勇者「美人な僧侶と魔法使いを」前編4 噂の森の章

 195:NIPPERがお送りします:2012/06/09(土) 19:02:38.30 ID:hpeqfj4Jo
―――翌朝 

魔法使い「今までお世話になったわね」 

勇者「残念ですね。ナイスバディなのに」 

魔法使い「……ホントね」 

勇者「まあ、貴女レベルなら探せば……」 

魔法使い「ふんっ!!」 

僧侶「あぁ……」 

勇者「ついていってあげてください」 

僧侶「え?」 

勇者「全身から魔法を作りだすことができても、彼女は遠距離から攻撃されたら終わりです。彼女の魔力はすぐに枯渇する」 

勇者「決して燃費がいい放出方法ではないですからね。むしろ大技を継続して発動しているようなものですし」 

僧侶「ゆ、勇者様はどうするのですか?」 

勇者「ここから北に向かうと噂の森があるでしょうから、そこを目指します」 

僧侶「噂の森……ですか?」 

勇者「おとぎ話ですよ。ただ、ドラゴンが実在したので信じてみようかなと思いまして」 




196:NIPPERがお送りします:2012/06/09(土) 19:15:44.10 ID:hpeqfj4Jo
魔法使い「……」 

僧侶「ま、まってくださーい!!」タタタッ 

魔法使い「どうしたの?」 

僧侶「はぁ……はぁ……わ、私も一緒に行きます」 

魔法使い「どうして?貴女はアイツの信者でしょ?」 

僧侶「べ、別にそういうわけではありません」 

魔法使い「そう……ありがと」 

僧侶「で、どこに向かっているのですか?」 

魔法使い「ここ。西に行けば大きな街があるみたいだから」 

僧侶「なるほど」 

魔法使い「そこなら色々と情報が集まると思うわ」 

僧侶「そうですね。では、そこに向かいましょう」 

魔法使い「本当によかったの?」 

僧侶「はい」 

魔法使い「今頃、側室候補がゼロになったから泣いてるんじゃないの?」 




219:NIPPERがお送りします:2012/06/11(月) 19:33:55.61 ID:hpeqfj4Jo
僧侶「割と平気そうでしたけど」 

魔法使い「そう……」 

僧侶「でも、これからどうするんですか?本当に魔王を?」 

魔法使い「ええ。こんな体質でも十分に戦えるって分かったのよ?やれるわ」 

僧侶「どのように戦うのですか?」 

魔法使い「相手が攻撃してきたら熱を纏えばいいじゃない」 

僧侶「熱に強い相手だったら?」 

魔法使い「冷気を纏うわ」 

僧侶「魔法に強い相手だったら?」 

魔法使い「そのときは……」 

僧侶「そのときは?」 

魔法使い「考えるわよ」 

僧侶「そ、そうですか」 

魔法使い「今はとにかく魔王に関する情報を集めることが重要なの。わかった?」 

僧侶「は、はい」 




220:NIPPERがお送りします:2012/06/11(月) 19:43:59.14 ID:hpeqfj4Jo
―――街 酒場 

店主「魔王に関すること?」 

魔法使い「なにかしらないかしら?」 

店主「私はただの酒場のマスターなんでね」 

魔法使い「でも、客から色々話を聞いたりするでしょ?」 

店主「そんな話題を口にするような人は貴女が初めてですよ」 

僧侶「そ、そうですよね」 

魔法使い「それじゃあ、何か魔物に関することでもいいわ」 

店主「そういっても……特には……」 

魔法使い(情報収集ってこんなに難しいの……) 

