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第1T パルプvsルガー


パルプの心が恐怖に染まってゆく。
上級アンデッド、吸血鬼ルガー。
魔法使いとしてまだまだ未熟なパルプには、厳しすぎる相手だ。
そして剥き出しになったルガーの牙! 怖い!
精神集中が乱れ、魔力の一部が身体から逃げてゆく。

逆に、ルガーは冷静そのものだった。
敵の意識が己の牙に向いてることを見て取り、空中で体をひねって攻撃!
トルリョチャギ!(回し蹴り)
ロッドによる防御をすり抜け腹部に直撃!
吸血鬼式テコンドーをまともに食らい、体格に劣るパルプは痛みにうめきながら後ずさる。
だが見よ! ラクティ☆ロッドの先端、星形レリーフの輝きを!

「スターリット☆シュート!」

ロッドをラクロス・スティックの如く振り抜くと、その先端から白く輝く光球が放たれる!
サイドステップで回避するルガーだが、光球は曲線を描いて追尾、命中!
黒いスーツの左肩で光が弾ける!

「いい反撃だ。貴女の血はさぞ美味しいことだろう」

ルガーは、ゆっくりとパンモン(半身)の構えを取りながら言った。
その顔には笑みが浮かんでいる。ダメージはほとんどないようだ。
昼なお薄暗い森の中。風に小枝が揺れ、葉がざわめいている。

ルガーの足が地を蹴った。一瞬で距離が詰まる!
パルプはロッドを構えて迎撃体勢! 牙が来るのか!? それとも再び蹴りか!?
飛んだ! ルガーはパルプの上を飛び越えた! 吸血鬼ならではの三次元機動!

背後に回ったルガーは、抱き締めるようにパルプの両腕の自由を奪った。
トーガドレスに覆われていない、白い左肩がルガーの目の前にある。
ルガーは口を大きく開いた。牙が鈍く光る。
そしてパルプの耳元で甘く囁いた。

「ポフタ・ブーナ(いただきます)」

……痛みは僅かだった。むしろ、心地よかった。
血を啜る、湿り気を帯びた音が聞こえる。
肩に感じる、唇と舌が暖かい。
吸血鬼の身体って、もっと冷たいものだと思っていた。
ルガーの両腕に抱かれたパルプは、愛する人と通じ合っているような多幸感に包まれていた。
身体から……力が……抜けてゆく……。

(いけない!)

パルプは正気に戻った。脱出しなければ!
腕が封じられてロッドは使えない。だったら!
パルプの後頭部、ポニーテールを束ねている髪留めが光を放つ!

魔法頭突きによる変則的発勁をルガーの側頭部にぶつける!
体勢不十分な攻撃だが、そこは魔法技術!
ゴウ! 眩い光が弾けてルガーは吹き飛ばされた!

「ぐうう、目が、目がああーっ!」

至近距離での光の炸裂が、ルガーの視力を一時的に喪失させた!
目を押さえてよろめくルガー! 日光を浴びたら灰になるわけではないが、強い光にはやや弱い!
好機! パルプは残されたわずかな力を振り絞り、追撃の光弾を――

ミシリ。

ルガーの下段蹴りが、パルプの左脚を捉えた。
本来、テコンドーは下段攻撃を禁じているが、吸血鬼は気にしない。
膝の激痛に、パルプは立っていることができず地に崩れ落ちた。

「残念だったね。闇に生きる我等血族は耳がいいんだよ」

目が見えずうろたえていたのは、パルプの隙を作るためのフェイクだった!
蝙蝠の如き超音波による空間把握で、的確なとどめの一撃を放ったのだ。

「だが……さっきのは効いたよ。ムルツメスク・ペントル・マサ(ごちそうさま)」

ルガーは満足そうに笑い、口元の青い血を拭った。
マフラーのバックノットを整えて顔を隠す。
そして吸血鬼は、まだフラつく頭を押さえながらも、次の獲物を求めて森の奥へと消えていった。

青い血……? そう。パルプの血は青いのだ。
これは、酸素の運搬をヘモグロビンではなくヘモシアニンが担っているためだ。
普段は魔法技術で赤く偽装しているが、今は戦闘による疲弊で幻術が緩んでいる。

「あかん、これは膝にヒビが入っとるわ」

パルプの左足に添え木をあてたリミラヴが、首を振った。
マリンモンキーであるリミラヴの特技は海難救助であり、医療の心得もちょっぴりある。

「こらもう、棄権した方がええんちゃうかなあ」

「ううん、まだやれる。先輩を襲った犯人を見つけて、ばっちり解決しなきゃ」

パルプは強い意思で瞳を燃やしながら、戦い続けることを宣言した。
こうなったら止められないことは、リミラヴが一番よく知っていることだ。
リミラヴは、キリキリ痛む胃を押さえながら、パルプに気付かれないよう小さく溜め息をついた。

(「第1T パルプvsルガー」おわり)