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【第7ターン2戦目終了】シスター・マリー


「不死の霊薬?」
琥珀色の液体の入った小瓶をつまみ、シスター・マリーは尋ねた。
「……ええ、それは月に伝わる伝説の秘薬。予め飲んでおくだけで、如何なる怪我や病に掛かろうとも息を吹き返すこと請け合いです」
後頭部にできたコブをさすりさすり、月の巫女は病院の廊下でうつ伏せで答える。

第7ターン2戦目終了。
誇り高き吸血鬼を倒したマリーに間髪入れず襲いかかった月の巫女は、十字架による殴打で脳震盪を起こして伸されていた。
乱入者を倒した場合、何かしらの特殊なアイテムを貰えるとのことだった。
万能薬など存在しない……と普通なら思うところだが。

「あんたの魔法みたいな治療は、オレも身をもって体験してるからなあ」
2ターン目にアン・ラクシーに切断された左脚が、一夜の間ににょきにょきと生えてきたことを思い出し、さらに
「あー、そういえば貴女、腕も折れていたでしょう。オマケで治しておきましたからね」
いつの間にか痛みの引いている左腕に気づき、マリーは疑うことを諦めた。

「……なあ、この薬、万能薬なんだよな?」
「ええ」
「もし重病人に飲ませたら……治るのか?」
ふとした思いつきだった。だが、声が震えているのが自分でも分かった。
「そうですね。ゴクリと一服飲み干せば、如何な怪我人重病人といえどもたちまち息を吹き返します」

目の前がパアッと明るくなった気がした。
未だ目を覚まさない、危険な状態にあるエルザを助けることができる!
いや、その前に
「!!! そうだエルザは無事か!?」
脱兎の如く駆け出すマリー。

「大事に使うのですよー。あ、あと」
遠ざかる片翼の背中に向かって、月の巫女は声を掛けた。
「誰か人を呼んでくださると……あれ、あれぇ……」

***************

そんなやりとりを、綾鷹師匠がいなくなった病室で思い出す。
ポケットに入れた不死の霊薬の感触を確かめ、未だ目を覚まさぬ親友の顔をじっと見る。
『目覚めるのを拒否している』
師匠はそう言っていた。

霊薬に頼って無理やり意識を回復させたところで、果たしてエルザはそれを喜ぶだろうか。

『お前にしかできん仕事だ』

そうだ。オレはこいつの親友だ。

「エルザ、お前には言いたいことが山ほどあるからな」
小瓶を取り出し、親指に力を込める。
キュポン! と小気味良い音が響き、フタが外れた。

「だから……」
不死の霊薬を一気に喉に流し込む。
地球上のどんな液体よりも滑らかに、その薬はマリーの身体に染みこんでいった。

「賞品の少年とやらをとっ捕まえて、すぐに迎えに行ってやるよ」

***************

「クシュン! ……冷えてきましたね」
「風邪は万病の元と言いますし、冷たい床に転がっているのもいい加減飽きました」
「とは言え脳震盪で動けませんし」
「鉢子ー! 衣ー! 玉枝ー! 誰でもいいから居ませんかー?」
「…………」
「……グスン」