359:NIPPERがお送りします:2012/06/15(金)
01:29:34.77 ID:hpeqfj4Jo
―――街 宿屋 寝室
エルフ「完成。できたよ」
僧侶「このブレスレットが魔力を封じる……」
エルフ「そう。名づけて魔封じの腕輪」
魔法使い「そのまんまね」
エルフ「うるさい。道具の名称なんて分かりやすいほうがいいに決まっているからね」
魔法使い「そういう魔法の道具を精製するのもエルフの専売特許なの?」
エルフ「魔法に関する全てのモノはエルフ族発祥。厳密に言えば、魔族発祥だけど」
魔法使い「ふーん。じゃあ、店で普通に並んでいる魔法の杖とかもそうなのね」
エルフ「多分、そういうのはレプリカじゃないかな」
僧侶「これ、可愛いですね。ありがとうございます」
エルフ「ふん……」
魔法使い「ねえ……?」
エルフ「なに?」
魔法使い「どうしてついてきたの?アナタなら無理についてこなくても……」
360:NIPPERがお送りします:2012/06/15(金)
01:38:40.87 ID:hpeqfj4Jo
エルフ「脅されたの聞いてたでしょ?」
魔法使い「ええ……でも……」
エルフ「……」
魔法使い「あんな最低な人間に従うぐらいなら、死んだほうがマシとか考えなかったの?」
エルフ「それは……」
僧侶「あの!勇者様に対して失礼ですよ!」
魔法使い「そりゃ、トロルと戦ったときは結構かっこいいとかも思ったわよ?でも、最近のアイツは度が過ぎているというか、調子に乗っているというか」
僧侶「ちゃんと勇者様なりに考えているはずです」
エルフ「ボクもそれは思う」
魔法使い「え?」
エルフ「彼、色々隠してる気がする」
僧侶「隠してる?」
エルフ「側室とか結婚とか色々言ってるけど……実際のところ―――」
勇者「ただいま戻りました!!!」
僧侶「お、おかえりなさいませ!」
361:NIPPERがお送りします:2012/06/15(金)
01:44:15.67 ID:hpeqfj4Jo
勇者「猥談の最中でしたか?!」
魔法使い「違うわよ!!!」
勇者「毛の処理法を言い合ってるものと思って、こうしてノックなしに突撃したのに……」
エルフ「……馬鹿なの?」
勇者「え?毛が無いのですが?」
エルフ「どこ見ていってるの!?」バッ
魔法使い(本当に色々考えてるの……こいつ……?)
僧侶「勇者様、それで組織のことは……?」
勇者「しっぽは掴めました。今から行きましょう」
魔法使い「嘘!?もう!?」
僧侶「私たち、1日かけても何の手がかりも得られなかったのに……」
勇者「酒場で強面の男性中心に色々聞きましたからね。すごく怖かったですよ」
エルフ「なんて言って近づいたの?」
勇者「いい女がいるんだけど、いくらで買う?って言いました」
魔法使い「ばっ?!」
362:NIPPERがお送りします:2012/06/15(金)
01:51:50.49 ID:hpeqfj4Jo
エルフ「それだと貴方が人身売買をしている商人になるんじゃないの?」
勇者「ええ。それでいいんです」
僧侶「どういうことですか?」
勇者「見たこともない同業者が己の縄張りを荒らすと、黙っていられない人たちっているんですよ。裏社会には特に」
魔法使い「同業者の振りをしておびき出したってわけ?」
勇者「はい。数十分で怖そうな人たちが僕に近づいてきました」
僧侶「何か乱暴をされたのでは?!」
勇者「いえいえ。こちらにはエルフがいると言ったら、目の色を変えて僕の話を聞いてくれましたよ」