店主「あ。気になることなら一つありますね」 

僧侶「なんですか?」 

店主「なんでも人身売買組織があるらしいですよ」 

魔法使い「人身売買?」 

店主「はい。今この国に大規模な人身売買組織があるらしく、裏ではかなりエグいこともしているそうです」 




221:NIPPERがお送りします:2012/06/11(月) 19:52:14.92 ID:hpeqfj4Jo
魔法使い「ふーん……」 

僧侶「なんて非人道的な……!!」 

店主「まあ、人身売買自体は珍しいことではありませんがね」 

魔法使い「身寄りの無い子どもが自分を売ったり、借金苦で売るって話はよくあるわね」 

店主「時代が時代ですからね」 

僧侶「でも、組織化されているってことは、人身売買で商売をしているってことですよね?」 

魔法使い「そうじゃないかしら?」 

僧侶「そ、そんなの許せません……!」 

店主「気分のいい話じゃないことは確かですよね。噂では魔物が人間を拉致しているみたいですし」 

魔法使い「なにそれ。人間と魔物が手を組んでるわけ?信じられないわ……」 

僧侶「待ってください。魔物が協力しているなら、もしかすると魔王とも結託しているのではないでしょうか?」 

魔法使い「可能性はあるわね……」 

店主「とはいえ、私もお客さんから聞いただけで信憑性はあまり高いとは言えませんが」 

魔法使い「その組織に迫れば、きっと魔王のことも分かるわ。―――どうやら、目標ができたわね」 

僧侶「はい。その人身売買組織について調べましょう」 




222:NIPPERがお送りします:2012/06/11(月) 21:57:53.35 ID:hpeqfj4Jo
―――夕方 街 広場 

魔法使い「……」 

僧侶「わかりませんね」 

魔法使い「甘かったわ。裏世界の情報なんて普通、誰も教えてくれないわよね」 

僧侶「そうですね。人身売買を行う組織があるってだけでは……」 

魔法使い「身内が被害に遭ったわけでもないし、私たちは組織を追う法的機関でもない」 

僧侶「そろそろ宿でも探しませんか?」 

魔法使い「そうね。そうしましょうか」 

僧侶「勇者様なら……」 

魔法使い「え?」 

僧侶「勇者様なら、そんな情報でもすぐに手に入れてこられたのでしょうか?」 

魔法使い「もういいでしょ。あんな奴のことなんて」 

僧侶「……」 

魔法使い「行きましょう」 

僧侶「はい」 




223:NIPPERがお送りします:2012/06/11(月) 22:05:26.92 ID:hpeqfj4Jo
―――宿 寝室 

魔法使い「ふー、いいお湯だったわ」 

僧侶「……」ペラッ 

魔法使い「なにしてるの?」 

僧侶「え?ああ……その……」 

魔法使い「なにこれ?エルフ伝説?」 

僧侶「……知ってますか?」 

魔法使い「エルフって伝説上の種族でしょ?魔法の礎を設計したって言われてるけど……」 

僧侶「はい。人間と共存していたと言われるも、数百年前に歴史から姿を消した人間ではない……魔族の一種です」 

魔法使い「魔物の中でも人間と近しい志向を持っていたから、かなり友好的だったとも言われているわね」 

僧侶「いると思いますか?」 

魔法使い「過去にいたかもしれない連中でしょ?そんなのいるわけ……」 

僧侶「でも、ドラゴンはいました」 

魔法使い「む……。それを言われると……」 

僧侶「魔法を創造した種族。もしいるなら、私たちの体質も改善してくれるかもしれません」 




224:NIPPERがお送りします:2012/06/11(月) 22:12:56.96 ID:hpeqfj4Jo
魔法使い「そうね。夢があっていいわねぇ」 

僧侶「はい」 

魔法使い「でも、どうして急にエルフ伝説なんて……」 

僧侶「実は……勇者様が別れ際に―――」 

勇者『その森にはエルフがいると昔から噂されていました。むろん、眉唾もいいところで誰も真剣に捜索なんてしていませんが』 

僧侶『勇者様はエルフを?』 

勇者『はい。エルフは美形が多い、否、美形しかいないという伝説もあります。一人ぐらい側室に居てほしいと考えています』 

僧侶『探すというわけですか……』 

勇者『ええ。貴重な側室候補が二人もいなくなってしまいましたからね』 

僧侶「―――と、言っていました』 

魔法使い「あっそ……!」 

僧侶「もしエルフがいるなら、私たちの欠陥も直してくれるかもしれないってずっと考えていました」 

魔法使い「可能性としてはあるかもしれないけど……」 

僧侶「人身売買の件も全く分かりませんし、エルフを探すことも私たちにとっては有益なことではないでしょうか?」 

魔法使い「うーん……でも……」 




225:NIPPERがお送りします:2012/06/11(月) 22:18:48.80 ID:hpeqfj4Jo
僧侶「ダ、ダメ……ですか?」 

魔法使い「アイツもさがしているのよね?」 

僧侶「再会するかもしれないとお考えですか?」 

魔法使い「……うん」 

僧侶「いいじゃないですか。もし居合わせても利害は一致してますし」 

魔法使い「……」 

僧侶「恥ずかしい……とか?」 

魔法使い「あんたねえ……!!ブロッコリー食べさせるわよ!?」 

僧侶「そ、それだけは……!!」 

魔法使い「まあ、いいわ。確かにこのまま居ても進展なんてしないだろうし……エルフなら魔王のことも知っているかもしれないし……」 

僧侶「よかったぁ」 

魔法使い「アイツの言っていた森ってどこになるの?」 

僧侶「地図でいえば、この辺りだと思われます。ここからだと半日もあれば……」 

魔法使い「なら、しっかり準備だけはしておきましょう」 

僧侶「はい!」 




226:NIPPERがお送りします:2012/06/11(月) 22:23:17.67 ID:hpeqfj4Jo
―――フィールド 

僧侶「そういえば魔物に遭遇した場合はどうします?」 

魔法使い「炎を身に纏って体当たりでもしてやればいいわ」 

僧侶「それって魔力の無駄遣いじゃないですか?」 

魔法使い「他にやりようがないから仕方ないでしょ?」 

僧侶「そうですけど……」 

魔物「―――グルルルル!!!」 

魔法使い「って、言ってる傍から……!!」 

僧侶「ひっ」 

魔物「グルルル……」 

魔法使い「来なさい」ゴォォ 

魔物「ガァァァ!!!」ダダダッ 

魔法使い「……っ」 

魔物「ガァァァァ!!!」ガブッ 

魔法使い「いっ?!」 




227:NIPPERがお送りします:2012/06/11(月) 22:28:40.94 ID:hpeqfj4Jo
魔物「―――オォォォ……」ドサッ 

魔法使い「やった……」 

僧侶「大丈夫ですか?!」 

魔法使い「腕を噛まれただけよ。傷は深くないわ。すぐに燃えたし」 

僧侶「そうですけど……」 

魔法使い「さ、行きましょう」 

僧侶「あ、まってください」ギュゥゥ 

魔法使い「ちょっと……!!」 

僧侶「どうですか?」 

魔法使い「……治ったわ。ありがとね」 

僧侶「いえ。早めに有効活用してもらえないと、私はすぐに魔力が無くなるので」 

魔法使い「あんたに触れられたら傷が癒えるなんて、誰も気がつかなかったわよね……」 

僧侶「そうですね。魔法がすぐに使えなくなるって点は大きなマイナスでしかないですし。でも、勇者様は―――」 

魔法使い「早く行くわよ」 

僧侶「あ、は、はい!」 




228:NIPPERがお送りします(千葉県):2012/06/11(月) 22:33:14.58 ID:iK94uSqro
このコンビは良いな 




229:NIPPERがお送りします:2012/06/11(月) 22:37:07.34 ID:hpeqfj4Jo
―――エルフの森 

魔法使い「はぁ……ここなのね……」 

僧侶「勇者様が言うには……ここですね」 

魔法使い「探索する前に休憩しておく?」 

僧侶「いえ。パンを食べながらなら多少は大丈夫ですから」 

魔法使い「雀の涙じゃない?」 

僧侶「本当に危なくなったら言いますから」 

魔法使い「そう……」 

魔法使い(アイツは私たちの体調管理までしてたのよね……今、思えば……) 

