鏑木諒子 5ターン目終了SS
「私ってヤツは本当に……」
公園のベンチ。うなだれる少女が一人。
11月の寒空の下にもかかわらず、半そで調理服姿の鏑木諒子である。
大会の規定により一部例外を除いて、衣装は運営により認められた物しか着用が認められていないのだ。
しかし今の彼女にとっては寒さなど、どうでもいいことであった。
心に重くのしかかっていることがあったからだ。
「また…何もできなかった……。」
握り締めたコブシを見つめて、今までの闘いを思い出す。
転校生達―――――
女王蜂。狂気の魔女。聖女さん。
誰も守ることができなかった。
それどころか唯一人のクエスト参加者を止めることすら、自分にはできなかった。
いずれも、決して勝てない勝負ではなかった。
それでも、自分は負けたのだ。
そんな自分の情けなさを考えていたら―――。
諒子はコブシを額に当てて、唇を一瞬だけ強く噛みしめた。
「つーか寒ッ!服引っぺがされる系のイベントなのに、こんな寒い時期まで食い込んでんじゃないっつーの!」
誰が見ているわけでもない。そんなことは分かっている。
それでも、彼女は泣かなかった。
泣くわけにはいかなかった。
闘いはまだ、終わってはいないのだから―――。
「はぁ~…。」
涙の代わりに大きなため息を吐き出し、空を見上げた。星ひとつ見えない都会の空を。
そして、真っ直ぐと人差し指を伸ばすと、天に向かって大きく叫んだ。
「神様!どうにもあんたは!私を負け犬にしたいようだけどな!」
なんとも馬鹿馬鹿しい光景ではあったが、少女の瞳には一点の曇りもなければ迷いもない。
「どんなに私が弱くても!どうしようもないバカでも!この心だけは絶対に曲げない!」
人々は後に、彼女をこう呼ぶこととなる
「貫いてやる!私自身の生き方を!」
《宇宙一カッコイイかっこ悪いバカ》と。
完
鏑木諒子……宇宙一カッコイイかっこ悪いバカ
最終更新:2013年12月02日 21:38