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2人はキグルミ


 都内総合病院。2F女子トイレにて。

「肛門科で診てもらう前にもう一度アヌスのチェックをしておくですぅ」

 甘ったるい声で、しかりあまりに下品な言葉が響き渡った。使用中の個室の一つ、そこにいる声の主はご存知迷ド探偵たまきである。
 何故彼女が病院にいるのか、その理由を述べておきたい。菊一文字朱蓮との対戦でアヌスに異物を突っ込まれたたまきはオナニー紛いの自己診断の結果痔になってはいないと安心したのだが、しかしこの日の朝、たまきは血便をしていた。やはりどこか切れていたのか、或いは胃腸で内出血でもしたのか。何れにしても診てもらう必要はあるだろうと大会本部が手配し、肛門科も内科もあるこの総合病院へやって来たのだ。
 因みに事前に自身でアヌスのチェックをするのも、医師に問診で過不足無く情報を伝えられるようにとの殊勝な気持ちからだった。

「あ~、異物が出たり入ったりしてますぅ。あんっ」

 異物(指)をジュポジュポとアヌスに出し入れし、時折内側からかき回すようにするとチクリとする痛みがあった。
 チュプリ、と指を抜くと微かな便臭を放つ指先にはぬらぬらとした腸液、そして確かに赤い色――。

「やっぱり内側が切れてるみたいですぅ。もう触らないようにしますぅ」

 そもそも出血の原因はこのチェックと称したアナニーの際爪で内側を傷つけてしまったからなのだが、そのことに気づく気配はない。
 汚れた指先をトイレットペーパーで拭い、そして今度は異常なまでの盛りマンの割れ目に指を這わせる。もはや完全にオナニーだった。たまきは考え事をする時、よく陰部を弄っていた。今の彼女の思考はその対象を肛門から、もう一方の来院目的へと移っていた。

「脱衣四天王とか言う不埒な4人の、1番の小物のトラロック。あいつは顔も隠して、胸はわざとらしく豊満ですぅ。如何にも女装っぽいですぅ。
 既に脱落済ですが、脱落者にマタンキが紛れている可能性はありますぅ。見逃していたら、マタンキにはそのまま逃げられてしまうですぅ。奴はラ・ピュセル戦のダメージでここに入院中のはずですぅ。今が1番のチャンスですぅ」

 ジュッポジュッポと指を動かし、もう片方の手で乳を揉みながらたまきはそう推理の内容を独りごちる。

(え、え??? 隣にいるのってたまきんだよね?
 私が女装って何言ってるの? ていうか何やってるの?)

 隣の個室にいたトラロック――衣紗早雨衣は心中で驚きの声をあげた。ちょうど出す物を出し拭く場所を拭いてさあ出ようかという時、隣に入ってきたたまきが独り言を言いながらアナルチェックを始め、今は推理内容をベラベラ喋りながら自慰に耽っているのだ。容疑者が隣の個室に入っていて推理が筒抜けだなどとはいかな名探偵でも予想できまい。

(私が女装……。男装はしたことあるけどさあ。元々女だよ? たまきん)

 ちょうど剥き出しになっている自分のお股を見下ろし、少しばかりむっとしてそう心中で呟く。もちろん雨衣のそんな心の声がたまきに届くはずは無いし、届いたら困る。

「じゃあ、そろそろ病院内探索を始めるですぅ」

(でもまあ、私が変身しなきゃバレることなんて無いよね。
 他人のひとりエッチなんて盗み聞きするものじゃ無いし、早く出よっ)

 流すつまみをひねると、大きな水音を立てて雨衣のうんこは渦の中に消えていった。隣り合った2つの個室のドアが同時に開き、雨衣とたまきが出てくる。トイレを利用していたごく普通の少女を装い、たまきをちらりとだけ見てから手を洗って出ようとした雨衣だが……

