その刀はもともと、足利家に代々伝わってきた宝物なのだ。 その名は、村雨。 すばらしい切れ味で、きると水がほとばしり出るという伝説は、あまりに有名だ。 信乃の父は、足利家の家来として深く信頼されていた。だから足利家が戦で危なくなったとき、 村雨を預かり、守ってこの村へと逃げたのだ。
その瞬間、荘介の体に冷たくふりかかったのは、水。 霧雨のような細かい水しぶきが、相手の刀から飛び散っている。 それは、ようやく顔を出した月の光に、白く輝く煙となって消える。
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