雨の図書室

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『さー……』 雨の日の図書室は雨音しか聞こえません。 メイドさんはお夕飯の買い物に行くと言って、さっき出掛けて行ってしまったので一人で図書室の貸出カウンターに座っています。 こんな日は朝から一人も来ないので、ずっと本を読んでいます。 『ぎっぎっぎっぎっ……』 どこかからカエルの鳴く声が聞こえてきました。 なんだか眠い……。 うとうとしてくると身体がなんとなく暖かくなってきて、頭の上の耳がたらーんと垂れて来ます。 広げていた本の文字が追えなくなって来ました。目で追っても内容が頭に入って来ません。 視界が狭まって、字がぐちゃぐちゃになって、曖昧なもやもやに見えます。 『ぼーん、ぼーん……』 壁に掛けてある柱時計が四回鳴りました。もしかしたら五回だったかも知れません。 本を持つ手が緩まり、本のページがぱらぱらとめくれます。 ああ……栞を挿してない……。 そのまま目の前の本やら外の雨やらが混ざり合って、曖昧になって、そのまま溶けていきました。 『……がたんっ』 何か物音がします。 うにゃ……? 身体が重いです。 「あら、お目覚めですかー」 カウンターの前にメイドさんが立っていました。どうやら買い物から帰って来たようです。 「にゃ、おかえりなさい」 「もう、こんな所で寝ちゃダメですよ。風邪ひいても知りませんから」 「はーい。……ねえねえ、今日のおゆはんなーに?」 「今日はシチューですわ」 そう言いながら頭を撫でられました。なんだかくすぐったいです。 窓の外で雨はまだまだ降り続いていました。 明日は晴れるかな。

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