「あ、トラロックの中の人!!
 隣で私の推理を聞いてやがったんですか!! 怪しいですぅ調べさせてもらいますぅ」

「し、しまったあああああああああああ」

 1回戦でラ・ピュセルの前に思い切り変身前の姿で現れ、カメラにその身を晒していたことを雨衣は今更後悔した。



「Heyゴン。社長(ボス)は激おこプンプン丸だぜ。おかげで俺がケツに竹刀をぶち込まれちまった」

「Sorryサイゾウ。次の興行までには必ず退院して加わると伝えてくれ」

 とある病室にて、入院患者魔人外人レスラー・ナイトゴンザレスと見舞い客の同団体レスラー・ミスターサイゾウが話していた。たまきのオナニー動画に興奮したこの2人は彼女に会いに行ったのだが、途中で逃げたため助かったサイゾウに対しゴンザレスはたまきのハイキックを受けて暫く入院することになったのだ。

「しかしサイゾウ。社長やお前には悪いが、入院生活ってのもそう悪くない」

「なんだってゴン? そうか、ナースだな!? ジャパニーズナイチンゲールに剃毛されて無いちん毛ールになって興奮してたんだな。このファック野郎!!」

 興奮して怪我人の胸倉を掴むサイゾウ。彼はゴンザレスに比べると良識人だが、少々怒りっぽく、ゴンザレスと同じでチェリーだった。

「違う、違うんだサイゾウ! 盲腸でも無いのに剃毛なんかしないし、俺の担当のナースは閉経してそうなババアだ」

「Oh……! なんてことだ。済まなかった。
 しかし、ならどうして入院生活も悪くないんだ? 女の入院患者とベッドインでもしたのかい?」

「ふふふ、こいつを見てくれ」

 ゴンザレスはタブレットを操作し、とあるサイトで配信されている動画をサイゾウに見せた。
 そこに映っていたのは野球のユニフォーム(ただし下はスカート)に身を包んだ、牛を擬人化したようなキャラクターのキグルミ姿。再生すると、そのメス牛は自身のためのテーマソングに合わせダンスを始めた。大げさに手を振り腰を振り、初めて見るサイゾウにもわかるあざとさで愛嬌をふりまく。

「ある野球チームのマスコットキャラで、日本人はこのラブリーカウを『ヴェルたそ~』とか言って愛でているらしい。
 可愛いだろう?」

「Ohゴン……アニマルに欲情するのはPOKEMONだけにしておけと言ったはずだ。
 しかもこの球団、大阪にあるらしいじゃないか。この病院と何の繋がりがある?」

「サイゾウ、お前はたまきちゃん以外の格闘大会参加者をチェックしてないのか?
 ほれ見ろこれを」

 ゴンザレスはタブレットで今度は格闘大会の公式サイトを開き、選手名簿の中から「ヴァッファローヴェル」のページをサイゾウに見せつけた。

「おお! この子も大会に出ているのか! しかしなんだって球団マスコットが格闘大会に?」

「俺もよく知らないが宣伝とかじゃないのか? 
 今重要なのはヴェルたそが大会に出ていること、そして今日の試合で負傷していることだ。参加選手が負傷した場合治療はこの病院で受けるらしい。
 つまりこの後病院にヴェルたそがやってくる可能性が高い」

「なるほど……」



(はあ……大阪に帰りたい)

 ちょうど病院に入ったヴァッファローヴェルはそう呟くと溜息をついた。
 1回戦は勝利、2回戦は引き分け。順位は真ん中辺り。しかし大会の成績云々では無く、ヴェルは戦いに疲れていた。
 不人気の球団ではあったが、あの狂セラドームで選手たちの応援をしていた頃は楽しかった。
 今はスポンサーであるウォリックス東京本社で世話になっているが、やはりどこか居心地が悪い。病院に行くときもキグルミを着たままでいろなんて言われる。大会には参加していないが、東京は天敵のツバメやマスコット最強のウサギのホームでもある。怖い。
 打撲の痛みも心に響くようだ。

「へくしゅっ」

 くしゃみをする。ヴェルの大きな頭が大きく揺れた。

(風邪まで引いちゃったのかなあ。
 帰りたいよ、会いたいよ……みんな……お兄ちゃん)

 チェリーレスラー2人に貞操を狙われているとも知らぬ哀れなヴァッファローヴェル、たまきに女装の嫌疑をかけられ、遭遇してしまった雨衣。果たしてどうなってしまうのか。
 正直この後の展開はちゃんと考えていないが、後編に続く――。