※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

謎の襲撃者、その正体


真木ハルコは帰ってこなかった。
魔技姫ラクティ☆パルプは帰ってこなかった。
病院で財前倉持に敗れ、転校生〈未来支配者〉として再び姿を見せた後、どこに行ったのかはわからない。
静穂と瑠璃奈は、自分たちだけで事件の幕を引く決意を固めた。
追い詰められた真犯人が口封じを図ったら――?
その可能性は低いと思われたが、もしそうなったら2人の命はないだろう。
だが、2人はパルプの意志を引き継ぎ、危険を冒すことにしたのだ。
パルプの思いが人を動かし、誰かが最終的に未来を切り拓く。
それが、パルプの『ばっちり解決』なのだから。

夜。2人は病室の扉を開き、解決編を宣誓する。
「犯人は――」
「あなたです……!」

まだ戦いの傷が癒えず、左腕に点滴をつけた『犯人』はゆっくりと半身を起こして2人を迎えた。
「やっと――辿り着いてくれたのですね。もっとも、来るのはラクティさんだと思っていましたが……」
その声は悲しげだった。

「ラクロスと格闘技に取り組む、先輩の真摯な姿勢は尊敬しています」
「でも……あなたは『やりすぎた』。そうですね……大納言先輩」

「なぜ私自身が犯人だと考えたのか、聞かせて貰えるかしら?」
襲撃事件の『犯人』、大納言蘭は努めて平静を装って尋ねた。
だが、フルフェイスヘルム型アイガードの奥から響く、その声は震えていた。

「パルプさんがいくら調べても、参加選手の中に犯人らしき人物はいませんでした」
「先輩の言葉に嘘がないなら……犯人は『選手なのに大会に参加していない選手』」
「『被害者自身が真犯人』――私たちは迷ド探偵たまきさんの正体を知って、この発想に至りました」
「大納言先輩、あなたの真の能力は『コピー能力』……違いますか?」

「正解よ。よくわかったわね」

「先輩は、毎晩遅くまで独りで熱心に練習をしてました。でも、先輩の練習には不自然な点があったのです」
「フェイント、パスワーク、対人格闘……先輩の得意技は、独りだけで練習するのは難しいものばかりです」
「先輩の能力は――『望む人物のコピーを作り出し練習相手とする能力』!」

445 :未来支配者:2013/12/11(水) 08:19:06 「そうです。能力名『シャドウ蘭にゃん'sメイト』。孤独な私が生んだ寂しい能力――誰にも知られたくなかった……」

「あの夜。光璃さんと別れた先輩は、腕試しがしたくなり光璃さんのコピーを作り出し戦った」
「でも……光璃さんは想像以上に強く、先輩は大怪我をしてしまう……」
「そこに勘違いしたパルプさんが現れて先輩を助けた」
「能力を隠したい先輩は咄嗟に被害者のフリをして……そのまま本当の事を言い出せなくなってしまった……」

「全部……全部あなたたちの推理通りです……」
大納言蘭は、フルフェイスヘルム型アイガードを脱ぎ、静穂と瑠璃奈に素顔をさらした。
ユノハナガニのように白い肌。ユビワサンゴヤドカリのように可愛らしい瞳は涙に潤んでいた。
大納言先輩の素顔は、2人がしばらく言葉を失うほどに美しかった。
「私のせいで……私が本当の事を言えなかったせいでハルコちゃんは……」
大納言先輩はぼろぼろと涙を流した。
煌めく涙が頬を伝い、白いシーツを濡らしてゆく。

「先輩! 泣かないでください!」
「大丈夫……きっと、ハルコは大丈夫です……!」
「先輩も見たでしょう?〈未来支配者〉のことを。大人の姿になってたけど、あれは間違いなくハルコだった!」
「あの強さ……気品あふれる毅然とした振る舞い……」
「たぶん、格闘大会の中で、ハルコは大切なものを見つけ出したんです!」
「だから大丈夫……! 先輩も、そんなに気に病まなくていいんです……!」

「そうなの……かしら……?」
そうなのだろう。
〈未来支配者〉は、今までのパルプ以上に希望に溢れ輝いていた。
ハルコが何を見つけたのかはわからない。
でも、私たちがするべきことは、後悔ではなく応援なのだろう。
ハルコは、魔技姫ラクティ☆パルプは、きっと今もどこかで誰かのために戦っている。
たとえ遠く離れても、ハルコは妃芽薗の仲間だ。

「というわけで……」
「大納言先輩襲撃事件!」
「ラクティ☆パルプが……」
「ばっちり解決! だね!」
静穂と瑠璃奈は、ハイタッチした。
楽しげな2人の様子を見て、大納言蘭ももう泣くのはやめた。
そして、窓の外に輝く星空に目を移し、ハルコの幸福を祈った。

(おわり)