが出てきて忙しなく自分を案内する。 <br /><br />
フレデリカ「あら、ハイテック」 <br /><br />
店員「?(外人さんかしら…?)ご注文の際は、コチラのボタンをお押し下さい」 <br /><br />
そう言うとつかつかと自分の仕事場に戻ってしまうのを見て、何分話をする間もないのかと呆れ返る。 <br />
まるで、地獄の死神蟻のようで幾分気持ちが悪い。 <br /><br />
フレデリカ(これの中から食べ物を選ぶのかしら…?) <br /><br />
千枝「あ、あの……同じ席いいですか?」 <br /><br />
フレデリカ「あらかわいい、どうぞ…ん?」 <br /><br />
と言った瞬間、妙に鼻につく嫌な匂い、あの阿婆擦れパパラッチの匂いが鼻につく。 <br /><br />
千枝「あ、あの、嫌……でしたか……?」</dd>
<dt id="a631">631 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆cAx53OjAIrfz</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga sage]:2013/07/08(月) 02:01:49.27
ID:Yz4ZaXw30</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
泣きそうな顔でコチラを上目づかいで見てくる、そんな目で見てたかしら……だけどこの匂い、間違いない。 <br /><br />
フレデリカ「あなた、この写真の女と会ったかしら?」 <br /><br />
そう言うと、世間一般では速水奏と名乗っている、アスモデウスの写真を佐々木千枝に見せる。 <br /><br />
千枝「え…あ、はい」 <br /><br />
突然まくし立てられ混乱する中、過去に自分があったことがある人間である、ということを思い出し、咄嗟にはいと答えたのを見て。 <br />
フレデリカは露骨に可哀想なものを見る目で、佐々木千枝を見つめた。 <br /><br />
フレデリカ「可哀想に……あんな曲がりくねった、特殊性癖の塊みたいな女にマーキングされるなんて……けど、そう言うお年ごろだものね……」 <br /><br />
うんうんと大げさにリアクションをとり、佐々木千枝はいささかこの人間が変な人に思えてきた頃。 <br />
宮本フレデリカは、笑顔で佐々木千枝の手を握って、元気付けるように言葉を付け足した。 <br /><br />
フレデリカ「でも大丈夫、あの性癖が高じて相手が見つからず、他人の情交を見て自分を慰めるような女の力を、いとも簡単に跳ね除ける人たちが居るもの」 <br /><br />
フレデリカ「あ、そうだ、これあげるわ知り合いが迷惑かけた駄賃と思って、貰っちゃいなさい」 <br /><br />
千枝「え、あ、はぁ……」 <br /><br />
そう言って手渡された髪飾りは、ウサギの形を模した可愛らしいもので、何となくで話を聞いていた千枝には素っ頓狂なものだった。 <br /><br />
フレデリカ「可愛いでしょー?それはね、元々はウサギの足だったんだけど……あ、コレはただのウサギの形のお守りよ?安心して?」 <br /><br />
フレデリカ「ウサギってスッゴイ足が速くて、子供をたくさん作るんだって、それでつけてると元気になるように、っていうお守りなんだって」 <br /><br />
千枝「えっと……?元気?」 <br /><br />
フレデリカ「あ、そうそう、元気、英語で言うとパワー!…違うか、あ、店員さんオムライス2つ、そうそう、元気のお守り」 <br /><br />
フレデリカ「心がさみしい時、挫けそうなときに力をくれるって伝承が、海外にあるらしいのよ」 <br /><br />
千枝「さみしい時…」 <br /><br />
フレデリカ「そうそう、ああいう根暗の色情魔はそういう隅っこをついてくるの、いやらしいったらありゃしない」 <br /><br />
フレデリカ「そんなんだからまともな相手が居ないのよ、それで後は自分の本当に大切なことを思い出すこと、コレも大事」 <br /><br />
千枝「大切なこと…?」</dd>
<dt id="a632">632 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆cAx53OjAIrfz</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga sage]:2013/07/08(月) 02:03:46.24
ID:Yz4ZaXw30</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
フレデリカ「ああいう色キチだの、嫉妬キチだのはいつまでも同じ所に立ち続けて何がしたいのかしら?そんなんだから、悪魔だの龍族だのは衰退するのよ」 <br /><br />
千枝「え…えっと?」 <br /><br />
フレデリカ「ああ、ごめんねこっちの話、取り敢えず自分が何をしたいのかっていうのは、ハッキリさせたほうがいいわ若人さん」 <br /><br />
フレデリカ「その為には精一杯悩みなさいな、考えこみなさいな、そしてちゃんと遊んで、食べるもの食べて自分が本当だと思えることをしなさい」 <br /><br />
千枝「…はい!」 <br /><br />
フレデリカ「あっ、年取るとすぐ説教みたいになっちゃってごめんね、あ、オムライス来たから食べなさい、料金は私が払っておくから」 <br /><br />
千枝「え、でも悪いです……」 <br /><br />
フレデリカ「いいのいいのー、人生の先輩に頼るのも後輩の仕事よ、任せなさい」 <br /><br />
千枝「…じゃあ分かりました、代わりに名前を教えてもらえますか?」 <br /><br />
フレデリカ「アタシの名前は宮本フレデリカよ、多分この街をうろついてるから、また会えるかもねー」 <br /><br />
そう言ってフレデリカはオムライスを口元に運ぶと、満足気に食べ始めた。 <br />
何となく大切なことのような、何かをはぐらかされたような気持ちになりながら、オムライスを食べた…美味しかった。 <br /><br />
―――――――― <br /><br />
フレデリカ「いやーごめんね!まさか、このお金が使えないんとは思わなかったんだー」 <br /><br />
そう言って、ひらひらと明治通宝拾圓札を振る。 <br /><br />
フレデリカ「まあいいや、記念品と思ってこの封筒ごと上げちゃう、どーせ他に宛はあるし」 <br /><br />
そう言って何か言う前に、千枝のカバンにスルリと投げ入れてしまう、千枝はこの人に勝てないなぁと思いつつ、話を続ける。 <br /><br />
千枝「いえ大丈夫です、それにこのウサギさんのお礼もまだでしたし」 <br /><br />
フレデリカ「うーん……こういう時はこういうんだっけ、God speed youってね」 <br /><br />
千枝「え、えっと意味は……」 <br /><br />
少しフレデリカは考えた後、ニコリと笑うと千枝に向かって笑顔で言った。 <br /><br />
フレデリカ「次に会う迄の宿題よ、精々気張りなさい若いの」 <br /><br />
そう言うと、フレデリカは手を振って町中に消えていくのだった。</dd>
<dt id="a633">633 :<span class="name" style="color:#008000;"><b>@設定</b> ◆cAx53OjAIrfz</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga sage]:2013/07/08(月) 02:08:17.17
ID:Yz4ZaXw30</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
宮本フレデリカ(アガレス) <br /><br />
職業 <br /><br />
自由気ままな魔神 <br /><br />
属性(ヒーローor悪役など) <br /><br />
嫌だなぁ、あっしはただの流浪人でゲス <br /><br />
能力 <br /><br />
「たたずむ者を走らせ、走り去ったものを呼び戻す」力 <br />
分かりやすく言うと他人をあの手、この手で炊きつけ事態をかき回す力。 <br /><br />
詳細説明 <br /><br />
アガレスがはるか昔に人間に頼んで作った、タンパク質の塊にアガレス自身が入り込み、地獄から地上へのパスを得たもの。 <br />
見た目や機能、構造は完全に人間をモデルにしているが、肉体に元となる『魂』は存在しない。 <br />
そのため、『契約・許可無しで人間界に滞在した罪』『カースを生み出した罪』『契約していない人間に憑依した罪』等。 <br />
そのどれにも抵触しない(抵触しないよう、悪魔の法律家達を炊きつけた) <br />
また、関わると碌な目に合わないため、大体の神様や悪魔からは嫌われていて、フレデリカ自身も大体の神様や悪魔を嫌っている。 <br /><br />
関連アイドル <br /><br />
鷹富士茄子(古い友人) <br /><br />
はやみーが好きな人には本当に謝って置きます、すみませんでした <br /><br />
今日はここまで</dd>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> </dd>
<dt id="a651"><span class="resnum">651</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆UCaKi<span class="namenum">7</span>reYU</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage]:2013/07/08(月) 14:33:18.50 <span class="id">ID:7MtJwXSD0</span></span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
流行りの憤怒の街に便乗して書いたのが完成したので思い切って投下します。</dd>
<dt id="a652"><span class="resnum">652</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆UCaKi7reYU</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage]:2013/07/08(月) 14:37:33.07 ID:7MtJwXSD0</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br /><br />
「………」 <br /><br /><br />
『憤怒』によって封鎖された街に至る地下鉄の線路上。 <br /><br />
そこに彼女は居た。 <br /><br />
件の街が憤怒に飲まれてから数時間。 <br /><br />
未だにどの組織も突入の目処は立っておらず、それどころか少し前から憤怒の街からあふれるように出てくるカースの迎撃に手一杯であった。 <br /><br />
無論、主要な道路や線路はGDF等の組織に封鎖されているが、それでも現代社会の複雑な交通機関全て………もっと言えば、工事中の地下鉄や細かい作業用通路など全てを押さえ込むには至らなかった。<br /><br />
人々の避難に防衛戦の構築、押し寄せるカースや目の前の惨劇や混乱に目を取られどうしてもほんの少しの抜け道ができてしまう。 <br /><br />
そして、彼女―――十時愛梨が居る場所も、そんな抜け道の一つであった。 </dd>
<dt id="a653">653 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆UCaKi7reYU</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage]:2013/07/08(月) 14:39:10.08 ID:7MtJwXSD0</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br />
―――十時愛梨は、元『トップアイドル』だ。 <br /><br /><br />
彼女の事を知る人物たちは皆、口を揃えてこういうのだ。 <br /><br />
『十時愛梨という女の子には、誰もが引き込まれるような、そんな天性のカリスマともいえる才能がある』、と。 <br /><br />
しかし、そのカリスマだけで愛梨はトップアイドルになれた訳ではない。 <br /><br />
未だに、頂点を手にした瞬間を思い出すとまるで夢物語のように感じてしまうが。 <br /><br />
だが、それでも彼女は誰かを笑顔にしたくて、誰もを幸せにできるようになりたくてひたすら努力して最後には誰もが憧れる栄光を手にしたのだ。 <br /><br /><br /><br /><br /><br /><br />
―――十時愛梨は、元トップ『アイドル』だ。 <br /><br /><br />
頂点に至るまでには、喜びも、悲しみも、痛みも、安らぎも全部あった。 <br /><br />
一人なら、きっと潰れていたと思う。 <br /><br />
だけど、愛梨には自分を導いてくれた先輩と、共に上を目指した仲間がいた。 <br /><br />
そんな人たちがいたから、愛梨はたどり着けたのだ。 </dd>
<dt id="a654">654 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆UCaKi7reYU</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage]:2013/07/08(月) 14:41:00.65 ID:7MtJwXSD0</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br />
―――十時愛梨は、『元』トップアイドルだ。 <br /><br /><br />
いつからだろうか……その称号が重荷と感じてしまうようになったのは。 <br /><br />
いつの頃か、何を思って『アイドル』を目指したのかそのことさえ忘れてしまっていた。 <br /><br />
そんな時に起きたひとつの事件。 <br /><br />
愛梨が撮影していたテレビ局に何故か潜り込んだ、カースによる襲撃。 <br /><br />
どうしようもなくて、自分の非力さが悔しくて、振り上げられた恐怖に怯えるしかなくて。 <br /><br />
―――そうして愛梨は『声』を聞いた。 <br /><br /><br /><br /><br />
―――十時愛梨は、『元トップアイドル』だ。 <br /><br /><br />
気づいたときには愛梨は病院にいた。 <br /><br />
傍らには見慣れない黄色のコート。 <br /><br />
そして自分にしか聞こえない『声』。 <br /><br />
見つかった時、愛梨はボロボロの状態であったが奇跡的に大きな怪我はなくカースは消えていたらしい。 <br /><br />
………しかし、結局愛梨はこの時のショックを理由にアイドルを引退したのである。 </dd>
<dt id="a655">655 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆UCaKi7reYU</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/08(月) 14:42:47.39 ID:7MtJwXSD0</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
「………やっぱり、後悔してるじゃないですかぁ」 <br /><br />
「………うん、そうだね」 <br /><br />
思い出に浸っている間に、愛梨の後ろにはいつの間にか日菜子が座っていた。 <br /><br />
「きっと、私は後悔してるよ……そんな気がする」 <br /><br />
一つ一つ、確かめるように愛梨は口を開く。 <br /><br />
「いろんな人に会って、見て、少しずつ自分のことがわかったよ」 <br /><br />
「逃げたことも、弱かった自分にも」 <br /><br />
「……………」 <br /><br />
「だけど、一番は…」 <br /><br />
まだ明確な答えは持っていないが、それでもと思う。 <br /><br />
「楽しい……って気持ちを忘れちゃった事、かな」 <br /><br />
「………むふふ、愛梨さんならまたやり直せますよぉ」 <br /><br />
「そうかな?」 <br /><br />
「はい♪きっと大変だとは思いますけど、その時は日菜子達がいますよぉ」 <br /><br />
「…ありがとう、日菜子ちゃん」 <br /><br />
「いいえー♪………さて、この状況はさすがに日菜子達も放っておくことはできませんねぇ」 <br /><br />
「うん…必死で頑張ってる人たちがいるんだもん、私たちだって動かないとね」 </dd>
<dt id="a656">656 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆UCaKi7reYU</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/08(月) 14:47:41.41 ID:7MtJwXSD0</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br />
「そうですねぇ…余りにも偏ってしまうと『芽』にも悪影響ですし……むふふ」 <br /><br />
そうは言うものの、日菜子はいつものように全く困ったような素振りを見せない。 <br /><br />
「グオオオオオオオオ!」 <br /><br />
「ナゼエエエダアアアア!」 <br /><br />
「オマエラガワルインダアア!!」 <br /><br />
そして、何度目かもわからぬカースの進攻。 <br /><br />
呪いを吐き出しながら現れるカース―――その数、9体。 <br /><br />
「むふ……ここを誰かが気づいて向かってくるならそれはそれでいいんですよねぇ」 <br /><br />
姿を現した瞬間、暗がりから飛び出した剣の群れが2体を壁に縫い付ける。 <br /><br />
「うん、きっと地上からだとあの結界と瘴気もあるから難しいと思う」 <br /><br />
すっと愛梨の姿が掻き消える。 <br /><br />
「けど、ここからならカースさえ突破できれば、大丈夫なはずだよ」 <br /><br />
と、次の瞬間には一陣の風と共に最後尾のカースの背後に現れ、反応する暇も与えず一体を真空の風の刃でズタズタに核ごと深く切り裂く。 <br /><br />
残り、8体。 <br /><br />
「ですけど、もし地上から突破できたらどうしますかぁ?」 <br /><br />
縫い付けた二体を解体するが如く、無数の刃で切り裂き核を剥き出しにする。 <br /><br />
「……その時は、二人で突入するしかないかな」 <br /><br />
まるで風を掴むように、風を捻るように手を動かして小型の竜巻を作り出して固まっていた3体をまとめて天井に巻き上げる。 </dd>
<dt id="a657">657 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆UCaKi7reYU</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/08(月) 14:49:30.16 ID:7MtJwXSD0</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br />
「むふふ…さすがにそれは少し苦労しそうですよぉ」 <br /><br />
無造作に、むき出しとなった二つの核の前に立った日菜子にカースが襲いかかるが、まるで最初からそう決まっていたかのように日菜子はすり抜ける。 <br /><br />
「だけど……ただ見てるだけは嫌だよ!」 <br /><br />
天井に叩きつけられ勢いよく落下してくるカースの上方に再び愛梨が現れると同時に、ズバンッと一体が核ごと縦に切断される。 <br /><br />
残り、7体。 <br /><br />
「…仕方ないですねぇ……むふふ、王子様もそう思いますよね♪」 <br /><br />
そうすることが当然であるように、片手でそばに浮かぶ剣を掴み弧を描くように投げつける。 <br /><br />
瞬間、あらゆる法則を無視して巨大化した剣が襲いかかったカースと剥き出しの核をまとめて潰し切る。 <br /><br />
