七日目の朝 -side Uranus-


「お、おかわりちょうだーい」
「はーい」

空になった茶碗を差し出すと、冥王星ちゃんが受け取っておかわりをよそってくれる。
毎度この瞬間はちょっと緊張する。
私、天王星が食べてるのはいわば「タダ飯」だ。働いてもなく、かといって学校にも通ってない状態でたべる御飯はどことなく気まずい。ましておかわりを貰うとなると尚更だ。
一応、世界格闘大会で賞金を稼ごうとしてるけど、それもあまりうまくいっていない為余計に申し訳なくなる。

「いっぱい食べてねー。天王星ちゃんは格闘大会で頑張ってるんだから、ちゃんと精を付けてもらわないとね。」

私の心中を察したのか否か、冥王星ちゃんはそんなことを言う。
「ありがとう……。」
小さく呟いて白米を咀嚼し始める。
どうも冥王星ちゃんと居ると調子が狂う。彼女がいい人すぎるからか、あるいは別の理由か――。

◇◇◇

「やほー!皆元気してる-?」

御飯を食べ終えた後、私は衛星たちに連絡してみた。

『やっほー!』
『……試合の結果はどうなった?』
『私達に連絡をしたってことは多分負けたんじゃないですか?』
『まぁ……それは否めないんじゃないかなぁ。負けず嫌いの天王星ちゃんからしたら辛かっただろう。』
『勝負は時の運っていうからねー。しょうがないねー。』

「うぅ……全くもってその通りだよ。決闘とか言って周りの皆にも配慮してもらったのに結局負けちゃったんだよねー。恥ずかしいー。」

かつて最初の敗北を味わった相手にリベンジマッチを挑んだこと、戦いの内容などを事細かに説明した。すると、チタニアが苦言を呈した。

『バカのひとつ覚えみたいに発勁に頼らず、防御や回避に専念すれば引き分けくらいになったんじゃないですか?』
「それはちょっと考えたんだけどさー。でもやっぱり勝負事はきっちり決めときたいじゃん?負ける時は潔く負けたいんだよね。負けず嫌いより先に、そっちの意地みたいなもんがあったんだよねー。」
『へー、珍しいじゃないですか。普段ボケーッとしてるあなたがそんなこと言うなんて。』
『そうかい? 天王星ちゃんは割りと白黒つけたいタイプの性格ではあると思うよ。』

フォローを入れてくれたのはオベロンだ。

「うん、他の選手との出会い頭の戦いならともかく決闘と銘打ったからには白黒つけたかったんだよね。」

『ほえー』
『……で、つぎの試合……もう今日か。どう行動するつもりだ?』
『あ、それ気になる気になるー!』

順にアリエル、ウンブリエル、ミランダが相槌を打ち、質問をしてきた。

「んー前に戦った天奈瑞さんの護衛しようかなって。護衛を要請してたみたいだし、あの人の目標は是非応援してあげたいんだよねー。あ、そうだ。今日使うアイテム包帯なんだけどどこに巻けばいいと思う? スランプ治してくれるらしいんだけど。」
『んん~~』
『……俺達はあくまで天体だからな。人体に関してはさっぱりだ。』
『頭辺りにでも巻いておけばいいんじゃないですか?』
『え、いや、頭はどうかと思うけど。』
『あたまあたまー』
「そっかー。頭か―。さっそく巻いてみるよ。皆ありがとね、話聞いてもらって。」
『いえいえー』
『……試合結果待ってるぞ』
『せいぜい頑張りなさいな』
『うん、頑張ってきてね。あとやっぱり包帯は頭じゃn『頑張ってねー』

皆のエールを受けてやる気が湧いてくる。
この子達に笑顔で結果を報告したいから頑張ろう。賞金稼ぎの他に、こういう目的があってもいいよね。
なんかオベロンが言いかけてたけど何だろう?まぁいっか。

テレパシーを切断し、冥王星ちゃんの方を見るとカロンくんと会話をしていた。
難しい顔をして、話し込んでいる。ちょっと茶化してみようか。

「ひゅーっ!お二人さん何イチャイチャしてるのー?」
「え、えと……」
「衛星ちゃん達との通信は終わったの?」
「……うん、終わったよ―」

違和感。
二人の表情に並々でないそれを感じた。
これは茶化された時の反応ではない。どちらかというと気まずさ。
この違和感は今に始まったことじゃない。今まで何度か冥王星ちゃんやカロンくんに対して感じることがあった。
まるで私がおかわりをした時に似た申し訳無さを伴った表情。正確に言うとそれとも違う。
何か隠し事をしてるような――――

「頭に包帯巻いちゃってどうしたの? 怪我しちゃった?」

冥王星ちゃんの心配するような声に、思考が断ち切られた。

「どうもスランプみたいでさー必殺技打てなくなっちゃったんだよねー。だから何でも怪我を一つ治すらしい不思議な包帯ってのを使ってみたんだよね―。今なら必殺技打てそうな気がするよ!」
「そっか、ならいいんだけど。いや、でもスランプで頭に包帯って聞いたこと無いよ!それ間違ってない……?」
「大丈夫大丈夫―。多分治ってるから」

分からない。
彼女は何か私に後ろめたいことがあるようなのに、心配してくれてる。
私を気遣って言えないようなことが何かあるのだろうか? それなら言ってくれればいいのに、と思う。
そうしたもやもや感を抱きながら、でかける準備をし始める。といっても枕くらいしか持っていくもの無いのだけど。


「それじゃーいってきますー」
「あ、ちょっと待って……!」
「んー?」

パタパタと冥王星ちゃんが寄ってきて、そっと抱きしめた。

「え、ちょ、なになに」
「んーん、何でもない。ただ、ムリしないで頑張って欲しいなぁってね。」
「えーなにそれ、ちょっと矛盾してないー?」
「あはは。……ホント無理だけはしないでね。」
「わかってるわかってるー」
「ならよし。じゃあいってらっしゃい!」
「いってきます!」

疑念は晴れないしあと少しで何か分かりそうな気もするけど、今は試合に気持ちを切り替えよう。
冥王星ちゃんに抱きしめられたの、暖かくて気持ちよかったなぁ。今日は頑張れそうだ。
勿論、無理はしないけどね。

◇◇◇

第七日目、第一回戦、猛進寺うのみVS天王星ちゃん――――結果、天王星ちゃんの敗北!

「ひ、必殺技が出ない!? やっぱり頭に包帯はダメだったのかー……」

【END】



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最終更新:2013年12月20日 21:19