エルフ「ボクのこと!?」
勇者「偶然、森でエルフと出会い、恋人関係になった。でも、もう別れたい。別れるなら、金にしたい。そう説明しました」
エルフ「ぬあぁぁぁぁぁ!!!!!!どうして!!なんで!!!そんなことが平気で言えるのぉ!!!」
勇者「待ってください。将来の側室候補を渡すわけないでしょう。全ては組織の人間を釣るためのエサに過ぎません」
僧侶「では……これから、その組織の人間と接触して……」
勇者「組織を潰しましょう」
魔法使い「で、できるの……そんなこと……?」
363:NIPPERがお送りします:2012/06/15(金)
02:04:23.04 ID:hpeqfj4Jo
勇者「待ち合わせ場所は町外れに倉庫でとのことでした」
エルフ「ボクは行かないから」
勇者「え?」
エルフ「人間同士の問題にまで首を突っ込むことはしたくない」
勇者「はい。むしろ僕から貴女にはお留守番をお願いしようと思っていました」
エルフ「……はい?」
魔法使い「エルフ族を連れていくって考えじゃなかったの?」
勇者「不測の事態も考えられますからね。もし本当に連れ去られたら大問題ですよ」
エルフ「ふーん……」
勇者「しかしながら、エルフ族の売買もやはり行われているようですので、貴女にとっても無関係とは言えないでしょう」
エルフ「うっ……」
勇者「仲間意識が強いエルフ族が同胞を見捨てるような真似……できませんよね?」
エルフ「……貴方は本当に卑怯だ」
勇者「じゃあ、協力してくれますね?」
エルフ「わかった……する。ボクだって、同胞を助けたいし……」
369:NIPPERがお送りします:2012/06/15(金)
23:18:56.54 ID:hpeqfj4Jo
エルフ「それで?ボクは本当に留守番をしていればいいの?」
勇者「はい。ここで大人しくしていてください」
エルフ「不安なんだけど……」
勇者「では、その不安を打ち消すために……口付けを……」
エルフ「へえ……」
魔法使い「ふぅん……」
勇者「冗談ですから……あの……殺さないで……」
僧侶「や、やめてください!!」
魔法使い「何か作戦があるんでしょうね?」
勇者「勿論です」キリッ
エルフ「作戦って……」
勇者「聞きましたよ?貴女もアレ、できるんでしょう?」
エルフ「あれ?」
勇者「対象域の不可視化」
エルフ「で、できるけど……精々、人一人を隠す程度だよ?」
370:NIPPERがお送りします:2012/06/15(金)
23:26:05.46 ID:hpeqfj4Jo
―――街外れ 倉庫
勇者「そろそろ待ち合わせの時間ですね」
僧侶「あの……勇者様?」
勇者「はい?」
僧侶「大丈夫なのですか?」
勇者「信用できませんか?」
僧侶「い、いえ!!滅相もありません!!」
勇者「変だと思いませんか?」
僧侶「なにがですか?」
勇者「人が人を拉致するのは分かります。ですが、エルフを拉致することなんてできるでしょうか?」
僧侶「長老さんの話では不可視域から出てて狩りをしているエルフがよく攫われるということでしたけど」
勇者「魔法を使える。狩りの最中なので武器も所持していたでしょう。そんなエルフが簡単に拉致できるでしょうか」
僧侶「いくらエルフとはいえ数十人で囲めば……」
勇者「そんな大人数で行動していれば、いくらなんでも気づくはずです」
僧侶「そ、それもそうですね……」
371:NIPPERがお送りします:2012/06/15(金)