僧侶「にしても未踏の地だからでしょうか、鬱蒼としてますね」 

魔法使い「住んでいる魔物も多いでしょうね。今までで一番、気合を入れないとダメかもしれないわ」 

僧侶「が、がんばります」 

魔法使い「こんなことなら用心棒の一人ぐらい雇えばよかったわね」 

僧侶「そんなお金があればとっくに……」 

魔法使い「言ってみただけよ」 




230:NIPPERがお送りします:2012/06/11(月) 22:42:53.95 ID:hpeqfj4Jo
魔物「ガァァァァ!!!!」 

僧侶「きゃぁぁぁ!!!」 

魔法使い「させない!!」 

魔物「ガァァ!!」ザシュ 

魔法使い「うぁ!?」 

僧侶「あぁ!!!」 

魔法使い「ふ、ふれたわね……!」 

魔物「ガ……?―――ガァァァァ!!!!」メラメラ 

魔法使い「ふぅー……ふぅー……」 

僧侶「今、治癒を!!」ギュッ 

魔法使い「……」 

僧侶「うーん……!!うーん……!!」ギュゥゥゥ 

魔法使い「もう限界でしょ?」 

僧侶「は、はい……き、休憩しましょうか?」 

魔法使い「賛成。私ももう魔力が尽きかけてるし」 




231:NIPPERがお送りします:2012/06/11(月) 22:51:58.77 ID:hpeqfj4Jo
魔法使い「疲れた……」 

僧侶「まだ住んでいる形跡すら見つかりませんね」 

魔法使い「まあ、これぐらいで見つかるなら伝説にはならないでしょうし」 

僧侶「そうですね。エルフさんも意地悪です」 

魔法使い「でも、考えないといけないわね」 

僧侶「何をですか?」 

魔法使い「引き際に決まっているでしょ?いない人をずっと探すつもり?」 

僧侶「それは……」 

魔法使い「意味の無い時間を費やすなら、魔王討伐に向けての準備をしたほうがいいわ」 

僧侶「準備と言っても……具体的になにをすればいいのか……」 

魔法使い「魔王の弱点を探すとか」 

僧侶「判明できているなら人間側がこんなにも劣勢には……」 

魔法使い「魔王の兵力を調べるとか」 

僧侶「大国が全兵力を投じても、防戦しかできないぐらいの兵力です」 

魔法使い「……あら、私たちじゃ勝てないじゃないの」 




232:NIPPERがお送りします:2012/06/11(月) 23:08:37.23 ID:hpeqfj4Jo
僧侶「ですから、こうして―――!」 

魔法使い「分かってるわよ。冗談だから」 

僧侶「なら、いいんですけど……」 

魔法使い「そうよね。あの魔王と戦おうとしているんだから、いくら補強しても補強し足りないことはないわ」 

僧侶「はい。あと人数も……」 

魔法使い「……」 

僧侶「……」 

魔法使い「もう少し休憩したら出発するわね」 

僧侶「あの、その前に……」ギュッ 

魔法使い「いいって」 

僧侶「そう言うわけにはいきません。薬草では限界もありますし」 

魔法使い「もう……。アイツ、薬草持っていったわよね?」 

僧侶「私がきちんとお渡ししておきましたから」 

魔法使い「そう……」 

僧侶「まだ、この森のどこかにいるんでしょうか……?」 




233:NIPPERがお送りします:2012/06/11(月) 23:15:33.20 ID:hpeqfj4Jo
―――同時刻 エルフの森 深部 

勇者「……」ガサガサ 

勇者「お……」 

勇者「ここは……もしかして……ようやく……見つけた。やはりいると確信していれば、奥まで進むことが苦にならなかったな」 

エルフ「だ、だれ!?」 

勇者「……!?」 

エルフ「ニ……ニンゲン……!?」 

勇者「これはどうも」 

エルフ「あ……れ……?」 

勇者「え……?」 

エルフ「……」 

勇者「あの……?」 

エルフ「何の用ですか?」 

勇者「僕の結婚相手を探しています。貴女、結婚してくれませんか?」 

エルフ「ど、どうして人間なんかと……!!」 




234:NIPPERがお送りします:2012/06/11(月) 23:21:07.15 ID:hpeqfj4Jo
エルフ「おかえりください」 

勇者「そういうわけにはいきません」 

エルフ「なら……容赦はしませんよ?」 

勇者「まさか……夜は常に3ラウンドですか?」 

エルフ「……?」 

勇者「腰が痛くなりそうですね……いやはや……困った困った」 

エルフ「訳のわからないことを……!!」 

勇者「む!?」 

エルフ「立ち去らないというなら……!!」 

勇者「まさか……」 

エルフ「魔法を使ってでも……去っていただきます!!」 

勇者「せめてお話だけでも」 

エルフ「……」 

