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【2ターン目前SS】リオレイア希少種


 魔人一家前の道路。そこで彼女は横になっていた。
 先の戦いで彼女は1人を退け、1人に敗れた。屈辱といえる結果だろう。
 また精神と同じく体にも傷を負った。故に彼女はこの場を移動するよりも体力回復に努めていた。

 黄金の火竜が住宅街で寝ているという異様な光景。
 いくら魔人が闊歩するこの世界でも、近づこうとする者は当然いない。
 だが“少女”は違った。
「あら、随分やられてしまったようね?」
 友達に会いに来たかのような気軽さで話しかける白いドレスの少女。
 抱きしめれば折れてしまいそうな細さ。幻のように消えてしまいそうな儚さ。
 金火竜が爪を振るえば一瞬で肉塊になるだろう、この状況。
 だが少女は怯えるどころか、金火竜の首にもたれかかるように背を預ける。
「……」
 対する金火竜は怒ることもなく、かといって喜んだりすることもなく、ただただ面倒そうに視線を逸らした。
 絶対的強者である筈の彼女が、しかし逆らう素振りをまるで見せない。
 それもそうだろう。何故なら少女は、白き祖と呼ばれる存在なのだから。
 白き少女は甲殻が剥がれた金火竜の頭に手を伸ばしながら話しかける。
「ふふ、私ね。面白い話を聞いたのよ。そう……転校生といったかしら」
 転校生。
 通常の魔人の域を超えた魔人。言葉通りの異次元の存在。
 とはいっても、この大会に現れた転校生は厳密にはそうではない。強大な力を持つ乱入者のことを便宜上そう呼んでいるだけだ。
「まぁ……乱入者なんて、言ってしまえばあなたもそうなんだろうけどね?」
「……」
 この金火竜は正式な格闘大会の出場者ではない。だが運営委員会が大会を盛り上げる為か、彼女を選手として登録した。
 彼女らにとってはあまり関係ない話だが、愛紗という名の少女が代理として賞金などを管理しているらしい。
「でも。あの子達は……ちょっと面白くないかしら」
 白き少女が見たいのは、金火竜と人間の狩るか狩られるかの戦い。
 だが転校生は金火竜が単独で挑めばまず勝てない存在だ。
 だから、つまらない。
「……」
 自分を見世物とみなす白き少女の言葉に、しかし金火竜は怒ることなく、むしろ諦めた様子で小さく息を吐く。
 ――この少女はいつもこうだからだ。時には白き祖として人間と戦うことを楽しんだりもするぐらいだ。
「そこで、ね。あの転校生の1人を倒そうという意見が他の参加者達からも上がってるみたいでね」
 少女に言わせれば、転校生も『転校生』という鎧を纏っているに過ぎず、それを剥がしてしまえば狩るのには容易い存在だという。
 尤も、その鎧を剥がすのが通常よりも大変なのだが……。
「というわけで、頑張ってらっしゃい?」
 金火竜の頭を撫でていた少女の手が止まる。
 鱗が剥げ、歪んでいた甲殻はいつの間にか癒えており、元の黄金の輝きを取り戻していた。
「――」
 金火竜が起き上がり、翼を広げる。
 少女の言葉に従うのは癪ではあるが、転校生という存在が気に入らないのは彼女にとっても確かだ。
 咆哮と共に金火竜が飛び立った


 ――そして、公園に黄金の月が舞い降りる。