23:30:02.89 ID:hpeqfj4Jo
勇者「僕の考えが正しければ……」
僧侶「正しければ?」
勇者「この組織の裏には―――」
盗賊「よう。本当に来たんだな?」
勇者「む?」
僧侶「……」
盗賊「へへ。まあ、来なかったら直接、宿に乗り込むつもりだったけどな」
勇者「そうですか」
「……」
「あいつの隣にいるのがエルフか?」
「へぇ……美人だな。売れそうだ」
勇者(相手は10人……)
僧侶「勇者様……」ギュッ
盗賊「さあ、そのエルフを渡してもらおうか?」
勇者「金が先だろ」
372:NIPPERがお送りします:2012/06/15(金)
23:35:54.85 ID:hpeqfj4Jo
盗賊「分かってないみたいだなぁ?」
勇者「なに?」
盗賊「てめえに口答えする権利なんてねえんだよ。さっさと渡せ」
勇者「金が無いなら、この子は渡せないな」
盗賊「ふざけんなよ……」
勇者「ふざけてるのはお前らだろう」
盗賊「けっ。この人数相手に何ができるっていうんだよ?」
勇者「ドラゴンを相手にするよりは楽勝だな」
盗賊「てめぇ……!!」
「調子に乗ってると……痛い目みるぜぇ?」
「へへへ……」
勇者「金がないなら破談だ。僕は帰らせてもらおう」
盗賊「渡せないのはそっちも同じだろうが」
勇者「なに?」
盗賊「どうせその女はエルフじゃないんだろう?それぐらい分かってんだよ!!」
373:NIPPERがお送りします:2012/06/15(金)
23:44:41.90 ID:hpeqfj4Jo
僧侶「ひっ……」
「マジかよ」
「流石はリーダー!!」
盗賊「てめえらも少しは頭を使えよ。エルフを連れているなんて下調べしないと信じられないからなぁ」
勇者「どういう意味だ」
盗賊「別のグループがてめえの泊まっている宿に向かっている」
僧侶「そんな……!!」
勇者「やっぱり、後をつけられていたか」
盗賊「エルフなんて普通じゃ絶対に手に入らない。ハッタリの可能性は大。仮に本当でもこんな場所に正直に持ってはこない」
盗賊「ちゃんと金を得るまで隠しとくもんだろ?」
勇者「馬鹿正直に連れてきていても強奪しただろうに」
盗賊「当たり前だ。カモがネギと調味料を一緒に持ってきてくれたんだからな。まあ、素直に引き渡せば骨折ぐらいで許してやるよ」
僧侶「あ、貴方たちは人ではありません!!」
盗賊「うるせぇ!!!!てめえも!!宿にいる女もちゃんと売買にかけてやるよ!!」
勇者「屑だな、お前ら」
374:NIPPERがお送りします:2012/06/15(金)
23:51:47.87 ID:hpeqfj4Jo
盗賊「はぁ?お前も同業だろうが!!」
勇者「女性を力尽くで奪い、しかも商売の道具にしているお前らを屑と呼ばずになんていえばいい?」
「リーダー、早く黙らせようぜ」
盗賊「そうだな」
勇者「いいか?奪っていいのはなぁ……心だけだぁ!!!」
僧侶「勇者様……」
勇者「女性の心も奪えないお前らは男としては底辺だな!!」
盗賊「黙れ……てめえ!!!何様だ!!こらぁ!!!」
勇者「勇者様だよ!!!」
盗賊「勇者……!?」
「リーダー!!もしかして!!」
盗賊「ちっ……」
勇者「お前らのボスは誰だ!!言え!!」
盗賊「相手は一人だ!!やっちまえ!!!」
勇者「あぁ!?やっちまうぞ!!!こらぁぁ!!!」
375:NIPPERがお送りします:2012/06/15(金)
23:56:38.64 ID:hpeqfj4Jo
―――宿屋
バンッ!!!