勇者「弱りましたね。僕のどこがいけませんか?」 

エルフ「全部です!!人間であることが罪です!!」 




236:NIPPERがお送りします:2012/06/11(月) 23:29:00.10 ID:hpeqfj4Jo
勇者「なんて宗教的な考え……」 

エルフ「種族としての考えです」 

勇者「僕は勇者なのに?」 

エルフ「関係ない!!帰って!!帰れ!!!」 

勇者「人間を嫌うのは魔族共通ですか?」 

エルフ「当然です」 

勇者「でも、貴女たちエルフ族は大昔、人間と友好関係を築いていたはず」 

エルフ「数百年前のことです」 

勇者「どうしてその関係は崩れてしまったのですか?」 

エルフ「……」 

勇者「……」ジーッ 

エルフ「……そんなに強くボクを見つめても言わないから」 

勇者「え?どうしてですか?」 

エルフ「どうしてって……人間が嫌いだからに―――」 

勇者「違います!!貴女、女性ですよね!?なのに、今、ボクっていいましたよね?!え!?どうしてそんな一人称になったんですか!?」 




237:NIPPERがお送りします:2012/06/11(月) 23:33:49.69 ID:hpeqfj4Jo
エルフ「は……?」 

勇者「まさか。現実にはほぼいないと思っていたのに……。まさか、このような辺境にいようとは……流石はエルフ!!」 

エルフ「……っ」ビクッ 

勇者「で、どうして自分のことをボクというようになったのですか?」 

エルフ「理由なんてないです」 

勇者「生まれつき?それはもしかして、親が男の子として育てたというすごい事情があったりするわけですか?」 

エルフ「そんなのない!!ボクの家庭はいたって平凡だ!!」 

勇者「また言った!!ボクっていった!!もう一回言ってください!!」 

エルフ「な……!?」 

勇者「アンコール!!アンコール!!!」 

エルフ「うぅ……」 

勇者「アンコール!!アンコール!!!はい、ワンモアセッ!!」 

エルフ「うぅぅぅ……!!!―――ちょーろー!!!変な人きたー!!!!」ダダダッ 

勇者「ああ、待ってください!!ボクっ娘さん!!!」 

エルフ「いやぁぁぁ!!!」 




238:NIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/06/11(月) 23:36:13.88 ID:3JKFnv2Lo
ほんとブレないな 




240:NIPPERがお送りします:2012/06/11(月) 23:38:35.67 ID:hpeqfj4Jo
兵士「とまれ!!」ギラッ 

勇者「邪魔だぁ!!!」ギィィン 

兵士「うお!?」 

勇者「俺の恋路を邪魔するなぁぁ!!!!」 

兵士「誰か止めろー!!ニンゲンだぁぁ!!!」 

勇者「うおぉぉぉぉ!!!!」ダダダッ 

兵士「これ以上は!!!」 

勇者「どけぇぇぇ!!!」ギィィン 

兵士「おい!!手の空いている者を全員よべぇ!!緊急事態だ!!長老のところに向かっている!!!」 

兵士「了解!!」 

勇者「勇者をなめるなぁぁぁ!!!!」 

兵士「ええい!!先日きたばかりだろうが!!!」 

勇者「ボクっ娘さぁぁん!!!側室になってくれぇ!!」 

エルフ「やだぁぁ!!!」 

兵士「いいから取り押さえろー!!!」 




241:NIPPERがお送りします:2012/06/11(月) 23:44:32.38 ID:IrVv93nNo
ブレない人って素敵 




242:NIPPERがお送りします:2012/06/11(月) 23:44:59.47 ID:hpeqfj4Jo
―――長老の屋敷 

長老「―――この者か?」 

兵士「はっ」 

勇者「むぐぐぐ……!!!」 

エルフ「はぁー……はぁー……」ドキドキ 

長老「話がしたい。口を自由にしてやれ」 

兵士「はい」 

勇者「ぷはぁ?!」 

長老「人間よ聞こえるか?」 

勇者「ボクっ娘さんの息遣いが聞こえます。お姿も確認したいので目隠しを解いてもらえませんか?」 

エルフ「ひっ……」 

長老「悪いが人間の言うことなど聞けん。おぬしは訊かれたことだけを答えればいい」 

勇者「側室とはいえ大事にします。ですが、贔屓もしません」 

長老「黙れ。―――訊きたいことは一つだ。どうしてまた攫おうとした?」 

勇者「攫うなんてとんでもない。僕が攫うとしたら、それは心のほうですからね」キリッ 




244:NIPPERがお送りします:2012/06/11(月) 23:54:11.60 ID:hpeqfj4Jo
長老「今年になって既に同胞が10人も拉致され売られていることは知っているのだ」 