残り、4体。 <br /><br />
「……ありがとう」 <br /><br />
呟き、落下して叩きつけられた二体のカースを風を螺旋状に回転させた擬似ドリルで核を抉りとる。 <br /><br />
残り、2体。 <br /><br />
「むふ……いいえぇ♪…だって日菜子は、みなさんが好きなんですよ?」 <br /><br />
猛烈な勢いで突進してくるカースが、瞬き一つの間にその体から数多の刃を生やした。 <br /><br />
残り、1体。 <br /><br />
「うん、私も―――」 <br /><br />
「キエロヨオオ!!」 <br /><br />
轟音と共に振るわれた腕が愛梨をとらえたが、風に吹かれた煙のようにその姿が溶けた。 <br /><br />
 </dd>
<dt id="a658">658 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆UCaKi7reYU</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/08(月) 14:54:31.78 ID:7MtJwXSD0</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br />
「―――『ヒト』が大好きだよ……ね、『ハスター』さん」 <br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br />
そうして、嵐を凝縮したような暴風がカースを背中から貫き、核を砕く。 <br /><br />
残り、0体。</dd>
<dt id="a659">659 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆UCaKi7reYU</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/08(月) 14:57:02.29 ID:7MtJwXSD0</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br />
「さぁて、もうしばらくはここに留まるしかないですね……むふふ♪」 <br /><br />
「ふふ…こんな時でも変わらないなぁ、日菜子ちゃんは」 <br /><br /><br /><br /><br /><br />
―――今はまだ、神性を宿した二人は人知れず暗闇の中で戦うのみ。 <br /><br /><br /><br /><br /><br />
続く?</dd>
<dt id="a660">660 :<span class="name" style="color:#008000;"><b>@設定 </b> ◆UCaKi<span class="namenum">7</span>reYU</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/08(月) 14:57:38.07 ID:7MtJwXSD0</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br />
『ハスター』 <br />
→『名状しがたきもの』『黄衣の王』ともよばれる旧支配者の一体。 <br />
風の神性であり、愛梨と共生関係にある。 <br />
名前以外は謎が多い存在だが、とある新聞にあることないこと書かれたりした。 </dd>
<dt id="a662"><span class="resnum">662</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆UCaKi7reYU</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage]:2013/07/08(月) 14:59:59.32 <span class="id">ID:7MtJwXSD0</span></span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
投下終了、勢いで書いた、後悔はしてないが反省はしています; <br /><br />
今回はとときんの過去を掘り下げるとともにさり気なく活躍させる準備をしてみました。 <br /><br />
一応、どう状況が転んでも大丈夫なはず <br /><br />
それではお目汚し失礼しました。</dd>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> </dd>
<dt id="a665"><span class="resnum">665</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆I2ss/4dt7o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/08(月) 17:10:55.34 ID:C27M88pyO</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">投下しまーす <br /><br />
周子さん、美玲ちゃんお借りします</dd>
<dt id="a666"><span class="resnum">666</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆I<span class="namenum">2</span>ss/<span class="namenum">4</span>dt<span class="namenum">7</span>o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/08(月) 17:13:37.11
ID:C27M88pyO</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
白菊ほたるは困っていた。 <br /><br />
GDFの兵器による街の壊滅で、どうしてこんな事が普通に起こるんだと恐怖を感じたり…… <br /><br />
そのあと森になって「またナチュルスターか」「破壊された街を治そうとして森にしたんだな」とかの風評被害で落ち込んだり…… <br /><br />
今回の憤怒の街の件で行こうとするも乃々と巴、はてはイヴさんにまで「危険だから今はやめた方がいいですよ~?いくら、精霊の加護があっても三人共まだ未熟だから呑まれちゃいますよ?」と止められ、自分の無力感を味わってる事もあるが…… <br /><br />
今回は関係ない。 <br /><br />
ではなぜか? <br /><br />
それは………… <br /><br />
ほたる「えっと…美玲ちゃん。出てきてください……」 <br /><br />
隅で隠れている眼帯をつけたフードの女の子に私は声をかけていた。 <br /><br />
美玲「む、……無理っ!!う、…ウチにはハードルが高いというか……ううっ……」 <br /><br />
ほたる「すみません……私じゃダメでしたよね……」 <br /><br />
美玲「ちっ……違うっ!」 <br /><br />
………っと、こんな空間が広げられていた。</dd>
<dt id="a667">667 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆I2ss/4dt7o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/08(月) 17:14:28.93 ID:C27M88pyO</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
ここはプロダクションのとある一室。 <br /><br />
そこに、ほたると美玲は二人っきりになっていた。 <br /><br />
人見知りの美玲にとってはやっぱりハードルが高く、隠れてしまい、ほたるはそれに対してどうすればいいのかオドオドしていた。 <br /><br />
なんで、こんなことになっているのかというと……</dd>
<dt id="a668">668 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆I2ss/4dt7o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/08(月) 17:15:43.82 ID:C27M88pyO</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
遡ること一時間前。 <br /><br />
ほたるはテレビの前で泣きそうな顔でニュースを見て、自分の無力さを実感していたときだった。 <br /><br />
彼女の母親代りの恩人、柊志乃がいつものように、ワインを飲みながら何処かに電話していた。 <br /><br />
そして、電話を切ると突然 <br /><br />
志乃「ほたるちゃん。おでかけしましょ?」 <br /><br />
と、誘ってきたのだ。 <br /><br />
志乃さんから誘ってくるなんて、珍しいな。と思いながら、気持ちを少し切り替え、彼女は志乃について行った。 <br /><br />
……出かける時もワイングラスとワインを持ってきている志乃は相変わらずだが……</dd>
<dt id="a669">669 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆I2ss/4dt7o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/08(月) 17:16:37.54 ID:C27M88pyO</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
そして、「プロダクション」についた志乃は、ほたるを連れ一人の女性に会いにきたのだ。 <br /><br />
周子「いらっしゃい。志乃さん」 <br /><br />
周子「この子が志乃さんの義娘さん?」 <br /><br />
志乃「ふふ、こんにちは。周子さん」 <br /><br />
志乃「ええ、紹介するわ。私の義娘のほたるよ。ほたるちゃん。この人は私の友達の周子さんよ」 <br /><br />
ほたる「は、はじめまして!白菊ほたるです!し、志乃さんがお世話になってます!!」ペコリッ <br /><br />
慌てて、オドオドしながらも礼儀正しく挨拶するほたるに周子はおかしそうにクスリと笑う。 <br /><br />
周子「始めまして、ほたるちゃん。そうかしこまらなくていいから」 <br /><br />
志乃「それで、周子さん。あなたのお子さんはどこにいるのかしら?」 <br /><br />
周子「ええ。こっちにいるよ。ついて来て」 <br /><br />
そう言って、案内されたのがこの部屋である。 <br /><br />
入って来た時、美玲は知らない二人を見て、慌てて周子の後ろに隠れながらコソコソと顔を出して、自己紹介をした。 <br /><br />
詳しくは聞かされてないがどうやら彼女はカウンセリングみたいのをしてるらしい。 <br /><br />
そしたら、突然、志乃さんが「じゃあ、私達は二人でお酒飲んでくるから、二人でお留守番しといて」と言うと、慌てるほたると美玲をよそに二人はそのまま部屋を出て行ったのであった。</dd>
<dt id="a670">670 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆I2ss/4dt7o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/08(月) 17:18:10.57 ID:C27M88pyO</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
そして、今にいたる。 <br /><br /><br />
ほたる「(えっと…、どうすればいいんだろう?……私と同い年くらいだよね?…)」 <br /><br />
どう話題を切り出せばいいか、ほたるが困っていると、美玲が恐る恐る口を開いた。 <br /><br />
美玲「……なあ、さっきのシューコと一緒にいた人……オマエの親か?」 <br /><br />
ほたる「は、はいっ!え、えっと……志乃さんの事?」 <br /><br />
ほたる「……志乃さんは本当のお母さんじゃないです。……詳しくは言えないけど、私両親を早くに亡くして、他の人達に色々言われて居場所がなくなってたのを志乃さんに拾われたんです…」 <br /><br />
疫病神と呼ばれてたとか、死のうと思ってた事は伏せて、簡単に彼女に説明した。 <br /><br />
どこか少し悲しげな印象を感じる。 <br /><br />
それを聞いた美玲はジーッとほたるを見つめていた。 <br /><br />
その様子にちょっと困ったようにオドオドしてると <br /><br />
美玲「…ほたるもシノと会うまでひとりぼっちだったのか?……ウチもシューコに会うまで周りにのけものにされてた……」 <br /><br />
そう言われて、ほたるは思った。 <br />
この子も私と一緒なんだ…っと。 <br /><br />
ほたる「そうなんだ…。美玲ちゃんは周子さんの事好きなの?」 <br /><br />
美玲「……」コクッ <br /><br />
この日、似たもの同士の二人は、お互いの育ての親の事を話して、仲良くなっていたそうだ。</dd>
<dt id="a671">671 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆I2ss/4dt7o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/08(月) 17:19:26.31 ID:C27M88pyO</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br />
---- <br /><br />
志乃「周子さん。今日はありがとうね」 <br /><br />
周子「こちらこそ。美玲もまだまだ人に慣れてないからコレを気に友達を作ってもらうのもいいかもしれないしね」 <br /><br />
保護者二人は別の部屋で軽くお酒を飲んでいた。 <br /><br />
どうやら、今回ほたると美玲を合わせたのは、ほたるの気分転換と美玲の人に慣れさせる為のようだ。 </dd>
<dt id="a672">672 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆I2ss/4dt7o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/08(月) 17:20:34.55 ID:C27M88pyO</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br />
周子「それにしてもカースの活動がやけに活発すぎると思うけど、志乃さんはどう思う?」 <br /><br />
お猪口に入った日本酒を一口味わうように飲みながら、未だによくわからない友人に聞いてみた。 <br /><br />
志乃「何か大きい事が起こるのは確実じゃないかしら?憤怒の街も多分準備だと思うわ」 <br /><br />
クイッとワインを飲みながら志乃は笑う。 <br /><br />
志乃「けどね……周子さん。世の中って上手く回ってるのよ?何か大きい野望も小さな野望も世界にとって都合が悪ければそれは最終的には潰されちゃうの。世界って本当によくできてるわ。だから、焦らない。ほたるちゃんも焦って自滅しちゃいそうだし、こんな大変な時期こそ身体も心も落ち着かせるのが一番なのよ」 <br /><br />
何処か懐かしむように、不適に微笑み、彼女はワインを流し込む。 <br /><br />
周子「……志乃さんって本当に何者なの?人間の割には達観しすぎてるというか、なんというか……」 <br /><br />
志乃「うふふ、女には秘密はつきものよ。秘密が多ければ多いほど美しくなれるの」 <br /><br />
未だに謎が多すぎる友人をいぶしかむように見つめる周子に対し、彼女は優しく微笑む。</dd>
<dt id="a673">673 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆I2ss/4dt7o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/08(月) 17:21:27.81 ID:C27M88pyO</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br /><br /><br /><br /><br /><br />
志乃「それより私は周子さんが京都の娘さんに迫られてることについてきになっちゃうわね」 <br /><br />
不意打ちの一打が放たれた。 <br /><br /><br /><br /><br />
 </dd>
<dt id="a674">674 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆I2ss/4dt7o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/08(月) 17:22:50.28 ID:C27M88pyO</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
周子「!!!!ゲホッ!ゴホッ!!……し、志乃さん!?」 <br /><br />
志乃「うふふ。今度、京都に遊びにいってみようかしら?周子さんの話すれば喜んでくれそうね」 <br /><br />
周子「それだけは本当にやめて!」 <br /><br />
プロダクションは今日も賑やかである。</dd>
<dt id="a675"><span class="resnum">675</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆I2ss/4dt7o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/08(月) 17:23:49.82 ID:C27M88pyO</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br /><br />
そのあと、志乃さんが本当に京都へ行ったかどうかはまた別の話。 <br /><br />
終わり</dd>
<dt id="a676"><span class="resnum">676</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆I2ss/4dt7o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/08(月) 17:25:06.87 <span class="id">ID:C27M88pyO</span></span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">以上です。 <br /><br />
ほたると美玲を合わせてみたかったんです…… <br /><br />
自分で書いてて志乃さんの正体がわからなくなってきた。</dd>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> </dd>
<dt id="a678"><span class="resnum">678</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆3Y/5nAqmZM</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/08(月) 18:16:13.20 <span class="id">ID:ujSw71iWo</span></span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">乙乙です <br />
友達がふえるよ!やったね美玲ちゃん!(オイ <br /><br />
周子が出ずっぱりになっちゃうけど、投下するよー!! <br />
肇ちゃんお借りしてますー</dd>
<dt id="a679"><span class="resnum">679</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆3Y/5nAqmZM</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga sage]:2013/07/08(月) 18:17:37.32 <span class="id">ID:ujSw71iWo</span></span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
