※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

『“The Transfer” No.3』


 長年の夢が叶う時が来た。
 葦原美代子は遂にそう確信するに至った。
 結婚。
 その二文字は自分にとって──────────いや、女性にとって実に大きな意味を持つ。女は結婚する為に己の外見を飾り、内面を磨き、美を作り出す。
 世間一般の考えはどうあれ、少なくとも彼女はそう考えていた。
 『世界格闘大会』に参加するに当たり、賞品の少年という存在は写真でのみ知っていた。少年に使う表現としてはどうかと思うものの確かに可愛らしい顔立ちをしており、どちらかと言えば年上の包容力の有る男性がタイプだった彼女にとっても第一印象は悪くない。当然写真では外見以外の情報、性格などは分からないが、優しそうな瞳を見ればある程度の想像はつく。
 数多の合コンを重ね、数百人を超える男を見てきた彼女ならではの審美眼である。この少年となら、ひょっとして──────────。

 そして、出会いを果たした今。その希望的予測は確信へと変わっていた。
 少年が未成年であるという事実も彼女には何の歯止めにもならない。
 「大丈夫! 世界には16歳でも結婚できる国なんて山ほどあるわ! 国籍変更すれば問題なし!」
 それにそのような強引な手段を取らずとも、少年が適法な結婚年齢に達するまで時間を掛けて彼の事を知り、そして自分好みに育てるのも悪くない。その際は勿論同居して──────────。
 事実婚!
 事実婚といえば、事実上の婚姻。つまりこれはもう実質結婚としてカウントしても良いのでは?
 そうと決まれば話は早い。
 後はもう一度少年を探し出す。邪魔なライバルは全て蹴飛ばし、薙ぎ払ってでも。
 「婚約指輪はやっぱりダイヤモンドよね…………それでそれで、新婚旅行は地中海辺りに羽根を伸ばして……」
 計画は完璧。仕事も恋愛も段取りが大事。
 彼女──────────『愛の狩人』の脳裏には既に豪華な結婚式と幸せな新婚生活という、誰にも邪魔されない二人だけの未来図が描かれていた。

                                         <了>