勇者「売られている?」 

長老「大昔から人間は我々の生み出した魔法、同胞をよく盗んでおった。表向きは友好関係を続けているように振舞いながらな」 

勇者「……」 

長老「約600年前、我々は貴様らと縁を切った。だが、数年前からまた始まった……」 

勇者「エルフの人身売買ですか?」 

長老「ふん……知っておるくせに……」 

勇者「噂が流れたぐらいだから、少なからずエルフを見た人がいるとは思っていたけど、まさかオークションの現場で見たとかそういうのか……?」 

長老「どんなに森の奥へと進んでも、貴様たちの執念には驚かされる。なぜ、放っておいてくれんのだ……!!」 

勇者「……」 

長老「答えろ!!」 

勇者「それは……美人だからですよ」 

長老「……」 

エルフ「え?」 

勇者「美人でスタイルもよい。しかも一人称がボクときた。これは放っておくほうが失礼というものでしょう」 




246:NIPPERがお送りします:2012/06/12(火) 00:02:44.71 ID:hpeqfj4Jo
長老「話にならんな」 

勇者「待ってください!!僕は勇者!!魔王を討伐するために旅をしている者です!!」 

エルフ「え……!!」 

勇者「貴女を側室に迎えるだけの理由はあるのですよ!!!」 

長老「魔王を倒すだと……?」 

勇者「はい!!」 

長老「関係がないな」 

勇者「え?」 

長老「魔王を倒したからといってエルフの扱いが変わることなどない」 

勇者「そんなことありませんよ」 

長老「変わるのはお前たち人間の生活だけだ。魔族からも疎まれ、人間にはその身を狙われるワシたちの立場に変化などない」 

勇者「疎まれるって……人間と仲良くしていた過去があるからですか?」 

長老「そういうことだ。真実は脅されていたとしてもな」 

勇者「なるほど……」 

長老「わかったのなら、それでいい。―――牢屋に入れておけ。処刑は3日後に執り行うものとする」 




247:NIPPERがお送りします:2012/06/12(火) 00:08:24.13 ID:hpeqfj4Jo
兵士「はっ!!」 

勇者「待ってください!!まだ死にたくないんです!!」 

長老「それはそうだろうな」 

勇者「ボクっ娘さん!!貴女と添い遂げるまではぁぁ!!」 

エルフ「……」 

兵士「こっちにこい!!」 

勇者「やめろぉ!!このハゲ!!」 

兵士「殺すっ!!」 

長老「まて。きちんと儀式に則り処刑するのだ。無闇に殺しては野蛮な人間と変わらない」 

兵士「も、もうしわけありません!!」 

勇者「くそぉ!!!もう一度だけボクと耳元でささやいてぇぇぇ!!!!」 

長老「……人間とは理解できない生き物だな」 

エルフ「はい」 

長老「魔王を倒すといえば解放されるとも思ったのか……あやつめ……」 

エルフ「……」 




255:NIPPERがお送りします:2012/06/12(火) 20:10:45.50 ID:hpeqfj4Jo
―――牢屋 

勇者「こんなことになるなんて……困った……」 

エルフ「気分はどう?」 

勇者「おぉ……」 

エルフ「なに?」 

勇者「あの一ついいですか?」 

エルフ「……」 

勇者「森で出会ったとき、驚かれているようでしたが。あれは……?」 

エルフ「……」 

勇者「貴女の一人称がボクであることの次に気になるのですが」 

エルフ「そうだった?」 

勇者「……それにしても僕は運がいいです」 

エルフ「え?」 

勇者「エルフに出会うだけではなく、貴女のような絶世の美女エルフにも出会えましたから」 

エルフ「なに、それ……変なの……」 




256:NIPPERがお送りします:2012/06/12(火) 20:19:43.52 ID:hpeqfj4Jo
勇者「……」 

エルフ「食事、持ってきただけだから……」 

勇者「何か隠してますね?」 

エルフ「……」 

勇者「こうして貴女の……いや、貴方たちの策に嵌ってあげたというのに」 

エルフ「何がいいたいの?」 

勇者「エルフの一族は魔法を使える。人間とは比較にならないほどの高威力の魔法を。そうですよね?」 

エルフ「当たり前でしょ。ボクたちは―――」 

勇者「うはっ」 

エルフ「―――我々は魔法の基礎を築いた種族だから」 

勇者「では、どうしてあのときに殺さなかったのですか?」 

エルフ「それは……長老が言っていた通り、掟に則って貴方の処刑を……」 

勇者「三日後に?明日でも、今でもいいと思いますけど?」 

エルフ「……」 

勇者「僕をすぐに殺せない理由でもあるのですか?」 




257:NIPPERがお送りします:2012/06/12(火) 20:24:53.65 ID:hpeqfj4Jo
―――エルフの森 深部 

魔法使い「今日はここまでにしましょう」 

僧侶「そうですね」 

魔法使い「大丈夫?随分、無理してない?」 

僧侶「はい。なんとか」 

魔法使い「見張りは私がするから、ゆっくり休んでて」 

僧侶「そういうわけには……」 

魔法使い「あんたが倒れると困るのは私だから」 

僧侶「でも……」 

魔法使い「いいから。寝てて」 

僧侶「すいません……」 

魔法使い「……あんたと居て、分かったわ……ダメね……私……」 

僧侶「え?」 

魔法使い「……」 

僧侶「あの……?」 




258:NIPPERがお送りします:2012/06/12(火) 22:48:07.15 ID:hpeqfj4Jo
魔法使い「はぁ……」 

僧侶「ダメって……そんなこと……。貴女は私なんかよりずっと役に立ってますよ」 

魔法使い「そう思う?」 

僧侶「森での一件、山での落とし穴、洞窟での戦闘、全て貴女がいないと私たちはとっくに死んでいました」 

魔法使い「……」 

僧侶「回復しかできない私とは違います」 

魔法使い「でも、私の魔力はすぐになくなる」 

僧侶「それは……」 

魔法使い「アイツは使いどころをいつも考えていたわ。多分、いつも頭を悩ましていたでしょうね」 

僧侶「……」 

魔法使い「私だけじゃ……やっぱり……。情報収集だって上手くいかないし……」 

僧侶「それは私も同じです!!」 

魔法使い「……」 

僧侶「ですから、エルフに会って……」 

魔法使い「会って……何かが変わればいいわね……」 




259:NIPPERがお送りします:2012/06/12(火) 22:54:39.89 ID:hpeqfj4Jo