京都、小早川邸。紗枝が退治屋の会合へ出席するため不在と聞いた周子は、縁側で珠美と談笑していた。 <br /><br />
「・・・鬼の作った刀、ですか?」 <br /><br />
「そ。知り合いがどっかのお偉いさんに頼まれて作ったんだけど、そっちで使う前に色々あったらしくてさー。今はお孫さんに使い手を探させてるんだって」 <br /><br />
あいつが選ぶ相手なら間違いは無い、なんて孫バカだよねー、とかんらかんらと笑いながら周子は振り返り、 <br /><br />
「・・・あれ、何かあんまり興味ない感じ?」 <br /><br />
きょとん、とした顔のままの珠美を見て以外そうな声をあげた。 <br /><br />
「興味がない、と言えば嘘になりますが・・・珠美には、西蓮が居りますので。今は、他の刀を持つ気はありません」 <br /><br />
『ま、珠美とマトモにつきあえる刀なんざ、オレ様以外にゃそうそう無ェだろうよ。並の刀じゃァこいつのバカ力ですぐひん曲がっちまう』 <br /><br />
「・・・一応、フツーの刀のはずだよね、西蓮って」 <br /><br />
人の身で鬼と恐れられた武人の魂を宿し妖気を纏うとはいえ、西蓮は本来妖怪退治に使う為に作られた専用の刀ではない。 <br /><br />
欠けず、曲がらず、折れず、という性質を得たことで結果的に妖怪にも通じる刃を手に入れただけで、紗枝のとっておきのような『そのための刀』とは別物なのだ。 <br /><br />
それを軽々扱い、妖怪どもを斬り伏せる珠美ともども末恐ろしいもんだ、と胸中でつぶやいた周子は、『その気配』を感じて溜息をひとつ。 <br /><br />
「ありゃー、紗枝ちゃんがお出かけしてる時にこれかー。珠ちゃん、一人で大丈夫?」 <br /><br />
「ご心配には及びませんよ、周子殿。これでも珠美は、紗枝殿から直々に留守を任されたのですから。行きますよ、西蓮!」 <br /><br />
『オゥ、ちゃちゃっと終わらせてやろうじゃねェか』 <br /><br />
そう言って、呼び出した鳥型の式神の背に飛び乗り、気配の方へと向かう珠美。 <br /><br />
「・・・なーんか、変なカンジするんだよねぇ・・・ついてった方がいいかなー」 <br /><br />
その背を見ながら、普段よりも幾分真面目な面持ちで、周子はぽつりと呟いた。</dd>
<dt id="a680">680 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆3Y/5nAqmZM</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga sage]:2013/07/08(月) 18:18:38.36
ID:ujSw71iWo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
シュゥゥゥ、と耳障りな音を掻き鳴らし身をくねらせる、10メートルはあろうかという大蛇を前に、珠美は苦戦を強いられていた。 <br /><br />
「っ、はぁっ!!」 <br /><br />
跳びかかって来た大蛇を最小限の動きで躱し、すれ違いざまに一閃。胴の中ほどから真っ二つにされた大蛇は、のたうちまわりながら周囲にあった木に噛みついた。 <br /><br />
『・・・チッ、どうなってやがんだ、アイツぁよォ!?』 <br /><br />
そしてそのまま、大木をバリバリと『喰らう』と、斬り落とされたはずの身体が、断面から見る見るうちに『新しく生えてくる』。 <br /><br />
『周りのモン喰って回復するだァ?ヘビ野郎にそんな力があるなんざ見た事も聞いた事もねェぞ・・・!』 <br /><br />
「斬っても斬ってもキリがありませんね・・・どうしたものか」 <br /><br />
幾度となく胴を両断し、首を落とし、尾を斬り裂き、そしてその度に周りの何かしらを食うことで元通り。 <br /><br />
短時間ですでに何度繰り返したか、流石の珠美も息が上がり始めていた。 <br /><br />
「・・・頭から、縦に斬り込みます。物を飲み込めない身体にしてしまえば、あの回復能力も封じられるはず・・・!」 <br /><br />
『はッ、下手打ちゃぁそのままパックリ丸呑みだな。だが、それしか無ェか・・・!』 <br /><br />
西蓮を大上段に構え、大蛇を誘い込まんとする珠美。果たして大蛇は隙だらけの珠美を呑みこまんと顎を開き跳びかかる。 <br /><br />
「今、っぐぁっ!!?」 <br /><br />
『ッ、珠美ッ!!』</dd>
<dt id="a681">681 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆3Y/5nAqmZM</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga sage]:2013/07/08(月) 18:19:27.86
ID:ujSw71iWo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
好機、と斬りかかった珠美は、不意に横あいから襲いかかった衝撃に吹き飛ばされる。歪む視界の端に、叩きつけられた大蛇の尻尾がちらついた。 <br /><br />
(頭は、陽動でしたか・・・不覚ッ・・・) <br /><br />
ぐらつく頭を抑え、痛みに顔を顰めながら立ち上がった珠美は、取り落とし地面に転がった西蓮を回収しようとする。しかし、振り回される大蛇の尾が邪魔をして西蓮の元へとたどり着くことができない。 <br /><br />
「くっ、こいつ、何故こんなに執拗に、っあぅっ!!」 <br /><br />
背中を強かに鞭打たれ、珠美は再び吹き飛ばされ宙を舞う。 <br /><br />
「か、はっ・・・ぁ・・・」 <br /><br />
服の下に仕込んだ護符を以てしても、あまりの衝撃に呼吸もままならない。朦朧とする意識で、それでも大蛇に向きなおった珠美は、そこに信じられない物を見た。 <br /><br /><br />
「・・・・・・ぇ」 <br /><br />
『なッ・・・』 <br /><br /><br />
大蛇が、西蓮の柄を咥え、持ちあげる。そしてそのまま、 <br /><br /><br />
「・・・・・・さい、れん・・・?」 <br /><br /><br />
するり、と、呑みこんでしまったのだ。 <br /><br /><br />
シュゥゥ、と満足げに一つ息をついた大蛇は、巨体を引きずりその場から去っていく。 <br /><br />
目の前で起きた事へのショックか、それとも全身にこびり付いた鈍い痛みのせいか。 <br /><br />
立ち上がることすらできずに、珠美は霞む視界に、悠々と逃げおおせる大蛇の姿を、黙って見送ることしか出来なかった。</dd>
<dt id="a682">682 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆3Y/5nAqmZM</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga sage]:2013/07/08(月) 18:20:04.10
ID:ujSw71iWo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
「・・・ちょっと厄介だね。あの妖怪、どうにも『カースの核』を取り込んだみたい」 <br /><br />
幾らなんでも遅すぎる、と様子を見に来た周子に手当を受けながら、珠美はあの大蛇についての情報を聞かされた。 <br /><br />
何らかの方法で『暴食』の核をその身に取り込んだことで、失った身体を周囲の物を『喰らう』ことで修復する能力を得たのだという。 <br /><br />
「しかも、厄介なのはそこじゃなくてね。妖気だったり魔力だったり、そういう物を取り込むことで、自身を強化することもできる」 <br /><br />
執拗に西蓮と珠美を引き離そうとしたのはそのためだ。妖刀である西蓮を喰らうことで、その力を取り込むのが目的だったのだ。 <br /><br />
「正直、今のままじゃ厳しい。紗枝ちゃんにすぐ戻ってもらうように連絡はしたから、一旦体制を立て直すよ」 <br /><br />
「・・・・・・取り込まれたものは、その後、どうなるのですか」 <br /><br />
ぼそり、と力なく問いかける珠美に、周子は一切を隠すことなく告げる。 <br /><br /><br />
「・・・・・・恐らく、もう完全に一体化してしまった。西蓮を取り戻すのは、正直言って諦めた方が良いかもしれない」</dd>
<dt id="a683">683 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆3Y/5nAqmZM</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga sage]:2013/07/08(月) 18:21:00.86
ID:ujSw71iWo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
「・・・周子はんでも、どうにもなりませんか」 <br /><br />
「あたし、これでも妖怪だからね。下手にあいつを刺激すると、余計に凶暴化するかもしんないし」 <br /><br />
人間に友好的とはいえ、妖怪である周子は本来の性質はカースらに近い。現在この場において、あの大蛇に対峙しうるのは紗枝と珠美しか居なかった。 <br /><br />
「・・・ぐ、ぁっ・・・!」 <br /><br />
「・・・やっぱり、あきまへんか」 <br /><br />
その珠美も、西蓮が無くては戦いようが無い。小早川の持つ妖刀を使おうにも、今の傷だらけの珠美ではその妖気を抑えられない。 <br /><br />
「はぁっ、はぁっ・・・っ、ぐ、ぅぅ・・・っ」 <br /><br />
幾度も刀を取り落とし、それでもまた拾っては構えようとする珠美の手を、周子が掴んで引き留める。 <br /><br />
「珠ちゃん、ストップ。今の状態でそれ以上やったら、球ちゃんが壊れるよ」 <br /><br />
「っ、はなし、て、ください、周子どの・・・珠美、は」 <br /><br />
「・・・最終手段、ないこともない。今、紗枝ちゃんに式神飛ばして呼んでもらってる。だから、もうちょっと我慢して」 <br /><br />
「・・・ちょうど、来はりましたえ」 <br /><br />
周子の言葉に、珠美が俯いていた顔を上げる。それと同時に、紗枝の飛ばした式神が、来訪者を連れてきた。 <br /><br />
「お久し振りです、周子さん。そちらのお二人は、はじめまして。刀匠、藤原一心の孫、藤原肇と申します」</dd>
<dt id="a684">684 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆3Y/5nAqmZM</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga sage]:2013/07/08(月) 18:22:26.68
ID:ujSw71iWo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
「これです。日本一、大食らいな刀『餓王丸』。目には目を、歯には歯を、暴食には暴食を、です」 <br /><br />
そういって、肇は珠美に一振りの刀を、周子曰く『最終手段』を差し出した。 <br /><br />
西蓮に勝るとも劣らない大刀で、本来鍔のあるべき場所には深い藍色をしたカースの核が設えられている。 <br /><br />
「この子なら、あるいは西蓮さんを取り戻せる可能性もあります。確実に、とは言い切れませんが・・・」 <br /><br />
鞘から引き抜けば、獣の牙を思わせる荒々しい刃文を持った刀身が姿を現す。野性味と美しさを兼ね備えたその姿に、珠美は思わず溜息を漏らした。 <br /><br />
「・・・いい、刀ですね」 <br /><br />
「ふふっ、ありがとうございます。おじいちゃ・・・祖父も、それを聞けば喜ぶと思います。この子の能力ですが・・・」 <br /><br />
説明を受けた珠美の目に、幽かな希望と、強い決意の光が宿る。 <br /><br />
「・・・それなら、確かに西蓮を取り戻せるかもしれません」 <br /><br />
「ですが、扱いの難しい子です。決して、無理はなさらないで下さいね」</dd>
<dt id="a685">685 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆3Y/5nAqmZM</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga sage]:2013/07/08(月) 18:23:03.24
ID:ujSw71iWo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
再び大蛇と対峙する珠美。その後方には、紗枝と周子が控える。 <br /><br />
対する大蛇も、天狗や鬼、その他様々な妖怪を引き連れ、さらに大きくなった巨体でとぐろを巻いて悠然と構える。 <br /><br />
「周りの木っ端はうちらが引き受けます。珠美はんは、大蛇に斬りかかることだけを考えて」 <br /><br />
「ヤバいと思ったらすぐに引っ張り戻すからそのつもりでね。あとは紗枝ちゃんにやってもらう」 <br /><br />
「了解です。・・・では、行きますッ!」 <br /><br />
だん、と強く一歩を踏みしめ、珠美はわき目も振らずに大蛇へと突進する。 <br /><br />
立ちふさがろうとする妖怪どもは、紗枝の式神や周子の狐火が振り落とし、一直線に道を作る。 <br /><br />
(肇殿が言うには、大きな相手を斬る際に最も適した場所は頭) <br /><br />
大蛇が動きだすより早く、とぐろを階段のように駆け上り、一気に距離を詰める。 <br /><br />
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 <br /><br />
一閃、餓王丸の刃は、大蛇の片目をすぱん、と斬り裂く。それと同時に珠美は、どくん、と刀身が脈打つのを感じ、 <br /><br /><br />
「・・・っ、あ、うぅぅッ!!?」 <br /><br /><br />
次の瞬間、何かが身体に流れ込んでくる感覚に短い悲鳴を上げた。</dd>
<dt id="a686">686 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆3Y/5nAqmZM</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga sage]:2013/07/08(月) 18:23:42.30
ID:ujSw71iWo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
(何ですか、これはっ・・・気持ち、悪いっ・・・!?) <br /><br />
何とか着地には成功するも、どろり、と泥のように粘りつく不快感に顔をしかめる。 <br /><br />
(これが、餓王丸が『相手を喰う』感触ですか・・・!?) <br /><br />
『暴食』の刃、餓王丸。その能力は、斬りつけた相手の性質を刀が『喰らい』、それを刀身や使用者に『反映』させること。 <br /><br />
今の感覚は、この大蛇の『食らうことで回復する』性質が珠美の体に流れ込んだ感触なのだろう。現に、身体に残っていた鈍い痛みが引いて行くのがわかる。 <br /><br />
だが、これは。 <br /><br />
(まずい・・・まともに、立っていられない・・・ッ) <br /><br />
身体中を這いずりまわる強烈な不快感に、珠美は思わず膝をついてしまう。そして、その隙を逃がす大蛇ではない。 <br /><br />
大口を開け、珠美の真上からその顎を叩きつけるようにして、丸呑みにせんと踊りかかる。 <br /><br />
「っ、球ちゃん、っと!?くっ、邪魔、すんなっ!!」 <br /><br />
その様子を見た周子が珠美を引き戻すために術を放とうとするが、周囲の天狗たちに斬りかかられ邪魔をされる。 <br /><br /><br /><br />
どすん、という地響きと共に、珠美の身体は大蛇の口の中へと消える。</dd>
<dt id="a687">687 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆3Y/5nAqmZM</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga sage]:2013/07/08(月) 18:24:28.34
ID:ujSw71iWo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br /><br /><br /><br /><br />
『・・・ったく、ボサっとしてんじゃねェよ』 <br /><br /><br /><br />
くぐもった声が、大蛇の口の中から響いた。 <br /><br /><br /><br />
 </dd>
<dt id="a688">688 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆3Y/5nAqmZM</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga sage]:2013/07/08(月) 18:25:24.12
ID:ujSw71iWo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
ずぱん、と音をたて、大蛇の頭が横一線に引き裂かれる。 <br /><br /><br />
『やっぱ半人前だなァ、珠美?オレ様が付いてねェと何にも出来ねェでやんの』 <br /><br />
「・・・一人では、動くこともできないあなたに言われたくありません」 <br /><br /><br />
その中から現れたのは、刀を振りぬいた姿勢の珠美。 <br /><br /><br />
『・・・ま、理屈はよくわかんねェけどよ。戻って来てやったぜ』 <br /><br />
「珠美が連れ戻してあげたんですよ。・・・おかえりなさい、西蓮」 <br /><br /><br />
そして、同化した大蛇を餓王丸が『喰らった』ことで、その刀身に魂を移した、西蓮であった。</dd>
<dt id="a689">689 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆3Y/5nAqmZM</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga sage]:2013/07/08(月) 18:26:21.27
ID:ujSw71iWo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
「――――――――!!!」 <br /><br />
声にならない悲鳴とともに、のたうちまわる大蛇。周辺にいた天狗が数匹、その体内に飛び込み、自ら『食われる』。 <br /><br />
そうして大蛇の身体が再生すると、それに留まらず、その身から翼が生み出され、大蛇が天へと舞い上がる。 <br /><br />
「うっわ、あんなのアリ!?」 <br /><br />
「くっ、周りの妖怪が邪魔でっ!」 <br /><br />
そのまま逃げ去ろうとする大蛇を追おうにも、紗枝と周子は未だに妖怪どもの猛攻にさらされ身動きが取れない。 <br /><br />
『珠美!』「承知ッ!」 <br /><br />
ならば、それを追えるのは珠美と西蓮のみ。 <br /><br />
『よォ天狗の兄ちゃん。ちょいと、その翼頂くぜ・・・ッ!!』 <br /><br />
阻止せんと飛びかかって来た天狗を斬りはらい、西蓮が、餓王丸が『喰らう』。すると、珠美の背に、鳶色の翼が現れた。 <br /><br />
「今度こそ、逃がしはしません・・・これでッ!終わりですッ!!」 <br /><br />
飛び去ろうとする大蛇の眼前に、猛スピードで羽撃いた珠美が躍り出る。大蛇がそれに気づいた時には、もう自身の身体を止めるには遅すぎる。 <br /><br /><br /><br />
「『 せ い や あ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ あ あ あ あ あ あ あ あ あ ! ! ! !」』 <br /><br /><br /><br />
