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ヴァッファローヴェル

ステータス ス キ ル プロフィール
攻撃 20 1 戦いの年季 名前の読み ヴァッファローヴェル
防御 0 2 後援者 性別 女性
体力 0 3 不死身の戦士 衣装 球団のユニフォーム
精神 6 胸のサイズ 貧乳
反応 0 格闘スタイル 野球殺法
FS 9 FS名 ケモノ 武器 バット

必殺技 『猛牛ナイアガラ』 (消費MP:12)

効 果 : 強攻撃×2回 (ガード不可、最速攻撃)

制 約 : なし

説 明 : ウォリックス伝統の双頭打ち。この技を受けて立ち上がったランナーはいない。

キャラクター説明

日本プロ野球球団「ウォリックス・ヴァッファローズ」のマスコットキャラクター。
雌牛っぽいフォルムをしているが非常にあざとい。ツバメが苦手。
擬人化された牛の着ぐるみの中に女が入っている。

エピソード



「――あ、あの、監督。私に世界格闘大会に出場しろって、一体どういうことですか……?」

日本プロ野球球団「ウォリックス・ヴァッファローズ」の本拠地、狂セラドームの地下深くに建てられた、極秘練習場の会議室にて、ヴァッファローヴェルはウォリックスの現監督林脇浩二と向かい合っていた。

球界を裏から牛耳る機密組織「大正義黄道十二球団」の幹部をも務める林脇は、彼女の直属の上司に当たり、ヴェルはこれまで彼の指示に従って、いかがわしい写真集の撮影や危険なバイクショーなど様々な任務をこなしてきた。
しかし、今回彼女に課せられたのはこれまでの任務とは一線を画すものであった。

「聞いての通りだ。ウチは他の球団に比べて資金難で人気もない。だから、今回の世界格闘大会人気に乗っかってなんとか巻き返してやろうってこと」

林脇は憮然とした顔で答える。

「お前が優勝すりゃあウォリックスの人気筆頭は間違いなしだ。野球ってのも所詮は興行だからな」

「いや、そういうことじゃなくて……わたしには無理です!」
「格闘なんかできないし……第一、大正義黄道十二球団会則十一条に『マスコットヲ野球以外ノスポーツニ出演サセルコトヲ禁ズ』ってあるじゃないですか。そんなことがばれたらミスターに怒られちゃいますよっ!」

ヴェルは猛然と反論する。こんな危険な任務は絶対に受けるわけにはいかない。

「いやそれがな、今回に限っては球界からのお咎めは一切無しなんだわ」
「HARAの提案でな、『十二球団の全マスコットたちを戦わせて、勝ち残ったマスコット一体のみが世界格闘大会に出場できる』ってことになったのさ」

「えっ……?」

ヴェルは自分の耳を疑った。
十二球団のマスコットを戦わせる? 林脇がまたタチの悪い冗談を言っているのだろうか。

「これはもう決定事項だ。もうすぐNPBからの正式発表があるから、しっかり準備しておけよ」

いつも冗談を言う時笑っていた林脇の目は、今回、いつになく真剣だった。

「そ、そんな、わたしは嫌です! 他のマスコットたちと潰しあいをしろだなんて……」

「他のヤツらは結構乗り気だったみたいだぞ。合法的に他球団のマスコットを潰せる、ってな」

「……」

そこまで言われれば、もうヴェルは黙るしかない。

「お前なら絶対勝てるって。ウォリックスも総力をあげてお前をバックアップするから心配すんな。ガッツだガッツ」

適当な励まし文句を並べた林脇は、じゃあな、と言ってそのまま会議室から出て行ってしまった。


● ● ●


「――うぅっ、ぐすっ」

一人取り残されたヴェルは必死で涙をこらえていた。

「(嫌だよ。わたし、みんなと戦いたくない)」

ヴェルは自然とこれまでマスコットたちと過ごしてきた日々を想いかえしていた。
――バイクパフォーマンスのやり方を教えてくれたマークソ。
――一緒に写真撮影してくれたハリィホーク。
――襲い掛かってきたファンを捨て身タックルで取り押さえてくれたスアィリー。

彼らと盛り上げてきた球場の思い出は、どれもこれも懐かしいものだった。

「(わたしたち、もうあの頃には戻れないのかなぁ……)」

零れ落ちそうになった涙を抑え、とりあえず顔でも洗おうかと立ち上がったその時、

――ドォォン!!