―――エルフの里 長老の家 

長老「どうだった?」 

エルフ「こちらの考えに気づいているのかいないのか……よくわかりませんでした」 

長老「だが、魔王を倒すと言った以上……奴に間違いはないはず」 

エルフ「でも、三人だって……」 

長老「違うなら記憶を奪い、森の外に出せばよい」 

エルフ「しかし……!!」 

長老「奴がここの存在を公言しては、また同胞が被害に遭うかもしれない。そうでなくとも拉致が横行しているのに……」 

エルフ「彼はそんなことしないと思います」 

長老「なぜだ?」 

エルフ「彼はボクのことしか見ていませんでした。ここには他にもエルフがいるのに」 

長老「……」 

エルフ「何故、ここへ来たのかは分かりませんが、誘拐を考えているようには思えないのです」 

長老「人間とは狡猾な生き物だ。それは散々、教えてきたはずだが?」 

エルフ「そうですが……」 




260:NIPPERがお送りします:2012/06/12(火) 23:02:00.71 ID:hpeqfj4Jo
―――牢屋 

勇者「……」 

エルフ「まだ起きてたの……?」 

勇者「おぉ!!どうしたのですか?!おやすみのキスを?」 

エルフ「どうしてここまで足を運んだのかを聞きに」 

勇者「……第一の目的は側室探しですが、第二の目的は戦力アップのためです」 

エルフ「魔王と戦うために?」 

勇者「いえ。ドラゴンを倒すために」 

エルフ「……」 

勇者「驚かないんですね。ドラゴンですよ、ドラゴン。口から火を吐く」 

エルフ「彼は幻の存在でもなんでもないから」 

勇者「流石は魔族同士ですね。お知り合いですか?」 

エルフ「……存在を知っているだけ」 

勇者「ふむふむ」 

エルフ「ねえ、貴方に仲間は?一人旅ってことはないはずだけど……」 




262:NIPPERがお送りします:2012/06/12(火) 23:09:19.24 ID:hpeqfj4Jo
勇者「どうして?」 

エルフ「それは……」 

勇者「実は喧嘩別れをしてしまって。今は独り身なんですよ。ですから夜が寂しくて。温もりが欲しいですね」 

エルフ「……あのとき素直に帰っていればいいものを」 

勇者「何かを隠されるのは好きじゃないので」 

エルフ「……」 

勇者「やはり、僕は魔王に狙われているのですか?」 

エルフ「見つけ次第、能力を測れと魔族に通達している」 

勇者「ほう……。それは貴方たちも例外ではないと?」 

エルフ「ええ。疎まれる種族ではあっても、魔族。魔王には逆らえないから……」 

勇者「では、最初に驚いたのは?」 

エルフ「もうじき勇者がこの森に現れるというのは聞いていた。二人の仲間を連れているからって」 

勇者「でも、一人だけだった」 

エルフ「だから誘拐犯だとも思った。けれど、誘拐目的なら多人数だろうし、もう色々貴方はおかしかった」 

勇者「なるほど。だから、あんな面食らっていたわけですか」 




263:NIPPERがお送りします:2012/06/12(火) 23:14:51.12 ID:hpeqfj4Jo
エルフ「そういうこと」 

勇者「すっきりしました。では、もう結構です」 

エルフ「え?なにが?」 

勇者「それが真実なのでしょう?」 

エルフ「そうだけど」 

勇者「なら……あとは貴女を側室に迎え入れるだけだ」 

エルフ「はい?!」 

勇者「僕と添い遂げましょう」 

エルフ「嫌!!人間となんて……!!」 

勇者「異種間でのお付き合いってよくないですか?」 

エルフ「よくない!!」 

勇者「えー?」 

エルフ「ちなみにエルフは皆、同じように答えるから」 

勇者「いやいや。僕は貴女にしか興味はありませんよ?」 

エルフ「……」 




264:NIPPERがお送りします:2012/06/12(火) 23:25:04.26 ID:hpeqfj4Jo
勇者「僕は貴女を側室にしたいのですよ」 

エルフ「嘘ばっかり。ボク以外にも美人はいっぱいいるし、そもそも人間からなら同じ顔に見えるはず」 

勇者「何をいいますか。人間だって、犬や猫の容姿に優劣をつけられる!!」 

エルフ「犬猫と一緒にするな!!」 

勇者「すいません」 

エルフ「全く。自分の立場がわかっていないみたい……」 

勇者「よくわかりませんね」 

エルフ「え?」 

勇者「だって。僕の能力を測るつもりなのか、殺すつもりなのか……どっちなんですか?」 

エルフ「それは……」 

勇者「処刑までの猶予は僕が該当の人物なのか調べる期間であり、処刑は僕の力を調べる場だと考えても?」 

エルフ「そこまで考えてはいない……と思う。今のところ貴方はこの森に迷い込んだだけの旅人って扱いになっているし」 

勇者「そうですか。では、処刑はしないと?」 

エルフ「……なんの罪もない人を簡単に殺したりはしない。ボクたちは人間ではないので」 

勇者「優しい種族ですね……。魔物の一種族とは思えないぐらいに知的で紳士的です。益々、貴女のことが好きになりました」 




265:NIPPERがお送りします:2012/06/12(火) 23:32:39.37 ID:hpeqfj4Jo
エルフ「では、これで」 

勇者「待ってください」 

エルフ「まだ何か?」 

勇者「好きです」 

エルフ「……」 

勇者「アイラブユー」 

エルフ「……失礼します」 

勇者「ちっ……。どうして出会う女性は皆、ガードが固いのか。ゆるゆるだったのは姫様ぐらいだな」 

勇者「……」 

勇者(ドラゴンを倒すためにはエルフの力が必要だと、どの書物にも書かれていた……) 

勇者(でも、噂通り、エルフは大の人間嫌い……。懐柔は難しい……) 

勇者(このままでは二人と別れた意味がない。どうにかして仲間に引き入れたいところだけど……) 

勇者「月が綺麗だなぁ……」 

勇者「お二人は今頃、何をしているのか」 

勇者「ドラゴンが彼女たちを見つける前に……!」 




266:NIPPERがお送りします:2012/06/12(火) 23:37:28.43 ID:hpeqfj4Jo
―――翌日 エルフの里 

僧侶「……」 

魔法使い「もしかして……見つけた……?」 

僧侶「あ、あそこにいる人……耳の形が私たちと違います」 

魔法使い「本当ね……。じゃあ……ここが……」 

僧侶「はい……」 

魔法使い(でも……割と簡単に見つかったわね……この集落。これなら、とっくの昔に誰かが見つけてても……) 