気迫の雄叫びと共に斬りかかる刃は、大蛇自身のスピードすらも利用して、その身を両断する。断末魔さえ上げることも敵わず、大蛇は妖気の塵となって消滅した。</dd>
<dt id="a690">690 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆3Y/5nAqmZM</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga sage]:2013/07/08(月) 18:27:03.48
ID:ujSw71iWo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
『良いのかよ?一応、借りただけだったんだろ?』 <br /><br />
「こうなった以上、珠美さんに持っていてもらうのが一番ですから。『餓王丸』もそう言っていると思いますよ?」 <br /><br />
『・・・そうだな。んなら、遠慮なくこのまま珠美に使われてやるとするかね』 <br /><br />
「えぇ。それにしても、珠美さん、大丈夫でしょうか?降りて来るなり気絶してしまうなんて・・・」 <br /><br />
「・・・むにゃ・・さいれん・・・おかえりなさい・・・・・・」 <br /><br />
『・・・寝言まで吐けるんなら、大した事ァ無ぇんじゃねえか?』 <br /><br />
「・・・西蓮さん、もしかして照れてます?」 <br /><br />
『なッ、んなワケあるか!大体、何で今のでオレ様が照れる必要があるよ!?』 <br /><br />
「ふふっ、ではそういうことにしておきましょう。目を覚ましたら、珠美さんによろしくお伝えくださいね」 <br /><br />
『あ、オイ何所行く気だテメェ、おい、待てって、この状態で珠美と二人きりにすんじゃねェ、おい聞いてんのか!!?』 <br /><br />
「・・・えへへ、さいれん・・・・・・♪」</dd>
<dt id="a691">691 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆3Y/5nAqmZM</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga sage]:2013/07/08(月) 18:27:43.36
ID:ujSw71iWo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
鬼神の七振り『暴食』 日本一大食らいな刀『餓王丸』 <br />
鬼匠・藤原一心の鍛えた『鬼神の七振り』の一つ。獣の牙のような刃文を持つ『暴食』の刀。 <br />
斬りつけた物の性質を『喰らい』刀身に貯め込み、それを刀身や使用者に反映させることができる。一度に貯め込める量には限界があり、大体三つ位まで。 <br />
斬った相手が強大であるほど反映される性質も強力になるが、、それに比例して多大な精神力を要するため乱用はできない。 <br />
(例)鳥や天狗などの妖怪を斬ると使用者に翼を生やして飛ぶことができるようになる、ろくろ首などを斬ると刀身を曲げ伸ばしできるようになる、等 <br />
暴食のカースの核と同化し、西蓮を取り込んだ妖怪を斬ったことで西蓮の魂が乗り移ることとなった。餓王丸自身の意思のようなものも西蓮には感じられるらしい。 <br /><br />
現在の性質:使用者に翼を生やす(天狗)、性質を『喰らう』と回復(大蛇)</dd>
<dt id="a692">692 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆3Y/5nAqmZM</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga sage]:2013/07/08(月) 18:28:46.28
ID:ujSw71iWo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">以上です <br />
相手を喰って強くなるってロマンですよね!</dd>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> </dd>
<dt id="a700"><span class="resnum">700</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆TAACIbOrYU</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/08(月) 21:50:31.20 <span class="id">ID:QMakPHAeo</span></span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
しばらくしたら投下します <br /><br />
前回は会話主体だったけど、今回ちょっと地の文ばっか</dd>
<dt id="a701"><span class="resnum">701</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆TAACIbOrYU</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/08(月) 21:57:20.26 <span class="id">ID:QMakPHAeo</span></span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
――『怠惰』のカースドヒューマン、双葉杏。 <br /><br />
――彼女は今、TVのニュースを眺めていた。 <br /><br />
――曰く。 <br /><br />
――『憤怒』のカースの大群が街一つ占拠。 <br /><br />
――通信の類が一切遮断され、 <br /><br />
――住民の安否は不明。 <br /><br />
――今のところ、 <br /><br />
――GDFに動きは無く、 <br /><br />
――アイドルヒーロー同盟もまったく手出しができない状況が続いており、 <br /><br />
――フリーのヒーローたちも手をこまねいている。 <br /><br />
――……らしい。 <br /><br />
――恐らく、 <br /><br />
――中は地獄絵図の様相を呈しているのだろう。</dd>
<dt id="a702">702 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆TAACIbOrYU</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/08(月) 21:58:08.29
ID:QMakPHAeo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
杏「流石にやりすぎなんじゃないかなー」 <br /><br />
――杏はこの惨事を引き起こした首謀者に心当たりがあった。 <br /><br />
――いや、心当たり、というと語弊があるかもしれない。 <br /><br />
――何となくそうなんじゃないか、程度の勘だが、 <br /><br />
――しかし同時に、そうに違いない、という謎の確信もある。 <br /><br />
――ずっと探していた相手でもあるからだろう。 <br /><br />
――見つかってホッとしたというよりは、 <br /><br />
――面倒なことになったなぁ、という思いの方が強かった。 <br /><br />
――今あそこで沸いているのは『憤怒』のカース。 <br /><br />
――そして最近我々の元を去った同居人、岡崎泰葉は、 <br /><br />
――『憤怒』のカースドヒューマン……。 <br /><br />
――偶然の一致……、では無いだろう。 <br /><br />
――杏には何故か当然の如くそう思えた。</dd>
<dt id="a703">703 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆TAACIbOrYU</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/08(月) 21:59:01.50
ID:QMakPHAeo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
――――泰葉の異変になら気づいていた。 <br /><br />
――彼女がここを去る前、 <br /><br />
――普段まき散らしている『憤怒』とは違う、 <br /><br />
――何か別の悩みを抱いていたようだ、と。 <br /><br />
――気づいて、しかし、放っておいた。 <br /><br />
――そもそも自分にどうにかできる問題でもあるまい、と。 <br /><br />
――介入するべき筋合いもないだろう、と。 <br /><br />
――何も言わない事が、今は正しいのだ、と。 <br /><br />
――その結果が、これだ。 <br /><br />
杏「泰葉……」</dd>
<dt id="a704">704 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆TAACIbOrYU</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/08(月) 21:59:31.74
ID:QMakPHAeo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
――意外にも、双葉杏は自分の周りにいる人の、 <br /><br />
――ちょっとした様子の変化や、感情の機微に聡い少女であった。 <br /><br />
――端的に言えば、 <br /><br />
――杏は『空気を読む』ことに長けていたのだ。 <br /><br />
――しかし、それこそが、 <br /><br />
――彼女が人間関係に煩わしさを感じる要因の一つでもあり、 <br /><br />
――自分以外の事柄に気を使うのが面倒だと考えている杏が、 <br /><br />
――極力他人と関わりを持たないよう、外に出たがらない理由でもあった。 <br /><br />
幸子「いいですか、輝子さん! この世で一番カワイイ女の子と言えば?」 <br /><br />
輝子「さ、幸子に、決まってる……」 <br /><br />
幸子「そう、当然ボクです! 流石良くわかってますね輝子さんは!」 <br /><br />
輝子「親友だからな……フヒ……」 <br /><br />
――様子が変だと言えば。 <br /><br />
――もう一人の同居人、 <br /><br />
――『傲慢』の輿水幸子だ。</dd>
<dt id="a705">705 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆TAACIbOrYU</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/08(月) 22:00:00.39
ID:QMakPHAeo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
――自身を一番可愛い存在だと信じて疑わず、 <br /><br />
――現に今日も、最近出来た友人の星輝子を招き、 <br /><br />
――滔々と自分の可愛さを吹聴してはいるが、 <br /><br />
――ある日を境に杏は、 <br /><br />
――その姿に以前ほどの絶対的な『傲慢』を感じなくなっていた。 <br /><br />
――傍目にはわからないほどの微妙な違い……。 <br /><br />
――それほど長い付き合いではないが、 <br /><br />
――一つ屋根の下で一緒に暮らしてきた仲だ、 <br /><br />
――だからこそわかる、 <br /><br />
――――正直に言えばわからない方がお互いの為だったと思っているが、 <br /><br />
    しかしわかってしまうのだからしょうがない――。 <br /><br />
――そんな小さな違和感。 <br /><br />
――別段、実害があるわけでもなさそうなので、 <br /><br />
――わざわざ触れないようにはしているが、 <br /><br />
――どこか……、 <br /><br />
――柔らかい雰囲気を纏うようになった。 <br /><br />
――我の強い幸子には、 <br /><br />
――今まで無かったものだ。</dd>
<dt id="a706">706 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆TAACIbOrYU</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/08(月) 22:00:29.44
ID:QMakPHAeo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
杏「ねぇ、これってさー……」 <br /><br />
幸子「まぁ、泰葉さんの仕業でしょうね」 <br /><br />
杏「やっぱそう思う?」 <br /><br />
幸子「カワイイボクは勘もいいんですよ!」 <br /><br />
輝子「流石幸子……だな」 <br /><br />
幸子「ふふーん! そうでしょう?」 <br /><br />
杏「……」 <br /><br />
――これも、 <br /><br />
――一種の『絆』なのだろうか。</dd>
<dt id="a707">707 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆TAACIbOrYU</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/08(月) 22:00:55.73
ID:QMakPHAeo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
――双葉杏、岡崎泰葉、輿水幸子。 <br /><br />
――この三人による奇妙な共同関係は、 <br /><br />
――ひとえに、異端同士が固まって行動することにメリットがあったからだが、 <br /><br />
――それ以上に、 <br /><br />
――各々の気まぐれで成り立っていたものだ。 <br /><br />
――自分以外はどうでもいい、幸子。 <br /><br />
――他人と関わりたくない、杏。 <br /><br />
――強い目的意識を持っていた、泰葉。 <br /><br />
――改めて、 <br /><br />
――どういうきっかけで出会ったのだったか……、 <br /><br />
――と、疑問に感じるメンバーだ。 <br /><br />
――実際、同棲を始めてみると、 <br /><br />
――協調性の無い者同士なので、 <br /><br />
――色々と――主に泰葉が――苦労したが、 <br /><br />
――泰葉の『憤怒』に他の二人が動じることは無かったし、 <br /><br />
――幸子の『傲慢』を他の二人は受け流せたし、 <br /><br />
――杏の『怠惰』によって被る迷惑も他の二人には許容できたため、 <br /><br />
――衝突などはさほど起こらず、 <br /><br />
――案外上手くやっていたように思う。</dd>
<dt id="a708">708 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆TAACIbOrYU</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/08(月) 22:01:24.62
ID:QMakPHAeo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
――そんな生活がしばらく続き、 <br /><br />
――若干、歪な日常を共有しながら、 <br /><br />
――下らない世間話に話を咲かせてみたり、 <br /><br />
――有事の際には、 <br /><br />
――お互いにそこそこ助けあったりしてるうち、 <br /><br />
――知らず知らず三人の間に『絆』が芽生えていたとしても、 <br /><br />
――それはなんら不思議な事ではない。 <br /><br />
――そして今、 <br /><br />
――その『絆』が、 <br /><br />
――杏と幸子に、 <br /><br />
――あそこに泰葉がいるのだ、 <br /><br />
――と、教えてくれているようであった。</dd>
<dt id="a709">709 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆TAACIbOrYU</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/08(月) 22:02:01.38
ID:QMakPHAeo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
杏「どうする? 幸子」 <br /><br />
幸子「……」 <br /><br />
――幸子は答えない。 <br /><br />
――それもそうか、と杏は思案する。 <br /><br />
――突然いなくなったと思ったら、 <br /><br />
――街一つ占拠して大暴れ、だ。 <br /><br />
――そんな彼女を、 <br /><br />
――我々は一体どうしたいのだろうか? <br /><br />
――そもそも何故、泰葉はあのような事をしているのか。 <br /><br />
――その理由を推し量ることすら、できない。 <br /><br />
――ここからいなくなる前、 <br /><br />
――その頃からこの大事件を計画していたのだろうか? <br /><br />
――泰葉に、 <br /><br />
――我々の『友人』に、 <br /><br />
――あの時何があったのだろう?</dd>
<dt id="a710">710 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆TAACIbOrYU</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/08(月) 22:02:27.74
ID:QMakPHAeo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
――……いや、ひょっとすると、 <br /><br />
――こうなる兆候は、 <br /><br />
――もっと以前からあったのかもしれない。 <br /><br />
――『憤怒』のカースドヒューマンである泰葉が、 <br /><br />
――何がしか苛立っている場面というのは見慣れたもので、 <br /><br />
――大抵、その苛立ちの原因を推測することは杏にとって容易であったが、 <br /><br />
――時々、 <br /><br />
――原因不明の『何か』に端を発して怒り狂うことがあり、 <br /><br />
――それはいつも唐突で、 <br /><br />
――彼女の機嫌を損ねる要素など何もない時に限って訪れていたように感じた。 <br /><br />
――ついぞそれが何だったのか杏にはわからなかったが、 <br /><br />
――何ぞ面倒な物を抱えているのだろうな、と <br /><br />
――当時は気の毒に思う程度であった。</dd>
<dt id="a711">711 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆TAACIbOrYU</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/08(月) 22:03:10.92
ID:QMakPHAeo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
――『もしや……、 <br /><br />
――あの『憤怒』の発作こそが、 <br /><br />
――どす黒い悪意で泰葉を蝕み、 <br /><br />
――今の彼女を付き動かしているのでは無いか』。 <br /><br />
――これは、 <br /><br />
――ただの杏の想像だ。 <br /><br />
――もっと、空想や妄想といった類のあやふやな考えだ。 <br /><br />
――思いつきと言ってもいい。 <br /><br />
――しかし、こと泰葉に関連する事柄について、 <br /><br />
――杏の思考は謎の確信を持っていた。</dd>