なにか爆竹のようなものが破裂するような、耳障りな轟音が鳴り響いた。
続いて、「Lv2緊急事態発生、レベル2キンキュウジタイハッセイ。侵入者、アリ。クリカエス。侵入者、アリ。職員並ビニ研究者ハ直チニ退避シテ下サイ」という危険を知らせるアナウンスが流れる。

先日のウォリックスの惨敗に腹を立てたファンが暴動でも起こしたのだろうか。
さきほどの轟音は気になるが、緊急レベル2程度なら別に心配は要らない。すぐに特殊部隊に鎮圧されるだろう。
そうは言うものの真っ赤に腫れたまぶたを誰かに見られるのが嫌だったヴェルは、もうしばらく会議室に留まっておくことにした。


● ● ●


――十分後、部屋の外はすっかり静かになっていた。

「もう大丈夫だよね」

ヴェルはゆっくり扉を開けると、会議室外の様子をうかがう。


――部屋から一歩外に出ると、そこは地獄だった。
ありとあらゆる設備がなぎ倒され、抉り取られ、廊下にはあちこちから血を流した職員たちがピクリとも動かずホームベースの形に折り重なって倒れこんでいる。
まさに死屍累々たるありさまであった。

「えっ、これ……は……?」

状況を理解できず、ヴェルは思考停止に陥る。

――と、倒れている職員の山の中から、微かに呻き声が聞こえてきた。
ヴェルはとっさに駆け寄り、「大丈夫ですかっ」と言いながら生存者を死体の山から引っ張り出す。
すると、それはつい先ほどヴェルに残酷な任務を課し、去っていったはずの林脇監督その人であった。

「うぐっ……、ゲホッ、ゲホッ」

相当苦しいのだろうか。林脇は何度も咳き込み、筋肉質な体を小刻みに痙攣させる。

「監督、大丈夫ですか!? 何があったんですか!?」

林脇の体を抱え起こしたヴェルは矢継ぎ早に質問を飛ばす。

「げほっ、早く……にげ……ろ。ヤツが……来……る」

「監督! 何があったの!? 監督! ”ヤツ”って誰なの!?」

ヴェルは必死で林脇の体を揺する。

「”ヤツ”……だ。……正式発表があった直後に……この狂セラドームに襲撃をかけてきやがった……。くそっ……」

「監督……!」

「俺としたことが油断した……。げほっ……お前には……どうしても優勝して欲しくて……あんな言い方しちまったが……逆効果だったみたいだな……すまんかった」

そこまで言うと林脇は意識を失った。
力こぶが膨れ上がった逞しい腕がだらりと垂れ下がる。

「監督っ、監督っ……!」

「おやおや、かわいい声がするから誰かいるのかと思ったら、案の定ヴェルちゃんじゃねぇかァ。こいつはご無沙汰だぜ」


兎にも角にも林脇を介抱しようとしたヴェルの耳に、やたらとダンディな男の声が飛び込んできた。

「それじゃあ早速、死合っちゃおうかねェ。今回は初球ストレートで決めてやるよ」

突然の殺害宣言に続き、時速150キロの野球ボールが廊下の奥からヴェルの脳天めがけて飛来する。

「……っ!」

彼女はとっさの判断で体を沈めてそれをかわし、体勢を立て直した。

林脇監督の安否は気になるが、見たところ命に別状はなさそうだ。
とりあえず彼の言っていた「ヤツ」――おそらくはあの声の主だろうが――を倒すことが先決だろう。

「誰ですか! 姿をあらわしなさい!」

「クククク、言われなくても出てきますよ、っと」

ヴェルの声に答えて緩慢な動きで廊下の角から姿をあらわしたのは――、
つぶらな瞳に薄ら笑いを浮かべた口。マスコットには不釣合いな細身の体。
――中日ドラゴムズの公式マスコット、”荒ぶる有袋類”ドァラだった。