僧侶「ど、どうします?」 

魔法使い「行きましょう。なんのためにここまで来たと思ってるの?」 

僧侶「で、ですね……」 

魔法使い「門前払いされたら、諦めましょう」 

僧侶「門前払いで済まなかった……?」 

魔法使い「そのときは……戦うしかないわね」 

僧侶「相手は魔法の祖ですよ?!」 

魔法使い「エルフは人間のこと嫌いだっていうし、攻撃されることは頭に入れておかないとダメでしょ?」 




267:NIPPERがお送りします:2012/06/12(火) 23:41:46.79 ID:hpeqfj4Jo
僧侶「絶対に死にますよ!!」 

魔法使い「なんとか逃げればいいでしょ」 

僧侶「この森をですか?!」 

魔法使い「そうよ!」 

僧侶「魔物に襲われたらどうするんですか!!」 

魔法使い「そのときは戦うしかないでしょ?!」 

僧侶「エルフの追撃をかわしながらですか?!」 

魔法使い「そうするしかないでしょ?!」 

僧侶「どっちにしろ殺されますよ!!」 

魔法使い「じゃあ、何かいい考えあるの?!菓子折りの一つも持ってきてないでしょ?!」 

僧侶「えっと……非常食ならありますよ。勇者様に買って頂いた」 

魔法使い「馬鹿!!そんな物で―――」 

エルフ「あの」 

魔法使い「なによ!!―――あ」 

エルフ「こちらに来ていただけますか?抵抗するなら、多少痛い目を見てもらうことになりますが」 




268:NIPPERがお送りします:2012/06/12(火) 23:46:04.69 ID:hpeqfj4Jo
―――長老の家 

長老「この者たちか」 

兵士「はっ。騒いでいましたので捕らえました」 

僧侶「ご、ごめんなさい」 

魔法使い「……」 

長老「して、何が目的だ?」 

僧侶「魔法を使いこなしたく思いまして」 

長老「なに?」 

魔法使い「私たち魔力の使い方が下手糞なの。それでエルフに会えばコツを教えてもらえるかもって思って」 

長老「ふむ。それがここまで足を運んだ理由か?」 

僧侶「はい!」 

長老「何のためだ?」 

魔法使い「魔王を倒すためよ」 

エルフ「な……」 

長老「そうか……なるほど……」 




269:NIPPERがお送りします:2012/06/12(火) 23:49:24.44 ID:hpeqfj4Jo
長老「奴をここへ」 

兵士「はっ」 

魔法使い「やつ……?」 

長老「お前たちに会わせたい人間がいる」 

魔法使い「まさか……」 

僧侶「そんなこと……」 

兵士「―――連れてきました」 

勇者「どうも」 

魔法使い「……」 

僧侶「勇者様!!!どうしたのですか?!」 

勇者「謂れの無い罪で捕まってしまいまして」 

魔法使い「どうせ女のエルフを追っかけまわしたんでしょ?」 

勇者「おや。よくわかりましたね。半分、正解です」 

僧侶「勇者様……」 

長老「やはり貴様らは仲間だったか」 




270:NIPPERがお送りします:2012/06/12(火) 23:59:26.98 ID:hpeqfj4Jo
勇者「いえ、違います」 

魔法使い「そうね。仲間だった、からね」 

僧侶「……」 

エルフ「喧嘩ですか?」 

僧侶「そうなんです」 

エルフ「ふーん」 

長老「こちらとしても都合がよいな」 

勇者「……」 

魔法使い「どういうことよ?」 

長老「三人まとめて処刑を行う」 

僧侶「えぇぇぇ?!」 

魔法使い「ちょっと待って!!この変態は死刑でもいいけど、私たちは関係ないわ!!」 

勇者「僕、勇者なのに情状酌量の余地なしですか?酷い」 

長老「我が一族の掟だ。疑わしき人間は全て罪人として処罰する」 

僧侶「そ、そんなぁ……」 




271:NIPPERがお送りします:2012/06/13(水) 00:04:24.72 ID:hpeqfj4Jo
―――牢屋 

魔法使い「アンタねえ!!どうして別れてもこういうことに巻き込むのよ!!」 

勇者「これはもう運命の赤い糸で結ばれているのかもしれませんね」 

魔法使い「バッカじゃないの?!」 

僧侶「あの……抑えてください……」 

魔法使い「あんたもどうして文句言わないの?!」 

僧侶「えっと……私は勇者様と合流できてほっとしてますけど……」 

魔法使い「もう……」 

勇者「でも、僕たちの命もここで終わりですね」 

魔法使い「アンタの所為でね」 

勇者「勇者の血を絶やすわけにはいきません。さあ、服を脱いでください」 

魔法使い「なに考えてるのよ?!」 

僧侶「そ、そうです!どうせみんな死ぬんですから、種をまいても……」モジモジ 

魔法使い「そういう意味じゃないわ!!!」 

エルフ「楽しそうですね」 




272:NIPPERがお送りします:2012/06/13(水) 00:10:56.83 ID:hpeqfj4Jo
勇者「あ、ボクっ娘さん」 

エルフ「貴方は黙ってて」 

勇者「はっ!」 

魔法使い「なに?処刑方法が決まったの?」 

エルフ「我々の処刑は儀式的に行います。―――貴方たちは特設の舞台に上がり、そこで神官三名と戦って頂きます」 

僧侶「し、神官と戦うのですか?」 

エルフ「はい」 

魔法使い「エルフの神官って……」 

エルフ「この里で最も魔術に長けた者たちです」 

僧侶「昔、死刑囚と猛獣を戦わせ見世物にする処刑があったと聞きます……。そういった類のものですね?」 

エルフ「端的に言えばそうなります」 