<dt id="a712">712 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆TAACIbOrYU</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/08(月) 22:03:50.47
ID:QMakPHAeo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">杏「杏はさ……」 <br /><br />
幸子「……はい」 <br /><br />
杏「杏は、泰葉を……」 <br /><br /><br />
杏「――手伝うよ」 <br /><br /><br />
幸子「そう、ですか……」 <br /><br />
杏「うん」 <br /><br />
輝子「……? …?」 <br /><br />
――杏が出した答えは、 <br /><br /><br />
――――悪事をはたらく泰葉に加担する事、だった。</dd>
<dt id="a713">713 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆TAACIbOrYU</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/08(月) 22:04:17.62
ID:QMakPHAeo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
幸子「ボクは……」 <br /><br />
杏「うん」 <br /><br />
幸子「――行けません」 <br /><br />
杏「そっか……」 <br /><br />
幸子「ここで待ってます」 <br /><br />
――幸子が出した答えは、 <br /><br />
――三人の住む、この場所を守る事だった。 </dd>
<dt id="a714">714 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆TAACIbOrYU</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/08(月) 22:04:53.85
ID:QMakPHAeo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
輝子「さ、幸子? 幸子……?」 <br /><br />
幸子「輝子さんを置いて行けませんしね」 <br /><br />
――幸子は、話について行けず不安そうな表情を浮かべる輝子の……、 <br /><br />
――背の高さの同じ、一つ年上の少女の、 <br /><br />
――頭を撫でながら、そう言った。 <br /><br />
幸子「カワイイボクがいなくなったら、輝子さんが生きていけませんからね!」 <br /><br />
輝子「フヒ……」 <br /><br />
――自分が居なければ、と『傲慢』な台詞を吐く幸子だが、 <br /><br />
――しかし、その表情は柔らかく、 <br /><br />
――どこか母親のような優しさがあり、 <br /><br />
――やはり、以前までの彼女とは違うな、と杏は思った。</dd>
<dt id="a715">715 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆TAACIbOrYU</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/08(月) 22:05:25.56
ID:QMakPHAeo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
幸子「でもあそこまで行くんですよね?」 <br /><br />
杏「そりゃあね」 <br /><br />
幸子「わざわざ? 歩いて?」 <br /><br />
杏「そうなるかな」 <br /><br />
幸子「カースの雨でも降るんじゃ無いですか?」 <br /><br />
幸子「あ、もうあの街には降ってるんでしたね!」 <br /><br />
杏「……」 <br /><br />
――ドヤ顔で上手いこと言ったつもりになっている幸子はともかく、 <br /><br />
――実際、杏にとってこの決定は、 <br /><br />
――一世一代の気の迷い、と言えた。</dd>
<dt id="a716">716 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆TAACIbOrYU</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/08(月) 22:05:55.19
ID:QMakPHAeo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
――あの双葉杏が、 <br /><br />
――面倒くさがりな杏が、 <br /><br />
――極力外に出たがらない杏が、 <br /><br />
――他人と関わりたくない杏が、 <br /><br />
――可能ならば一日中寝ている杏が、 <br /><br />
――楽だけして生きていたい杏が、 <br /><br />
――『怠惰』を貪る杏が、 <br /><br />
――わざわざ遠出をして、 <br /><br />
――面倒くさそうなイベントに参加しに行こうとしているのだ。 <br /><br /><br />
杏「だって、友達だからね」</dd>
<dt id="a717">717 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆TAACIbOrYU</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/08(月) 22:06:23.07
ID:QMakPHAeo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
――善悪の判別などどうでもいい、 <br /><br />
――既に杏の身体は人のそれでは無いのだ。 <br /><br />
――彼女に宿るのはカース。 <br /><br />
――人の悪意より生まれ、 <br /><br />
――人の悪意を食らって育ち、 <br /><br />
――人に悪意を撒き散らす怪物だ。 <br /><br />
――そんな杏が何より望むことは、 <br /><br />
――安らかに暮らすことだが、 <br /><br />
――その次に大事なことが……、 <br /><br />
――――いや、もうその順序はひっくり返った。 <br /><br />
――今杏にとって一番大切なのは、 <br /><br />
――友達だ。</dd>
<dt id="a718">718 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆TAACIbOrYU</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/08(月) 22:06:52.05
ID:QMakPHAeo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
――杏が出した答えはひどくシンプルなものだ。 <br /><br />
――――友達を助けに行く。 <br /><br />
――例えその友達が、 <br /><br />
――人類に刃を向けていたとして、 <br /><br />
――そんなこと、 <br /><br />
――カースドヒューマンたる杏には、 <br /><br />
――瑣末なことなのだ。 <br /><br />
――杏は、憤怒の街へ趣き、 <br /><br />
――泰葉と共に、 <br /><br />
――悪意を持って、人に仇なす。 <br /><br />
――恐らくは、 <br /><br />
――杏の生まれて初めて出す、 <br /><br />
――本気だ。</dd>
<dt id="a719">719 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆TAACIbOrYU</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/08(月) 22:07:21.92
ID:QMakPHAeo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">――― <br />
―― <br />
― <br /><br />
幸子「行っちゃいましたね……」 <br /><br />
輝子「う、うん……」 <br /><br />
――今まで三人で暮らしていた部屋に、 <br /><br />
――ただ一人居残った幸子は、 <br /><br />
――率直に、 <br /><br />
――寂しさを覚えていた。 <br /><br />
――また、三人で暮らせる日が来るのだろうか? <br /><br />
――いや、輝子を含めれば、 <br /><br />
――四人か。</dd>
<dt id="a720">720 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆TAACIbOrYU</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/08(月) 22:07:53.82
ID:QMakPHAeo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
輝子「幸子、実は私この前友達が出来た……」 <br /><br />
幸子「へぇ、頑張ったんですね、エライエライ!」 <br /><br />
輝子「フヒ…、頑張った……」 <br /><br />
輝子「何か、似たような空気を感じたから……、ボッチの空気…フヒ」 <br /><br />
幸子「そ、そうなんですか」 <br /><br />
輝子「夜の公園で、会った」 <br /><br />
幸子「へぇ、なんて子なんですか?」 <br /><br />
輝子「あ、あのね」 <br /><br /><br />
輝子「―――小梅ちゃんって言うんだけど……」</dd>
<dt id="a721"><span class="resnum">721</span> :<span class="name" style="color:#008000;"><b>@設定</b> ◆TAACIbOrYU</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/08(月) 22:08:31.01
ID:QMakPHAeo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
・杏が憤怒の街へ向かいました。 <br /><br />
・幸子は残りました。 <br /><br />
・杏は泰葉に加勢するようです。 <br /><br />
・輝子が小梅ちゃんとお友達になっていたようです。</dd>
<dt id="a722"><span class="resnum">722</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆TAACIbOrYU</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/08(月) 22:09:05.64
ID:QMakPHAeo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">以上です <br />
先輩にも、仲間がいたっていいじゃない? <br />
みたいな発想で、ニートのはずの杏が重たい腰をあげました <br /><span style="color:#0000FF;">&gt;&gt;293</span>の言うとおり、引きこもりが外に出るのが流行ってるのかもね! <br />
あと思った以上に杏が熱い奴になってしまったけど、気にしない <br /><br />
幸子は置いてきた、ハッキリ言ってこの戦いにはついてこれそうもない <br />
というわけではなく、せっかく輝子とお友達になったんだし <br />
ついでだから小梅ちゃんとも接点を持たせて、142cm組で何かできそうなフラグをたててみたり</dd>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> </dd>
<dt id="a727">727 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/08(月) 22:54:01.39 <span class="id">ID:aDfWK28b0</span></span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
ニートが動き出したのに待機中の話投下 <br />
初めての一人称…ちょっと地の分シーン有りです</dd>
<dt id="a728"><span class="resnum">728</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY<span class="namenum">2</span>y<span class="namenum">1</span>UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage
saga]:2013/07/08(月) 22:54:31.03 <span class="id">ID:aDfWK28b0</span></span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
フランケンガールはロックな夢を見るか? <br /><br />
えっと…ロックな夢なら毎晩見てるよ?</dd>
<dt id="a729">729 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY<span class="namenum">2</span>y<span class="namenum">1</span>UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/08(月) 22:55:29.98 <span class="id">ID:aDfWK28b0</span></span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
ビリビリ、ビリビリ。 <br /><br />
夢の中でも電気は私の中にいる。私を動かす音。魂を生かす鼓動。 <br /><br />
充電終わったかな?じゃあ、そろそろ目を開けようか。 <br /><br />
―システム オールグリーン <br /><br />
目を開ければ朝の視界。今日の天気は曇りみたい。 <br /><br />
みんな朝ごはんを食べ終えて、片づけも終わってる。 <br /><br />
状況確認を終えて、コンセントを抜いて立ち上がる。 <br /><br />
「きらり、おはよう。」 <br /><br />
「おっはよー!」 <br /><br />
部屋にいたきらりが返事をしてくれた。うん、今日も私は動いている。</dd>
<dt id="a730">730 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/08(月) 22:56:11.16
ID:aDfWK28b0</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
私は一度死んでいて、宇宙人の技術でゾンビのように生き返ってしまった。 <br /><br />
血の代わりに妙な液体が体を流れ、心臓の代わりに機械が動いて。頭には邪魔なボルトが刺さっている。 <br /><br />
いらないと判断された機能は全部奪われた。右目に味覚に痛覚他にもいろいろと。 <br /><br />
もう私は人間じゃなくて怪物。ネバーディスペアなんて正義の味方でなければきっと受け入れられることのない存在。 <br /><br />
なつきちも奈緒もきらりも私を受け入れてくれる。死体の私を。 <br /><br />
だから私は惰性的に動き続けている。 <br /><br />
心臓と一緒に失くした感情を記憶から模倣しながら。 <br /><br />
ああいうときは笑って、こういう時は怒って。 <br /><br />
いつかもう一度来る死を恐れながら、死体の私は動き続けている。</dd>
<dt id="a731">731 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/08(月) 22:56:50.20
ID:aDfWK28b0</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
「ママママママママママママママママ~♪」 <br /><br />
たった一人、部屋でギターを奏でる。アンプのプラグはボルトのコンセントに刺している。 <br /><br />
そうするとギターと一体化している気がする。うんうん、これってロックだよね。 <br /><br />
皆が外に出ている間、基本的には留守番係。つぎはぎとかボルトとか隠しにくいから仕方ない。 <br /><br />
色々やって、その後はギターを弾く。それが一番の暇つぶし。 <br /><br />
ずっとやっているせいか昔より格段にレベルアップしている。なつきちもびっくりしてた。 <br /><br />
さあ次は違う曲。 <br /><br />
次、次、次… <br /><br />
「I love you because ふーがーふー…」 <br /><br />
ああ、またずれた。声帯の辺りを弄って元の位置に戻す。 <br /><br />
「あーあ…」 <br /><br />
…ここまでにしようか。そろそろ帰ってきそうだし。</dd>
<dt id="a732">732 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/08(月) 22:57:33.93
ID:aDfWK28b0</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
自室を出て階段を降りる。みんな買い物中だから家に一人きり。 <br /><br />
洗濯物はもう取り込んでおいたし、することも無い。 <br /><br /><br />
「待機命令って結構珍しいよね…」 <br /><br />
カースに飲まれた街。突入は困難で、自分たちは待機している。 <br /><br />
奈緒はイライラしてるし、きらりも落ち着きがない。 <br /><br />
なつきちは…どうなんだろう、表面上はいつも通り。 <br /><br />
どうやらあの街には機械の調子を狂わせる魔法的な何かがあるらしい。 <br /><br />
なつきちや私が行ったら完全に足を引っ張ることになる。 <br /><br />
そもそも私は最悪の場合、死体に戻ってしまう。 <br /><br />
待機命令も仕方ないのかもしれない。</dd>
<dt id="a733"><span class="resnum">733</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/08(月) 22:58:06.59
ID:aDfWK28b0</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
不意に、視界の端に閃光が走った。 <br /><br />
慌てて扉を開いて外に出る。 <br /><br />
再び雷のような閃光が走る。…ただの雷じゃない気がするんだけど…どうしよう。…ちょっと見に行くぐらいなら連絡なしで大丈夫かな? <br /><br />
まぁいっか、取りあえず見て来るだけ。 <br /><br />
地面を蹴って、閃光の方向へと走った。</dd>
<dt id="a734">734 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/08(月) 22:58:42.79
ID:aDfWK28b0</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
「ヨコセエエエエエエ!」 <br /><br />
「フハハ!化け物カラス!貴様が最後だ!」 <br /><br />
地面を蹴ってここらで一番高い場所…小さいマンションの屋上に立って様子を見る。 <br /><br />
…見たことないタイプのカースと魔術師の子が闘ってる。 <br /><br />