エルフ「誰!?」
賊徒「こいつか……」
エルフ「なんですか!!貴方たちは!!!」
「その耳!!リーダー!!こりゃあマジもんだぁ!!!」
賊徒「だな。あの男、結構怪しかったが……へへ……こりゃぁついてる。ボスも大喜びだな」
「やったぁ!!旨い酒が飲めるぜ!!」
「やっほー!!」
エルフ「無礼ですよ!立ち去ってください!!」
賊徒「そういうわけにもいかねえなぁ」
エルフ「ならば……」
賊徒「おぉ!?」
エルフ「燃えろ!!!」ゴォォォ
賊徒「魔法か―――!!!」
377:NIPPERがお送りします:2012/06/16(土)
00:02:49.35 ID:hpeqfj4Jo
エルフ「え……?!」
賊徒「くくく……きかねえなぁ」
エルフ「ど、どうして……!?」
「大人しくしろって」
「エルフは傷ものにはできないからなぁ」
賊徒「抵抗はするなよ?」
エルフ「くっ……なら、痺れろ!!!」バリバリバリ
賊徒「ぎゃぁぁぁぁ―――なんてな♪」
エルフ「な……んで……?!」
賊徒「無駄無駄ぁ!!俺たちに魔力の篭った攻撃は通用しねえよ」
エルフ「人間のくせに……」
賊徒「さあ、こい!!」グッ
エルフ「やめろ!!」バッ
賊徒「いいから―――」
パシンッ!!!
378:NIPPERがお送りします:2012/06/16(土)
00:07:40.12 ID:hpeqfj4Jo
賊徒「ぃてっ?!」
「な、なんだ!?」
「わ、わかんねぇ……」
賊徒「な、なんだ?魔法はきかねえはずだぞ……!!」
エルフ「ふっ。魔法にも色々あるんですよ?」
賊徒「なにぃ!?」
エルフ「やっ!!!」
パシンッ!!!
賊徒「ぎゃぁ!?」
「あいつの後ろから鞭みたいなのが伸びてきたぞ!!」
「そ、そんな魔法聞いたことねえよ!!」ガタガタ
賊徒「くそ……!!魔法に対しては無敵のはずじゃねえのかよ!!!」
エルフ「答えてもらいますよ?誰が貴方達を無敵にしたのですか?」
賊徒「ちくしょう!!撤退だ!!こいつは変な魔法をつかいやがる!!」
エルフ「待ちなさい!!」
379:NIPPERがお送りします:2012/06/16(土)
00:15:02.46 ID:hpeqfj4Jo
―――待って。
エルフ「分かってる。追わないよ」
魔法使い「良かった。不可視化、役に立ったわね」
エルフ「にしても、情報にない戦力があるってだけで尻尾を巻くとは……。これだから人間は」
魔法使い「あいつらはチンピラみたいなものだし、魔法に対しては無敵っていうアドバンテージがなくなれば弱腰にもなるわよ」
エルフ「彼の読み通りだったわけだ……。なんか悔しい……」
魔法使い「あの賊ども……どこで魔法を無力化する方法を……」
エルフ「彼らに魔法の素養は無かったから、きっと魔法具の類を身につけているに違いない」
魔法使い「それって……魔封じの腕輪みたいなもの?」
エルフ「そう」
魔法使い「じゃあボスってエルフ?!」
エルフ「それはないよ。ボクたちは同胞を裏切るような真似だけは絶対にしない。たとえ魔王の命令であっても」
魔法使い「……」ジーッ
エルフ「ボ、ボクは!!同胞を守るために!!!!こうして泣く泣く一緒にいるだけで!!!うぅー!!!」
魔法使い「そうよね。ごめんなさい。じゃあ……誰が……?」
380:NIPPERがお送りします:2012/06/16(土)
00:20:08.20 ID:hpeqfj4Jo
―――倉庫
「がはっ?!」ドサッ
勇者「……」
僧侶「かっこいいです!勇者様!!」
盗賊「こいつ……うそだろ……」
勇者「お前はドラゴンを相手にしたことがあるか?」
盗賊「ひっ……!?」
勇者「奴が放った威圧感と炎を経験したら、お前らみたいな狭小で下劣なだけの人間を恐れなくなる」
盗賊「……!!」
勇者「さあ、吐いてもらおうか?」
盗賊「な、なにをだよ……?」
勇者「決まってるだろ?」グイッ
盗賊「おぉ……!!」
勇者「お前らのボスとその居場所だよ」
盗賊「い、いえるかよ……!!」
381:NIPPERがお送りします:2012/06/16(土)
00:25:18.95 ID:hpeqfj4Jo
勇者「……」
盗賊「へ、へへ……死んでもそれだけは言えねえなぁ……」
勇者「そうですか。では……死んでいただきましょう」ギラッ
盗賊「て、てめえ!!それでも勇者かよ?!」
勇者「僕は残念ながら聖人君子ではありません。人間ですからね」
盗賊「は?」
勇者「肩書きが勇者ってだけの人間です。貴方たちと同じ、屑な人間なんですよ」
僧侶「勇者様!!流石に人を殺めるのは……!!」
勇者「さあ、答えてください」
盗賊「……」
勇者「いえ」
盗賊「い、いえない!!」
勇者「なら……」スッ
盗賊「ひぃ?!」
僧侶「だ、だめです!!勇者様!!!」ギュッ!
