※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

マジカニカの導き(第5T:ルガーvsパルプ再々戦)


身に纏ったドレスが変わっている。
少女の息遣いを映すように、ドレス自身が放つ光が揺らいでいる。
背も伸びて、身体が一回り大きくなった。
この短期間にここまで成長するものだろうか。
成長――そう、成長している。
肉体的な変化。装備の変化。それだけではない。
なによりも瞳に宿った光が、内面の成長を伝えている。
この眼は、何度負けても決して折れない強き者の眼だ。
二度の勝利に慢心していたら、敗者となるのは私だろう。
ルガーは自らを戒めた。

カーン!
甲高いゴングの音がカジノ内に響き渡り、試合開始を告げた。

(全力で――行かせてもらうッ!)
ゴングと同時にルガーは踏み込み、渾身のヨップ・チャギ(横蹴り)を撃ち込む!
胸部直撃の蹴りで吹き飛ばされ、闘技場を囲う金網に背中から打ちつけられるパルプ!
軋む金網! 血に飢えたカジノ客が歓声を上げる!

「パルプ☆マジカニカ!」
二歩、よろめきながらパルプが叫ぶ!
精神爆発か? 怪物召喚か? ルガーはロッドの光に集中し、対応しようとした。
ロッドはゆらゆらと揺れながら、怪しい光を放っている……。

(……!?)
腹に押し当てられるロッドの感触。
いつの間にか目の前にパルプが居る――意識が一瞬飛んでいた。催眠術か!?

「ヒュプノタイジング☆フリッカーがあなたを眠りに誘います。……ノアプテ・ブナ!(おやすみなさい)」
閃光、衝撃……鈍痛!
腹部に零距離魔法発剄を喰らい激しく吐血するルガー!
赤黒いマフラーが更におどろおどろしい色彩に染まる!

「ぐ……強くなったな!」
マフラーを取り去り、牙を剥いて笑うルガー! ノプンデ・トルリョ・チャギ!(上段回し蹴り)
上体を後ろに逸らしパルプは紙一重スウェー回避!
しかしルガーのつま先が巧みに捻られドレスの襟元を巻き取る!
パルプの身体がルガーの長い脚に吊り上げられ宙を舞う!
なんたる巧みな吸血鬼テコンドーの投げ技か!
床に叩き付けられる! 月の光から織りなされたドレスの神秘キチン質繊維が引き千切れる!
「ワオー!」着衣ダメージに観客が大歓喜!
だが再び閃光! 投げられながらもパルプはグローリアス☆ボマーを放ってルガーにダメージを与えたのだ!
肉を打たせて肉を撃つ! 一歩も引かぬ消耗戦の決意!

仰向けに倒れたパルプに、ルガーは容赦なく追撃!
空中で一回転して踵を顔面へと振り下ろす!
「マジカニカ!」
パルプは迎撃の真魔法を即唱! 空間が歪み、パルプの上に巨大な影が出現!
その正体は! 桜色の巨大なマリンモンキーのぬいぐるみ! 体高3m! でかカワイイ!
「ぎゃうん!」
顔面にルガーの踵! 腹部に落下したぬいぐるみ! ファニイ☆ファンブル! まさかの自爆同時攻撃!

(なんで……? どうしてマジカニカを私が喰らうの……!?)
乱れた精神を落ち着かせようとするパルプ。
ルガーはぬいぐるみの下からパルプを引きずり出し、左腕一本で吊り上げ無慈悲にもう一度地面に叩き付けた!
相手の失敗に付け込む卑劣? そうではない。強敵と認めたからこそ、手加減なく攻めるのだ。
その証拠に見よ! パルプは挫けることなく立ち上がる!