状況を見る限り、加勢しなくても大丈夫かな? <br /><br />
『合唱魔術の発動を宣言する!』 <br /><br />
あ、トドメみたい。 <br /><br />
『雨雲よ!大いなる我が力に従い、我が敵に怒りの鉄槌を下せ!サンダー!』 <br /><br />
光が一直線に雲に向かって走る。そしてその雲が雷を落とした。 <br /><br />
…なぜかこっちに。</dd>
<dt id="a735">735 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/08(月) 22:59:30.13
ID:aDfWK28b0</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
視界にモニターのようにシステムエラーの状況が映し出される。 <br /><br />
―非常事態 非常事態 <br />
―システムエラー 電圧・バッテリーに異常あり <br />
―起動を続けますか? <br /><br />
…続けるよ。死にたくないし。 <br /><br />
―OK システム続行 <br />
―冷却装置作動 脳に異常なし <br />
―しすtあqwせdrftgyふじjこ <br /><br />
―エラー!エラー!エラー!エラー! <br /><br />
…え?</dd>
<dt id="a736">736 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/08(月) 23:00:11.35
ID:aDfWK28b0</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
「ひ、昼子ちゃん!人に当たっちゃたったた!?」 <br /><br />
「おおおお落ち着け!回復魔術なら何とかかか!」 <br /><br />
「お二人とも落ち着いて…!」 <br /><br />
憤怒の街に突入できない苛立ちを街を襲うカースを倒すことで発散していた昼子と、魔術の特訓も兼ねていた蘭子。 <br /><br />
カースに放ったはずの魔術の雷がギターを背負った少女に直撃してしまったのだ。 <br /><br />
二人は完全にパニックになっていた。 <br /><br />
そしてその様子を見守っていたユズは何かに気付く。 <br /><br />
雷が直撃したはずの少女がムクリと起き上ったのだ。</dd>
<dt id="a737">737 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/08(月) 23:01:11.38
ID:aDfWK28b0</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
「ひゃひゃ、アハハ、くひゃひゃはは!」 <br /><br />
少女が発してはいけないような奇声にも似た笑い声をあげながら、頭の飾りのような何かを取り外す。 <br /><br />
それは頭と直接ワイヤーのような物で繋がっており、カウボーイのようにそれをカースに向かって投げつけた。 <br /><br />
見事に空中を旋回していたカースに引っかかると、ワイヤーは巻き取られ、大きくて重いはずのカースはみるみるうちに少女に引き寄せられる。 <br /><br />
「うひゃひゃひゃひゃ!みゃはははは!」 <br /><br />
ある程度近くまで来ると少女は屋上を蹴ってカースの上に飛び乗った。 <br /><br />
「クレエエエエエエエエエエエエ!」 <br /><br />
「あは、あはははははははははは!」 <br /><br />
何とか少女を落とそうとカースが空中で暴れているが、そのドロドロした体故になかなか引き離せない。 <br /><br />
何かが爆発したように狂った笑い声を上げる少女に、3人は完全に引いていた。 <br /><br />
少女は笑いながら目玉のような核のある頭に登ると、背負っていたギターを振り上げて叫んだ。 <br /><br />
「ロックンロールイズデーッド!!!」</dd>
<dt id="a738">738 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/08(月) 23:02:07.63
ID:aDfWK28b0</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
…はっとして目を覚ます。えっとえっと… <br /><br />
そうだ、雷が直撃してなんか調子が悪くなっていたんだった。 <br /><br />
屋上から辺りを見渡して…もう大丈夫っぽいかな?あの子が倒したみたい。よかったよかった。 <br /><br />
自分の体も特に問題はないみたい。もともと放電してるからか、電気系の攻撃には耐性あったはずなんだけどなぁ…まさか意識を失うとは… <br /><br />
取りあえず帰ろう。鍵もかけずに外に出た事、ばれたら大変だもんね。急ごう。</dd>
<dt id="a739"><span class="resnum">739</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/08(月) 23:02:37.07
ID:aDfWK28b0</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">李衣菜のギター <br />
怪力の彼女用にLPが発注してくれたギター。 <br />
鈍器にしても何の問題もない程、重くて頑丈。電撃耐性付き。 <br /><br />
暴走李衣菜 <br />
異常な量の電撃を受けて脳の感情制御装置が一時的に壊れ、ネジがぶっ飛んだ状態。 <br />
奇声を発しながらロックな感じになる。</dd>
<dt id="a740">740 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆zvY2y1UzWw</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/08(月) 23:03:17.43
ID:aDfWK28b0</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">以上です <br />
今回のテーマ・クールな李衣菜 <br />
※この作品の李衣菜の内面はクールです。外面は作り物です <br /><br />
とあるゲームに電撃で攻撃するとショートして暴れ出す敵キャラがいてだな… <br /><br />
取りあえず待機中の描写をしておきたかった。 <br />
街から溢れたカースの迎撃に関しては、これから指令が入る感じの時間軸となっています。</dd>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> </dd>
<dt id="a749"><span class="resnum">749</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/09(火) 00:32:07.61
ID:yWVE2ceNo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
死亡フラグ立てっぱなしのちゃまと <br />
傾きっぱなしの財閥の方針大きく変える話 <br />
投下します</dd>
<dt id="a750"><span class="resnum">750</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆<span class="namenum">6</span>osdZ<span class="namenum">663</span>So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage
saga]:2013/07/09(火) 00:33:17.68 <span class="id">ID:yWVE2ceNo</span></span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
桃華「まったく面白くありませんわ。」 <br /><br /><br />
今日も今日とてお嬢様の我が侭がはじまる。 <br /><br /><br />
桃華「私がちょっと散歩に出てる間に、なんなんですの、あの街は」 <br /><br />
桃華「”憤怒の街”なんて呼ばれてるそうですわね。」 <br /><br />
桃華「十中八九、悪魔の仕業でしょうけれど」 <br /><br />
桃華「憤怒の大罪を司る、あのしみったれは魔界から出てこないでしょうに」 <br /><br /><br />
彼女に小言が多いのはいつものこと <br /><br /><br />
桃華「いずれにしても櫻井財閥が失墜してる間に、」 <br /><br />
桃華「他の悪魔の勢力が盛んに動き始めて・・・・・・。」 <br /><br />
桃華「その上、破壊活動を行ってるだなんてありえませんわ!」 <br /><br />
桃華「世界はいずれわたくしのもの!わたくしの世界を、わたくしの目の届いてない所で」 <br /><br />
桃華「勝手に壊すなんて許せるはずがありませんのよ!」 <br /><br />
桃華「これだから『憤怒』と言うのは嫌いですわ!」 <br /><br /><br />
いつもと違うのは <br /><br /><br />
桃華「聞いてますの!紗南ちゃま!!」 <br /><br />
紗南「うん、聞いてる、聞いてるよ。」 <br /><br /><br />
聞き手となる相手だった。</dd>
<dt id="a751">751 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/09(火) 00:34:45.64
ID:yWVE2ceNo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
いつも聞き手となってるサクライPは現在、各地を飛び回ってるため忙しく、 <br /><br />
今回、かの『強欲』の悪魔は財閥が飼ってる能力者、三好紗南を侍らせていた。 <br /><br /><br />
紗南「て言うかさ」 <br /><br />
紗南「お嬢様の中の悪魔、なんで戻ってきてるのさ。」 <br /><br />
桃華「あら、ダメですの?」 <br /><br />
紗南「アレだけ盛大に死亡フラグと分離フラグ立ててたくせに。」 <br /><br />
桃華「あの時とは事情が変わりましたのよ。」 <br /><br />
桃華「わたくし、あの後はGDFにでも直接乗り込んで占拠しようとか思ってましたのよ。」 <br /><br />
桃華「ほら、封印された例の爆弾あるでしょう?」 <br /><br />
桃華「わたくしの能力ならアレの所有権を主張できますから」 <br /><br />
桃華「わたくしに逆らったらぶっ放しますわよ~、と、言った感じで世界を脅そう。」 <br /><br />
桃華「とか考えてたのですけれど。」 <br /><br />
紗南「うわぁ、今日ぶっちゃけるな、この人・・・・・・。」</dd>
<dt id="a752">752 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/09(火) 00:35:51.46
ID:yWVE2ceNo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
紗南「だいたい何のためにそんな。」 <br /><br />
桃華「財閥のため、わたくしの夢のため、ひいては櫻井桃華のためですわ。」 <br /><br />
桃華「わたくし、櫻井桃華とは一つ約束をしてますのよ。」 <br /><br />
紗南「あれ、お嬢様と悪魔は契約してたの?」 <br /><br />
桃華「してませんわよ。まどろっこしいだけですもの。」 <br /><br />
桃華「それとも契約ではない、約束を悪魔が守ったらいけませんの?」 <br /><br />
紗南「意外だなぁって。」 <br /><br />
桃華「まあ、人をジャイアニズムの塊みたいに言いますのね。」 <br /><br />
紗南「自覚あるんだ。」 <br /><br /><br />
桃華「わたくし、櫻井桃華のことは、すごく気に入ってますの。」 <br /><br />
桃華「熱心な願いの一つくらい叶えてあげたいではありませんの。」 <br /><br />
紗南「悪魔でもそんな風に考えたりするんだね。」</dd>
<dt id="a753">753 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/09(火) 00:37:26.50
ID:yWVE2ceNo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
桃華「『お父様との時間が欲しい』と言うのがわたくしの願いでしたけれど。」 <br /><br />
桃華「わたくしの判断ミスで、それが逆に困難になりましたのよ。」 <br /><br />
紗南「サクライさん、今もあっちこっち走り回ってるもんね。」 <br /><br />
桃華「その事には少し責任を感じてましたもの。」 <br /><br />
紗南「へえ、まあそれはいい話だけどさ。」 <br /><br />
紗南「それがどうしてGDF占拠に繋がるのかわからないんだけど。」 <br /><br />
桃華「GDFに拘っていたわけではありませんけれど、」 <br /><br />
桃華「わたくしは『人を惑わす悪魔』の存在を世界にアピールしたかったのですわ。」 <br /><br />
桃華「今の財閥を立て直すには信頼の回復が必要ですもの。」</dd>
<dt id="a754">754 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/09(火) 00:38:56.78
ID:yWVE2ceNo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
桃華「『実はサクライは悪魔に娘を人質に取られていて、』」 <br /><br />
桃華「『すべては娘の為に、悪魔に従ってやったことでした。』」 <br /><br />
桃華「『サクライは本当は悪い人では無かったんです。』」 <br /><br />
桃華「素敵なシナリオでしょう?」 <br /><br />
紗南「3行目以外事実じゃん。」 <br /><br />
桃華「世間は誰もそんな風には思ってませんわよ。」 <br /><br />
桃華「Pちゃまは悪人で、櫻井財閥はブラック企業だなんて思われてますわ。」 <br /><br />
紗南「その通りじゃん。」 <br /><br />
桃華「まあ、そんなPちゃまや財閥に対する悪評を、」 <br /><br />
桃華「操っていた悪魔にだけ向けさせるためのシナリオとして、GDF占拠ですわ。」 <br /><br />
桃華「実際に悪魔に一つの組織が支配される光景を見せれば、」 <br /><br />
桃華「人々は人を惑わす悪魔の存在を信じますでしょう?」 <br /><br />
桃華「似たような事があったのだと、財閥の罪も悪魔に擦り付けることができますわ。」 <br /><br />
桃華「そして最後に人類の守護者としてのサクライによって悪魔が討たれればハッピーエンドですのよ♪」 <br /><br />
紗南「えっ」 <br /><br />
桃華「なんですの?」 <br /><br />
紗南「それ、お嬢様の中の人死ぬじゃん。」 <br /><br />
桃華「一度くらいの死は、些末なことですわね。」 <br /><br />
紗南「悪魔って残機制なの?」 <br /><br />
桃華「それとは違いますけれど。かなり時間がかかって面倒で、手順を踏む必要はありますが、」 <br /><br />
桃華「再び地上に舞い戻るのも不可能ではないと言う事ですわ。」 <br /><br />
紗南「まあ、中の人の強欲さなら気合いで戻ってきそうだよね。」 <br /><br />
桃華「ウフ、重要なのは最後に、すべてがわたくしの物になる事ですのよ。」 <br /><br />
桃華「そのためにはここで櫻井財閥が零落れる訳には行きませんの。」</dd>
<dt id="a755">755 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/09(火) 00:40:06.92
ID:yWVE2ceNo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
紗南「・・・・・・そこまでの覚悟があって、なんで今更それやめてここに居るのさ?」 <br /><br />
桃華「決まってますわよ。わたくしが死なずに財閥の信頼を回復する目処があるからではありませんの。」 <br /><br />
桃華「今は、わざわざ、わたくしがやらなくても、人類の敵におあつらえ向きなのが居ますもの♪」 <br /><br />
紗南「・・・・・・まさかと思うけどさ。」 <br /><br /><br />
桃華「わたくし達と財閥も協力しますわよ。あの不快な街を落すのに。」 <br /><br /><br />
紗南「マジですか・・・・・・・。」 <br /><br />
桃華「結局は人を惑わす悪魔の存在を暴くのと、サクライの協力で人類の敵を討つことができればいいんですわよ。」 <br /><br />
桃華「あとは少しばかり話を整えて、世界に発信すれば表の世界の財閥の信頼は元通りですわ♪」 <br /><br />
桃華「まあ少々やっかいなのを敵に回しそうですけれど。」 <br /><br />
桃華「それはヒーロー達が倒してくれますわよね♪」</dd>
<dt id="a756">756 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/09(火) 00:41:22.11
ID:yWVE2ceNo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
紗南「いいの?悪魔に喧嘩売っちゃって、仲魔なんだよね?」 <br /><br />
桃華「わたくしたちに仲間とかありませんわよ。」 <br /><br />
桃華「都合がよければ仲間で、都合が悪ければ敵。わかりやすい繋がりですわ。」 <br /><br />
桃華「そして何より、あの手合いはわたくしの好みではありませんし。」 <br /><br />
桃華「わたくしにとって重要な拠点たる財閥の信頼回復に利用できるなら、せいぜい使わさせて貰うだけですのよ♪」 <br /><br /><br />
紗南「でも、どうするの?サクライさんは今忙しいみたいだし、」 <br /><br />
紗南「財閥の能力者もほとんど出払ってるし。」 <br /><br /><br />
桃華「紗南ちゃま、何を他人事みたいに言ってますの・・・・・・。」 <br /><br />
紗南「えっ。」 <br /><br />
桃華「紗南ちゃまは財閥の、ひいてはわたくしの犬でしょう?ほら、頑張りなさいな。」 <br /><br />
紗南「えぇぇえええっ!ちょっと待って!アタシ非戦闘員だし!!」 <br /><br />
紗南「あんなの相手したりするの絶対無理ゲーだって!」 <br /><br /><br />
指差す方向は憤怒のカースの群れ。 <br /><br />
彼女達はすぐ隣の街まで来ていた。</dd>
<dt id="a757">757 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/09(火) 00:42:33.43
ID:yWVE2ceNo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
桃華「誰も紗南ちゃまの戦闘力に期待してませんわよ。」 <br /><br />
桃華「ベルフェちゃまから引き継いだ情報獲得能力、頼りにしてますわよ。」 <br /><br />
紗南「このクエストはキャンセルできませんか・・・・・・。」 <br /><br />
桃華「ダメですわ♪」 <br /><br /><br />
桃華「大丈夫ですわよ、紗南ちゃまが前線に出向いても。」 <br /><br />
桃華「その場に居るヒーロー達が守ってくれますし、」 <br /><br />
桃華「わたくしも死神ちゃまや他の悪魔にバレない程度にサポートしてさしあげますから。」 <br /><br />
桃華「命を落すことはない・・・・・・とは言い切りませんけど、犬死することはありませんわ♪」 <br /><br />
紗南「結局死ぬかもしれないんじゃん!!」 <br /><br />
桃華「あら、じゃあ今ココで死にますの?せっかく仲良くなれましたのに、残念ですわ」 <br /><br />
