或る土曜日


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「じゃあ出かけてくるねー」

そう言うと、母親が作ってくれたサンドイッチと勉強用具をリュックに入れると、ケッタを漕いで獣耳図書館へ向かった。
今日は土曜日で学校は休みである。一応部活に入っているのだがそんなに厳しいものではなく、平日のみ活動をするというゆるさである。

ケッタでゆっくり走ること10分、獣耳図書館に到着。
図書館に入るとカウンターのところに猫耳幼女さんが座っている。何やら猫耳幼女さんは電車が好きなようで、古い鉄道雑誌をよく読んでいる。今日読んでいるのも古そうだ。

「おはよー。今日も暖かいねー」
「うん。眠くなりそうだよー。今日はどんな本読んでたのー?」
「これだよー。地方私鉄の今っていう本で、30年くらい前の本なんだけど今よりも文章が多くて読み応えがあるのー。『はねてつどー』っていうのが気になってるのー」
「あたしも親戚の人が関東の方に住んでるから夏に行くんだけど、『ほくぶきゅーこー』は乗るよー」
「ほくぶきゅーこーかあ。いいなあ」

そんな話を終えると、「いつもの席」に座る。
窓側の角の席。なぜか落ち着くのだ。

リュックから勉強用具を出して勉強を始めることにする。今日は苦手の数学である。
いわゆる文系科目は得意なのだが、理系はちょっと苦手だ。そして今回は一番苦手なベクトルである。

私が悩んでいると、メイドさんが傍にやってきた。
このメイドさんはカウンターのところにいた猫耳幼女さんと一緒にここに住んでいるのだ。

「あらあら、犬耳さん悩んでいるみたいですね……」
「うん。これ難しいのー」
「フフフ、頑張ってくださいね。私は分かるんですけど、答えを教えてしまったら犬耳さんの為になりませんからね」そう言うと、メイドさんは不敵な笑みを浮かべながらカウンターの奥に消えていった。
「むー、メイドさんのケチー」

分からないものは分からないとギブアップをしようとした丁度その時、メイドさんが何やら本を持って来てくれた。

「犬耳さん、あれから解けましたか?」
「ううん、難しいのー」私は首を横に振りながら言った。
「実は、私が高校時代使っていた数学の参考書があるかと思って探しに行ってましたの。これ使ってみてください」
「え、いいの? ありがとー」

メイドさんは「それでは」と言うと再びカウンターの奥に消えていった。

メイドさんから借りた参考書を見ながらやってみることにした。
その参考書は非常に分かりやすく書かれていたのか、今までのことが嘘だったかのようにすらすら解けた。
あれだけ悩んでいた問題を30分程度で解いてしまった。

ちょうどその時、館内に12時を知らせる時計の音が鳴った。
猫耳幼女さんとメイドさんが昼ご飯を食べるようなので、一緒に食べることにした。

「犬耳さん図書室に来ていつも勉強してるよねー。すごいよね」とは猫耳幼女さんの弁。
「えへへ、ありがとー。ここに来ると落ち着いて勉強できるのー」
「ところで犬耳さんは将来はどうするんです?」メイドさんが興味深々で聞いてきた。
「うーん、都会の大学に行こうかなと思ってるの」
「遠くなーい? 大丈夫?」
「大丈夫だよ。ここから通おうと思ってるよ」
「ずっと会えるんだね。嬉しー!」そう言うと猫耳幼女さんがぎゅーっとしてきた。

私たちが大きくなっても、多分この風景はいつもと変わらないんだな。
時間はゆっくりと流れていく。

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