● ● ●


「ドァラさん……!」

予想外の登板にヴェルは動揺を隠せない。

「ククク、悪く思うなよ、ヴェルちゃん。世界大会に出場するのは我らが中日ドラゴムズのパオロムなんだからなァ」
「しっかしたまげたぜ。狂セラドームのセキュリティの脆弱さは。ウチのナヤゴドームに比べると障子紙だな、障子紙。」
「ま、つーわけで、ドラゴムズの発展のために、ウォリックスのゴミどもと一緒に死球(し)んでくれや」

血塗れのバットを素振りしながら、ドァラが近づいてくる。

「くっ……このっ!」

ヴェルは怒りに任せて一気呵成に間合いを詰めると、その細身の体へボディーブローを三発打ち込む。
――だが、相手も中日のマスコットキャラだ。全て見切られ、受け流されてしまう。

「おっと危ねェ。スピードも体力も無いヴェルちゃんだが、そのバカ力だけは侮れねぇからなァ」

軽やかなステップでヴェルの猛追をいなしたドァラは、手にしたバットを横薙ぎに振る。

「ぐ……ふっ」

がら空きの横腹にバットをモロに受けたヴェルは、わき腹を押さえてうずくまった。

「”打たせて、殺る”! ドラゴムズ伝統の『強龍打線』を甘く見ると怪我するぜェ」

ドァラは残酷な笑みを浮かべ、バットを振りかぶった。

「これでまずは白星ゲットォ!! 次は日ハムのモヒカン熊野郎でも潰しますかねェ!」

自分の頭めがけて振り下ろされるバットが、ヴェルの目にスローモーションで映る。

「(……ああ、このままわたし、死んじゃうのかなぁ)」
「(……そんなの……嫌だよ。みんなともっと野球がしたかった……なぁ)」

――その刹那、奇妙な現象が起こった。
ヴェルの体を包んでいた着ぐるみが奇妙に歪んだのだ。
着ぐるみがせり出し、引き込まれ、渦巻く。
それは、中に封じ込められた「なにか」が外皮を突き破って外へ逃れ出ようとするようにも見えた。

「……ウゥウゥウウウゥウゥウゥゥゥウ」

重機の駆動音とも虫の羽音ともつかない、全身の神経を逆なでするような重低音がヴェルの全身から漏れ出す。

その異様な雰囲気に、ドァラは止めを刺すのを止め、距離をとる。
マスコット歴十九年の勘が、彼に危険を知らせたのだった。

「……なんだありゃあ。一体何が……まさか!」

ヴェルの状態について、ドァラには、一つだけ思い当たる節があった。
そして、口元を吊り上げたおなじみの笑顔のまま、その「忌まわしき名」を吐き捨てるように呟く。

「……ヤロウ、”戦犯(クリミナル)”か……!」


● ● ●


――突然だが、我々が死んだ後、魂が行き着く場所には、四つの世界があるとされている。

一つは、生前善きことを成したものが神の元で平穏を得る「天国」。
一つは、生前悪しきことをしたものが罪を贖うために堕とされる「地獄」。
一つは、そのどちらでもない者が処罰を待つ「煉獄」。
そして――、生前野球を愛し、野球に殉したもののみが辿り着くとされる、「球獄」。

四千年前、バビロニア人たちが記したとされる幻の経典、「球約聖書」によると、かつてその球獄には、「ボートー」という魔神がおり、その世界を余すところなく破壊し、蹂躙し、非道の限りを尽くしていたという。
しかし、ある日、その魔神は聖なる野球の神「ミスター」によって捕らえられ、滅されることとなる。
ボートーの悪逆非道もここまでかと野球の民が胸を撫で下ろした時、恐ろしい呻き声が地の底より響き、こう告げたという。

「おろかな野球の民どもめ、我は滅びぬ。我は貴様らの心に巣食う。何人たりとも逃れることはできぬ。貴様らが過ちを犯したとき、我は再び目覚めるであろう」、と。

それ以来、戦犯の復活を恐れた野球の民たちは、代々「マスコット」と呼ばれる人身御供をたて、ボートーの「毒」をその身に受けさせることで、戦犯が野球民の心へ入りこもうとするのを防いでいたのだった。

