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ダンゲロスホーリーランド4 ~Battle Cinderella~ ライク・ア・カレーのゲーム日記(7)


西暦2013年、平成25年の12月9日。日本の一地方都市にある、一つの書店の片隅にて――――

その人物は本棚から一冊の文庫本を抜き出し、愛おしそうにその表紙を指先で撫でた。

本棚に挟まれた通路を歩き、レジへと真っ直ぐ歩む。

手に持った本を店員へと差し出し、懐から財布を取る。

会計を済ませると、その人物は店員の元気な挨拶を背に、店を出た。

路上。手提げ袋に入った本をもう一度確認し、そこにある質量に対し、満足気に口の端を持ち上げた。

空を見上げる。

冬の快晴が、その人物の遥か頭上に、どこまでもどこまでも伸びていた。――――今日は良い日だ。


■■■


「待たせたね」
「ゆっくりでしたね」

白い壁、白い天井、白い机に白い蛍光灯。
見慣れたいつもの自室と、大きな鈴を鳴らすような、涼やかな声が迎えてくれる。
手提げ袋から買ったばかりの本を取り出し、白いPCデスクの右奥隅に、そっと置く。

「これが、そうですか」

真っ白なPCデスクの右奥隅には、黒い表紙の本が五冊、積まれていた。
買ってきたばかりの本をその上に重ねたため、今は六冊。
どの本も、黒い背景にきらびやかな衣装をまとった少女達が、瞳に星を散らして描かれている。

「これがそうさ」

この本こそが、全ての始まり。
この本こそが、最後の大ネタ。
この本こそが、ラ・ピュセルをホーリーランド4に送り出した、最大の理由。

「「これが――」」

声が重なり、ラ・ピュセルがそっと口を閉じる。目配せでこちらに言葉を譲る。
頷き、一人で言葉をつなぐ。
これがラ・ピュセルの名前の由来。

「本日より全国の書店にてシリーズ最新巻の六冊目が発売スタート。
 可憐に華麗な少女が織りなす、魔法と拳のバトルロイヤル。
 ラ・ピュセルの元ネタとなった同名の魔法少女も活躍する、華やぎ血煙る能力バトル。
 『魔法少女育成計画』――ちょうどホーリーランド4と同じ美少女達の闘う話。
 今、私がイチオシしている小説だ」

二ヶ月。時間を掛けて、語り続けた。
前回の反省にて、ラ・ピュセルは聞いた。自身の名前の意味と意図。
それの答えが今日この日。

そう、つまり。
この日この時、この瞬間に。
この発言を、せんがため。

これが最後の大ネタで。
これが名前の意味と意図。
平たく言えば、要するに。


「つまり――――ステマだ」


魔法少女育成計画 limited (後)。このライトノベルがすごい!文庫より、2013年12月9日、販売開始。





■■■ ダンゲロスホーリーランド4 ~Battle Cinderella~ ライク・ア・カレーのゲーム日記(7) ■■■





「ダイレクトマーケティングですよね」
「おおっと」

そんなこんなでラ・ピュセルのキャラクターメイキング舞台裏も全て公開となったこのゲーム日記。
とうとう数えること七回。いよいよラストも目前と相成りました。
もう前口上を長引かせる理由も、必要も、ネタもない。

「と、言う事で」
「早速、始めるのですね」

七度目の反省会、いってみよう。





○マッチング

「ネットワーク上のゲームに参加しているのだから、他のプレイヤーと絡んでナンボって奴だね」
「使用アイテムがアンダーリム……特に試合に影響は与えませんね」
「貰ったからには使う。当然だね」
「果たし状も頂いた訳ですが、せめてそちらを使おうとは考えなかったのですか」
「……考えた……が、導き出した最適解があまりに酷くてね。お蔵入りとなったんだよ」
「酷い、ですか」
「7ターン目に一攫千金を狙うなら、紫ノ宮選手を公園に呼び出して、ラスボスも公園に引っ張ってきて、
 自分は焔狐に勝負を挑む――焔狐とならタイマンで勝てるからね。
 そうやって賞金を稼ぎつつ、怪我を防ぎつつ、あわよくば連戦でも勝ちを拾う。これが魅力的な考えだった。
 実際のところは他に同じ転校生を狙う選手が二人もいたから実践したとして奏功したかは怪しいけれどね。
 まあ、でも紫ノ宮選手は伝言掲示板で声を掛けられていたからね。掻っ攫うのは申し訳ないと自重した、という訳だ」
「しかし紫ノ宮選手は最終的に伝言掲示板で断りの言葉を書いていましたが」
「……うん……そうなんだが……その書き込みの存在に気付いたのはだいぶ後だったんだ……。
 近頃は携帯端末からしか掲示板を見れていないんだが、どうもここのところレスが抜ける怪奇現象に悩まされていてね」
「なるほど」
「ラスボスを狙ったのは、もう拘ってやる事が無くなったから、折角なら一度は闘っておかないと、という理由だね」
「わかりやすいですね」





○ VS <終末を背負う者>

「ラスボス戦だ」
「ラスボスとして至極妥当なステータスでしたね」
「タイマンではとても勝てない強さではあったが……だが!」
「どうしました? ずいぶんと語調が強いですが」
「君の素晴らしい闘い……しかと見せてもらったよ! ありがとう!」
「私の、ですか……負けてしまいましたが」
「だが! 君は見せてくれた! カウンタービームクリティカルという最高のロマンを実際に!」
「あ――そうでしたね。確かに、貴方の最終目標を実行に移したとは言えるのですね……スキルで100ダメージでしたが」
「300という数字を叩きだせなかったのは惜しいが、しかしロマンが実現したんだ。胸が熱くなったよ。ありがとう」
「少し胸につかえるものもありますが……どういたしまして」





「このターンは1戦だけだったから、これで振り返るのも終わりだね」
「最後までステータスは全体的に満遍なく伸びましたね」
「防御も回避も、随分と強くなったものだね」
「パワーアップイベントSSでは、成長理由を死亡フラグと受け取れるようなものにしていましたので、正直不安でしたが」
「そうだったね。本当はあそこから怪我の治療を一切しないで大会を終えようなんて考えていたのだけれど……」
「そこもロールする予定だったのですか」
「流石に君の代名詞であるロマン砲が撃てないで最終ターンは寂しいしね」
「なるほど――ところで」
「なんだい?」
「冒頭で明かされた私の名前の元ネタですが、先日は明かすのを8回目の反省会にすると言っていませんでしたか」
「ああ……うん。すまない、最終ターンの行動提出締め切りを1日勘違いしていてね。日曜で締め切りかと思っていた。
 締め切り前に行動提出内容を事細かに書いた日記を出すのはどうかと思うし、
 かと言って折角の宣伝書籍の発売日を過ぎてからステマをするのも遅きに失した感があるだろう?
 だから、予定変更で日曜に投下予定だった7ターン目の反省会を今日に持ってきたんだ」
「しっかりしてください」
「ごめんなさい。
 ――と、まあ、今回の反省会はこんなところかな」
「七度目にして最も反省会の名前通りの内容になりましたね」
「そうだねぇ……これまでフリーダムにやってきたものだけれど、付き合ってくれてありがとう」
「どういたしまして――どうしたのですか、改まって」
「もう最後だからね」
「――もうそんな時期ですね」
「うん、楽しかったよ」
「では私も――こちらこそ、ありがとうございます」
「ああ、それじゃあ……」

また、次回。