382:NIPPERがお送りします:2012/06/16(土)
00:28:56.90 ID:hpeqfj4Jo
勇者「―――冗談ですよ」
僧侶「そ、そうですか……」
盗賊「……」
勇者「しかし、口を割ってもらわないと困りますねえ……」
僧侶「あの」
盗賊「な、なんだよ……?」
僧侶「手を」
盗賊「え?」
僧侶「少し怪我をされていますね」ギュッ
盗賊「な?!」
僧侶「はい。これで大丈夫です」
盗賊「な、なにしやがる!!このやろう!!!」バッ
僧侶「ですが……化膿してはいけませんし……」
盗賊「よ、余計なことすんなぁ!!」
勇者「お前……俺の側室候補の優しさすら無碍にするのか?!!救えないなぁ!!!こらぁ!!!」
383:NIPPERがお送りします:2012/06/16(土)
00:34:17.23 ID:hpeqfj4Jo
盗賊「ひぃぃぃ!?!?」
僧侶「勇者様!?ダメです!!」
勇者「堪忍袋の尾が切れたぁ!!!もう絶対に許さん!!!」グイッ
盗賊「やめろ?!なにしやがる?!」
勇者「くらえ!!―――秘技!!キャメル・クラッチ!!!」グググッ
盗賊「いだだだだだ!?!?」
僧侶「あぁぁ……」オロオロ
勇者「謝れぇ!!!この女神に謝れ!!!」グググッ
盗賊「あぁ……!!ぁ……!!!」
勇者「なんか言えよ!!!」グググッ
盗賊「ふが?!ふがぁ?!」
僧侶「勇者様!!顎を押さえているのでその人は喋りたくても喋れないです!!」
勇者「え?!あ、そうですか……」パッ
盗賊「がはっ……はぁ……おまえ……なんだよ……この女の……男か?」
勇者「この人は僕の側室候補です」
384:NIPPERがお送りします:2012/06/16(土)
00:40:10.48 ID:hpeqfj4Jo
僧侶「はぁ……あの……大丈夫ですか?」
盗賊「なわけねーだろ!!」
勇者「逆エビ固めだぁ!!」グググッ
盗賊「あだだだだだ!!!!」
僧侶「あの貴方に指示を出しているのは誰なのですか?」
盗賊「い……え……な―――」
勇者「ふんっ!」グキィ
盗賊「ぎゃぁぁああ!?!!」
僧侶「教えてください」
盗賊「ボ、ボスのことは本当にしらねえ!!姿なんてみせてくれねえんだ!!!か、金をくれるから従ってるだけでぇ!!!」
僧侶「そのボスさんはどこに?」
盗賊「こ、ここからずっと北にいった塔にいるよ!!!」
勇者「そこに拉致した人もいるのかぁ!?!」
盗賊「いる!!いる!!そこで人間やエルフを売ってるんだぁ!!!もういいだろう!!やめてぇ!!!」
勇者「なるほど。ご協力感謝いたします」
386:NIPPERがお送りします:2012/06/16(土)
00:43:58.27 ID:hpeqfj4Jo
盗賊「ちくしょう……!!」
僧侶「……」ギュッ
盗賊「え……?」
僧侶「これで少しは痛みも和らいだはずです」
盗賊「おま……」
僧侶「もう悪いことはしないでください。お願いします」
盗賊「……」
勇者「行きましょう。宿にいるお二人も心配です」
僧侶「分かりました」
盗賊「まて」
勇者「なんですか?」
盗賊「最近、ボスは勇者……多分、アンタのことだと思うけど、随分気にしているみたいだった」
勇者「僕を?」
盗賊「いつか邪魔してくるだろうから警戒しておけって……言われてたんだよ……」
勇者「分かりました。貴重な情報、ありがとうございます」