ルガーは牙を光らせて飛びかかる! 吸血攻撃だ!
パルプは一瞬幻惑されルガーを受け入れそうになる!
一度血を吸われた者は、甘美な吸血体験に抗いがたい魅惑を感じるのだ!
パルプを救ったのは高級アイシャドウによって研ぎ澄まされた視覚!
姿勢を低くして噛みつきを避けながらカウンターのロッドを撃ち込む! 魔法発剄!
ルガーの脇腹で光が爆発する!

何度も撃ち込まれた魔法力に、ルガーの不死なる肉体が綻び始めた!
全身の皮膚に無数の裂け目が生じて激しく出血!
だがルガーも引かない! パルプの肩を掴んで引き寄せ……執念の牙を突き立てる!

ふわりとした陶酔感がパルプを襲う! 吸血の蠱惑!
(あぅ……気持ちい……んっ……だめ……)
ルガーの身体は魔力溢れる血を得て再び活力を取り戻す!

ああ、このままパルプは陥落してしまうのか!?
いや、耳を澄まして聞くがいい! パルプの呼気は快楽に墜ちたる者の吐息だろうか? いや違う!
「スゥーッ! ハァーッ!」
これはマジカニカ語による深呼吸めいたチャント☆ブリージンの詠唱だ!
パルプは数度のチャント呼吸で精神集中! 吸血の魅惑を振り切ってルガーを突き放す!

(強い……! 決して折れない誇り高き精神を持っている……! ならば!)
ルガーが最後の攻撃を仕掛ける! つま先がパルプの襟元を再び絡め捕る!
だが一度受けた技! パルプは重心を落として耐える! そしてカウンターの魔法発剄を練り上げる!

その時! ルガーの身体が空中で不可思議に捻られた!
人間には不可能な空中動作!
「ぐうっ!」
限界を超えた動きで骨折していた右腕に激痛が走りルガーは呻いた!
しかし動作に淀みなし! 右足で襟を捉えたまま左足がパルプの右膝に蹴り込まれる!
これぞ吸血鬼式テコンドー奥義パレ・フラクトゥルーデ!(杭砕き)
心が折れぬなら骨をへし折る!
全力で踏ん張る脚に力の逃げ場なし! パルプの右膝は逆向きに折れ曲がった!

「あぐっ……グ……☆ボマー!」
膝が破壊された激痛の中、パルプも最後の魔法を放った!
ラクティ☆ロッドから光の球が撃ち出され、宙を舞うルガーに命中して炸裂する!
再び魔法力を注ぎ込まれ、全身から血を流すルガー! 周囲に血を撒き散らしながら空中回転! パルプを巻き込み投げ飛ばす!
ダンッ!
ズダンッ!
もつれながら地面で二人は二度バウンドし、そして二人とも動かなくなった。


地下カジノ内医務室!

「まるで別人のように強くなっていた。負けすら覚悟したよ」
ルガーは、惜しみなくパルプを賞賛した。

「えぐっ、うううー。マジカニカさえ失敗しなけりゃ勝てたかもしれないのにぃー」
痛さと悔しさで、パルプは泣き通しだった。
信じていた自分の真魔法に裏切られたのだから、無理もない。

「いや……アレで良かったのかもしれへんで」
「良いわけないよぉ……ぐすっ」
使い魔であるマリンモンキーのリミラブに妙なことを言われパルプはますます膨れっ面。

「あんな場所で負けたら精神ダメージめっちゃデカいやん?」
「だから勝ちたかったんじゃないー」
「でも勝ってもアレ来るやろ?“転校生”」
「あ……」
「ルガーはんと実力は互角。つまりどっちが勝ってもボロボロで転校生に勝てるわけあらへん」
「つまり勝っても負けても精神ダメージ……?」
「せや。だから相打ちがベスト。それがマジカニカの導きやったんちゃう?」
「そっかぁ」
パルプに少し笑顔が戻った。

「ところで、血を失い過ぎてね。ちょっと飲ませて貰えないかな?」
「駄目ですよぅ。ルガーさんがまた脚折ったから私もしんどいんです! 吸血は……また今度ね!」