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やったねマリーちゃん! 連勝おめでとうSS(第6T)


そしてマリーは傷ついた身体に鞭を打ち、公園に戻ってきた。
戦闘はまだ可能なはず……対戦相手を求めて歩き出す。
エルザのためなら、俺は鬼にでも死神にでもなってやる。
飛べない天使の片翼が昂ぶる戦意に呼応してざわざわと震えた。

「よう、俺と戦ってくれよ」
マリーは金色の杖を持った魔法使いを見つけて、声をかけた。
「いえ、私は墓森さんと再戦の約束がありますので――それに酷く怪我をしている御様子ですが――」
「俺なら気にしないでくれ。俺が戦いたいんだからよ」
マリーは肩に担いでいた巨大十字架“ファルコネェン”を構え、パルプに突き付けた。
「それならば――私も全力でお相手します」
パルプもまた、ラクティ☆ロッドを突き付ける。

(しっかし……正直キツいな。頼むぜ神様)
畔から深手を受けたマリーと対照的に、パルプは何故かほとんど無傷。
勝機は実際かなり薄い。
マリーは煙草を携帯灰皿に突っ込み、池を渡って吹いてくる冷たい風を胸一杯に吸って精神集中。
必殺技の発動に必要なだけの精神力を確保する。
(……ここは『天罰』の一撃に賭けるしかねぇ)

一方、パルプの気力は充実している。
「スターリット☆シューター!」
ロッドから光の弾丸が放たれマリーを撃つ!
光が弾け、白い羽根が舞い散る!

マリーは痛みに飛びそうになる意識の手綱を辛うじて握り締め前進!
「吹っ飛べオラァッ!」
力任せに十字架を振るう!
「ぐぶぅっ!」
全長2mの鉄塊を脇腹に喰らって悶絶するパルプ!
だが踏みとどまり、一歩踏み込んで魔技を込めたロッドによる突き!
インパクトの瞬間光が炸裂し、吹っ飛んだのはマリー!

「一気に決める! パルプ☆マジカニカ!」
ロッドを掲げて必殺の呪文を唱えるパルプ!
空間が歪み、パルプの上に巨大な影が現れる!
だが、出現したのはまたしても巨大なマリンモンキーのぬいぐるみだった……。

「なんで……うぎゃあーッ!」
ファニィ☆ファンブル! 紫色の巨大なぬいぐるみに押し潰されるパルプ!
「ジーザス! ありがとよ!」
さらにマリーの巨大十字架がパルプへ振り下ろされクリティカル・ヒット!
「ぎゃうんッ!」

ここに至り、ようやくパルプも危機を感じだした。
(おかしい……私がかなり有利な勝負だったはずなのに……)
ぬいぐるみの下から這い出し、ロッドを構える。
……マリーの姿が消えた!?

上だ! 天使の片翼を大きく広げ、マリーは高く跳躍していた!
「天に召されやがれ! 我流十字架術奥義ッ! 天ッ! 罰ゥッ!」
上空から振り下ろされる巨大十字架が後頭部に炸裂! パルプは吹き飛んで池を囲う柵に激突!
太い丸木で作られた頑丈な柵が軋む!
更に! 更にパルプの後頭部で爆発が起きた!
十字架から叩き込まれたマリーの聖なる力が時間差で起爆したのだ!
追加の衝撃で柵の丸太がへし折れてパルプは池の中に転落! 水柱が上がる!

「アーメン! やったか!?」
確かな手応えに、マリーは一瞬気を緩めた。
しかし水柱の中から何かが飛来してマリーの顔面に衝突!
「ぐうっ! これは!」

それは光り輝くラクティ☆ロッド!
池に転落しながらもロッドに魔技を込めてハープーン射出していたのだ!

(おかしい事は何もなかった……)
水中で、鯉の頭部をかじりながらパルプは反省した。
(手を抜いてたわけじゃない。でも、相手を見誤り安全に勝ちを拾おうとしてた……)
魚由来の知能活性化成分がパルプの脳を覚醒させる。
(守るべきもののためなら、窮地になればなるほど強くなる……マリーさんは、天使の羽根でできた熊の毛皮を被ったベルセルクだ……!)

パルプは池から這い上がる。ロッドは? 相手の足元だ。
(……問題ない)
魔法使いの強さは魔技道具に宿っているわけではない。
修行によって磨き上げた自分自身が、何者にも屈しない心こそが魔法使い最大の武器なのだ。
両腕に魔技を宿らせ、脇を締めてコンパクトなファイティングポーズを取る。
これは伝説の闘奴セスタス=サンが使ったと言い伝えられている古代ローマボックス・カラテの構え!
冷たい池の水を滴らせながらも、パルプの魂は熱く燃え上がっていた。

362 :ラクティ☆パルプ:2013/11/28(木) 18:49:48 パルプも、マリーも、残された体力はわずかとなった。
勝負は次の一撃で決まる……!
赤く色付いた木々の葉を揺らす、冷たい秋の風が二人に決着を促す。

マリーが動いた!
(神様……エルザ……チビたち……俺に力を貸してくれ!)
巨大十字架を死神の鎌の如く横凪ぎに振るい、パルプの頭部を砕かんとする!
襲い来る十字架の重い一撃を、パルプは交差させた腕でガードした! クロスガード!
細くとも頑強な甲殻類の腕を魔技ブースト! 大質量十字架打撃を食い止める!
身体特性と、魔法技術と、格闘技能の総てを積み重ねた見事な防御だ!
魔法技術によって受け流された十字架の衝撃は光に変換されて一度拡散した後、パルプの右拳に集中してゆく!
そしてガラ空きになっているマリーの腹部に反撃のボディブロウを……!

だが、既に限界を迎えていたパルプの身体は、腕を振り抜くことができなかった。
光を失った拳が弱々しくマリーを打ち、そのままもたれるように力尽きた。
マリーはパルプを受け止めたが、こちらも支えるだけの力は残されておらず、すとんと芝生に尻餅をついた。

「負けました……でも、これで教会の子たちは安心できますね……」
マリーに膝枕されるような体勢で、パルプは清々しく言った。
たぶん今回も、マジカニカはパルプのためにファンブルしたのだと思った。
油断する自分への戒めとして。
敗れこそしたが、無傷で今日の戦いを終えることができたのも悪くはない。

「おい、まさかわざと俺に勝ちを譲ったわけじゃないよな?」
マリーはちょっと怒った感じの声で訊いた。

「いいえ。私は本気でした――でも、勝負に賭ける想いの強さでマリーさんに完敗でした」
確かに、パルプの目的は謎の襲撃者と怪盗マタンキを見つけ出すことで、勝つことではなかった。
だが、勝利に執着する心が足りないことは、自分の弱さなのだろう。
こんなことでは、あの人に――あの素敵な人の居る場所にたどり着くことはできない。
パルプはもっと強く、もっと貪欲にならなければいけないと思った。

謎の襲撃者、怪盗マタンキ、そして賞品の少年。
パルプの追うべきものは増える一方だった。
世界格闘大会も残すところわずか二日間。
果たしてパルプは、全てをばっちり解決できるのだろうか……?