紗南「・・・・・・くそぅ、命の所有権さえ握られて無ければなあ。」 <br /><br />
桃華「ウフ、面白い情報が手に入ったら連絡お願いしますわね。」 <br /><br />
紗南「鬼!悪魔!ちひろ!!」 <br /><br /><br />
かくして三好紗南は憤怒の町に向かうことになる。 <br /><br /><br />
桃華「さて、前に言ったことを撤回する様で悪いですけれど」 <br /><br />
桃華「わたくし一度手に入れた物を手放すのはやはり我慢できませんのよ。」 <br /><br />
桃華「櫻井桃華、また長い付き合いに・・・・・・いえ短いのかもしれませんけれど。」 <br /><br />
桃華「とにかく、わたくしの『強欲』な衝動に付き合ってもらいますわよ。」</dd>
<dt id="a758">758 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/09(火) 00:43:31.78
ID:yWVE2ceNo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">―― <br /><br />
桃華が紗南を送り出してから、 <br /><br />
しばらくするとトボトボと三好紗南が戻ってきた。 <br /><br /><br />
桃華「何かありましたの?」 <br /><br />
紗南「あの、街の中だとアタシのゲーム機使えないみたいなんだけど。」 <br /><br />
桃華「・・・・・・。」</dd>
<dt id="a759">759 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/09(火) 00:45:09.01
ID:yWVE2ceNo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">『情報獲得』 <br /><br />
三好紗南の目覚めた能力。 <br />
内容はベルフェゴールの情報獲得とほぼ一緒。 <br />
彼女が一度「見た」対象の情報全てを携帯ゲーム機に映し出すことができる。 <br />
「見た」対象が人物ならば、個人的プロフィールはもちろん、 <br />
その人物が今抱いている感情や、さらには現在地までも把握が可能。 <br /><br />
ただし、三好紗南は能力に目覚めたばかりであるため <br />
ベルフェゴールのそれより劣化しており、 <br />
あまり詳細なプロフィールまでは閲覧できず、情報阻害系のプロテクトも突破できない。 <br />
また無限に情報を収集できたベルフェゴールと違い、獲得した情報の保存には専用の保存領域を必要とする。 <br />
そのため莫大な情報量を全て保存しておくこともできない。 <br /><br />
この能力があるため、櫻井桃華は自分の正体を彼女に隠さず、 <br />
代わりに『命の所有権』と財閥の病院に居る両親を人質に、彼女を支配下に置いている。 <br /><br /><br />
『命の所有権』 <br /><br />
『強欲』の悪魔、マンモンの能力の一部。 <br />
一度支配下に置いた生命の息の根を好きなときに止めることができる。 <br />
ただしマンモンより弱い相手にしか通用しない。 <br /><br /><br />
『物の所有権』 <br /><br />
『強欲』の悪魔、マンモンの能力の一部。 <br />
一度支配下に置いた物体が、 <br />
「自身、あるいは自身に属する者」以外に支配されるのを防ぐプロテクト能力。 <br />
これを三好紗南のゲーム機に使用し、憤怒の街内部での動作を保障するものとした。</dd>
<dt id="a760"><span class="resnum">760</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆6osdZ663So</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage saga]:2013/07/09(火) 00:46:18.59
ID:yWVE2ceNo</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">おしまい <br />
死亡フラグ立てっぱなしで回収するタイミングも無いからちゃま復帰したの</dd>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> </dd>
<dt id="a769">769 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆I<span class="namenum">2</span>ss/<span class="namenum">4</span>dt<span class="namenum">7</span>o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/09(火) 01:41:21.21 <span class="id">ID:HIK7YqQ6O</span></span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
少し待機中の他二人のナチュルスターの様子を投下します</dd>
<dt id="a770">770 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆I2ss/4dt7o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/09(火) 01:41:59.63 ID:HIK7YqQ6O</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
村上組の屋敷の中庭。 <br /><br />
巴「うちはまだまだ力不足じゃのうっ!……」 <br /><br />
壁をおもいっきり殴りながら、悔しそうに唇を噛み締めていた。 <br /><br />
憤怒の街。今あの街には逃げ遅れた一般人がいて、助けを待っているのだ。 <br /><br />
もちろん。彼女は最初は行こうとしたが、テレビからの情報や感じる瘴気に、自分達が今行ったら間違いなく、やられてしまう。 <br /><br />
ミイラ取りがミイラになるのが目に見えていた。 <br /><br />
それでも行こうとするほたるを、乃々とイヴと一緒に説得して、なんとか止めたのだが…… <br /><br />
助けにいけない悔しさは、皆同じだった。</dd>
<dt id="a771">771 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆I2ss/4dt7o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/09(火) 01:43:30.57 ID:HIK7YqQ6O</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
イヴとの訓練を終え、巴はどうすれば街の中に入れるかを考えていた。 <br /><br />
自分達の力でカースを撃破する事をまず考えたが、湧いて出てくるカースを倒しても倒してもキリがない。 <br /><br />
空からでもほたるが二人を抱えればいけるが、砲弾への対抗手段がない。 <br /><br />
例え、行けたとしても瘴気でやられてしまう。 <br /><br />
まさに絶望的だ……</dd>
<dt id="a772"><span class="resnum">772</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆I2ss/4dt7o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/09(火) 01:44:13.65 ID:HIK7YqQ6O</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><span style="color:rgb(35,20,20);font-family:'MS PGothic', Arial, sans-serif, Osaka;font-size:medium;line-height:17.600000381469727px;background-color:rgb(239,239,239);">
巴「だけど、助けを求めるのを放っておけるほど、うちは諦めが良くないけんのう」 </span><br /><br />
今はただ機会を待つ。 <br />
突破口の糸口を…… <br /><br />
巴「村上巴の力……いや、うちらナチュルスターの底力見せたるけんのう」 <br /><br />
空を見上げながら、彼女は決意を新たにした。</dd>
<dt id="a773">773 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆I2ss/4dt7o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/09(火) 01:45:34.01 ID:HIK7YqQ6O</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">---- <br /><br />
一方、森久保乃々はナチュルマリンの姿で、ある練習をしていた。 <br /><br />
自分を包むように、母なる海の中にいるような優しい光を放ち、徐々に広げていった。 <br /><br />
だが、それは数秒で進行は止まり、消えて行った。 <br /><br />
乃々「やっ……やっぱり、むーりぃー……」 <br /><br />
イヴ「大丈夫ですよぉ~♪乃々ちゃんならできますぅ~♪」 <br /><br />
近くで、ナチュルスターがお世話になってるイヴ非日常相談事務所のイヴさんが微笑んでいた。</dd>
<dt id="a774">774 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆I2ss/4dt7o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/09(火) 01:48:05.58 ID:HIK7YqQ6O</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
今、彼女達が何をやっているかというと <br /><br />
ナチュルマリンの能力。海を司る力。 <br /><br />
それの一つの生命の源である海の癒しの力。 <br /><br />
それは本来、人々傷を癒す力のに使われる力。その時、発生される安らぎを使って憤怒の街に蔓延る瘴気を少しでも抑えられるのではないか? <br /><br />
だが、乃々の今の実力では街全体を海の癒しを覆わせる所か、人に数人に対してしか範囲は行き届かないし、何よりそれ以上範囲を広げれば広げるほど、力は弱く、数秒しかもたなくなるのだ。 <br /><br />
だから、こうしてイヴに付き合ってもらって特訓してるのだが……</dd>
<dt id="a775">775 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆I2ss/4dt7o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/09(火) 01:49:16.14 ID:HIK7YqQ6O</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
乃々「街一つなんて絶対、むーりぃー!……他の人達に任せたいんですけど……」 <br /><br />
自分じゃなくっても、こんな事できる人はいるはずだ。有名な歌姫の力でなんとかできるんじゃないか。 <br />
だから、自分が頑張らなくってもいいのではないか。 <br /><br />
そう乃々はいつも通りに弱気に思っていた。 <br /><br />
イヴ「じゃあ、諦めちゃいますかぁ?」 <br /><br />
なんだけど…… <br /><br />
こんな自分を手伝ってくれてるイヴ。 <br />
そして、憤怒の街の件で悔しがってる仲間二人の姿が頭によぎる。 <br /><br />
乃々「……もう少しだけ…頑張ってみます…」 <br /><br />
イヴ「はいっ♪」 <br /><br />
こうして、ネガティブな少女は特訓するのであった。</dd>
<dt id="a776">776 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆I2ss/4dt7o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/09(火) 01:52:01.73 ID:HIK7YqQ6O</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
果たして、それがどうなるか? <br /><br />
まだわからない。 <br /><br />
物語はただ…ただ進む。 <br /><br />
終わり</dd>
<dt id="a777">777 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆I2ss/4dt7o</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/09(火) 01:54:07.93 ID:HIK7YqQ6O</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">以上です <br /><br />
ただ、待ってるだけもあれだから使われるかどうかわからないけど、フラグをいれてみました。 <br /><br />
自分でも予測はできないですが……</dd>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> </dd>
<dt id="a782"><span class="resnum">782</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆lhyaSqoHV6</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage]:2013/07/09(火) 03:56:32.66 ID:w0ARctWro</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
昨今の情勢に全く関係しない小話投下します <br />
時系列としてはベルゼブブがそらと総司令を懲らしめる以前の話 <br /><br />
残念になっちゃった加蓮お借りします</dd>
<dt id="a783"><span class="resnum">783</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆lhyaSqoHV<span class="namenum">6</span></span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/09(火) 03:57:49.79
ID:w0ARctWro</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br />
元カースドヒューマンの少女──北条加蓮は、とある計画を実行に移そうとしていた。 <br />
そう、嫉妬の呪縛から解放されてからずっと温めていた、友達100人計画である。 <br /><br />
加蓮「友達を作ると言っても」 <br /><br />
加蓮「闇雲に探し回ったってそんな人見つからないだろうし」 <br /><br />
加蓮「やっぱりご近所付き合いからだよね!」 <br /><br />
エンヴィーとして過ごす以外の時間はアルバイトに割いていたため、寮の他の住民との交流は今まであまり無かったのだ。 <br /><br />
加蓮「お隣さんは……私と同年代らしいし……丁度いいかな」 <br /><br />
そう言うと、加蓮は意を決して隣の部屋のドアをノックするのだった。 <br /><br />
――――――――――――――――――――――――――――――――</dd>
<dt id="a784"><span class="resnum">784</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆lhyaSqoHV6</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/09(火) 03:58:39.83 ID:w0ARctWro</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br /><br />
   コンコン <br /><br /><br />
そら「!?」ビクッ <br /><br />
「ごめんくださーい!」 <br /><br />
そら「(来客? 何者だ……?)」 <br /><br />
そら「はいはーい!」 <br /><br /><br />
   ガチャッ <br /><br /><br />
「あ、こ、こんにちは……」オドオド <br /><br />
扉を開けると、目の前には自分と同じくらいの年の頃(あくまで肉体年齢の話だが)の地球人の少女が居た。 <br /><br />
そら「(この娘は……隣の部屋に住んでる地球人か)」 <br /><br />
そら「(たしか近所のサプライデポ──地球では"コンビニ"と呼ばれていたか……そこで働いていたはずだ)」 <br /><br />
目の前の少女について、かつて自身の近辺の地球人を調査した際の情報を脳内で検索する。 <br /><br />
そら「(北条加蓮──年齢は16、幼少期より病を患っており、数ヶ月前に両親によって死亡届書が出されている……)」 <br /><br />
そら「(しかし、その死亡が確認されるより前に、入院していた病院より失踪……以後消息不明)」 <br /><br />
地球人の公の機関の記録では、北条加蓮についての情報は概ねこのような内容だった。 <br />
しかし、秘密裏にアクセスした宇宙管理局のデータベースには、地球人には知られていない内容が記載されていた。 <br /><br />
そら「(入院先の病院において負の思念体と融合……嫉妬の化身エンヴィーを名乗り各地で暴れ回る)」 <br /><br />
そら「(最終的には宇宙管理局の特殊部隊と交戦し、負の思念体は浄化され、北条加蓮自身も負の感情から解放される……)」 <br /><br />
そらが調べ得る範囲で得られた情報はこれくらいだった。 <br />
問題は、なぜその北条加蓮が自分を訪ねてきたのかということだ。</dd>
<dt id="a785">785 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆lhyaSqoHV6</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/09(火) 03:59:23.99 ID:w0ARctWro</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br />
そら「えっと、北条加蓮さん……だったよね?」 <br /><br />
加蓮「っ!」 <br /><br />
加蓮「(この子、私の名前……知っていてくれたの?)」 <br /><br />
そら「なんのご用~?」 <br /><br />
加蓮「えっと……あの、その……」 <br /><br />
加蓮「今まで、お隣に住んでたのに、全然挨拶とかもしたことなかったから……」 <br /><br />
そら「(どういうことだ? 今更引っ越しの挨拶に来たとでもいうのか?)」 <br /><br />
そら「(以前こちらから出向いたときにはなしのつぶてだったが……)」 <br /><br />
そらの工作員としてのモットーは『郷に入っては郷に従え』である。 <br />
その土地に住んでいる存在になりきるための文化、風俗、習わしなどは一通り頭に入れてある。 <br />
今の活動拠点に入った時も、周囲の部屋を『そば』なる食物を片手に回ったのだが、その際に北条加蓮は部屋から出てこなかった。 <br /><br /><br />
加蓮「せっかく隣に住んでるんだし、歳も近そうだから……」 <br /><br />
加蓮「な、仲良く出来たら……良いなって思って……」 <br /><br />
そら「(なるほど……そういう事か)」 <br /><br />
地球人は他の個体と連れ立って行動するのを好む種族だと学んでいる。 <br />