魔法使い「人間じゃエルフの神官にか到底叶わないと知っていて……」 

エルフ「でなければ処刑になりませんから。ですが、万が一、神官たちを倒せば……」 

僧侶「解放されるのですね」 

エルフ「はい。それはお約束致します」 




273:NIPPERがお送りします:2012/06/13(水) 00:16:51.94 ID:hpeqfj4Jo
魔法使い「……」 

僧侶「……」 

勇者「公開処刑とはなんとも残忍な」 

エルフ「勝てばいいのです。勝てば」 

魔法使い「そんなの無理に決まっているでしょう」 

僧侶「そうですよ!!」 

勇者「……貴女もそう思っていますか?」 

エルフ「え……」 

勇者「……」 

エルフ「当然。神官たちが負けることはまずありえない」 

勇者「あーっはっはっはっはっは!!」 

エルフ「な、なに!?」 

魔法使い「ついに壊れた?」 

勇者「僕の側室候補ともあろう御人が、まさか節穴の双眸だったとは……情けない。僕はガッカリしました」 

エルフ「なんだって……?!」 




275:NIPPERがお送りします:2012/06/13(水) 00:23:37.36 ID:hpeqfj4Jo
勇者「この二人はこの僕が!!勇者である僕が目をつけた術士だ!!!」 

僧侶「あの……」 

魔法使い「外見だけで選んだくせに」 

エルフ「それがなに?」 

勇者「つまり、エルフの神官よりも強い」 

エルフ「な……?!」 

僧侶「えぇぇぇぇ?!」 

魔法使い「そうだったの?!」 

エルフ「二人が私より驚いているけど?」 

勇者「敵を欺くにはまず味方から。二人にはいつも罵りの言葉を叩きつけてますからね。二人は自分のことをできねえやつだと思い込ませていました」 

エルフ「どうしてそんなことを……」 

勇者「自分よりも優秀な奴に勝てば励みになる。勝利の快感を覚えれば、更に努力しようと思えるでしょう?」 

勇者「自分は天才だ。勝って当たり前と思っていては、それが自分の限界だと決めつけ、努力をしなくなる!!だからこそ、僕は身を削る思いで蔑んできました」 

僧侶「そうでしたっけ?」 

魔法使い「むしろ、いつも褒めてくれてた気がするわ」 




276:NIPPERがお送りします:2012/06/13(水) 00:28:48.38 ID:hpeqfj4Jo
勇者「だから、今こそ本気を出すときです!!」 

僧侶「そう言われましても……」 

魔法使い「流石に魔法の創造主を倒すなんてこと……」 

エルフ「では、楽しみにしている」 

勇者「望むところだ。忘れるな。僕たちが勝てば、お前は俺の側室だからな」 

エルフ「誰がそんな約束した?!」 

勇者「したよ!!しらばっくれるな!!」 

エルフ「……いいでしょう。受けて立ちます」 

勇者「やったー」 

エルフ「ふんっ。どうせ、勝つことは不可能だけど……」 

勇者「やってみなくてはわかりません」 

エルフ「……」 

勇者「僕は死ぬわけにはいきません。最後まで足掻いてみせます」 

エルフ「苦しむのは貴方だ。―――魔王に歯向かわなければ、こんなにことにならなかったのに……」 

勇者「……」 




277:NIPPERがお送りします:2012/06/13(水) 00:32:39.93 ID:hpeqfj4Jo
―――夜 

勇者「……」 

僧侶「ふわぁぁ……はぁ……」 

勇者「お二人はもう休んだほうがいいですよ?」 

魔法使い「変なことする気?」 

勇者「してもいいですか?」 

魔法使い「ダメに決まってるでしょ?」 

勇者「では、何もしません」 

僧侶「あの……勇者様、何をされて……?」 

勇者「明日、どう戦うかを考えています」 

魔法使い「無理よ。考えるだけ無駄。どんなに戦術を組んでも、圧倒的な戦力には負けるわ」 

勇者「……」 

僧侶「勇者様……」 

勇者「絶対に死なない……こんなところで……死んでたまるか……」 

魔法使い「アンタ……どうしてそこまで……」 




278:NIPPERがお送りします:2012/06/13(水) 00:42:46.58 ID:hpeqfj4Jo
―――魔王城 

長老『―――明日、勇者と戦います』 

魔王「でかした。ふふふふ……たまには役に立つな。負けてもいい。しっかりと相手の能力を測れ」 

長老『ですが……恐らく、殺してしまいます』 

魔王「構わん。殺せるなら殺せ」 

長老『わ、わかりました……』 

魔王「ふん……。ニンゲンに魂を売った下等種族どもめ……」 

ドラゴン「捨て駒としてはいいですね」 

魔王「ああ。勇者一行の能力を調査するためには戦うしかない。しかし、全力を出させるためにはそれなりの実力者が必要だ」 

ドラゴン「とはいえ、戦の前に貴重な強者を向かわせるわけには行きませんからね。失ってしまったとき、大きな損害となりますし」 

魔王「そうだ。だが、エルフの連中はいくら死んでも良い。我らには非協力的だしなぁ」 

ドラゴン「しかも、ニンゲンよりも強い。この上ない適材者ですね」 

魔王「勇者が死ぬのならそれでよし。生きていても、勇者らの特徴は得られる。どちらに転んでも得をするのは我だ……くくくく……」 

ドラゴン「結果が楽しみですね」 

魔王「全くだな……」 

 

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最終更新:2013年06月01日 00:47