387:NIPPERがお送りします:2012/06/16(土)
00:51:49.71 ID:hpeqfj4Jo
―――宿
勇者「ただいま戻りました」
魔法使い「おかえり。どうだったの?」
僧侶「組織の本拠地が分かりました。ここから北にある塔のようです」
エルフ「北っていうと……この辺りか」
勇者「すぐに出発しましょう。相手のボスにまで騒ぎが届いてしまうと奇襲がかけにくくなります」
魔法使い「賛成ね」
エルフ「ボクは反対」
僧侶「ど、どうしてですか?」
エルフ「それは―――」
勇者「相手は人間でなく、魔族だからですね?」
僧侶「……」
魔法使い「それは私も思っていたわ。あいつらただの盗賊のくせに魔法具を持っていたみたいだもの」
勇者「ボスは勇者を気にしているといっていました。人間の犯罪者なら国の兵士を警戒するはずなのに、勇者に気を回すのは少々不自然ですしね」
エルフ「エルフの魔法すら掻き消す道具を大量に作れる相手だから、慎重になったほうがいいと思う」
388:NIPPERがお送りします:2012/06/16(土)
00:58:54.19 ID:hpeqfj4Jo
僧侶「でも……どうして同じ魔族であるエルフまで……」
勇者「エルフ族は人間には見世物にされ、他の魔族からは蔑視されている種族ですからね」
魔法使い「でも……魔族が商売をするってちょっと意味が分からないわ」
勇者「それは相手に聞いてみないとわかりませんね」
エルフ「……」
魔法使い「どうするの?行くの?」
勇者「……」
僧侶「勇者様……」
勇者「行きましょう。逃げられては困ります」
エルフ「でも?!」
勇者「こちらには貴女がいます。万が一、魔法戦になっても引けは取らないでしょう」
エルフ「……ボクを信じていいの?本気で戦わないかもしれないのに」
勇者「裏切るならここで裏切ってください。戦いの最中に裏切られては死ぬのが僕だけで済まなくなりますから」
エルフ「なにいって……」
勇者「ここで里に帰るというなら僕は止めません。貴女も魔族です。蔑まされているとはいえ同族と争うのは嫌でしょうし」
389:NIPPERがお送りします:2012/06/16(土)
01:08:06.42 ID:hpeqfj4Jo
僧侶「勇者様!!」
魔法使い「馬鹿なの?!ここでこの子が抜けたら……!!」
勇者「魔封じの腕輪を頂いただけでも感涙モノです」
エルフ「え……」
勇者「貴女のおかげでこの先の旅がかなり楽になりました。ありがとうございます」
エルフ「ここで抜けてもいいの?」
勇者「はい」
エルフ「ど、どうせ抜けたら……里のことを……」
勇者「言うわけないじゃないですか。その代わり、魔王を倒した後に迎えにあがりますので」
エルフ「ど、どうして?!」
勇者「貴女を側室にするためにですよ」
エルフ「はっ。強引に連れ出したと思えば、もう帰ってもいいって?かなり無茶苦茶だと思うけど?」
勇者「あの里にいては、どなたも微々たる協力もしてくれなったじゃないですかぁ?!」
エルフ「そういう戒律が―――もしかして……貴方……ボクを外に連れ出したのは……」
勇者「旅を共にして貴女を僕に惚れさせるためですよ?なに深読みしているでござるかね?」
391:NIPPERがお送りします:2012/06/16(土)
01:15:38.48 ID:hpeqfj4Jo
エルフ(言ってることがおかしいって、分かってるの……?)