――これは所詮伝承に過ぎないが、多少なりとも真実が含まれている、というのは事実のようである。
なぜなら、「ボートー」によって毒を受け続けたとされるマスコットは、時たま「戦犯(クリミナル)」とも言うべきトランス状態に入ることがあるからだ。
近年の研究によって、「肉体、精神が著しく消耗する」、「憎しみで心が満たされる」などの条件を満たすことによって、この状態に覚醒することが多い、ということが分かっている。
また、戦犯状態に陥ると、激しい身体能力の上昇、加えて残虐性の増長、倫理観の欠如などの特徴が見られるようになるという。
そして、この状態に至ったマスコットは非常に少なく、今世紀では、巨人ヂャイアンツの「ジャビード」、阪神ダイガースの「トラッキィ」の二名のみがこの力を使いこなし、マスコットたちの頂点に君臨している。

――そして、今、この場にもう一人、人ならぬ神の力を得たものが目覚めんとしていた。


● ● ●


「……くそっ、なんだってんだ、あのバケモンは!」

足を引きずり、よろめきながらも、笑顔のままのドァラが毒づいた。
無理もない。なぜなら、もはや彼の目の前にいるのは、先ほどまでのなよっちい弱小マスコット、「ヴァッファローヴェル」ではないのだから。

「あれ? あれれ? ドァラさん早く野球しましょーよ、やきゅー! さぁさぁ、打ってください。ジャンジャンバリバリノックしてくださいよー」

空ろな目は完全に光を失い、二本の角は異常なまでに伸長し、そして全身にはまだらのどす黒い染み。残虐性の増長、倫理観の欠如。
完全に戦犯状態であった。

「打たないんですかー? だったら、えーと、『バッター代わりましてー222番、ヴァッファローヴェルの打席でーす』っ。打っちゃうぞー打っちゃうぞー」
「そーれっ」

――バギッ

「うぐっ……はっ…………くそっ!」

ヴェルが手にした金属バットは、寸分違わずドァラの肩の骨を砕き、ついでに彼の選手生命もを砕く。
彼女の打撃力、反応速度、選球眼はもはや全盛期のゴジラマッツイに匹敵するまでになっていた。

「て、てめぇ……俺を倒してもそれで終わりじゃねぇぞ。――ヤルクト”畜生ペンギン”つば八郎、ヴェイスターズ”熱星”ホッシーゾー、カァプ”笛吹き”スアィリー。俺より強い奴らはいくらでもいる……」

「ふーん、あっそ」

だが、「戦犯」のヴェルは全く意に介さない。

「な、中でもっ――、ヂャイアンツ”因幡の帝国”ジャビード、ダイガース”六甲颪”のトラッキィ。この二人には絶対に勝てねぇ……。てめぇのマスコット人生は結局詰みなんだよっ……!」

――そして、それが、ドァラの最期の言葉となった。
先ほど自分が、彼女にしようとしたのと同じように、頭を中身ごと潰され、それで終りだった。


● ● ●


――ここは、いったいどこだろう。

気づくとわたしは全身血塗れで座り込んでいた。
目の前には頭が潰れたドァラさんの亡骸。
視線を横に向けると、死体の山。
さっきの出来事が夢じゃなかったんだと思い知らされ、また涙がこみ上げてくる。

わたしの中の「戦犯」は、一時的に収まったようだけど、またいつかあんな風になってしまうのかと思うと怖い。
体の震えはまだ止まらないし、脇腹の痛みは悶えるほどだ。

でも――、でも、わたしは立ち上がらなくてはならない。
わたしを護ってくれた全てのヒトにために。
わたしを脅かそうとする全てのモノのために。

外からパトカーのサイレンが聞こえてきた。
どうやらここまでの騒ぎを聞きつけて、ようやく警察が駆けつけてきたようだった。

――ここにいてはいけない、という思いが胸に湧き上がってくる。
ここにいる限り、他のマスコットたちは次々とあらわれ、そして、わたしの大切なものを全て破壊しようとするだろう。

昼寝でもしているかのように穏やかな表情で目を閉じている林脇監督の手をしっかりと握り締めた後、
わたしは数本のバットとミットグローブを抱え、狂セラドームを人知れず抜け出した。

ドームの出口から見上げた月は、わたしの中の全てを見透かすように皓々と煌いていた。