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『“The Transfer”the after Ⅱ』


 賞品の少年には、利用価値がある。
 敵対勢力に対して用いれば、戦力の引き抜きが行える。それは各国の諜報機関も真っ先に思いついた利用法であり、確かに効果は絶大だろう。Choro-in化とは物的破壊を伴わない人的破壊活動であり、敵の戦力を滅殺し味方の戦力を増強する一石二鳥の策である。
 だが当然、万能ではない。能力の性質上女性にしか効果を発揮しないのだから、少年の使用を察知されてしまえば対策を取られてしまう。性転換能力者と組ませるのも一つの手だが、そうそう使い勝手の良い能力者を容易出来るとも限らない。
 ならばChoro-in化は種の割れぬうち、敵に気取られる前の奇襲にのみ有用な隠密作戦でしかないのか。
 その答えはNOである。
 Choro-in化した女性は魔人として強化される傾向にある。それは単純に肉体的能力が向上するだけに留まる場合もあるが、時に魔人能力の強化、或いは変質さえ引き起こす。
 本来、常人が魔人に覚醒した時のような変化が二度起こるような事はない。せいぜいが魔人として覚醒した後に鍛錬を積み、実力がつく──────────その程度の成長に留まる。
 だが、少年との接触を果たした女性が果たした変貌はそのレベルに留まらない。『世界格闘大会』においてその実例は実証されている。
 『認識の衝突を起こし、勝利した魔人は”転校生”となる』。
 その法則を知る者は数少ないが、決して皆無ではない。それだけに秘密を知った者はそこで満足してしまう事が殆どだ。ゆえにその先を考える者は更に少ないが、仮に推し進める事があればこう考える。すなわち──────────果たして、その法則だけが唯一絶対なのか?
 認識の衝突に勝利した者が”転校生”となる。そこに偽りはないとしよう。しかし、それがただちに他の可能性を全て否定する訳ではない。山頂に到る道が決して一つではないように。
 つまり、”転校生”化の法則が他にもあるとした場合。
 他者を強化し、次のステージに進める能力があるのだとしたら。
 不確実な敵の構成に依拠する事なく、自国を、自軍を、自勢力を強化する事が出来る。
 無敵の”転校生”部隊を手中に収める事が出来る。
 たった一人の少年を自分たちの陣営に置くだけで。
 『世界格闘大会』は試金石であり、サンプル採取の場である。
 素性の分からぬ怪しい者の口車に敢えて乗り、大会を開かせたのもその思惑があってこそ。開催に掛かった費用は一般的感覚からすれば莫大なのかもしれないが、それで日本の繁栄が買えるならこれ程安い買い物はない。
 ”フィクサー”は私欲のない、言わば国士だったが──────────決して性善ではない。
 慈善事業でなければ、必ず成果を回収する。
 表の大会運営とは別に、その息の掛かった者たちは本来の目的を果たす為、行動を開始する。
 ”転校生”として再度戦い、そして敗れた者を密かに回収してゆく──────────。

                                                     <了>