勇者「とにかく急ぎましょう」
魔法使い「待って!!本当にいいの?!」
勇者「構いません。無理強いなんてできませんから」
魔法使い「脅して連れ出しておいてよく言えるわね?!」
勇者「えーい!!僕について来い!!可愛い側室ちゃんたち!!」
僧侶「はーい♪」テテテッ
魔法使い「だれが側室よ!!!」
エルフ「あ……」
魔法使い「どうするの?」
エルフ「ボクは……」
魔法使い「アイツは私たちにも帰っていいって言ってくれたことがあるわ」
エルフ「そうなんだ」
魔法使い「エルフの里のことはきっと言わないと思うわ。口外して貴女が攫われたら側室にできないとか考えてそうだもの」
エルフ「……やっぱり、彼は卑怯だ」
392:NIPPERがお送りします:2012/06/16(土)
01:22:27.31 ID:hpeqfj4Jo
―――フィールド
勇者「いいのですか?」
エルフ「同胞を売り物にしているなら、許せないよ」
勇者「なるほど。つまり、僕の側室になる決心をしたということでよろしいですね?」
エルフ「違うけど」
勇者「ちがうのー?!」
魔法使い「当たり前でしょう?」
勇者「全く……!!なんで近頃の女子はこうも防御力が高いのか!!!けしからん!!!」
僧侶「ごめんなさい……勇者様……」
勇者「いえいえ。貴女ぐらいの守備力ならいいのですが、ふふふ」
僧侶「え?でも、防御が弱いのは……勇者様にとっては足手まといでは……」
勇者「何をいいますやら。いいですか?貴女から許可が出て夜這いするとき、守りが薄いほうがいいですよ、はい」
魔法使い「―――良かったの?」
エルフ「同胞は放っておけないし……それに彼はやっぱり色々隠してるから……それが少し気になって……」
魔法使い「……?」
394:NIPPERがお送りします:2012/06/16(土)
01:37:02.98 ID:hpeqfj4Jo
―――魔道士の塔 最上階
魔道士「あっひゃっひゃっっひゃっひゃ~!!今日も良質なニンゲンのメスが手に入ったぞぉ!!!」
ドラゴン「―――久しぶりだな」
魔道士「あっひゃっひゃっひゃ!!これはこれは!!今日はどのような件で?先日、魔王様に納品したばかりですが」
ドラゴン「勇者一行がこちらに向かっているようだ」
魔道士「おぉ!!噂の魔王様が注目しているという?」
ドラゴン「そうだ。油断はしないようにな」
魔道士「あっひゃっひゃっひゃ。油断?この私には魔法は通じません。―――この魔抗石で作った鎧がある限りは」
ドラゴン「魔法が通じないだけだろう?勇者は剣術にも秀でているのだぞ?」
魔道士「剣術?!あっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!物理的な攻撃こそ戒心する必要すらないですよ~!!!」
ドラゴン「……」
魔道士「過去に魔法を打ち破った剣術がありましたか?!ないでしょう?!」
ドラゴン「まあいい。奴らの弱点だけでも教えておこうか」
魔道士「はぃ~」
ドラゴン(さてこちらも作戦に移るか……。魔王様も本当に慎重だ……約束された勝利にすらすぐに手をつけないとは……)
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