生まれてこの方病院という閉鎖された環境で育ってきたこの娘にとって、同世代の友人というものに憧れがあるのだろう。 <br />
地球人の心情に共感することなどないが、理解することはできる。 <br /><br /><br />
そら「(……私くらいの年頃の地球人の娘がずっと部屋に篭っているというのも怪しいから)」 <br /><br />
そら「(この娘と友人関係になる事で、あるいはカムフラージュになるかもしれないな)」</dd>
<dt id="a786">786 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆lhyaSqoHV6</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/09(火) 04:00:16.07 ID:w0ARctWro</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br />
そら「そういうことなら、あたしも仲良くしたいなっ!」 <br /><br />
そら「友達はたくさんいた方が、はっぴーだもんねっ☆」 <br /><br />
加蓮「と……友達……?」 <br /><br />
そら「ちがうの?」 <br /><br />
加蓮「え……いや……その」 <br /><br />
加蓮「(出会って間もない私を、友達って……)」 <br /><br />
加蓮「(そっか……ただ見てるだけじゃなくて……こっちから歩み寄れば)」 <br /><br />
加蓮「(こんなに簡単だったんだ……!)」 <br /><br /><br />
加蓮「わ、私も、友達になれたらいいなって……!」 <br /><br />
そら「じゃあ、あたし達これから友達ねっ!」 <br /><br />
加蓮「う、うん! えっと……」 <br /><br />
そら「あ、あたしは野々村そらね! そらって呼んで☆」 <br /><br />
加蓮「うん! よろしくね! そら!」 <br /><br /><br />
そら「(これでいい……あとは……そうだな)」 <br /><br />
そら「それじゃ、お近づきのしるしに、どっかお出かけしよっか☆」 <br /><br />
そら「加蓮は今日はひまなのかな?」 <br /><br />
加蓮「お出かけ……? うん! 私も暇だよ!」 <br /><br />
そら「それじゃ決まりねっ! どこ行こうか?」 <br /><br />
加蓮「あ、私行ってみたいところがあるんだ!」 <br /><br />
そら「そう? じゃあお任せする☆」</dd>
<dt id="a787">787 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆lhyaSqoHV6</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/09(火) 04:02:37.77 ID:w0ARctWro</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br /><br /><br />
そらが加蓮に連れられるがままに訪れた場所は、全国チェーンの某有名ファーストフード店だった。 <br />
二人は思い思いの注文をして、商品を受け取り店内の席に着く。 <br /><br />
そら「(なんだこの食物は……栄養価は偏っているし、摂取しにくいし……)」 <br /><br />
そら「(こんなものを好んで食べる地球人……やはり理解できない)」チラッ <br /><br />
加蓮「~♪」モグモグ <br /><br />
味なんてわかりはしないのだが、目の前の少女は実に良い表情でこの"ハンバーガー"とやらを食べている。 <br />
となれば、自分も地球人になりきる身として、同じ反応をしないわけにはいかない。 <br /><br /><br />
そら「おいしいねっ☆」ニコッ <br /><br />
加蓮「うん!」 <br /><br />
そら「加蓮は、はんばーがー好きなの?」 <br /><br />
加蓮「んー……好きっていうか」ウーン <br /><br /><br />
加蓮「私ね、小さい頃から今まで、ほとんど病院に居たんだ」 <br /><br />
加蓮「だから、いわゆるジャンクフードっていうの? こういうの食べたこと無かったの」 <br /><br />
そら「……」 <br /><br />
加蓮「……いろいろあって、元気になって病院から出られたから」 <br /><br />
加蓮「今まで出来なかったこと、いろいろやってみたいんだ!」 <br /><br />
そら「そっか……」 <br /><br /><br />
そら「それじゃ、今まで出来なかった分、これからはたくさんはっぴーを集めないとねっ!」 <br /><br />
加蓮「ハッピー?」 <br /><br />
そら「うん! 友達がはっぴーになれば、あたしもはっぴーだから☆」 <br /><br />
加蓮「……そうだね! もっともっと幸せになってやるんだから!」 <br /><br />
そら「うんうん、あなたもはっぴーあたしもはっぴーでみんなはっぴーだよ☆」 <br /><br />
加蓮「(みんなハッピー、か……)」 <br /><br />
加蓮「……ありがとね、そら」</dd>
<dt id="a788">788 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆lhyaSqoHV6</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/09(火) 04:04:50.05 ID:w0ARctWro</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br />
―――――――――――――――――――――――――――――――― <br /><br /><br />
寮の戻り、そらと別れた加蓮は、自室で今日の出来事を振り返っていた。 <br /><br />
加蓮「……友達……か」 <br /><br />
加蓮「そら……元気があるし……とっても良い子だったなぁ」 <br /><br />
ファーストフード店を出てから、友達になった記念に二人で撮ったゲームセンターの写真プリント機のシールを眺めながら呟く。 <br /><br />
加蓮「……今まで、酷い事たくさんしてきちゃったけど」 <br /><br />
加蓮「これからは私も……周りの人達を幸せにできたらいいな」 <br /><br />
カースドヒューマンとして数々の暴挙を働いてきた事を無かったことには出来ないし、するつもりもなかった。 <br />
だが、いつまでも過ぎたことを悔やんでも仕方がない。 <br />
負の感情に囚われるのはもうやめたのだ。 <br /><br />
加蓮「よし! そうと決まれば、明日から頑張ろう!」 <br /><br />
加蓮「時間は、一杯あるんだしね!」 <br /><br /><br />
せっかく繋がった命だから、今後はそれを自分と周りの人の為に使おうと、加蓮は決意を新たにするのだった。</dd>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"> </dd>
<dt id="a789"><span class="resnum">789</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆lhyaSqoHV6</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage]:2013/07/09(火) 04:07:51.19 ID:w0ARctWro</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">
友達が増えたよ! やったね加蓮ちゃん! <br /><br />
オマケで総司令辞職までの補完的なのを… <br />
アイドル出てこないので誰得ですが</dd>
<dt id="a790"><span class="resnum">790</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆lhyaSqoHV6</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/09(火) 04:17:32.48 ID:w0ARctWro</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br />
カースの大量発生から数日後、GDF本部の司令の下に件の総司令からの通信が入った。 <br /><br />
司令「今回はどのような要件で?」 <br /><br />
総司『カースの発生源が判明した』 <br /><br />
司令「!?」 <br /><br />
総司令が突然とんでもない事を言い出すので、司令は思わず狼狽える。 <br /><br /><br />
司令「ほ、本当ですか!?」 <br /><br />
総司『ああ、俗に言う能力者と呼ばれる者達により生み出されるらしい』 <br /><br />
司令「なっ!?」 <br /><br />
総司『そこでお前には、日本にいる能力者の捕獲作戦の指揮を命じる』 <br /><br />
司令「その情報は……確かなのですか?」 <br /><br />
総司『先ほど、我々の"友人"から情報が入ってな』 <br /><br />
総司『彼らの技術で特定したらしい』 <br /><br />
司令「(友人……例の異星人連中か……)」 <br /><br />
どうやら、先の爆弾投下も、この異星人が唆したらしい。 <br />
司令の中では、どうにも胡散臭い連中という印象が出来上がっていた。 <br /><br /><br />
司令「しかし……真偽が定かでない情報のままに、捕らえるというわけにもいきません」 <br /><br />
総司『司令……この際、真実などどうでもよいのだ』 <br /><br />
司令「……!?」</dd>
<dt id="a791">791 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆lhyaSqoHV6</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/09(火) 04:19:24.06 ID:w0ARctWro</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br />
総司『先の作戦以降の、GDFに対する世論の反発は知っているな?』 <br /><br />
総司『我々の力でカースを殲滅してやったにも関わらず、民衆は不満があるらしい』 <br /><br />
司令「(不満が出るのも当然だ……)」 <br /><br />
司令「(あれだけの範囲を更地にしたんだ、帰る家や、職を失った人々は百万人を下らない……)」 <br /><br />
司令「(今回巻き込まれなかった人々も、他人事と傍観するわけにはいかないだろう)」 <br /><br />
総司『このままでは、我々の今後の活動に支障をきたすことは明らかだ』 <br /><br />
司令「……」 <br /><br />
日本国政府……ひいては国際連合の権力のもとで活動しているGDFであるが、 <br />
やはり一般大衆の意見を軽視することは出来ないのだ。 <br />
このままGDFに対する厭忌感が蔓延すれば、地球防衛どころではなくなってしまう。 <br /><br /><br />
総司『つまり、民衆にあてがってやればよいのだ』 <br /><br />
総司『我々に替わる、不満の捌け口をな』 <br /><br />
司令「……能力者を……身代わりに立てろと……そう仰るのですか」 <br /><br />
総司『……フッ』 <br /><br />
総司『誰もそんな事は言っておらんよ、ただ"カース発生の原因"である能力者共を捕らえろと』 <br /><br />
総司『そう命令しただけだ』 <br /><br />
司令「(現代において……魔女狩りをしろと……そう言うのか)」 <br /><br />
司令「(こんなふざけた命令、なんとか撤回させなければ……)」</dd>
<dt id="a792">792 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆lhyaSqoHV6</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/09(火) 04:20:34.87 ID:w0ARctWro</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br />
司令「しかし、実際に能力者を捕らえるといっても、問題は多いです」 <br /><br />
司令「まず、能力者はかなりの人数に上ります」 <br /><br />
司令「その数は、私の担当する第一地区でさえ把握しきれていません」 <br /><br />
総司『現在判明している者らだけでよい、その他は、正体が割れ次第捕獲ということになるな』 <br /><br /><br />
司令「それに、アイドルヒーロー同盟が黙ってはいないでしょう」 <br /><br />
司令「彼らの戦闘力はかなりのものです、抵抗されれば、こちらもそれなりの損害を出すでしょう」 <br /><br />
総司『地球の危機を金に換える悪党共か……』 <br /><br />
総司『義を持たぬ輩など恐れるに足りんよ』 <br /><br />
総司『世論が反能力者に向けば、連中の力も弱まるだろうしな』 <br /><br />
司令「……」 <br /><br /><br />
司令「一番の問題は……能力者の協力無しでは地球は守れないということです」 <br /><br />
司令「現状のGDFの戦力だけでは……能力者を捕らえてカースの発生を防げたとしても」 <br /><br />
司令「宇宙犯罪者をはじめとする異星人の勢力に対抗できないでしょう」 <br /><br />
総司『司令……上に立つものがそのような心構えでどうする』 <br /><br />
総司『真に地球を、人々の平和を守れるのは我らGDFだけなのだぞ?』 <br /><br />
司令「総司令がなんと仰られようと、この命令は承服できません」 <br /><br />
総司『では、黙ってカースの発生を見過ごせと、そう言いたいのか』</dd>
<dt id="a793"><span class="resnum">793</span> :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆lhyaSqoHV6</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/09(火) 04:27:17.90 ID:w0ARctWro</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br />
総司『……人類の歴史に、反逆者として名を残すことになるぞ?』 <br /><br />
司令「ッ!」 <br /><br />
司令「このままアンタに従っていたら、俺の名前が残る前に人類の歴史が終わってしまう!」 <br /><br />
総司『……』 <br /><br />
司令「(やってしまった……)」 <br /><br />
言ってから司令は後悔した。 <br />
溜まりに溜まった物が溢れつい熱くなってしまったが、命令違反どころか上官に暴言を吐いてしまったのだ。 <br /><br /><br />
総司『なるほど……お前の言い分はよく分かった』 <br /><br />
総司『今回の件の処遇は、追って沙汰する』 <br /><br />
総司『お前は有能な部下だったが……残念だが、仕方あるまいな』 <br /><br />
そう言うと総司令は、通信を切るのだった。 <br /><br />
司令「……クソッ!」 <br /><br />
司令は、ただ立ち尽くすほか無かった。</dd>
<dt id="a794">794 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆lhyaSqoHV6</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[saga]:2013/07/09(火) 04:28:49.49 ID:w0ARctWro</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;"><br />
──次の日── <br /><br />
司令「総司令が……辞職!?」 <br /><br />
GDF総司令部からの通信が入った時点で、軍法会議だのの召集だろうと覚悟してはいたが、その内容は驚くべきものだった。 <br />
極東方面軍総司令が、辞職をするといった内容の置手紙を残し姿を消したというのだ。 <br /><br />
司令「ど、どういうことですか!?」 <br /><br />
『彼が何を考えていたのかなど、我々の与り知らぬことだ』 <br /><br />
『むしろ、君の方がその辺の事情には詳しいのではないかね?』 <br /><br />
司令「……」 <br /><br />
『とは言っても、彼と君の間で交わされた会話の内容について、我々は追及する気はない』 <br /><br />
司令「(やはり……昨日のやり取りが原因か……? まったく、わからんな……)」 <br /><br /><br />
『いずれにせよ、極東方面軍総司令の突然の失踪に際し、代任が必要になった』 <br /><br />
『そこで、君に辞令を申し渡す』 <br /><br />
『失踪した前任者に替わり、極東方面軍総司令の任を与える』 <br /><br />
司令「!!」 <br /><br />
司令「じ、自分が……ですか?」 <br /><br />
『そうだ、今後も、より一層の健闘を期待している』 <br /><br />
『こちらからは以上だ』 <br /><br />
言いたいことだけ告げると、総司令部からの通信は途絶えてしまった。 <br />
毎度のことながら、一方的である。 <br /><br />
司令「(俺が……総司令か……)」 <br /><br />
司令「(だが、能力者を捕らえるという命令は撤回されたんだ……)」 <br /><br />
司令「(それは喜ぶべきことだろう)」 <br /><br />
司令「(問題は他にも山積みだが……やるしかない、か)」 <br /><br /><br />
前任者の強硬姿勢のお陰で、GDFに対する世間の風当たりは強くなる一方だ。 <br />
司令にとっては負の遺産を押し付けられたようなものだが、戸惑ってもいられない。 <br />
敵はいつ何時襲い掛かってくるかも分からないのだ。 <br />
対処するべきは相手は敵意を持った侵略者だけではなくなってしまったが、頑張れ皆のGDF!</dd>
<dt id="a795">795 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆lhyaSqoHV6</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage]:2013/07/09(火) 04:31:54.48 ID:w0ARctWro</span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">投下終わりです <br /><br />
ベルちゃんが懲らしめてなかったらもっと面倒臭いことになってたよって話でした <br />
そらは洗脳が解けたとはいえ、人間?としてまっさらな状態なので、加蓮がなんとかしてくれるのを期待…</dd>
<dt id="a800">800 :<span class="name" style="color:#008000;"> ◆lhyaSqoHV6</span> <span class="info" style="font-size:14px;">[sage]:2013/07/09(火) 12:49:12.16 <span class="id">ID:3CZ5FuQnO</span></span></dt>
<dd style="margin-bottom:18px;margin-top:5px;line-height:17.5px;">言い忘れてた <br />
カース発生の原因が能力者ってのは、 <br />
そらが人類仲違いさせるために適当ぶっこいただけなので気にしないでください <br /><br />
人類側は人間そっくりのユズに扮したルシファーがカース操ってるとこ見てるし、 <br />
それなりに信憑性はあったと思うけども</dd>
</dl><h4><a href="http://www57.atwiki.jp/mobamasshare/pages/372.html">その5へ</a></h4>